(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】金管楽器用弱音器
(51)【国際特許分類】
G10D 9/06 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
G10D9/06
(21)【出願番号】P 2024550777
(86)(22)【出願日】2024-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2024019332
【審査請求日】2024-08-29
(31)【優先権主張番号】P 2023088278
(32)【優先日】2023-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524156744
【氏名又は名称】Brass Gear株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】横川 央雄
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第679158(GB,A)
【文献】米国特許第3555956(US,A)
【文献】米国特許第6114619(US,A)
【文献】米国特許第3392619(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 7/00-9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向中間部に金管楽器のベルが載置する載置台を備える有底筒状の本体と、
前記本体の上部に螺合し、前記載置台に載置された金管楽器のベルを前記載置台とで挟み込む蓋体と、
前記本体の前記載置台より下方の内壁を覆う吸音材と、
を備え、
前記蓋体は、2つ以上の蓋部材で構成され、
前記載置台の上面及び前記蓋体の裏面に緩衝材を備えることを特徴とする金管楽器用弱音器。
【請求項2】
前記蓋体は、中心部に金管楽器のベルが挿通可能な開口部を有するラッパ状部と、前記本体の上部に設けられた雌ねじに螺合する雄ねじを有する円筒部とを含み、
前記ラッパ状部の裏面に前記緩衝材を備えることを特徴とする請求項1に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項3】
前記緩衝材は、前記載置台の上面全体又は上面に部分的に取付けられ、前記蓋体の裏面全体又は裏面に部分的に取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項4】
前記載置台は、前記本体内に吹き込まれた息を前記蓋体側に排出させる通気孔を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項5】
前記蓋体は、2つ以上の蓋部材を連結し、連結した状態に保持する連結具を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項6】
前記吸音材は、前記内壁に対して着脱可能に取付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項7】
さらに前記内壁と前記吸音材との間に遮音材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項8】
前記蓋体が、一対の半割れ蓋からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項9】
前記本体が、有底の第1円筒部と、前記第1円筒部に比較して内径が大きい上部が開口した第2円筒部と、前記第1円筒部と前記第2円筒部とをつなぐ円錐部とを備え、
前記第2円筒部に前記蓋体が螺合する雌ねじが設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【請求項10】
前記本体の中心軸線と前記金管楽器のベルの中心軸線とを一致させた状態又は偏心させた状態で、前記金管楽器のベルに前記本体を取付け可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の金管楽器用弱音器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランペット等の金管楽器のベルに取付け使用する弱音器に関する。
【背景技術】
【0002】
トランペット等の金管楽器の音量を低減させる器具として消音器・弱音器がある。消音器としては、ベルの開口部に嵌め込むものがよく知られている。例えば特許文献1には、金管楽器のベルの内壁に沿って前端である大径側端から後端である小径側端に向かって外径が小さくなっている略円錐管形状の胴部を有し、胴部の小径側端近傍の外壁に吹奏したときの呼気を消音器外に排出する呼気排出路となる窪みが設けられた金管楽器用消音器が開示されている。
【0003】
特許文献2には、金管楽器のベルを外側からカバーするカバー体の内部に非通気性の素材からなる弱音部材と、通気性の素材からなる第1の緩衝部材と、第2の緩衝部材とを備え、カバー体の底に弱音部材、弱音部材の上に第1の緩衝部材を載置し、第2の緩衝部材の底部によって第1の緩衝部材の外周縁部を係止することで組み立てられた金管楽器用弱音器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4124236号公報
【文献】特許第5689559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に金管楽器のベルの開口部に嵌め込み使用する消音器は、音量を低減させるという点では優れるものの吹奏時の息の抵抗が大きくなり、吹き心地、音程さらにはコントロール性が悪くなる。一方、吹き込んだ息が逃げ易い構造の弱音器は、吹奏時の息の抵抗は小さくなるものの音量を十分に低減させることができない。
