(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】圧力容器及びブロー成形体の製造装置
(51)【国際特許分類】
F17C 1/06 20060101AFI20241206BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20241206BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20241206BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20241206BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F17C1/06
B29C49/20
B29C49/04
B29C49/48
F16J12/00 B
(21)【出願番号】P 2020160778
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 優次
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
(72)【発明者】
【氏名】大神 敦幸
【審査官】武井 健浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150517(JP,A)
【文献】特開2018-149737(JP,A)
【文献】国際公開第2020/002462(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0170353(US,A1)
【文献】特開2004-144172(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066293(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロー成形体と、前記ブロー成形体を包囲する外部補強層とを有し、
前記ブロー成形体は、
パリソンを材料として胴部とドーム部が一体をなすようにブロー成形されたライナーと、
前記胴部の外周面に密着したパイプとを有し、
前記パイプの端部の内径寸法は、前記ドーム部の外周面のうち前記パイプと隣接する部位の外径寸法よりも小さく、
前記胴部の外周面と、前記ドーム部の外周面のうち前記パイプと隣接する部位との間に段差が形成されている圧力容器。
【請求項2】
前記パイプの端部の
最大外径寸法は、前記ドーム部の外周面のうち前記パイプと隣接する部位の外径寸法よりも大きく、
前記パイプの端部
の最大外径となる部分の外周面と、前記ドーム部の外周面のうち前記パイプと隣接する部位と
が、前記パイプのテーパ部を介して段差
なく連なっている請求項1に記載の圧力容器。
【請求項3】
前記パイプの端部には、外周面を軸線に対して傾斜させたテーパ部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の圧力容器。
【請求項4】
前記パイプが、前記ライナーよりも剛性の高い内部補強層を構成している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の圧力容器。
【請求項5】
パリソンを材料として胴部とドーム部とが一体をなすようにブロー成形されたライナーと、前記胴部の外周面に密着したパイプとを有するブロー成形体を成形する製造装置であって、
筒状の前記パリソンを接触させることによって前記胴部を成形する前記パイプと、
前記パリソンを接触させることによって前記胴部の上下両端部側の前記ドーム部をそれぞれ成形する2対の金型とを備え、
一方の対の前記金型を前記パイプの上端部のみに連なるように配置し、他方の対の前記金型を前記パイプの下端部のみに連なるように配置し、前記金型と前記パイプに前記パリソンを密着させることによって、所定形状の前記ライナーを成形し、
前記金型が型開きした状態では、前記金型が前記ライナー及び前記パイプから離脱し、前記パイプが前記胴部と一体化されるブロー成形体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器及びブロー成形体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、樹脂製のライナーの外面に補強層を形成した圧力容器が開示されている。この種のライナーはブロー成形によって所定形状に成形される。ブロー成形では、押出機から押し出されたパリソンを金型で挟み込み、パリソン内に加圧エアを吹き込むことによって、パリソンを金型に押し付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧力容器の長さは、流体を貯留する容積に応じて異なる。長さの異なる圧力容器を製造するためには、圧力容器の長さに対応した複数種類の金型を用意する必要がある。そのため、金型コストが高くなる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、金型コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の圧力容器は、
