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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】医用画像診断装置及び医用画像診断方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/46 20240101AFI20241206BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20241206BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20241206BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61B6/46 502
A61B6/03 577
A61B5/055 390
A61B8/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020135099
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030825
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌史
(72)【発明者】
【氏名】川崎 友寛
(72)【発明者】
【氏名】江積 剛
(72)【発明者】
【氏名】大保 智喜
(72)【発明者】
【氏名】春 雄之介
(72)【発明者】
【氏名】三善 泰介
(72)【発明者】
【氏名】永井 康仁
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 康典
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-238884(JP,A)
【文献】特開2016-106848(JP,A)
【文献】特開2020-058777(JP,A)
【文献】特表2008-534103(JP,A)
【文献】特開平09-248297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166329(US,A1)
【文献】特開2016-123719(JP,A)
【文献】特開2013-111100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術に用いられる医用画像診断装置であって、
治療手技において使用された当該医用画像診断装置の設定に関するプリセットと当該プリセットが使用された際の前記治療手技の状況とが対応付けられた複数のプリセット履歴情報を管理する管理部と、
状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された前記現在の治療手技の状況と、当該医用画像診断装置の設定に関するプリセットと治療手技の状況とが対応付けられた複数のプリセット情報と、前記複数のプリセット履歴情報と、提案プリセットの判定基準を示す提案プリセット判定ルールと、に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定する判定部と、
前記判定された少なくとも一つの提案プリセットに関する制御を実行する制御部と
備えた医用画像診断装置。
【請求項2】
前記判定部は、当該医用画像診断装置によって取得された医用画像を含む前記状況情報に基づいて前記現在の治療手技の状況を判定する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記医用画像に含まれた対象の位置、向き、大きさ、解剖学的構造に関する位置情報、前記医用画像に含まれた他の対象との位置関係に基づいて前記現在の治療手技の状況を判定する、
請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記医用画像に含まれた対象は、カテーテル、バルーン、コイル、ステント、クリップ、解剖学ランドマーク、治療部位のうちの少なくともいずれかである、
請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記判定部は、当該医用画像診断装置が設置された手術室の画像、及び前記手術室において取得された音声データの少なくとも一方を含む前記状況情報に基づいて前記現在の治療手技の状況を判定する、
請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記プリセット履歴情報は、前記現在の手術において使用された当該医用画像診断装置の設定に関するプリセットに対する修正情報をさらに含み、
前記判定部は、前記修正情報を用いて、前記少なくとも一つの提案プリセットを判定する、
請求項に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記少なくとも一つの提案プリセットは、当該医用画像診断装置の撮像部の位置、撮像手法、当該医用画像診断装置の表示部の配置、当該医用画像診断装置の表示部の表示レイアウトのうちの少なくともいずれかに関する設定を含む、
請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記少なくとも一つの提案プリセットは、当該医用画像診断装置と通信可能な外部装置に関する設定を含む、
請求項1乃至のうちいずれか一項に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記外部装置は、バイタル計測装置、造影剤注入装置、他の医用画像診断装置のいずれかである、
請求項に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
手術に用いられる医用画像診断装置であって、
状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された前記現在の治療手技の状況と、提案プリセットの判定基準を示す提案プリセット判定ルールと、に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定する判定部と、
前記判定された少なくとも一つの提案プリセットに関する制御を実行する制御部と、
を備え、
前記少なくとも一つの提案プリセットは、当該医用画像診断装置の表示部の配置、当該医用画像診断装置の表示部の表示レイアウトのうちの少なくともいずれかに関する設定を含む、
医用画像診断装置。
【請求項11】
手術に用いられる医用画像診断装置であって、
状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された前記現在の治療手技の状況に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定する判定部と、
前記判定された少なくとも一つの提案プリセットに関する制御を実行する制御部と、
前記提案プリセットを表示する表示部と、
を備え、
前記制御部は、前記提案プリセットの実行に関するユーザの入力を受け付けると、前記提案プリセットを実行する、
医用画像診断装置。
【請求項12】
手術に用いられる医用画像診断装置で実行される医用画像診断方法であって、
治療手技において使用された当該医用画像診断装置の設定に関するプリセットと当該プリセットが使用された際の前記治療手技の状況とが対応付けられた複数のプリセット履歴情報を管理し、
状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された前記現在の治療手技の状況と、当該医用画像診断装置の設定に関するプリセットと治療手技の状況とが対応付けられた複数のプリセット情報と、前記複数のプリセット履歴情報と、提案プリセットの判定基準を示す提案プリセット判定ルールと、に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定し、
前記判定された少なくとも一つの提案プリセットに関する制御を実行する、
ことを含む医用画像診断方法。
【請求項13】
手術に用いられる医用画像診断装置で実行される医用画像診断方法であって、
状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された前記現在の治療手技の状況と、提案プリセットの判定基準を示す提案プリセット判定ルールと、に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定し、
前記判定された少なくとも一つの提案プリセットに関する制御を実行する、
ことを含み、
前記少なくとも一つの提案プリセットは、当該医用画像診断装置の表示部の配置、当該医用画像診断装置の表示部の表示レイアウトのうちの少なくともいずれかに関する設定を含む、
医用画像診断方法。
【請求項14】
手術に用いられる医用画像診断装置で実行される医用画像診断方法であって、
状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された前記現在の治療手技の状況に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定し、
前記判定された少なくとも一つの提案プリセットに関する制御を実行し、
前記提案プリセットを表示する、
ことを含み、
前記制御を実行することは、前記提案プリセットの実行に関するユーザの入力を受け付けると、前記提案プリセットを実行することを含む、
医用画像診断方法。
【請求項15】
前記プリセット履歴情報は、前記現在の手術において使用された当該医用画像診断装置のプリセットに対する修正情報を含み、
前記提案プリセットを判定することは、前記修正情報を用いて、前記少なくとも一つの提案プリセットを判定することを含む、
請求項12に記載の医用画像診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等に開示の実施形態は、医用画像診断装置及び医用画像診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Interventional Radiology(IVR)では、医用画像診断装置(X線診断装置、超音波診断装置、X線コンピュータ断層撮像装置、磁気共鳴イメージング装置等)を用いて体内の状態をリアルタイムに観察しながら、体内においてカテーテルや穿刺針をすすめ、対象部位の治療が行われる。IVRにおいては、医用画像診断装置のプリセット機能が利用される。このプリセット機能は、医用画像診断装置の複数の設定の各々がプリセットとして登録されており、その中から術者が所望するタイミングで所望するプリセットを選択することで、医用画像診断装置を選択したプリセットに対応する設定にする機能である。従来のプリセット機能には、各設定にプリセット番号を付して管理するもの、各設定の内容を示すサムネイル画像を管理するもの等がある。
【0003】
しかしながら、従来のプリセット機能においては、例えば以下の問題がある。
【0004】
