(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】スチレン系樹脂押出発泡体
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20241206BHJP
B29C 48/00 20190101ALI20241206BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C08J9/14 CET
B29C48/00
B29C44/00 E
(21)【出願番号】P 2020176852
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】栗原 俊二
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031636(JP,A)
【文献】特開2019-094472(JP,A)
【文献】特開2019-189811(JP,A)
【文献】国際公開第2014/125933(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086176(WO,A1)
【文献】特開2020-164732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C 44/00-44/60;67/20
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン樹脂、熱線輻射抑制剤、難燃剤および安定剤を含む樹脂組成物の発泡体であるスチレン系樹脂押出発泡体
であって、
前記樹脂組成物は、
スチレン系樹脂押出発泡体を溶融・混錬したリサイクル樹脂を含み、
前記難燃剤として、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、臭素化スチレン-ブタジエンランダムコポリマー、臭素化スチレン-ブタジエングラフトポリマー、臭素化ブタジエンポリマー、および臭素化・エポキシ化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーからなる群から選択される1種以上の脂肪族臭素含有ポリマーを含み、
前記安定剤として、エポキシ化合物を含み、
前記ポリスチレ
ン樹脂100重量部に対して、
前記熱線輻射抑制剤を0.5~5.0重量部、前記
脂肪族臭素含有ポリマーを0.5~10重量部含み、
前記脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して、
前記エポキシ化合物を21~50重量部
含む、
スチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、前記安定剤として、さらに、フェノール系安定剤およびホスファイト系安定剤を含み、
前記脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して、
前記フェノール系安定剤を4~20重量部、および
前記ホスファイト系安定剤を0~0.9重量部
含む、
請求項1に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項3】
前記樹脂組成物は、前記安定剤として、さらに、ジペンタエリスリトールとアジピン酸との反応物である多価アルコール部分エステルを、前記脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して20重量部以下含む、請求項2に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項4】
前記ホスファイト系安定剤
として、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト)
からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項
2または3に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項5】
前記エポキシ化合物
として、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択され
る1種
以上を含む、請求項1
~4のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、さらに、リン酸エステルを含有する、請求項1~5のいずれか
一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項7】
前記リン酸エステル
が、テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)-m-フェニレンビスホスフェート
である、請求項6に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項8】
前記樹脂組成物が、さらに、発泡剤として、ハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハイドロクロロフルオロオレフィンを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項9】
前記樹脂組成物における、ハイドロフルオロオレフィン
とハイドロクロロフルオロオレフィン
の含有量の合計が、前記ポリスチレン樹脂100重量部に対して、1.0重量部以上12.0重量部以下
である、請求項8に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項10】
前記熱線輻射抑制剤
として、グラファイトおよび/または酸化チタンを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項11】
熱伝導率が0.0244W/mK以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項12】
密度が20~60kg/m
3である、請求項1~11のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【請求項13】
厚みが10mm以上150mm以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系樹脂押出発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン系樹脂押出発泡体は、良好な施工性や断熱性から、例えば構造物の断熱材として用いられる。近年、住宅、建築物などの省エネルギー化の要求が高まり、従来以上の高断熱性発泡体の技術開発が望まれている。
【0003】
高断熱性発泡体としては、熱線輻射抑制剤として、グラファイトや酸化チタンを所定の範囲で添加するスチレン系樹脂押出発泡体(例えば、特許文献1参照。)や、発泡剤として、オゾン破壊係数が0(ゼロ)であるとともに、地球温暖化係数も小さい環境に優しいフッ素化されたオレフィン(ハイドロフルオロオレフィン及びハイドロクロロフルオロオレフィン)や、塩化メチル・塩化エチル等の塩化アルキルを使用するスチレン系樹脂押出発泡体が提案されている(例えば、特許文献2~4参照。)。
【0004】
一方で、スチレン系樹脂押出発泡体に難燃性を付与するために添加される難燃剤として、従来使用されてきたヘキサブロモシクロドデカン(HBCD)にかわり、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーが提案されている。しかし、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーは、熱安定性に問題がある。そこで、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマー自体の熱安定性を改善する技術や、エポキシ化合物を添加することで熱安定性を改善する技術が提案されている(例えば、特許文献5~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-221110号公報
【文献】特表2008-546892号公報
【文献】特開2019-189811号公報
【文献】特開2019-108416号公報
【文献】国際公開第2007/058736号
【文献】国際公開第2010/080285号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、優れた断熱性能、難燃性能および熱安定性を有するスチレン系樹脂押出発泡体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、スチレン系樹脂発泡体に熱線輻射抑制剤を含有させて断熱性を向上させようとすると、難燃剤の脂肪族臭素含有ポリマーに安定剤のエポキシ化合物を併用することによる熱安定性の改善効果が低下することを見出した。さらに検討を重ねた結果、優れた断熱性能、難燃性能および熱安定性を有するスチレン系樹脂発泡体の製造に成功し、本発明に至った。本発明は以下の態様を含む。