【0006】
以上のように金管楽器のベルに取付け使用する弱音器は、一般的に音量の低減と吹き心地とがトレードオフの関係にある。これまでにも音量の低減と吹き心地とを両立させるべく消音器・弱音器の改良が進められているが十分とは言い難い。
【0007】
本発明の目的は、弱音性を確保しつつも吹き心地に優れる金管楽器用弱音器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軸方向中間部に金管楽器のベルが載置する載置台を備える有底筒状の本体と、前記本体の上部に螺合し、前記載置台に載置された金管楽器のベルを前記載置台とで挟み込む蓋体と、前記本体の前記載置台より下方の内壁を覆う吸音材と、を備え、前記蓋体は、2つ以上の蓋部材で構成され、前記載置台の上面及び前記蓋体の裏面に緩衝材を備えることを特徴とする金管楽器用弱音器である。
【0009】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、前記蓋体は、中心部に金管楽器のベルが挿通可能な開口部を有するラッパ状部と、前記本体の上部に設けられた雌ねじに螺合する雄ねじを有する円筒部とを含み、前記ラッパ状部の裏面に前記緩衝材を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、前記緩衝材は、前記載置台の上面全体又は上面に部分的に取付けられ、前記蓋体の裏面全体又は裏面に部分的に取付けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、前記載置台は、前記本体内に吹き込まれた息を前記蓋体側に排出させる通気孔を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、前記蓋体は、2つ以上の蓋部材を連結し、連結した状態に保持する連結具を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、前記吸音材は、前記内壁に対して着脱可能に取付けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る金管楽器用弱音器は、さらに前記内壁と前記吸音材との間に遮音材が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、前記蓋体が、一対の半割れ蓋からなることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、前記本体が、有底の第1円筒部と、前記第1円筒部に比較して内径が大きい上部が開口した第2円筒部と、前記第1円筒部と前記第2円筒部とをつなぐ円錐部とを備え、前記第2円筒部に前記蓋体が螺合する雌ねじが設けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る金管楽器用弱音器は、前記本体の中心軸線と前記金管楽器のベルの中心軸線とを一致させた状態又は偏心させた状態で、前記金管楽器のベルに前記本体を取付け可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、弱音性を確保しつつも吹き心地に優れる金管楽器用弱音器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1の斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1の分解図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1の半割れ蓋31の斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1を縦方向に切断した切断部の端面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1の半割れ蓋31の連結具51、55、57の構成を説明するための図である。
【
図6】本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1の緩衝材40、42の配置を説明するための平面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1にトランペットを取付けた状態を示す外観図である。
【
図8】本発明の第2実施形態の金管楽器用弱音器2を縦方向に切断した切断部の端面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態の金管楽器用弱音器2の載置台14の構造を説明するための図である。
【
図10】本発明の第3実施形態の金管楽器用弱音器3を縦方向に切断した切断部の端面図である。
【
図11】本発明の第4実施形態の金管楽器用弱音器4を縦方向に切断した切断部の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1の斜視図、
図2は、金管楽器用弱音器1の分解図、
図3は、金管楽器用弱音器1の半割れ蓋31の斜視図である。
図4は、金管楽器用弱音器1を縦方向に切断した切断部の端面図、
図5は、金管楽器用弱音器1の半割れ蓋31の連結具51、55、57の構成を説明するための図、
図6は、金管楽器用弱音器1の緩衝材40、42の配置を説明するための平面図、
図7は、金管楽器用弱音器1にトランペットを取付けた状態を示す外観図である。
図4は、金管楽器用弱音器1の本体10の雌ねじ18及び蓋体30の雄ねじ36の記載を省略している。
【0021】
本実施形態において