例えば、各設定にプリセット番号を付して管理するプリセット機能の場合、術者はどの番号がどの設定に対応するかを覚えておかなければならない。プリセット番号が多くなると、さらに術者の負担は増えることになる。また、各設定の内容を示すサムネイル画像を管理するプリセット機能の場合であっても、術者は手技と並行して現状に適合するプリセットを選択しなければならないため、術者への負担は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-176996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書等に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、医用画像診断装置のプリセット機能を利用する際の術者の負担を軽減することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る医用画像診断装置は、手術に用いられる医用画像診断装置であって、管理部と、判定部と、制御部とを備える。前記管理部は、治療手技において使用された当該医用画像診断装置の設定に関するプリセットと当該プリセットが使用された際の前記治療手技の状況とが対応付けられた複数のプリセット履歴情報を管理する。前記判定部は、状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された前記現在の治療手技の状況と、当該医用画像診断装置の設定に関するプリセットと治療手技の状況とが対応付けられた複数のプリセット情報と、前記複数のプリセット履歴情報と、提案プリセットの判定基準を示す提案プリセット判定ルールと、に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定する。前記制御部は、前記判定された少なくとも一つのプリセットに関する制御を実行する
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係るX線診断装置を含むX線診断システムの構成例を示す図である。
図2図2は、実施形態に係るX線診断装置の記憶回路に記憶されたプリセット情報管理テーブルの一例を示した図である。
図3図3は、実施形態に係るX線診断装置の記憶回路に記憶されたプリセット情報管理テーブルの他の例を示した図である。
図4図4は、実施形態に係るX線診断装置の記憶回路に記憶されたプリセット履歴情報管理テーブルの一例を示した図である。
図5図5は、実施形態に係るX線診断装置が実行するプリセット履歴情報生成処理の流れを示したフローチャートである。
図6図6は、実施形態に係るX線診断装置が実行するプリセット提案処理の流れを示したフローチャートである。
図7図7は、実施形態に係るX線診断装置による提案プリセットの提示形態の一例を示した図である。
図8図8は、実施形態に係る超音波診断装置の構成を示したブロック図である。
図9図9は、実施形態に係る超音波診断装置の記憶回路に記憶されたプリセット情報管理テーブルの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、実施形態に係る医用画像診断装置について詳細に説明する。実施形態に係る医用画像診断装置は、手術中において、例えば患者をモニタリングするために用いられる。なお、以下の説明では、同一の参照符号を付した部分は同様の動作を行うものとして、重複する説明は適宜省略する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る医用画像診断装置として、手術中に用いられるX線診断装置を例に説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態に係るX線診断装置1を含むX線診断システムの構成を示したブロック図である。図1に示した様に、X線診断システムは、X線診断装置1、光学的撮像装置40、音声入力装置41、手術情報管理装置42を備える。なお、以下においては、説明を具体的にするため、X線診断装置1は、バイプレーン構造による二つの撮像系を持つ循環器用X線診断装置である場合を例として説明する。
【0012】
X線診断装置1は、撮像部2と、高電圧発生装置3と、駆動部4と、寝台装置5と、操作部8と、記憶回路31と、入力インタフェース回路33と、ディスプレイ351と、通信インタフェース回路36と、処理回路37とを備える。なお、記憶回路31、入力インタフェース回路33、ディスプレイ351、通信インタフェース回路36、処理回路37は、例えばコンソール装置30に内蔵される。撮像部2は、第1X線管15、第1コリメータ16、第1X線検出器17、第1支持機構19を含む第1の撮像系と、第2X線管25、第2コリメータ26、第2X線検出器27、第2支持機構29を含む第2の撮像系とを有する。第1支持機構19、第2支持機構29は、それぞれその形状からCアーム機構、Ωアーム機構とも呼ばれる。また、第1支持機構19の移動方向として、Cアーム機構のC形状に沿う方向を「C方向」と呼び、第2支持機構29の移動方向として、Ω形状に沿う方向を「Ω方向」と呼ぶ。
【0013】
高電圧発生装置3は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路と、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、第1X線管15、第2X線管25に印加する高電圧及び第1X線管15、第2X線管25に供給するフィラメント電流を発生する機能を有する。高電圧発生装置3は、第1X線管15、第2X線管25が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行う。高電圧発生装置3は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であっても構わない。
【0014】
第1X線管15、第2X線管25は、それぞれ高電圧発生装置3からの高電圧の印加及びフィラメント電流の供給により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生する真空管である。熱電子がターゲットに衝突することによりX線が発生される。第1X線管15、第2X線管25には、例えば、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。なお、第1X線管15、第2X線管25の型式は、回転陽極型に限定されず、任意の型式のX線管が適用可能である。
【0015】
第1コリメータ16、第2コリメータ26は、それぞれ第1X線管15、第2X線管25におけるX線放射窓の前面に設けられる。第1コリメータ16、第2コリメータ26は、例えば、鉛などの金属板で構成された4枚の絞り羽根を有する。絞り羽根は、例えば入力インタフェース回路33を介して操作者により入力された関心領域に応じて、図示しない駆動装置により駆動される。第1コリメータ16、第2コリメータ26は、駆動装置によりこれらの絞り羽根をスライドさせることで、X線が遮蔽される領域を任意のサイズに調節する。調整された絞り羽根により、第1コリメータ16、第2コリメータ26は、開口領域外のX線を遮蔽する。これにより、第1コリメータ16、第2コリメータ26は、それぞれ第1X線管15、第2X線管25が発生したX線を、被検体(患者)Pの関心領域に照射されるように絞り込む。
【0016】
第1X線検出器17、第2X線検出器27は、それぞれ第1X線管15、第2X線管25により発生されたX線を検出する。第1X線検出器17、第2X線検出器27は、例えば、フラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下、FPDと呼ぶ)である。FPDは、複数の半導体検出素子を有する。半導体検出素子にはX線を直接的に電気信号に変換する直接変換形と、X線を蛍光体で光に変換し、その光を電気信号に変換する間接変換形とがある。FPDには、いずれの形式が用いられてもよい。X線の入射に伴って複数の半導体検出素子で発生された電気信号は、図示していないアナログディジタル変換器(Analog to Digital converter:以下、A/D変換器と呼ぶ)に出力される。A/D変換器は、電気信号をディジタルデータに変換する。A/D変換器は、ディジタルデータを、処理回路37に出力する。なお、第1X線検出器17、第2X線検出器27として、イメージインテンシファイア(Image Intensifier)が用いられてもよい。
【0017】
駆動部4は、処理回路37に制御され、第1支持機構19、第2支持機構29、寝台装置5を駆動する。例えば、駆動部4は、処理回路37からの制御信号に応じた駆動信号を第1支持機構19に供給し、第1支持機構19をC方向にスライド、C方向に直交する方向に回転させる。駆動部4は、処理回路37からの制御信号に応じた駆動信号を第2支持機構29に供給し、第2支持機構29をΩ方向にスライド、Ω直交方向に回転させる。また、駆動部4は、処理回路37からの制御信号に応じた駆動信号を寝台装置5に供給し、天板5aを上下方向、長手方向に移動させる。
【0018】
寝台装置5は、撮像対象の被検体Pを載置、移動する天板5a、天板5aを支持する基台5bを備える。
【0019】
画像生成回路6は、第1X線検出器17、第2X線検出器27からの出力に基づいて投影データを生成する。
【0020】
記憶回路(メモリ)31は、種々の情報を記憶するHDD(Hard disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置であり、又は、これらの記憶装置を複数組み合わせた回路である。記憶回路31は、例えば、投影データや画像データ、処理回路37によって読み出されて実行される各種機能に対応するプログラムを記憶する。記憶回路31は、HDDやSSD等以外にも、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM(Random Access Memory)等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。また、記憶回路31は、ネットワークで接続された外部記憶装置内にあってもよい。さらに、記憶部23は、複数の記憶装置を含む場合にあっては、その一部がネットワークネットワークを介して接続された記憶装置であっても良い。
【0021】
また、記憶回路31は、プリセット情報管理テーブルを記憶する。ここで、「プリセット」とは、当該X線診断装置1の撮像部2の位置関係、撮像手法、当該X線診断装置1の表示部35の配置、当該X線診断装置1の表示部35の表示レイアウトのうちの少なくともいずれかに関する設定を含むものである。また、「プリセット情報」とは、X線診断装置1の設定に関するプリセットと、X線診断装置1が使用される手術の治療手技と、そのプリセットが使用(選択)される治療手技の状況とが対応付けされて管理される情報である。ここで、「治療手技の状況(単に「状況」とも言う)」とは、治療手技の状況が当該手術中においてどのようなステージにあるのかを示す情報である。治療手技の状況は、あるイベントが発生した時点での情報(すなわち瞬間的な情報)でもよいし、「現在はカテーテル移動をする状況である」といった具合に一定の期間での情報であってもよい。
【0022】
プリセット情報は、当該X線診断装置1を用いた過去の手術におけるプリセットの履歴、他のX線診断装置1を用いた過去の手術におけるプリセットの履歴等を用いて作成することができる。また、プリセット情報は、必要に応じて、術者(医師)毎や治療手技毎に作成し管理することもできる。さらに、プリセット情報は、例えば現在行っている治療手技の前半において使用されたプリセットと、当該プリセットが使用された時の治療手技の状況と、手術計画から取得される治療手技に関する情報とを用いて、当該手術中において自動的に作成することもできる。
【0023】
図2は、記憶回路31に記憶されたプリセット情報管理テーブルの一例を示した図である。図2に示した様に、プリセット情報管理テーブルは、管理番号「No.」が付された複数のプリセット情報を定義し管理するテーブルである。各プリセット情報は、X線診断装置1の設定に関するプリセット、X線診断装置1が使用される治療手技、そのプリセットが使用される治療手技の状況を含む。例えば、管理番号「1」が付されたプリセット情報1は、「治療手技」として「脳動脈瘤コイル塞栓術」、「状況」として「カテーテル挿入開始」、「プリセット」として「角度はバイプレーン基準ポジション」、「水平方向はカテーテル挿入位置を画面中心に調整」を含む情報として定義されている。なお、図2及び後述する図3に示すプリセット情報管理テーブルは、「User ID」の列を有し、ユーザ(術者)毎にプリセット情報を管理するものである。「User ID」の列において、「default」が付されたプリセット情報は推奨値(又は初期値)として設定された情報であり、「A0001」が付されたプリセット情報は当該IDに対応するユーザのために設定された情報であることを意味する。また、図2及び図3に示すプリセット情報管理テーブルの例に限らず、「User ID」の列を設けずに、推奨値によって一律でプリセット情報を管理するプリセット情報管理テーブルを利用することもできる。
