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特許7599304鋼板打抜き金型および回転電機の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】鋼板打抜き金型および回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/02 20060101AFI20241206BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B21D28/02 C
H02K15/02 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020175137
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066662
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三田井 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】山添 一利
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-039122(JP,A)
【文献】特開2018-107852(JP,A)
【文献】特開2020-124732(JP,A)
【文献】特開2005-144463(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
B21D 28/24
B21D 28/26
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材の外形を形成するダイと、
鋼板から前記板状部材を打ち抜くパンチと、
前記板状部材と同じ形状の上下方向に貫通し、前記パンチが通るガイド穴を有し、前記ダイとの間に前記鋼板を挟み込むストリッパとを備え、
記ストリッパの、前記板状部材の剪断時に前記鋼板に接触する面の前記パンチ側の縁
および、前記パンチの、前記板状部材の剪断時に前記鋼板に接触する面の前記ストリッパ側の縁、
の内の少なくとも一方の縁に沿って、溝部が形成されている鋼板打抜き金型。
【請求項2】
前記ダイは、前記板状部材の剪断時に前記鋼板に接触する面の前記パンチ側の縁に沿って、溝部が形成されている請求項1に記載の鋼板打抜き金型。
【請求項3】
板状部材の外形を形成するダイと、
鋼板から前記板状部材を打ち抜くパンチと、
前記板状部材と同じ形状の上下方向に貫通し、前記パンチが通るガイド穴を有し、前記ダイとの間に前記鋼板を挟み込むストリッパとを備え、
前記ストリッパの、前記板状部材の剪断時に前記鋼板に接触する面の前記パンチ側の縁に沿って溝部が形成され、
前記パンチは、前記ストリッパに形成された前記溝部を通らずに前記ガイド穴を通ることにより前記鋼板から前記板状部材を打ち抜く鋼板打抜き金型。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鋼板打抜き金型を用いて打ち抜いた前記板状部材を積層し、ステータコア又はロータコアを形成する回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、鋼板打抜き金型および回転電機の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板打抜き金型によって打ち抜いた鉄心片を積層することで構成されたモータコアが知られている。鋼板打抜き金型は、鋼板の打ち抜き時の滑りを抑制するためのストリッパを備えており、ストリッパには、V突起を形成して打ち抜き寸法、及び鋼板の剪断面の精度を向上させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002―1449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のV突起を有している金型構造ではV突起の維持、管理が困難である。すなわち、V突起には大きな応力が集中し、すぐに先端が摩耗して鋼板の把持力が低下するために、鋼板の剪断面の精度が劣化してしまうという課題があった。また、金型のメンテナンス時には、鋼板と接触するストリッパの接触面を研磨することが一般的であるが、V突起を避けて研磨した上で、V突起部分を別途加工する必要があり、手間がかかるという課題があった。
【0005】
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、耐久性が高く、鋼板の剪断面の精度を向上させることが可能となると共に、メンテナンス性を向上できる鋼板打抜き金型および回転電機の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される鋼板打抜き金型は、
