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  • 特許-アロイ樹脂の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】アロイ樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20241206BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20241206BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20241206BHJP
   C08J 3/20 20060101ALI20241206BHJP
   B29C 48/51 20190101ALI20241206BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L33/12
C08J5/00 CEV
C08J3/20 Z
B29C48/51
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020151306
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2021042379
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019163647
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏之
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-240344(JP,A)
【文献】特開昭63-046249(JP,A)
【文献】特開昭56-104954(JP,A)
【文献】特開平02-117943(JP,A)
【文献】特開平07-102144(JP,A)
【文献】特開2010-155953(JP,A)
【文献】特開2011-235609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08J 3/00- 5/28
C08J 5/00- 5/24
B29C 48/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂と配合し、帰還型スクリュを用い、スクリュ回転数100~800rpm、樹脂温度180~220℃の条件でせん断加工してアロイ樹脂を得る、アロイ樹脂の製造方法であり、
塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂とを質量比40:60~90:10で配合する、アロイ樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロイ樹脂及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形品等の成形樹脂としては、ポリプロピレンやアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等が用いられている。これら汎用樹脂は成形性やコストの点で優れるが、表面硬度が低く、耐傷付き性が劣る傾向がある。耐傷付き性に優れた樹脂としては、アクリル樹脂や硬質塩化ビニル系樹脂が知られている。
【0003】
樹脂の特性を向上させる方法として、アロイ化が知られている。アロイ化させる方法としては、1)多軸押出機等の機械的なブレンド方法、2)相溶化剤を混合させる方法、3)リアクティブプロセッシング方法がある。
特許文献1には、塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂とのアロイ樹脂が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-014246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような従来のアロイ樹脂は、微分散に限界があり、透明性に劣るため、用途が制限される。
【0006】
本発明は、透明性に優れた塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂のアロイ樹脂、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂とが質量比40:60~90:10で配合され、全光線透過率が50%以上であり、ヘイズが25%以下である、アロイ樹脂。
[2]前記塩化ビニル系樹脂と前記メチルメタクリレート系樹脂との質量比が40:60~70:30である、[1]に記載のアロイ樹脂。
[3]前記塩化ビニル系樹脂が硬質塩化ビニル系樹脂である、[1]に記載のアロイ樹脂。
[4]塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂とを質量比40:60~90:10で配合し、帰還型スクリュを用い、スクリュ回転数100~800rpm、樹脂温度180~220℃の条件でせん断加工してアロイ樹脂を得る、アロイ樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、透明性に優れた塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂のアロイ樹脂、及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のアロイ樹脂の製造方法に用いる帰還型スクリュの一例を示した正面図である。
図2図1の帰還型スクリュを備えたせん断加工機の一例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[アロイ樹脂]
