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特許7599275非破壊検査を用いる動的な位置データの補正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】非破壊検査を用いる動的な位置データの補正
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
G01N29/265
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019220918
(22)【出願日】2019-12-06
(65)【公開番号】P2020112547
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】16/229,342
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ローレンス ハフェンリヒター
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー イー.ジョージソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ ジェイ.トロイ
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0202689(US,A1)
【文献】特開2009-204327(JP,A)
【文献】特開2007-263586(JP,A)
【文献】特開平03-221862(JP,A)
【文献】特開平03-054456(JP,A)
【文献】米国特許第09221506(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01N 23/00 - G01N 23/2276
G01N 22/00 - G01N 22/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の構造体の表面について実行されるプロセスの最中に非破壊検査(NDI)スキャンデータを生成するように構成されたNDIスキャナと、
前記NDIスキャナが前記航空機の構造体の前記表面上を移動する間に前記NDIスキャナの位置を測定するように構成された位置検出器と、
前記航空機の構造体における1以上の表面下の造作に関する予め定義された位置データを格納するとともに、前記位置検出器からの前記NDIスキャナの測定位置を受け取るコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記NDIスキャンデータに基づいて前記航空機の構造体内の前記表面下の造作を検出し、前記表面下の造作についての前記予め定義された位置データにアクセスして前記位置検出器からの前記NDIスキャナの前記測定位置と比較し、前記表面下の造作についての前記予め定義された位置データに基づいて、前記航空機の構造体の前記表面上の前記NDIスキャナの前記測定位置を補正するように構成されており
前記表面下の造作は、リブ、縦通材、桁、ブラケット、ファスナ、孔、及び、切り欠きからなる群より選択される、検査装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記表面下の造作の境界に対応する前記NDIスキャンデータ内のエッジ情報を特定することにより、前記航空機の構造体内の前記表面下の造作を検出するように構成されている、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記プロセスは、異常検出プロセスを含む、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記NDIスキャナは、超音波スキャナを備える、請求項1~のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記測定された位置の前記補正に基づいて前記構造体の前記表面上の前記NDIスキャナの位置を変更するように構成された移動システムを更に備える、請求項1~のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記移動システムは、ロボットアームを備え、前記NDIスキャナは、前記ロボットアームに取り付けられている、請求項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記移動システムは、ホイール、無限軌道、又は脚、或いはホイール、無限軌道、及び脚の組み合わせを備える、請求項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記表面下の造作についての前記予め定義された位置データは、前記表面下の造作の境界を示しており、
前記コントローラは、前記NDIスキャンデータについてエッジ検出プロセスを実行することにより、前記航空機の構造体内の前記表面下の造作を検出するように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
航空機の構造体の表面について実行されるプロセスの最中に非破壊検査(NDI)スキャナによって生成されたNDIスキャンデータに基づいて、前記航空機の構造体内の表面下の造作を検出するとともに、前記NDIスキャナの位置を測定するステップと、
