(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】可撓性歯車及びこのような可撓性歯車を備えるギヤ機構
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20241206BHJP
F16H 55/12 20060101ALI20241206BHJP
F16H 55/18 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F16H1/32 B
F16H55/12 A
F16H55/18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020189821
(22)【出願日】2020-11-13
【審査請求日】2023-07-11
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520300482
【氏名又は名称】マクソン インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】MAXON INTERNATIONAL AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ジンマーマン
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/165684(WO,A2)
【文献】実開平4-42952(JP,U)
【文献】特開2014-222107(JP,A)
【文献】特開2018-40460(JP,A)
【文献】特開2000-55148(JP,A)
【文献】特表2003-526060(JP,A)
【文献】特表2003-526061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16H 55/12
F16H 55/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リングギヤ(9)と、このリングギヤ(9)内に配置された可撓性歯車(6)と、この可撓性歯車(6)と接触し且つこの可撓性歯車(6)を変形させてこの可撓性歯車が前記リングギヤ(9)に部分的にかみ合わせするようにする波動発生器(2)とを備えるギヤ機構(1)において、前記可撓性歯車(6)は、軸線方向で互いに隣接して配置された少なくとも2つの可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)を有しており、各可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)は、円周方向(U)でばねセグメント(8)により互いに連結された少なくとも2つの歯付セグメント(7.1、7.2)を有して
おり、前記可撓性歯車(6)のギヤの歯(14)、すなわち個々の可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)のギヤの歯は、軸線方向で互いに対して移動し得る個々の領域よりなっていることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項2】
請求項1に記載のギヤ機構(1)において、軸線方向で互いに隣接して位置する前記可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)が互いに同じ個数の歯及び同じ歯の幾何学的形状を有していることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のギヤ機構(1)において、軸線方向で互いに隣接して位置する前記可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)が互いに接触支持していることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項4】
請求項1~3の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、軸線方向で互いに隣接して位置する前記可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)が軸線方向で同じ歯幅を有していることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項5】
請求項1~4の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、前記可撓性歯車(6)が軸線方向で互いに隣接して位置する2つよりも多い、好ましくは4つの可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)を有していることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項6】
請求項1~5の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、前記可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)が同一部品として構成されていることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項7】