<1>次の(I)~(III)を満たすスチレン系樹脂押出発泡体:
(I)熱線輻射抑制剤をスチレン系樹脂100重量部に対して0.5~5.0重量部含む、
(II)難燃剤として、脂肪族臭素含有ポリマーを含有する、
(III)脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して、安定剤として、(A)エポキシ化合物を21~50重量部を含有する。
<2>前記安定剤が、脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して
(B)多価アルコール部分エステルを0~20重量部、
(C)フェノール系安定剤を4~20重量部、および
(D)ホスファイト系安定剤を0~0.9重量部
を含有する、<1>に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<3>前記エポキシ化合物が、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含む、<1>または<2>に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<4>前記安定剤として、(B)多価アルコール部分エステルを含有し、
前記多価アルコール部分エステルが、ジペンタエリスリトールとアジピン酸との反応物を含む、<1>~<3>のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<5>前記安定剤として、(D)ホスファイト系安定剤を含有し、
前記ホスファイト系安定剤が、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<6>更に、リン酸エステルを含有する、<1>~<5>のいずれかに記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<7>前記リン酸エステルが、テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)-m-フェニレンビスホスフェートを含む、<6>に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<8>発泡剤として、ハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハイドロクロロフルオロオレフィンを含有する、<1>~<7>のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<9>スチレン系樹脂100重量部に対して、前記ハイドロフルオロオレフィンおよび/またはハイドロクロロフルオロオレフィンを、1.0重量部以上12.0重量部以下含有する、<8>に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<10> 前記熱線輻射抑制剤が、グラファイトおよび/または酸化チタンを含む、<1>~<9>のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<11> 前記スチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率が0.0244W/mK以下である、<1>~<10>のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<12>前記スチレン系樹脂押出発泡体の密度が20~60kg/m3である、<1>~<11>のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
<13> 前記スチレン系樹脂押出発泡体の厚みが10mm以上150mm以下である、<1>~<12>のいずれか一項に記載のスチレン系樹脂押出発泡体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、優れた断熱性能、難燃性能、および、熱安定性を奏することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献、及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0010】
〔1.スチレン系樹脂押出発泡体〕
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、次の(I)、(II)および(III)を満たす。
(I)熱線輻射抑制剤をスチレン系樹脂100重量部に対して0.5~5.0重量部を含む、
(II)難燃剤として、脂肪族臭素含有ポリマーを含有する、
(III)脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して、安定剤として、(A)エポキシ化合物を21~50重量部を含有する。
【0011】
スチレン系樹脂押出発泡体に、難燃剤として脂肪族臭素含有ポリマーを含有する形態においては、エポキシ化合物が併用されることで熱安定性の改善が図られる。ただし、エポキシ化合物を過剰に添加すると、エポキシ化合物の安定化効果が過剰となり、難燃性能が低下する問題があるため、通常、エポキシ化合物は過剰量使用されない。このように難燃性能および熱安定性が改善されたスチレン系樹脂押出発泡体であっても、熱伝導率を低減させるためにグラファイトや酸化チタンといった熱線輻射抑制剤を含ませる場合、中でもグラファイトを含ませる形態では、熱線輻射抑制剤を含ませない形態よりも難燃性が劣化する傾向にあることを発見した。これは、熱線輻射抑制剤に含まれる不純物によって、脂肪族臭素含有ポリマーの熱安定性がさらに悪化するためであると想定される。上記のとおり、通常、エポキシ化合物の過剰添加は難燃性能の低下を引き起こすところ、熱線輻射抑制剤を含ませる形態においては、脂肪族臭素含有ポリマーに対するエポキシ化合物の配合量を常識的な量よりも過剰に添加しても、難燃性能の低下が抑えられることを見出した。具体的には、脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対するエポキシ化合物の含有量を21~50重量部に制御することによって、熱安定性、難燃性能および断熱性能をバランスよく発現させることができる。例えば、スチレン系樹脂押出発泡体を加熱収縮および/または熱溶融により減容化してリサイクルした場合においても、成形性が良好であり、リサイクル可能な熱安定性を有する。また、JIS A9511の燃焼試験法に合格する、および/または、酸素指数が26%以上の難燃性能を示し、断熱性能にも優れる。
【0012】
(1-1.スチレン系樹脂)
スチレン系樹脂としては、MFRが0.1~50g/10分のものを用いることが、(i)押出発泡成形する際の成形加工性に優れる点、(ii)成形加工時の吐出量、得られたスチレン系樹脂押出発泡体の厚み、幅、見掛け密度、及び独立気泡率を所望の値に調整しやすい点、(iii)発泡性(発泡体の厚み、幅、見掛け密度、独立気泡率、及び、表面性などを所望の状況に調整しやすいこと)に優れる点、(iv)外観などに優れたスチレン系樹脂押出発泡体が得られる点、並びに、(v)特性(例えば、圧縮強度、曲げ強度または曲げたわみ量といった機械的強度や、靱性など)のバランスがとれた、スチレン系樹脂押出発泡体が得られる点から、好ましい。更に、スチレン系樹脂のMFRは、成形加工性および発泡性と、機械的強度及び靱性とのバランスの点から、0.3~30g/10分が更に好ましく、0.5~25g/10分が特に好ましい。なお、本発明の一実施形態において、MFRは、JIS K7210(1999年)のA法、及び、試験条件Hにより測定される。スチレン系樹脂は、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレンなどが好ましい。特に好ましくは、経済性の面から、ポリスチレンである。
【0013】
(1-2.難燃剤)
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、脂肪族臭素含有ポリマーを難燃剤として使用する。脂肪族臭素含有ポリマーとしては、例えば、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマー、臭素化スチレン-ブタジエンランダムコポリマー、臭素化スチレン-ブタジエングラフトポリマー、臭素化ブタジエンポリマー、臭素化・エポキシ化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーなどがあげられる。これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらのうちでも、臭素化スチレン-ブタジエンブロックコポリマーが、性能、経済性、供給安定性の面から、好ましい。
【0014】
本発明の一実施形態において、脂肪族臭素含有ポリマーの含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.5~10重量部が好ましく、経済性、及び他の要求諸物性への影響を鑑みると、更に好ましい範囲としては、0.5~5重量部である。