図4の金管楽器用弱音器1の本体10の中心軸線(中心線M)の方向を軸方向、中心線Mに直交する方向を径方向、中心線Mを中心とする円弧に沿う方向を周方向とする。また本体10の底板12側を下、又は先端方向とする。軸線方向、径方向、周方向には、実質的に同視できる略軸線方向、略径方向、略周方向が含まれるものとする。これは他の実施形態でも同じである。
【0022】
本発明の第1実施形態の金管楽器用弱音器1は、トランペット、トロンボーン、アルトホルン(テナーホーン)など金管楽器のベルに取付け、吹奏時の音量を低減させるものである。以下、金管楽器がトランペットであるものとし金管楽器用弱音器1の構造を説明する。以下、金管楽器用弱音器1を弱音器1と記す場合がある。
【0023】
弱音器1は、トランペットのベル100を覆う本体10と、本体10の上部開口部を塞ぐ蓋体30とを有する。本体10の内部には、吸音材20が取付けられ、また本体10の載置台13の上面及び蓋体30の裏面には緩衝材40、42、44が取付けられている。
【0024】
本体10は、底板12を有する円筒状の筒体であり、本体10の上部は開口している。本体10は、ABS樹脂などの合成樹脂製であり、本体10の径は軸方向に同じである。本体10を射出成形により製造する場合には抜き勾配が必要となり、本体10の径は上部に向かって僅かに拡大するが、本体10はこのようなものであってもよい。これは他の実施形態でも同じである。
【0025】
本体10の軸方向の中間部には、ベル100が載置するリング形状の載置台13が設けられている。また本体10の上部内壁面には、蓋体30の雄ねじ36が螺合する雌ねじ18が設けられている。
【0026】
本体10の内径DIは、トランペットのベル100を収納可能な大きさであることは当然であるが、できるだけ小さい方が好ましい。同様に本体10の外径DOもできるだけ小さい方が好ましい。換言すれば本体10の肉厚は、適度な剛性を確保できるのであればできるだけ薄い方が好ましい。弱音器1は、トランペットのベル100に取付け使用するものであるからできるだけ軽いものが好ましい。本体10を不必要に大きくし、また本体10の肉厚を不必要に厚くすると本体10が重くなり好ましくない。
【0027】
本体10の内径DI、外径DOは、トランペットのベル100の大きさに対応させたものが好ましいが、市販されているトランペットのベル100の大きさは多様であるため、弱音器1を製品化する際は、本体10の内径DI、外径DOは、一定の範囲の大きさのトランペットに対応できるものとしてもよい。ここでベル100の大きさは、ベル先端部の外径をいう。
【0028】
市販されている一般的なトランペットのベル100の大きさは、115~140mmである。また市販されているボリュームゾーンのベル100の大きさは、120~127mmである。これらの点から弱音器1の本体10の内径DIは、前者用であれば142mm、後者用であれば130mmが好ましい。
【0029】
載置台13は、リング形状を有し、中央に開口部を有する。載置台13は、本体10を構成する円筒状の筒体と一体的に成形してもよく、筒体とは別に成形し、その後、筒体に接着してもよい。この点については、他の実施形態についても同じである。
【0030】
弱音器1を装着しない状態のトランペットは、ベル100の前方に邪魔ものがない状態で吹奏することができるが、載置台13は、トランペットの吹奏時の邪魔ものになる。一般的なトランペットのベル100の大きさは、115~140mmであるからこれらに対応する載置台13の開口部の直径dIは、100mm程度が好ましい。
【0031】
載置台13の上面には緩衝材40が取付けられており、トランペットに弱音器1を取付ける際にベル100が接する。
【0032】
本体10の長さは、特に限定されるものではないが、緩衝材40を含む載置台13の上部から底部の吸音材20までの好ましい距離、好ましい吸音材20の厚さを確保できるのであれば、軽量化の点から短い方が好ましい。
【0033】
緩衝材40を含む載置台13の上部から底部の吸音材20までの距離H、換言すればベル100を取付けた状態でベル100の先端から底部の吸音材20までの距離Hは、トランペット吹奏時の吹き心地、音程、コントロール性に影響を与える。
【0034】
距離Hが長いほど、換言すればベル100の先端をできるだけ開放した方が弱音器1を装着していない状態に近づき吹き心地が良くなる。一方で距離Hを大きくするほど弱音器1の重量、長さも増し、トランペットに装着したとき重くなる。ベル100の直径が127mm、123mm、116mmの3種類のトランペットを用いたテストの結果、距離Hは、50mm前後が好ましいことが分かった。
【0035】
吸音材20は、本体10の載置台13から下方の側壁部及び本体底部を覆うように取付けられている。本実施形態の吸音材20は、表面が山谷型の肉厚のスポンジ状の部材からなるが、吸音材20は、弱音器1に要求される音量低減性の点から素材、厚さ等を適宜決定すればよい。吸音材20は、軽量のものが好ましい。
【0036】
吸音材20の取付け量(厚さ)は、音量低減の観点からは多い方が好ましいが、本体10の内部空間Vの容積にも影響を与える。ここで内部空間Vは、載置台13よりも下方の吸音材20で囲まれた空間をいう。内部空間Vの大きさは、トランペット吹奏時の吹き心地、音程、コントロール性に影響を与え、内部空間Vを極端に小さくすると、吹き心地が悪くなる。側壁部に取付ける吸音材20の厚さは、載置台13の幅と同程度のものが好ましい。
【0037】
吸音材20は、本体10に接着剤を用いて接着させてもよいが、スポンジ状の吸音材の場合、弾力性を有するので底部、側壁部よりも僅かに大きい寸法の吸音材20を用い、これを本体10に押し込むように固定することができる。
【0038】
蓋体30は、本体10の上部に設けられた雌ねじ18に螺合する、合成樹脂製の一対の半割れ蓋31からなる。一対の半割れ蓋31は、素材、形状及び構造とも同じである。蓋体30は、本体10の上部にねじ込まれ、載置台13に載置されたトランペットのベル100を載置台13とで挟み込み固定する。