前記表面下の造作についての予め定義された位置データにアクセスして前記NDIスキャナの測定位置と比較するステップと、
前記表面下の造作についての前記予め定義された位置データに基づいて、前記表面上の前記NDIスキャナの前記測定位置を補正するステップと、を含み、
前記表面下の造作は、リブ、縦通材、桁、ブラケット、ファスナ、孔、及び、切り欠きからなる群より選択される、方法。
【請求項10】
前記表面下の造作を検出するステップは、
前記NDIスキャンデータについてエッジ検出プロセスを実行するステップ
を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記測定された位置の前記補正に基づいて前記航空機の構造体の前記表面上の前記NDIスキャナの位置を変更するステップ
を更に含む、請求項又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面下の造作についての前記予め定義された位置データは、前記表面下の造作の境界を示しており、
前記表面下の造作を検出するステップは、
前記NDIスキャンデータについてエッジ検出プロセスを実行するステップ
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プロセスは、異常検出プロセスを含む、請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
検査車両であって、
航空機の構造体の表面について実行されるプロセスの最中に非破壊検査(NDI)スキャンデータを生成するように構成されたNDIスキャナと、
前記航空機の構造体の前記表面上で前記NDIスキャナを移動させるように構成された移動システムと、
前記航空機の構造体の前記表面上の既知の位置に対する前記表面上の当該検査車両の位置を測定するように構成された位置検出器と、
予め定義された経路に沿って前記表面上で当該検査車両を移動させるように前記移動システムを導き、前記NDIスキャナを作動させて前記NDIスキャンデータを生成し、前記NDIスキャンデータ内の変わり目に基づいて前記航空機の構造体内の表面下の造作を検出するように構成されたコントローラと、を備えており、
前記コントローラは、前記表面下の造作の境界についての予め定義された位置データにアクセスして前記位置検出器からの前記検査車両の測定位置と比較し、前記表面下の造作についての前記予め定義された位置データ及び前記既知の位置に基づいて、前記測定された位置を補正するように構成されており
前記表面下の造作は、リブ、縦通材、桁、ブラケット、ファスナ、孔、及び、切り欠きからなる群より選択される、検査車両。
【請求項15】
前記移動システムは、ロボットアームを備え、前記NDIスキャナは、前記ロボットアームに取り付けられている、請求項14に記載の検査車両。
【請求項16】
前記移動システムは、ホイール、無限軌道、又は脚、或いはホイール、無限軌道、及び脚の組み合わせを備える、請求項14に記載の検査車両。
【請求項17】
前記NDIスキャナは、超音波スキャナを備える、請求項1416のいずれか一項に記載の検査車両。
【請求項18】
前記プロセスは、異常検出プロセスを含む、請求項1417のいずれか一項に記載の検査車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非破壊検査(NDI)の分野に関し、とくには構造体について実行されるNDIプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の製造は、構造的剛性をもたらす支持構造体に構成部品を取り付けることを含むことができる。例えば、支持構造体は、外皮パネルが取り付けられる輪状のフレーム及び長手方向の細長い縦通材を含むことができる。外皮パネル及び支持構造体の組み合わせが協働して、航空機の機体の一部分を定める。
【0003】
航空機の構造体を、さまざまな時点において、航空機の構造体が設計基準を達成しているかどうか、及び/又は航空機の構造体に損傷がないかどうかを判断するために検査することができる。例えば、航空機の構造体を、航空機の構造体が仕様のとおりに製造されていることを保証するために、製造の最中に検査することができる。他の例では、航空機の構造体を、構造体が航空機の運用の最中に損傷していないことを保証するために、航空機の就航中に検査することができる。
【0004】
そのような検査を、航空機の構造体において表面下の異常が存在するかどうかを判断するために実行することができる。表面下の異常は、航空機の構造体の外面においては観察できないかもしれないが、そのような表面下の異常の存在を明らかにすることができる種々の検査プロセスを実行することができる。実行可能な検査の一種類は、非破壊検査(NDI)テストである。NDIは、非破壊評価又は調査(NDE)あるいは非破壊テスト(NDT)と呼ばれることもある。NDIテストの実行に使用される技術は、幅広くさまざまであるが、NDIテストは、一般に、検査対象の構造体に恒久的な変化を生じさせることがないという共通の特徴を共有する。
【0005】