【0024】
図3は、記憶回路31に記憶されたプリセット情報管理テーブルの他の例を示した図である。図3に示したプリセット情報管理テーブルでは、例えば、管理番号「100」が付されたプリセット情報1は、「治療手技」として「脳動脈瘤コイル塞栓術」、「状況」として「脳動脈瘤解析」、「プリセット」として「造影剤の注入に備え、モニタを邪魔にならない位置に退避する」を含む情報として定義されている。これらのプリセット情報管理テーブルは、後述するプリセット提案処理において、治療手技の状況に応じて少なくとも一つの提案プリセットを選択する際に利用される。
【0025】
また、記憶回路31は、プリセット履歴情報管理テーブルを記憶する。ここで、プリセット履歴情報とは、当該X線診断装置1を用いた現在の治療手技において、実際に使用されたプリセットと、現在の治療手技と、使用されたプリセット時の治療手技の状況とが対応付けされて管理される情報である。さらに、プリセット履歴情報は、修正情報を含むことができる。修正情報とは、選択したプリセットに従う当該X線診断装置1の設定を術者がその後修正して使用した場合に、その修正内容を示す情報である。
【0026】
プリセット履歴情報は、当該X線診断装置1を用いた手術において、処理回路37において判定される現在の治療手技の状況等を用いてリアルタイムに作成される。従って、プリセット履歴情報管理テーブルは、新たなプリセット履歴情報が作成される都度更新される。また、プリセット履歴情報は、必要に応じて、現在の術者に関する情報、時間情報(例えば基準時点からの治療手技の進捗状況を示す時間情報)等の付帯情報を含むこともできる。
【0027】
図4は、記憶回路31に記憶されたプリセット履歴情報管理テーブルの一例を示した図である。図4に示した様に、プリセット履歴情報管理テーブルは、管理番号「No.」が付された複数のプリセット履歴情報を定義し管理するテーブルである。各プリセット履歴情報は、X線診断装置1の設定に関するプリセット、医用画像診断装置が使用される手技、そのプリセットが使用される治療手技の状況を含む。例えば、管理番号「1」が付されたプリセット情報1は、「治療手技」として「脳動脈瘤コイル塞栓術」、「状況」として「カテーテル挿入開始」、「プリセット」として「角度はバイプレーン基準ポジション」、「水平方向はカテーテル挿入位置を画面中心に調整」、「修正情報」として「カテーテル挿入位置を画面下1/3に調整」を含む情報として定義されている。このプリセット履歴情報管理テーブルは、後述するプリセット提案処理において、治療手技の状況に応じて少なくとも一つの提案プリセットを選択する際に利用される。なお、図4に示すプリセット履歴情報管理テーブルは、図2図3に示したプリセット情報管理テーブルに対応させて、「User ID」の列を有し、ユーザ毎にプリセット情報を管理するものとなっている。当然ながら、図2図3に示したプリセット情報管理テーブルが「User ID」の列を設けずに推奨値によって一律でプリセット情報を管理するものである場合には、プリセット履歴情報管理テーブルも同様に「User ID」の列を有さない構成となる。
【0028】
また、記憶回路31は、少なくとも一つの提案プリセット判定ルールを記憶する。ここで、提案プリセット判定ルールとは、後述するプリセット提案処理において、「基準回数(例えば3回)以上使用の使用履歴があるプリセットを提案する」といった具合に、プリセットの提案を実行するか否かの判定基準を定義したものである。提案プリセット判定ルールは、当該X線診断装置1を用いた過去の手術におけるプリセットの履歴、他のX線診断装置1を用いた過去の手術におけるプリセットの履歴等を用いて作成することができる。また、提案プリセット判定ルールは、情報管理機能37cにより、現在の治療手技のプリセット履歴情報管理テーブルを用いた学習により動的に作成・更新することもできる。さらに、提案プリセット判定ルールは、例えば手術の前半は予め作成されたものを使用し、手術の途中から、現在の治療手技のプリセット履歴情報管理テーブルを用いた学習により動的に作成されたものを使用することもできる。提案プリセット判定ルールは、術者(医師)毎や病院毎など、特定の主体毎に作成し管理するようにしてもよい。
【0029】
また、記憶回路31は、光学的撮像装置40から転送される手術室の画像、音声入力装置41から転送される音声データ、手術情報管理装置42から転送される手術情報を記録する。
【0030】
入力インタフェース回路33は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路37に出力する。例えば、入力インタフェース回路33は、撮像部2と寝台装置5とのうち少なくとも一つを動作させるための操作、X線の発生に関するX線条件、画像処理機能37bにより実行される画像処理に関する条件等を操作者から受け付ける。入力インタフェース回路33としては、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、フットスイッチ、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等が適宜、使用可能となっている。入力インタフェース回路33は、例えば、検査室とは異なる操作室に設置されたコンソール装置30に搭載される。
【0031】
なお、本実施形態において、入力インタフェース回路33は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路37へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース回路33の例に含まれる。なお、入力インタフェース回路33は、処理回路37と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0032】
表示部35は、医用画像g1などを表示するディスプレイ351と、ディスプレイ351に表示用の信号を供給する内部回路、ディスプレイ351と内部回路とをつなぐコネクタやケーブルなどの周辺回路から構成されている。内部回路は、画像データに被検体情報や投影データ生成条件等の付帯情報を重畳して表示データを生成する。次いで、内部回路は、得られた表示データに対してD/A変換とTVフォーマット変換を行なう。内部回路は、これらの変換が実行された表示データを、医用画像としてディスプレイ351に表示する。これに加え、表示部35は、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。
【0033】
ディスプレイ351としては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro Luminescence Display)、プラズマディスプレイ又は他の任意のディスプレイが、適宜、使用可能となっている。また、ディスプレイ351は、デスクトップ型でもよいし、処理回路37と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0034】
通信インタフェース回路36は、ネットワークを介して外部装置と接続される。通信インタフェース回路36は、ネットワークを介して、外部装置との間でデータ通信を行う。外部装置は、例えば、各種の医用画像のデータを管理するシステムである医用画像管理システム(PACS(Picture Archiving and Communication System)、医用画像が添付された電子カルテを管理する電子カルテシステム等である。なお、外部装置との通信の規格は、如何なる規格であっても良いが、例えば、DICOM(Digital Imaging and COmmunications in Medicine)が挙げられる。
【0035】
また、通信インタフェース回路36は、ネットワークを介して外部装置としての光学的撮像装置40、音声入力装置41、手術情報管理装置42と接続される。通信インタフェース回路36は、光学的撮像装置40から手術室の画像を、音声入力装置41から音声データを、手術情報管理装置42から患者情報、術者情報、治療手技に関する情報等の情報を含む手術計画情報を、ネットワークNを介してそれぞれ受信する。受信した手術室の画像、音声データ、手術計画情報は、例えば記憶回路31に逐次記憶される。
【0036】
処理回路37は、操作部8または入力インタフェース回路33から出力される入力操作の電気信号に応じて、X線診断装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路37は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。
【0037】
処理回路37において実行される各種処理機能は、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態で記憶回路31へ記憶されている。処理回路37は、記憶回路31からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の各回路は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0038】
具体的には、処理回路37は、メモリに展開されたプログラムを実行するプロセッサにより、制御機能37a、画像処理機能37b、情報管理機能37c、判定機能37dを実行する。また、制御機能37a、画像処理機能37b、情報管理機能37c、判定機能37dをそれぞれ実行する処理回路37は、制御部、情報管理部、判定部に相当する。なお、制御機能37a、画像処理機能37b、情報管理機能37c、判定機能37dは、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより制御機能37a、画像処理機能37b、情報管理機能37c、判定機能37dを実現するものとしても構わない。
【0039】
また、処理回路37は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)やフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)などのプロセッサにより実現されてもよい。
【0040】
処理回路37は、制御機能37aにより、操作部8または入力インタフェース回路33を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、駆動部4、高電圧発生装置3、第1コリメータ16、第2コリメータ26、記憶回路31、表示部35、画像処理機能37b、情報管理機能37c、判定機能37d等を制御する。具体的には、制御機能37aは、記憶回路31に記憶されている制御プログラムを読み出して処理回路37内のメモリ上に展開し、展開された制御プログラムに従ってX線診断装置1の各部を制御する。
【0041】
制御機能37aは、後述する治療手技支援処理において、判定された少なくとも一つのプリセットに関する制御を行う。例えば、制御機能37aは、プリセット提案処理において提案すべきと判定された少なくとも一つのプリセット(以下、「提案プリセット」と呼ぶ)を表示部35に表示させる。また、制御機能37aは、少なくとも一つの提案プリセットのうち、術者によって選択された提案プリセットに基づいて当該X線診断装置1の設定に関する制御を行う。
【0042】
処理回路37は、画像処理機能37bにより、画像生成回路6からの投影データに対しフィルタリング処理等の画像処理を行なって画像データを生成する。画像データは、被検体Pに関する透視画像や撮影画像を含む医用画像のデータに相当する。画像処理機能37bは、画像データを用いて合成処理や減算(サブトラクション)処理等を行なう。生成された画像データは、記憶回路31や表示部35に出力される。
