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特許7599287ヘッドロス低減用のガス拡散装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ヘッドロス低減用のガス拡散装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/86 20060101AFI20241206BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20241206BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20241206BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20241206BHJP
【FI】
H01M4/86 M
H01M4/96 B
H01M4/96 M
H01M4/86 B
H01M4/88 C
H01M4/88 Z
H01M8/10
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020114184
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2021022559
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-31
(31)【優先権主張番号】1907259
(32)【優先日】2019-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ポアロ-クローヴェジエ ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ルイヨン ルドビク
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072000(JP,A)
【文献】特開2008-071633(JP,A)
【文献】特開2006-019162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/86
H01M 4/96
H01M 4/88
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
-複合材料層(23)と、第1導電層(20)と、第2導電層(21)との積層体を備えるガス拡散装置(2)であって、
-導電性繊維と該導電性繊維を被覆する重合樹脂とを含む複合材料層(23)と、
-第1面と第2面との間に開放気孔を有し、第2面(200)に第1ボイド(201)を含む第1導電層(20)であって、第1面(202)は前記複合材料層(23)の前記導電性繊維と電気的に接触し、前記重合樹脂は第1面(202)上の前記第1導電層(20)の一部を被覆し、
-前記第1導電層(20)と前記複合材料層(23)との間に介在する第2導電層(21)であって、前記第2導電層(21)は、第1及び第2面(212、210)との間に開放気孔を有し、第1面と第2面との間に第1貫通ボイド(211)を含み、前記導電性繊維は前記第2導電層(21)の第1面(212)と接触し、
-前記重合樹脂は、前記第2導電層(21)の前記第1貫通ボイド(211)を通過し、前記第1導電層(20)の第1面(202)まで延びる、
ことを特徴とする、
ガス拡散装置(2)。
【請求項2】
前記第1導電層(20)の前記第1ボイド(201)は、閉じた輪郭を有する、
請求項1に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項3】
前記第1導電層(20)は、第2面に他のボイド(201)を有し、これらのボイドは分離している、
請求項1又は2に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項4】
前記第1導電層(20)の前記第1ボイド(201)と前記第2導電層(21)の前記第1貫通ボイド(211)とが重なり合わないことを特徴とする、
請求項1~3のいずれか1項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項5】
前記第2導電層(21)は、前記第1導電層(20)の前記第1ボイド(201)と少なくとも部分的に重なる第2ボイド(211)を含む、
請求項4に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項6】
前記積層体は、第1面と第2面との間に開放気孔を有し、第1面と第2面との間に第2貫通ボイドを有する第3導電層(22)を備え、
前記第3導電層(22)は前記第2導電層(21)と前記複合材料層(23)との間に介在し、前記第3導電層(22)は前記第2導電層(21)の前記第1貫通ボイド(211)に重畳された第2貫通ボイド(221)を有し、前記重合樹脂は前記第3導電層(22)の前記第2貫通ボイド(221)を貫通して前記第1導電層(20)の第1面(202)まで延在する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項7】