ブロー成形体と、前記ブロー成形体を包囲する外部補強層とを有し、
前記ブロー成形体は、
パリソンを材料として胴部とドーム部が一体をなすようにブロー成形されたライナーと、
前記胴部の外周面に密着したパイプとを有する。
【0007】
第2の発明のブロー成形体の製造装置は、
胴部とドーム部とが一体成形されたライナーを有するブロー成形体を成形する製造装置であって、
筒状のパリソンを接触させることによって前記胴部を成形するパイプと、
前記パリソンを接触させることによって前記ドーム部を成形する金型とを備え、
前記金型が型開きした状態では、前記金型が前記ライナー及び前記パイプから離脱し、前記パイプが前記胴部と一体化される。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明によれば、ドーム部を成形するための金型を、パイプの端部と連なるように配置し、金型とパイプにパリソンを密着させることによって、所定形状のライナーを成形することができる。長さの異なるライナーを成形する場合は、パイプの長さを変更するだけで済むので、金型を共通化することができる。長さの異なる複数種類のライナーに対して、金型の種類数は1種類だけで済むので、金型のコストを低減することができる。
【0009】
第2の発明によれば、長さの異なるブロー成形体を成形する場合は、パイプの長さを変更するだけで済むので、金型を共通化することができる。長さの異なる複数種類のブロー成形体に対して、金型の種類数は1種類だけで済むので、金型のコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1の製造装置によるブロー成形体の製造工程において、金型を型閉めする前の状態をあらわす断面図である。
【
図2】ブロー成形体の製造工程において、型締め状態の金型内でブロー成形体を成形した状態をあらわす側断面図である。
【
図3】製造装置によって成形された圧力容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、前記パイプの端部の内径寸法は、前記ライナーの外周面のうち前記パイプと隣接する部位の外径寸法よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、ライナーとパイプが軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0012】
第1の発明は、前記パイプの端部の外径寸法は、前記ライナーの外周面のうち前記パイプと隣接する部位の外径寸法よりも大きいことが好ましい。この構成によれば、外部補強層がブロー成形体に対して軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0013】
第1の発明は、前記パイプの端部には、外周面を軸線に対して傾斜させたテーパ部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、パイプの端部と外部補強層との密着部位に応力が集中することを防止できる。
【0014】
第1及び第2の発明は、前記パイプが、前記ライナーよりも剛性の高い内部補強層を構成していることが好ましい。この構成によれば、ライナーの胴部の変形を防止することができる。
【0015】
第2の発明は、前記パイプの端部の内径寸法は、前記金型の内周面のうち前記パイプと隣接する部位の内径寸法よりも小さいことが好ましい。この構成によれば、ライナーとパイプが軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0016】
第2の発明は、前記パイプの端部には、外周面を軸線に対して傾斜させたテーパ部が形成されていることが好ましい。この構成によれば、ブロー成形体の外周面に外部補強層を形成した場合に、パイプの端部と外部補強層との密着部位に応力が集中することを防止できる。
【0017】
第2の発明は、パイプの端部の外径寸法は、金型の内周面のうちパイプと隣接する部位の内径寸法よりも大きいことが好ましい。この構成によれば、ブロー成形体の外周面に外部補強層を形成した場合に、外部補強層がブロー成形体に対して軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0018】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図4を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1~
図4にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図1~
図4にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0019】
