(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ジルコニアブランクの調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
A61K 6/818 20200101AFI20241206BHJP
A61K 6/831 20200101ALI20241206BHJP
A61K 6/17 20200101ALI20241206BHJP
A61K 6/824 20200101ALI20241206BHJP
A61K 6/807 20200101ALI20241206BHJP
A61K 6/802 20200101ALI20241206BHJP
【FI】
A61K6/818
A61K6/831
A61K6/17
A61K6/824
A61K6/807
A61K6/802
(21)【出願番号】P 2019213918
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-09-20
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ボー
(72)【発明者】
【氏名】フランク ロスブラスト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-509837(JP,A)
【文献】特表2016-523286(JP,A)
【文献】特開2016-117618(JP,A)
【文献】特開平09-098990(JP,A)
【文献】特開平06-142119(JP,A)
【文献】特開2017-087550(JP,A)
【文献】JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE,1991年,Vol.26,pp.3649-3656
【文献】九州大学大学院総合理工学報告,1990年,Vol.11(4),pp.369-377
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 6/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用修復物の調製のための、ジルコニアブランクの調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、
(a) 液体媒体中のジルコニアの懸濁物が、細孔を有する型に導入され、
(b) 該液体媒体が、該細孔を通して少なくとも部分的に除去され、そして
(c) 形成されたブランクが、該型から取り出され、
該懸濁物が、68~88重量
%のジルコニア含量を有し、
該液体媒体が、水を含有し、
該液体媒体が、有機成分を該懸濁物中の固体の量に対して5重量%以下の量で含有し、
該有機成分が、分散剤を含有し、
該ブランクが、3.3~4.0g/cm
3の密度、および/または、0.08~0.14cm
3/gの細孔容積、および/または、粒子の体積に対するD
50値として測定して0.02~0.12μmの細孔直径を有する、プロセス。
【請求項2】
前記懸濁物中の前記ジルコニアが、粒子の体積に対するd
50値として測定される場合に、50~250n
mの粒子サイズを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記懸濁物中の前記ジルコニアが、30~100nmの一次粒子サイズを有する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ジルコニアが、Y
2O
3、La
2O
3、CeO
2、MgOおよび/またはCaOで安定化され
ている、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記液体媒体が、有機成分を、前記懸濁物中の固体の量に対して3重量%以
下の量で、または該懸濁物中の固体の量に対して0.05~5重量
%の量で含有する、請求項1~
4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記液体媒体が、アミノアルコール、グリコール、カルボン酸およびカルボン酸塩から選択される少なくとも1つの化合
物を含有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記懸濁物が、0.1~1000s
-1の剪断速度および25℃の温度で測定して、5~500mPa
sの粘度を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記懸濁物が、異なる組成を有するジルコニア粉末の混合
物を含有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(a)において、異なる組成を有するジルコニア粉末の懸濁
物が、1つずつ順番に前記型に導入される、請求項1~
8のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記ブランクが、ブロック、インタフェースを有するブロック、ディスクまたは歯様プリフォームである、請求項1~
9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(c)において形成される前記ブランクが保持デバイスを有
する、請求項1~1
0のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(c)において形成される前記ブランクが乾燥さ
れる、請求項1~
11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記ブランクが、3.35~3.9g/cm
3
の密度、
および/または
0.08~0.12cm
3/
gの細孔容積、
および/または
粒子の体積に対するD
50値として測定して、0.03~0.10μ
mの細孔直径を有する、請求項1~1
2のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ブランクが予備焼成さ
れる、請求項1~1
3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記予備焼成されたブランクが、
3.4~4.0g/cm
3
の密度、
および/または
0.08~0.14cm
3/
gの細孔容積、および/または
0.15μm未
満の最大細孔直径
を有する、請求項1
4に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれか1項に記載のプロセスによって得られ得る
、歯科用修復物の調製のためのジルコニアブランク。
【請求項17】
18%未
満の線形収縮を有する、請求項
16に記載のジルコニアブランク。
【請求項18】
歯科用修復物の調製のための、請求項1
6または1
7に記載のブランクの使用。
【請求項19】
歯科用修復物の調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、請求項
16または1
7に記載のブランクが、歯科用修復物の形状を与えられ、そして該ブランクが、1200~1600
℃の焼成温度で緻密焼成される、プロセス。
【請求項20】
前記ブランクを室温から前記焼成温度まで加熱し、該焼成温度で保持し、そして最終温度まで冷却する期間が、120分以
下である、請求項
19に記載のプロセス。
【請求項21】
前記ブランクが、
(a) 第一の加熱処理に供され、
(b) 第二の加熱処理に供され、そして
(c) 冷却され、
工程(a)における該加熱処理が、工程(b)における該加熱処理より低い圧力で行われる、請求項
19または20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記歯科用修復物が、ブリッジ、インレー、アンレー、クラウン、インプラント、前装、咬合局面または支台である、請求項