【0015】
本発明の一実施形態においては、更に、難燃性能を向上させる目的で、他の臭素系難燃剤を併用することができる。
【0016】
他の臭素系難燃剤の具体的な例としては、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテル、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレートが挙げられる。これらは、単独で併用しても、2種以上を混合して併用しても良い。これら他の臭素系難燃剤の中では、発泡体の難燃性能および熱安定性能の観点から、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモ-2-メチルプロピル)エーテル、及びテトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピル)エーテルからなる混合臭素系難燃剤、及びヘキサブロモシクロドデカンが好ましい。他の臭素系難燃剤の好ましい添加量としては、スチレン系樹脂100重量部に対して、0~3.0重量部である。
【0017】
本発明の一実施形態においては、スチレン系樹脂押出発泡体の難燃性能を向上させる目的で、ラジカル発生剤を併用することができる。前記ラジカル発生剤は、具体的には、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン、2,3-ジエチル-2,3-ジフェニルブタン、3,4-ジメチル-3,4-ジフェニルヘキサン、3,4-ジエチル-3,4-ジフェニルヘキサン、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、2,4-ジフェニル-4-エチル-1-ペンテン等が挙げられる。ジクミルパーオキサイドの様な過酸化物も用いられる。その中でも、樹脂加工温度条件にて、安定なものが好ましく、具体的には2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、及びポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼンが好ましく、前記ラジカル発生剤の好ましい添加量としては、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.05~0.8重量部である。
【0018】
本発明の一実施形態においては、更に、難燃性能を向上させる目的で、言い換えれば難燃助剤として、熱安定性能を損なわない範囲で、リン酸エステル及びホスフィンオキシドのようなリン系難燃剤を併用することができる。
【0019】
本発明の一実施形態で用いられるリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリス(トリブチルブロモネオペンチル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、またはテトラキス(2,6-ジメチルフェニル)-m-フェニレンビスホスフェート等の縮合リン酸エステル等が挙げられる。又、ホスフィンオキシド型のリン系難燃剤としては、トリフェニルホスフィンオキシドが好ましい。これらリン酸エステル及びホスフィンオキシドは単独または2種以上併用しても良い。これらリン系難燃剤の中でも、発泡体の難燃性能および熱安定性能の観点から、トリフェニルホフェート、トリス(トリブチルブロモネオペンチル)ホスフェート、テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)-m-フェニレンビスホスフェートが好ましく、テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)-m-フェニレンビスホスフェートが特に好ましい。リン系難燃剤の好ましい添加量としては、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1~2重量部である。
【0020】
(1-3.安定剤:(A)エポキシ化合物)
本発明の一実施形態においては、安定剤としてエポキシ化合物を含有することにより、難燃剤の難燃性能を損なうことなく、熱安定性を向上させることができる。
【0021】
本発明の一実施形態で用いられるエポキシ化合物としては、前記脂肪族臭素含有ポリマーの安定剤として一般的に使用されるエポキシ化合物を使用でき、コスト、性能、供給安定性の面から、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種が含有されることが好ましい。
【0022】
ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、下記構造式(1)で示されるものが挙げられる。
【0023】
【0024】
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、下記構造式(2)で示されるものが挙げられる。
【0025】
【0026】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、下記構造式(3)で示されるものが挙げられる。
【0027】
【0028】
本発明の一実施形態においては、エポキシ系化合物として、下記構造式(4)で示される、ビスフェノールA骨格に臭素が付加したものも使用できる。
【0029】
【0030】
これらのエポキシ化合物は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。
【0031】
本発明の一実施形態で用いられるエポキシ化合物としては、エポキシ当量が1000g/eq未満であることが好ましい。エポキシ基が臭素系難燃剤の分解を抑制し、スチレン系樹脂の熱安定性能を向上させていると考えられることから、エポキシ当量が1000g/eq以上であると、難燃剤の分解抑制効果が非常に低いため、結果的に、多量添加する必要があることから、経済的に現実的ではない。コスト・性能のバランスを鑑みると、より好ましくは、500g/eq未満、更に好ましくは、400g/eq未満である。
【0032】
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体におけるエポキシ化合物の含有量は、脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して、21~50重量部である。経済性、性能面から、好ましくは25~50重量部、より好ましくは25~48重量部、さらに好ましくは25~47重量部である。エポキシ化合物の含有量が21重量部未満であると、難燃剤の安定化効果が十分に発揮されず、難燃剤及び樹脂の分解が発生し、樹脂の分子量が低下する傾向にあり、結果として発泡体を形成する気泡の気泡径の肥大化が生じ、断熱性能が悪化する傾向にある。又、分子量分布の低下に伴い、発泡体表面の平滑性が悪化し、成形性が悪化する傾向にある。更に、難燃剤の分解によって、他の添加剤もしくは樹脂が黒変し、外観不良に繋がる。また、製品カット時等に発生するスクラップを加熱溶融・混練するリサイクル時においても、難燃剤・樹脂の分解が発生することによって、樹脂の黒色化・分子量分布低下が発生しやすくなる傾向にあり、結果としてリサイクル化が困難となり、コストアップに繋がる。一方、エポキシ化合物の含有量が50重量部を越えると、逆に安定剤の安定化効果が過剰となり、難燃剤が発泡体の燃焼時に効果的に分解できず、難燃性能が低下する傾向にある。
【0033】
(1-4.安定剤:(B)多価アルコール部分エステル)
本発明の一実施形態においては、安定剤として多価アルコール部分エステルを併用することにより、難燃剤の熱安定性を向上させることができ、特に、繰り返しリサイクルをする場合においても樹脂や難燃剤の分解を抑制することにより、成形性、難燃性能、断熱性能に優れた発泡体を得ることができる。
【0034】
本発明で用いられる多価アルコール部分エステルとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール等の多価アルコールと、酢酸、プロピオン酸等の一価のカルボン酸、または、アジピン酸、グルタミン酸等の二価のカルボン酸との反応物である部分エステルであって、その分子中に一個以上の水酸基を持つ化合物の混合物であり、原料の多価アルコールを少量含有していても良い。性能面および経済性の点から、多価アルコール部分エステルとしては、ジペンタエリスリトールとアジピン酸との反応物である部分エステルが好ましく、入手可能な市販品としては、味の素ファインテクノ(株)製プレンライザー(登録商標)ST-210等があげられる。
【0035】
本発明の一実施形態における多価アルコール部分エステルの含有量は脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して、0~20重量部が好ましく、0~17重量部がより好ましい。多価アルコール部分エステルの含有量が20重量部超では、安定化効果が過剰に発揮されてしまい、難燃剤自体の難燃性能を低下させる恐れがある。
【0036】
(1-4.安定剤:(C)フェノール系安定剤)