板状部材の外形を形成するダイと、
鋼板から前記板状部材を打ち抜くパンチと、
前記板状部材と同じ形状の上下方向に貫通し、前記パンチが通るガイド穴を有し、前記ダイとの間に前記鋼板を挟み込むストリッパとを備え、
記ストリッパの、前記板状部材の剪断時に前記鋼板に接触する面の前記パンチ側の縁
および、前記パンチの、前記板状部材の剪断時に前記鋼板に接触する面の前記ストリッパ側の縁、
の内の少なくとも一方の縁に沿って、溝部が形成されているものである。
また、本願に開示される鋼板打抜き金型は、
板状部材の外形を形成するダイと、
鋼板から前記板状部材を打ち抜くパンチと、
前記板状部材と同じ形状の上下方向に貫通し、前記パンチが通るガイド穴を有し、前記ダイとの間に前記鋼板を挟み込むストリッパとを備え、
前記ストリッパの、前記板状部材の剪断時に前記鋼板に接触する面の前記パンチ側の縁に沿って溝部が形成され、
前記パンチは、前記ストリッパに形成された前記溝部を通らずに前記ガイド穴を通ることにより前記鋼板から前記板状部材を打ち抜くものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される鋼板打抜き金型および回転電機の製造方法によれば、耐久性が高く、鋼板の剪断面の精度を向上させることが可能となると共に、メンテナンス性を向上できる鋼板打抜き金型および回転電機の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1による回転電機の断面図である。
図2】実施の形態1によるステータコアの斜視図である。
図3】実施の形態1による分割コアの斜視図である。
図4】実施の形態1による鋼板打抜き金型によって打抜かれたコア片の平面図である。
図5】実施の形態1による鋼板打抜き金型の斜視図である。
図6】実施の形態1による鋼板打抜き金型のダイの斜視図である。
図7図6のA-A線による要部断面拡大図である。
図8】実施の形態1による鋼板打抜き金型のパンチの斜視図である。
図9図8のB-B線による要部断面拡大図である。
図10】実施の形態1による鋼板打抜き金型のストリッパの斜視図である。
図11図10のC-C線による要部断面拡大図である。
図12】実施の形態1による鋼板打抜き金型による鋼板の打ち抜き直前の状態を示す要部断面拡大図である。
図13】実施の形態1による鋼板打抜き金型による鋼板の打ち抜き直後の状態を示す要部断面拡大図である。
図14】実施の形態1による鋼板打抜き金型による鋼板の打ち抜き直後の状態を示す要部断面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、実施の形態1による鋼板打抜き金型および回転電機の製造方法を、図を用いて説明する。
なお、以下の各図において、各構成部品の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、同一の符号を付したものは、同一の部材又はこれに相当するものである。
また、本明細書において、上下関係に言及するときは、図5に示す鋼板打抜き金型10の上側(紙面上側)を「上」と同下側を「下」とする。また、ダイ、パンチ、ストリッパについて「内側」、「外側」に言及するときは、対象となる部分を境界として、それぞれの部材の中心が存在する側を内側、その反対側を外側とする。
【0010】
図1は、回転電機100の断面図である。
図2は、ステータコア20の斜視図である。
図3は、分割コア21の斜視図である。
図4は、コア片22の平面図である。
図5は、鋼板打抜き金型10の斜視図である。
【0011】
回転電機100は、ハウジング1の内側に固定されたステータ2と、ステータ2の内周面に外周面を対向させ、空隙を介して回転可能に支持されたロータ3とからなる。ステータ2は、円環状のステータコア20と、ステータコア20の各ティース部に巻回されたコイル4とからなる。また、ロータ3は、ロータコア3aとロータコア3aの中心に、軸方向Zに挿入して固定されたシャフト3bとを備える。
【0012】
図2に示すステータコア20は、図3に示す複数の分割コア21を、円環状に組み合わせて配置することによって構成されている。分割コア21は、鋼板打抜き金型10によって打ち抜かれた図4に示すコア片22(板状部材)を、複数枚、軸方向Zに積層して固定することによって形成される。コア片22は、周方向Xに広がるバックヨーク部22aと、バックヨーク部22aの径方向Yの内側の中央から、径方向Yの内側に突出するティース部22bとで構成される。
【0013】
ステータコア20を構成する分割コア21は、渦電流による鉄損を低減するために、コア片22を積層することで構成されることが一般的である。また、コア片22としては、渦電流による鉄損抑制のため0.1mmから1mm程度の薄板の鋼板が使用されることが多く、磁気特性向上のために電磁鋼板を使用することが多い。