前記樹脂は、前記第1導電層(20)の前記第2面(200)に達していないことを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項8】
前記第1導電層(20)は、発泡体、フェルト、又は織物の層である、
請求項1~7のいずれか1項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項9】
前記樹脂は、フェノール樹脂であることを特徴とする
請求項1~8のいずれか1項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項10】
前記第1導電層(20)の前記第1ボイド(201)は貫通したボイドであることを特徴とする
請求項1~9のいずれか1項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項11】
前記第1導電層(20)の前記第1ボイド(201)は、0.4mm未満の幅を有する溝であることを特徴とする
請求項1~10のいずれか1項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項12】
前記第1導電層(20)の厚さは、0.5mm未満であることを特徴とする
請求項1~11のいずれか1項に記載のガス拡散装置(2)。
【請求項13】
-請求項1~12のいずれか1項に記載の第1及び第2ガス拡散装置(8、9)と、
-プロトン交換膜(71)を含む膜電極アセンブリ(7)であって、前記第1及び第2ガス拡散装置(8、9)の間に配置される膜電極アセンブリと、
を含む、
電気化学システム(700)。
【請求項14】
-複合材料層(23)と、第1導電層(20)と、第2導電層(21)との積層体を提供し、前記第2導電層(21)は、前記第1導電層(20)と前記複合材料層(23)との間に介在され、前記複合材料層(23)は、導電性繊維と、該導電性繊維に含浸される重合性樹脂とを含み、前記第1導電層(20)は、第1面と第2面(202、200)との間に開放気孔を有し、前記第2導電層(21)は、第1面と第2面(212,210)との間に開放気孔を有し、その第1面と第2面との間に第1貫通ボイド(211)を有し、
-前記複合材料層(23)を圧縮して、前記導電性繊維を前記第1導電層(20)の第1面(202)に電気的に接触させ、前記樹脂を前記第1導電層(20)の第1面(202)を通って流れさせ、前記導電性繊維を前記第2導電層(21)の第1面(212)に接触させ、前記樹脂を前記第2導電層(21)の前記第1貫通ボイド(211)を通って前記第1導電層(20)の第1面まで流れるようにし、
-流動した前記樹脂を重合させ、
-前記第1導電層の第2面(200)に第1ボイド(201)を形成する、
ガス拡散装置(2)の製造方法。
【請求項15】
前記積層体は、0.5から1.5MPaの間の圧力で圧縮される、
請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
形成された前記第1ボイド(201)は、前記第1導電層(20)の第1面と第2面との間の貫通したボイドである、
請求項14又は15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学反応器の製造に関し、特に、電気化学反応器のためのガス拡散装置の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学反応器の中で、燃料電池スタックはかなりの開発が行われている。燃料電池スタックは、将来の量産自動車の動力源として、又は航空学における補助動力源として、特に構想されている。燃料電池スタックは、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する電気化学装置である。燃料電池スタックは、直列の複数のセルのスタックを含む。各セルは、典型的には、約1ボルトの電圧を生成し、これらを積み重ねて、より高いレベル、例えば、約100ボルトの電源電圧を生成することができる。
【0003】
公知のタイプの燃料電池スタックの中で、特に低温のプロトン交換膜(PEM)燃料電池スタックについて言及することができる。そのような燃料電池スタックは、コンパクト性に関して特に有利な特性を有する。各セルは、プロトンのみを通過させ、電子は通過させない電解質膜を含む。膜は、膜電極アセンブリ(MEA)を形成するために、第1面上にアノードを、第2面上にカソードを含む。
【0004】
アノードでは、燃料として用いられる二水素が酸化され、膜を通過するプロトンが生成される。このようにして膜はイオン伝導体を形成する。この反応で生成された電子はフロープレートに向かって移動し、セルの外部の電気回路を通って電流を形成する。陰極では酸素が還元され、プロトンと反応して水が生成される。
【0005】
燃料電池スタックは、互いに積み重ねられた複数のいわゆるバイポーラプレートを含むことができ、これらのプレートは、例えば、金属製である。膜は2つのバイポーラプレートの間に配置される。
【0006】
バイポーラプレートは、アノードで発生した電子を集めるために導電性である。バイポーラプレートは、アノード流とカソード流を分離する密閉セパレータの役割も果たす。バイポーラプレートはまた、スタックをクランプするために使用される力を伝達する機械的役割を果たし、これは電気接点の品質にとって不可欠である。電子伝導はバイポーラプレートを介して起こり、イオン伝導は膜を介して得られる。