【0039】
一対の半割れ蓋31を突き合せてなる蓋体30は、中心部にトランペットのベル100の外形に近似のラッパ状部33と、本体10の上部に設けられた雌ねじ18に螺合する雄ねじ36を有する円筒部35と、ラッパ状部33の先端外周部と円筒部35の先端外周部とに連結する平板部37とを有する。ラッパ状部33は、上部に向かって狭くなるように形成され、上端中心にはトランペットのベル100が挿通する開口部34が設けられている。
【0040】
蓋体30は、軽量であることが好ましいため肉厚は薄い方がよい。一方で、蓋体30は、一対の半割れ蓋31からなり、ラッパ状部33に開口部34が設けられているので、ラッパ状部33の上端は変形し易い。このためラッパ状部33の上端には、全周に肉厚の補強部38を設けている。
【0041】
蓋体30のラッパ状部33の裏面及び平板部37の裏面には緩衝材42、44が取付けられており、トランペットに弱音器1を取付ける際に少なくともいずれか一方がベル100に接する。本実施形態の蓋体30においては、ラッパ状部33の裏面に取付けられた緩衝材42と、平板部37の裏面に取付けられた緩衝材44とが分離しているが、緩衝材42と緩衝材44と一体化させてもよい。
【0042】
一対の半割れ蓋31は、トランペットのベル100を左右から挟み込み互いを突き合わせた状態で本体10にねじ込まれる。このため一対の半割れ蓋31を互いに突き合わせたとき一体化させることで使い勝手がよくなる。
【0043】
図5に一対の半割れ蓋31を互いに連結する連結具51、55、57を備える半割れ蓋31を示す。いずれの連結具51、55、57も一対の半割れ蓋31の突き合わせに邪魔にならない位置に設けられており、一対の半割れ蓋31を容易に連結し、また分離することが可能である。
【0044】
図5(A)に示す連結具51は、爪52と爪52が嵌り込むホルダー53とで構成される。爪52及びホルダー53は、一対の半割れ蓋31を左右から互いを突き合わせると嵌り込むように設けられている。爪52をホルダー53に対し少し強い力で押し込むと、爪52がホルダー53に係止し、一対の半割れ蓋31が連結される。また連結した一対の半割れ蓋31を引き離すように力を加えると、爪52がホルダー53から外れ、一対の半割れ蓋31を分離させることができる。
【0045】
図5(B)に示す連結具55は、磁石からなり、一対の半割れ蓋31の円筒部35の端面に取付けられている。これより一対の半割れ蓋31を容易に連結させ、また分離させることができる。磁石は、ゴム磁石、プラスチック磁石など軽量なものが好ましい。
【0046】
図5(C)に示す連結具57は、面ファスナからなり、一対の半割れ蓋31の平板部37の端部に取付けられている。これより一対の半割れ蓋31を容易に連結させ、また分離させることができる。
【0047】
一対の半割れ蓋31を互いに連結する連結具51、55、57は、他の形態であってもよい。連結具は、トランペットのベル100に蓋体30を取付けるとき、さらに蓋体30を本体10にねじ込むとき蓋体30が分離することを防ぎ、本体10への取付けを容易にするためのものである。よって連結具51、55、57は、一対の半割れ蓋31を強固に連結させる必要はなく仮止めできればよい。また簡単に連結し、取外せるものが好ましく、軽量なものが好ましい。
【0048】
緩衝材40、42、44は、弾力性、柔軟性を有する部材であり、載置台13の上面及び蓋体30のラッパ状部33の裏面及び平板部37の裏面に取付けられている。緩衝材40、42、44は、ベル100を載置台13と蓋体30とで挟み込み固定するときベル100に圧接する。緩衝材40、42、44は、弾力性を備えるためベル100を載置台13と蓋体30とで挟み込み固定するとき、ベル100を傷付けることなくしっかりと固定することができる。
【0049】
緩衝材40、42、44は、基本的に弾力性、柔軟性を有する部材であればよいが軽量なものが好ましい。また緩衝材40、42、44にスポンジ状の部材を使用すれば、吸音材としても機能する他、吹奏時、本体10内に吹き込まれた息が外部に逃げる流路となる。緩衝材40、42、44には、フェルトなど布状の部材を用いてもよい。これは、他の実施形態についても同じである。
【0050】
本実施形態の弱音器1において、載置台13の上面に取付けられた緩衝材40は、載置台13の上面全体に取付けられておらず部分的に開口部46を有する。同様に、蓋体30のラッパ状部33の底面(裏面)に取付けられた緩衝材42も、蓋体30のラッパ状部33の底面全体に取付けられておらず部分的に開口部47を有する。同様に、蓋体30の平板部37の底面(裏面)に取付けられた緩衝材44も、蓋体30の平板部37の底面全体に取付けられておらず部分的に開口部48を有する。開口部46、47、48は、吹奏時、本体10内に吹き込まれた息が外部に逃げる流路となる。
【0051】
本実施形態では、緩衝材40、42、44が部分的に取付けられ、開口部46、47、48を有するが、載置部13の上面全体、蓋体30のラッパ状部33の底面全体、蓋体30の平板部37の底面全体にそれぞれすき間なく緩衝材40、42、44を取付け、開口部46、47、48をなくしてもよい。開口部46、47、48を設けない場合には、比較的通気性のよい緩衝材40、42、44を使用し、本体10内に吹き込まれた息が緩衝材40、42、44を通過して外部に逃げるようにすればよい。
【0052】
本実施形態に係る弱音器1の使用方法及び作用効果を説明する。本体10の載置台13の上面に取付けられた緩衝材40にトランペットのベル100の先端部が接するようにトランペットを配置し、本体10に蓋体30をしっかりとねじ込む。これによりトランペットのベル100が載置台13と蓋体30とに挟み込まれ、弱音器1がしっかりと固定される。
【0053】
