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  • 特許-リリーフ弁、及びそれを用いた冷却回路 図1
  • 特許-リリーフ弁、及びそれを用いた冷却回路 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】リリーフ弁、及びそれを用いた冷却回路
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/04 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
F16K17/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020115169
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012966
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000228741
【氏名又は名称】日本サーモスタット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢島 勲泰
(72)【発明者】
【氏名】古谷 考利
(72)【発明者】
【氏名】森住 翔太
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-89313(JP,A)
【文献】特開2019-39333(JP,A)
【文献】国際公開第2007/040169(WO,A1)
【文献】実公平7-25500(JP,Y2)
【文献】特開2007-291927(JP,A)
【文献】特開2014-145468(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
F16K 17/00-17/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却媒体の供給管に接続される供給側接続管と、
前記供給側接続管に沿うように配置されて冷却媒体の排出管に接続され、前記供給側接続管とは冷却媒体の流れる向きが逆となる排出側接続管と、
前記供給側接続管と前記排出側接続管とに接続され、且つ前記供給側接続管内に開口する流入口、及び前記排出側接続管内に開口する流出口を有する筐体と、
前記筐体内に設けられた弁座と、
前記筐体内に配置され、前記弁座に着座させることにより前記流入口と前記流出口との連通を遮断し、前記弁座から離れることにより前記流入口と前記流出口とを連通させる弁本体と、
前記弁本体を前記弁座に着座させる方向へ付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流入口は、前記弁本体の中心軸線に対して、前記供給側接続管の延在方向に偏心するように前記筐体に設けられていることを特徴とするリリーフ弁。
【請求項2】
請求項1に記載のリリーフ弁であって、
前記弁本体は、有底筒状であり、
前記筐体には、前記弁本体の外周面に当接して前記弁本体の前記付勢部材による付勢方向への移動が許容されながら、前記筐体内での中心位置が維持される複数のリブが設けられていることを特徴とするリリーフ弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のリリーフ弁であって、
前記流出口は、前記排出側接続管の延在方向に偏心するように前記筐体に設けられていることを特徴とするリリーフ弁。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のリリーフ弁を備え、
前記供給側接続管は、熱交換部に冷却媒体を導くものであり、
前記排出側接続管は、冷却媒体を排出するものであることを特徴とする冷却回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リリーフ弁、及びそれを用いた冷却回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却対象を冷却媒体で冷却する冷却回路が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の冷却回路では、熱交換部に供給される冷却媒体の圧力が高い場合にその熱交換部を保護すべく圧力を逃がすリリーフ弁を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭55-123622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱交換部へ冷却媒体を供給する供給管に接続される供給側接続管と、冷却媒体を排出する排出管に接続される排出側接続管とを互いに沿うように配置し、供給側接続管と排出側接続管とをバイパス接続する部分にリリーフ弁を設けて、供給管での冷却媒体の圧力が高い場合にその圧力をリリーフ弁を介して排出管へ逃がす場合、冷却媒体が供給側接続管の途中から排出側接続管へとUターンするように流れることがある。このような場合、リリーフ弁を通過する流量を確保することが困難となることがある。
【0005】
リリーフ弁における冷却媒体の入口を流入口、冷却媒体の出口を流出口とすると、これは、上述したように冷却媒体がUターンするようにリリーフ弁を設けた場合、流入口とリリーフ弁の弁本体とが同心に配置されているにも関わらず、冷却媒体がUターンする部分の外側、すなわち熱交換部に近い側へ偏って流れるとともに、排出側接続管内の流出口付近に冷却媒体の流速が速くなる部分が生じ、この部分で流路抵抗が高くなるためである。また、リリーフ弁を大型化すれば流量を多くできるが、他の装置との位置関係などの理由により十分な取付スペースを確保できず、リリーフ弁を大型化するにも限界がある。