請求項6に記載のギヤ機構(1)において、各可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)の前記歯付セグメントの少なくとも1つ(7.1)が穴(17)を有し、前記可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)は、前記穴(17)が
前記ギヤ機構(1)の中心軸線(M)に沿う方向に並んで位置するとともにこの
前記ギヤ機構(1)の中心軸線(M)に沿う方向に並んで位置する前記穴(17)内にピンエレメント(11)が位置するように配置されており、前記可撓性歯車ディスクの前記ばねセグメント(8)の各々が、前記ギヤ機構(1)の中心軸線(M)を含んでいるとともにそれぞれの前記ばねセグメント(8)を互いに等しい長さの2つの領域に分割する中心平面(M
FS)を有しており、各穴(17)は中心平面(M
A )を有しており、この中心平面(M
A )は前記ギヤ機構(1)の中心軸線(M)を含むとともに前記穴(17)を互いに等しい大きさの領域に分割しており、各ばねセグメント(8)の前記中心平面(M
FS)は、このばねセグメント(8)の中心平面(M
FS)の各々の側でこの中心平面(M
FS)に隣接して位置する前記穴(17)の前記中心平面(M
A )から互いに異なる距離にあることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項8】
請求項1~7の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、各可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)の前記歯付セグメント(7.1、7.2)の少なくとも1つが前記可撓性歯車(6)の径方向でくびれ部(24)を有しており、前記ばねセグメント(8)が前記くびれ部(24)の領域内で前記歯付セグメント(7.2)に連結していることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項9】
請求項1~8の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、前記ばねセグメント(8)は、これらばねセグメント(8)が径方向で弾性を呈するとともに接線方向で剛性であるように構成され、好ましくは、前記ばねセグメント(8)が互いに隣接する歯付セグメント(7.1、7.2)に連結するウェブとして形成されているようにしたことを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項10】
請求項7~9の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、各可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)は、穴(17)が設けられた少なくとも1つの第1歯付セグメント(7.1)と、穴が設けられていない少なくとも1つの第2歯付セグメント(7.2)とを備えていることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項11】
請求項7~10の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、前記ばねセグメント(8)が
、少なくとも1つの第1歯付セグメント(7.1)におけ
る穴(17)のレベルでこの少なくとも1つの第1歯付セグメント(7.1)に連結されていることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項12】
請求項1~11の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において、各可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)が複数の歯付セグメント(7.1、7.2)、特に少なくとも4つの歯付セグメント(7.1、7.2)を有していることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項13】
請求項1~12の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)において
、第1歯付セグメント(7.1)におけ
る穴(17)がそれぞれの前記歯付セグメント(7.1)の内部に配置されているとともに閉輪郭を有していることを特徴とするギヤ機構(1)。
【請求項14】
請求項1~13の
いずれか一項に記載のギヤ機構(1)用の可撓性歯車(6)であって、この可撓性歯車(6)が軸線方向で互いに隣接して位置する少なくとも2つの、好ましくは4つの可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)を備えており、各可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)が円周方向において少なくとも2つの歯付セグメント(7.1、7.2)を備えており、これら少なくとも2つの歯付セグメントはばねセグメント(8)により互いに連結されている可撓性歯車(6)。