弱音器1を装着した状態でトランペットを吹奏すると、吹き込まれた息は、本体10の内部空間Vに広がり、吸音材20に接し吸音される。その後、弱音器1に吹き込まれた息は、載置台13に取付けられた緩衝材40及び緩衝材40の開口部46、蓋体30に取付けられた緩衝材42、44及び緩衝材42、44の開口部47、48を通過し、ここでも弱音し、ベル100と蓋体30の開口部34とのすき間から外に逃げる。
【0054】
以上からなる第1実施形態に係る弱音器1は、弱音器1内に内部空間Vが設けられているため、弱音器1を装着しない状態のトランペットに近い吹き心地、音程、コントロール性が得られる。また弱音器1は、本体10内に吸音材20、載置台13及び蓋体30には緩衝材40、42、44が取付けられ、さらに弱音器1を装着した状態において蓋体30の開口部34とトランペットのベル100とのすき間は狭いので十分な消音性を備える。
【0055】
また第1実施形態に係る弱音器1は、トランペットに対しぐらつくことなくしっかりと取付けることができるため、弱音器1を装着してもトランペットを違和感なく吹奏することができる。
【0056】
図8は、本発明の第2実施形態の金管楽器用弱音器2を縦方向に切断した切断部の端面図、
図9は、本発明の第2実施形態の金管楽器用弱音器2の載置台14の構造を説明するための図である。金管楽器用弱音器2において、第1実施形態の金管楽器用弱音器1と同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図8は、本体10の雌ねじ18及び蓋体30の雄ねじ36の記載を省略している。
【0057】
第2実施形態の金管楽器用弱音器2(以下、弱音器2)の基本構成は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1(以下、弱音器1)と同じであるが、弱音器2の本体11の構成が弱音器1の本体10の構成と異なる。
【0058】
具体的には、弱音器2の本体11は、載置台14に通気孔15を有する点で弱音器1の本体10と異なる。また載置台14の上面に取付けられる緩衝材40の取付け要領が、弱音器1と異なる。弱音器2は、載置台14に通気孔15を有する点、及び緩衝材40の取付け要領を除き、他の構成・構造・寸法は弱音器1と同じである。
【0059】
本体11の載置台14に設けられた通気孔15は、トランペットから吹き込まれ本体11の内部空間Vに広がる息を蓋体30側に排出するための通気孔である。通気孔15は、本体11の側壁内周面16に沿うように載置台14に設けられている。
【0060】
第2実施形態の弱音器2では、通気孔15は、載置台14に周方向に90°ピッチで4カ所設けられている。通気孔15の個数、大きさは、適宜決定すればよいが、ベル100の直径が127mm、123mm、116mmの3種類のトランペットを用いたテストの結果、各通気孔15の長さ(円弧長さ)は、10~20mm、幅は3~5mm程度が好ましいことが分かった。
【0061】
第2実施形態の弱音器2において、緩衝材40は、載置台14の上面全体に隙間なく取り付けられる。緩衝材40の材質は、第1実施形態の弱音器1と同じである。
【0062】
以上からなる第2実施形態の金管楽器用弱音器2の使用方法は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1と同じである。第2実施形態の金管楽器用弱音器2は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1に比較し、吹き込まれ本体11の内部空間Vに広がり、吸音材20に接し吸音された息が、載置台14に設けられた通気孔15を通り緩衝材40で吸音され、蓋体30側に排出されるためより優れた弱音性、吹奏感が得られる。
【0063】
図10は、本発明の第3実施形態の金管楽器用弱音器3を縦方向に切断した切断部の端面図である。金管楽器用弱音器3において、第1実施形態の金管楽器用弱音器1と同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図10は、本体10の雌ねじ18及び蓋体30の雄ねじ36の記載を省略している。
【0064】
第3実施形態の金管楽器用弱音器3(以下、弱音器3)の基本構成は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1(以下、弱音器1)と同じであるが、弱音器3は、弱音器1と異なり遮音材60を備える。
【0065】
遮音材60は、ゴム板であり、本体10の載置台13より下方の側壁面と吸音材20との間、本体10の底面と吸音材20との間に配置されている。本実施形態では、遮音材60は、取外しできるように本体10と吸音材20とで挟み込み固定されている。本実施形態では、遮音材60にゴム板を使用するが、材質は他のものであってもよい。遮音材60は、軽量で遮音性に優れるものが好ましい。
【0066】
以上からなる第3実施形態の金管楽器用弱音器3の使用方法は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1と同じである。第3実施形態の金管楽器用弱音器3は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1に比較し、遮音材60を備える分だけ弱音性に優れる。第3実施形態の金管楽器用弱音器3の他の作用効果は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1と同じである。第3実施形態の金管楽器用弱音器3は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1に遮音材60を取付けたものといえるが、第2実施形態の金管楽器用弱音器2に同じ要領で遮音材60を取付けてもよい。
【0067】
