(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及び二次電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0525 20100101AFI20241206BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20241206BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20241206BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20241206BHJP
H01M 50/293 20210101ALI20241206BHJP
H01M 50/474 20210101ALI20241206BHJP
H01M 50/477 20210101ALI20241206BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20241206BHJP
H01M 50/486 20210101ALI20241206BHJP
【FI】
H01M10/0525
H01M10/058
H01M4/66 A
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/474
H01M50/477
H01M4/133
H01M50/486
(21)【出願番号】P 2020046539
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 有紀
(72)【発明者】
【氏名】浅利 太久哉
(72)【発明者】
【氏名】島村 治成
(72)【発明者】
【氏名】続木 康平
(72)【発明者】
【氏名】柳田 勝功
(72)【発明者】
【氏名】加藤 陽
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187537(WO,A1)
【文献】特開2015-064951(JP,A)
【文献】国際公開第2005/076392(WO,A1)
【文献】特開2007-214038(JP,A)
【文献】特開2012-038530(JP,A)
【文献】特開2011-028883(JP,A)
【文献】特開2019-021382(JP,A)
【文献】国際公開第2021/153291(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 4/64-6/84
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池と共に配列され、前記非水電解質二次電池から前記配列方向に荷重を受ける弾性体と、を有する二次電池モジュールであって、
前記非水電解質二次電池は、正極、負極、及び前記正極及び前記負極との間に配置されるセパレータとを積層した電極体と、前記電極体を収容する筐体と、を備え、
前記弾性体の圧縮弾性率は60MPa~120MPaであり、
前記正極は、Al及びAl以外の元素を含む正極集電体を有し、前記正極集電体の熱伝導率は65W/(m・K)~150W/(m・K)であり、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体側から順に形成される第1層及び第2層を有する負極活物質層と、を有し、
前記第1層は、10%耐力が3MPa以下の第1の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有し、前記第2層は、10%耐力が5MPa以上の第2の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有する、二次電池モジュール。
【請求項2】
前記弾性体は、硬質部と、前記硬質部より変形しやすい軟質部とを有し、
前記軟質部は、前記配列方向から見て、前記電極体の中心と重なるように配置され、前記硬質部は、前記配列方向から見て、前記電極体の外縁と重なるように配置されている、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項3】
前記Al以外の元素はMgを含み、前記正極集電体中のMgの含有量は、1.5質量%以上、4.7質量%以下である、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項4】
正極、負極、及び前記正極及び前記負極との間に配置されるセパレータとを積層した電極体と、前記電極体から前記電極体の積層方向に荷重を受ける弾性体と、前記電極体及び前記弾性体を収容する筐体と、を有する非水電解質二次電池であって、
前記弾性体の圧縮弾性率は60MPa~120MPaであり、
前記正極は、Al及びAl以外の元素を含む正極集電体を有し、前記正極集電体の熱導電率は65W/(m・K)~150W/(m・K)であり、
前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体側から順に形成される第1層及び第2層を有する負極活物質層と、を有し、
前記第1層は、10%耐力が3MPa以下の第1の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有し、前記第2層は、10%耐力が5MPa以上の第2の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有する、非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記弾性体は、硬質部と、前記硬質部より変形しやすい軟質部とを有し、
前記軟質部は、前記
積層方向から見て、前記電極体の中心と重なるように配置され、前記硬質部は、前記
積層方向から見て、前記電極体の外縁と重なるように配置されている、請求項4に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水電解質二次電池及び二次電池モジュールの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、典型的に、正極活物質層を備えた正極と、負極活物質層を備えた負極とがセパレータを介して積層された電極体と、電解液とを備える。かかる非水電解質二次電池は、例えば、電解液中の電荷担体(例えばリチウムイオン)が両電極間を行き来することで充放電を行う電池である。
【0003】
例えば、特許文献1には、負極集電体と、前記負極集電体側から順に形成された第1層及び第2層を有する負極活物質層と、を有し、前記第1層は、10%耐力が3MPa以下の第1の炭素系活物質粒子を含み、前記第2層は、10%耐力が5MPa以上の第2の炭素系活物質粒子を含む負極を非水電解質二次電池に使用することが開示されている。そして、特許文献1によれば、上述の第1層及び第2層を有する負極活物質層を用いることにより、優れた出力特性を有する非水電解質二次電池を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電池の内部短絡に対する耐性を確認する安全性評価試験として、例えば、電池に釘を突刺して内部短絡を模擬的に発生させ、電池の発熱の度合を調べて、電池の安全性を確認する釘刺し試験がある。そして、特許文献1のように、第1層及び第2層を有する積層構造の負極活物質層を備える非水電解質二次電池においては、釘刺し試験における電池の発熱量を抑える点で改良の余地がある。
【0006】