【0007】
ある設計によれば、試薬の流れは、バイポーラプレートを形成するために溶接されるスタンプされた金属シート内の流路によって案内される。金属シートは良好な機械的性質を有し、二水素の拡散を制限する効果的な障壁を形成する。しかし、金属シートは耐食性が低い。さらに、その劣化は、膜を汚染し、燃料電池スタックの性能及び寿命を低下させるカチオンを形成し得る。これらの問題を低減するために、金属シートの表面は頻繁に処理される。しかしながら、表面処理は、特定の用途に対して十分に耐食性を改善せず、無視できない追加コストを発生させる。さらに、この設計のバイポーラプレート、すなわち、スタンピングによって規定される流路を有するバイポーラプレートは、流路の寸法がスタンピングプロセスによって制約されるという欠点を有する。したがって、最小寸法は、流路の幅又は流路を分離するリブの幅に関して尊重しなければならない。したがって、燃料電池スタックにおける電流密度の均一性は最適ではない。
【0008】
燃料電池技術の普及にブレーキをかける要因の1つは、燃料電池スタックのさまざまな部品を製造し、組み立てるコストである。この設計のバイポーラプレートの製造は、特に、燃料電池スタックのコストの大部分を代表する。
【0009】
別の設計によれば、バイポーラプレートは滑らかであり、試薬の流れ及び拡散は、バイポーラプレートと膜電極アセンブリとの間に介在するガス拡散層を介して達成される。反応生成物と非反応種は、流れによるエントレインメントによってガス拡散層を出る場所に排気される。ガス拡散層は、開放気孔を有する多孔質層、例えばフェルト又は炭素織物の層の形態をとる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ガス拡散層は、試薬流のヘッドロスを低減するのに十分な厚さを有しなければならず、これにより燃料電池スタックのバルクが増大する。また、これらのバイポーラプレートは、特定の用途に対して比較的重い。さらに、バイポーラプレートにガス拡散層を固定することが望ましいことが分かる。さらに、ガス拡散層とバイポーラプレートとの間の電気接触抵抗は比較的高いままである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、これらの欠点の1つ以上を解決することを目的とする。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲に定義されるようなガス拡散装置に関する。
【0012】
本発明はまた、従属クレームの変形に関する。明細書又は従属クレームの各特徴は、中間的な一般化を構成することなく、独立クレームの特徴と独立して組み合わせることができることを当業者は理解するであろう。
【0013】
本発明はまた、従属クレームに定義されるようなガス拡散装置を製造する方法に関する。
【0014】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照して、完全に非限定的な表示により、以下に示される説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】燃料電池スタックの膜電極アセンブリ及びバイポーラプレートのスタックの例の分解斜視図である。
【0016】
図2】製造プロセスのステップが詳細に説明される、1つの例示的な実施例に係る、空隙を含む導電性多孔質層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0017】
図3】製造プロセスのステップが詳細に説明される、1つの例示的な実施例に係る、空隙を含む導電性多孔質層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0018】
図4】例示的な実施例の空隙を含む導電性多孔質層を備えるガス拡散装置の上方からの部分図である。
【0019】
図5】例示的な実施例の1つの変形例に係る、空隙を含む導電性多孔質層の上方からの部分図である。
【0020】
図6】例示的な実施例の別の変形例に係る、空隙を含む導電性多孔質層の上方からの部分図である。
【0021】
図7】例示的な実施例の別の変形例に係る、空隙を含む導電性多孔質層の上方からの部分図である。
【0022】
図8】例示的な実施例の別の変形例に係る、空隙を含む導電性多孔質層の上方からの部分図である。
【0023】
図9】製造プロセスのステップが詳細に説明される、別の例示的な実施例に係る空隙含有層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0024】
図10】製造プロセスのステップが詳細に説明される、別の例示的な実施例に係る空隙含有層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0025】
図11】製造プロセスのステップが詳細に説明される、別の例示的な実施例に係る空隙含有層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0026】
図12】製造プロセスのステップが詳細に説明される、別の例示的な実施例に係る空隙含有層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0027】