航空機の構造体の検査を、人間であるオペレータが手持ち式の装置を使用して実行することができ、更には/或いはロボット設備によって実行することができる。しかしながら、これらのプロセスにおいて生成されるNDIデータは、異常の位置を正確に割り出すことを可能にするために、NDIスキャナの正確な位置の測定を必要とするが、NDIの用途のための正確な位置データの取得は、困難でありうる。
【0006】
したがって、NDI異常検出プロセスの位置特定の態様について、改善が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本明細書において説明される実施形態は、非破壊検査(NDI)スキャンデータを利用して、構造体の表面上のNDIスキャナの位置を更新する。構造体内の表面下の造作が、表面下の造作についての予め定義された位置データに相関付けられるNDIスキャンデータに基づいて検出される。表面上のNDIスキャナの測定された位置が、表面下の造作についての予め定義された位置データに基づいて補正される。
【0008】
一実施形態は、NDIスキャナとコントローラとを備える装置を含む。NDIスキャナが、構造体の表面について実行されるプロセスの最中にNDIスキャンデータを生成する。コントローラが、NDIスキャンデータに基づいて構造体内の表面下の造作を検出し、表面下の造作についての予め定義された位置データにアクセスし、表面下の造作についての予め定義された位置データに基づいて、構造体の表面上のNDIスキャナの測定された位置を補正する。
【0009】
別の実施形態は、構造体の表面について実行されるプロセスの最中のNDIスキャナの測定された位置を補正する方法を含む。この方法は、NDIスキャナによって生成されたNDIスキャンデータに基づいて、構造体内の表面下の造作を検出することと、表面下の造作についての予め定義された位置データにアクセスすることと、表面下の造作についての予め定義された位置データに基づいて、構造体の表面上のNDIスキャナの測定された位置を補正することとを含む。
【0010】
別の実施形態は、検査車両を含む。検査車両は、構造体の表面について実行されるプロセスの最中にNDIスキャンデータを生成するNDIスキャナを含む。検査車両は、構造体の表面上で検査車両を移動させる移動システムと、構造体の表面上の既知の位置に対する表面上の検査車両の位置を測定する位置検出器とを更に含む。検査車両は、コントローラを更に含む。コントローラは、予め定義された経路に沿って表面上で検査車両を移動させるように移動システムを導き、NDIスキャナを作動させてNDIスキャンデータを生成し、NDIスキャンデータ内の変わり目に基づいて構造体内の表面下の造作を検出する。コントローラは、表面下の造作の境界についての予め定義された位置データにアクセスし、表面下の造作についての予め定義された位置データ及び既知の位置に基づいて、測定された位置を補正する。
【0011】
説明した特徴、機能、及び利点は、さまざまな実施形態において独立して達成可能であり、或いは更に別の実施形態において組み合わせられてもよく、そのさらなる詳細は、以下の説明及び図面を参照して理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
いくつかの実施形態が、あくまでも例として、添付の図面を参照して、以下で説明される。同じ参照番号は、すべての図において、同じ要素又は同じ種類の要素を表している。
【0013】
図1】例示の実施形態における航空機の側面図を示している。
図2】例示の実施形態における検査環境のブロック図である。
図3】例示の実施形態における図2のNDIスキャナのさらなる詳細を示すブロック図である。
図4-5】別の例示の実施形態における図2の検査装置のブロック図である。
図6-7】構造体の検査時のNDIスキャナを含む装置について、測定された位置を補正する方法のフローチャートである。
図8】例示の実施形態における検査車両のブロック図である。
図9】例示の実施形態における図1の航空機の翼の図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面及び以下の説明は、特定の典型的な実施形態を示している。当業者であれば、本明細書において明示的には説明又は図示されないが、本明細書において説明される考え方を具現化し、この説明に続く特許請求の範囲の意図する技術的範囲に包含されるさまざまな構成に想到できることを、理解できるであろう。更に、本明細書において説明されるあらゆる例は、本開示の考え方の理解を助けるためのものであり、限定ではないと解釈されるべきである。結果として、本開示は、以下で説明される具体的な実施形態又は例に限られず、特許請求の範囲及びそれらの均等物によってのみ限定される。
【0015】
図1が、例示の実施形態における航空機100の側面図を示している。航空機100は、機首110と、翼120と、胴体130と、尾部140とを含む。航空機100は、説明の目的で特定の構成を有するものとして描かれているが、航空機100は、他の実施形態において他の構成を有してもよい。航空機100は、顧客による就航の前に、製造プロセス、認証プロセス、及び納品プロセスを経ることができる。ひとたび航空機100が就航すると、航空機100について、定期的な整備及び保守を計画することができる。
【0016】