そこで、本開示の目的は、第1層及び第2層を有する積層構造の負極活物質層を備える非水電解質二次電池及び二次電池モジュールにおいて、釘刺し試験における電池の発熱量を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様である二次電池モジュールは、少なくとも1つの非水電解質二次電池と、前記非水電解質二次電池と共に配列され、前記非水電解質二次電池から前記配列方向に荷重を受ける弾性体と、を有する二次電池モジュールであって、前記非水電解質二次電池は、正極、負極、及び前記正極及び前記負極との間に配置されるセパレータとを積層した電極体と、前記電極体を収容する筐体と、を備え、前記弾性体の圧縮弾性率は5MPa~120MPaであり、前記正極は、Al及びAl以外の元素を含む正極集電体を有し、前記正極集電体の熱伝導率は65W/(m・K)~150W/(m・K)であり、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体側から順に形成される第1層及び第2層を有する負極活物質層と、を有し、前記第1層は、10%耐力が3MPa以下の第1の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有し、前記第2層は、10%耐力が5MPa以上の第2の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有することを特徴とする。
【0008】
また、本開示の一態様である非水電解質二次電池は、正極、負極、及び前記正極及び前記負極との間に配置されるセパレータとを積層した電極体と、前記電極体から前記電極体の積層方向に荷重を受ける弾性体と、前記電極体及び前記弾性体を収容する筐体と、を有する非水電解質二次電池であって、前記弾性体の圧縮弾性率は5MPa~120MPaであり、前記正極は、Al及びAl以外の元素を含む正極集電体を有し、前記正極集電体の熱導電率は65W/(m・K)~150W/(m・K)であり、前記負極は、負極集電体と、前記負極集電体側から順に形成される第1層及び第2層を有する負極活物質層と、を有し、前記第1層は、10%耐力が3MPa以下の第1の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有し、前記第2層は、10%耐力が5MPa以上の第2の炭素系活物質粒子を含む負極活物質粒子を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、釘刺し試験における電池の発熱量を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る二次電池モジュールの斜視図である。
【
図2】実施形態に係る二次電池モジュールの分解斜視図である。
【
図3】非水電解質二次電池が膨張する様子を模式的に示す断面図である。
【
図4】釘刺し試験時の電極体の状態を示す模式断面図である。
【
図5】弾性体が筐体内に配置された状態を示す模式断面図である。
【
図9】電極体と筐体に挟まれた状態にある弾性体の一部模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態の一例について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。
【0012】
図1は、実施形態に係る二次電池モジュールの斜視図である。
図2は、実施形態に係る二次電池モジュールの分解斜視図である。二次電池モジュール1は、一例として、積層体2と、一対の拘束部材6と、冷却板8と、を備える。積層体2は、複数の非水電解質二次電池10と、複数の絶縁スペーサ12と、複数の弾性体40と、一対のエンドプレート4と、を有する。
【0013】
各非水電解質二次電池10は、例えば、リチウムイオン二次電池等の充放電可能な二次電池である。本実施形態の非水電解質二次電池10は、いわゆる角形電池であり、電極体38(
図3参照)、電解液、偏平な直方体形状の筐体13を備える。筐体13は、外装缶14および封口板16で構成される。外装缶14は、一面に略長方形状の開口を有し、この開口を介して外装缶14に、電極体38や電解液等が収容される。なお、外装缶14は、シュリンクチューブ等の図示しない絶縁フィルムで被覆されることが望ましい。外装缶14の開口には、開口を塞いで外装缶14を封止する封口板16が設けられている。封口板16は、筐体13の第1面13aを構成する。封口板16と外装缶14とは、例えば、レーザー、摩擦撹拌接合、ろう接等で接合される。
【0014】
筐体13は、例えば円筒形ケースであってもよく、金属層及び樹脂層を含むラミネートシートで構成された外装体であってもよい。
【0015】
電極体38は、複数のシート状の正極38aと複数のシート状の負極38bとがセパレータ38dを介して交互に積層された構造を有する(
図3参照)。正極38a、負極38b、セパレータ38dは、第1方向Xに沿って積層している。すなわち、第1方向Xが、電極体38の積層方向となる。そして、この積層方向において両端に位置する電極は、筐体13の後述する長側面と向かい合う。なお、図示する第1方向X、第2方向Y及び第3方向Zは互いに直交する方向である。
【0016】
電極体38は、帯状の正極と帯状の負極とがセパレータを介して積層されたものを巻回した円筒巻回型の電極体、円筒巻回型の電極体を偏平状に成形した偏平巻回型の電極体であってもよい。なお、偏平巻回型の電極体の場合には、直方体形状の外装缶を適用できるが、円筒巻回型の電極体の場合には、円筒形の外装缶を適用することが望ましい。
【0017】
封口板16、つまり筐体13の第1面13aには、長手方向の一端よりに電極体38の正極38aと電気的に接続される出力端子18が設けられ、他端よりに電極体38の負極38bと電気的に接続される出力端子18が設けられる。以下では、正極38aに接続される出力端子18を正極端子18aと称し、負極38bに接続される出力端子18を負極端子18bと称する。また、一対の出力端子18の極性を区別する必要がない場合には、正極端子18aと負極端子18bとをまとめて出力端子18と称する。
【0018】
外装缶14は、封口板16と対向する底面を有する。また、外装缶14は、開口および底面をつなぐ4つの側面を有する。4つの側面のうち2つは、開口の対向する2つの長辺に接続される一対の長側面である。各長側面は、外装缶14が有する面のうち面積の最も大きい面、すなわち主表面である。また、各長側面は、第1方向Xと交わる(例えば直行する)方向に広がる側面である。2つの長側面を除いた残り2つの側面は、外装缶14の開口および底面の短辺と接続される一対の短側面である。外装缶14の底面、長側面および短側面は、それぞれ筐体13の底面、長側面および短側面に対応する。
【0019】
本実施形態の説明では、便宜上、筐体13の第1面13aを非水電解質二次電池10の上面とする。また、筐体13の底面を非水電解質二次電池10の底面とし、筐体13の長側面を非水電解質二次電池10の長側面とし、筐体13の短側面を非水電解質二次電池10の短側面とする。また、二次電池モジュール1において、非水電解質二次電池10の上面側の面を二次電池モジュール1の上面とし、非水電解質二次電池10の底面側の面を二次電池モジュール1の底面とし、非水電解質二次電池10の短側面側の面を二次電池モジュール1の側面とする。また、二次電池モジュール1の上面側を鉛直方向上方とし、二次電池モジュール1の底面側を鉛直方向下方とする。
【0020】
複数の非水電解質二次電池10は、隣り合う非水電解質二次電池10の長側面同士が対向するようにして、所定の間隔で並設される。また、本実施形態では、各非水電解質二次電池10の出力端子18は、互いに同じ方向を向くように配置されているが、異なる方向を向くように配置されてもよい。
【0021】
隣接する2つの非水電解質二次電池10は、一方の非水電解質二次電池10の正極端子18aと他方の非水電解質二次電池10の負極端子18bとが隣り合うように配列(積層)される。正極端子18aと負極端子18bとは、バスバー(図示せず)を介して直列接続される。なお、隣接する複数個の非水電解質二次電池10における同極性の出力端子18同士をバスバーで並列接続して、非水電解質二次電池ブロックを形成し、非水電解質二次電池ブロック同士を直列接続してもよい。
【0022】
絶縁スペーサ12は、隣接する2つの非水電解質二次電池10の間に配置されて、当該2つの非水電解質二次電池10間を電気的に絶縁する。絶縁スペーサ12は、例えば絶縁性を有する樹脂で構成される。絶縁スペーサ12を構成する樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が挙げられる。複数の非水電解質二次電池10と複数の絶縁スペーサ12とは、交互に積層される。また、絶縁スペーサ12は、非水電解質二次電池10とエンドプレート4との間にも配置される。