本実施例の圧力容器10は、
図3に示すように、ブロー成形体11と、外部補強層12と、口金13と、を備えている。ブロー成形体11は、製造装置30を用いたブロー成形方法によって製造される。ブロー成形体11は、ライナー14と、パイプ15と、有している。ライナー14の材料の一例として、高密度ポリエチレン(HDPE)とエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)の混合樹脂を用いることができる。
【0020】
圧力容器10は、
図3に示すように、胴部10Aと、ドーム部10Bと、を備えている。胴部10Aは、軸線を上下方向(鉛直方向)に向けた円筒形である。上側のドーム部10Bは、胴部10Aの上端から上方へ膨出した形態である。下側のドーム部10Bは、胴部10Aの下端から下方へ膨出した形態である。圧力容器10の胴部10Aは、ブロー成形体11の胴部11Aと、外部補強層12の胴部12Aと、によって構成されている。圧力容器10のドーム部10Bは、ブロー成形体11のドーム部11Bと、外部補強層12のドーム部12Bと、によって構成されている。
【0021】
ブロー成形体11の胴部11Aは、
図3に示すように、軸線を上下方向(鉛直方向)に向けた円筒形である。ブロー成形体11の胴部11Aは、後述するライナー14の胴部16と、パイプ15と、によって構成されている。ブロー成形体11のドーム部11Bは、後述するライナー14のドーム部17によって構成されている。
【0022】
ライナー14は、
図3に示すように、胴部16と、上下両側のドーム部17と、を具備している。ライナー14は、後述するパリソン51を材料として胴部16とドーム部17が一体をなすようにブロー成形されている。胴部16は、軸線を上下方向(鉛直方向)に向けた円筒形である。上側のドーム部17は、胴部16の上端から上方へ膨出した形態である。下側のドーム部17は、胴部16の下端から下方へ膨出した形態である。ドーム部17の中心部には、上下方向(鉛直方向)へ突出した筒状部18が形成されている。ドーム部17は、上下方向(鉛直方向)においてパイプ15側に設けられる径の大きい大径部17Aと、パイプ15側とは反対側に設けられる径の小さい小径部17Bと、を有している。小径部17Bは、上下方向(鉛直方向)へ筒状に突出している。小径部17Bには、口金13が取り付けられている。胴部16の上下両端の外周面の外径寸法は、ドーム部17の外周面の最大外径寸法よりも小さい。すなわち、胴部16とドーム部17との間には、段差が形成されている。
【0023】
パイプ15は、
図3に示すように、軸線を上下方向(鉛直方向)に向けた円筒形である。パイプ15は、ライナー14よりも剛性の高い内部補強層を構成している。パイプ15は、例えば、金属や、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。パイプ15は、胴部16の外周面に密着している。長さの異なるライナー14を成形する場合は、パイプ15の長さを変更するだけで済むので、後述する金型33を共通化することができる。
【0024】
パイプ15の端部19には、
図4に示すように、外周面を軸線に対して傾斜させたテーパ部21が形成されている。テーパ部21は、上下方向(鉛直方向)端部側に向かうにつれて径方向内側へと近づく傾斜になっている。パイプ15における端部19より径方向内側には、端面22が存在している。端面22は、パイプ15の内周面とテーパ部21との間に設けられている。端面22は、上下方向に直交する面である。
【0025】
ドーム部17におけるパイプ15側の部位23は、
図4に示すように、ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位となっている。ドーム部17におけるパイプ15側の部位23は、パイプ15と接している。パイプ15の端部19の内径寸法L1は、
図3に示すように、ドーム部17におけるパイプ15側の部位23の外径寸法L2よりも小さい。これにより、パイプ15の端部19がドーム部17におけるパイプ15側の部位23と上下方向で重なることになる。そのため、パイプ15の端部19とドーム部17におけるパイプ15側の部位23とが干渉することで、ライナー14とパイプ15が上下方向(軸線方向)に位置ずれすることを防止できる。
【0026】
テーパ部21は、
図4に示すように、ドーム部17におけるパイプ15側の部位23の外周面と段差なく連なっている。すなわち、ライナー14の径方向において、胴部16とドーム部17との間の段差の高さは、パイプ15の端面22の長さと同程度になっている。
【0027】