本明細書において説明される例示の実施形態は、構造体内の表面下の造作についての予め定義された位置データを、検査の最中に収集されるNDIデータに相関付けることにより、NDIクローラ、NDIロボット、及びNDIスキャナの自動補正位置特定機能を可能にすることができる。自動補正NDIスキャンシステムの使用は、NDIプロセスを促進しつつ、NDIプロセスの精度を改善する。NDIプロセスの精度が、NDIスキャンの最中の位置誤差を低減することによって改善される一方で、自動スキャンシステムの使用が、NDIプロセスを促進する。
【0017】
典型的な自動NDIスキャンシステムは、検査対象の構造体に対するNDIスキャナの位置及び向きを決定するために、位置特定システムを利用する。しかしながら、位置特定システムは、測定誤差を免れず、そのような測定誤差が、NDIプロセスによって検出された異常の位置特定の精度に影響を及ぼす可能性がある。更に、NDIクローラは、構造体の表面における自身の位置について推定位置をもたらす局所的な位置特定システムを利用することができるが、これも測定誤差を免れない。検査対象の構造体の表面におけるNDIクローラの位置の偏差により、NDIプロセスの最中に検出される異常について、測定される位置がずれる可能性があり、これが、異常の正確な位置特定を困難にする。外部の位置特定システムを使用してNDIスキャン装置の位置を測定することができるが、外部の位置ガイド(例えば、光学式の基準点)の設定及び作成が、外部の位置ガイドを正確に設定及び配置することをオペレータに要求する。更に、そのような外部の位置ガイドの設定及び配置は、NDIプロセスの時間を更に長くする。
【0018】
本明細書において説明される例示の実施形態において、構造体の表面について実行されるプロセスの最中にNDIスキャナによって生成されるNDIスキャンデータは、構造体内の表面下の造作を検出するために分析され、表面下の造作についての予め定義された位置データがアクセスされる。構造体の表面上のNDIスキャナについて測定された位置が、表面下の造作についての予め定義された位置データにもとづいて補正される。
【0019】
本明細書において説明される例示の実施形態を、製造プロセス及び/又は認証プロセス及び/又は納品プロセスにおいて使用することができ、更には/或いは顧客による就航後に使用することができる。とくには、本明細書において説明される例示の実施形態を、航空機100の製造に関するコストを削減しつつ、航空機100の組み立て及び/又は検査を促進することによって、航空機100の製造プロセスを改善するために利用することができる。更に、本明細書において説明される例示の実施形態を、航空機100の定期的な整備及び保守のプロセスを促進することによって、航空機100の検査に関するコストを削減するために利用することができる。
【0020】
図2が、例示の実施形態における検査環境200を示している。検査環境200を、図1の航空機100の検査に使用することができる。この実施形態において、検査環境200は、構造体206の検査204の実行に使用することができる検査装置202を含む。構造体206は、航空機の構造体(例えば、航空機100の機首110、航空機100の翼120、航空機100の胴体130、及び航空機100の尾部140)など、任意の種類の製造された構造体を含むことができる。この実施形態において、検査204は、検査装置202のNDIスキャナ208を使用して実行される。例えば、NDIスキャナ208は、異常検出プロセスにおいて構造体206の表面210の付近に位置することができる。本明細書において説明される例示の実施形態において、NDIスキャナ208は、表面下の造作212を検出することができる。表面下の造作212は、翼120を形成する外皮パネルの下方のリブや、胴体130を形成する外皮パネルの下方の縦通材など、あらゆる種類の製造された部品を含むことができ、或いは造作は、厚さ、密度、多孔性、孔、切り欠き、などの変化など、表面構造の変化であってよい。
【0021】
この実施形態において、検査装置202は、検査装置202の動作を調整するコントローラ214を更に含む。コントローラ214の具体的なハードウェアの実装は、設計上の選択に任されるが、1つの特定の実施形態は、メモリ218に結合した1つ以上のプロセッサ216を含むことができる。プロセッサ216は、機能を実行することができる任意のハードウェアデバイスを含む。プロセッサ216は、1つ以上の中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、などを含むことができる。プロセッサのいくつかの例として、INTEL(登録商標)CORE(商標)プロセッサ、アドバンスト縮小命令セットコンピューティング(RISC)マシン(ARM(登録商標))プロセッサ、などが挙げられる。メモリ218は、データを格納することができる任意のハードウェアデバイスを含む。例えば、メモリ218は、構造体206の検査204の際にNDIスキャナ208によって生成されるNDIスキャンデータ220を格納することができる。更に、メモリ218は、構造体206の表面下の造作212に関する予め定義された位置データ222を格納することができる。メモリ218は、1つ以上の揮発性又は不揮発性ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)デバイス、FLASHデバイス、揮発性又は不揮発性スタティックRAMデバイス、ハードドライブ、ソリッドステートディスク(SSD)、などを含むことができる。不揮発性DRAM及びSRAMのいくつかの例は、バッテリバックアップ式DRAM及びバッテリバックアップ式SRAMを含む。プロセッサ216が検査装置202の一部であるとして示されているが、他の実施形態において、プロセッサ216は、検査装置202とは別又は検査装置202の外部にあってよく、ケーブル又は無線通信リンクによって検査装置に接続されてよい。