【0023】
絶縁スペーサ12は、平面部20と、壁部22と、を有する。平面部20は、隣接する2つの非水電解質二次電池10の対向する長側面間に介在する。これにより、隣り合う非水電解質二次電池10の外装缶14同士の絶縁が確保される。
【0024】
壁部22は、平面部20の外縁部から非水電解質二次電池10が並ぶ方向に延び、非水電解質二次電池10の上面の一部、側面、および底面の一部を覆う。これにより、例えば、隣り合う非水電解質二次電池10間、或いは非水電解質二次電池10とエンドプレート4との間の側面距離を確保することができる。壁部22は、非水電解質二次電池10の底面が露出する切り欠き24を有する。また、絶縁スペーサ12は、第2方向Yにおける両端部に、上方を向く付勢受け部26を有する。
【0025】
弾性体40は、複数の非水電解質二次電池10と共に、第1方向Xに沿って配列される。すなわち、第1方向Xは、前述したように電極体38の積層方向でもあるが、非水電解質二次電池10と弾性体40の配列方向でもある。弾性体40は、シート状であり、例えば、各非水電解質二次電池10の長側面と各絶縁スペーサ12の平面部20との間に介在する。隣り合う2つの非水電解質二次電池10の間に配置される弾性体40は、1枚のシートでも複数のシートが積層した積層体でもよい。弾性体40は、平面部20の表面に接着等により固定されてもよい。或いは、平面部20に凹部が設けられ、この凹部に弾性体40が嵌め込まれてもよい。あるいは、弾性体40と絶縁スペーサ12とは一体成形されてもよい。或いは、弾性体40が平面部20を兼ねてもよい。
【0026】
並設された複数の非水電解質二次電池10、複数の絶縁スペーサ12、複数の弾性体40は、一対のエンドプレート4で第1方向Xに挟まれる。エンドプレート4は、例えば、金属板や樹脂板からなる。エンドプレート4には、エンドプレート4を第1方向Xに貫通し、ねじ28が螺合するねじ穴4aが設けられる。
【0027】
一対の拘束部材6は、第1方向Xを長手方向とする長尺状の部材である。一対の拘束部材6は、第2方向Yにおいて互いに向かい合うように配列される。一対の拘束部材6の間には、積層体2が介在する。各拘束部材6は、本体部30と、支持部32と、複数の付勢部34と、一対の固定部36とを備える。
【0028】
本体部30は、第1方向Xに延在する矩形状の部分である。本体部30は、各非水電解質二次電池10の側面に対して平行に延在する。支持部32は、第1方向Xに延在するとともに、本体部30の下端から第2方向Yに突出する。支持部32は、第1方向Xに連続する板状体であり、積層体2を支持する。
【0029】
複数の付勢部34は、本体部30の上端に接続され、第2方向Yに突出する。支持部32と付勢部34とは、第3方向Zにおいて対向する。複数の付勢部34は、所定の間隔をあけて第1方向Xに配列される。各付勢部34は、例えば板ばね状であり、各非水電解質二次電池10を支持部32に向けて付勢する。
【0030】
一対の固定部36は、第1方向Xにおける本体部30の両端部から第2方向Yに突出する板状体である。一対の固定部36は、第1方向Xにおいて対向する。各固定部36には、ねじ28が挿通される貫通孔36aが設けられる。一対の固定部36により、拘束部材6は積層体2に固定される。
【0031】
冷却板8は、複数の非水電解質二次電池10を冷却するための機構である。積層体2は、一対の拘束部材6で拘束された状態で冷却板8の主表面上に載置され、支持部32の貫通孔32aと冷却板8の貫通孔8aとにねじ等の締結部材(図示せず)が挿通されることで、冷却板8に固定される。
【0032】
図3は、非水電解質二次電池が膨張する様子を模式的に示す断面図である。なお、
図3では、非水電解質二次電池10の個数を間引いて図示している。また、非水電解質二次電池10の内部構造の図示を簡略化し、絶縁スペーサ12の図示を省略している。
図3に示すように、各非水電解質二次電池10の内部には電極体38(正極38a、負極38b、セパレータ38d)が収容される。非水電解質二次電池10は、充放電に伴う電極体38の膨張及び収縮によって、外装缶14が膨張及び収縮する。各非水電解質二次電池10の外装缶14が膨張すると、積層体2には、第1方向Xの外側へ向かう荷重G1が発生する。すなわち、非水電解質二次電池10と共に配列される弾性体40は、非水電解質二次電池10から第1方向X(非水電解質二次電池10と弾性体40の配列方向であって、電極体38の積層方向)に荷重を受ける。一方、積層体2には、拘束部材6によって荷重G1に対応する荷重G2が掛けられる。
【0033】
図4は、釘刺し試験時の電極体の状態を示す模式断面図である。
図4に示すように、正極38aは、正極集電体50と正極集電体50上に形成される正極活物質層52を備え、負極38bは、負極集電体54と負極集電体54上に形成される負極活物質層56を備える。なお、負極活物質層56は、後述するように、負極集電体54側から順に形成される第1層56a及び第2層56bを有する(
図7参照)。
図4に示すように、釘刺し試験によって非水電解質二次電池に釘が突き刺さり、釘58が、正極38a、セパレータ38dを突き抜けて負極38bに到達すると、内部短絡が発生して、短絡電流が流れ、非水電解質二次電池が発熱する。
【0034】
ここで、本実施形態の正極集電体50は、Al及びAl以外の元素を含み、熱伝導率が65W/(m・K)~150W/(m・K)である低熱伝導率Al含有正極集電体である。このような低熱伝導率Al含有正極集電体では、短絡部(釘と直接接触している正極集電体の箇所)に熱が集中し易いため、短絡部での正極集電体50の溶融が早められる。すなわち、釘刺し試験において内部短絡が生じてから正極集電体50が溶断するまでの時間が早められる。
【0035】
また、本実施形態の弾性体40は、5MPa~120MPaの圧縮弾性率を有する弾性体である。そして、5MPa~120MPaの圧縮弾性率を有する弾性体によって、第1方向Xの外側へ向かう荷重G1及び荷重G1に対応する荷重G2が緩和されるため、正極38aと負極38bとの間の過剰な近接が抑えられる。これにより、前述の低熱伝導率Al含有正極集電体を使用しているが、5MPa~120MPaの圧縮弾性率を有する弾性体を配置していない或いは120MPaを超える弾性体を配置している場合と比べて、釘刺し試験における正極集電体50の短絡部の面積の増大が抑えられるため、釘刺し試験において内部短絡が生じてから正極集電体50が溶断するまでの時間がより早められる。一方、後述する第1層56a及び第2層56bを有する積層構造の負極活物質層56を用いる非水電解質二次電池は、充放電サイクルにおける電池の出力低下が抑制されるが、釘刺し試験において内部短絡が発生した場合、短絡電流が大きく、電池の発熱量も大きくなる。しかし、このような非水電解質二次電池10においても、上記圧縮弾性率を有する弾性体40及び上記熱伝導率を有する正極集電体50を用いることにより、釘刺し試験において内部短絡が生じてから正極集電体50が溶断するたまでの時間が早められるため、釘刺し試験における電池の発熱量が抑制される。
【0036】
図5は、弾性体が筐体内に配置された状態を示す模式断面図である。弾性体40は前述したように非水電解質二次電池10と共に配列される場合、すなわち、筐体13の外に配置される場合に限定されず、筐体13の内部に配置されてもよい。
図5に示す弾性体40は、電極体38の積層方向(第1方向X)において、電極体38の両端に配置される。また、弾性体40は、筐体13の内壁と電極体38との間に挟まれている。
【0037】
非水電解質二次電池10の充放電等によって、電極体38が膨張すると、電極体38には、第1方向Xの外側へ向かう荷重が発生する。すなわち、筐体13内に配置された弾性体40は、電極体38から第1方向X(電極体38の積層方向)に荷重をうける。そして、弾性体40が5MPa~120MPaの圧縮弾性率を有し、正極集電体50が、Al及びAl以外の元素を含み、熱伝導率が65W/(m・K)~150W/(m・K)である低熱伝導率Al含有正極集電体であれば、前述と同様の作用効果が得られる。