【0043】
処理回路37は、情報管理機能37cにより、プリセット履歴情報管理テーブルを作成・更新する。例えば、情報管理機能37cは、現在の手術中において選択されたプリセット、プリセット選択時において判定機能37dによって判定された治療手技の状況、選択されたプリセットに対する修正指示等を関連付け、記憶回路31にリアルタイムで書き込むことで、プリセット履歴情報管理テーブルを作成・更新する。
【0044】
処理回路37は、判定機能37dにより、治療手技に関する状況情報に基づいて、当該治療手技に関する状況をリアルタイムに判定する。
【0045】
ここで、治療手技に関する状況情報(以下、単に「状況情報」と呼ぶ。)とは、当該治療手技中における状況を判定するために用いられる情報である。状況情報は、例えば、治療手技中においてX線診断装置1によって取得される医用画像、治療手技中において取得された医用画像とレジストレーションされた三次元画像、光学的撮像装置40によって取得される手術室の画像、音声入力装置41によって取得される音声データ等の情報である。なお、医用画像とレジストレーションされる三次元画像は、X線CT装置、MRI装置、超音波診断装置、核医学診断装置等の他のモダリティによって取得されたボリュームデータ、模式的に作成された三次元画像等を利用することができる。
【0046】
より具体的には、判定機能37dは、治療手技中に取得される医用画像、手術室の画像、音声データ等の状況情報の特徴情報を判定し、特徴情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定する。ここで、特徴情報とは、何が、何処に、どの様な位置関係で、どの様な状態である等の情報である。
【0047】
例えば、状況情報が治療手技中においてX線診断装置1によって取得される医用画像である場合、特徴情報は、当該医用画像に含まれた対象(カテーテル、バルーン、コイル、ステント、クリップ、解剖学ランドマーク、治療部位等)の位置(空間座標)、向き(姿勢)、大きさ、解剖学的構造に関する位置情報(例えば、カテーテルが左心房内にある等)、他の対象との位置関係(カテーテルが僧房弁の手前3cmの位置にある等)等の情報である。ここで、解剖学ランドマークとは、例えば、左眼球中心、右肺尖、大動脈弁等の予め定義された解剖学的位置を意味する。
【0048】
また、例えば、状況情報が治療手技中において光学的撮像装置40によって取得される手術室の画像である場合、特徴情報は、当該手術室の画像に含まれた対象(患者、術者、手術器具、造影剤注入装置等)の位置(空間座標)、向き(姿勢)、大きさ(或いは体格)、行動(動作)、他の対象との位置関係等の情報である。
【0049】
また、例えば、状況情報が治療手技中において音声入力装置41によって取得される音声データである場合、特徴情報は、音声認識によって取得された言葉である。
【0050】
なお、医用画像、手術室の画像の特徴情報は、例えば、物体認識処理、セマンティックセグメンテーション処理、行動認識処理等を用いて取得することができる。また、音声データの特徴情報は、音声認識処理等を用いて取得することができる。
【0051】
なお、判定機能37dの一部はクラウド上に存在してもよい。例えば、判定機能37dの音声データによる治療手技の状況の判定は、インターネット等を通じて提供される音声認識サービスを用いるようにしてもよい。
【0052】
処理回路37は、判定機能37dにより、治療手技に関する状況情報の特徴情報に基づいて、当該治療手技に関する状況をリアルタイムに判定する。例えば、判定機能37dは、例えば医用画像、手術室の画像、音声データを入力とした物体認識処理、セマンティックセグメンテーション処理を実行し、治療手技に関する状況を出力するディープニューラルネットワーク等のAI(Artificial Intelligence)モデルを含むものである。なお、判定機能37dは、上記AIモデルに限らず、例えば、治療手技に関する状況情報を入力として特徴情報を出力するAIモデルと、特徴情報と治療手技に関する状況とが対応付けされたテーブルとを用いて処理するものであってもよい。
【0053】
また、判定機能37dにより、判定した当該治療手技に関する状況を情報管理機能35cに送り出す。情報管理機能35cは、判定機能37dから受け取った当該治療手技に関する状況をプリセット履歴情報管理テーブルに書き込み、プリセット履歴情報管理テーブルを逐次更新する。
【0054】
また、判定機能37dは、プリセット情報管理テーブル、プリセット履歴情報管理テーブル、提案プリセット判定ルールを用いて、少なくとも一つの提案プリセットを判定する。例えば、判定機能37dは、プリセット履歴情報管理テーブルを用いて、現在の治療手技の状況とプリセット情報管理テーブルに含まれる治療手技の状況との類似度を判定する。判定機能37dは、判定した類似度、提案プリセット判定ルールを用いて、プリセットを提案するか否かを判定する。ここで、現在の治療手技の状況とプリセット情報管理テーブルに含まれる治療手技の状況との類似度判定は、例えば、治療手技の状況遷移のステージの類似度によって判定することができる。また、現在の治療手技の状況判定の根拠となった状況情報と、プリセット情報管理テーブルに含まれる治療手技の状況の判定の根拠となった状況情報との間の類似度によって判定することもできる。さらに、現在の治療手技の状況判定の根拠となった状況情報と、プリセット情報管理テーブルに含まれる治療手技の状況の判定の根拠となった状況情報とを入力とし、類似度を出力とするAIモデルによって判定することも可能である。なお、本実施形態においては、「類似」とは、類似度が基準値以上である場合を意味する。
【0055】
また、判定機能37dは、プリセットを提案すると判定した場合には、プリセット情報管理テーブルとプリセット履歴情報管理テーブルとを用いて、少なくとも一つの提案プリセットを判定する。また、判定機能37dは、プリセット履歴情報管理テーブルに含まれる修正情報を用いて、提案プリセットを修正する。
【0056】
ここで、判定機能37dによって判定される提案プリセットは、パラメータが決まったある特定の設定を実現するプリセットに限らず、治療手技毎に値が変化する動的な設定を実現するプリセットであってもよい。治療手技毎に値が変化する動的な設定を実現するプリセットの具体例としては、「Working Angle」を設定するプリセットを挙げることができる。「Working Angle」とは、脳動脈瘤のコイル塞栓術などX線透視をしながら行う手技において、手術計画時や術中の解析において設定される、手技のしやすいCアーム角度である。一般に、Working Angleは、瘤の向きなどにより毎回異なる。従って、例えば「治療手技の状況がコイル留置であるとき、Working Angleを使用する」というプリセットを使用する場合、当該X線診断装置1はWorking Angleを使用する設定になるが、Working Angleの具体的な角度は、その都度異なるものとなる。
【0057】
なお、判定機能37dがプリセット提案の要否を判定する際、記憶回路31に記憶された提案プリセット判定ルールの他、当該術者に関する現在、過去のプリセット履歴情報を入力とし、提案プリセット判定ルールを出力とするAIモデルによって作成された提案プリセット判定ルールを用いるようにしてもよい。
【0058】
光学的撮像装置40は、例えばX線診断装置1が設置された部屋(例えば手術室)の画像を撮像するデジタルカメラ等である。光学的撮像装置40は、ネットワークNを介して、撮像した手術室の画像をX線診断装置1へ逐次転送する。
【0059】
音声入力装置41は、手術室における音声、例えば術者の音声を入力し、ネットワークNを介して、音声データとしてX線診断装置1へ逐次転送する。
【0060】
手術情報管理装置42は、手術計画情報を管理する。ここで、「手術計画情報」とは、手術において実施される治療手技、対象患者、術者、手術の日時、手術に必要な道具等を含む情報である。手術情報管理装置42は、ネットワークNを介して、手術計画情報をX線診断装置1へ送信する。
【0061】
[治療手技支援処理]
次に、本実施形態に係るX線診断装置1によって実行される治療手技支援処理について説明する。治療手技支援処理は、大きくプリセット履歴情報生成処理とプリセット提案処理とに分類することができる。以下においては、説明を具体的にするため、治療手技が脳動脈瘤コイル塞栓術である場合のプリセット履歴情報生成処理及びプリセット提案処理を例として説明する。しかしながら、これはあくまでも一例であり、X線診断装置1を用いた画像観察を伴う治療手技であれば、どの様な治療手技であっても治療手技支援処理の対象とすることができる。
【0062】
[プリセット履歴情報生成処理]
図5は、プリセット履歴情報生成処理の流れを示したフローチャートである。同図に示した様に、制御機能37aがプリセット選択指示を受けると(ステップS1)、情報管理機能37cは、選択されたプリセットをプリセット履歴情報管理テーブルに記録する(ステップS2)。
【0063】
次に、情報管理機能37cは、制御機能37aがプリセットによる設定の修正指示を受けたか否かを判定する(ステップS3)。制御機能37aがプリセットによる設定の修正指示を受けた場合には(ステップS3のYes)、情報管理機能37cは、制御機能37aが受け付けた修正指示の内容を修正情報としてプリセット履歴情報管理テーブルに記録する(ステップS4)。一方、制御機能37aがプリセットによる設定の修正指示を受けていない場合には(ステップS3のNo)、処理はステップS5へと進む。
【0064】
次に、情報管理機能37cは、当該X線診断装置1によって取得された医用画像、光学的撮像装置40によって取得された手術室の画像、音声入力装置41によって取得された音声データのうちの少なくとも一つを含む状況情報を取得する(ステップS5)。
【0065】
次に、判定機能37dは、情報管理機能37cが取得した状況情報に基づいて、現在の治療手技の状況を判定する(ステップS6)。
【0066】
例えば、判定機能37dは、取得した音声データを用いた音声認識処理により、医師による医師の宣言「これからカテーテルを挿入します」との音声を認識し、現在の治療手技の状況が例えば「カテーテル挿入開始」であると判定する。
【0067】
また、例えば、判定機能37dは、取得した手術室の画像を用いた人体・物体認識処理、行動認識処理を実行し、人がカテーテルを持っていること、その人がカテーテル挿入姿勢をとっていること等を認識する。判定機能37dは、人体・物体認識処理、行動認識処理によって得られた結果に基づいて、現在の治療手技の状況が例えば「カテーテル挿入開始」であると判定する。
【0068】
また、例えば、判定機能37dは、取得した医用画像を用いた物体認識処理、セマンティックセグメンテーション処理を実行し、医用画像の各種対象(カテーテル、解剖学ランドマーク等)の位置、大きさ、位置関係を判定する。判定機能37dは、物体認識処理等の結果に基づいて、現在の治療手技の状況が例えば「カテーテル移動」であると判定する。
【0069】
また、例えば、判定機能37dは、取得した医用画像を用いた物体認識処理、セマンティックセグメンテーション処理を実行し、カテーテルが頭部に到達したしたか否かを判定する。判定機能37dは、カテーテルが頭部に到達したと判定した場合には、現在の治療手技の状況が例えば「カテーテル頭部到達」であると判定する。
【0070】
また、例えば、判定機能37dは、取得した医用画像を用いた物体認識処理、セマンティックセグメンテーション処理を実行し、カテーテルが造影剤注入位置に到達したか否かを判定する。判定機能37dは、カテーテルが造影剤注入位置に到達したと判定した場合には、現在の治療手技の状況が例えば「脳動脈瘤解析」であると判定する。
【0071】