本発明の一実施形態においては、フェノール系安定剤を併用することにより、難燃剤の難燃性能を損なうことなく、熱安定性を向上させることができる。
【0037】
本発明の一実施形態で用いられるフェノール系安定剤としては、特に限定されるものではなく、市販の物質を用いることができる。具体例としては、トリエチレングリコール-ビス-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナートがあげられ、これらは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。これらのなかでは、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、価格および性能面で好ましく用いられる。
【0038】
本発明の一実施形態におけるフェノール系安定剤の含有量は、脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して4~20重量部であることが好ましく、5~20重量部であることがより好ましい。フェノール系安定剤の含有量が20重量部を超えると、発泡体の気泡形成に影響を及ぼし、成形性及び断熱性の制御が困難となる傾向にある。一方、フェノール系安定剤の含有量が4重量部未満であると、難燃剤の安定化効果を十分に発揮できない恐れがある。
【0039】
(1-5.安定剤:(D)ホスファイト系安定剤)
本発明の一実施形態においては、ホスファイト系安定剤を併用することにより、難燃剤の難燃性能を損なうことなく、熱安定性を向上させることができる。
【0040】
本発明の一実施形態で用いられるホスファイト系安定剤としては、例えば、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、3,9-ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、及びテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト)が、発泡体の難燃性能を低下させることなく、かつ、発泡体の熱安定性を向上させることから、好適である。
【0041】
本発明の一実施形態におけるホスファイト系安定剤の含有量は、脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して0~0.9重量部であることが好ましく、0~0.8重量部であることがより好ましい。ホスファイト系安定剤の含有量が0.9重量部を超えると、安定化効果が大きく発揮されてしまい、難燃剤自体の難燃性能を低下させる恐れがある。
【0042】
(1-6.発泡剤)
本発明の一実施形態で用いられる発泡剤としては、特に限定するものではないが、断熱性向上のため、ハイドロフルオロオレフィン及び/又はハイドロクロロフルオロオレフィン (以下、「ハイドロフルオロオレフィン及び/又はハイドロクロロフルオロオレフィン」を「ハイドロ(クロロ)フルオロオレフィン」と称することがある。)を使用することが好ましい。
【0043】
本発明の一実施形態で用いるハイドロフルオロオレフィンとしては、特に制限はないが、テトラフルオロプロペンが、低い気体の熱伝導率及び安全性の観点から好ましい。具体的にはトランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234ze)、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(シス-HFO-1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(トランス-HFO-1234yf)などが挙げられる。また、本発明で用いるハイドロクロロフルオロオレフィンとしては、特に制限はないが、ハイドロクロロトリフルオロプロペンが、低い気体の熱伝導率や安全性の観点から好ましい。具体的にはトランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(トランス-HCFO-1233zd)などが挙げられる。これらのハイドロフルオロオレフィンおよびハイドロクロロフルオロオレフィンは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明の一実施形態に係るハイドロ(クロロ)フルオロオレフィンの含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部~13.0重量部が好ましく、1.0重量部~12.0重量部 がより好ましく、1.5重量部~11.0重量部が特に好ましい。ハイドロ(クロロ)フルオロオレフィンの含有量がスチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部より少ない場合には、ハイドロ(クロロ)フルオロオレフィンによる断熱性の向上効果があまり期待できない傾向にある。一方、ハイドロ(クロロ)フルオロオレフィンの含有量がスチレン系樹脂100重量部に対して13.0重量部を超える場合には、押出発泡時にハイドロ(クロロ)フルオロオレフィンが樹脂溶融物から分離して、押出発泡体の表面にスポット孔(ハイドロ(クロロ)フルオロオレフィンの局所的塊が、押出発泡体表面を突き破って外気へ放出された痕)が発生したり、独立気泡率が低下して断熱性を損なうおそれがある。
【0045】
本発明では、さらに、他の発泡剤を用いることにより、発泡体製造時の可塑化効果及び/又は助発泡効果が得られ、押出圧力を低減し、安定的に発泡体の製造が可能となる。
【0046】
他の発泡剤としては、例えば、プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ネオペンタンなどの炭素数3~5の飽和炭化水素類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、フラン、フルフラール、2-メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどのエーテル類;ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチル-i-ブチルケトン、メチル-n-アミルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、エチル-n-プロピルケトン、エチル-n-ブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、i-プロピルアルコール、ブチルアルコール、i-ブチルアルコール、t-ブチルアルコールなどの炭素数1~4の飽和アルコール類;蟻酸メチルエステル、蟻酸エチルエステル、蟻酸プロピルエステル、蟻酸ブチルエステル、蟻酸アミルエステル、プロピオン酸メチルエステル、プロピオン酸エチルエステルなどのカルボン酸エステル類;塩化メチル、塩化エチルなどのハロゲン化アルキルなどの有機発泡剤、水、二酸化炭素などの無機発泡剤、アゾ化合物、テトラゾールなどの化学発泡剤などを用いることができる。これら他の発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
他の発泡剤の中では、発泡性、及び発泡体成形性などの点からは、炭素数1~4の飽和アルコール、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、塩化メチル、塩化エチルなどが好ましく、発泡剤の燃焼性、発泡体の難燃性あるいは断熱性等の点からは、水、二酸化炭素が好ましい。これらの中では、可塑化効果の点からジメチルエーテル、塩化エチルが、経済性、及び、気泡径の制御による断熱性向上効果の点から水が特に好ましい。
【0048】
本発明の一実施形態においては、他の発泡剤として水、及び/又はアルコール類を用いる場合には、安定して押出発泡成形を行うために、吸水性物質を添加することが好ましい。本発明の一実施形態において用いられる吸水性物質の具体例としては、ポリアクリル酸塩系重合体、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体、ポリビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール-アクリル酸塩系共重合体、エチレン-ビニルアルコール系共重合体、アクリロニトリル-メタクリル酸メチル-ブタジエン系共重合体、ポリエチレンオキサイド系共重合体およびこれらの誘導体などの吸水性高分子の他、表面にシラノール基を有する無水シリカ(酸化ケイ素)[例えば、日本アエロジル(株)製AEROSILなどが市販されている]などのように表面に水酸基を有する粒子径1000nm以下の微粉末;スメクタイト、膨潤性フッ素雲母などの吸水性あるいは水膨潤性の層状珪酸塩並びにこれらの有機化処理品;ゼオライト、活性炭、アルミナ、シリカゲル、多孔質ガラス、活性白土、けい藻土、ベントナイトなどの多孔性物質等があげられる。吸水性物質の含有量は、水、及び/又はアルコール類の添加量などによって、適宜調整されるものであるが、スチレン系樹脂100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、0.1~3重量部がより好ましい。