【0038】
筐体13内の弾性体40は、電極体38から電極体38の積層方向に荷重を受けることができれば、どこに配置されていてもよい。例えば、電極体38が
図6に示す円筒巻回型の電極体38であれば、弾性体40は、円筒巻回型の電極体38の巻き芯部39に配置されてもよい。なお、円筒巻回型の電極体38の積層方向は、電極体38の径方向(R)である。そして、電極体38の膨張収縮に伴い、電極体38には電極体38の積層方向(電極体38の径方向(R))に荷重が発生し、巻き芯部39内の弾性体40は電極体38の積層方向の荷重を受ける。また、図での説明は省略するが、筐体13内に複数の電極体38が配列されている場合には、隣り合う電極体38の間に弾性体40を配置してもよい。また、扁平巻回型の場合においても同様に電極体の中心部に弾性体を配置してもよい。
【0039】
以下に、正極38a、負極38b、セパレータ38d、弾性体40及び電解液について詳述する。
【0040】
正極38aは、正極集電体50と、正極集電体50上に形成される正極活物質層52とを有する。正極集電体50は、Al及びAl以外の元素を含み、熱伝導率が65W/(m・K)~150W/(m・K)の範囲であればよい。なお、Al及びAl以外の元素は合金化していても合金化していなくてもよい。
【0041】
正極集電体50中のAlの含有量は、例えば、正極集電体50の抵抗値の上昇等を抑制する等の点で、50質量%超であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。正極集電体50中のAlの含有量の上限値は、例えば、98質量%以下である。
【0042】
正極集電体50に含まれるAl以外の元素は、熱伝導率を上記範囲に調整することができるものであれば特に限定されないが、例えば、Mg、Si、Sn、Cu、Zn、Ge等が挙げられる。これらの中では、正極集電体50の熱伝導率を調整し易い等の点で、Mgが好ましい。正極集電体50中のMgの含有量は、正極集電体50の熱伝導率を150W/(m・K)以下に調整する点で、1.5質量%以上であることが好ましく、3質量%以上が好ましい。正極集電体50中のMgの含有量が増えれば増えるほど、正極集電体50は硬くなる。一般的に、正極集電体が硬くなると、例えば、偏平巻回型の電極体を採用した非水電解質二次電池では、充放電による電極体の膨張収縮により、偏平巻回型の電極体のコーナー部(電極及びセパレータが湾曲している箇所)に応力が掛かって、電極体のコーナー部の正極集電体が破断する場合がある。しかし、本実施形態では、5MPa~120MPaの弾性体40により、偏平巻回型の電極体のコーナー部に掛かる応力も緩和されるため、正極集電体50中のMgの含有量を増やしても、正極集電体50の破断は抑えられる。正極集電体50中のMgの含有量の上限は、例えば50質量%未満であり、正極集電体50の抵抗値を考慮すると、10質量%以下が好ましく、より好ましくは6質量%以下である。
【0043】
正極集電体50の熱伝導率は、65W/(m・K)~150W/(m・K)の範囲であればよいが、釘刺し試験時の電池の発熱量をより抑制する点で、85W/(m・K)~130W/(m・K)の範囲が好ましく、95W/(m・K)~120W/(m・K)の範囲がより好ましい。
【0044】
<熱伝導率の測定方法>
正極集電体50の熱拡散率、比熱及び密度を次の方法により測定した後、下記式(1)に代入し、正極集電体50の熱伝導率(W/m・K)を求める。
・熱拡散率:キセノンフラッシュアナライザー(登録商標:LFA 467HT HyperFlash、ネッチ・ジャパン株式会社製)を用いて、25℃で測定する。
・比熱:示差走査熱量計(DSC)を用い、サファイア標準物質との比較により測定する。
・密度:アルキメデスの原理を用いて測定する。
・熱伝導率=(熱拡散率)×(比熱)×(密度) (1)
【0045】
正極集電体50は、例えば、充放電によって、偏平巻回型の電極体のコーナー部における正極集電体50の破断を抑制する点で、45kN/mm2~73.5kN/mm2のヤング率を有することが好ましい。ヤング率は、25℃の温度条件で、引張試験(例えば、ミネベアミツミ製、引張圧縮試験機 テクノグラフ TG-2kN)により測定される。
【0046】
正極集電体50は、例えば、釘刺し試験時において速やかに溶融し、電池の発熱量を効果的に抑制する等の点で、650℃以下の液相線温度を有することが好ましい。正極集電体50の液相線温度の下限値は、例えば、450℃以上である。なお、液相線温度とは、液相から固相が生じ始める温度である。液相線温度は、示差走査熱量測定(DSC)によって得られる。
【0047】
正極活物質層52は、正極活物質を含む。正極活物質層52は、正極活物質以外に、導電材や結着材を含むことが好ましい。正極活物質層52は、正極集電体50の両面に設けられることが好ましい。
【0048】
正極活物質は、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物等が用いられる。リチウム遷移金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。中でも、Ni、Co、Mnの少なくとも1種を含有することが好ましい。好適な複合酸化物の一例としては、Ni、Co、Mnを含有するリチウム遷移金属複合酸化物、Ni、Co、Alを含有するリチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。
【0049】
導電材は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が挙げられる。結着材は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0050】
正極38aは、例えば、正極集電体50上に正極活物質、導電材、及び結着材等を含む正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧延して正極活物質層52を正極集電体50上に形成することにより作製できる。
【0051】
図7は、負極の模式断面図である。
図7に示すように、負極38bは、負極集電体54と、負極集電体54側から順に形成される第1層56a及び第2層56bを有する負極活物質層56とを有する。負極集電体54には、負極38bの電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられ、例えば、銅等が挙げられる。負極活物質層56(第1層56a及び第2層56b)は、負極集電体54の両面に形成されることが好ましい。
【0052】
第1層56aは、負極活物質粒子P1を含む。第2層56bは、負極活物質粒子P2を含む。また、第1層56a及び第2層56bは、結着材等を含むことが好ましい。結着材は、正極活物質層52に含まれる結着材と同様のものが挙げられる。負極活物質層56の厚みは、例えば負極集電体54の片側で20μm~120μmである。第1層56aの厚みは、負極活物質層56の厚みの30~80%が好ましく、50~70%がより好ましい。第2層56bの厚みは、負極活物質層56の厚みの20~70%が好ましく、30~50%がより好ましい。なお、負極活物質層56は、第1層56a及び第2層56bのみからなるものに限定されず、第3の層を有していてもよい。
【0053】
負極38bは、例えば、負極活物質粒子P1及び結着材を含む第1の負極合材スラリーと、負極活物質粒子P2及び結着材を含む第2の負極合材スラリーとを用いて作製される。具体的には、負極集電体54の表面に第1の負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させる。その後、第1の負極合材スラリーにより形成された第1塗膜の上に第2の負極合材スラリーを塗布し、第2塗膜を乾燥することにより、第1層56a及び第2層56bを有する負極活物質層56が負極集電体54上に形成された負極38bが得られる。
【0054】