【0022】
動作時に、検査装置202は、検査204の最中に位置情報224を利用する。位置情報224は、基準位置に対する構造体206の表面210上のNDIスキャナ208の測定された位置を含む。位置情報224を、例えば検査装置202内の位置検出器(図示せず)を使用して生成することができ、或いは構造体206の表面210上のNDIスキャナ208の位置を測定する外部の位置特定システムによって生成することができる。位置情報224を、プロセッサ216が構造体206の表面210上の検査装置202の最新の位置にアクセスできるように、継続的にプロセッサ216へと送信することができる。いくつかの実施形態においては、位置情報224を、定期的及び/又はイベントに応答して、プロセッサ216に送信することができる。プロセッサ216は、位置情報224を利用して、NDIスキャナ208によって生成されたNDIスキャンデータ220を、表面下の造作212に(例えば、表面下の造作212の予め定義された位置データ222を使用して)相関付けることができる。更に、プロセッサ216は、位置情報224を利用して、NDIスキャナ208によって生成されたNDIスキャンデータ220を、構造体206において検出された異常又は矛盾に相関付けることができる。
【0023】
図3が、例示の実施形態におけるNDIスキャナ208のさらなる詳細を示している。いくつかの実施形態において、NDIスキャナ208は、超音波スキャナ302、赤外線サーモグラフィスキャナ304、渦電流スキャナ306、マイクロ波スキャナ308、テラヘルツスキャナ310、ミリ波スキャナ312、結合試験スキャナ314、放射線写真スキャナ316、レーザスキャナ318(例えば、レーザサーモグラフィスキャナ)、X線スキャナ320、後方散乱X線スキャナ322、又はこれらの組み合わせを備えることができる。構造体206内の表面下の造作212に関する情報を構造体206内の異常又は矛盾と併せて明らかにすることができる検査204を、構造体206の表面210について実行することができる。
【0024】
超音波スキャナ302は、構造体206の表面下の造作を明らかにする検査204の際に構造体206へと信号を送信し、これらの信号への応答を検出するトランスデューサのアレイを含むことができる。赤外線サーモグラフィスキャナ304は、構造体206の検査204において赤外線画像を使用し、構造体206の表面下の造作を明らかにする。渦電流スキャナ306は、検査204において構造体206内に渦電流を引き起こす磁場を発生させ、構造体206の表面下の造作に基づく渦電流の変化を検出するプローブのアレイを利用することができる。マイクロ波スキャナ308は、構造体206の表面下の造作を明らかにする検査204において、構造体206へとマイクロ波を送信し、マイクロ波への応答を検出することができる。テラヘルツスキャナ310が、0.3~3テラヘルツの範囲内の検査信号を利用することができる一方で、ミリ波スキャナ312は、30ギガヘルツ~300ギガヘルツの範囲内の検査信号を利用することができる。結合試験スキャナ314は、種々の動作モードを利用して多層接合構造及び現代の複合材料において用いられる幅広い範囲の材料及び材料の組み合わせを検査する。放射線写真スキャナ316が、X線又はガンマ線を検査信号として利用する一方で、レーザスキャナ318(例えば、レーザサーモグラフィスキャナ)は、コヒーレント光を検査信号として利用することができる。
【0025】
図4が、別の例示の実施形態における検査装置202のブロック図である。この実施形態において、検査装置202は、移動システム402を更に含む。移動システム402は、構造体206の表面210上でNDIスキャナ208を移動させるように動作する。例えば、検査204の最中に、移動システム402は、構造体206の表面210を横切る予め定義された経路に沿ってNDIスキャナ208を移動させることができる。例えば、プロセッサ216が、検査204の最中に位置情報224を利用して、構造体206の表面210を横切る予め定義された経路に沿ってNDIスキャナ208を案内することができる。移動システム402は、ロボットアーム404(例えば、NDIスキャナ208が取り付けられる)、ホイール406、無限軌道408、脚410、又はこれらの組み合わせを備えることができる。
【0026】
図5が、別の例示の実施形態における検査装置202のブロック図である。この実施形態において、検査装置202は、位置情報224を生成する位置検出器502を含む。位置検出器502は、ロータリエンコーダ又は構造体206に対する検査装置202の変位を測定する他の種類の位置検出システムを備えることができる。例えば、位置検出器502は、構造体206の表面210上の既知の位置228(図2を参照)に対する構造体206の表面210上のNDIスキャナ208の変位を測定することができる。
【0027】