【請求項15】
請求項14に記載の可撓性歯車(6)において、各可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)の前記歯付セグメントの少なくとも1つ(7.1)がピンエレメントを収容する穴(17)を有し、前記可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)は、これら可撓性歯車ディスク(6.1、6.2、6.3、6.4)の前記穴(17)が
前記ギヤ機構(1)の中心軸線(M)に沿う方向に並んで位置するように配置されており、前記ばねセグメント(8)の各々は中心平面(M
FS)を有しており、この中心平面(M
FS)は前記ギヤ機構(1)の中心軸線(M)を含んでいるとともにそれぞれの前記ばねセグメント(8)を互いに等しい長さの2つの領域に分割しており、各穴(17)は中心平面(M
A )を有しており、この中心平面(M
A )は前記ギヤ機構(1)の中心軸線(M)を含んでいるとともに前記穴(17)を互いに等しい大きさの領域に分割しており、各ばねセグメント(8)の前記中心平面(M
FS)は、このばねセグメント(8)の中心平面(M
FS)の各々の側でこの中心平面(M
FS)に隣接して位置する前記穴(17)の前記中心平面(M
A )から互いに異なる距離にあることを特徴とする可撓性歯車(6)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リングギヤと、このリングギヤ内に配置された可撓性(柔軟性)歯車と、この可撓性歯車と接触し且つこの可撓性歯車を変形させてこの可撓性歯車が前記リングギヤに部分的にかみ合わせするようにする波動発生器(ウエーブジェネレータ)とを備えるギヤ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このようなギヤ機構は既知であり、例えばロボット工学で用いられている。例えば、特許文献1には、リングギヤと、駆動輪(ドライバーホイール)と、波動発生器と、弾性平歯車(スパーホイール)とで2つの構成要素を調整する調整機構が開示されている。弾性平歯車は同様に構成された数個の歯要素から成っている。各歯要素は、リングギヤに面する頭部領域と、波動発生器に面する脚部領域とを有している。歯要素の頭部領域には、リングギヤと接触するようにしうるギヤの歯が設けられている。更に、各歯要素はその頭部区分において外方に開口する穴を有し、この穴はギヤの歯を中断させるとともに駆動輪の駆動ピンと接触するようになっている。互いに隣接して位置している歯要素は弾性連結素子により互いに連結されている。波動発生器はほぼ楕円形状をしているとともに弾性平歯車をも楕円形状にして、弾性平歯車の互いに反対側に配列された領域がリングギヤにかみ合わせするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなギヤ機構においては、中央の可撓性歯車が軸受問題の為にリングギヤの方向に傾き、この可撓性歯車の幅の全体ではなくこの可撓性歯車の幅のある一部のみしかトルク伝達のためにかみ合わせされなくなる。更に、製造公差の為にフランク方向の誤差が生じ、これにより可撓性歯車の幅の全体の一部分しか用いられなくなるという事実をも生ぜしめるおそれがある。従って、円周振れ公差及びその他の製造公差が幾何学的偏差によるかみ合わせにおける妨害を生ぜしめるおそれがある。
【0005】
この従来技術から始めるに、上述したギヤ機構又はこのギヤ機構用の可撓性歯車をそれぞれ更に改善させ、歯車のかみ合わせにおける妨害及びギヤのバックラッシュを低減させ、雑音発生現象及び動力伝達を改善させ、且つ寿命を長くするようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、本発明によれば、可撓性歯車が軸線方向で互いに隣接して配置された少なくとも2つの可撓性歯車ディスクを有し、各可撓性歯車ディスクが、円周方向でばねセグメントにより互いに連結された少なくとも2つの歯付セグメントを有するようにする。
【0007】
本発明では、軸線方向はリングギヤの軸線に沿う方向を意味している。この方向はギヤ機構の中心軸線の方向にほぼ一致するものである。上述したように可撓性歯車を軸線方向で個々の可撓性歯車ディスクにセグメント化する結果として、個々の可撓性歯車ディスクの歯幅が総計の歯車幅の最大半分に相当するようになる。個々の歯車ディスクがリングギヤに対し又はギヤ機構の中心軸線に対し傾くのをその他の可撓性歯車ディスクによりそれぞれ補償することができる。これにより、ギヤの歯幅全体に亘る可撓性歯車のかみ合わせを高め、従って歯車が部分的にのみ重なる可能性又はエッジサポートの可能性を著しく低減させる。個々の可撓性歯車ディスクの径方向の個々の可撓性が可撓的なかみ合わせを可能にする。従って、個々の可撓性歯車ディスクが円周方向で互いに対して僅かに回転することができ、これにより歯のバックラッシュを0°まで低減させることができる。従って、動力伝達、雑音発生及びギヤのバックラッシュが改善される。
【0008】