【0014】
ところで、ステータコア20を構成するためには、大量のコア片22が必要である。そのため、同一部品の大量生産性に優れている鋼板打抜き金型と、高速プレス機を用いて生産する手法が従来から使用されている。なお、本実施の形態1ではコア片22を積層することで構成された分割コア21を、複数個、円環状に配置することでステータコア20を形成しているが、周方向Xに分割することなく、円環状に打抜いた複数のコア片を、軸方向Zに積層することでステータコアを形成してもよい。
【0015】
図5に示す鋼板打抜き金型10は、コア片22の外形を形成するダイ11と、鋼板からコア片22を打ち抜くパンチ12と、鋼板を、ダイ11との間に挟み込むストリッパ13とを備える。
【0016】
図6は、鋼板打抜き金型10のダイ11の斜視図である。
図7は、図6のA-A線による要部断面拡大図である。
ダイ11は、鋼板を剪断するダイ剪断加工部11aをコア片22と同じ形状で上面に備えている。鋼板の剪断時において、上面が鋼板に接触する。
ダイ剪断加工部11aの下方は、同型状でダイ11の中を貫通する貫通孔11Hとなっている。ダイ剪断加工部11aは、ダイ11の上面の内周の縁(後述するパンチ12側の縁)に形成されている。また、ダイ11の上面であって、ダイ剪断加工部11aの外側には、ダイ剪断加工部11aに沿って、ダイ溝部11bが形成されている。
【0017】
ダイ11の上面であって、ダイ溝部11bの内側部分11cと、ダイ11の上面であって、ダイ溝部11bの外側部分11dとは、同一の仮想平面内に存在する。すなわち、外側部分11dを含む仮想平面上に内側部分11cも含まれる。図7に示すダイ溝部11bの形状は、ダイ溝部11bの長手方向に垂直な断面が円弧形状であるが、これは例示であって制限的なものではない。角溝形状、V溝形状、その他特殊な形状であってもよい。
【0018】
図8は、鋼板打抜き金型10のパンチ12の斜視図である。
図9は、図8のB-B線による要部断面拡大図である。
図8に示すパンチ12は、図5に示すパンチ12を上下反転させたのものである。したがって、図8では、図5に示すパンチ12の下面が見えている。パンチ12を上から見た形状は、コア片22と同形状である。パンチ12は、ダイ11のダイ剪断加工部11aと共に鋼板を剪断するパンチ剪断加工部12aを、コア片22と同じ形状で下面に備えている。鋼板の剪断時において、下面が鋼板に接触する。パンチ剪断加工部12aは、パンチ12の下面の外周の縁(ストリッパ13側の縁)に形成されている。また、パンチ12の下面であって、パンチ剪断加工部12aの内側には、パンチ剪断加工部12aに沿って、パンチ溝部12bが形成されている。
【0019】
パンチ12の下面であって、パンチ溝部12bの内側部分12cと、パンチ12の下面であって、パンチ溝部12bの外側部分12dとは、同一の仮想平面内に存在する。すなわち、外側部分12dを含む仮想平面上に内側部分12cも含まれる。図9に示すパンチ溝部12bの形状は、溝の長手方向に垂直な断面が円弧形状であるが、これは例示であって制限的なものではない。角溝形状、V溝形状、その他特殊な形状であってもよい。
【0020】
図10は、鋼板打抜き金型10のストリッパ13の斜視図である。
図11は、図10のC-C線による要部断面拡大図である。
図10に示すストリッパ13は、図5に示すストリッパ13を上下反転させたのものである。したがって、図10では、図5に示すストリッパ13の下面が見えている。
ストリッパ13は、上下方向に貫通するガイド穴13Hをコア片22と同じ形状で備えている。また、ストリッパ13の下面であって、ガイド穴13Hの縁13aの外側には、縁13aに沿って、ストリッパ溝部13bが形成されている。鋼板の剪断時において、下面が鋼板に接触する。
【0021】
ストリッパ13の下面であって、ストリッパ溝部13bの内側部分13cと、ストリッパ13の下面であって、ストリッパ溝部13bの外側部分13dとは、同一の仮想平面内に存在する。すなわち、外側部分13dを含む仮想平面上に内側部分13cも含まれる。図11に示すストリッパ溝部13bの形状は、溝の長手方向に垂直な断面が円弧形状であるが、これは例示であって制限的なものではない。角溝形状、V溝形状、その他特殊な形状であってもよい。
【0022】
次に、コア片22の剪断について説明する。
図12は、鋼板打抜き金型10による鋼板Kの打ち抜き直前の状態を示す要部断面拡大図である。
図13は、鋼板打抜き金型10による鋼板Kの打ち抜き直後の状態を示す要部断面拡大図である。
ダイ11とストリッパ13とで鋼板Kを固定し、パンチ12を下降させることで鋼板Kをコア片22の形状に打ち抜く。コア片22の剪断は、ダイ11のダイ剪断加工部11aと、パンチ12のパンチ剪断加工部12aとで行う。