19~21のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望の成形後に、非常に短時間以内に緻密焼成されて、傑出した光学特性を有する歯科用修復物を形成し得る、ジルコニアブランクの調製のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニアセラミックはしばしば、完全に解剖学的な歯科用修復物の製造のために使用される。これらは、高い臨床安全性を与え、金属を含まず、最小侵襲性調製物においてもまた使用され得、そして金属を含まない他の修復物と比較して、価格の面で非常に魅力的である。これらの修復物は通常、予備焼成されたブランクからミーリングまたは研削され、熱処理によって緻密焼成され、そして最後に、必要に応じて化粧面を与えられ、そして/または艶出しされる。
【0003】
ジルコニアブランクの調製、および歯科用修復物を形成するためのその加工のためのプロセスは、公知である。
【0004】
国際公開第2014/209626号は、予備焼成およびCAD/CAMプロセスによる機械加工の後に、1200℃未満の温度で緻密焼成されて歯科用修復物を形成し得る、ジルコニアブランクの製造のためのプロセスを記載する。これらの修復物は、半透明であるだけでなく乳白光もまた発することを特徴とする。これらのブランクの製造のために、20nm以下の平均一次粒子サイズを有するナノスケールのジルコニア粒子懸濁物が、例えば、対応する型に注ぎ込まれる。しかし、この懸濁物の調製は、労力がかかる。なぜなら、原材料として使用される市販の懸濁物は、最初に、長時間の濃縮工程を必要とするからである。注型により得られる未焼成コンパクトもまた、亀裂の形成を回避するために、非常にゆっくりと乾燥される必要があり、より厚いブランクの場合には特に、これには数日間かかる。最後に、緻密焼成手順もまた、非常に時間を浪費し、これには4時間より長時間がかかり、これによって、このブランクから研削およびミーリングされる修復物が速く完了するという患者の要望が満たされ得ない。
【0005】
国際公開第2009/061410号および国際公開第2013/181018号は、懸濁物のスリップ注型によるジルコニアブランクの調製のためのプロセスを記載する。これらのブランクは、乾燥、予備焼成、例えばCAD/CAMプロセスによる機械加工、およびその後の緻密焼成の後に、半透明の歯科用修復物を製造するといわれる。しかし、そこで使用されるプロセスおよび懸濁物の具体例は与えられておらず、緻密焼成のための正確な条件および特にその持続時間も特定されていない。
【0006】
欧州特許出願公開第826 642号は、歯科用修復物用のセラミックフレーム枠の製造のためのプロセスを記載する。このプロセスは、セラミックフィルムを形成するための、アルミナおよびジルコニア粒子の含量を含む懸濁物のスリップ注型、このフィルムで歯の石膏モデル上に層形成すること、圧力を加えてこのフィルムをこのモデルにくっつけること、500℃での加熱処理、1150℃での焼成、焼成体をガラス粉末でコーティングすること、およびさらなる加熱を包含する。
【0007】
韓国特許第101416654号は、ジルコニア廃棄物(例えば、特に歯科実験室内で蓄積したもの)を使用する、ZrO2ブロックの製造のためのプロセスを記載する。この廃棄物から、脱結合および研削の後に、水性ジルコニア懸濁物が生成され、これから、所望の形状を有する立体がスリップ注型により製造される。これらの立体は、冷間等方加工プレスされ、次いで2回焼成される。
【0008】
国際公開第2018/049331号は、CAD/CAM用途のための歯科用ジルコニアブランクを記載し、これらは、異なるZrO2粒子の使用に起因して、特性の勾配、および特に、色の勾配を示す。これらのブランクは、異なる色合いおよび異なるサイズのジルコニア粒子を含む懸濁物の混合物をスリップ注型することにより形成され得、ここでこれらの粒子の異なる沈降挙動が利用されるべきである。
【0009】
しかし、ジルコニアブランクの製造のための従来のプロセスは、労力がかかり、そしてこれらを用いて製造されるブランクは、緻密焼成のために、特に、所望の光学特性(例えば、高い半透明性)を達成するために、長時間の加工時間を必要とする。従来のブランクを緻密焼成する全プロセス(焼成温度までの加熱に始まり、室温までの冷却で終わる)は代表的に、4時間よりかなり長い時間がかかり、これは、歯科用修復物を形成するための加工のための、満足できない長い持続時間に、大いに寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2014/209626号
【文献】国際公開第2009/061410号
【文献】国際公開第2013/181018号
【文献】欧州特許出願公開第826 642号明細書
【文献】韓国特許第101416654号明細書
【文献】国際公開第2018/049331号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明の目的は、従来のプロセスの欠点を回避し、そして非常に良好な光学特性および機械特性を有する歯科用修復物を形成するために加工され得るブランクを短時間で製造することを可能にする、ジルコニアブランクの調製のためのプロセスを提供することである。
【0012】
この目的は、本発明によれば、請求項1~16に記載の、ジルコニアブランクを調製するためのプロセスによって達成される。本発明の主題はまた、請求項17~19に記載のジルコニアブランク、請求項20に記載のジルコニアブランクの使用、および請求項21~24に記載の、歯科用修復物の調製のためのプロセスである。
【0013】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
ジルコニアブランクの調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、
(a) 液体媒体中のジルコニアの懸濁物が、細孔を有する型に導入され、
(b) 該液体媒体が、該細孔を通して少なくとも部分的に除去され、そして
(c) 形成されたブランクが、該型から取り出され、
該懸濁物が、68~88重量%、特に70~86重量%、そして好ましくは75~85重量%のジルコニア含量を有する、プロセス。
(項目2)
前記懸濁物中の前記ジルコニアが、粒子の体積に対するd50値として測定される場合に、50~250nm、特に60~250nm、そして好ましくは80~250nmの粒子サイズを有する、上記項目に記載のプロセス。
(項目3)
前記懸濁物中の前記ジルコニアが、30~100nmの一次粒子サイズを有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目4)
前記ジルコニアが、Y2O3、La2O3、CeO2、MgOおよび/またはCaOで安定化されており、そして特に、前記ジルコニア含量に対して2~14mol%、好ましくは2~10mol%、そして特に好ましくは2~8mol%の、これらの酸化物で安定化されている、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目5)
前記液体媒体が水を含有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目6)
前記液体媒体が、有機成分を、前記懸濁物中の固体の量に対して5重量%以下、特に3重量%以下、好ましくは2重量%以下、そして特に好ましくは1重量%以下の量で、または該懸濁物中の固体の量に対して0.05~5重量%、特に0.1~3重量%、好ましくは0.1~2重量%、そして特に好ましくは0.1~1重量%の量で含有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目7)
前記液体媒体が、アミノアルコール、グリコール、カルボン酸およびカルボン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物、好ましくは、エタノールアミン、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸およびクエン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目8)