【0049】
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法において、発泡剤を添加または注入する際の圧力は、特に制限するものではなく、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0050】
(1-7.熱線輻射抑制剤)
本発明のスチレン系樹脂押出発泡体は、断熱性向上のため、熱線輻射抑制剤が添加される。
【0051】
前記熱線輻射抑制剤とは、近赤外または赤外領域の光を反射、散乱、及び吸収する特性を有する物質をいう。熱線輻射抑制剤を含有することにより、高い断熱性を有する発泡体となり得る。本発明で使用することができる熱線輻射抑制剤としては、グラファイト、カーボンブラックなどの黒色系粒子、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどの白色系粒子を使用することができる。これらは、単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。熱線輻射抑制効果が大きい点から、グラファイト、酸化チタン、硫酸バリウムが好ましく、グラファイトおよび/または酸化チタンを含むことがより好ましい。
【0052】
グラファイトとしては、例えば、鱗(片)状黒鉛、土状黒鉛、球状黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。これらの中でも、熱線輻射抑制効果が高い点から、主成分が鱗(片)状黒鉛のものを用いることが好ましい。グラファイトは、固定炭素分が80%以上のものが好ましく、85%以上のものがより好ましい。固定炭素分を上記範囲とすることで高い断熱性を有する発泡体が得られる。
【0053】
グラファイトの平均粒径は15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。平均粒径を上記範囲とすることで、グラファイトの比表面積が大きくなり、熱線輻射との衝突確率が高くなるため、熱線輻射抑制効果が高くなる。前記平均粒径は、ISO13320:2009,JIS Z8825:2013に準拠したMie理論に基づくレーザー回折散乱法により粒度分布を測定・解析し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒径(レーザー回折散乱法による体積平均粒径)を意味する。
【0054】
酸化チタンとしては、一般的なルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタンや、導電性を付与したルチル型導電性酸化チタン、アナターゼ型導電性酸化チタンなどが挙げられる。
【0055】
白色系粒子の平均粒径については、特に限定されるものではないが、効果的に赤外線を反射し、また樹脂への発色性を考慮すれば、例えば、酸化チタンでは0.1μm~10μmが好ましく、0.15μm~5μmがより好ましい。
【0056】
本発明の一実施形態における熱線輻射抑制剤の含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5.0重量部以下であり、1.0重量部以上、4.5重量部以下がより好ましく、1.0重量部以上4.0重量部以下がさらに好ましい。含有量が0.5重量部未満では、十分な熱線輻射抑制効果が得られない。一方、含有量が5.0重量部超では、含有量相応の熱線輻射抑制効果が得られずコストメリットが無い。
【0057】
(1-8.成形性改善剤)
本発明の一実施形態では、必要に応じて、成形性改善剤として、多価アルコール脂肪酸エステル及び/または、ポリエチレングリコールを添加してもよい。これらを使用することにより、押出発泡体に美麗な表面を付与すること、押出発泡体の厚みを出すこと(つまり、押出発泡体の成形性を改善すること)が可能となる。
【0058】
本発明の一実施形態で用いる前記多価アルコール脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数10~24の高級脂肪酸と、エチレングリコール、グリセリン、1,2,4-ブタントリオール、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとのエステルが挙げられる。これらの多価アルコール脂肪酸エステルは、単独で使用しても、2種以上を併用しても良い。
【0059】
これらの中でも、グリセリン脂肪酸エステル、特にグリセリンのモノ、ジ、トリ、または、テトラ脂肪酸エステルが、入手の容易性、価格などの点から望ましい。
【0060】
前記グリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ラウリン酸モノグリセリド、ラウリン酸ジグリセリド、ラウリン酸トリグリセリド、パルチミン酸モノグリセリド、パルチミン酸ジグリセリド、パルチミン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸テトラグリセリドからなる群から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0061】
本発明で用いる前記グリセリン脂肪酸エステルの融点は150℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、110℃であることが特に好ましい。グリセリン脂肪酸エステルの融点が150℃以下の場合、例えば、押出発泡体製造時のドライブレンド工程などでのハンドリング性優れ、且つ、押出発泡成形時に液体として存在することで、押出発泡成形時のスチレン系樹脂に可塑化効果も付与できるため、十分なスチレン系樹脂押出発泡体の厚み出し効果を発揮できる。一方、融点が150℃超えの場合、押出発泡成形時に固体として存在し、押出発泡成形時のスチレン系樹脂に可塑化効果を付与できず、十分なスチレン系樹脂押出発泡体の厚み出し効果が発揮できないおそれがある。
【0062】
本発明の一実施形態で用いる前記多価アルコール脂肪酸エステルの含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上5.0重量部以下が好ましく、0.1重量部以上3.0重量部以下がより好ましく、0.5重量部以上2.0重量部未満が特に好ましい。多価アルコール脂肪酸エステルの含有量が0.05重量部未満では、押出発泡体の厚み出し効果が十分でない傾向がある。一方、5.0重量部超えでは、過剰な量のため、製造時の押出、発泡、成形安定性を損ねたり、押出発泡体の耐熱性などの諸特性を悪化させるおそれがある。
【0063】
本発明の一実施形態で用いる前記ポリエチレングリコールの平均分子量は、特に限定はないが、1000以上25000以下が好ましく、1500以上20000以下がより好ましく、3000以上15000以下が特に好ましい。これら平均分子量の異なるポリエチレングリコールは、単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良いポリエチレングリコールの分子量が1000以上25000以下であると、ポリエチレングリコールの凝固点が常温より高く、常温で固体状態となるため、使用する量によっては、例えば、押出発泡体製造時のドライブレンド工程などでのハンドリング性に優れ、押出発泡体内部から表面への、ポリエチレングリコールのブリードアウトもせず、且つ凝固点が押出発泡成形温度よりも低く、押出発泡成形時のスチレン系樹脂に可塑化効果も付与できるため、スチレン系樹脂押出発泡体への十分な表面性付与効果、及び十分な厚み出し効果を発揮できる。
【0064】
本発明の一実施形態におけるポリエチレングリコールの含有量としては、スチレン系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上5.0重量部以下が好ましく、0.1重量部以上3.0重量部以下がより好ましく、0.2重量部以上1.0重量部以下が特に好ましい。ポリエチレングリコールの含有量が0.05重量部未満では、表面性付与効果、及び厚み出し効果が十分でない傾向がある。一方、ポリエチレングリコールの含有量が5.0重量部超えでは、ポリエチレングリコールの含有量が過剰なため、製造時の押出性、発泡性、及び成形安定性を損ねたり、押出発泡体の耐熱性などの諸特性を悪化させたりする虞がある。
【0065】
尚、本発明の一実施形態において、成形性改善剤としてポリエチレングリコールと多価アルコール脂肪酸エステルを併用する場合は、スチレン系樹脂100重量部に対して、ポリエチレングリコールと多価アルコール脂肪酸エステルの合計量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.05重量部以上5.0重量部以下が好ましく、0.1重量部以上3.0重量部以下がより好ましく、0.2重量部以上2.0重量部以下が特に好ましい。含有量が0.05重量部未満では、表面性付与効果、及び厚み出し効果が十分でない傾向がある。一方、含有量が5.0重量部超えでは、含有量が過剰なため、製造時の押出性、発泡性、及び成形安定性を損ねたり、押出発泡体の耐熱性などの諸特性を悪化させる虞がある。