【0023】
上述のように、ダイ11は、ダイ剪断加工部11aの外側にダイ溝部11bを備えている。また、パンチ12は、パンチ剪断加工部12aの内側にパンチ溝部12bを備えている。また、ストリッパ13は、ガイド穴13Hの縁13aの外側にストリッパ溝部13bを備えている。
【0024】
図13に示す鋼板Kの剪断時において、ストリッパ13によって、ストリッパ押さえ荷重50Aが、上方から鋼板Kにかかる。ストリッパ13のガイド穴13Hの下端の縁13aの外側には、縁13aに沿って、ストリッパ溝部13bが形成されているので、ストリッパ押さえ荷重50Aの荷重中心は、縁13aと、ストリッパ溝部13bとの間に位置する。
【0025】
先行技術文献におけるV突起では、V突起が接する金型の強度を確保するため、V突起の一を、ガイド穴の下端の縁からかなりの距離だけ離す必要があった。一方、本実施の形態では、先行技術のV突起よりも、ガイド穴13Hの縁13aに近い位置で、鋼板Kを確実に固定することができ、鋼板Kの剪断面の精度を向上させることが可能となると共に、同時に鋼板Kの反りによる変形も抑制可能である。
【0026】
また、このとき、ストリッパ押さえ荷重50Aの反力として、ストリッパ反力50Bが、下方から鋼板Kにかかる。ダイ11のダイ剪断加工部11aの外側には、ダイ剪断加工部11aに沿って、ダイ溝部11bが形成されているので、ストリッパ反力50Bの荷重中心は、ダイ剪断加工部11aと、ダイ溝部11bとの間に位置する。
【0027】
また、パンチ12の剪断荷重51Aが、上方から鋼板Kにかかる。パンチ12のパンチ剪断加工部12aの内側には、パンチ剪断加工部12aに沿って、パンチ溝部12bが形成されているので、パンチ反力51Bの荷重中心は、ダイ剪断加工部11aと、ダイ溝部11bとの間に位置する。
【0028】
このように、鋼板Kの剪断時において、ストリッパ13によるストリッパ押さえ荷重50Aの荷重中心は、縁13aと、ストリッパ溝部13bとの間に位置し、ストリッパ反力50Bの荷重中心は、ダイ剪断加工部11aと、ダイ溝部11bとの間に位置し、パンチ反力51Bの荷重中心は、ダイ剪断加工部11aと、ダイ溝部11bとの間に位置する。
したがって、これらの場所で、鋼板Kを上下から挟んで十分に固定することができるので、鋼板Kの剪断面Kfの精度を向上させることが可能となると共に、鋼板Kの反りによる変形も抑制可能となる。
【0029】
また、鋼板Kの剪断時において、パンチ12による剪断荷重51Aの荷重中心が、パンチ溝部12bと鋼板Kの剪断部Ksとの間に位置し、パンチ反力51Bの荷重中心が、ダイ溝部11bと鋼板Kの剪断部Ksとの間に位置するので、鋼板Kの剪断部Ksに近い位置で、鋼板Kに剪断荷重をかけることができ、鋼板Kの剪断面Kfの精度を向上させることが可能となると共に、鋼板Kの反りによる変形も抑制可能である。
【0030】
実施の形態1による鋼板打抜き金型10では、ダイ11、パンチ12、ストリッパ13それぞれのすべてにダイ溝部11b、パンチ溝部12b、ストリッパ溝部13bを備えているが、少なくともダイ11、ストリッパ13のいずれか一方に溝部を備える場合であっても、鋼板Kの剪断面Kfの精度の向上と、鋼板Kのそりによる変形を抑制する効果はある。
【0031】
ステータコア20を製造するためには、大量のコア片22が必要である。そのため、鋼板打抜き金型10を用いて大量のコア片22を打ち抜く必要があり、鋼板打抜き金型10と鋼板Kとの接触面は次第に摩耗する。したがって、鋼板打抜き金型10の鋼板Kとの接触面について、定期的に研磨によるメンテナンスが必要である。
【0032】
鋼板打抜き金型10では、ダイ11の上面であって、ダイ溝部11bの内側部分11cと、ダイ11の上面であって、ダイ溝部11bの外側部分11dとは、上述のように同一の仮想平面内に存在する。したがって、内側部分11cと外側部分11dとを同時に研磨することが可能であり、鋼板打抜き金型10のメンテナンス性にも優れる。
【0033】
同様に、パンチ12の下面であって、パンチ溝部12bの内側部分12cと、パンチ12の下面であって、パンチ溝部12bの外側部分12dとは、同一の仮想平面内に存在する。したがって、内側部分12cと外側部分12dとを同時に研磨することが可能であり、メンテナンス性にも優れる。
【0034】
さらに同様に、ストリッパ13の上面であって、ストリッパ溝部13bの内側部分13cと、ストリッパ13の上面であって、ストリッパ溝部13bの外側部分13dとは、同一の仮想平面内に存在する。したがって、内側部分13cと外側部分13dとを同時に研磨することが可能であり、メンテナンス性にも優れる。
【0035】