図13】製造プロセスのステップが詳細に説明される、別の例示的な実施例に係る空隙含有層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0028】
図14】本発明の一実施形態に係る、2つの空隙を含む導電性多孔質層を備えるガス拡散装置の断面図であり、その製造プロセスの様々な工程が詳細に記載されている。
【0029】
図15】本発明の一実施形態に係る、2つの空隙を含む導電性多孔質層を備えるガス拡散装置の断面図であり、その製造プロセスの様々な工程が詳細に記載されている。
【0030】
図16図14の2つの多孔質層を備えるガス拡散装置の上方からの部分図である。
【0031】
図17】第3実施形態の一変形例に係るガス拡散装置の上方からの部分図である。
【0032】
図18】本発明の別の実施形態による、3つの空隙を含む導電性多孔質層を備えるガス拡散装置の断面図である。
【0033】
図19】その製造プロセスの最後及び最中の、本発明に係るガス拡散装置を含む電気化学システムの部分断面図である。
【0034】
図20】その製造プロセスの最後及び最中の、本発明に係るガス拡散装置を含む電気化学システムの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、燃料電池スタック4のセル1のスタックの概略分解斜視図である。燃料電池スタック4は、複数のセル1を重ね合わせて構成されている。セル1は、プロトン交換膜セル又はポリマー電解質膜セルである。
【0036】
燃料電池スタック4は、燃料源40を備えている。燃料源40は、各セル1の入口に二水素を供給する。また、燃料電池スタック4は、酸化剤源42を備えている。酸化剤源42は、各セル1の入口に空気を供給する。空気の酸素が酸化剤として用いられる。各セル1はまた、排気チャネルを含む。1つ又は複数のセル1は、冷却回路を有する。
【0037】
各セル1は、1つの膜電極アセンブリ110又はMEA110を備える。膜電極アセンブリ110は、電解質113と、カソード(不図示)と、アノード111とを備え、カソードとアノードは、電解質の両側に配置され、電解質113に固定されている。電解質層113は、セル内に存在するガスに対して不透過でありながらプロトン伝導を可能にする半透過性膜を形成している。電解質層はまた、アノード111とカソードとの間の電子の通過を阻止する。
【0038】
隣り合うMEA間には、バイポーラプレート5が配置されている。各バイポーラプレート5は、反対の外面上に陽極流路及び陰極流路を画定する。いくつかのバイポーラプレート5は、有利には、2つの連続する膜電極アセンブリ間の冷却剤のための流路もまた画定する。
【0039】
周知のように、燃料電池スタック4の動作中、MEAと一方のバイポーラプレートとの間に空気が流れ、このMEAと他方のバイポーラプレートとの間に二水素が流れる。アノードでは二水素が酸化されてプロトンが生成され、MEAを通過する。カソードでは酸素が還元されてプロトンと反応して水が生成される。水素の酸化により発生した電子はバイポーラプレート5に集められる。燃料電池スタックに接続された電気負荷に印加されて電流を形成する。その動作中、燃料電池スタックの1つのセルは、通常、アノードとカソードとの間に約1VのDC電圧を生成する。
【0040】
スタックはまた、周辺シール及び膜補強材(ここでは図示されていない)を含んでもよい。また、各セル1は、アノードと一方のバイポーラプレートとの間に配置された一方のガス拡散層(不図示)と、カソードと他方のバイポーラプレートとの間に配置された他方のガス拡散層とを備えていてもよい。
【0041】
複合材料層は、重合性樹脂を予め含浸させた繊維の形態で販売されることが多い。これらの複合材料層は、その形態又はロール又はリールでしばしば分配される。炭素繊維のような補強繊維は導電性である。
【0042】
予備含浸繊維を用いた複合材料層は、樹脂の重合前に成形するために容易に変形可能であるという利点を有する。樹脂の重合により、これらの層は非常に硬くなる。本発明は、例えば、バイポーラプレートと結合させることができるガス拡散装置の形成において、このような予備含浸繊維の一定数の特性を利用することを目的とする。
【0043】
本発明は、ガス拡散装置を提供する。本発明は、導電性繊維及びこれらの繊維を含浸させた重合樹脂を含む複合材料層と、第1及び第2対向面の間に開放気孔を有する導電層との重ね合わせを提供する。第2面にボイドが生成され、第1面は複合材料層の導電性繊維と電気的に接触し、重合樹脂が第1面上の導電層の一部を被覆する。
【0044】
このようにして、複合材料層と導電層との間の機械的結合が確保され、導電層と複合材料層との間の最適な電気的接続が確保され、導電層の平面内の流れにおけるヘッドロスが、この流れがボイドを通しても発生する可能性があるため、低減される。さらに、このようにして形成されたガス拡散装置は、複合材料の剛性から利益を得る。
【0045】
図2は、例示的な一例によるガス拡散装置2の部分断面図である。装置2は、開放気孔の導電層20を含む。層20の気孔は開いている。さらに、層20は、
下面202、
層20の上面200に形成されているボイド201(ボイド201は、ここでは面200と202との間の貫通ボイドである。)、