なお、脳動脈瘤解析では、脳の入り口から造影剤を流し造影撮影を行い、脳動脈瘤の三次元画像を作成する。そして、生成された三次元画像に基づいて、瘤の大きさ、瘤の体積等を計算し、後工程でのコイル留置における留置方法を決定する。例えば、瘤のネック(根元)が大きい場合には、ステントやバルーンを使い、コイルがはみ出ないように補助する等の留置方法が採用される。コイルを用いる場合には、三次元画像を用いてコイル充填率(瘤の体積と充填したコイルの体積の比率)がさらに計算される。
【0072】
次に、情報管理機能37cは、判定機能37dによって判定された現在の治療手技の状況をプリセット履歴情報管理テーブルに記録する(ステップS7)。
【0073】
[プリセット提案処理]
図6は、プリセット提案処理の流れを示したフローチャートである。同図に示した様に、情報管理機能37cは、当該X線診断装置1によって取得された医用画像、光学的撮像装置40によって取得された手術室の画像、音声入力装置41によって取得された音声データのうちの少なくとも一つを含む状況情報を取得する(ステップS11)。判定機能37dは、情報管理機能37cが取得した状況情報に基づいて、現在の治療手技の状況を判定する(ステップS12)。なお、ステップS11、S12の処理は、ステップS5、S6の処理と同じである。
【0074】
次に、判定機能37dは、プリセット情報管理テーブルを参照して、判定した現在の治療手技の状況と類似する状況が存在するか否かを判定する(ステップS13)。判定機能37dがプリセット情報管理テーブルに現在の治療手技の状況と類似する少なくとも一つの状況が存在すると判定した場合には(ステップS13のYes)、処理はステップS14へ進む。一方、判定機能37dがプリセット情報管理テーブルに現在の治療手技の状況と類似する少なくとも一つの状況が存在しないと判定した場合には(ステップS13のNo)、ステップS11~S13の処理が繰り返し実行される。
【0075】
次に、判定機能37dは、提案プリセット判定ルールとプリセット履歴情報管理テーブルとを用いて、プリセット提案を実行するか否かを判定する(ステップS14)。例えば提案プリセット判定ルールが「3回以上使用の使用履歴があるプリセットを提案する」である場合を想定する。係る場合、判定機能37dは、ステップS13において類似すると判定された状況に対応するプリセットを候補プリセットとして、当該候補プリセットが当該手術において何回目の使用であるかを、プリセット履歴情報管理テーブルを参照して判定する。判定の結果、ステップS13において類似すると判定された状況に対応するプリセットが当該手術において3回目以上の使用である場合には(ステップS14のYes)、処理はステップS15へ進む。一方、ステップS13において類似すると判定された状況に対応するプリセットが当該手術において1回目又は2回目の使用である場合には(ステップS14のNo)、ステップS11~S14の処理が繰り返し実行される。
【0076】
次に、判定機能37dは、プリセット履歴情報管理テーブルを参照して、候補プリセットと状況が類似する修正情報が存在するか否かを判定する(ステップS15)。判定機能37dが候補プリセットと状況が類似する修正情報が存在すると判定した場合には(ステップS15のYes)、情報管理機能37cは、修正情報を用いて候補プリセットを修正する(ステップS16)。
【0077】
例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図2に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「1」のプリセットに対応する「角度はバイプレーン基準ポジション」、「水平方向はカテーテル挿入位置を画面中心に調整」である場合を想定する。係る場合、判定機能37dは、例えば図3に示したプリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「カテーテル挿入開始」と状況が類似する管理番号「1」のプリセット履歴情報を参照し、修正情報「カテーテル挿入位置を画面下1/3に調整」が存在すると判定する。情報管理機能37cは、修正情報を用いて候補プリセットの一部である「水平方向はカテーテル挿入位置を画面中心に調整」を「カテーテル挿入位置を画面下1/3に調整」に修正する。この修正により、医用画像上において、より先の情報を見るという当該術者の傾向を提案プリセットに含めることができる。
【0078】
また、例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図2に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「4」のプリセットに対応する「バイプレーン基準ポジション」である場合を想定する。係る場合、判定機能37dは、例えば図4に示したプリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「カテーテル移動」と状況が類似する管理番号「2」のプリセット履歴情報を参照し、修正情報「患者に接触しない範囲でできるだけFPDを近づける」が存在すると判定する。情報管理機能37cは、修正情報を用いて候補プリセットの一部である「バイプレーン基準ポジション」を「患者に接触しない範囲でできるだけFPDを近づける」に修正する。この修正により、治療手技中のX線透視において、散乱線を減らす調整を提案プリセットに含めることができる。
【0079】
また、例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図2に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「3」のプリセットに対応する「バイプレーン基準ポジション」、「患者に接触しない範囲でできるだけFPDを近づける」である場合を想定する。係る場合、判定機能37dは、例えば図3に示したプリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「カテーテル移動」と状況が類似する管理番号「2」のプリセット履歴情報を参照し、修正情報「患者に接触しない範囲でできるだけFPDを近づける」が存在すると判定する。候補プリセットが修正情報を反映したものとなっていることから、当該候補プリセットは修正されない。
【0080】
また、例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図2に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「9」のプリセットに対応する「Cアームの傾きはあらかじめ設定又は自動で決定したWorking Angleにする」、「右脳、左脳のうち瘤のあるほうの脳の中心に調整」である場合を想定する。係る場合、判定機能37dは、例えば図3に示したプリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「コイル留置」と状況が類似する管理番号「6」のプリセット履歴情報を参照し、修正情報「水平、垂直方向の移動は、瘤を中心に調整する」が存在すると判定する。情報管理機能37cは、修正情報を用いて候補プリセットの一部である「右脳、左脳のうち瘤のあるほうの脳の中心に調整」を「水平、垂直方向の移動は、瘤を中心に調整する」に修正する。
【0081】
また、例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図3に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「100」のプリセットに対応する「造影剤の注入に備え、モニタを邪魔にならない位置に退避する」である場合を想定する。係る場合、判定機能37dは、プリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「コイル留置」と状況が類似するプリセット履歴情報を参照し、修正情報の存否を判定する。情報管理機能37cは、修正情報が存在する場合には、修正情報に基づいて候補プリセットを修正する。一方、修正情報が存在しない場合には、候補プリセットは修正されない。
【0082】
また、例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図3に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「103」のプリセットに対応する「MPR画像(直交三断面画像)表示レイアウトに変更」である場合を想定する。係る場合、判定機能37dは、プリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「脳動脈瘤解析用三次元画像作成」と状況が類似するプリセット履歴情報を参照し、修正情報の存否を判定する。情報管理機能37cは、修正情報が存在する場合には、修正情報に基づいて候補プリセットを修正する。一方、情報管理機能37cは、修正情報が存在しない場合には候補プリセットを修正しない。
【0083】
一方、判定機能37dが候補プリセットに対応する修正情報が存在しないと判定した場合には(ステップS15のNo)、処理はステップS17へ進む。
【0084】
次に、制御機能37aは、修正情報が存在する場合にはステップS16において修正された候補プリセットを、修正情報が存在しない場合にはステップS14において判定された候補プリセットを、それぞれ提案プリセットとしてディスプレイ351に提示(表示)させる(ステップS17)。なお、必要に応じて、制御機能37aは、提案プリセットの内容を音声データとしてスピーカから出力する。また、制御機能37aは、提案プリセットと共に、提案プリセットの実行要否の問い合わせをディスプレイ351に提示させる。なお、候補プリセットが複数存在する場合には、候補プリセット毎にステップS14~S17の処理を実行し、複数の提案プリセットをディスプレイ351に提示することもできる。
【0085】
次に、制御機能37aは、提案プリセットが選択されたか否か(提案プリセットの実行を必要とする指示を受けたか否か)を判定する(ステップS18)。制御機能37aは、提案プリセットの実行を必要とする指示が入力インタフェース回路33から入力された場合には(ステップS18の「Yes」)、提案プリセットに従う制御を実行する(ステップS19)。例えば、提案プリセットが「カテーテル挿入位置を画面下1/3に調整」とする場合には、制御機能37aは、ディスプレイ351においてカテーテル挿入位置が画面下1/3となるように表示部35を制御する。また、例えば、提案プリセットが「MPR画像(直交三断面画像)表示レイアウトに変更」とする場合には、制御機能37aは、MPR画像(直交三断面画像)が表示されるように、画像処理機能37b、表示部35を制御する。
【0086】
一方、提案プリセットの実行を必要とする指示が入力インタフェース回路33から入力されない場合には(ステップS18の「No」)、ステップS11~S18の処理が繰り返し実行される。
【0087】
図7は、ステップS17における提案プリセットの提示形態の一例を示した図である。なお、図7の例では、提案プリセットが、図2に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「5」に対応する状況「カテーテル移動(カテーテル画面上端到達)」、プリセット「カテーテルの移動に追従してCアームを平行移動させる」である場合を想定する。なお、本実施形態では、説明を具体的にするため、水平方向の移動も第1支持機構19(Cアーム)又は第2支持機構29(Ωアーム)の平行移動を自動で行うものとする。これに対し、第1支持機構19又は第2支持機構29の角度はオートポジションにて設定し、患者体軸方向の視野の移動は寝台装置5の天板5aのスライドで調整することもできる。
【0088】
図7(a)に示した様に、ディスプレイ351に表示された医用画像上において、カテーテルが画面上端に到達すると、判定機能37dは、カテーテルが画面上端に到達したことをトリガとして、図6のステップS11~S16の処理を実行し、提案プリセット「カテーテルの移動に追従してCアームを平行移動させる」を判定する。