図11は、本発明の第4実施形態の金管楽器用弱音器4を縦方向に切断した切断部の端面図である。金管楽器用弱音器4において、第1実施形態の金管楽器用弱音器1と同一構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図11は、本体65の雌ねじ及び蓋体85の雄ねじの記載を省略している。
【0068】
第4実施形態の金管楽器用弱音器4(以下、弱音器4)は、トロンボーン用の弱音器であり、基本構成は、第1実施形態の弱音器1と同じである。但し、トロンボーンは、トランペットと比較してベル100が大きく、またスライド管110を備えるため、これに起因して本体65及び蓋体85の形態が弱音器1の本体10及び蓋体30と異なる。以下、弱音器1との相違点を中心に説明する。
【0069】
トロンボーンのベル100を覆う本体65は、第1実施形態の弱音器1と同様に、底板12を有し上面が開口した円筒状の部材であり、上部内壁面に蓋体85が螺合する雌ねじを有する、ABS樹脂などの合成樹脂製である。弱音器1と同様に、本体65の軸方向の中間部にベル100が載置する載置台13を備える。
【0070】
本体65は、底板12を有する第1円筒部66と、第1円筒部66に比較して直径の大きい第2円筒部68と、第1円筒部66と第2円筒部68とをつなぐ円錐部67とを有する。本体65は、先端側に第1円筒部66が配置され、第2円筒部68の上面が開口している。第1円筒部66及び第2円筒部68は、それぞれ軸方向の径が同じである。
【0071】
載置台13は、第2円筒部68の下端に設けられており、第2円筒部68の上部内壁面には、蓋体85の雄ねじ36が螺合する雌ねじ18が設けられている。本体65のうち載置台13よりも下方の本体内壁面に吸音材20が取付けられており、これも弱音器1と同じである。
【0072】
第1円筒部66の内径D1I及び外径D1Oは、第1実施形態の本体10の内径DI及び外径DOと同じである。第2円筒部68の内径D2Iは、トロンボーンのベル100を収納可能な範囲で、できるだけ小さい方が好ましい。同様に第2円筒部68の外径D2Oもできるだけ小さい方が好ましい。本体65は、必要な剛性を確保可能な範囲で肉厚が薄く、また軽量であることが好ましい点は、第1実施形態の本体10と同じである。
【0073】
第2円筒部68をコンパクトにするには第2円筒部68の内径D2I、外径D2Oは、トロンボーンのベル100の大きさに対応させるのがよいが、市販されているトロンボーンのベル100の大きさは多様であるため、弱音器4を製品化する際は、第2円筒部68の内径D2I、外径D2Oは、一定の範囲の大きさのトロンボーンに対応できるものとしてもよい。ここでベル100の大きさは、ベル先端部の外径をいう。
【0074】
市販されている一般的なトロンボーンのベル100の大きさは、200~241mmである。この大きさのベル100を備えるトロンボーンであれば、弱音器4の第2円筒部68の大きさは、内径D2Iが243mm、外径D2Oが247mmが好ましい。
【0075】
弱音器4に設ける載置台13は、弱音器1に設ける載置台13と同様であり、リング形状を有し、中央に開口部を有する。弱音器4を装着しない状態のトロンボーンは、ベル100の前方に邪魔ものがない状態で吹奏することができるが、載置台13は、トロンボーンの吹奏時の邪魔ものになる。
【0076】
一般的なトロンボーンのベル100の大きさは、200~241mmである。ベル100が小さい場合には、
図11に示すようにベル100を、本体65の中心軸線(中心線M)に対してベル100の中心軸線(中心線m)を偏心させて本体65に取付ける。これらに対応する好ましい載置台13の開口部の直径d
Iは、実験の結果、140mm程度であった。
【0077】
載置台13の上面には緩衝材40が取付けられており、トロンボーンに弱音器4を取付ける際にベル100が接する。これは第1実施形態の弱音器1と同じである。
【0078】
本体65の長さは、特に限定されるものではないが、緩衝材40を含む載置台13の上部から底部の吸音材20までの好ましい距離、好ましい吸音材20の厚さを確保できるのであれば、軽量化の点から短い方が好ましい。
【0079】
緩衝材40を含む載置台13の上部から底部の吸音材20までの距離H、換言すればベル100を取付けた状態でベル100の先端から底部の吸音材20までの距離Hは、トロンボーン吹奏時の吹き心地、音程、コントロール性に影響を与える。距離Hが長いほど、換言すればベル100の先端をできるだけ開放した方が弱音器4を装着していない状態に近づき吹き心地が良くなる。一方で距離Hを大きくするほど弱音器4の重量、長さも増し、トロンボーンに装着したとき重くなる。
【0080】
弱音器4の代表的な大きさを示せば、第1円筒部66の内径D1I=142mm、第2円筒部68の内径D2I=243mm、載置台13から底部の吸音材20までの距離H=105mm、全長=190mm、載置台13の開口部の直径dI=140mm、ラッパ状部33の上端の開口部34の直径=140mmである。但し、弱音器4の大きさは、これに限定されるものではない。
【0081】
本体65に取り付ける吸音材20の取付け量(厚さ)、形態、材質、取付け要領は、第1実施形態の弱音器1と基本的に同じである。
【0082】
蓋体85の基本構造は、第1実施形態の弱音器1の蓋体30と基本的に同じであり、合成樹脂製の2つの蓋部材で構成される。2つの蓋部材を突き合せてなる蓋体85は、中心部にトロンボーンのベル100の外形に近似するラッパ状部33と、本体65の第2円筒部68の上部に設けられた雌ねじ18に螺合する雄ねじ36を有する円筒部35と、ラッパ状部33の先端外周部と円筒部35の先端外周部とに連結する平板部37とを有する。
【0083】