層20の全厚よりも小さい厚さの領域209(その下面は面202であり、重合樹脂を含む)、
を有している。
多孔質の層20は、有利には0.5mm未満の厚さを有する。
【0046】
装置2は、有利には炭素から作られる導電性繊維を含む複合材料層23も含む。層23は上面230と下面232を有し、重合樹脂が繊維を被覆する。重合樹脂は、例えばフェノール樹脂である。このような重合された樹脂は、装置2を通過するために必要な試薬の1つである水素に対して不透過性である。樹脂が重合されると、層23は剛性の複合層を形成する。複合層23は、その厚さにおいて導電性である。
【0047】
装置2は剛性で導電性であり、一体構造である。装置2は、上述した要素の重ね合わせを含む。
多孔質層20はスタックの外側端部に位置し、開放ボイド201を有しており、
複合材料からなる層23は、積層体の反対側の外側端部に位置し、面202と230とが接触する。
【0048】
重合性樹脂で被覆された導電性繊維を含む複合材料層23(例えば、予め含浸させた繊維の形態をとる)に、開放気孔の導電層20を重ね合わせる。次に、この重ね合わせに、図3に示すように、面200及び232に垂直な方向に均一な圧力が加えられる(白いブロックの矢印で示される)。加えられる圧力は、有利には、0.5から1.5MPaの間で構成される。この圧縮によって、繊維の電気的相互接続が、これらの繊維の層20の面202への浸透を介して確保され、これらの繊維と層20との間の機械的及び電気的接触の両方が保証される。
【0049】
圧縮することにより、加圧方向と平行な方向に、多孔質層20への層23に含まれる重合性樹脂の流動(黒いブロック矢印で示される)が可能となる。層23から層20に垂直に流れる樹脂は、有利には、層20の全体積を含浸させない。層23から層20に垂直に流れる樹脂は、面202を通過するが、層20の反対の外面200には到達しない。したがって、層20は、樹脂が含浸されていないすべての領域において、その開放気孔を介して流体の流れに関与し得る。
【0050】
例えば、層20の体積が層23の体積よりも大きくなるようにしてもよい。したがって、層23は、流動し、導電性多孔質層の全体積を含浸するのに十分な量の樹脂を含まない。
【0051】
重ね合わせの圧縮が維持され、流動後の樹脂が重合される。最初に、重合性樹脂を含む層23は、固化した導電性複合層を形成する。層23から面202を通って層20に流れた過剰の樹脂は導電層208を形成し、その流れの後に重合樹脂により固化される。層20は、装置2の上部外端においてその開放気孔率を維持する。特に、樹脂は層20の面200に達しない。
【0052】
次に、ボイド201は、図示の断面の平面に垂直な方向において、層20の面200に形成される。ボイド201を形成するこの工程は、例えば、機械加工によって実施することができる。ボイド201は、有利には、面200と202との間の貫通ボイドである。図示の例では、複数のボイド201が、その表面に分布するように層20内に生成される。ボイド201は、層23との重ね合わせの前に、層20内に生成されてもよい。
【0053】
図4は、上述したガス拡散層2の変形例の上方からの部分図を示す。ボイド201は、層20の面200に形成される。ボイド201は閉じた輪郭を有する。したがって、試薬は、層20を通る試薬の流れにおけるヘッドロスの過度に大きな不均衡を避けるために、層20の開放気孔を通って流れるように強制される。ボイド201は、試薬の流れの大きな断面積を得ることができるように、有利には、層20の上部外面200と下部外面(図示されない)との間の貫通ボイドである。ボイド201は、有利には分離されており、例えば、一定の長さの平行な直線状の溝の形態をとる。溝は、有利には、機械加工プロセス又はレーザーアブレーション、又は任意の他の切削プロセスによって得ることができる。レーザーアブレーションは、特に、シェルを形成して、その後の樹脂の適時でない流れを回避することを可能にする。従って、溝は不連続な流路を形成する。また、不連続な流路は、特にこれらの溝が層20及び23の組立前に生成される場合には、層20が十分な剛性を維持することを可能にする。溝の寸法のばらつきも小さくすることができる。従って、溝の幅は典型的には0.4mmより小さく、有利には0.2mmより小さい。
【0054】
流体は、(図4の実線の直線矢印で示されるように)一部は形成されたボイド201を通り、(図4の破線の直線矢印で示されるように)一部は多孔質層20の材料を通る。層20は、例えば、発泡体、フェルト又は織物で作られる。
【0055】
図5は、例示的な実施例の別の変形例に係る、ボイド201を含む導電性多孔質層20の上部外面200の上方からの部分図を示す。ボイド201は、それぞれ閉じた輪郭を有し、例えば、上部外面200と層20の(図示されない)下部外面との間の貫通ボイドであってもよい。
【0056】
この変形例では、ボイド201は有利にはZ字形状を有し、Zの角度は合計で90°である。このようにして形成されたボイド201は、例えば、面200上において、一方では縦方向に、他方では横方向に互いに整列している。
【0057】
図6は、例示的な実施例の別の変形例に係る、ボイド201を含む導電性多孔質層20の上部外面200の上方からの部分図を示す。ボイド201は、それぞれ閉じた輪郭を有し、例えば、上部外面200と層20の(図示されない)下部外面との間の貫通ボイドであってもよい。