【0066】
(1-9.その他添加剤)
本発明の一実施形態においては、さらに、必要に応じて、本発明の一実施形態に係る効果を阻害しない範囲で、例えば、シリカ、ケイ酸カルシウム、ワラストナイト、カオリン、クレイ、マイカ、炭酸カルシウムなどの無機化合物、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリウム、流動パラフィン、オレフィン系ワックス、ステアリルアミド系化合物などの加工助剤、フェノール系抗酸化剤、リン系安定剤、窒素系安定剤、イオウ系安定剤、ベンゾトリアゾール類、ヒンダードアミン類などの耐光性安定剤、タルクなどの気泡径調整剤、前記以外の難燃剤、帯電防止剤、顔料などの着色剤、可塑剤などの添加剤がスチレン系樹脂に含有されてもよい。また、必要に応じ、本発明の一実施形態に係る効果を阻害しない範囲で、その他の樹脂をスチレン系樹脂と併用してもよい。
【0067】
(1-8.物性)
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の熱伝導率は特に限定はないが、例えば建築用断熱材、又は、保冷庫用若しくは保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性の観点から、平均温度23℃で測定した製造1週間後の熱伝導率が0.0284W/mK以下であることが好ましく、0.0244W/mK以下であることがより好ましく、0.0224W/mK以下であることが特に好ましい。
【0068】
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の見掛け密度は、例えば建築用断熱材、又は、保冷庫用若しくは保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性および、軽量性の観点から、20kg/m3以上60kg/m3以下 であることが好ましく、より好ましくは25kg/m3以上40kg/m3以下である。
【0069】
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率は、90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。独立気泡率が90%未満の場合には、発泡剤が押出発泡体から早期に散逸し、断熱性が低下する。
【0070】
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向の平均気泡径は、0.05mm以上0.5mm以下が好ましく、0.05mm以上0.4mm以下がより好ましく、0.05mm以上0.3mm以下が特に好ましい。一般に、平均気泡径が小さいほど、発泡体の気泡壁間距離が短くなるために、押出発泡の際に押出発泡体に形状付与する際の押出発泡体の気泡の可動域が狭く、変形が困難であり、押出発泡体に美麗な表面を付与すること、及び押出発泡体の厚みを出すことが難しくなる傾向にある。スチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向の平均気泡径が0.05mmより小さいと、特に、押出発泡体に美麗な表面を付与すること、及び押出発泡体の厚みを出すことが難しくなる傾向が顕著なものとなる。一方、スチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向の平均気泡径が0.5mm超えの場合、十分な断熱性が得られないおそれがある。
【0071】
尚、本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の平均気泡径は、マイクロスコープ[(株)KEYENCE製、DIGITAL MICROSCOPE VHX-900]を用いて、次に記載の通り評価することができる。
【0072】
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向中央部、及び幅方向の一端から逆端方向に150mmの場所(幅方向両端について同じ場所)の計3箇所の厚み方向中央部の幅方向垂直断面を押出方向から前記マイクロスコープにて観察し、100倍の拡大写真を撮影した。同様に、幅方向3箇所の厚み方向中央部の押出方向垂直断面を幅方向から前記マイクロスコープにて観察し、100倍の拡大写真を撮影した。前記拡大写真の厚み方向に任意に2mmの直線を3本引き(各観察箇所、各観察方向につき3本。)、その直線に接する気泡の個数aを測定した。測定した気泡の個数aから、次式(1)により観察箇所毎の厚み方向の平均気泡径Aを求めた。3箇所(各箇所2方向ずつ)の平均値をスチレン系樹脂押出発泡体の厚み方向の平均気泡径A(平均値)とした。
【0073】
観察箇所毎の厚み方向の平均気泡径A(mm)=2×3/気泡の個数a
・・・(1)。
【0074】
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向中央部、及び幅方向の一端から逆端方向に150mmの場所(幅方向両端について同じ場所)の計3箇所の厚み方向中央部の押出方向垂直断面を幅方向から前記マイクロスコープにて観察し、100倍の拡大写真を撮影した。前記拡大写真の押出方向に任意に2mmの直線を3本引き(各観察箇所につき3本。)、その直線に接する気泡の個数bを測定した。測定した気泡の個数bから、次式(2)により観察箇所毎の押出方向の平均気泡径Bを求めた。3箇所の平均値をスチレン系樹脂押出発泡体の押出方向の平均気泡径B(平均値)とした。
【0075】
観察箇所毎の押出方向の平均気泡径B(mm)=2×3/気泡の個数b
・・・(2)。
【0076】
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向中央部、及び幅方向の一端から逆端方向に150mmの場所(幅方向両端について同じ場所)の計3箇所の厚み方向中央部の幅方向垂直断面を押出方向から前記マイクロスコープにて観察し、100倍の拡大写真を撮影した。前記拡大写真の幅方向に任意に2mmの直線を3本引き(各観察箇所につき3本。)、その直線に接する気泡の個数cを測定した。測定した気泡の個数cから、次式(3)により観察箇所毎の幅方向の平均気泡径Cを求めた。3箇所の平均値をスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向の平均気泡径C(平均値)とした。
【0077】
観察箇所毎の幅方向の平均気泡径C(mm)=2×3/気泡の個数c
・・・(3)。
【0078】
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の気泡変形率は、0.7以上2.0以下が好ましく、0.8以上1.5以下がより好ましく、0.8以上1.2以下が更に好ましい。気泡変形率が0.7よりも小さい場合、圧縮強度が低くなり、押出発泡体において、用途に適した強度を確保できないおそれがある。また、気泡が球状に戻ろうとするため、押出発泡体の寸法(形状)維持性に劣る傾向がある。一方、気泡変形率が2.0超えの場合、押出発泡体の厚み方向における気泡数が少なくなるため、気泡形状による断熱性向上効果が小さくなる。
【0079】
尚、本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の気泡変形率は、前記した平均気泡径から、次式(4)により求めることができる。
【0080】
気泡変形率(単位なし)=A(平均値)/{〔B(平均値)+C(平均値)〕/2}・・・(4)。
【0081】
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体における厚みは、例えば建築用断熱材、又は保冷庫用若しくは保冷車用の断熱材として機能することを考慮した断熱性、曲げ強度及び圧縮強度の観点から、10mm以上150mm以下 であることが好ましく、より好ましくは20mm以上130mm以下であり、特に好ましくは30mm以上120mm以下である。
【0082】
尚、スチレン系樹脂押出発泡体では、本発明の実施例、及び比較例に記載したように、押出発泡成形して形状を付与した後に、厚み方向と垂直な平面の両表面を厚み方向に片側5mm程度の深さでカットして製品厚みとする場合があるが、別途記載がない限り、本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体における厚みとは押出発泡成形して形状を付与したままのカットしていない厚みのことである。
【0083】
かくして、本発明の一実施形態により、優れた断熱性及び難燃性を有し、更に、外観美麗で、且つ、使用に適した十分な厚みのスチレン系樹脂押出発泡体を容易に得ることができる。
【0084】
〔2.スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法〕