【0089】
制御機能37aは、例えば図7(b)に示す様に、提案プリセット、及びその提案プリセットの実行要否の問い合わせをディスプレイ351に表示させる。制御機能37aは、提案プリセットの実行を必要とする指示(図7(b)における「Yes」の選択)が入力インタフェース回路33から入力されると、ステップS18に対応する提案プリセットに従った制御として、カテーテルの移動に追従して第1支持機構19(Cアーム)を平行移動させる。その結果、ディスプレイ351においては、図7(c)、図7(d)に示した様に、カテーテルの移動に第1支持機構19(Cアーム)が追従した医用画像が表示される。一方、制御機能37aは、提案プリセットの実行を不要とする指示(図7(b)における「No」の選択)が入力インタフェース回路33から入力されると、自動移動の設定の更新を実行しない。
【0090】
また、提案プリセットに従う制御(設定)の後、例えばWorking Angle等の自動移動制御の結果からの調整を検知した場合には、制御機能37aは、自動移動の設定の更新の要否の問い合わせをディスプレイ351に表示させる。制御機能37aは、自動移動の設定の更新の実行を必要とする指示(図7(e)における「Yes」の選択)が入力インタフェース回路33から入力されると、自動移動の設定の更新を実行する。一方、制御機能37aは、自動移動の設定の更新を必要とする指示(図7(e)における「No」の選択)が入力インタフェース回路33から入力されると、自動移動の設定の更新を実行しない。
【0091】
以上述べた様に、本実施形態に係る医用画像診断装置としてのX線診断装置1は、判定部としての判定機能37d、制御部としての制御機能37aを備える。判定機能37dは、状況情報に基づいて現在の治療手技の状況を判定し、判定された現在の治療手技の状況に基づいて、当該医用画像診断装置の設定に関する少なくとも一つの提案プリセットを判定する。制御機能37aは、判定された少なくとも一つのプリセットに関する制御を実行する。
【0092】
従って、現在の治療手技の状況に基づいて、当該治療手技において術者が現在又はこれから必要な少なくとも一つのプリセットを判定し、提案プリセットとして当該術者に提示することができる。従って術者は、複数のプリセットに対応するボタンやサムネイル画像等から自身が所望するプリセットを選択することなしに、当該治療手技の現在の状況に適切なプリセットを正確且つ迅速に選択することができる。
【0093】
手術やIVRの場面では時間が重要であり、効率化が求められる。近年では、高齢化による医療リソース不足や、働き方改革により、効率化の必要性がさらに高まっている。本実施形態に係るX線診断装置1によれば、当該X線診断装置1のプリセット機能を利用する際の術者の負担を軽減することができ、術者が自身の手技に集中することを支援することができる。その結果、手術やIVRの場面において、更なる効率化を実現することができる。
【0094】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る医用画像診断装置について、手術中に用いられる超音波診断装置を例に説明する。
【0095】
図8は、第2実施形態に係る超音波診断装置100を含む超音波診断システムの構成を示したブロック図である。図8に示した様に、超音波診断システムは、超音波診断装置100、光学的撮像装置40、音声入力装置41、手術情報管理装置42、バイタル計測装置43を備える。
【0096】
バイタル計測装置43は、被検体Pのバイタル情報(心拍数、呼吸数、血圧、体温)を計測する。バイタル計測装置43は、計測したバイタル情報を、ネットワークNを介して超音波診断装置100へ転送する。また、バイタル計測装置43は、バイタル情報に含まれる数値(例えば血圧)をモニタリングし、その値がアラート条件を満たす場合(例えば、基準値以下になる等)には、その旨を術者に知らせるアラート機能を有する。
【0097】
超音波診断装置100は、超音波プローブ50と、表示装置(表示部)51と、入力インタフェース回路84と、装置本体70とを有する。
【0098】
超音波プローブ50は、複数の圧電振動子、圧電振動子に設けられる整合層、及び圧電振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。超音波プローブ50は、装置本体70と着脱自在に接続される。複数の圧電振動子は、装置本体70における超音波送信回路71から供給された駆動信号に基づいて、超音波を発生する。なお、超音波プローブ50には、フリーズ操作などの各種操作の際に押下されるボタンが配置されてもよい。
【0099】
超音波プローブ50から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射される。反射された超音波は、反射波信号(以下、エコー信号と呼ぶ)として超音波プローブ50が有する複数の圧電振動子にて受信される。受信されたエコー信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが移動している血流や心臓壁などの表面で反射された場合のエコー信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して周波数偏移を受ける。超音波プローブ50は、被検体Pからのエコー信号を受信して電気信号に変換する。なお、本実施形態においては、超音波プローブ50は経口用プローブであるとする。
【0100】
装置本体70は、超音波プローブ50が受信したエコー信号に基づいて超音波画像を生成する装置である。装置本体70は、図1に示すように、超音波送信回路71、超音波受信回路73、Bモード処理回路75、ドプラ処理回路77、記憶回路(記憶部)81、画像メモリ82(シネメモリまたはキャッシュとも称される)、表示部83、入力インタフェース回路84、通信インタフェース回路85、及び処理回路87を有する。
【0101】
超音波送信回路71は、超音波プローブ50に駆動信号を供給するプロセッサである。超音波送信回路71は、例えば、トリガ発生回路、遅延回路、及びパルサ回路等を有する。トリガ発生回路は、処理回路87における制御機能87aにより、所定のレート周波数で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。遅延回路は、超音波プローブ50から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な圧電振動子ごとの遅延時間を、各レートパルスに対して与える。パルサ回路は、制御機能87aにより、レートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ50に駆動信号(駆動パルス)を印加する。遅延回路により各レートパルスに対し与える遅延時間を変化させることで、圧電振動子面からの送信方向が任意に調整可能となる。
【0102】
超音波受信回路73は、超音波プローブ50が受信したエコー信号に対して各種処理を施し、受信信号を生成するプロセッサである。超音波受信回路73は、例えば、アンプ回路、A/D変換器、受信遅延回路、及び加算器等を有する。アンプ回路は、超音波プローブ50が受信したエコー信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換器は、ゲイン補正されたエコー信号をデジタル信号に変換する。受信遅延回路は、デジタル信号に受信指向性を決定するのに必要な遅延時間を与える。加算器は、遅延時間が与えられた複数のデジタル信号を加算する。加算器の加算処理により、受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調された受信信号が生成される。
【0103】
Bモード処理回路75は、超音波受信回路73から受け取った受信信号に基づき、Bモードデータを生成するプロセッサである。Bモード処理回路75は、超音波受信回路73から受け取った受信信号に対して包絡線検波処理、及び対数増幅処理等を施し、信号強度を輝度の明るさで表現したデータ(すなわち、Bモードによって取得されたデータ。以下、Bモードデータと呼ぶ)を生成する。生成されたBモードデータは、2次元的な超音波走査線上のBモードRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0104】
ドプラ処理回路77は、超音波受信回路73から受け取った受信信号に基づき、ドプラ波形データ、及びドプラデータを生成するプロセッサである。ドプラ処理回路77は、受信信号から血流信号を抽出し、抽出された血流信号からドプラ波形データを生成すると共に、血流信号から平均速度、分散、及びパワー等の情報を多点について抽出したデータ(すなわち、ドプラモードによって取得されたデータ。以下、ドプラデータと呼ぶ)を生成する。生成されたドプラデータは、2次元的な超音波走査線上のドプラRAWデータとして不図示のRAWデータメモリに記憶される。
【0105】
画像生成回路79は、操作者が入力インタフェース回路84を介して各種指示を入力するためのGUIを生成する。画像生成回路79は、Bモード処理回路75及びドプラ処理回路77により生成されたデータに基づき、各種超音波画像のデータを生成する機能(スキャンコンバータ)を有するプロセッサである。画像生成回路79は、不図示の内部メモリを備える。画像生成回路79は、RAW-ピクセル変換を実行することで、ピクセルから構成される2次元の超音波画像データ(Bモード画像データ、カラードプラ画像データ、ドプラ波形画像データ等)を生成する。画像生成回路79は、生成された超音波画像データを、記憶回路81に記憶させる。画像生成回路79は、生成された超音波画像データに対し、ダイナミックレンジ、輝度(ブライトネス)、コントラスト、γカーブ補正及びRGB変換等の各種画像処理を実行する。
【0106】
なお、画像生成回路79は、Bモード画像データ等に対し、空間的な位置情報を加味した補間処理等を実行することで、所望の範囲のボクセルから構成されるボリュームデータを生成することもできる。なお、画像生成回路79は、RAWデータメモリに記憶されているBモードRAWデータに対し、空間的な位置情報を加味した補間処理を含むRAW-ボクセル変換を実行することで、ボリュームデータを生成してもよい。また、画像生成回路79は、例えば各種ボリュームデータに対してレンダリング処理や多断面変換再構成(以下、MPR(Multi Planar Reconstruction)と呼ぶ)処理等を施し、レンダリング画像やMPR画像を生成してもよい。
【0107】
記憶回路81は、例えば、磁気的若しくは光学的記憶媒体、又は集積回路記憶装置等のプロセッサにより読み取り可能な記憶媒体等で実現される。例えば、記憶回路81は、種々の情報を記憶するHDDやSSD、半導体メモリ等に相当する。記憶回路81は、HDDやSSD等以外にも、CD、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体や、RAM等の半導体メモリ素子等との間で種々の情報を読み書きする駆動装置であってもよい。
【0108】
記憶回路81は、本実施形態に係る各種機能を実現するためのプログラム等を記憶する。記憶回路81は、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)、診断プロトコル、ボディマーク生成プログラム、及び映像化に用いるカラーデータの範囲を診断部位ごとに予め設定する変換テーブルなどのデータ群を記憶する。記憶回路81に記憶された各種データは、制御機能87aにより、通信インタフェース回路85を介して外部装置へ転送することもできる。
【0109】
また、記憶回路81は、プリセット情報管理テーブル、プリセット履歴情報管理テーブル、少なくとも一つの提案プリセット判定ルールを記憶する。
【0110】