また、ダイ溝部11b、パンチ溝部12b、ストリッパ溝部13bの幅、深さに詳細な制約はないため、鋼板打抜き金型10のメンテナンスのためにそれぞれの溝が設けられた面を研磨し、ダイ溝部11b、パンチ溝部12b、ストリッパ溝部13bの幅、深さが微小に変化した場合でも、ダイ溝部11b、パンチ溝部12b、ストリッパ溝部13b自体を再加工する必要はなく、各溝部を設けた面を研磨するだけで繰り返し使用可能である。
【0036】
図14は、鋼板打抜き金型10Bによる鋼板Kの打ち抜き直後の状態を示す要部断面拡大図である。
これまで説明した鋼板打抜き金型10では、ダイ11、パンチ12、ストリッパ13それぞれに、ダイ溝部11b、パンチ溝部12b、ストリッパ溝部13bを備えていたが、各溝部に替えて同じ位置に段差11D、12D、13Dを設けても、鋼板Kの剪断面Kfの精度を向上させることが可能となると共に、鋼板Kの反りによる変形も抑制可能である。
【0037】
実施の形態1による鋼板打抜き金型10および回転電機の製造方法によれば、耐久性が高く、鋼板Kの剪断面Kfの精度を向上させることが可能となると共に、コア片22の打ち抜き時の鋼板Kの反りも抑制でき、かつ、鋼板打抜き金型10のメンテナンス性を向上できる。また、ダイ11およびストリッパ13の少なくとも一方に当該溝部を設けることによって、鋼板Kの剪断時において、ダイ11と、ストリッパ13との間に確実に鋼板Kを保持できる。
【0038】
なお、図7に示すダイ溝部11bの深さも例示であって制限的なものではない。打ち抜く鋼板Kの板厚と同等以上の溝深さを備えていればよい。また、ダイ溝部11bの位置も例示であって制限的なものではない。ダイ剪断加工部11aからダイ溝部11bまでの距離は、打ち抜く鋼板Kの板厚の5倍以下の距離であればよい。また、ダイ溝部11bの幅も例示であって制限的なものではない。ダイ溝部11bの幅は、打ち抜く鋼板Kの板厚と同等以下であればよい。
【0039】
また、図9に示すパンチ溝部12bの深さも例示であって制限的なものではない。打ち抜く鋼板Kの板厚と同等以上の溝深さを備えていればよい。また、パンチ溝部12bの位置も例示であって制限的なものではない。パンチ剪断加工部12aからパンチ溝部12bまでの距離は、打ち抜く鋼板Kの板厚の5倍以下の距離であればよい。また、パンチ溝部12bの幅も例示であって制限的なものではない。パンチ溝部12bの幅は、打ち抜く鋼板Kの板厚と同等以下であればよい。
【0040】
また、図11に示すストリッパ溝部13bの深さも例示であって制限的なものではない。打ち抜く鋼板Kの板厚と同等以上の溝深さを備えていればよい。また、ストリッパ溝部13bの位置も例示であって制限的なものではない。縁13aからストリッパ溝部13bまでの距離は、打ち抜く鋼板Kの板厚の5倍以下の距離であればよい。また、ストリッパ溝部13bの幅も例示であって制限的なものではない。ストリッパ溝部13bの幅は、打ち抜く鋼板Kの板厚と同等以下であればよい。
【0041】
また、これまでの説明において、鋼板打抜き金型10では、ダイ11、パンチ12、ストリッパ13それぞれを1部品によって構成していたが、分割した部品を組み立てることでダイ11、パンチ12、ストリッパ13を構成してもよい。また、ダイ11、パンチ12、ストリッパ13それぞれに位置決め精度を向上させるためのピン穴、ガイドポスト、ボルト穴を備えていてもよい。
【0042】
さらに、打抜きプレス機に取り付けるために鋼板打抜き金型10にプレート等の部品を追加してもよい。これらの変更をした場合でも、実施の形態1によるダイ溝部11b、パンチ溝部12b、ストリッパ溝部13bを備えることによって、鋼板Kの剪断面Kfの精度を向上させることが可能となり、同時に鋼板Kの反りによる変形も抑制可能である。さらに、研磨によるメンテナンス性にも優れた鋼板打抜き金型となる。また、本実施の形態では、ステータコアのコア片を打ち抜く場合を例に説明したが、ロータコアのコア片であっても同様に対応できる。
【0043】
本願は、例示的な実施の形態が記載されているが、実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0044】
100 回転電機、1 ハウジング、2 ステータ、20 ステータコア、
21 分割コア、22 コア片、22a バックヨーク部、22b ティース部、
3 ロータ、3a ロータコア、3b シャフト、4 コイル、
10,10B 鋼板打抜き金型、11 ダイ、11a ダイ剪断加工部、
11b ダイ溝部、11c,12c,13 内側部分、
11d,12d,13d 外側部分、11H 貫通孔、12 パンチ、
12a パンチ剪断加工部、12b パンチ溝部、13 ストリッパ、13a 縁、
13b ストリッパ溝部、13H ガイド穴、Ks 剪断部、Kf 剪断面、
50A ストリッパ押さえ荷重、50B ストリッパ反力、51A 剪断荷重、
51B パンチ反力、K 鋼板、X 周方向、Y 径方向、Z 軸方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14