本発明のアロイ樹脂は、塩化ビニル系樹脂(以下、「PVC系樹脂」と記す。)とメチルメタクリレート系樹脂(以下、「MMA系樹脂」と記す。)とが質量比40:60~90:10で配合され、全光線透過率が50%以上であり、ヘイズが25%以下であるアロイ樹脂である。
【0011】
PVC系樹脂は、塩化ビニル由来の繰り返し単位(以下、「塩化ビニル単位」とも記す。)の割合が全繰り返し単位に対して50質量%超の重合体である。PVC系樹脂は、塩化ビニルの単独重合体であってもよく、塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体との共重合体であってもよい。PVC系樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
アロイ樹脂に含まれるPVC系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0012】
PVC系樹脂中の塩化ビニル単位の割合は、全繰り返し単位に対して、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましい。
【0013】
塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体としては、特に限定されず、例えば、脂肪酸ビニルエステル、アクリレート、メタクリレート、シアン化ビニル、ビニルエーテル、α-オレフィン、不飽和カルボン酸又はその酸無水物、塩化ビニリデン、臭化ビニル、各種ウレタン等が挙げられる。
【0014】
脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が挙げられる。アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等が挙げられる。メタクリレートとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート等が挙げられる。シアン化ビニルとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。ビニルエーテルとしては、ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテル等が挙げられる。α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。不飽和カルボン酸又はその酸無水物類としては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
PVC系樹脂の平均重合度は、400~1200が好ましく、500~800がより好ましく、550~700がさらに好ましい。PVC系樹脂の平均重合度が前記範囲の下限値以上であれば、成形性が良好となる。PVC系樹脂の平均重合度が前記範囲の上限値以下であれば、強度が向上する。
なお、平均重合度は、JIS K 6720-2によって測定される。
【0016】
塩化ビニル系樹脂としては、硬質塩化ビニル樹脂であってもよく、軟質塩化ビニル樹脂であってもよいが、成形品の表面硬度が高く、耐傷付き性に優れる点から、硬質塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0017】
MMA系樹脂は、メチルメタクリレート(MMA)由来の繰り返し単位(以下、「MMA単位」とも記す。)の割合が全繰り返し単位に対して80質量%以上の重合体である。MMA系樹脂は、MMAの単独重合体であってもよく、MMAと、MMA以外の(メタ)アクリレートとの共重合体であってもよい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレートとアクリレートの総称である。
MMA系樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
アロイ樹脂に含まれるMMA系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0018】
MMA系樹脂中のMMA単位の割合は、全繰り返し単位に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。MMA単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、成形性が向上する。
【0019】
MMA以外の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートを例示できる。
MMA系樹脂に用いるMMA以外の(メタ)アクリレートは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0020】
MMA系樹脂の重量平均分子量は、10,000~600,000が好ましく、20,000~400,000がより好ましい。MMA系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、表面平滑性が良好となる。MMA系樹脂の重量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、強度が向上する。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィを用いて測定されるポリスチレン換算の平均分子量である。
【0021】
MMA系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、1~20g/10分が好ましく、2~10g/10分がより好ましい。MMA系樹脂のMFRが前記範囲の下限値以上であれば、加工性が良好となる。MMA系樹脂のMFRが前記範囲の上限値以下であれば、金型内のバリの発生が低減する。
なお、MFRは、JIS K 7210に準拠し、荷重37.3N、温度230℃の条件で測定される。
【0022】