第1層56aに含まれる負極活物質粒子P1は、10%耐力が3MPa以下の第1の炭素系活物質粒子(以下、炭素系活物質粒子Aとする)を含む。第2層56bに含まれる負極活物質粒子P2は、10%耐力が5MPa以上の第2の炭素系活物質粒子(以下、炭素系活物質粒子Bとする)を含む。炭素系活物質粒子A,Bは、炭素材料からなる粒子であって、黒鉛を主成分とすることが好ましい。黒鉛としては、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛が例示できる。
【0055】
炭素系活物質粒子Aは10%耐力が3MPa以下の柔らかい粒子である。他方、炭素系活物質粒子Bは10%耐力が5MPa以上の硬い粒子である。そして、負極38bの表面側に炭素系活物質粒子Bを含む第2層56bを配置し、負極集電体54側に炭素系活物質粒子Aを含む第1層56aを配置した積層構造にすることで、例えば、負極活物質層56の導電パスの切断が抑制され、また、負極活物質層56への電解液の浸透性が向上するため、充放電サイクルにおける電池の出力低下が抑制されると考えられる。
【0056】
本明細書において、10%耐力とは、炭素系活物質粒子A,Bが体積比率で10%圧縮された際の圧力を意味する。10%耐力は、炭素系活物質粒子A,Bの粒子1個について、微小圧縮試験機(株式会社島津製作所製、MCT-211)等を用いて測定できる。当該測定には、炭素系活物質粒子A,Bの各D50と同等の粒子径の粒子を用いる。
【0057】
炭素系活物質粒子Aは非晶質成分(非晶質炭素)を実質的に含有していなくてもよいが、炭素系活物質粒子Bは非晶質成分を含有することが好ましい。具体的に、炭素系活物質粒子Bは、1~5質量%の非晶質成分を含有することが好適である。この場合、5MPa以上の10%耐力を確保することが容易になる。炭素系活物質粒子Aの非晶質成分量は、例えば0.1~2質量%であり、炭素系活物質粒子Bの非晶質成分量よりも少ないことが好ましい。
【0058】
非晶質成分(非晶質炭素)は、グラファイト結晶構造が発達していない炭素であって、アモルファス又は微結晶で乱層構造な状態の炭素である。より具体的には、X線回折によるd(002)面間隔が0.342nm以上である成分を意味する。非晶質成分の具体例としては、ハードカーボン(難黒鉛化炭素)、ソフトカーボン(易黒鉛化炭素)、カーボンブラック、カーボンファイバー、活性炭などが挙げられる。非晶質成分は、例えば樹脂又は樹脂組成物を炭化処理することで得られる。非晶質成分の原料には、フェノール系の熱硬化性樹脂、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂、石油系又は石炭系のタール、ピッチなどを用いることができる。
【0059】
非晶質成分は、黒鉛系炭素の表面に固着した状態で存在することが好ましい。ここで、固着しているとは、化学的及び/又は物理的に結合している状態であって、活物質粒子を水や有機溶剤中で攪拌しても黒鉛系炭素の表面から非晶質成分が遊離しないことを意味する。非晶質成分の物性及び固着量は、例えば原料(石油系又は石炭系のタール、ピッチ等)の種類、量、炭化処理の温度、時間等により調整できる。
【0060】
炭素系活物質粒子Bは、5MPa以上の10%耐力を確保することが容易となる点で、例えば、空隙を有するコア部とコア部を覆うように配置されるシェル部からなる粒子であることが好ましい。コア部は、黒鉛及び非晶質炭素から構成され、内部に空隙を有する構造であることが望ましい。シェル部は、非晶質炭素から構成され、厚みは50nm以上が好ましい。コア部とシェル部の重量比率は99:1~95:5が望ましい。シェル部の空隙率は、コア部の空隙率より低いことが好ましい。コア部の空隙率は1~5%、シェル部分の空隙率は0.01~1%であることが望ましい。
【0061】
例えば、コア部は、黒鉛と、黒鉛化可能なバインダーを混合し、不活性ガス雰囲気下、あるいは非酸化性雰囲気下で500~3000℃に加熱し、炭素化物質を粉砕、解砕、分級処理・球形化処理などの粉体加工により作成される。黒鉛は、天然黒鉛や人造黒鉛が例示される。黒鉛の平均粒子径は、10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。黒鉛化可能なバインダーとしては、石炭系、石油系、人造系等のピッチ及びタール、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。また、空隙を形成するため、残炭率の小さな添加物を混合するとより好ましい。黒鉛とバインダーの混合比率は限定されないが、バインダー成分の残留炭素分と黒鉛との比率は1:99~30:70とすることが好ましい。例えば、シェル部は、アセチレン、メタン等を用いたCVD法、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂等をコア部の炭素材料と混合し、熱処理を行う方法などで形成できる。上記のような作製方法を用いることで、5MPa以上の10%耐力を有する炭素系活物質粒子が得られ易い。
【0062】
第1層56aに含まれる負極活物質粒子P1は、本開示の目的を損なわない範囲で、炭素系活物質粒子Aの他に、炭素系活物質粒子Bが含まれていてもよいし、炭素系活物質粒子A,B以外の負極活物質が含まれていてもよい。第1層56aに含まれる炭素系活物質粒子Aの含有量は、例えば、負極活物質粒子P1の総量に対して50質量%以上であることが望ましい。また、第2層56bに含まれる負極活物質粒子P2は、本開示の目的を損なわない範囲で、炭素系活物質粒子Bの他に、炭素系活物質粒子Aが含まれていてもよいし、炭素系活物質粒子A,B以外の負極活物質が含まれていてもよい。第2層56bに含まれる炭素系活物質粒子Bの含有量は、例えば、負極活物質粒子P2の総量に対して50質量%以上であることが望ましい。
【0063】
炭素系活物質粒子A,B以外の負極活物質としては、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のリチウムと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む合金、化合物等が挙げられる。これらの中では、電池の高容量化が図られる等の点で、Siを含む化合物が好ましい。負極活物質層56に炭素系活物質粒子A,B以外の負極活物質が含まれる場合、炭素系活物質粒子A,B以外の負極活物質の含有率は、充放電サイクルにおける電池の出力低下を抑制する等の点で、第1層56a>第2層56bであることが好ましく、第2層56bには実質的に含まれないことが好ましい。
【0064】
Siを含む化合物は、例えば、SiOx(0.5≦x≦1.6)で表されるSi酸化物が好ましい。SiOxで表されるSi酸化物は、例えば、非晶質のSiO2マトリックス中にSiの微粒子が分散した構造を有する。また、Siを含む化合物は、リチウムシリケート相中にSiの微粒子が分散した、Li2ySiO(2+y)(0<y<2)で表される化合物であってもよい。
【0065】
Siを含む化合物の粒子表面には、導電性の高い材料で構成される導電被膜が形成されていることが好ましい。導電被膜の構成材料としては、炭素材料、金属、及び金属化合物から選択される少なくとも1種が例示できる。中でも、非晶質炭素等の炭素材料が好ましい。炭素被膜は、例えばアセチレン、メタン等を用いたCVD法、石炭ピッチ、石油ピッチ、フェノール樹脂等をシリコン系活物質と混合し、熱処理を行う方法などで形成できる。また、カーボンブラック等の導電フィラーを結着材を用いて、Siを含む化合物の粒子表面に固着させることで導電被膜を形成してもよい。
【0066】
第2層56bに含まれる負極活物質粒子P2は、第1層56aに含まれる負極活物質粒子P1より、BET比表面積が小さいことが好ましい。これにより、例えば、負極活物質層56内への電解液の浸透性又は保持性が向上し、充放電サイクルにおける電池の出力低下が抑制される場合がある。負極活物質粒子P2のBET比表面積は、例えば、0.5m2/g以上3.5m2/g未満が好ましく、0.75m2/g以上1.9m2/g以下がより好ましい。また、負極活物質粒子P1のBET比表面積は、3.5m2/g以上5m2/g以下が好ましく、2.5m2/g以上4.5m2/g以下がより好ましい。BET比表面積は、従来公知の比表面積測定装置(例えば、株式会社マウンテック製、Macsorb(登録商標)HM model-1201)を用いて、BET法により測定される。