本発明は、以上の点に鑑み、大型化することなく、流量を確保できるリリーフ弁、及びそれを用いた冷却回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のリリーフ弁は、
冷却媒体の供給管に接続される供給側接続管と、
前記供給側接続管に沿うように配置されて冷却媒体の排出管に接続され、前記供給側接続管とは冷却媒体の流れる向きが逆となる排出側接続管と、
前記供給側接続管と前記排出側接続管とに接続され、且つ前記供給側接続管内に開口する流入口、及び前記排出側接続管内に開口する流出口を有する筐体と、
前記筐体内に設けられた弁座と、
前記筐体内に配置され、前記弁座に着座させることにより前記流入口と前記流出口との連通を遮断し、前記弁座から離れることにより前記流入口と前記流出口とを連通させる弁本体と、
前記弁本体を前記弁座に着座させる方向へ付勢する付勢部材と、
を備え、
前記流入口は、前記弁本体の中心軸線に対して、前記供給側接続管の延在方向に偏心するように前記筐体に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、大型化することなく、熱交換部へ冷却媒体を供給する供給側接続管と、冷却媒体を排出する排出側接続管とを互いに沿うように配置して、供給側接続管と、排出側接続管とのバイパス部分にリリーフ弁を設けて、熱交換部へ供給される冷却媒体の圧力が高い場合に、その圧力をリリーフ弁を介して供給側接続管の途中から排出側接続管へと逃がし、冷却媒体がUターンするように流れる場合であっても、リリーフ弁を大型化することなく、流量を確保できる。
【0008】
なぜなら、流入口が弁本体の中心軸線に対し、熱交換部から離隔する側に偏心している場合には、冷却媒体がUターンする部分に配置される弁本体の周囲を比較的均等に冷却媒体が流れて、排出側接続管で流路抵抗が高くなることを防止できるからである。
【0009】
または、流入口が熱交換部に接近する側に偏心している場合には、リリーフ弁内における熱交換部側、すなわち、冷却媒体が積極的に流れようとする側を冷却媒体が通り易くなるためである。
【0010】
また、本発明においては、前記弁本体を有底筒状とし、前記筐体に、前記弁本体の外周面に当接して前記弁本体の前記付勢部材による付勢方向への移動が許容されながら、前記筐体内での中心位置が維持される複数のリブを設けてもよい。
また、本発明においては、前記流出口は、前記排出側接続管の延在方向に偏心するように前記筐体に設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明によれば、リリーフ弁を通過する冷却媒体の流量を確保し易い。
【0012】
また、本発明の冷却回路は、
前記リリーフ弁を備え、
前記供給側接続管は、熱交換部に冷却媒体を導くものであり、
前記排出側接続管は、冷却媒体を排出するものであることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、熱交換部へ供給される冷却媒体の圧力が高い場合に、その圧力をリリーフ弁を介して供給側接続管の途中から排出側接続管へと逃がし、冷却媒体がUターンするように流れる場合であっても、リリーフ弁を大型化することなく、流を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態のリリーフ弁を示す斜視図。
図2】第1実施形態のリリーフ弁を断面で示す説明図。
図3】第1実施形態のリリーフ弁の第1半体を第2半体側から示す説明図。
図4】第1実施形態のリリーフ弁の第2半体を第1半体側から示す説明図。
図5】本発明の第2実施形態のリリーフ弁の第1半体を第2半体側から示す説明図。
図6】本発明の第3実施形態のリリーフ弁の第2半体を第1半体側から示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
図1から図4を参照して、本発明のリリーフ弁の第1実施形態を説明する。
【0016】
図1を参照して、第1実施形態のリリーフ弁1を備える冷却回路は、内燃機関を冷却して暖められた冷却水などの冷却媒体を、ラジエータ、ヒータコア、AT(自動変速機)/CVT(無段変速機)、EGR(排出ガス再循環)などの熱交換部に循環させて熱交換を行うものであり、熱交換部3に冷却媒体を供給する供給管4と、供給管4の圧力が所定以上となったときに、供給管4の圧力を排出管5へと逃がすリリーフ弁1と、を備えている。
【0017】
リリーフ弁1は、供給管4に接続される供給側接続管4aと、排出管5に接続される排出側接続管5aと、供給側接続管4aと排出側接続管5aとを接続する筐体6と、を備えている。排出側接続管5aは、供給側接続管4aに沿うように平行または略平行に配置されている。筐体6は、供給側接続管4aに接続される筒状の第1半体61と、排出側接続管5aに接続される半球形状の第2半体62と、を重ね合わせて構成される。
【0018】
図2の断面図を参照して、リリーフ弁1は、第1半体61内に収容される有底筒状の弁本体7と、第2半体62内に収容され弁本体7を第1半体61側へ付勢するコイルスプリングからなる付勢部材8と、を備えている。
【0019】