【0058】
この変形例では、ボイド201は有利にはL字形状を有する。このように形成されたボイド201は、例えば、対称軸を挟んで対になってグループ化されている。それぞれの対は、有利には、一方では縦方向に、他方では横方向に、表面200上で互いに整列している。
【0059】
図7は、別の変形例に係る、ボイド201を含む導電性多孔質層20の上部外面200の上方からの部分図を示す。ボイド201は、それぞれ閉じた輪郭を有し、例えば、上部外面200と層20の(図示されない)下部外面との間の貫通ボイドであってもよい。
【0060】
この変形例では、ボイド201は有利にはT字形状を有する。このように形成されたボイド201は、例えば、対称軸を挟んで対になってグループ化されている。それぞれの対は、有利には、一方では縦方向に、他方では横方向に、表面200上で互いに整列している。
【0061】
図8は、例示的な実施例の別の変形例に係る、ボイド201を含む導電性多孔質層20の上部外面200の上方からの部分図を示す。ボイド201は、それぞれ閉じた輪郭を有し、例えば、上部外面200と層20の(図示されない)下部外面との間の貫通ボイドであってもよい。
【0062】
この変形例では、ボイド201は有利には山形形状を有する。このようにして形成されたボイド201は、ここでは縦方向に整列され、2つの隣接する列は縦方向にオフセットされている。
【0063】
図9は、別の例示的な例に係る、ガス拡散装置6の部分断面図である。装置6は、以下を有する導電性多孔質層61を含む。
下面68、
上面67に形成されたボイド64、
層61の全厚よりも薄く、有利にはボイド64の表面に達しない領域619(領域619の下面は、重合樹脂を含む面68である。)。
多孔質層61は、有利には、0.5mm未満の厚さを有する。
【0064】
装置6は、導電性繊維から形成された複合材料層62も含む。樹脂及び繊維は、第1実施例で説明したものと同じ種類であってもよい。樹脂が重合されると、層62は剛性の複合層を形成する。複合層62は、その厚さにおいて導電性である。
【0065】
装置6は剛性で導電性であり、一体構造である。装置6は、上述の要素の重ね合わせから形成される。
多孔質層61は、スタックの外側端部に位置し、フリーボイド64を有しており、
複合層62は、スタックの反対側の外側端部に位置する。
【0066】
重ね合わせを得るために、図10に断面図を示す導電性多孔質層61を予め設けてもよい。層61は、面67と面68との間に開放気孔を有する。
【0067】
図11に示す構成は、ボイド64を要素61の外面67に形成することによって得られる。ボイド64を形成するこの工程は、例えば機械加工によって行うことができる。
【0068】
次に、複合材料層62が、層61の面68と接触し、ボイド64の反対側に配置される。層62は、導電性繊維を含む。(図示されない)重合性樹脂が繊維に浸透する。図12に示す構成は、層61及び62を重ね合わせて得られる。
【0069】
図13に示されるように、均一な圧力(白いブロックの矢印で示される)が、層61の表面67、68に垂直な方向に加えられる。この圧縮は、これらの繊維の層61の表面68への浸透を介して繊維の電気的相互接続を確保することを可能にし、これらの繊維と層61との間の機械的及び電気的接触の両方が保証される。圧縮は、加圧方向と平行な方向に、層62に含まれる樹脂の多孔質層61への流れ(黒いブロック矢印で示される)も可能にする。層62から層61に垂直に流れる樹脂は、層61の全体積に浸透しない。例えば、層61の体積が層62の体積よりも大きくなるようにすることができる。具体的には、層62は、層61の全体積に流動して浸透するのに十分な量の樹脂を含まないことになる。層62から層61に垂直に流れる樹脂は、面68を通過するが、層61の反対の外面67には到達しない。有利なことに、ボイド64は樹脂で充填されないので、試薬はこのボイド64を通過する。重ね合わせの圧縮は維持され、流動後に樹脂は重合する。
【0070】
図14は、本発明の一実施形態による、一体構造の剛性導電性ガス拡散装置の部分断面図を示す。装置は、上部外面200内に生成されたボイド201を含む、導電性多孔質層20を含み、層20はまた下面202を有する。ボイド201は、有利には、面200と202との間の貫通ボイドである。
【0071】
また、装置2は、例示的な実施例と同様の構造を有する複合材料層23を含む。層23は、上面230及び反対側の下面232を有し、重合樹脂が繊維を被覆する。
【0072】
また、装置2は、その厚さにおいて導電層21を含み、この層21は、その上面210に生成されたボイド211を含む。層21は、層20と同じ構造及び同じ組成を有する。層21は、下面212を有する。ボイド211は、層20まで延びる重合樹脂で充填されている。層21自体は、少なくとも部分的に重合樹脂が含浸されている。
【0073】
装置2では、面202と面210が接触している。面212及び230も接触している。従って、層21は、層20と23との間に介在する。重合樹脂で充填されたボイド211と垂直な層20は、有利には、重合され固化された樹脂の領域208を有する。したがって、ボイド211を通って流れた樹脂は、層20と23との間の機械的結合を確実にすることができる。さらに、ボイド211は重合性樹脂の流動を促進し、層21の材料はこの流動を阻止する。したがって、樹脂は、層20の領域208のみを含浸し、ボイド201を充填しない。したがって、層20を通る試薬の流れは、その開口気孔及びボイド201を通して促進される。有利には、層21の体積の一部分のみが樹脂で含浸され、この層21も試薬の流れによって通過させることができる。