【0067】
第2層56bの空隙率は第1層56aの空隙率より大きいことが好ましい。これにより、負極活物質層56内への電解液の浸透性又は保持性が向上し、例えば、充放電サイクルにおける電池の出力低下が抑制される場合がある。
【0068】
ここで、第1層56a及び第2層56bの空隙率とは、各層の断面積に対する各層内の粒子間の空隙の面積の割合から求めた2次元値であり、例えば、以下の手順で求められる。
【0069】
(1)負極の一部を切り取り、イオンミリング装置(例えば、日立ハイテク社製、IM4000)で加工し、負極活物質層56の断面を露出させる。
(2)走査型電子顕微鏡を用いて、上記露出させた負極活物質層56の第1層56aの断面の反射電子像を撮影する。
(3)上記により得られた断面像をコンピュータに取り込み、画像解析ソフト(例えば、アメリカ国立衛生研究所製、ImageJ)を用いて二値化処理を行い、断面像内の粒子断面を黒色とし、粒子間空隙を白色として変換した二値化処理画像を得る。
(4)第1層56aの空隙率を求める場合、二値化処理画像から、測定範囲(例えば50μm×50μm)における粒子間空隙の面積を算出する。上記測定範囲を、第1層56aの断面積(2500μm2=50μm×50μm)とし、算出した粒子間空隙の面積から、第1層56aの空隙率(粒子間空隙の面積×100/負極活物質層56の断面積)を算出する。また、第2層56bの空隙率も同様に測定する。
【0070】
第1層56a及び第2層56bの空隙率を調整する方法は、例えば、負極活物質層56の形成時の第1塗膜及び第2塗膜に掛ける圧延力を調製する方法が挙げられる。
【0071】
セパレータ38dは、例えば、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シート等が用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ38dの材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、セルロースなどが好適である。セパレータ38dは、セルロース繊維層及びオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維層を有する積層体であってもよい。また、ポリエチレン層及びポリプロピレン層を含む多層セパレータであってもよく、セパレータ38dの表面にアラミド系樹脂、セラミック等の材料が塗布されたものを用いてもよい。
【0072】
弾性体40を構成する材料としては、例えば、天然ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の熱硬化性エラストマーや、ポリスチレン、オレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性エラストマー等が例示される。なお、これらの材料は、発泡されたものであってもよい。また、シリカキセロゲル等の多孔質材が担持された断熱材も例示される。
【0073】
本実施形態では、負極活物質層56、セパレータ38d及び弾性体40の圧縮弾性率を以下のように規定することが好ましい。セパレータ38dの圧縮弾性率が負極活物質層56の圧縮弾性率より小さく、弾性体40の圧縮弾性率がセパレータ38dの圧縮弾性率より小さいことが好ましい。すなわち、圧縮弾性率は、負極活物質層56>セパレータ38d>弾性体40の順である。したがって、上記の中では、負極活物質層56が最も変形し難く、弾性体40が最も変形しやすい。各部材の圧縮弾性率を上記のように規定することで、例えば、負極活物質層56内への電解液の浸透性又は保持性が向上し、例えば、充放電サイクルにおける電池の出力低下が抑制される場合がある。セパレータ38dの圧縮弾性率は、例えば、負極活物質層56の圧縮弾性率の0.3倍~0.7倍であることが好ましく、0.4倍~0.6倍であることがより好ましい。弾性体40の圧縮弾性率は5MPa~120MPaの範囲であればよいが、25MPa~100MPaの範囲であることが好ましい。
【0074】
圧縮弾性率は、サンプルに対して厚み方向に所定の荷重を印加したときのサンプルの厚み方向の変形量を圧縮面積で除して、サンプル厚みを乗ずることで算出される。即ち、以下の式:圧縮弾性率(MPa)=荷重(N)/圧縮面積(mm2)×(サンプルの変形量(mm)/サンプル厚み(mm))から算出される。但し、負極活物質層56の圧縮弾性率を測定する場合は、負極集電体54の圧縮弾性率を測定し、負極集電体54上に負極活物質層56を形成した負極38bの圧縮弾性率を測定する。そして、負極集電体54と負極38bの圧縮弾性率に基づいて、負極活物質層56の圧縮弾性率を算出する。また、作製した負極38bから負極活物質層56の圧縮弾性率を求める場合には、負極38bの圧縮弾性率を測定し、負極38bから負極活物質層56を削り取った負極集電体54の圧縮弾性率を測定し、測定したこれらの圧縮弾性率に基づいて、負極活物質層56の圧縮弾性率を算出する。
【0075】
負極活物質層56の圧縮弾性率を調整する方法は、例えば、負極集電体54上に形成した負極合材スラリーに施す圧延力を調製する方法が挙げられる。また、例えば、負極活物質の材質や物性を変えることによっても、負極活物質層56の圧縮弾性率を調整できる。なお、負極活物質層56の圧力弾性率の調整は上記に限定されるものではない。セパレータ38dの圧縮弾性率は、例えば、材質の選択、空孔率や孔径等を制御することによって調整される。弾性体40の圧縮弾性率は、例えば、材質の選択、形状等によって調整される。
【0076】
弾性体40は、一面において均一な圧縮弾性率を示していてもよいが、以下で説明するように面内で変形し易さが異なる構造でもよい。
【0077】
図8は、弾性体の一例を示す模式斜視図である。
図8に示す弾性体40は、軟質部44と、硬質部42とを有する。硬質部42は、軟質部44より弾性体40の外縁部側に位置する。
図8に示す弾性体40では、第2方向Yにおける両端側に硬質部42が配置され、2つの硬質部42の間に軟質部44が配置された構造を有する。軟質部44は、第1方向Xから見て、筐体13の長側面の中心と重なるように配置され、電極体38の中心と重なるように配置されることが好ましい。また、硬質部42は、第1方向Xから見て、筐体13の長側面の外縁と重なるように配置され、電極体38の外縁と重なるように配置されることが好ましい。
【0078】
前述したように、非水電解質二次電池10の膨張は、主に電極体38の膨張によって引き起こされる。そして、電極体38は、中心に近いほど大きく膨張する。すなわち、電極体38は、中心に近いほど第1方向Xに大きく変位し、中心から外縁に向かうほど小さく変位する。また、この電極体38の変位に伴って、非水電解質二次電池10は、筐体13の長側面の中心に近い部分ほど第1方向Xに大きく変位し、筐体13の長側面の中心から外縁に向かうほど小さく変位する。したがって、
図8に示す弾性体40を筐体13内に配置する場合には、弾性体40は、電極体38の大きい変位によって生じる大きい荷重を軟質部44で受け、電極体38の小さい変位によって生じる小さい荷重を硬質部42で受けることができる。また、
図8に示す弾性体40を筐体13外に配置する場合には、弾性体40は、非水電解質二次電池10の大きい変位によって生じる大きい荷重を軟質部44で受け、非水電解質二次電池10の小さい変位によって生じる小さい荷重を硬質部42で受けることができる。
【0079】
図8に示す弾性体40は、第1方向Xに凹む凹部46を有する。凹部46に隣接する凹部非形成部は、非水電解質二次電池10又は電極体38から荷重を受けた際、一部分が凹部46側に変位することができる。したがって、凹部46を設けることで、凹部非形成部を変形し易くすることができる。ここで、軟質部44を硬質部42より変形し易くするために、第1方向Xから見て、軟質部44の面積に占める凹部46の面積の割合を硬質部42の面積に占める凹部46の面積の割合よりも大きくすることが好ましい。なお、