本発明の一実施形態に係るスチレン系樹脂押出発泡体の製造方法は、ダイスリット部を備える押出機にて、スチレン系樹脂、熱線輻射抑制剤、難燃剤、および安定剤を含む樹脂組成物を加熱溶融し発泡剤を配合して発泡性溶融物を調製する溶融工程と、上記溶融工程にて得られた発泡性溶融物を、上記ダイスリット部から低圧域に押し出して発泡させる発泡工程と、を有し、上記難燃剤は脂肪族臭素含有ポリマーを含むものであり、上記安定剤はエポキシ化合物を含むものであり、上記樹脂組成物は上記脂肪族臭素含有ポリマー100重量部に対して上記エポキシ化合物を21~50重量部含有するものである。〔1.スチレン系樹脂押出発泡体〕にて既に説明した構成については援用し、ここではその説明を省略する。
【0085】
スチレン系樹脂押出発泡体の製造方法としては、一例として、以下の方法が挙げられる。まず、スチレン系樹脂、輻射抑制剤、難燃剤、および、安定剤、必要に応じて上述の各種添加剤を、ダイスリット部を有する押出機の加熱溶融部に供給する(換言すれば、樹脂組成物を押出機の加熱溶融部に供給する)。このとき、任意の段階(例えば、樹脂組成物を加熱融解する前、樹脂組成物を加熱融解している途中、又は、樹脂組成物を加熱融解した後)で高圧条件下にて発泡剤を樹脂組成物に配合することができる。そして、樹脂組成物を流動ゲルとなす。以上が溶融工程となる。
その後、溶融工程にて得られた発泡性溶融物を、押出発泡に適する温度に冷却した後、ダイスリット部を通して該流動ゲルを低圧領域(例えば、大気圧の領域)に押出発泡することにより、スチレン系樹脂押出発泡体を形成する。以上が発泡工程となる。
【0086】
溶融工程において、スチレン系樹脂に各種添加剤を配合する方法としては、例えば、スチレン系樹脂に対して各種添加剤を添加してドライブレンドにより混合する方法;押出機の途中に設けた供給部より溶融したスチレン系樹脂に各種添加剤を添加する方法;あらかじめ押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロールなどを用いてスチレン系樹脂へ高濃度の各種添加剤を含有させたマスターバッチを作製し、当該マスターバッチとスチレン系樹脂とをドライブレンドにより混合する方法;スチレン系樹脂とは別の供給設備により各種添加剤を押出機に供給する方法等が挙げられる。
【0087】
上記加熱溶融部における加熱温度は、使用されるスチレン系樹脂が溶融する温度以上である。加熱温度は、添加剤等の影響による樹脂の分子劣化ができる限り抑制される温度(例えば150℃~260℃程度)が好ましい。加熱溶融部における溶融混練時間は、単位時間当たりのスチレン系樹脂の押出量、及び/又は、加熱溶融部として用い、且つ、溶融混練部として用いられる押出機の種類により異なるので一義的に規定することはできず、スチレン系樹脂と発泡剤及び添加剤とが均一に分散混合されるに要する時間として適宜設定され得る。
【0088】
溶融混練部としては、通常の押出発泡に用いられる機構を特に制限されずに用いることができ、例えばスクリュー型の押出機等が挙げられる。
【0089】
発泡剤を添加又は注入する際の圧力は、特に制限されず、押出機などの内圧力よりも高い圧力であればよい。
【0090】
発泡工程において、押出発泡する方法としては、例えば、押出成形用に使用される開口部が直線のスリット形状を有するダイスリット部を通じて、上述の流動ゲルを高圧領域から低圧領域へ開放する方法が挙げられる。このようにして押出発泡体が得られる。なお、ダイスリット部の形状については特に限定されず、本技術分野における種々のダイスリット部を使用できる。
【0091】
発泡工程において、押出発泡における発泡圧力(換言すれば、ダイスリットから押し出される前(例えば、直前)の発泡性溶融物に加える圧力)は、3.5MPa以上10.0MPa以下であることが好ましく、3.5MPa以上8.0MPa以下であることがより好ましく、3.5MPa以上6.0MPa以下であることがさらに好ましい。発泡圧力が当該範囲であれば、スチレン系樹脂押出発泡体の薄皮比率を低下させることができるという有利な効果が得られる。なお、発泡圧力は、ダイスリット部におけるスリットの開度、及び/又は、ダイスリット部の温度を調節することによって、調節され得る。
【0092】
スチレン系樹脂押出発泡体は、板状発泡体、即ち押出発泡板として成形されてもよい。例えば、上述のように得られた押出発泡体をスリットダイと密着又は接して設置された成形金型、及び、該成形金型の下流側に隣接して設置された成形ロール等を用いて、断面積の大きい板状発泡体を成形することができる。成形金型の流動面形状調整、及び金型温度調整によって、所望の発泡体の断面形状、発泡体の表面性、発泡体品質が得られる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0094】
〔原料〕
実施例及び比較例において使用した原料は、次の通りである。
○基材樹脂
・スチレン系樹脂A[PSジャパン(株)製、G9401;MFR2.2g/10分]
・スチレン系樹脂B [PSジャパン(株)製、680;MFR7.0g/10分]
○熱線輻射抑制剤
・グラファイト [(株)丸豊鋳材製作所製、M-885;鱗片状黒鉛、平均粒径5.5μm、固定炭素分89%]
・酸化チタン[(堺化学工業(株)製、R-7E;平均粒径0.23μm]
○難燃剤
・臭素化スチレン―ブタジエンブロックコポリマー共重合体 [ケムチュラ製、EMERALD INNOVATION #3000]
○安定剤 (A)エポキシ化合物
・ビスフェノール-A-グリシジルエーテル [(株)ADEKA製、EP-13]
・クレゾールノボラック型エポキシ樹脂 [DIC(株)製、EPICLON N-680]
○安定剤 (B)多価アルコール部分エステル
・ジペンタエリスリトール-アジピン酸反応混合物 [味の素ファインテクノ(株)製、プレンライザーST210]
○安定剤 (C)フェノール系安定剤
・ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート][ケムチュラ社(Chemtura)製 ANOX20]
○安定剤 (D)ホスファイト系安定剤
・3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン[ケムチュラ社(Chemtura)製 Ultranox(登録商標)626]
○難燃助剤
・縮合リン酸エステル(テトラキス(2,6-ジメチルフェニル)-m-フェニレンビスホスフェート)[大八化学工業(株)製、PX-200]
○ラジカル発生剤
・ポリ-1,4-ジイソプロピルベンゼン [United Initiators製、CUROX CC-P3]。
○その他添加剤
・タルク [林化成(株)製、タルカンパウダーPK-Z]
・ステアリン酸カルシウム [堺化学工業(株)製、SC-P]
・ベントナイト [(株)ホージュン製、ベンゲルブライト11K]
・シリカ [エボニックデグサジャパン(株)製、カープレックスBS-304F]
・エチレンビスステアリン酸アミド [日油(株)製、アルフローH-50S]
・ステアリン酸モノグリセリド [理研ビタミン(株)製、リケマールS-100P]
○発泡剤
・HFO-1234ze [ハネウェルジャパン(株)製]
・HCFO-1233zd [ハネウェルジャパン(株)製]
・イソブタン[三井化学(株)製]
・ジメチルエーテル[三井化学(株)製]
・塩化エチル [日本特殊化学工業(株)製]
・水[大阪府摂津市水道水]
【0095】
〔測定方法〕
実施例及び比較例では、下記の測定方法にしたがって、各種パラメータを、測定及び評価した。
【0096】
(1)見掛け密度(kg/m3)
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の重量を測定すると共に、長さ寸法、幅寸法、厚み寸法を測定した。
測定された重量及び各寸法から、以下の式に基づいてスチレン系樹脂押出発泡体の見掛け密度を求めた。次いで、見掛け密度の単位を、kg/m3に換算した。
見掛け密度(g/cm3)=発泡体重量(g)/発泡体体積(cm3)。
【0097】
(2)独立気泡率
得られたスチレン系樹脂押出発泡体の幅方向中央部、幅方向の一端から逆端方向に150mmの場所、及び、幅方向の他端から逆端方向に150mmの場所の計3箇所から、厚さ40mm×長さ(押出方向)25mm×幅25mmの試験片を切り出した。当該試験片を用い、ASTM-D2856-70の手順Cに従って測定し、以下の式にて各試験片の独立気泡率を求め、3箇所における独立気泡率の平均値を、スチレン系樹脂押出発泡体の独立気泡率とした。
独立気泡率(%)=(V1-W/ρ)×100/(V2-W/ρ)
ここで、V1(cm3)は、空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、空気比較式比重計、型式1000型]を用いて測定した試験片の真の体積(独立気泡でない部分の容積が除かれる。)である。V2(cm3)は、ノギス[(株)ミツトヨ製、M型標準ノギスN30]を用いて測定した試験片の外側寸法より算出した、見掛けの体積である。W(g)は、試験片の全重量である。また、ρ(g/cm3)は、押出し発泡体を構成するスチレン系樹脂の密度であり、1.05(g/cm3)とした。
【0098】
(3)厚み方向の平均気泡径、及び気泡変形率
得られたスチレン系樹脂押出発泡体について、前述の通りマイクロスコープ[(株)KEYENCE製、DIGITAL MICROSCOPE VHX-900]を用いて、厚み方向の平均気泡径、及び気泡変形率を求めた。