検査装置202が構造体206の表面210上にあり、検査204を始めることができる状態であると考える。図6及び図7が、構造体の検査の最中にNDIスキャナを含む装置の測定された位置を補正する方法600のフローチャートである。方法600を検査環境200に関して説明するが、方法600は、示されていない他の検査環境又はシステムによって実行されてもよい。方法600について示されるステップは、すべてを含むものではなく、方法600は、示されていない他のステップを含むことができる。更に、方法600のステップを、別の順序で実行することも可能である。
【0028】
検査204において、NDIスキャナ208は、構造体206に対して移動し、NDIスキャンデータ220を生成する。構造体206に対するNDIスキャナ208の移動の最中に、位置情報224の更新により、プロセッサ216がNDIスキャナ208の位置をNDIスキャナ208によって生成されたNDIスキャンデータ220に相関付けることができる。例えば、NDIスキャナ208を構造体206の表面210上既知の位置228に位置させることができ、検査装置202を、表面210を横切る予め定義された経路を辿るようにプログラムすることができる。プロセッサ216が、予め定義された経路及び位置情報224を使用して、予め定義された経路を辿るように移動システム402を導く。
【0029】
プロセッサ216は、NDIスキャンデータ220に基づいて構造体206内の表面下の造作212を検出する(ステップ602を参照)。例えば、プロセッサ216は、NDIスキャンデータ220についてエッジ検出プロセスを実行し、構造体206内の表面下の造作212の境界226、227を検出することができる(図7のステップ704を参照)。
【0030】
プロセッサ216は、表面下の造作212についての予め定義された位置データ222にアクセスする(ステップ604を参照)。例えば、予め定義された位置データ222は、表面下の造作212の境界226、227を示すことができる(図7のステップ702を参照)。プロセッサ216は、表面下の造作212についての予め定義された位置データ222に基づいて、構造体206の表面210におけるNDIスキャナ208の測定された位置を補正する(ステップ606を参照)。例えば、NDIスキャナ208が表面210に沿って移動するとき、NDIスキャナ208の位置の測定誤差が生じる可能性がある。表面下の造作212に関する予め定義された位置データ222を使用して、プロセッサ216は、位置情報224を補正することができる。いくつかの実施形態において、プロセッサ216は、NDIスキャナ208の測定された位置の補正に基づいて表面210上のNDIスキャナ208の位置を変更するように移動システム402を導くことができる(随意によるステップ608を参照)。例えば、NDIスキャナ208が構造体206に対して予め定義された経路を辿っている場合に、プロセッサ216は、NDIスキャナ208が実際には予め定義された経路上にないと判断し、それに応じてNDIスキャナ208の位置を変更することができる。
【0031】
図8が、例示の実施形態における検査車両802のブロック図である。この実施形態において、検査車両は、いずれもすでに説明したコントローラ214、NDIスキャナ208、移動システム402、及び位置検出器502を含む。
【0032】
図9が、例示の実施形態における航空機100の翼120の一部分の上面図を示している。更に、図9には、既知の位置906を出発位置として検査車両802が辿るようにプログラムされた表面904を横切る予め定義された経路902が示されている。
【0033】
翼120の検査804を始めるために、検査車両802が、翼120の表面904上の既知の位置906に配置される。この実施形態において、位置検出器502は、既知の位置906に対する翼120の表面904上の検査車両802の位置を測定する。例えば、位置検出器502は、移動システム402が検査車両802を翼120に対して移動させるときに位置情報224を更新する変位検出器であってよい。変位検出器として、位置検出器502を、移動システム402の1つ以上のホイール406又は無限軌道408に取り付けられたロータリエンコーダとして実現することができる。
【0034】
検査804を始めるために、プロセッサ216は、NDIスキャナ208を作動させ、検査車両802を予め定義された経路902に沿って移動させるように移動システム402を導く。検査車両802が予め定義された経路902に沿って移動するとき、NDIスキャンデータ220が生成される。NDIスキャンデータ220は、リブ908~912など、翼120の種々の表面下の造作(例えば、表面下の部品)を明らかにすることができる。プロセッサ216は、NDIスキャンデータ220を分析し、例えばNDIスキャンデータ220によって捉えられたリブ908~912の境界914~923を表す変わり目を検出する。当然ながら、縦通材、桁、ブラケット、ファスナ、などといった他の表面下の造作も、NDIスキャンデータ220を分析することによって検出することができる。
【0035】