PVC系樹脂とMMA系樹脂とが質量比は、40:60~90:10であり、40:60~80:20が好ましく、40:60~70:30がより好ましい。PVC系樹脂の割合が高いほど、強度が向上する。MMA系樹脂の割合が高いほど、硬度が向上する。
【0023】
アロイ樹脂中のPVC系樹脂とMMA系樹脂の合計の割合は、アロイ樹脂の総質量に対して、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。
【0024】
本発明のアロイ樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて熱安定剤、光安定剤、滑剤等の添加剤を添加することができる。
本発明のアロイ樹脂の形態は、特に限定されず、例えば、ペレット状を例示できる。
【0025】
本発明のアロイ樹脂の全光線透過率は、50%以上であり、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましい。全光線透過率が前記下限値以上であれば、透明性に優れる。
なお、アロイ樹脂の全光線透過率は、JIS K7361に準拠して測定される。
【0026】
本発明のアロイ樹脂のヘイズは、25%以下であり、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。ヘイズが前記上限値以下であれば、透明性に優れる。
なお、アロイ樹脂のヘイズは、JIS K7361に準拠して測定される。
【0027】
本発明のアロイ樹脂の鉛筆硬度は、HB以上が好ましく、H以上がより好ましい。鉛筆硬度が前記下限値以上であれば、成形品の耐傷付き性に優れる。
なお、アロイ樹脂の鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に準拠して測定される。
【0028】
以上説明した本発明のアロイ樹脂は、全光線透過率が高く、ヘイズが低く制御されており、透明性に優れる。
本発明のアロイ樹脂の用途は、特に限定されず、例えば、車両や建材や家電等に用いられる射出成形品に使用できる。
【0029】
[アロイ樹脂の製造方法]
本発明のアロイ樹脂の製造方法は、PVC系樹脂とMMA系樹脂とを質量比40:60~90:10で配合し、帰還型スクリュを用い、スクリュ回転数100~800rpm、樹脂温度180~220℃の条件でせん断加工してアロイ樹脂を得る方法である。本発明の製造方法によれば、全光線透過率及びヘイズの条件が上記の範囲を満たすアロイ樹脂が得られる。
【0030】
帰還型スクリュ、及び帰還型スクリュを備えたせん断加工機の一例について、図1及び図2を参照して説明する。
なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0031】
図1に示すように、帰還型スクリュ1は、円柱状のスクリュ本体10と、スクリュ本体10の外周面に螺旋状に設けられた断面矩形状の突条12と、を備えている。スクリュ本体10には、中心軸mに沿って先端10aから後端10bに向かって途中まで延び、スクリュ本体10の外周面へと通じる断面円形状の帰還穴14が形成されている。帰還型スクリュ1は、内部帰還型スクリュである。
【0032】
スクリュ本体10の長さLは、特に限定されず、例えば、40~300mmとすることができる。
スクリュ本体10の外径Dは、特に限定されず、例えば、10~100mmとすることができる。
【0033】
突条12の高さHは、特に限定されず、例えば、1~20mmとすることができる。
突条12のフライトピッチPは、特に限定されず、例えば、5~50mmとすることができる。
【0034】
帰還穴14の直径dは、特に限定されず、例えば、1~5mmとすることができる。
帰還穴14の長さL1は、特に限定されず、例えば、30~250mmとすることができる。
【0035】
図2に示すように、せん断加工機100は、予備可塑化部110と、せん断加工部120とを備えている。予備可塑化部110の先端部は、せん断加工部120の側部に接続されている。予備可塑化部110の内部には、シングルスクリュ112が設けられている。
せん断加工部120の内部には、帰還型スクリュ1が設けられている。せん断加工部120における帰還型スクリュ1の先端10a側には排出口122が形成されている。
予備可塑化部110のシングルスクリュ112、及びせん断加工部120の帰還型スクリュ1の駆動方式は、特に限定されず、例えば、サーボモータを例示できる。
【0036】
せん断加工機100では、樹脂を予備可塑化部110に供給し、シングルスクリュ112によって樹脂を可塑化しつつ、せん断加工部120に向けて圧送する。せん断加工部120では、帰還型スクリュ1が中心軸m周りに回転し、突条12の動きによってスクリュ本体10の外側を後端10bから先端10aに向かって樹脂が圧送されつつ、先端10aから後端10bに向かって帰還穴14を通って樹脂が帰還し、樹脂が循環する。これにより、せん断と伸長が繰り返され、ナノ分散と混合が実現される。
【0037】
せん断加工時の帰還型スクリュのスクリュ回転数は、100~800rpmであり、150~700rpmが好ましく、200~600rpmがより好ましい。スクリュ回転数が前記範囲の下限値以上であれば、透明性が向上する。スクリュ回転数が前記範囲の上限値以下であれば、硬度が向上する。
【0038】
帰還型スクリュによるせん断加工時の樹脂温度は、180~220℃であり、190~210℃がより好ましい。せん断加工時の樹脂温度が前記範囲の下限値以上であれば、強度が向上する。せん断加工時の樹脂温度が前記範囲の上限値以下であれば、熱安定性が良好となる。
【0039】
せん断加工時のせん断速度は、150~1200s-1が好ましく、230~1000s-1がより好ましく、300~900s-1がさらに好ましい。せん断速度が前記範囲の下限値以上であれば、加工性が良好となる。せん断速度が前記範囲の上限値以下であれば、分散性が良好となる。
【0040】