前記懸濁物が、0.1~1000s-1の剪断速度および25℃の温度で測定して、5~500mPas、特に5~400mPas、そして好ましくは5~300mPasの粘度を有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目9)
前記懸濁物が、異なる組成を有するジルコニア粉末の混合物、特に、異なる色および/または半透明性を有するジルコニア粉末の混合物を含有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目10)
工程(a)において、異なる組成を有するジルコニア粉末の懸濁物、特に、異なる色および/または半透明性を有するジルコニア粉末の懸濁物が、1つずつ順番に前記型に導入される、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目11)
前記ブランクが、ブロック、インタフェースを有するブロック、ディスクまたは歯様プリフォームである、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目12)
工程(c)において形成される前記ブランクが保持デバイスを有し、該保持デバイスは、特に該ブランクと一体に形成されている、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目13)
工程(c)において形成される前記ブランクが乾燥され、特に、20~60℃、好ましくは20~50℃、そして特に好ましくは20~40℃の温度で乾燥される、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目14)
前記ブランクが、3.3~4.0g/cm3、特に3.35~3.9g/cm3、そして好ましくは3.4~3.9g/cm3の密度、
および/または
0.08~0.14cm3/g、特に0.08~0.12cm3/g、そして好ましくは0.08~0.10cm3/gの細孔容積、
および/または
粒子の体積に対するD50値として測定して、0.02~0.12μm、特に0.03~0.10μm、そして好ましくは0.04~0.08μmの細孔直径
を有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目15)
前記ブランクが予備焼成され、特に、600~1100℃、好ましくは700~1050℃、そして特に好ましくは800~1000℃の範囲の温度で予備焼成される、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目16)
前記予備焼成されたブランクが、
3.4~4.0g/cm3、特に3.5~4.0g/cm3、そして好ましくは3.6~3.9g/cm3の密度、
および/または
0.08~0.14cm3/g、特に0.08~0.12cm3/g、そして好ましくは0.09~0.11cm3/gの細孔容積、
および/または
0.15μm未満、特に0.12μm未満、そして好ましくは0.08μm未満の最大細孔直径
を有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目17)
上記項目のいずれかに記載のプロセスによって得られ得るジルコニアブランク。
(項目18)
予備焼成されたジルコニアブランクであって、
3.4~4.0g/cm3、特に3.5~4.0g/cm3、そして好ましくは3.6~3.9g/cm3の密度、
および/または
0.08~0.14cm3/g、特に0.08~0.12cm3/g、そして好ましくは0.09~0.11cm3/gの細孔容積、
および/または
0.15μm未満、特に0.12μm未満、そして好ましくは0.08μm未満の最大細孔直径
を有する、ジルコニアブランク。
(項目19)
18%未満、特に17%未満、そして好ましくは16%未満の線形収縮を有する、上記項目のいずれかに記載のジルコニアブランク。
(項目20)
歯科用修復物の調製のための、上記項目のいずれかに記載のブランクの使用。
(項目21)
歯科用修復物の調製のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、上記項目のいずれかに記載のブランクが、歯科用修復物の形状を与えられ、そして該ブランクが、1200~1600℃、特に1300~1550℃、そして好ましくは1350~1500℃の焼成温度で緻密焼成される、プロセス。
(項目22)
前記ブランクを室温から前記焼成温度まで加熱し、該焼成温度で保持し、そして前記最終温度まで冷却する期間が、120分以下、特に60分以下、好ましくは40分以下、そして特に好ましくは30分以下である、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目23)
前記ブランクが、
(a) 第一の加熱処理に供され、
(b) 第二の加熱処理に供され、そして
(c) 冷却され、
工程(a)における該加熱処理が、工程(b)における該加熱処理より低い圧力で行われる、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目24)
前記歯科用修復物が、ブリッジ、インレー、アンレー、クラウン、インプラント、前装、咬合局面または支台である、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
【0014】
摘要
本発明は、ジルコニア懸濁物を多孔質の型に導入し、そして形成されたブランクを型から出すことによる、ジルコニアブランクの調製のためのプロセス、および非常に短時間の緻密焼成プロセスを使用する歯科用修復物の調製のための、形成された必要に応じて予備焼成されたブランクの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による、ジルコニアブランクの調製のためのプロセスは、
(a) 液体媒体中のジルコニアの懸濁物が、細孔を有する型に導入されること、
(b) この液体媒体がこれらの細孔を通して少なくとも部分的に除去されること、および
(c) 形成されたブランクがこの型から取り出されること
を特徴とし、ここでこの懸濁物は、68~88重量%、好ましくは70~86重量%、そして特に好ましくは75~85重量%のジルコニア含量を有することを特徴とする。
【0016】
驚くべきことに、対応する成形後に、本発明によるプロセスによって得られ得るブランクは、非常に短時間のみで緻密焼成されて歯科用修復物を形成することができ、それにもかかわらず、これらの歯科用修復物は、非常に良好な光学特性、および特に、高い半透明性を有し、従って、歯科用修復物に関する、美的観点からの高い要求にも合うことが見出された。従って、患者のために、歯科用修復物を、所望の通りに成形されて緻密焼成されたブランクから製造し、そしてこれを患者に適合させることが、歯科医と1回会うだけで、可能である。歯科用修復物のこのような迅速な提供はまた、「患者の椅子のわきでの」処置と称され、当然、患者にとって極めて魅力的である。従って、本発明によるプロセスは、非常に長い焼成時間が満足な半透明性を達成するためだけに我慢されなければならない従来のプロセスより、大いに優れている。
【0017】
懸濁物中のジルコニアは、粒子の体積に対するd50値として測定して、特に50~250nm、好ましくは60~250nm、そして特に80~250nmの粒子サイズを有する。この粒子サイズは、特に、静的レーザー散乱(SLS)プロセスを用いてISO 13320:2009に従って、例えばLA-960粒子分析機(Horiba製)を使用して、または動的光散乱(DLS)プロセスを用いてISO 22412:2017に従って、例えばNANO-flex粒子測定デバイス(Colloid Metrix製)を使用して、決定される。
【0018】
ジルコニアの一次粒子サイズは、特に、30~100nmの範囲内にあり、そして通常また、上記のような動的光散乱(DLS)プロセスを用いて決定されるか、または走査型電子顕微鏡法によって決定される。
【0019】