【0074】
本実施形態のガス拡散装置2を得るには、ボイド201を有する開放気孔の導電層20と、ボイド211を有する開放気孔の導電層21と、重合性樹脂で被覆された導電性繊維を含む複合材料層23とを積層する。
【0075】
次に、図15に示すように、この重ね合わせに、層20の面200及び層23の面232に垂直な方向に、均一な圧力が加えられる(白いブロックの矢印で示される)。加えられる圧力は、有利には、0.5から1.5MPaの間で構成される。この圧縮によって、層23の炭素繊維の電気的相互接続が、これらの繊維の層21の面212への浸透を介して確保され、これらの繊維と層23との間の機械的及び電気的接触の両方が保証される。圧縮はまた、層21と層20との接触を介して、それぞれ面210及び202を介して電気的相互接続を確保することを可能にする。
【0076】
また、圧縮することにより、加圧方向と平行な方向に、層23に含まれる重合性樹脂の多孔質層20、21への流動(黒いブロック矢印で示される)が可能となる。層23から層20に層21を通って垂直に流れる樹脂は、有利には、層20の全体積を含浸させない。層23から層21に垂直に流れる樹脂は、面212を通過するが、層21の反対の外面210には到達しない。層21から層20に垂直に流れる樹脂は、面202を通過するが、層20の反対の外面200には到達しない。
【0077】
重ね合わせの圧縮を維持し、流動後の樹脂を重合させる。最初に重合性樹脂を含む層23は、固化した導電性複合層を形成する。層23から層21に流れた過剰の樹脂は固化層を形成する。
【0078】
層23から層21を通って層20に流入した過剰の樹脂は、層20とボイド211との界面に集中して固化領域208を形成する。最後に層20は、装置2の上部外端において多孔質のままである。
【0079】
図16は、本実施形態の一変形例に係る、ボイド201を含む導電性多孔質層20の上部外面200の上方からの部分図を示す。ボイド201は、それぞれ閉じた輪郭を有し、例えば、上部外面200と層20の下部外面(図示されない)との間の貫通ボイドであってもよい。
【0080】
この変形例では、ボイド201は有利には分離される。従って、溝は不連続な流路を形成する。したがって、これらの溝の幅は、典型的には0.4mmより小さく、有利には0.2mmより小さい。
【0081】
ボイド211は、図16に透明に示されており、これらのボイドは、例えば、上述のボイド201に平行である。ここで、層20、21は、ボイド201、211が重ならないように互いに対して配置されている。したがって、ボイド211を通って流れる樹脂は、ボイド201を通る試薬の流れを減少させることなく、層20と機械的結合を形成する。
【0082】
図17に示される別の変形例では、ボイド201及び211は分離している。図17は、導電性多孔質層20の上部外面200を上方から見た部分図であり、ボイド201、211は、それぞれ閉じた輪郭を有し、貫通ボイドである。
【0083】
ここでは、ボイド201と211が部分的に重なり合っている。したがって、層20及び21を通る試薬の流れのための、連続的であるが曲がりくねった流路を形成することが可能である。ボイド201及び211は、垂直方向に伸長してもよい。
【0084】
図4から図9を参照して説明したボイド構造も用いることができる。
【0085】
図18は、第2実施形態に係る、硬質導電性ガス拡散装置の部分断面図を示す。装置は、上部外面200内に生成されたボイド201を含む導電性多孔質層20を含み、層20は下面202を有する。ボイド201は面200と面202との間の貫通ボイドである。
【0086】
装置はまた、前の実施形態及び例示的な実施例を参照して説明したような複合材料層23を含む。
【0087】
本装置はまた、層21及び22を、層20と23の間に介在させて含む。層21及び22は、層20と同じ構造及び同じ組成を有することができる。層21は、その厚さにおいて導電性であり、上面210に生成されたボイド211を含む。層21は、下面212も有する。ボイド211は、有利には、重合樹脂で充填される。層22は、その厚さにおいて導電性であり、上面220に形成されたボイド221を含む。層22はまた下面222を有する。ボイド221は、有利には、重合樹脂で充填されている。ボイド221は、上述したボイド211と少なくとも部分的に重なる。このようにして、ボイド211、221を樹脂が通過したことにより、層20、23を互いに固定することができる。
【0088】
重合樹脂で充填されたボイド211を垂直な層20は、有利には、重合され固化された樹脂の領域208を有する。この領域208の外側では、層20は、有利には、重合樹脂を含む領域を備えない。
【0089】
図19は、本発明に係るガス拡散装置を含むことができる電気化学システム700の部分断面図である。電気化学システム700は、以下を含む。
-ガス拡散装置8、
-ガス拡散装置9、
-装置8、9の間に配置された膜電極アセンブリ7。
【0090】
装置8は、