外部補強層12は、ブロー成形体11を包囲している。外部補強層12は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる。外部補強層12は、パイプ15の外周の全領域、ドーム部17の外周の全領域を覆うように形成されている。外部補強層12は、例えばフィラメントワインディング法によって形成されている。すなわち、外部補強層12は、軸線を中心として回転するブロー成形体11の外面に、例えば繊維束(図示略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、または繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を巻き付けることによって形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0028】
パイプ15の端部19の最大外径寸法L3は、
図3に示すように、ドーム部17におけるパイプ15側の部位23の外径寸法L2よりも大きい。外径寸法L3は、例えば、テーパ部21における最も径方向外側の位置(パイプ15の軸線から最も離れた位置)における外径寸法である。これにより、パイプ15の端部19に対して、上下方向外側に外部補強層12の一部が位置する構成となる。そのため、パイプ15の端部19と外部補強層12の一部とが干渉することで、外部補強層12がブロー成形体11に対して上下方向(軸線方向)に位置ずれすることを防止できる。
【0029】
製造装置30は、ブロー成形体11を成形する装置である。製造装置30は、
図1に示すように、ブロー成形機31と、給気手段32と、パイプ15と、4つの金型33と、を備えている。ブロー成形機31は、給気手段32、パイプ15、および4つの金型33よりも上方に配置されている。ブロー成形機31は、ブロー成形体11の材料となる円筒状のパリソン51を、鉛直方向下向きに押し出すものである。
【0030】
給気手段32は、
図1に示すように、ロッド34と、支持部35と、給気部(図示略)と、を備えている。ロッド34は、例えば金属製である。ロッド34は、L字の筒形状である。ロッド34は、内部にエア供給路(図示略)が形成されている。ロッド34は、支持部35によって支持されている。ロッド34の先端側の直線部分は、鉛直方向に沿って起立している。ロッド34の先端側の直線部分には、内側のエアを外側に排出するための複数の排気孔36が形成されている。ロッド34の先端側の直線部分において、複数の排気孔36を上下に挟んだ位置に、一対の口金13が組み付けられている。口金13は、ロッド34の外周面に嵌め込まれている。給気部は、コンプレッサとして構成されている。吸気部は、ロッド34の基端側(先端側とは反対側)からエア供給路に圧縮空気を供給する。
【0031】
パイプ15は、
図1に示すように、ロッド34の先端側の直線部分を囲むように配置されている。例えば、パイプ15の外周面は、図示しない支持部材によって支持されている。パイプ15は、鉛直方向(ロッド34の先端側の直線部分に沿う方向)において、一対の口金13の間の中心位置に設けられている。長さの異なるライナー14を成形する場合は、パイプ15の長さを変更するだけで済むので、金型33を共通化することができる。
【0032】
4つの金型33は、型締め状態でパリソン51を所定形状のブロー成形体11に成形するものである。上側の一対の金型33は、
図1に示すように、パイプ15の上端側で、型締め及び型開き方向(
図1における左右方向)と平行に対向する。下側の一対の金型33は、パイプ15の下端側で、型締め及び型開き方向(
図1における左右方向)と平行に対向する。各金型33は、同じ形状になっている。各金型33には、鉛直方向と水平方向とでそれぞれ対向する金型33との対向面を凹ませた形態のキャビティ37が形成されている。キャビティ37の内面は、ライナー14のドーム部17の全領域を所定形状に成形するための成形面と、パイプ15の端部19に嵌合してパイプ15を位置決めする面と、を含んでいる。上側の一対の金型33は、左右方向に接近することによってパリソン51と同心状に型締めされ、左右方向に離間することによって型開きされる。同様に、下側の一対の金型33は、左右方向に接近することによってパリソン51と同心状に型締めされ、左右方向に離間することによって型開きされる。
【0033】
キャビティ37の内面は、
図1に示すように、第1成形面41と、第2成形面42と、第1嵌合面43と、第2嵌合面44と、を含んでいる。キャビティ37の内面は、上下方向の外側(パイプ15側とは反対側)から内側(パイプ15側)に向かって、第1成形面41、第2成形面42、第1嵌合面43、および第2嵌合面44の順に連なっている。第1成形面41は、上下方向全体に亘って同径の断面半円弧状の面である。第1成形面41は、口金13の径と同じ径の断面半円弧状の面である。第2成形面42は、第1成形面41側から第1嵌合面43側に向かって拡径する断面半円弧状の面である。第1成形面41と第2成形面42は、上下方向で滑らかに連なっている。第1嵌合面43は、ロッド34の軸線に対して傾斜している。第1嵌合面43は、第2嵌合面44側に向かうにつれて径方向外側へと離れる傾斜になっている。第1嵌合面43は、対向するパイプ15のテーパ部21と同形状になっている。すなわち、周方向に直交する面(例えば