ジルコニアは、特に、正方晶系のジルコニア多結晶(TZP)をベースとするジルコニアである。Y2O3、La2O3、CeO2、MgOおよび/またはCaOで安定化されているジルコニア、特に、ジルコニア含量に対して、2~14mol%、好ましくは2~10mol%、そして特に好ましくは2~8mol%のこれらの酸化物で安定化されているジルコニアが、好ましい。
【0020】
本発明によるプロセスにおいて使用されるジルコニアはまた、着色され得る。所望の着色は、特に、1つまたはそれより多くの着色元素をジルコニアに添加することによって達成される。着色元素の添加はときどき、ドーピングとも称され、そして通常、ジルコニア粉末の製造中に、共沈およびその後のか焼によって行われる。適切な着色元素の例は、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Pr、Ce、Eu、Gd、Nd、Yb、Tb、ErおよびBiである。
【0021】
懸濁物中のジルコニアはまた、異なる組成を有するジルコニア粉末の混合物であってもよく、特に、異なる色および/または半透明性を、最終的に製造される歯科用修復物にもたらし得る。従って、異なる色のジルコニア粉末の混合物の補助によって、このブランクから製造される歯科用修復物のための所望の色が、簡単に、目的に合わせた様式で設定され得る。同じ様式で、製造される歯科用修復物の半透明性もまた、異なる半透明性を有するジルコニア粉末の混合物を使用することによって、目的に合わせた様式で調節され得る。製造される歯科用修復物の半透明性の程度は、特に、使用されるジルコニア粉末の酸化イットリウム含量によって制御され得る。
【0022】
この懸濁物はまた、例えば異なる色のジルコニアを含む、異なる懸濁物の混合物であり得る。
【0023】
本発明によるプロセスにおいて、ジルコニアは、液体媒体中の懸濁物として存在する。この液体媒体は、特に、水を含有する。
【0024】
この液体媒体が、ほんの少量の有機成分を有し、従って、この液体媒体が、懸濁物中の固体の量に対して、特に5重量%以下、好ましくは3重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、そして特に好ましくは1重量%以下の量の有機成分を含有することが、さらに好ましい。
【0025】
さらに好ましい実施形態において、この液体媒体は、有機成分を、この懸濁物中の固体の量に対して、0.05~5重量%、特に0.1~3重量%、特に好ましくは0.1~2重量%、そして特に好ましくは0.1~1重量%の量で含有する。
【0026】
具体的には、分散剤、結合剤、pH値を調節するための薬剤、安定剤および/または消泡剤が、有機成分として考慮される。
【0027】
分散剤は、懸濁粒子が凝集してより大きい粒子を形成することを防ぐように働く。液体媒体中の分散剤の量は、懸濁物中の固体の量に対して、特に0.01~5重量%、好ましくは0.1~2重量%、そして特に好ましくは0.1~1重量である。
【0028】
適切な分散剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、生体高分子(例えば、デンプン、アルギネート、ゼラチン)、セルロースエーテル(例えばカルボキシメチルセルロース)、ビニルスルホン酸ならびにビニルホスホン酸などの、水溶性ポリマーである。
【0029】
好ましい分散剤は、アミノアルコール(例えばエタノールアミン)、グリコール(例えば、エチレングリコールおよびジプロピレングリコール)、カルボン酸(例えば、マレイン酸およびクエン酸)、ならびにカルボン酸塩、ならびにこれらの分散剤の混合物である。
【0030】
この液体媒体が、アミノアルコール、グリコール、カルボン酸およびカルボン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有することが、さらに好ましい。この液体媒体は、特に好ましくは、エタノールアミン、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸およびクエン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有する。
【0031】
結合剤は、工程(c)の後に存在するブランク中の粒子の凝着を促進する。液体媒体中の結合剤の量は、懸濁物中の固体の量に対して、特に0.01~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、そして特に好ましくは0.01~2重量%である。
【0032】
適切な結合剤の例は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルブチラール、アクリレートポリマー、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンである。
【0033】
好ましい結合剤は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリル酸エステルとアクリル酸とのコポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、ポリエチレングリコール、およびエチレングリコールとプロピレングリコールとの固体コポリマーである。
【0034】
本発明によるプロセスによって得られるブランクのさらなる利点は、少量の結合剤にもかかわらず、事前の予備焼成なしでさえも、所望の歯科用修復物を形成するために機械加工によって(例えば、研削およびミーリングによって)加工されることが可能なほどに十分な強度を有することである。
【0035】
酸および塩基(例えば、カルボン酸(例えば、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸および2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸)、無機酸(例えば、塩酸および硝酸)、ならびに水酸化アンモニウムおよび水酸化テトラメチルアンモニウム)が、pH値を調節するための薬剤として、および安定剤として、特に考慮される。液体媒体が水酸化テトラメチルアンモニウムを含有することが好ましい。
【0036】
消泡剤は、懸濁物中の気泡を防止するように働く。これは代表的に、液体媒体中で、懸濁物中の固体の量に対して、0.001~1重量%、好ましくは0.001~0.5重量%、そして特に好ましくは0.001~0.1重量%の量で使用される。適切な消泡剤の例は、パラフィン、シリコーン油、アルキルポリシロキサン、高級アルコール、プロピレングリコール、エチレンオキシド-プロピレンオキシド付加体、および特に、アルキルポリアルキレングリコールエーテルである。
【0037】
液体媒体の成分が複数の機能を果たすことが可能であり、これらは例えば、分散剤と結合剤との両方、または分散剤と、pH値を調節するための薬剤および安定剤との両方である。
【0038】
有機成分の割合が小さいので、これらもまた短時間で、燃焼によりブランクから除去され得る。この手順は通常、脱結合とも称される。
【0039】
懸濁物が、5mPas~500mPas、好ましくは5mPas~400mPas、そして特に好ましくは5~300mPasの粘度を有することがさらに好ましい。この粘度は、直径50mmおよび角度1°の円錐-プレート系を備える回転粘度計(MCR302 Modular Compact Rheometer,Anton Paar GmbH製)を用いて、0.1~1000s-1の範囲の剪断速度および25℃の温度で測定された。
【0040】
懸濁物を製造するために、ジルコニアは代表的に、粉末形態で、液体媒体と徹底的に混合される。例えば異なる色のジルコニアの混合物もまた、ここで使用され得る。この混合中に、存在するあらゆる凝集物もまた通常は破壊され、そして使用されるジルコニアの研削もまた、所望の粒子サイズを生じるために行われ得る。従って、ジルコニアと液体媒体との混合は、有利には、例えば、撹拌機ビーズミル内で行われ得る。
【0041】