【0099】
(4)押出発泡体中のスチレン系樹脂100gあたりのHFO-1234ze/HCFO-1233zd含有量
得られたスチレン系樹脂押出発泡体をJIS K 7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、-10%R.H.)の条件下に静置し、製造から7日後のHFO-1234ze/HCFO-1233zd含有量を以下の設備、手順にて評価した。
a)使用機器;ガスクロマトグラフ GC-2014 [(株)島津製作所製]
b)使用カラム;G-Column G-950 25UM [化学物質評価研究機構製]
c)測定条件;
・注入口温度:65℃
・カラム温度:80℃
・検出器温度:100℃
・キャリーガス:高純度ヘリウム
・キャリーガス流量:30mL/分
・検出器:TCD
・電流:120mA
約130ccの密閉可能なガラス容器(以下、「密閉容器」と言う)に、発泡体から切り出した見掛け密度により異なるが約1.2gの試験片を入れ、真空ポンプにより密閉容器内の空気抜きを行った。その後、密閉容器を170℃で10分間加熱し、発泡体中の発泡剤を密閉容器内に取り出した。密閉容器が常温に戻った後、密閉容器内にヘリウムを導入して大気圧に戻した後、マイクロシリンジにより40μLのHFO-1234ze/HCFO-1233zdを含む混合気体を取り出し、上記a)~c)の使用機器、測定条件にて評価した。
【0100】
(5)熱伝導率
JIS A 9521に準じて、厚さ50mm×長さ(押出方向)300mm×幅300mmにてスチレン系樹脂押出発泡体から切り出した試験片を用い、熱伝導率測定装置[英弘精機(株)、HC-074]を用いて、平均温度23℃での熱伝導率を測定した。具体的に、スチレン系樹脂押出発泡体の製造後、上記寸法の試験片を切り出し、当該試験片をJIS K 7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、-10%R.H.)の条件下に静置した後、スチレン系樹脂押出発泡体の製造から1週間(7日間)経過後に、熱伝導率の測定を行った
(6)JIS燃焼性
JIS A 9521に準じて、厚さ10mm×長さ200mm×幅25mmの試験片を用い、以下の基準で燃焼性を評価した。製造されたスチレン系樹脂押出発泡体を、前記寸法の試験片に切削し、当該試験片を、JIS K 7100に規定された標準温度状態3級(23℃±5℃)、及び標準湿度状態3級(50+20、-10%R.H.)の条件下に静置した。スチレン系樹脂押出発泡体を製造してから1週間後(7日間経過後)に、試験片を用いて燃焼性を評価した。
○:「3秒以内に炎が消えて、残じんがなく、燃焼限界指示線を超えて燃焼しない」との基準を満たす。
×:上記基準を満たさない。
【0101】
(7)酸素指数
JIS K 7201:1999に準拠する方法で測定した。
【0102】
(8)発泡体の重量平均分子量保持率(以下、「Mw保持率」と略す)
押出機内での熱履歴に伴う樹脂劣化の程度を評価する為に、各リサイクル回数で得られた発泡体の重量平均分子量Mwを、ゲル浸透クロマトグラフ法にて、以下の手順により求めた。
a)試料濃度:2.5mg/mL(溶媒;クロロホルム)
b)使用機器:Waters社製 e2695
c)使用カラム:Shodex社製 GPC-K-806M 2本直結
d)測定条件:温度;40℃、溶媒;クロロホルム、試料注入量;50μL、流速;1.0mL/min、検出方法;UV(254nm)、標準ポリスチレン;昭和電工(株)製「Shodex STANDARD SM-105」
リサイクル5回で得られた発泡体の重量平均分子量Mwをリサイクル0回の発泡体の重量平均分子量Mwで除した値を、Mw保持率として、評価した。
〇:Mw保持率が0.90以上
×:Mw保持率が0.90未満
【0103】
〔実施例及び比較例〕
実施例及び比較例について、グラファイトおよび酸化チタンは、以下の手法に従って作製したマスターバッチにより添加した。
【0104】
[グラファイトマスターバッチの作製]
バンバリーミキサーに、基材樹脂であるスチレン系樹脂B[PSジャパン(株)製、680;MFR7.0g/10分]100重量部、並びに、基材樹脂100重量部に対して、グラファイト[(株)丸豊鋳材製作所製、M-885]102重量部、及びエチレンビスステアリン酸アミド[日油(株)製、アルフローH-50S]2.0重量部を投入して、5kgf/cm2の荷重をかけた状態で加熱冷却を行わずに20分間溶融混練した。この際、樹脂温度を測定したところ190℃であった。ルーダーに供給して先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して吐出量250kg/hrで押し出されたストランド状の樹脂を30℃の水槽で冷却固化させた後、切断してマスターバッチを得た。
【0105】
[酸化チタンマスターバッチの作製]
バンバリーミキサーに、基材樹脂であるスチレン系樹脂B[PSジャパン(株)製、680]100重量部、並びに、スチレン系樹脂B100重量部に対して、酸化チタン[堺化学工業(株)製、R-7E]154重量部、及びエチレンビスステアリン酸アミド[日油(株)製、アルフローH-50S]2.6重量部を投入して、5kgf/cm2の荷重をかけた状態で加熱冷却を行わずに20分間溶融混練した。この際、樹脂温度を測定したところ180℃であった。ルーダーに供給して先端に取り付けられた小穴を有するダイスを通して吐出量250kg/hrで押し出されたストランド状の樹脂を30℃の水槽で冷却固化させた後、切断してマスターバッチを得た。
【0106】
(実施例1)
[樹脂混合物の作製]
表1に示す材料(発泡剤以外の材料)を、表1に示す配合にてドライブレンドして、樹脂混合物を得た。該ドライブレント物を[GP]と略する。
【0107】
[押出発泡体の作製]
得られたGPを、口径150mmの単軸押出機(第一押出機)、口径200mmの単軸押出機(第二押出機)、及び冷却機を直列に連結した押出機へ、約800kg/hrで供給した。
第一押出機に供給した樹脂組成物を、樹脂温度約240℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、発泡剤(基材樹脂100重量部に対して、HFO-1234ze2.0重量部、イソブタン1.8重量部、ジメチルエーテル2.5重量部、水0.9重量部)を第一押出機の先端付近で樹脂組成物中に圧入した。その後、第一押出機に連結された第二押出機及び冷却機中にて、樹脂組成物の温度を表1に示す発泡温度に冷却し、冷却機先端に設けた、表1に示す厚さの長方形断面の口金(スリットダイ)より、表1に示す発泡圧力にて大気中へ押出発泡させた後、口金に密着させて設置した成形金型とその下流側に設置した成形ロールにより、厚み60mm×幅1000mmである断面形状の押出発泡板を得、カッターにて厚み50mm、幅910mm×長さ1820mmにカットした。上記発泡体をリサイクル0回目の発泡体とする。
【0108】
[リサイクル樹脂の作製]
得られた発泡体を破砕機にて粉砕したもの、および、カッターにて所定の寸法にカットした際に発生したカット屑を、口径120mmの単軸押出機に供給し、樹脂温度を約230℃に加熱して溶融ないし可塑化、混練し、オープンベント条件下、発泡体に残存する発泡剤を除去した後、ダイスより吐出させ、ストランドカットにてペレット化を行った。該ペレットを[RP](リサイクルスチレン系樹脂)と称する。
【0109】
[リサイクル樹脂含有押出発泡体の作製]
上記のようにして得られたRPとGPを重量比で50対50の割合で、口径150mmの単軸押出機、口径200mmの単軸押出機、及び冷却機を直列に連結した押出機へ、約800kg/hrで供給した以外は、上記[押出発泡体の作製]と同様の条件・操作を行い、発泡体を得た。得られた発泡体を、リサイクル1回目の発泡体とした。以降、[リサイクル樹脂の作製]および[リサイクル樹脂含有押出発泡体の作製]を繰り返すことで、リサイクルを5回行った。得られた発泡体の評価結果を、表1に示す。な (実施例2~12)
表1に示す製造条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、押出発泡体を得た。得られた押出発泡体の物性を表1に示す。なお、得られた押出発泡体の断面形状およびカット後の厚み、幅、長さは実施例1に同じである。
【0110】
(比較例1~3)
表2に示す製造条件を変更した以外は、実施例1と同様の操作により、押出発泡体を得た。得られた押出発泡体の物性を表2に示す。なお、得られた押出発泡体の断面形状およびカット後の厚み、幅、長さは実施例1に同じである。
【0111】
【0112】
【0113】
表1に示すように、実施例1~12では、難燃性、Mw保持率に優れる発泡体が得られた。一方、表2に示すように、比較例1~3では、難燃性および/又はMw保持率が劣る発泡体が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の一態様に係るスチレン系樹脂押出発泡体は、例えば、断熱材、吸音材、真空断熱材の芯材、緩衝材、充填材に利用することができる。