図1の切断面)内において、第1嵌合面43の長さとテーパ部21の長さが同じである。第2嵌合面44は、上下方向全体に亘って同径の断面半円弧状の面である。第2嵌合面44は、パイプ15の外周面の径と同じ径の断面半円弧状の面である。
【0034】
金型33の第2成形面42におけるパイプ15側の部位45(第1嵌合面43側の端部)は、
図2に示すように、金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位となっている。パイプ15の端部19の内径寸法L1は、第2成形面42におけるパイプ15側の部位45の内径寸法L4よりも小さい。これにより、ライナー14とパイプ15が軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0035】
パイプ15の端部19の外径寸法L3は、
図2に示すように、金型33の第2成形面42におけるパイプ15側の部位45の内径寸法L4よりも大きい。これにより、ブロー成形体11の外周面に外部補強層12を形成した場合に、外部補強層12がブロー成形体11に対して軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0036】
次に、ブロー成形体11の製造手順を説明する。まず、
図1に示すように、パイプ15をロッド34の先端側の直線部分を囲むように配置する。上側両側の一対の金型33を型開きとした状態で、上側の一対の金型33の間、および下側の一対の金型33間にパリソン51を押し出す。パリソン51は、ロッド34とパイプ15の内周面との間に押し出される。所定長さのパリソン51が押し出されたら、
図2に示すように、上下両側の一対の金型33を互いに接近させて型締めする。金型33をパイプ15の端部19と連なるように配置する。金型33の第1嵌合面43を、パイプ15のテーパ部21に面接触させる。パイプ15の外周面の端部19側の一部(テーパ部21を除く部分)を、金型33の第2嵌合面44に面接触させる。型締めされると、パリソン51が、上下両側の一対の金型33およびパイプ15によって包囲され、ハウジング(図示略)内に収容される。
【0037】
型締めした後、パリソン51を給気手段32によって膨らませ、金型33の内面およびパイプ15の内周面に押し付ける。これにより、
図2に示すように、胴部16とドーム部17とが一体成形されたライナー14を有し、所定形状に成形されたブロー成形体11が得られる。パリソン51をパイプ15の内周面に接触させることによって、胴部16が成形される。パリソン51を上側の一対の金型33の内面に接触させることによって、上側のドーム部17が成形される。パリソン51を下側の一対の金型33の内面に接触させることによって、下側のドーム部17が成形される。
【0038】
パリソン51がある程度硬化してから、金型33を型開きする。金型33が型開きした状態では、金型33がライナー14およびパイプ15から離脱し、パイプ15が胴部16と一体化される。パイプ15は、胴部16の外周面に密着した状態となる。ブロー成形体11は、金型33から取り出して冷却ブース(図示略)へ移動させ、時間を掛けて冷却する。以上により、ブロー成形体11の製造工程が完了する。
【0039】
以下、本実施例1の効果について説明する。本実施例1の圧力容器10、およびブロー成形体11の製造装置30によれば、ドーム部17を成形するための金型33を、パイプ15の端部19と連なるように配置する。金型33とパイプ15にパリソン51を密着させることによって、所定形状のライナー14を成形することができる。長さの異なるライナー14を成形する場合は、パイプ15の長さを変更するだけで済むので、後述する金型33を共通化することができる。長さの異なる複数種類のライナー14に対して、金型33の種類数は1種類だけで済むので、金型33のコストを低減することができる。
【0040】
また、パイプ15の端部19の内径寸法L1は、ドーム部17におけるパイプ15側の部位23(ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位)の外径寸法L2よりも小さい。これにより、ライナー14とパイプ15が上下方向(軸線方向)に位置ずれすることを防止できる。
【0041】
また、パイプ15の端部19の外径寸法L3は、ドーム部17におけるパイプ15側の部位23(ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位)の外径寸法L2よりも大きい。これにより、後述する外部補強層12がブロー成形体11に対して上下方向(軸線方向)に位置ずれすることを防止できる。
【0042】
また、パイプ15の端部19には、外周面を軸線に対して傾斜させたテーパ部21が形成されている。これにより、テーパ部21を設けない構成(パイプ15の端部19が角張っている構成)と比べて、パイプ15の端部19と外部補強層との密着部位に応力が集中することを防止できる。
【0043】
また、パイプ15は、ライナー14よりも剛性の高い内部補強層を構成している。これによれば、ライナー14の胴部16の変形を防止することができる。