ラッパ状部33は、上部に向かって狭くなるように形成され、上端中心にはトランペットのベル100が挿通する開口部34が設けられている。ベル100の大きさが異なるトロンボーンに対応する弱音器4の場合、弱音器4の本体65の中心線Mに対してベル100の中心線mが偏心するようにベル100に弱音器4を取り付ける必要も生じるため、開口部34はこれに対応した大きさとする。
【0084】
第1実施形態の弱音器1の蓋体30は、一対の半割れ蓋31からなるが、本実施形態の蓋体85は、円弧の長さの異なる2つの蓋部材からなる。一方の蓋部材は、円弧の大きさを扇の中心角θで表せば90~120°程度であり、他方の蓋部材は、円弧の大きさを扇の中心角θで表せば240~270°程度である。
【0085】
2つの蓋部材を突き合わせてなる蓋体85の外形が、平面視において円になることは第1実施形態の蓋体30と同じである。本実施形態では、円弧の長さの異なる2つの蓋部材からなる蓋体85を示したが、蓋体85を第1実施形態の蓋体30と同じく一対の半割れ蓋で構成してもよい。
【0086】
蓋体85のラッパ状部33の裏面及び平板部37の裏面に取り付ける緩衝材42、44の取付け量(厚さ)、形態、材質、取付け要領は、第1実施形態の弱音器1の蓋体30に裏面に取り付ける緩衝材42、44と同じように考えればよい。また蓋体85においても2つの蓋部材を互いに突き合わせたとき一体化させる連結具を設けることが好ましく、この連結具は、第1実施形態の一対の半割れ蓋31を連結する連結具を使用することができる。
【0087】
弱音器4のベル100に対する取り付け要領は、第1実施形態の弱音器1と基本的に同じであるが、トロンボーンは、スライド管110を備えるのでベル100の大きさにより、弱音器4の取付け要領が異なる。トランペットの場合は、ベル100の大きさによらず弱音器1の本体10の中心軸線(中心線M)と、ベル100の中心軸線(中心線m)を一致させるようにベル100に弱音器1を取り付ける。
【0088】
トロンボーンのベル100の大きさが第2円筒部68の内径D2Iとほぼ同じ場合には、弱音器4の本体65の中心軸線(中心線M)と、ベル100の中心軸線(中心線m)を一致させるようにベル100に弱音器4を取り付ける。
【0089】
トロンボーンのベル100の大きさが第2円筒部68の内径D2Iよりも小さく、弱音器4の本体65の中心線Mと、ベル100の中心線mを一致させるようにベル100に弱音器4を取り付けると、スライド管110と第2円筒部68の外壁69との間隔ΔLが狭く、スライド管110を操作し難いときは、間隔ΔLが広くなるように弱音器4の本体65の中心線Mに対してベル100の中心線mが偏心するようにベル100に弱音器4を取り付ける。
【0090】
要すればベル100に弱音器4を取付けるとき、スライド管110と第2円筒部68の外壁69と間隔ΔLが、スライド管110を操作するに必要な間隔以上となるように取り付ける。
【0091】
弱音器4の使用方法及び作用効果は、第1実施形態の弱音器1と同じであり、弱音器4内に内部空間Vが設けられているため、弱音器4を装着しない状態のトロンボーンに近い吹き心地、音程、コントロール性が得られる。また弱音器4は、本体65内に吸音材20、載置台13及び蓋体85には緩衝材40、42、44が取付けられているので十分な消音性を備える。また弱音器4は、トロンボーンに対しぐらつくことなくしっかりと取付けることができるため、弱音器4を装着してもトロンボーンを違和感なく吹奏することができる。
【0092】
以上、弱音器4の構成を第1実施形態の弱音器1と比較する形で説明したが、弱音器4において、第2及び第3実施形態の弱音器2、3の構成を採用してもよい。例えば弱音器4において、弱音器2と同様に、載置台13に通気孔15を設けると共に、この通気孔15を塞ぐように緩衝材40を取付けてもよく、また弱音器3と同様に、遮音材60を取り付けてもよい。
【0093】
以上、第1、第2、第3及び第4実施形態の金管楽器用弱音器1、2、3、4を用いて本発明に係る金管楽器用弱音器について説明したが、本発明に係る金管楽器用弱音器は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更することができる。また上記実施形態では、金管楽器用弱音器1、2、3、4の好適な寸法を示したが、本発明に係る金管楽器用弱音器は、前記寸法に限定されるものではない。
【0094】
第1実施形態の金管楽器用弱音器1では、載置台13の上面に取付けられた緩衝材40、蓋体30のラッパ状部33の底面に取付けられた緩衝材42、蓋体30の平板部37の底面に取付けられた緩衝材44が、それぞれ開口部46、47、48を有する。一方、第2実施形態の金管楽器用弱音器2では、載置台13に取付けられた緩衝材40が、開口部を有さない。
【0095】
本発明に係る金管楽器用弱音器において、載置台、ラッパ状部及び平板部に取付けられる緩衝材は、載置台、ラッパ状部及び平板部のいずれも緩衝材が隙間(開口部)を備えていなくてもよい。あるいは載置台の緩衝材が隙間(開口部)を備え、ラッパ状部及び平板部の緩衝材が隙間(開口部)を備えていなくてもよい。載置台、ラッパ状部及び平板部に取付けられる緩衝材の隙間(開口部)の有無、その組み合わせは適宜決定される。また通気孔を備える載置台に対し開口部を有する緩衝材を取付けてもよい。
【0096】
第1、第2、第3及び第4実施形態の金管楽器用弱音器1、2、3、4における蓋体30、85は、ラッパ状部33と円筒部35と平板部37とを有するが、ラッパ状部33の先端側端部を円筒部35に連結させ、平板部37を省略してもよい。また平板部37を緩やかに湾曲させ、平板部37をラッパ状部33の一部としてもよい。さらにはラッパ状部33と平板部37とをラッパ状部としてもよい。
【0097】
第1、第2、第3及び第4実施形態の金管楽器用弱音器1、2、3、4においては、蓋体30、85の雄ねじ36に螺合する雌ねじ18が、本体10、65の上部内壁面に周方向360°にわたり設けられているが、蓋体30、85をしっかりと固定することができるのであれば、雌ねじ18は周方向に以下のように部分的に設けられていてもよい。