帰還型スクリュによる加工時間は、適宜設定でき、例えば、1~30秒とすることができる。
【0041】
異種高分子同士のアロイ化には、それぞれの高分子同士の相溶性が影響する。相溶性が良好な高分子同士であれば、分散している高分子同士が混ざりやすくなる。PVC系樹脂とMMA系樹脂とは半相溶性に分類されるため、従来のアロイ化方法ではナノレベルでの微分散は難しい。
【0042】
本発明では、帰還型スクリュを用い、帰還型スクリュのスクリュ回転数と樹脂温度を特定の範囲に制御してせん断加工(混練)を行うことで、PVC系樹脂とMMA系樹脂とを微分散させることができる。そのため、相溶化剤を使用しなくても、透明性に優れたPVC系樹脂とMMA系樹脂のアロイ樹脂が得られる。また、本発明の製造方法で得られるアロイ樹脂は、表面硬度が高く、耐傷付き性にも優れている。
【0043】
なお、本発明の製造方法は、帰還型スクリュを用い、スクリュ回転数と樹脂温度を前述の特定の範囲に制御する方法であれば、図1に例示した帰還型スクリュ1や、図2に例示したせん断加工機100を用いる方法には限定されない。
【実施例
【0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[全光線透過率、ヘイズ]
全光線透過率及びヘイズは、JIS K7361に準拠して測定した。
【0045】
[鉛筆硬度]
鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に準拠して測定した。
【0046】
[実施例1]
PVC系樹脂としてTJX-2159(商品名、信越ポリマー社製、塩化ビニル単位の割合:91質量%、平均重合度:600)90質量部と、MMA系樹脂としてデルペット 80N(商品名、旭化成社製、MMA単位の割合:95質量%、重量平均分子量:100,000、MFR:2g/10分)10質量部とを、図1及び図2に例示した帰還型スクリュ1を備えるせん断加工機100によってせん断加工し、アロイ樹脂を得た。
帰還型スクリュ1は、スクリュ本体10の長さLを50mm、スクリュ本体10の外径Dを28mm、突条12のフライトピッチPを11mm、突条12の高さHを2mm、帰還穴14の直径dを2.5mm、帰還穴14の長さL1を40mmとした。せん断加工時の条件は、スクリュ回転数を200rpm、せん断加工時の樹脂温度を200℃、せん断速度を300s-1とした。せん断加工時の樹脂温度は、赤外線温度センサによって測定した。
得られたアロイ樹脂を190℃で熱プレスし、縦120mm×横120mm×厚さ4mmの樹脂板として各評価試験に用いた。
【0047】
[実施例2~6]
PVC系樹脂とMMA系樹脂の使用量、スクリュ回転数を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にしてアロイ樹脂を製造し、樹脂板を作製して各評価試験に用いた。
【0048】
[比較例1]
PVC系樹脂としてTJX-2159(商品名、信越ポリマー社製、塩化ビニル単位の割合:91質量%、平均重合度:600)70質量部と、MMA系樹脂としてデルペット 80N(商品名、旭化成社製、MMA単位の割合:95質量%、重量平均分子量:100,000、MFR:2g/10分)30質量部とを、シングルスクリュを備えた射出成形機(商品名J110AD、JSW社製)を用いて射出成形し、縦120mm×横75mm×厚さ3mmの樹脂板を作製し、各評価試験に用いた。射出成形時のスクリュ回転数は50rpm、樹脂温度は190℃、せん断速度を60s-1とした。
【0049】
[比較例2]
PVC系樹脂としてTJX-2157(商品名、信越ポリマー社製、塩化ビニル単位の割合:88質量%、平均重合度:700)70質量部と、MMA系樹脂としてデルペット 80N(商品名、旭化成社製、MMA単位の割合:95質量%、MFR:2g/10分)30質量部とを、スクリュ回転数を50rpm、せん断加工時の樹脂温度を190℃、せん断速度を75s-1とする以外は実施例1と同様にして、帰還型スクリュ1を備えるせん断加工機100によってせん断加工し、アロイ樹脂を得た。
得られたアロイ樹脂を190℃で熱プレスし、縦120mm×横120mm×厚さ4mmの樹脂板として各評価試験に用いた。
【0050】
[比較例3~4]
PVC系樹脂とMMA系樹脂の使用量を表2に示すとおりに変更した以外は、比較例1と同様にして樹脂板を作製し、各評価試験に用いた。
【0051】
[参考例1]
PVC系樹脂としてTJX-2157(商品名、信越ポリマー社製、塩化ビニル単位の割合:88質量%、平均重合度:700)100質量部を用い、MMA系樹脂を用いない以外は、比較例1と同様にして樹脂板を作製し、各評価試験に用いた。
【0052】
[参考例2]
MMA系樹脂としてデルペット 80N(商品名、旭化成社製、MMA単位の割合:95質量%、重量平均分子量:100,000、MFR:2g/10分)100質量部を用い、PVC系樹脂を用いない以外は、比較例1と同様にして樹脂板を作製し、各評価試験に用いた。
【0053】
各例の製造条件及び評価結果を表1及び表2に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び表2に示すように、帰還型スクリュを用い、特定の条件を満たすように製造した実施例1~6のアロイ樹脂は、全光線透過率が高く、ヘイズが低く、透明性に優れていた。実施例1~6のアロイ樹脂は、参考例1のPVC系樹脂単独や参考例2のMMA系樹脂単独と比べても、ヘイズが低く、透明性に優れていた。また、実施例1~6のアロイ樹脂は、鉛筆硬度が高く、耐傷付き性にも優れていた。
一方、従来の射出成型機を用いた比較例1、3、及び帰還型スクリュのスクリュ回転数が低い比較例2のアロイ樹脂は、全光線透過率が低く、ヘイズが高く、透明性が劣っていた。
【符号の説明】
【0057】
1…帰還型スクリュ、10…スクリュ本体、12…突条、14…帰還穴、100…せん断加工機、110…予備可塑化部、120…せん断加工部。
図1
図2