図8に示す弾性体40では、軟質部44のみに凹部46を配置しているが、硬質部42に凹部46を配置してもよい。
【0080】
凹部46は、芯部46aと、複数の線部46bとを含む。芯部46aは、円形であり、第1方向Xからみて弾性体40の中心に配置される。複数の線部46bは、芯部46aから放射状に広がる。線部46bが放射状に広がることにより、芯部46aに近いほど線部46bの占める割合が高くなり、凹部非形成部が少なくなる。したがって、芯部46aに近い領域ほど凹部非形成部がより変形しやすくなる。
【0081】
また、図での説明は省略するが、弾性体40は、前述の凹部46に代えて又は凹部46と共に、第1方向Xに弾性体40を貫通する複数の貫通孔を有していてもよい。貫通孔を設けることで、貫通孔非形成部を変形し易くすることができる。したがって、軟質部44を硬質部42より変形し易くするために、第1方向Xから見て、軟質部44の面積に占める貫通孔の面積の割合を硬質部42の面積に対する貫通孔の面積の割合より大きくすることが好ましい。
【0082】
以下に弾性体の他の例を説明する。
【0083】
図9は、電極体と筐体に挟まれた状態にある弾性体の一部模式断面図である。弾性体40は、電極体38から電極体38の積層方向(第1方向X)に荷重を受ける。弾性体40は、所定の硬さを有する硬質部42が形成された基材42aと、硬質部42よりも柔らかい軟質部44を有する。硬質部42は、基材42aから電極体38に向けて突出する突出部であり、所定以上の荷重を受けて破断又は塑性変形する。軟質部44はシート状であり、硬質部42が形成された基材42aより、電極体38側に配置される。但し、軟質部44は、電極体38とは離間している。軟質部44は、第1方向Xから見て、硬質部42と重なる位置に貫通孔44aを有し、貫通孔44aに、硬質部42が挿通され、硬質部42の先端が軟質部44から突出する。
【0084】
弾性体40は、硬質部42の形状が変化することで、電極体38からの荷重を硬質部42により受ける第1状態から、当該荷重を軟質部44により受ける第2状態に移行する。つまり、弾性体40は、最初に、電極体38の膨張による電極体38の積層方向の荷重を硬質部42により受ける(第1状態)。その後、何らかの原因で、電極体38の膨張量が増え、硬質部42で受けられない荷重が硬質部42に掛かると、硬質部42が破断又は塑性変形して、電極体38が軟質部44に接触し、電極体38の積層方向の荷重を軟質部44により受ける(第2状態)。
【0085】
なお凹凸形状からなる弾性体の場合、圧縮弾性率は、圧縮弾性率(MPa)=荷重(N)/弾性体の面方向の投影面積(mm2)×(弾性体の変形量(mm)/弾性体の凸部までの厚み(mm))から算出される。
【0086】
電解液は、例えば、有機溶媒(非水溶媒)中に支持塩を含有する非水電解液等である。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、及びこれらの2種以上の混合溶媒等が用いられる。支持塩には、例えばLiPF6等のリチウム塩が使用される。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
<実施例1>
[正極の作製]
正極活物質として、一般式LiNi0.82Co0.15Al0.03O2で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を用いた。この正極活物質と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンとを、97:2:1の固形分質量比で混合し、分散媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いて、正極合材スラリーを調製した。
【0089】
正極集電体として、熱伝導率が150W/(m・K)、Mg含有量が1.5質量%であるAl-Mg合金箔を用意した。
【0090】
上記Al-Mg合金箔の両面に上記正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥、圧延した後、所定の電極サイズに切断して、正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極を得た。
【0091】
[第1の負極合材スラリーの調製]
3.9MPaの10%耐力、2.1m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子A)と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョンと、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)とを、100:1:1の固形分質量比で混合し、分散媒として水を用いて、第1の負極合材スラリーを調製した。
【0092】
[第2の負極合材スラリーの調製]
5.7MPaの10%耐力、2.9m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子B)と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョンと、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)とを、100:1:1の固形分質量比で混合し、分散媒として水を用いて、第2の負極合材スラリーを調製した。
【0093】
[負極の作製]
第1の負極合材スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥し、圧延した後、当該塗膜の上に第2の負極合材スラリーを塗布して塗膜を乾燥、圧延し、負極集電体上に、第1の負極合材スラリー由来の第1層及び第2の負極合材スラリー由来の第2層有する負極活物質層を形成した。これを所定の電極サイズに切断して負極を得た。第1層及び第2層の空隙率を測定したところ、22%及び24%であった。
【0094】
[電解液の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、メチルエチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)を、3:3:4の体積比で混合した。当該混合溶媒に、LiPF6を1.4mol/Lの濃度となるように溶解させて電解液を調製した。
【0095】
[非水電解質二次電池の作製]
負極、セパレータ、正極の順で積層し、これを巻回した後、偏平状に成形して、偏平巻回型の電極体を作成した。そして、負極及び正極を正極端子及び負極端子に接続し、これを、アルミニウムラミネートで構成される外装体内に収容し、上記電解液を注入後、外装体の開口部を封止することにより、非水電解質二次電池を作製した。
【0096】
作製した非水電解質二次電池を一対の弾性体(120MPaの圧縮弾性率を有する発泡ウレタン)で挟み、さらに、これらを一対のエンドプレートで挟んで固定することにより、二次電池モジュールを作製した。
【0097】
<実施例2>
正極集電体として、熱伝導率が138W/(m・K)、Mg含有量が2.4質量%であるAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、60MPaの圧縮弾性率を有する発泡ウレタンを使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0098】
<実施例3>
正極集電体として、熱伝導率が117W/(m・K)、Mg含有量が4.7質量%であるAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、60MPaの圧縮弾性率を有する発泡ウレタンを使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0099】
<実施例4>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、40MPaの圧縮弾性率を有する発泡ウレタンを使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0100】