本発明の有利な実施例では、軸線方向で互いに隣接して位置する可撓性歯車ディスクが互いに同じ個数の歯及び同じ歯の幾何学的形状を有しているようにすることができる。従って、より一層幅広の可撓性歯車が、軸線方向で互いに隣接して位置する可撓性歯車ディスクにより形成される。可撓性歯車のギヤの歯、すなわち個々の可撓性歯車ディスクのギヤの歯は、軸線方向で互いに対して移動しうる個々の領域より成っている為、個々の可撓性歯車ディスクのかみ合わせにおける妨害をその他の可撓性歯車ディスクにより補償し、可撓性歯車全体のかみ合わせにおける妨害を全体的に低減させ、これによりギヤのバックラッシュの低減化を、従って、雑音発生現象の改善及び長寿命化をも達成しうる。
【0009】
軸線方向で互いに隣接して位置する前記可撓性歯車ディスクが互いに接触支持しているようにするのも好ましいこととしうる。このようにすることにより、可撓性歯車ディスクが、歯車全体をより一層大きな幅を以って且つこれと関連する利点を以って歯車全体を形成するという事実をももたらすものである。
【0010】
軸線方向で互いに隣接して位置する可撓性歯車ディスクが軸線方向で同じ歯幅を有しているようにすることにより、可撓性歯車を特に簡単な形状及び一様な構造にすることができる。
【0011】
更なる他の有利な実施例では、可撓性歯車が軸線方向で互いに隣接して位置する2つよりも多い、好ましくは4つの可撓性歯車ディスクを有しているようにすることができる。軸線方向で互いに隣接して位置する可撓性歯車ディスクの個数を4つとすることにより、歯車が部分的にのみ重なる可能性又はエッジサポートの可能性が極めて少なくなり、これにより上述した利点がもたらされることを確かめた。
【0012】
特に有利な実施例では、可撓性歯車ディスクが互いに同一の部品として構成されているようにする。従って、可撓性歯車を、軸線方向で互いに隣接して配置した4つの等しい形状の個々の歯車、すなわち可撓性歯車ディスクにより形成する。可撓性歯車ディスクは同一の部品として構成されている為、製造が簡単化されるとともに費用が節約される。
【0013】
更なる他の実施例では、各可撓性歯車ディスクの歯付セグメントの少なくとも1つが穴を有し、可撓性歯車ディスクは、穴が上下に位置するとともにこの上下に位置する穴内にピンエレメントが位置するように配置されており、可撓性歯車ディスクのばねセグメントの各々が、ギヤ機構の中心軸線を含んでいるとともにそれぞれのばねセグメントを互いに等しい長さの2つの領域に分割する中心平面を有しており、各穴は中心平面を有しており、この中心平面はギヤ機構の中心軸線を含むとともに穴を互いに等しい大きさの領域に分割しており、各ばねセグメントの中心平面は、このばねセグメントの中心平面の各々の側でこの中心平面に隣接して位置する穴の中心平面から互いに異なる距離にあるようにすることができる。このようにすることにより、可撓性歯車ディスクの可撓性、従って、可撓性歯車全体の可撓性を高め、可撓性歯車ディスク又は可撓性歯車の充分な弾性変形を、特にギヤ機構の小さい直径で依然としてそれぞれ実現することができる。個々の可撓性歯車ディスクにおける穴は上下に位置し、従って、一致している為、ピンエレメントをこれらの穴に容易に挿入させるとともに、全ての可撓性歯車ディスクを通して、従って、可撓性歯車を通して延在させることができる。
【0014】
各可撓性歯車ディスクの歯付セグメントの少なくとも1つが可撓性歯車の径方向でくびれ部を有しており、ばねセグメントがこのくびれ部の領域内で歯付セグメントに連結しているようにすることもできる。その結果、ばねセグメントをより一層長く構成し、これにより可撓性歯車ディスクの可撓性を更に高め、このことが小さい直径で特に有利となるようにすることができる。
【0015】
ばねセグメントは、これらばねセグメントが径方向で弾性を呈するとともに接線方向で剛性であるように構成する必要がある。この場合、可撓性歯車ディスクの変形は径方向でのみ達成される。接線方向では、可撓性歯車ディスクを変形させることなく、動力を1つの歯付セグメントから隣接の歯付セグメントに伝達させることができる。その結果、ギヤ機構の入力とギヤ機構の出力との間のギヤのバックラッシュを出来るだけ小さく保つことができる。このことは、ばねセグメントが互いに隣接する歯付セグメントに連結するウェブとして形成することにより特に簡単に可能となるようにしうる。
【0016】
可撓性歯車ディスクの可撓性、従って、可撓性歯車全体の可撓性を更に高めるために、各可撓性歯車ディスクは、穴が設けられた少なくとも1つの第1歯付セグメントと、穴が設けられていない少なくとも1つの第2歯付セグメントとを備えているようにすることができる。その結果、これら歯付セグメント間に延在するばねセグメントを一層長く構成することができるとともに、歯付セグメントの可撓性及び強度の良好な組合せが得られる。少なくとも1つの第2歯付セグメント、すなわち穴が設けられていない歯付セグメントのギヤの歯の力がばねセグメントを介して少なくとも1つの第1歯付セグメントに伝達される。くびれ部が設けられた歯付セグメントは第2歯付セグメントとするのが好ましく、穴を有さないようにする。
【0017】
更なる他の実施例では、ばねセグメントが、少なくとも1つの第1歯付セグメントにおける穴のレベルでこの少なくとも1つの第1歯付セグメントに連結されているようにする。その結果、少なくとも1つの第2歯付セグメントのギヤの歯の力が少なくとも1つの第1歯付セグメントに良好に伝達されるようになる。ばねセグメントに少なくとも1つの第1歯付セグメントと接触する領域で逃げ切除部が設けられている場合に、可撓性歯車ディスクの可撓性、従って、可撓性歯車全体の可撓性を更に高めることができる。