次いで、この懸濁物は、本発明によるプロセスの工程(a)において、細孔を有する型に導入される。この導入は通常、注入により行われる。これらの細孔は、工程(b)において、液体媒体が懸濁物から少なくとも部分的に除去され得るように通る開口部であり、その結果、ジルコニア粒子がこの型内に堆積し得、そして最終的に、ブランクを形成し得る。従って、この型の幾何学的形状は、所望のブランクの幾何学的形状に対応する。従って、この型は、例えば、このブランクと一体に形成される保持デバイス(例えば保持ピン)をすでに有し得、これによって、その後の取り付け(例えば接着による)が不要になる。
【0042】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態において、工程(c)において形成されるブランクは、従って、保持デバイスを有する。
【0043】
代表的に、実質的に全ての液体媒体が、これらの細孔を通して除去される。しかし、これらの細孔を通して除去されない残留液体が、この型から注ぎ出されるかまたは吸引されることもまた可能である。これは通常、ジルコニア粒子の十分に厚い層がすでに堆積している場合に当てはまる。
【0044】
異なる色および/または半透明性を有する領域を有するブランクを製造するために、異なる組成を有するジルコニア粉末の懸濁物が、1つずつ順番に型に導入され得、そしてそれぞれについて所望の厚さを有する異なるジルコニア粒子の層が堆積され得る。
【0045】
従って、本発明によるプロセスの好ましい実施形態において、工程(a)において、異なる組成、ならびに特に、異なる色および/または半透明性を有するジルコニア粉末の懸濁物が、1つずつ順番に型に導入される。ここで、異なる組成を有する懸濁物が混ざり合わないような措置が取られる。これは例えば、1つの懸濁物から堆積される層がまず乾燥され、従って、異なる組成を有するさらなる懸濁物がこの型に導入される前に固化するようにして、達成され得る。
【0046】
この型は、例えば、スリップ注型または圧迫注型プロセスのために通常使用される型のうちの1つであり得る。これらは特に、石膏製の壁を有する型であり、この壁を通して、石膏の細孔の毛管作用に起因して、懸濁物から水が除去され得る。しかし、すでに細孔を有するか、またはフィルタ要素(例えば、膜フィルタ、ペーパーフィルタおよび半融フィルタ)を備えることにより細孔が提供されている、プラスチック、セラミックまたは金属から製造される型もまた、使用され得る。
【0047】
使用される型は、この型から形成されたブランクの簡単な除去を容易にする目的で、特に、数個の部品からなる。特に好ましい実施形態において、この型は接続部品を有し、これらの接続部品を通して、圧力が、例えば圧縮空気によって、導入された懸濁物に付与され得る、かつ/または負圧が細孔に付与され得る。両方の措置が、液体媒体を型から除去することを加速し、従って、このプロセスを短縮する。その補助によって、ジルコニアブランクの非常に迅速かつ経済的な製造が可能であり、特に産業規模で製造する場合に、特に有利である。
【0048】
本発明によるプロセスにより形成されるブランクは、任意の所望の形状を有し得る。ここで特に、通常の歯科用研削およびミーリングデバイスでのこのブランクの簡単な機械加工を可能にする形状が選択される。このブランクは、好ましくは、ブロック、インタフェース(例えば、インプラントインタフェースとしての穴など)を有するブロック、ディスクまたは歯様プリフォームとして提供される。ここで、このブランクがまた、このブランクと一体に形成される保持デバイス(例えば、保持ピン)を有することが好ましい。これによって、以前には通常であった、接着により保持具を後に取り付けることは、不要になる。この保持デバイスは、このブランクを機械加工デバイス(例えば、CAM機)に固定するために働く。
【0049】
工程(c)における、型からの取り出しの後に、形成されたブランクは、通常、乾燥される。この乾燥は、特に20~60℃、好ましくは20~50℃、そして特に好ましくは20~40℃の温度で行われる。この乾燥の持続時間は、特に0.1~24時間、好ましくは0.5~12時間、そして特に好ましくは1~6時間である。この乾燥は、例えば、気候制御キャビネット内で、またはマイクロ波乾燥によって、行われ得る。
【0050】
工程(c)の完了およびその後の必要に応じた乾燥後に得られるブランクは、いわゆる未焼成状態で存在し、従って、未焼成コンパクトとも称される。驚くべきことに、この状態で、このブランクは、非常に高い密度を有し、このブランクは、3.3~4.0g/cm3、特に3.35~3.9g/cm3、そして好ましくは3.4~3.9g/cm3の密度を有することが好ましい。この密度は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定された。
【0051】
さらに好ましい実施形態において、この未焼成状態で存在するブランクは、0.08~0.14cm3/g、特に0.08~0.12cm3/g、そして特に好ましくは0.08~0.10cm3/gの細孔容積を有する。この細孔容積は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定された。
【0052】
別の好ましい実施形態において、この未焼成状態で存在するブランクは、粒子の体積に対するD50値として測定して、0.02~0,12μm、特に0.03~0.10μm、そして特に好ましくは0.04~0.08μmの細孔直径を有する。この細孔直径は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定された。
【0053】
このブランクは、この未焼成状態ですでに、必要に応じて事前の有機成分の除去後に、所望の歯科用修復物の形状を与える目的で、機械加工が可能である。
【0054】
有機成分の除去は、脱結合とも称され、これは特に、約600℃の温度での加熱処理によって行われる。0.125K/分~10K/分、好ましくは0.250K/分~5K/分、そして特に好ましくは0.5K/分~2K/分の加熱速度が、室温から開始して約600℃まで、通常は選択される。
【0055】
しかし、この未焼成状態のブランクが予備焼成もされることが好ましい。この予備焼成によって、このブランクの強度および硬度が増大する。この予備焼成は、特に600~1100℃、好ましくは700~1050℃、そして特に好ましくは800~1000℃の範囲の温度で、特に5分間~24時間、好ましくは10分間~12時間、そして特に好ましくは30分間~6時間の持続時間にわたって、行われる。
【0056】
予備焼成されたブランクは、3.4~4.0g/cm3、特に3.5~4.0g/cm3、そして特に好ましくは3.6~3.9g/cm3の密度を有することが好ましい。
【0057】
さらに好ましい実施形態によれば、この予備焼成されたブランクは、0.08~0.14cm3/g、特に0.08~0.12cm3/g、そして好ましくは0.09~0.11cm3/gの細孔容積を有する。この細孔容積は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定された。
【0058】
さらに好ましい実施形態において、この予備焼成されたブランクは、0.15μm未満、好ましくは0.12μm未満、そして特に好ましくは0.08μm未満の最大細孔直径を有する。この最大細孔直径は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定された。
【0059】
本発明はまた、本発明によるプロセスにより得られ得るジルコニアブランクに関する。このブランクは、明らかに、従来のブランクと比較して、特殊な構造を有する。なぜなら、所望の成形後に、非常に良好な光学特性(例えば、半透明性)を有する歯科用修復物を形成するために、非常に短時間以内で緻密焼成され得るからである。
【0060】
本発明は、予備成形され、そして3.4~4.0g/cm3、特に3.5~4.0g/cm3、そして好ましくは3.6~3.9g/cm3の密度、および/または0.08~0.14cm3/g、特に0.08~0.12cm3/g、そして好ましくは0.09~0.11cm3/gの細孔容積、および/または0.15μm未満、特に0.12μm未満、そして好ましくは0.08μm未満の最大細孔直径を有する、ジルコニアブランクにさらに関する。