<実施例5>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、5MPaの圧縮弾性率を有する発泡ウレタンを使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0101】
<実施例6>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、実施例2の発泡ウレタンを使用したこと、第2の負極合材スラリーの調製において、27MPaの10%耐力、0.9m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子B)を使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。実施例6の負極における第1層及び第2層の空隙率を測定したところ、22%及び26%であった。
【0102】
<実施例7>
正極集電体として、熱伝導率が65W/(m・K)、Mg含有量が93質量%であるAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、実施例2の発泡ウレタンを使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0103】
<実施例8>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、実施例2の発泡ウレタンを使用したこと、第1の負極合材スラリーの調製において、1.8MPaの10%耐力、4.4m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子A)を使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。実施例8の負極における第1層及び第2層の空隙率を測定したところ、23%及び24%であった。
【0104】
<実施例9>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、実施例2の発泡ウレタンを使用したこと、負極作製における第1の負極合材スラリー由来の塗膜に掛ける圧延力を実施例1の0.75倍としたこと、及び第2の負極合材スラリー由来の塗膜に掛ける圧延力を実施例1の0.7倍としたこと以外は実施例8と同様に二次電池モジュールを作製した。実施例9の負極における第1層及び第2層の空隙率を測定したところ、28%及び31%であった。
【0105】
<実施例10>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、弾性体として、実施例2の発泡ウレタンを使用したこと、第2の負極合材スラリーの調製において、11MPaの10%耐力、3.5m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子B)を使用したこと、負極作製における第1の負極合材スラリー由来の塗膜に掛ける圧延力を実施例1の0.8倍としたこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。実施例10の負極における第1層及び第2層の空隙率を測定したところ、25%及び23%であった。
【0106】
<比較例1>
正極集電体として、熱伝導率が190W/(m・K)、Mg含有量が0質量%であるAl箔を使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0107】
<比較例2>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、第1の負極合材スラリーの調製において、5.7MPaの10%耐力、1.5m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子A)を使用したこと、第2の負極合材スラリーの調製において、27MPaの10%耐力、0.9m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子B)を使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。比較例2の負極における第1層及び第2層の空隙率を測定したところ、31%及び26%であった。
【0108】
<比較例3>
正極集電体として、実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと、第2の負極合材スラリーの調製において、1.8MPaの10%耐力、4.4m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子(炭素系活物質粒子B)を使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。比較例3の負極における第1層及び第2層の空隙率を測定したところ、25%及び28%であった。
【0109】
<比較例4>
弾性体として、2800MPaの圧縮弾性率を有するポリエチレンテレフタレートを使用したこと以外は実施例3と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0110】
<比較例5>
5.7MPaの10%耐力、2.9m2/gのBET比表面積を有する黒鉛粒子と、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)のディスパージョンと、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)とを、100:1:1の固形分質量比で混合し、分散媒として水を用いて、負極合材スラリーを調製した。この負極合材スラリーを銅箔からなる負極集電体の両面に塗布し、塗膜を乾燥し、圧延することにより、負極集電体上に、負極活物質層を形成した。これを所定の電極サイズに切断して負極を得た。負極活物質層の空隙率を測定したところ、24%であった。この負極を使用したこと、正極集電体として実施例3のAl-Mg合金箔を使用したこと以外は実施例1と同様に二次電池モジュールを作製した。
【0111】
[釘刺し試験における電池の発熱量の測定]
各実施例及び各比較例の二次電池モジュールに対し、25℃の温度条件下で、SOC100%の充電状態に調整した。次いで、半径0.5mm、先端部の曲率φ0.9mmの針を、0.1mm/secの速度で、非水電解質二次電池の厚み方向に正極と負極とを連通するように突き刺し、内部短絡を発生させた。そして、正負極間に電流計を接続しておき、短絡時に外部負荷に流れた電流量を測定することにより、発熱量を算出した。
【0112】
表1に、各実施例及び各比較例で使用した正極集電体、負極活物質層(第1層及び第2層)、弾性体の物性、並びに各実施例及び各比較例の試験結果を示す。なお、比較例5の負極活物質層の物性は第2層の欄に記載した。
【0113】
【0114】
10%耐力が3MPa以下の第1の炭素系活物質粒子を含む第1層と、10%耐力が5MPa以上の第2の炭素系活物質粒子を含む第2層と、を有する積層構造の負極活物質層を備える二次電池モジュールにおいて、弾性体の圧縮弾性率が5MPa~120MPaであり、Al及びAl以外の元素を含み、熱伝導率が65W/(m・K)~150W/(m・K)の範囲である正極集電体を用いた実施例1~10はいずれも、上記要件を満たさない比較例1~5と比べて、釘刺し試験における電池の発熱量が抑制された。
【符号の説明】
【0115】
1 二次電池モジュール、2 積層体、4 エンドプレート、6 拘束部材、8 冷却板、10 非水電解質二次電池、12 絶縁スペーサ、13 筐体、14 外装缶、16 封口板、18 出力端子、38 電極体、38a 正極、38b 負極、38d セパレータ、39 巻き芯部、40 弾性体、42 硬質部、42a 基材、44 軟質部、44a貫通孔、46 凹部、46a 芯部、46b 線部、50 正極集電体、52 正極活物質層、54 負極集電体、56 負極活物質層、56a 第1層、56b 第2層、58 釘。