図9は、記憶回路81に記憶されたプリセット情報管理テーブルの一例を示した図である。図9に示した様に、例えば、管理番号「1」が付されたプリセット情報1は、「治療手技」として「僧帽弁クリッピング術」、「状況」として「クリップの弁へのアプローチ」、「プリセット」として「中部食道僧帽弁交連像(2腔像:60-90°)」、「中部食道大動脈弁長軸像(3腔像:100-160°」を含む情報として定義されている。ここで、「僧帽弁クリッピング術」とは、心臓の僧帽弁の障害で逆流が生じている部分に、カテーテルを使ってクリップを装着することで逆流を治療するものである。なお、図9に示すプリセット情報管理テーブルについても、図2図3と同様に、「User ID」の列を設けて、ユーザ(術者)毎にプリセット情報を管理するものを例示した。当然ながら、「User ID」の列を設けずに、推奨値によって一律でプリセット情報を管理するプリセット情報管理テーブルを利用することもできる。
【0111】
また、例えば、管理番号「100」が付されたプリセット情報100は、「治療手技」として「僧帽弁クリッピング術」、「状況」として「クリップ装着」、「プリセット」として「アラート条件のクリップ装着時モードへの変更を提案」を含む情報として定義されている。
【0112】
ここで、プリセット「アラート条件のクリップ装着時モードへの変更を提案」について説明する。僧帽弁クリッピング術では、クリップを僧帽弁の逆流発生部分に装着し、逆流を治療する。このクリップの装着により僧房弁の一部が開かない状態になるため、一時的に血圧が低下する。この一時的な血圧の低下はクリップの適切な装着に対応して発生するものであるため、正常なものと言える。一方、バイタル計測装置43は、この一時的な血圧の低下がアラート条件を満たす場合には、その旨を知らせるアラートを発生する。「アラート条件のクリップ装着時モードへの変更を提案」とは、「状況」が「クリップ装着」である場合にアラート条件を変更することで、外部装置としてのバイタル計測装置43に対して、クリップ装着に伴う一時的な血圧の低下に伴うアラートを発生させない設置を実現するプリセットである。
【0113】
プリセット履歴情報管理テーブル、少なくとも一つの提案プリセット判定ルールについては、第1実施形態において説明した内容と同様であるため、その説明は省略する。
【0114】
また、記憶回路81は、光学的撮像装置40から転送される手術室の画像、音声入力装置41から転送される音声データ、手術情報管理装置42から転送される手術情報、バイタル計測装置43から転送されるバイタル情報を記録する。
【0115】
画像メモリ82は、例えば、プロセッサにより読み取り可能な半導体メモリ等の記録媒体等を有する。画像メモリ82は、例えば、キャッシュメモリにより実現される。画像メモリ82は、入力インタフェース回路84を介して入力されるフリーズ操作から遡った一定期間に取得された各種画像のデータを保存する。具体的には、画像メモリ82は、スクロール表示を行なうために、フリーズボタンが押下された瞬間から所定の過去の一定期間に亘るドプラ波形画像データを、他のデータで上書きされないように記憶する。なお、記憶回路81と画像メモリ82とは、一つの記憶装置として統合されてもよい。
【0116】
表示部83は、例えば、液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の任意のディスプレイである。なお、表示部83は、装置本体70に組み込まれてもよい。また、表示部83、デスクトップ型でもよいし、装置本体70と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。なお、表示部83は表示部の一例である。
【0117】
表示部83は、各種の情報を表示する。例えば、表示部83は、処理回路87によって生成された超音波画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのユーザインタフェース(GUI)等を表示する。表示部83は、シネ表示モードにおいて、入力インタフェース回路84を介した操作者の指示により、時系列に沿って超音波画像を表示する。表示部83は、スクロール表示モードにおいて、入力インタフェース回路84を介した操作者の指示により、時系列のドプラ波形画像を表示する。また、例えば表示部83は、ドプラモードにおいて、フリーズ操作の入力後(スクロール表示)においてスクロール操作が入力されると、スクロール操作の方向及び量に応じて、対応する少なくとも一心拍に対応するドプラ波形を表示する。
【0118】
入力インタフェース回路84は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路87に出力する。入力インタフェース回路84は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等を有する。なお、本実施形態において、入力インタフェース回路84は、マウス、キーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、タッチパッド及びタッチパネルディスプレイ等の物理的な操作部品を備えるものに限られない。例えば、入力インタフェース回路84とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路87へ出力する電気信号の処理回路も入力インタフェース回路84の例に含まれる。また、入力インタフェース回路84は、装置本体70に設けられてもよい。また、入力インタフェース回路84は、装置本体70と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0119】
例えば、入力インタフェース回路84における終了ボタンの押下やフリーズボタンの押下(以下、フリーズ操作と呼ぶ)に応答して、超音波診断装置100は、超音波の送受信を中断し一時停止状態となる。
【0120】
また、超音波診断装置100は、Bモードでのスキャン中における入力インタフェース回路84からのフリーズ操作に応答して、超音波の送受信に伴って生成された超音波画像がリアルタイムに表示されるリアルタイム表示モードから、画像メモリ82に記憶された複数の超音波画像を時系列的に表示(以下、シネ表示と呼ぶ)可能なシネ表示モードに移行する。
【0121】
また、超音波診断装置100は、ドプラモードでのスキャン中における入力インタフェース回路84からのフリーズ操作に応答して、超音波の送受信に伴って生成されたドプラ波形がリアルタイムに表示されるリアルタイム表示モードから、スクロール表示モードに移行する。ここで、スクロール表示モードとは、画像メモリ82に記憶された複数のドプラ波形画像を、時系列的に順方向又は逆方向にスクロールして表示可能なモードである。例えば、スクロール表示モードにおいて、操作者がトラックボール等を回転させると、超音波診断装置100は、画像メモリ82に格納された複数のドプラ波形画像のうち、トラックボールの回転方向と回転量とに対応するドプラ波形画像を読み出して表示する。当該トラックボールの回転は、フリーズ操作の入力後において時系列のドプラ波形画像を、時系列的に順方向又は逆方向にスクロールさせるスクロール操作に相当する。
【0122】
通信インタフェース回路85は、通信インタフェース回路36と実質的に同じ機能を有するので、その説明は省略する。
【0123】
処理回路87は、例えば、超音波診断装置100の中枢として機能するプロセッサである。処理回路87は、ハードウェア資源として、CPUやMPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。また、処理回路87は、特定用途向け集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ、他の複合プログラマブル論理デバイス、や単純プログラマブル論理デバイスにより実現されてもよい。
【0124】
処理回路87は、例えば、制御機能87a、画像処理機能87b、情報管理機能87c、および判定機能87dなどの各種機能を有する。処理回路87は、記憶回路81に記憶されている各種プログラムを自身のメモリに展開して実行することで、当該プログラムに対応する制御機能87a、画像処理機能87b、情報管理機能87c、および判定機能87dを実行する。なお、プログラムは、記憶回路81に保存される代わりに、当該プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、当該プロセッサは、当該回路内に組み込まれたプログラムを読み出して実行することで上記機能を実現する。
【0125】
制御機能87a、情報管理機能87c、および判定機能87dをそれぞれ実行する処理回路87は、制御部、情報管理部、判定部に相当する。なお、制御機能87a、画像処理機能87b、情報管理機能87c、および判定機能87d各々は、単一の処理回路で実現される場合に限らない。複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより、制御機能87a、画像処理機能87b、情報管理機能87c、および判定機能87dを実現するものとしても構わない。
【0126】
なお、制御機能87a、画像処理機能87b、情報管理機能87c、および判定機能87dによって実現される治療手技支援処理に関する機能は、第1実施形態における制御機能37a、画像処理機能37b、情報管理機能37c、および判定機能37dと実質的に同様であるので、その説明は省略する。
【0127】
[治療手技支援処理]
次に、本実施形態に係る超音波診断装置100によって実行される治療手技支援処理について説明する。説明を具体的にするために、本実施形態においては、治療手技として、僧帽弁に対するMitraClip(登録商標)等のクリップの留置作業(僧帽弁クリッピング術)を行う場合において、経食道超音波診断装置としての超音波診断装置100を用いる場合を例とする。
【0128】
僧帽弁クリッピング術は、例えば大きく以下の三段階によって実行される。すなわち、第1段階として、X線診断装置1を用いた観察の下で、カテーテルを心臓の僧帽弁まで移動させる。その後の第2段階として、超音波診断装置100による観察の下で、クリップを先端に搭載したクリップデリバリーシステムをカテーテルの中から挿入し、クリップの留置作業が行われる。このとき、例えば超音波診断装置100を用いて二次元画像(2腔像、3腔像等)を観察しながらクリップを僧房弁に近づけ、その後超音波診断装置100を用いて三次元画像を観察しながらクリップの角度調整が行われる。クリップの角度調整が終わったら、クリップを左心房から左心室に挿入し、クリップの装着が行われる。第3段階として、留置後の観察を目的として、X線診断装置1と超音波診断装置100による僧房弁の透視、撮影が再度行われる。以下、第2段階において治療手技支援処理を利用する場合について説明する。
【0129】
[プリセット履歴情報生成処理]
図5を参照しながら、超音波診断装置100によって実行されるプリセット履歴情報生成処理について説明する。
【0130】
図5に示した様に、制御機能87aがプリセット選択指示を受けると(ステップS1)、情報管理機能87cは、選択されたプリセットをプリセット履歴情報管理テーブルに記録する(ステップS2)。
【0131】
次に、情報管理機能87cは、制御機能87aがプリセットによる設定の修正指示を受けたか否かを判定する(ステップS3)。制御機能87aがプリセットによる設定の修正指示を受けた場合には(ステップS3のYes)、情報管理機能87cは、制御機能87aが受け付けた修正指示の内容を修正情報としてプリセットをプリセット履歴情報管理テーブルに記録する(ステップS4)。一方、制御機能87aがプリセットによる設定の修正指示を受けていない場合には(ステップS3のNo)、処理はステップS5へと進む。
【0132】
次に、情報管理機能87cは、当該超音波診断装置100によって取得された医用画像、光学的撮像装置40によって取得された手術室の画像、音声入力装置41によって取得された音声データのうちの少なくとも一つを含む状況情報を取得する(ステップS5)。
【0133】