【0098】
例えば、本体10の上部内壁面に周方向15~75°、105~165°、195~255°、285~345°の4区間に雌ねじ18を設けてもよい。
【0099】
第1実施形態の金管楽器用弱音器1では、
図2に示すように蓋体30の円筒部35の外周面全体に雄ねじ36が設けられているが、円筒部35の外周面に部分的に雄ねじ36を設けてもよい。例えば、蓋体30の円筒部35の外周面のうち上から1/2、2/3程度まで雄ねじ36を設けてもよい。これは他の実施形態の金管楽器用弱音器においても同じである。
【0100】
第1実施形態の金管楽器用弱音器1において、
図5を用いて一対の半割れ蓋31を互いに連結する連結具51、55、57を示した。さらに連結具51、55、57を介して連結された一対の半割れ蓋31がずれないように、蓋体30又は一対の半割れ蓋31にずれ防止用の突起などずれ防止手段を設けてもよい。これにより蓋体30の本体10に対する着脱がより容易となる。これは他の実施形態の金管楽器用弱音器においても同じである。
【0101】
第1、第2、第3及び第4実施形態の金管楽器用弱音器1、2、3、4の蓋体30、85は、ラッパ状部33の上端全周に肉厚の補強部38が設けられているが、肉厚の補強部38に代えてリブを設けてもよい。リブは、例えば幅2~3mm、長さ10mm程度の大きさのリブを、リブの長手方向が本体10の中心線Mと平行になるように、ラッパ状部33の上端外周面に外周面から外側に突出するように周方向に30°ピッチで12個程度取付ければよい。
【0102】
リブは、蓋体30、85を構成する一対の半割れ蓋31、2つの蓋部材と一体的に成形すれば簡単に設けることができる。このとき半割れ蓋31又は2つの蓋部材のラッパ状部33の周方向の端部に1つのリブが配置されるようにするのがよい。これによりラッパ状部33の上端の変形をより確実に防ぐことができる。
【0103】
蓋体30、85のラッパ状部33の上端外周面に設けられた複数個のリブは、外周面から突出しているので、蓋体30、85を本体10,65にねじ込む、取り外す際の取っ手として利用することができる。
【0104】
第1、第2、第3実施形態の金管楽器用弱音器1、2、3の蓋体30は、一対の半割れ蓋31、第4実施形態の金管楽器用弱音器4の蓋体85は、2つの蓋部材からなるが、蓋体30、85を3つ又は4つ以上の蓋部材で構成してもよい。
【0105】
上記実施形態では、一種類の吸音材を使用するが、吸音材に2種類以上の吸音材を用い、これらを積層して使用してもよい。また遮音材は、本体内壁面又は吸音材の裏面に接着されていてもよい。また上記実施形態では、本体が円筒状であり、本体の先端が平坦であるが、本体の先端部が丸味を帯びたような形状であってもよい。
【0106】
図面を参照しながら好適な金管楽器用弱音器について説明したが、当業者であれば、本件明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更および修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【実施例】
【0107】
トランペットに取付け使用する弱音器を製作し、その性能を検証した。この弱音器の構成は、第1実施形態の金管楽器用弱音器1と同じである。弱音器は、本体10をABS樹脂で製作し、外径D
Oを145mm、内径D
Iを142mm、載置台13の開口部直径d
Iを100mm、緩衝材40を含む載置台13の上部から底部の吸音材20までの距離Hを50mmとした。吸音材20には、表面が山谷型(
図2参照)の厚さ20mmのスポンジ状の吸音材を使用した。緩衝材40、42、44には、多孔質の弾力性のある厚さ5mmの緩衝材を使用し、それぞれ開口部46、47、48を設けた。
【0108】
トランペットには、ベル100の直径が127mm、123mm、116mmの3種類のトランペットを使用し、トランペット吹奏時の室内の音量を小型デジタル騒音計で計測するとともに、弱音器装着時のトランペットの吹き心地、音程、コントロール性を確認した。
【0109】
弱音器未装着時のトランペット吹奏時の室内の音量は、100dB以上であり、弱音器装着時のトランペット吹奏時の室内の音量は、80dB程度であった。弱音器装着時のトランペットの吹き心地、音程、コントロール性は、弱音器未装着時と大差なかった。
【符号の説明】
【0110】
1、2、3、4 金管楽器用弱音器
10、11、65 本体
13、14 載置台
15 通気孔
18 雌ねじ
20 吸音材
30、85 蓋体
31 半割れ蓋
33 ラッパ状部
34 開口部
35 円筒部
36 雄ねじ
37 平板部
40、42、44 緩衝材
46、47、48 開口部
51、55、57 連結具
60 遮音材
66 第1円筒部
67 円錐部
68 第2円筒部
100 ベル
110 スライド管
DI 本体内径
D1I 第1円筒部の内径
D2I 第2円筒部の内径
DO 本体の外径
D1O 第1円筒部の外径
D2O 第2円筒部の外径
dI 載置台開口部直径
H 載置台から底部の吸音材までの距離
M 金管楽器用弱音器の本体の中心線
m ベルの中心線
V 内部空間
ΔL 第2円筒部外壁とスライド管との間隔
【要約】
弱音性を確保しつつも吹き心地に優れる金管楽器用弱音器を提供する。
軸方向中間部にトランペットのベル100が載置する載置台13を備える有底筒状の本体10と、前記本体10の上部に螺合し、前記載置台13に載置されたトランペットのベル100を前記載置台13とで挟み込む蓋体30と、前記本体10の前記載置台13より下方の内壁を覆う吸音材20と、を備え、前記蓋体30は、一対の半割れ蓋31からなり、前記載置台13の上面及び前記一対の半割れ蓋31の裏面に緩衝材40、42、44を備えることを特徴とする。