弁本体7は、その開口側が第2半体62側に向くように配置されており、且つ弁本体7の中心軸線方向に沿って筐体6内を移動自在に配置されている。弁本体7の第2半体62側の開口縁には、径方向外側へ張り出す張出部7aが設けられている。この張出部7aが第1半体61の第2半体62側の開口縁61aに当接することにより、流入口61cと後述する流出口62cとの連通が遮断され、且つ弁本体7の第1半体61側への移動が規制される。反対に、張出部7aが開口縁61aから離れると、その隙間を介して流入口61cと流出口62cとが連通して筐体6内を冷却媒体が流れることができるようになる。すなわち、第1半体61の開口縁61aが弁本体7が離着座する弁座として機能する。
【0020】
図3は、第1半体61を第2半体62側から示した図である。図2及び図3を参照して、第1半体61の内周面には、弁本体7が付勢部材8によって押し付けられる方向に沿って延びる3つのリブ61bが周方向に等間隔で配置されている。このリブ61bによって、弁本体7の付勢部材8による付勢方向の移動が許容されながら、弁本体7の筐体6内での中心位置が維持される。また、第1半体61には、供給管4と連通する流入口61cが設けられている。流入口61cは、弁本体7の中心軸線に対して、供給管4の延在方向であって熱交換部3から離隔する方向に、偏心させて設けられている。
【0021】
図4は、第2半体62を第1半体61側から示した図である。図2及び図4を参照して、第1半体61と重ね合わされる第2半体62の開口縁には、第1半体61と第2半体62との間を液密に封止する為のOリング62aが嵌め合わされる環状溝が設けられている。
【0022】
ここで、供給側接続管4a内での冷却媒体の圧力が所定値以上増加すると、冷却媒体の圧力によって弁本体7が付勢部材8の付勢力に抗して第2半体62側に移動する。
【0023】
第2半体62の内周面には、弁本体7と第2半体62との間の隙間を適切に確保するように、弁本体7の第2半体62側への移動量を規制する3つのリブ62bが第2半体62の周方向に等間隔で設けられている。また、第2半体62には、排出管5と連通する流出口62cが設けられている。流出口62cは、弁本体7の中心軸線に対して、同心となるように設けられている。
【0024】
第1実施形態のリリーフ弁1及びこれを用いた冷却回路によれば、リリーフ弁1の大型化を図ることなく、冷却媒体の流量を確保できる。
【0025】
これは、弁本体7の中心軸線に対して、供給側接続管4aの延在方向であって熱交換部3から離隔する方向に、流入口61cを偏心させたことにより、弁本体7に対して比較的均等に冷却媒体が流れて、流出口62c側の流路抵抗が高くなることを防止できるためである。また、弁本体7に対して比較的均等に冷却媒体が流れることにより、弁本体7が傾くことを抑制させることができる。
【0026】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態のリリーフ弁1の第1半体61を第2半体62側から示した図である。第2実施形態のリリーフ弁1は、第1半体61に設けられた流入口61cの形状が熱交換部3から離隔する方向に頭を向けた雪だるま形状であること以外は、全て第1実施形態と同一に構成されている。
【0027】
第2実施形態の流入口61cからも明らかなように、本発明の流入口61cが弁本体7の中心軸線に対して供給管4の延在方向に偏心しているとは、流入口61cの開口面積の中心点が弁本体7の中心軸線に対して供給管4の延在方向にずれていることを意味する。第2実施形態のリリーフ弁1によっても、第1実施形態と同様に、リリーフ弁1の大型化を図ることなく、リリーフ弁1の冷却媒体の流量を確保することができる。
【0028】
[第3実施形態]
図6は、本発明の第3実施形態のリリーフ弁1の第2半体62を第1半体61側から示した図である。第3実施形態のリリーフ弁1は、第2半体62に設けられた流出口62cが弁本体7の中心軸線に対して排出管5の延在方向に偏心して設けられている点、具体的には流出口62cが流入口61cと同様に熱交換部3から離隔する方向に偏心して設けられている点、を除いて、全て第1実施形態と同一に構成されている。第3実施形態のリリーフ弁1によれば、リリーフ弁1の冷却媒体の流量をより適切に確保することができる。
【0029】
[他の実施形態]
第1実施形態においては、真円形状の流入口61c及び流出口62cを説明したが、流入口61cと流出口62cの形状はこれに限らず、例えば、楕円形状としてもよい。
【0030】
また、流入口61cの偏心方向は、供給側接続管4aの延在方向であればよく、例えば、熱交換部3に近づく方向に偏心させてもよい。このように構成した場合には、冷却媒体がリリーフ弁1内の熱交換部3側を流れ易くなり、第1実施形態と同様に、リリーフ弁1の冷却媒体の流量を確保することができるという本発明の作用効果を得ることができる。
【0031】
また、流入口61cを熱交換部3に近づく方向に偏心させた場合、流出口62cは、排出側接続管5aの延在方向であれば、熱交換部3から離隔する方向でも、熱交換部3に近づく方向でも、どちらの方向に偏心させても、冷却媒体の流量をより適切に確保することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 リリーフ弁
3 熱交換部
4 供給管
4a 供給側接続管
5 排出管
5a 排出側接続管
6 筐体
61 第1半体
61a 開口縁(弁座)
61b リブ
61c 流入口
62 第2半体
62a Oリング
62b リブ
62c 流出口
7 弁本体
7a 張出部
8 付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6