次に、判定機能87dは、情報管理機能87cが取得した状況情報に基づいて、現在の治療手技の状況を判定する(ステップS6)。
【0134】
例えば、判定機能87dは、取得した音声データを用いた音声認識処理により、医師による医師の宣言「これからクリップデリバリーシステムをカテーテルの中から挿入し、クリップの留置作業を開始します。」との音声を認識し、現在の治療手技の状況が例えば「クリップの弁へのアプローチ」であると判定する。
【0135】
また、例えば、判定機能87dは、取得した手術室の画像を用いた人体・物体認識処理、行動認識処理を実行し、人がクリップデリバリーシステムを持っていること、その人がカテーテルへのクリップデリバリーシステムの挿入姿勢をとっていること等を認識する。判定機能87dは、人体・物体認識処理、行動認識処理によって得られた結果に基づいて、現在の治療手技の状況が例えば「クリップの弁へのアプローチ」であると判定する。
【0136】
また、例えば、判定機能87dは、取得した医用画像を用いた物体認識処理、セマンティックセグメンテーション処理を実行し、カテーテルが左心房に挿入されたことを判定する。判定機能87dは、カテーテルが左心房に挿入されたことに基づいて、現在の治療手技の状況が例えば「クリップの弁へのアプローチ」であると判定する。
【0137】
また、例えば、判定機能87dは、取得した医用画像を用いた物体認識処理、セマンティックセグメンテーション処理を実行し、クリップと僧帽弁との位置関係を判定する。また、判定機能87dは、カテーテルを僧帽弁へ近づける方向の動きベクトルも検出する。判定機能87dは、クリップと僧帽弁との間の距離が一定以下(例えば、一定期間の平均の動きの絶対値が閾値以下等)となり、且つ動きベクトルが一定以下になった場合には、現在の治療手技の状況が例えば「クリップの弁へのアプローチ」から「クリップの角度調整」に遷移したと判定する。ここで、例えば「クリップと僧帽弁との間の距離が一定以下となり、且つ動きベクトルが一定以下になった場合」を判定基準としたのは、体動などによりクリップと僧帽弁との間の距離が一定値(例えば0)になることはないからである。
【0138】
次に、情報管理機能87cは、判定機能87dによって判定された現在の治療手技の状況をプリセット履歴情報管理テーブルに記録する(ステップS7)。
【0139】
以上述べたステップS1~S7の各処理により、プリセット選択に伴うプリセット履歴情報の生成が実行される。
【0140】
[プリセット提案処理]
図6を参照しながら、超音波診断装置100によって実行されるプリセット提案処理について説明する。なお、ステップS11~S14までの各処理は、第1実施形態と同様であるので、その説明は省略する。
【0141】
次に、判定機能87dは、プリセット履歴情報管理テーブルを参照して、候補プリセットに対応する修正情報が存在するか否かを判定する(ステップS15)。判定機能87dが候補プリセットに対応する修正情報が存在すると判定した場合には(ステップS15のYes)、情報管理機能87cは、修正情報を用いて候補プリセットを修正する(ステップS16)。
【0142】
例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図9に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「1」のプリセットに対応する「中部食道僧帽弁交連像(2腔像:60-90°)」、「中部食道大動脈弁長軸像(3腔像:100-160°」である場合を想定する。係る場合、判定機能87dは、プリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「クリップの弁へのアプローチ」と状況が類似するプリセット履歴情報を参照し、修正情報の存否を判定する。情報管理機能87cは、修正情報が存在する場合には、修正情報に基づいて候補プリセットを修正する。一方、修正情報が存在しない場合には、候補プリセットは修正されない。
【0143】
また、例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図9に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「59」のプリセットに対応する「3D画像表示」である場合を想定する。係る場合、判定機能87dは、プリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「クリップの角度調整」と状況が類似するプリセット履歴情報を参照し、修正情報の存否を判定する。情報管理機能87cは、修正情報が存在する場合には、修正情報に基づいて候補プリセットを修正する。一方、修正情報が存在しない場合には、候補プリセットは修正されない。
【0144】
また、例えば、ステップS13において選択された候補プリセットが、図9に示したプリセット情報管理テーブルにおいて、管理番号「100」のプリセットに対応する「アラート条件のクリップ装着時モードへの変更を提案」である場合を想定する。係る場合、判定機能87dは、プリセット履歴情報管理テーブルにおいて、候補プリセットの状況「クリップ装着」と状況が類似するプリセット履歴情報を参照し、修正情報の存否を判定する。情報管理機能87cは、修正情報が存在する場合には、修正情報に基づいて候補プリセットを修正する。一方、修正情報が存在しない場合には、候補プリセットは修正されない。
【0145】
一方、判定機能87dが候補プリセットに対応する修正情報が存在しないと判定した場合には(ステップS15のNo)、処理はステップS17へ進む。
【0146】
次に、制御機能87aは、修正情報が存在する場合にはステップS16において修正された候補プリセットを、修正情報が存在しない場合にはステップS14において判定された候補プリセットを、それぞれ提案プリセットとして表示部83に提示(表示)させる(ステップS17)。なお、必要に応じて、制御機能87aは、提案プリセットの内容を音声データとしてスピーカから出力する。また、制御機能87aは、提案プリセットと共に、提案プリセットの実行要否の問い合わせを表示部83に提示させる。なお、候補プリセットが複数存在する場合には、候補プリセット毎にステップS14~S17の処理を実行し、複数の提案プリセットを表示部83に提示することもできる。
【0147】
次に、制御機能87aは、提案プリセットが選択されたか否か(提案プリセットの実行を必要とする指示を受けたか否か)を判定する(ステップS18)。制御機能87aは、提案プリセットの実行を必要とする指示が入力インタフェース回路84から入力された場合には(ステップS18の「Yes」)、提案プリセットに従う制御を実行する(ステップS19)。例えば、提案プリセットが「3D画像表示」である場合には、制御機能37aは、「中部食道僧帽弁交連像(2腔像:60-90°)」、「中部食道大動脈弁長軸像(3腔像:100-160°」との設定から「3D画像表示」への設定となるように、超音波送信回路71、超音波受信回路73、Bモード処理回路75、ドプラ処理回路77、画像生成回路79、表示部35を制御する。また、例えば、提案プリセットが「アラート条件のクリップ装着時モードへの変更を提案」である場合には、制御機能37aは、バイタル計測装置43に対して、アラート条件のクリップ装着時モードへの変更を指示する制御信号を送信する。
【0148】
一方、提案プリセットの実行を必要とする指示が入力インタフェース回路33から入力されない場合には(ステップS18の「No」)、ステップS11~S18の処理が繰り返し実行される。
【0149】
以上述べた様に、本実施形態に係る医用画像診断装置としての超音波診断装置100によっても、第1実施形態に係るX線診断装置1と同様の効果を実現することができる。
【0150】
特に、本実施形態に係る超音波診断装置100は、現在の治療手技の状況に基づいて、当該治療手技において術者が現在又はこれから必要な外部装置の設定に関するプリセットを判定し、提案プリセットとして当該術者に提示することができる。従って術者は、提案プリセットを選択することで、当該超音波診断装置100のみならず、術者が現在又はこれから必要な外部装置についての設定を簡単且つ迅速に実現することができる。
【0151】
その結果、本実施形態に係る超音波診断装置100によれば、当該超音波診断装置100の所望の設定、及び当該超音波診断装置100と同時に用いられる外部装置の所望の設定を実現する際の術者の負担を軽減することができ、術者が自身の手技に集中することを支援することができる。
【0152】
(変形例1)
上記実施形態においては、医用画像診断装置としてのX線診断装置1、超音波診断装置100が上述した治療手技支援処理を実行する場合を例示した。これに対し、医用ワークステーション等の医用画像処理装置により、上述した治療手技支援処理を実行するようにしてもよい。この様な医用画像処理装置は、X線診断装置1等の医用画像診断装置と例えば院内ネットワーク、クラウドネットワーク等のネットワークを介してリアルタイムに通信可能な状況であれば、どの様な環境であっても利用することが可能である。
【0153】
(変形例2)
上記各実施形態においては、X線診断装置1、超音波診断装置100が上述した治療手技支援処理を実行する場合を例として説明した。これに対し、X線診断装置1、超音波診断装置100に限らず、治療手技において用いられる医用画像診断装置であれば、どのようなものにも適用可能である。治療手技において用いられる医用画像診断装置としては、X線診断装置、超音波診断装置の他、内視鏡システム、X線コンピュータ断層撮像装置、磁気共鳴イメージング装置等を挙げることができる。
【0154】
(変形例3)
上記第2の実施形態においては、治療手技支援処理により得られた提案プリセットに従って、超音波診断装置100が外部装置としてのバイタル計測装置43に制御指示を行う場合を例示した。しかしながら、外部装置は、バイタル計測装置43に限定されず、造影剤注入装置、他の医用画像診断装置等であってもよい。
【0155】
例えば、上述した僧帽弁クリッピング術において、X線診断装置1及び超音波診断装置100を用いた観察が実行される場合がある。係る場合、例えばX線診断装置1が治療手技支援処理により得られた提案プリセットに従って、外部装置としての超音波診断装置100に制御指示を行うことで(或いはその逆を行うことで)、X線診断装置1と超音波診断装置100とを連携させた治療手技支援処理を実現することができる。
【0156】
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、医用画像診断装置のプリセット機能を利用する際の術者の負担を軽減することができる。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0158】
1 X線診断装置
2 撮像部
3 高電圧発生装置
4 駆動部
5 寝台装置
5a 天板
5b 基台
8 操作部
15 第1X線管
16 第1コリメータ
17 第1X線検出器
19 第1支持機構
25 第2X線管
26 第2コリメータ
27 第2X線検出器
29 第2支持機構
30 コンソール装置
31 記憶回路(メモリ)
33 入力インタフェース回路
35 表示部
351 ディスプレイ
36 通信インタフェース回路
37 処理回路
37a 制御機能
37b 画像処理機能
37c 情報管理機能
37d 判定機能
40 光学的撮像装置
41 音声入力装置
42 手術情報管理装置
43 バイタル計測装置
50 超音波プローブ
70 装置本体
71 超音波送信回路
73 超音波受信回路
75 Bモード処理回路
77 ドプラ処理回路
79 画像生成回路
81 記憶回路
82 画像メモリ
83 表示部
84 入力インタフェース回路
85 通信インタフェース回路
87 処理回路
87a 制御機能
87b 画像処理機能
87c 情報管理機能
87d 判定機能
100 超音波診断装置
図1
図2
図3
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