【0061】
本発明によるブランクは、有利なことに、これらから形成される歯科用修復物を製造するために使用され得る。所望の歯科用修復物を形成するための成形後に、これらは、傑出した光学特性および高い強度を有する歯科用修復物を形成するために、非常に短時間のみ緻密焼成され得、これによって、患者に歯科用修復物を非常に迅速に提供することが可能になる。
【0062】
本発明によるブランクは、緻密焼成中にほんのわずかな線形収縮を受けることをさらに特徴とする。精密に所望の寸法を有する歯科用修復物の調製は、これによってより容易にされ、そしてその適合の正確さが改善される。
【0063】
本発明によるブランクは、18%未満、特に17%未満、そして特に好ましくは16%未満の線形収縮を有することが好ましい。線形収縮Sは、以下の式から得られ、そしてその決定のために、Netzsch DIL402 Supreme膨張計によって、20℃~1550℃の温度範囲で、2K/分の加熱速度で、長さ=25mm±1mm、幅=5mm±0.5mmおよび高さ=4mm±0.5mmの寸法を有する試験片に対して、測定を行った。
【数1】
線形収縮Sから、体積収縮S
Volが、以下の式に従って計算され得る:
【数2】
【0064】
従って、本発明は、歯科用修復物の調製のための、本発明によるブランクの使用にもまた関する。この使用の好ましい実施形態は、歯科用修復物の調製のための本発明によるプロセスの説明に関連して、以下で説明される。
【0065】
本発明による、歯科用修復物の調製のためのプロセスは、本発明によるブランクが歯科用修復物の形状を与えられ、そしてこのブランクが、1200~1600℃、特に1300~1550℃、そして好ましくは1350~1500℃の焼成温度で緻密焼成されることを特徴とする。
【0066】
このブランクの成形は、特に機械加工によって、例えば、歯科分野において通常であるような、コンピュータ制御研削およびミーリングデバイスによって、行われる。
【0067】
この形成後に、最終的に得られる歯科用修復物で所望の色を達成するために、着色溶液もまた、必要に応じて、このブランクに塗布され得る。
【0068】
その後の緻密焼成は、成形されたブランクを、特に5.9g/cm3より高い、好ましくは6.00g/cm3より高い、そして特に好ましくは6.02g/cm3より高い密度を有する歯科用修復物に形成する。
【0069】
この高い密度に関してまた、得られる歯科用修復物は、傑出した機械特性を有する。
【0070】
室温からの加熱、最大焼成温度での保持、および冷却を伴う緻密焼成プロセスの全体が、非常に短い時間のみを占め、そしてその完了後に、それにもかかわらず、求められる高い半透明性および非常に良好な機械特性を有する歯科用修復物が得られることが、特に有利である。従って、本発明によるプロセスは、匹敵する半透明性を有する歯科用修復物を焼成により製造するために非常に長い時間を必要とする従来のプロセスよりも優れている。従って、本発明によるプロセスは、非常に短いプロセス持続時間という利点と、製造される歯科用修復物の非常に良好な光学特性および機械特性という利点を、組み合わせる。
【0071】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態において、成形ブランクを室温から緻密焼成のための焼成温度まで加熱し、この焼成温度で保持し、そして最終温度まで冷却する期間は、120分以下、特に60分以下、好ましくは40分以下、そして特に好ましくは30分以下である。「最終温度」とは、ここで、サンプルが手で持てる温度を意味し、特に15~80℃、好ましくは25~60℃、そして特に好ましくは約50℃である。「室温」とは、特に15~30℃、好ましくは20~25℃、そして特に好ましくは約25℃の温度を意味する。
【0072】
この加熱速度は、特に50K/分より大きく、好ましくは100K/分より大きく、そして特に好ましくは200K/分より大きい。この保持時間は、特に30分未満、好ましくは20分未満、そして特に好ましくは10分未満である。焼成温度から最終温度までの冷却速度は、特に50K/分より大きく、好ましくは100K/分より大きく、そして特に好ましくは150K/分より大きい。
【0073】
本発明による成形ブランクが緻密焼成中に受ける低い線形収縮によって、精密に所望の寸法を有する歯科用修復物の調製がより容易にされ、そしてその適合の正確さが改善される。
【0074】
好ましい実施形態において、このブランクは、
(a) 第一の加熱処理に供され、
(b) 第二の加熱処理に供され、そして
(c) 冷却され、
ここで工程(a)における加熱処理は、工程(b)における加熱処理より低い圧力で行われる。工程(a)において、このブランクは、好ましくは1100~1600℃の範囲、特に1200~1500℃の範囲、好ましくは1250~1450℃の範囲、そしてさらに好ましくは1300~1400℃の範囲、そして最も好ましくは約1350℃の温度まで加熱される。工程(a)における加熱処理は、200mbar未満、好ましくは100mbar未満、そして特に好ましくは50mbar未満の圧力、そして特に、0.1~200mbar、好ましくは1~150mbar、そして特に好ましくは50~100mbarの範囲の圧力で行われることが、さらに好ましい。工程(b)において、このブランクは好ましくは、(b1)必要に応じてさらに加熱され、そして(b2)好ましくは一定の、1100~1700℃の範囲、特に1300~1600℃の範囲、そして好ましくは1350~1550℃の範囲の温度、そして特に好ましくは約1500℃の温度で、保持および焼成される。工程(b)における加熱処理はまた、500mbarより高い圧力、そして特に周囲圧力で行われ、特に、酸素含有雰囲気(例えば、空気、酸素富化空気または酸素)中で行われることが好ましい。酸素含有雰囲気、好ましくは、空気、酸素富化空気または酸素が、工程(b)中の加熱のために使用される加熱チャンバを通って、不連続にかまたは好ましくは連続的に、特に0.1~50l/分、好ましくは1~20l/分、そして特に好ましくは4~8l/分の流量で流れることが、特に好ましい。特に好ましい実施形態において、工程(a)において、このブランクは、このブランクが工程(b)において保持される温度または温度範囲よりも、0~500K、特に10~250K、好ましくは50~200K、そして特に好ましくは100~150K低い温度まで、加熱される。
【0075】
緻密焼成後に得られる歯科用修復物はまた、必要に応じて、化粧面を与えられ得、研磨され得、そして/または艶出しされ得る。
【0076】
本発明によるプロセスを使用して製造される歯科用修復物は、特に、ブリッジ、インレー、アンレー、クラウン、前装、インプラント、咬合局面または支台である。
【0077】
本発明は、実施例を参照しながら以下でより詳細に説明される。
【実施例】
【0078】
実施例1 76重量%のジルコニアを含む懸濁物
3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを、194.4gの蒸留水に、この順番に溶解させた。この溶液は、10~10.5のpH値を有した。
【0079】
この溶液を、MicroCer撹拌機ビーズミル(Netzsch製)の貯蔵タンクに入れた。研削チャンバおよびその回転子は、ジルコニア製であった。この研削チャンバを、60mlの、0.2~0.3mmの直径を有するジルコニア研削ビーズ(Tosoh製)で満たした。1500rpmの回転子の回転速度で、この溶液を、研削チャンバに通して、蠕動ポンプ(チューブ内径8mm)を使用して連続的に汲み上げた。次いで、3mol%のY2O3で部分的に安定化された630gのジルコニア粉末(TZ-PX-245、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:40nm)をこの貯蔵タンク内の溶液に、連続的に撹拌しながら添加した。一旦、このジルコニア粉末の添加が完了したら、得られた混合物を研削チャンバに通して汲み上げ、そして約40l/hの速度で45分間にわたり連続的に、この貯蔵タンク内に戻した。この方法で調製した懸濁物を、プラスチックの測容ビーカー内に移し、そして捕捉された気泡を除去するために、磁器撹拌機によって非常にゆっくりと撹拌した。さらに、1滴のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(Contraspum,Zschimmer & Schwarz製)を消泡剤として添加した。