【0018】
更に、各可撓性歯車ディスクが複数の歯付セグメント、特に少なくとも4つの歯付セグメントを有しているようにする。この場合、各可撓性歯車ディスクが偶数個の歯付セグメントを有し、これら歯付セグメントの半分、すなわち第1歯付セグメントが穴を有し、これら歯付セグメントの他の半分、すなわち第2歯付セグメントは穴を有さないように構成するのが好ましい。このようにすることにより、可撓性歯車ディスクの可撓性、従って、可撓性歯車の可撓性と充分な強度との間を良好に妥協させることができる。
【0019】
特に有利な実施例では、第1歯付セグメントにおける穴がそれぞれの歯付セグメントの内部に配置されているとともに閉輪郭を有しているようにする。従って、穴内に配置されたピンエレメントは円周の閉輪郭に沿って回転し、その結果ピンエレメントと対応の歯付セグメントにおける穴との間の接触が決して妨害されることがない。このことにより、ギヤ機構の運転上の平滑性を高める。穴はほぼ楕円形状となるように構成するのが有利である。更に、この場合、歯付セグメントは、リングギヤに面する頭部領域において端から端までギヤの歯を有するようにしうる。
【0020】
更なる他の実施例によれば、可撓性歯車ディスクの各歯付セグメントを波動発生器上の2箇所の支持点で支持しうるようにする。この場合、波動発生器に面する歯付セグメントの脚部領域を凹状となるように形成し、この脚部領域が2箇所の支持点でのみ波動発生器と接触するようにする。2箇所の支持点間に形成された歯付セグメントの領域は、歯付セグメントの脚部領域を凹状の形状とした為に波動発生器から離れるように湾曲されており、従ってここでは歯付セグメントと波動発生器との間に接触が生じない。2箇所の支持点間の角度は約170°とするのが好ましい。このようにすることにより、波動発生器の外輪郭に対し垂直な歯付セグメントの整列を改善することができる。
【0021】
更なる他の実施例では、波動発生器が可撓性歯車と接触する少なくとも1つのカムを有し、このカムを適切に構成して、歯付セグメントがリングギヤと接触する領域において、これら歯付セグメントが変形し、これら歯付セグメントが、一定の半径を有するとともにギヤ機構の中心軸線からを一定の距離にある軸線を中心に回転する理想的な歯車の区分を形成するようにする。
【0022】
簡単な実施例では、ピンエレメントを出力軸に連結されているボルトとして構成するようにすることができる。その結果、可撓性歯車の運動がボルトを介して出力の均一回転運動に変換される。好ましくは、スリーブを各ボルト上に配置し、関連する利点を伴う滑り軸受が形成されるようにする。或いはまた、各ボルト上に弾性スリーブ又は弾性Oリングを配置することもできる。或いはまた、この構成の変形例において、関連の穴を、円形断面を有するように構成することができる。これに代わる構成では、ピンエレメントを固定となるように形成し、リングギヤを回転しうるように構成する。この場合、リングギヤは、可撓性歯車とのかみ合わせにより駆動され、従ってこの変形例では出力エレメントとして作用する。
【0023】
他の好適実施例では、可撓性歯車の可撓性歯車ディスクを金属又は金属ガラスから形成する。更に、可撓性歯車とかみ合わせするリングギヤも金属又は金属ガラスから形成するのが好ましい。
【0024】
好適実施例では、可撓性歯車ディスクが約1.5mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する2つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約3mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する4つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約6mmの厚さを有するようにする。
【0025】
他の好適実施例では、可撓性歯車ディスクが約3mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する2つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約6mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する4つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約12mmの厚さを有するようにする。
【0026】
更に、本発明は、上述したギヤ機構用の可撓性歯車にも関するものであり、この場合この可撓性歯車が軸線方向で互いに隣接して位置する少なくとも2つの、好ましくは4つの可撓性歯車ディスクを備えており、各可撓性歯車ディスクが円周方向において少なくとも2つの歯付セグメントを備えており、これら少なくとも2つの歯付セグメントはばねセグメントにより互いに連結されているようにしたものである。
【0027】