【0044】
また、パイプ15の端部19の内径寸法L1は、第2成形面42におけるパイプ15側の部位45(金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位)の内径寸法L4よりも小さい。これにより、ライナー14とパイプ15が軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0045】
また、パイプ15の端部19の外径寸法L3は、金型33の第2成形面42におけるパイプ15側の部位45(金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位)の内径寸法L4よりも大きい。これにより、ブロー成形体11の外周面に外部補強層12を形成した場合に、外部補強層12がブロー成形体11に対して軸線方向に位置ずれすることを防止できる。
【0046】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例1では、パイプ15の端部19の内径寸法L1を、ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位(ドーム部17におけるパイプ15側の部位23)の外径寸法L2よりも小さく設定したが、パイプ15の端部19の内径寸法L1は、ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位(ドーム部17におけるパイプ15側の部位23)の外径寸法L2と同じ寸法、又は、ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位(ドーム部17におけるパイプ15側の部位23)の外径寸法L2よりも大きい寸法としてもよい。
(2)上記実施例1では、パイプ15の端部19の外径寸法L3を、ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位(ドーム部17におけるパイプ15側の部位23)の外径寸法L2よりも大きく設定したが、パイプ15の端部19の外径寸法L3は、ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位(ドーム部17におけるパイプ15側の部位23)の外径寸法L2と同じ寸法、又は、ライナー14の外周面のうちパイプ15と隣接する部位(ドーム部17におけるパイプ15側の部位23)の外径寸法L2よりも小さい寸法としてもよい。
(3)上記実施例1では、パイプ15の端部19の内径寸法L1を、金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位(第2成形面42におけるパイプ15側の部位45)の内径寸法L4よりも小さく設定したが、パイプ15の端部19の内径寸法L1は、金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位(第2成形面42におけるパイプ15側の部位45)の内径寸法と同じ寸法L4、又は、金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位(第2成形面42におけるパイプ15側の部位45)の内径寸法L4よりも大きい寸法としてもよい。
(4)上記実施例1では、パイプの端部の外径寸法L3を、金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位(第2成形面42におけるパイプ15側の部位45)の内径寸法L4よりも大きく設定したが、パイプ15の端部19の外径寸法L3は、金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位(第2成形面42におけるパイプ15側の部位45)の内径寸法L4と同じ寸法、又は、金型33の内周面のうちパイプ15と隣接する部位(第2成形面42におけるパイプ15側の部位45)の内径寸法L4よりも小さい寸法としてもよい。
(5)上記実施例1では、パイプ15の端部19にテーパ部21を形成したが、パイプ15の端部19は、テーパ部21を有しない形状であってもよい。
(6)上記実施例1において、テーパ部21の代わりに、径方向外側に凸となる湾曲部が設けられていてもよい。
(7)上記実施例1では、パイプ15が、ライナー14よりも剛性の高い内部補強層を構成するが、パイプ15の材料は、ライナー14と同じ剛性のものでもよく、ライナー14よりも低い剛性のものでもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…圧力容器
11…ブロー成形体
11A…ブロー成形体の胴部
11B…ブロー成形体のドーム部
12…外部補強層
14…ライナー
15…パイプ(内部補強層)
16…ライナーの胴部
17…ライナーのドーム部
21…テーパ部
23…ドーム部のパイプ側の部位(ライナーの外周面のうちパイプと隣接する部位)
30…製造装置
33…金型
51…パリソン