【0080】
得られた懸濁物は、76重量%のジルコニア含量を有した。この懸濁物の粘度ηは、7.25mPasであった(500s-1の剪断速度および25℃の温度で)。
【0081】
(A)試験片の調製
試験片を調製し、これらに対して、様々な特性を決定した。これらの調製のために、得られた懸濁物を、プラスチック環が嵌められた多孔質石膏製のプレートからなるディスク形状の型に注ぎ込んだ。この多孔質石膏の毛管作用によって、水がこの懸濁物から除去され、そしてモノリシック未焼成体が形成された。この未焼成体を型内に残し、そして空気中で24時間乾燥させた。この乾燥の完了後、試験片は型から外れた。
それぞれの試験片は、以下の特性を有した:
- 線形収縮: 15.43%(試験片:長さ=25mm±1mm、幅=5mm±0.5mmおよび高さ=4mm±0.5mm)
- 密度: 3.678g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)
【0082】
(B) 「患者の椅子のわきでの」用途のためのブロックの調製
圧迫注型用の型を、「患者の椅子のわきでの」用途のためのブロックの調製のために使用した。この圧迫注型用の型は、圧縮空気(正圧0.1~100bar)用の接続部品を有する上部品、ブロックの所望の形状に対応する中間部品、ならびに膜フィルタ、ペーパーフィルタおよび半融フィルタを備え、その基部に減圧を付与するための接続部品を有する底部品からなった。この膜フィルタは、200nmの細孔サイズを有した。
【0083】
懸濁物をこの圧迫注型用の型に注ぎ込んだ。次いで、6barの圧力を有する圧縮空気を上部品を介して供給し、そして約0.05barの減圧を底部品を介して付与した。4時間後、圧縮空気の添加および減圧の付与を終了した。この圧迫注型用の型を分解し、そして得られたブロックを空気中で20℃で24時間乾燥させた。
【0084】
この方法で製造したブロックを、950℃で2時間予備焼成した。その加熱速度は0.250K/分であった。次いで、これらのブロックを24時間以内に室温まで冷却した。これらのブロックの硬度を、Vickers法によって、ISO 14705:2008およびEN ISO 6507-1:2005に従って、2.5kgの負荷で測定した。その硬度は992.95N/mm2であった。
【0085】
染色のためにブラシによって着色液が塗布された前歯用のクラウンを、予備焼成したブロックから、CAD/CAM機(Zenotec(登録商標)Select、Ivoclar Vivadent AG製)によって乾式ミーリングした。着色後、このクラウンを乾燥させ、そして焼成炉(Programat CS4,プログラム1,Ivoclar Vivadent AG製)内で緻密焼成した。この焼成には約35分間しかかからなかった。その温度スケジュールを下に示す。
約25℃から900℃まで (6.7分)
900℃から1460℃まで (11.2分)
1460℃から1460℃まで (5.0分)
1460℃から1200℃まで (3.7分)
1200℃から約1000~950℃まで (45~50秒)(炉を開く)
950℃~1000℃から約50℃まで (7分)
【0086】
実施例2 83重量%のジルコニアを含む懸濁物
83重量%のジルコニアを含む懸濁物の調製、ならびに試験片(A)および「臨床」用途のためのブロック(B)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、4.05gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに5mol%のY2O3で部分的に安定化された810gのジルコニア粉末(TZ-PX-430、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加し、そして予備焼成を900℃で2時間実施し、その加熱速度は同様に0.250K/分であったこと。
【0087】
この懸濁物の粘度ηは7.0mPasであった(1000s-1の剪断速度および25℃の温度で)。
(A)に従って得られた代表的な試験片は、以下の特性を有した:
- 線形収縮: 14.43%(試験片:長さ=25mm±1mm、幅=5mm±0.5mmおよび高さ=4mm±0.5mm)
- 密度: 3.791g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)
【0088】
(B)に従って得られた予備焼成ブロックの硬度を、Vickers法によって、ISO 14705:2008およびEN ISO 6507-1:2005に従って、2.5kgの負荷で測定した。その硬度は496.91N/mm2であった。
【0089】
染色のためにブラシによって着色液が塗布された前歯用のクラウンを、予備焼成したブロックから、CAD/CAM機(Zenotec(登録商標)Select、Ivoclar Vivadent AG製)によって乾式ミーリングした。着色後、このクラウンを乾燥させ、そして焼成炉(Programat CS4,プログラム1,Ivoclar Vivadent AG製)内で緻密焼成した。この焼成には34分間しかかからなかった。その温度スケジュールを下に示す。
約25℃から900℃まで (6.7分)
900℃から1460℃まで (11.2分)
1460℃から1460℃まで (5.0分)
1460℃から1200℃まで (3.7分)
1200℃から約1000~950℃まで (45~50秒)(炉を開く)
950℃~1000℃から約50℃まで (7分)
【0090】
実施例3 80重量%のジルコニアを含む懸濁物
80重量%のジルコニアを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、179.5gの蒸留水、3.6gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに4.25mol%のY2O3で部分的に安定化された720gのジルコニア粉末(TZ-PX-551、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加したこと。
【0091】
この懸濁物の粘度ηは14.6mPasであった(500s-1の剪断速度および25℃の温度で)。
(A)に従って得られた試験片は、以下の特性を有した:
- 線形収縮: 14.59%
- 密度: 3.780g/cm3。
【0092】
(A)に従って得られた試験片を、1000℃で2時間予備焼成した。その加熱速度は0.250K/分であった。次いで、これらの試験片を24時間以内に室温まで冷却した。これらの予備焼成した試験片は、13.88%の線形収縮を有した。
【0093】
実施例4 76重量%のジルコニアを含む懸濁物
76重量%のジルコニアを含む懸濁物の調製、および「患者の椅子のわきでの」用途のためのブロック(B)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:3mol%のY2O3で部分的に安定化された630gのジルコニア粉末(AuerDent 3Y-5A A2、Treibacher Industrie AG製,一次粒子サイズ:40nm)を溶液に添加したこと、および予備焼成を820℃で2時間行い、その加熱速度は同様に0.250K/分であったこと。
【0094】
(B)に従って得られた予備焼成ブロックの硬度を、Vickers法によって、ISO 14705:2008およびEN ISO 6507-1:2005に従って、2.5kgの負荷で測定した。その硬度は440.38N/mm2であった。
【0095】