プロセッサ216は、リブ908~912の境界914~923についての予め定義された位置データ222にアクセスする。例えば、予め定義された位置データ222は、翼120におけるリブ908~912の境界914~923及び既知の位置906に対するそれらの位置を空間的に定義することができる。検査車両802が予め定義された経路902に沿って移動するとき、位置検出器502は、既知の位置906に対する検査車両802の変位を測定する。この測定は完璧でなく、誤差を免れない。とくには、測定における誤差は、検査車両802が予め定義された経路902に沿って移動するにつれて増大する。この測定誤差の増大は、検査車両802が予め定義された経路902から外れることにつながりかねず、望ましくない。例えば、検査車両802が予め定義された経路902に沿って移動しないと、検査204の再実行が必要になりかねない。
【0036】
プロセッサ216は、リブ908~912の境界914~923についての予め定義された位置データ222を、境界914~923を表すNDIスキャンデータ220における変わり目に相関付け、既知の位置906についての情報を使用して、位置検出器502によって測定された位置を補正する。例えば、予め定義された位置データ222は、リブ912の境界923を既知の位置906に対して空間的に定義することができる。プロセッサ216が、境界923を表すNDIスキャンデータ220における変わり目を検出したとき、プロセッサ216は、予め定義された位置データ222からの情報を使用して、既知の位置906に対する予め定義された経路902に沿ったNDIスキャナ208の変位を計算することができる。次いで、プロセッサ216は、既知の位置906に対する翼120上のNDIスキャナ208の変位と、既知の位置906に対する翼120上のNDIスキャナ208の測定された変位との間の偏差を計算することができる。この偏差は、測定誤差であり、位置検出器502によって測定された変位を補正された値で更新することによって補正することができる。
【0037】
いくつかの実施形態においては、偏差がしきい値よりも大きいときに動作が実行される。例えば、偏差がしきい値よりも大きいとき、プロセッサ216は、翼120上の検査車両802の位置を変更するように移動システム402を導くことができる。例えば、偏差がしきい値よりも大きい場合に、移動システム402を使用して検査車両802の位置を翼120上の以前の既知の地点(例えば、既知の位置906)へと戻すことができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、検査車両802は、翼120を横切る予め定義された経路902を辿ることにより、検査204においてNDIスキャンデータ220を集めると同時に、NDIスキャンデータ220内の検出された境界914~923及び予め定義された位置データ222を使用して、位置情報224を再較正するようにプログラムされる。この種の動作は、検査車両802がオペレータによる監督をあまり必要とせず、或いはまったく必要とせずに、翼120の検査204を迅速かつ正確に実行することを可能にし、したがって検査204を促進する。
【0039】
図面に示され、或いは本明細書において説明された種々の要素のいずれも、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの何らかの組み合わせとして実現可能である。例えば、或る要素を、専用のハードウェアとして実現することができる。専用のハードウェア要素を、「プロセッサ」、「コントローラ」、又は何らかの同様の用語で呼ぶことができる。プロセッサによってもたらされる場合、機能を、単一の専用プロセッサ、単一の共有プロセッサ、又は一部が共有されていてもよい複数の個別のプロセッサによってもたらすことができる。更に、用語「プロセッサ」又は「コントローラ」の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアだけを指すものと解釈されるべきではなく、これらに限られるわけではないが、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)又は他の回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを格納するための読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性ストレージ、論理回路、或いは何らかの他の物理的なハードウェアコンポーネント又はモジュールを、明示せずとも含むことができる。
【0040】
更に、或る要素を、その要素の機能を実行するためにプロセッサ又はコンピュータによって実行することができる命令として実現することができる。命令のいくつかの例は、ソフトウェア、プログラムコード、及びファームウェアである。命令は、プロセッサによって実行されたときに、その要素の機能を実行すべくプロセッサを導くように動作可能である。命令を、プロセッサによって読み取ることができる記憶装置に格納することができる。記憶装置のいくつかの例は、デジタル又は固体メモリ、磁気ディスク及び磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、或いは光学的に読み取ることができるデジタルデータ記憶媒体である。
【0041】
特定の実施形態を本明細書において説明したが、本発明の範囲は、それらの特定の実施形態に限定されない。むしろ、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びそれらのあらゆる均等物によって定められる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9