従って、可撓性歯車は、軸線方向で互いに隣接して位置する数個の個々の歯車、すなわち数個の個々の可撓性歯車ディスクを有するものである。このように可撓性歯車を軸線方向で個々の可撓性歯車ディスクにセグメント化する結果として、1つの個別の可撓性歯車ディスクの歯幅が総計のギヤの歯幅の最大半分に相当する。リングギヤの軸線又はギヤ機構の中心軸線に対する個々の可撓性歯車ディスクの傾き、従って、個々の可撓性歯車ディスクのギヤの歯の領域の傾きを他の可撓性歯車ディスクによりそれぞれ補償することができる。このことにより可撓性歯車の幅全体に亘るこの可撓性歯車のかみ合わせを高め、従って歯車が部分的にのみ重なる可能性又はエッジサポートの可能性を著しく低減させる。個々の可撓性歯車ディスクの個々の径方向の可撓性が可撓的なかみ合わせを可能にできる。従って、個々の可撓性歯車ディスクが円周方向で互いに僅かに回転し、これによりギヤのバックラッシュを0°まで低減させることができる。従って、動力伝達、雑音発生及びバックラッシュが改善される。
【0028】
可撓性歯車の有利な実施例では、各可撓性歯車ディスクの歯付セグメントの少なくとも1つがピンエレメントを入れる穴を有し、これら可撓性歯車ディスクは、穴が上下に位置するように配置されており、ばねセグメントの各々は中心平面を有しており、この中心平面はギヤ機構の中心軸線を含んでいるとともにそれぞれのばねセグメントを互いに等しい長さの2つの領域に分割しており、各穴は中心平面を有しており、この中心平面はギヤ機構の中心軸線を含んでいるとともに穴を互いに等しい大きさの領域に分割しており、各ばねセグメントの中心平面は、このばねセグメントの中心平面の各々の側に隣接して位置する穴の中心平面に対し異なる距離を有しているようにしうる。個々の可撓性歯車ディスクにおける穴は上下に位置しており従って互いに一致している為、ピンエレメントを容易に挿入し且つ全ての可撓性歯車ディスクに従って可撓性歯車の全体に貫通延在するようにするようにすることができる。このようにすることにより、可撓性歯車の可撓性を高めることができ、従ってギヤ機構の直径が小さい場合でも依然として歯車の充分な弾性変形が達成されるようにすることができる。
【0029】
可撓性歯車の更なる好適実施例では、可撓性歯車ディスクを金属又は金属ガラスから形成する。
【0030】
可撓性歯車の好適実施例では、可撓性歯車ディスクが約1.5mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する2つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約3mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する4つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約6mmの厚さを有するようにする。
【0031】
可撓性歯車の更なる好適実施例では、可撓性歯車ディスクが約3mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する2つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約6mmの厚さを有し、例えば軸線方向で互いに隣接して位置する4つの可撓性歯車ディスクを有する可撓性歯車が約12mmの厚さを有するようにする。
【0032】
以下に図面を用いて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明による歯車機構を示す平面図である。
【
図2】
図2は、
図1の歯車機構の可撓性歯車を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2の可撓性歯車の可撓性歯車ディスクを示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図3の可撓性歯車ディスクの細部を示す部分的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下の説明に対しては、同様な構成要素を同様な参照符号で示していることを適用するものである。関連する図面の説明において詳細に説明していない参照符号が図面に含まれている場合には、前述する又は後述する図面の説明を参照するものである。
【0035】
本発明のギヤ機構1の一実施例を
図1に示す。このギヤ機構1は、波動発生器2と、可撓性歯車6と、固定のリングギヤ9とが配置されているハウジング10を有している。このハウジング10のカバーを除去して、歯車機構の内部を見うるようにしてある。ギヤ機構1は、中心軸線Mを有するほぼディスク形状となっている。この中心軸線Mはリングギヤ9の中心軸線と一致している。
【0036】
波動発生器2は、ほぼ楕円形状の断面を有する基体(ベースボディ)3を備えている。このほぼ楕円形状の断面の為に、この基体3上には、従って波動発生器2上には2つのカム30が形成されている。又、基体3上には、変形可能なスリーブ5により囲まれている転動体4が配置されている。波動発生器2は可撓性歯車6内に配置されている。従って、可撓性歯車6は変形可能なスリーブ5及び転動体4を介して基体3と接触している。波動発生器2の基体3の楕円形状が転動体4及び変形可能なスリーブ5を介して可撓性歯車6に伝達される為、可撓性歯車6が楕円形状に変形するとともに、これにより可撓性歯車6がかみ合わせの2領域においてリングギヤ9と接触するようになる。
【0037】