さらに、ディスクを予備焼成したブロックから切り出し、そして焼成炉(Programat CS4、Ivoclar Vivadent AG製)内でほんの34分間以内、下記の温度スケジュールに従って緻密焼成した:
約25℃から900℃まで (6.7分)
900℃から1460℃まで (11.2分)
1460℃から1460℃まで (5.0分)
1460℃から1200℃まで (3.7分)
1200℃から約1000~950℃まで (45~50秒)(炉を開く)
950℃~1000℃から約50℃まで (7分)
【0096】
緻密焼成したディスクは、89.16の明度比CRを有した。この明度比は、BS 5612(英国規格)に従って、分光光度計(Minolta CM-3700d)を使用して決定した。これは、材料の不透明性の尺度であり、100の明度比は、完全に不透明な材料に対応し、そして0の明度比は、完全に半透明の材料に対応する。
【0097】
89.16という測定値は、本発明により製造されたサンプルの高い半透明性を示す。従来の方法で製造されたブランクの場合には、この高い半透明性は、2時間より長い、非常に長い焼成時間を用いてのみ達成され得る。
【0098】
実施例5 83重量%のジルコニアを含む懸濁物
83重量%のジルコニアを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに3mol%のY2O3で部分的に安定化された810gのジルコニア粉末(TZ-PX-245 TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:40nm)を添加したこと。
(A)に従って得られた試験片を500℃で脱結合したところ、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.11391cm3/g
- 細孔半径: 0.0190μm
- 密度: 3.5617g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)
【0099】
次いで、脱結合した試験片を1050℃で2時間予備焼成した。このように得られた予備焼成されたブランクは、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.09931cm3/g
- 細孔半径: 0.0242μm
- 密度: 3.8866g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)
【0100】
脱結合した試験片を同様に、1000℃で2時間予備焼成した。得られた予備焼成されたブランクを、焼成炉(Cerec Speedfire、Dentsply Sirona製)内で、ほんの20分間以内で、下記の温度スケジュールに従って緻密焼成した:
約25℃から500℃まで (88秒)
500℃から1580℃まで (190秒)
1580℃から1580℃まで (360秒)
1580℃から950℃まで (120秒)
950℃から約50℃まで (420秒)
【0101】
実施例6 83重量%のジルコニアを含む懸濁物+減圧
83重量%のジルコニアを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、4.05gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに3mol%のY2O3で部分的に安定化された810gのジルコニア粉末(TZ-PX-245、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:40nm)を添加したこと。
【0102】
(A)に従って得られた試験片を脱結合し、そして予備焼成した。ここで、これらの試験片を1000℃の温度まで、0.25K/分の速度で加熱し、そしてこの温度で2時間保持した。
【0103】
得られた予備焼成されたブランクを、MoSi2加熱素子を備える焼成炉内で、最大でほんの36分間以内、以下の温度スケジュールに従って緻密焼成した。ここで最初の2つの工程を、50~100mbarの範囲の圧力の減圧下で実施し、そして空気を供給した後に、さらなる工程を、周囲雰囲気下で、空気で連続的にフラッシュしながら実施した。
約25℃から950℃まで (7.1分) 減圧下
950℃から1450℃まで (10分) 減圧下
1450℃から1500℃まで (1分) 周囲雰囲気で空気の連続流
1500℃から1500℃まで (5分) 周囲雰囲気で空気の連続流
1500℃から1100℃まで (2.9分) 周囲雰囲気
1100℃から約50℃まで (5~10分) 周囲雰囲気
【0104】
光学特性を調査するために、これらの緻密焼成された試験片を、面に対して平行に研削して(20μmのダイヤモンドディスク)、2mm±0.02mmの厚さおよび18mm±0.5mmの直径にし、次いで研磨した(SiC紙、グリット1000)。
【0105】
緻密焼成されたディスクは、78.95%のみの明度比CRを有した。従って、これらのディスクは、非常に高い半透明性、ならびに緻密焼成中の減圧の使用およびその後の雰囲気交換の好ましい影響を示した。
【0106】
実施例7 83重量%のジルコニアを含む懸濁物
83重量%のジルコニアを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および2.0gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに4.25mol%のY2O3で部分的に安定化された810gのジルコニア粉末(TZ-PX-551、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加したこと。
(A)に従って得られた試験片を500℃で脱結合したところ、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.11087cm3/g
- 細孔半径: 0.0248μm
- 密度: 3.5474g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)
【0107】
次いで、脱結合した試験片を1050℃で2時間予備焼成した。このように得られた予備焼成されたブランクは、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.10282cm3/g
- 細孔半径: 0.0315μm
- 密度: 3.6838g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)
【0108】
実施例8 83重量%のジルコニアを含む懸濁物
83重量%のジルコニアを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および2.0gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに5.0mol%のY2O3で部分的に安定化された810gのジルコニア粉末(TZ-PX-430、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加したこと。
(A)に従って得られた試験片を500℃で脱結合したところ、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.10559cm3/g
- 細孔半径: 0.0253μm
- 密度: 3.7831g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)
【0109】
次いで、脱結合した試験片を1050℃で2時間予備焼成した。このように得られた予備焼成されたブランクは、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.10311cm3/g
- 平均細孔半径: 0.0318μm
- 密度: 3.9083g/cm3(試験片:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)。