-導電性多孔質層80(重合され固化された樹脂が含浸された領域812を含む)、
-導電性多孔質層82(重合及され固化された樹脂が含浸された領域813及び832を含む)、
-導電性多孔質層84(重合され固化された樹脂が含浸された領域833を含む)、
-層80と82との間に配置された複合材料層81、
-層82と84との間に配置された複合材料層83。
【0091】
複合材料層81及び83は、重合樹脂で被覆された導電性繊維を含む。
【0092】
ここで、ガス拡散装置8は、燃料電池スタックでの使用に関連してバイポーラプレートを形成する。
【0093】
装置9は、
-導電性多孔質層90(重合され固化された樹脂が含浸された領域912を含む)、
-導電性多孔質層92(重合及され固化された樹脂が含浸された領域913及び932を含む)、
-導電性多孔質層94(重合され固化された樹脂が含浸された領域933を含む)、
-層90と92との間に配置された複合材料層91、
-層92と94との間に配置された複合材料層93。
【0094】
複合材料層91及び93は、重合樹脂で被覆された導電性繊維を含む。
【0095】
ここで、ガス拡散装置9は、燃料電池スタックでの使用に関連してバイポーラプレートを形成する。
【0096】
バイポーラプレート8及び9は、異なる試薬をその外面上に流すことを可能にし、冷媒をその内部部分に流すことを可能にする。
【0097】
膜電極アセンブリ7は、以下から形成される。
-陽極微小孔層70、
-陰極微小孔層72、
-層70と72の間に配置されたプロトン交換膜71。
【0098】
アセンブリ7は、燃料電池スタックでの使用に関連して、2つのバイポーラプレートの間のプロトンの流れを確実にし得る。
【0099】
この構成を得るために、層の適切な重ね合わせが形成された後、図20に示すように、外面に垂直な方向にこの重ね合わせに均一な圧力(白いブロックの矢印で示される)が加えられる。この圧縮によって、層81、83、91及び93の面の表面に存在する繊維の電気的相互接続が、多孔質層80、82、84、90、92及び94の面へのこれらの繊維の浸透を介して保証され、これらの繊維と多孔質層との間の機械的及び電気的接触の両方が保証される。
【0100】
また、圧縮により、層81に含まれる樹脂が、作用する圧力の方向と平行な方向に、多孔質層80及び82に向かって垂直に流れる(黒いブロック矢印で示される)ことができる。層81から層80及び82に垂直に流れる樹脂は、層80及び82の全体積を含浸させない。例えば、層80及び82の体積が層81の体積よりも大きくなるようにしてもよい。具体的には、層81は、導電性多孔質層80及び82の全体積を流動させて含浸させるのに十分な量の樹脂を含まない。
【0101】
また、圧縮により、層83に含まれる樹脂が、作用する圧力の方向と平行な方向に、多孔質層82及び84に向かって垂直に流れる(黒いブロック矢印で示される)ことができる。層83から層82及び84に垂直に流れる樹脂は、層82及び84の全体積を含浸させない。例えば、層82及び84の体積が層83の体積よりも大きくなるようにしてもよい。具体的には、層83は、導電性多孔質層82及び84の全体積を流動させて含浸させるのに十分な量の樹脂を含まない。
【0102】
また、圧縮により、層91に含まれる樹脂が、作用する圧力の方向と平行な方向に、多孔質層90及び92に向かって垂直に流れる(黒いブロック矢印で示される)ことができる。層91から層90及び92に垂直に流れる樹脂は、層90及び92の全体積を含浸させない。例えば、層90及び92の体積が層91の体積よりも大きくなるようにしてもよい。具体的には、層91は、導電性多孔質層90及び92の全体積を流動させて含浸させるのに十分な量の樹脂を含まない。
【0103】
圧縮により、最後に、層93に含まれる樹脂が、作用する圧力の方向と平行な方向に、多孔質層92、94に向かって流れる(黒いブロック矢印で示される)。
【0104】
圧縮は維持され、樹脂は流動後に重合される。以上説明した構成が得られる。
【0105】
最初に重合性樹脂を含む層81は、固化した導電性複合層を形成する。層81から層80、82に流入した過剰の樹脂は、その流入後に重合樹脂により固化した領域を形成する。
【0106】
最初に重合性樹脂を含む層83は、固化した導電性複合層を形成する。層83から層84、82に流入した過剰の樹脂は、その流入後に重合樹脂により固化した領域を形成する。
【0107】
最初に重合性樹脂を含む層91は、固化した導電性複合層を形成する。層91から層90、92に流入した過剰の樹脂は、その流入後に重合樹脂により固化した領域を形成する。
【0108】
最初に重合性樹脂を含む層93は、固化した導電性複合層を形成する。層93から層94、92に流入した過剰の樹脂は、その流入後に重合樹脂により固化した領域を形成する。
【0109】
このシステムは、両方の試薬流体が、構成されるガス拡散装置を通って流れることを可能にし、電子が膜電極アセンブリを通って移動することを可能にするため、燃料電池スタックを形成することを意図したアセンブリとの関連で有利に使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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図18
図19
図20