可撓性歯車6は、可撓性のばねセグメント8により互いに連結されている数個の歯付セグメント7.1及び7.2を有している。可撓性歯車6には外歯14が設けられ、固定のリングギヤ9には内歯15が設けられている。波動発生器2により生ぜしめられた可撓性歯車6の楕円形状の変形の為に、可撓性歯車6の外歯14が、互いに反対側に配列された領域、すなわちかみ合わせ領域においてリングギヤ9の内歯15とかみ合わせする。
【0038】
図示の実施例では、可撓性歯車6が12個の歯付セグメント7.1、7.2を有しており、これらが6個の第1歯付セグメント7.1と6個の第2歯付セグメント7.2とに分割されている。第1歯付セグメント7.1の各々は、それぞれの第1歯付セグメント7.1の内部においてエンドツーエンド(端と端をつないだ)開口として構成した穴17を有している。ピンエレメント11のそれぞれのボルト12が各穴17内に入れられている。各ボルト12はスリーブ13により囲まれて、滑り軸受が形成されている。ボルト12は出力軸に連結されている。穴17はスリーブ13よりも幾分大きくなっている。その結果、ボルト12は穴17に沿って回転しうる。図示の場合、穴17は楕円形状の断面を有している。ボルト12及びスリーブ13の断面は円形である。穴17の直径はスリーブ13の外側の直径よりも僅かに大きくなっている。
【0039】
波動発生器2は駆動軸(ドライブシャフト)に連結するのが好ましい。この駆動軸の回転により波動発生器2を回転させる。この回転運動が可撓性歯車6に伝達される。従って、可撓性歯車6の外歯14がリングギヤ9の内歯15に沿って走る。歯付セグメント7.1及び7.2間に配置されたばねセグメント8は可撓性歯車6の可撓性又は弾性の変形を可能にする。可撓性歯車6の運動はボルト12を介して出力の均一回転運動に変換される。しかし、ボルトをハウジングに連結し、従って、固定状態にすることもできる。この場合、リングギヤが出力として作用する。
【0040】
図2は
図1の可撓性歯車6を遠近法(斜視図)で示している。可撓性歯車6は軸線方向において、すなわち中心軸線Mの方向においてセグメント化の形態となるように構成されている。このことは、可撓性歯車6が軸線方向において互いに隣接して配置されている数個の可撓性歯車ディスクに分割されていることを意味している。図示の実施例では、可撓性歯車6が4つの可撓性歯車ディスク6.1、6.2、6.3及び6.4を有している。しかし、可撓性歯車がより多くの又はより少ない可撓性歯車ディスクを有するようにすることもできる。可撓性歯車ディスク6.1~6.4は同一部品として構成されており、従って、互いに同じものである。これらの可撓性歯車ディスクの構造は以下で
図3に関してより一層詳細に説明する。
【0041】
図3は単一の可撓性歯車ディスク6.1の正面図を示している。他の可撓性歯車ディスク6.2~6.4は
図3のものと同一となるように形成されている。従って、以下の説明は全ての可撓性歯車ディスク6.1~6.4に適用されるものである。
【0042】
可撓性歯車ディスク6.1は個別の歯車として形成されており、第1歯付セグメント7.1と第2歯付セグメント7.2とを有している。第1歯付セグメント7.1と第2歯付セグメント7.2とは交互に配置されており、それぞれ歯付セグメントはそれぞれのばねセグメント8により互いに連結されている。図示の実施例では、可撓性歯車ディスク6.1が12個の歯付セグメント7.1、7.2を有している。1つおきの歯付セグメント、すなわち第1歯付セグメントが穴17を有している。図示の場合、穴17は楕円形状をしている。しかし、これらの穴は円形にすることもできる。第1歯付セグメント7.1は全て互いに同じ形状に構成してある。第2歯付セグメント7.2は第1歯付セグメント7.1の間に配置されている。これらの第2歯付セグメント7.2は穴を有していない。互いに隣接する歯付セグメント7.1、7.2はばねセグメント8により互いに連結されている。ばねセグメント8は、円形のラインに沿って延在するアーク状ウェブとして構成されており、この構造でのこの円形のラインの中心はギヤ機構1の中心軸線M上に位置している。
【0043】
第1歯付セグメント7.1及び第2歯付セグメント7.2の形状を以下で更に詳細に説明する。すなわち、
第1歯付セグメント7.1の各々は脚部領域18を有し、この脚部領域を波動発生器2と接触させる。胴体(トランク)領域19が脚部領域18から始まって径方向で外方に延在しており、この胴体領域に穴17が形成されている。従って、穴17は歯付セグメント7.1の内部に閉輪郭を有する。ボルト12又はスリーブ13がこの閉輪郭に沿ってそれぞれ回転する。その結果、穴17とのボルト12又はスリーブ13の接触が決して阻害されず、これによりギヤ機構1の滑りやすさが増大する。頭部領域20は径方向で胴体領域19に隣接している。外歯14は、各々の第1歯付セグメント7.1の頭部領域20の外向き円周面上に形成されている。穴17は第1歯付セグメント7.1の内部に配置されている為、外歯14は第1歯付セグメント7.1の外向き円周面の全体に亘って延在している。ここで可撓性歯車ディスク6.1の円周方向Uにおける第1歯付セグメント7.1の幅を考察すると、この第1歯付セグメント7.1は脚部領域18において第1の幅を有し、この第1の幅は胴体領域においてテーパー状となっているとともに外方に向けて再び増大し、第1歯付セグメント7.1が外周において最大の幅を有するようにしてある。
【0044】
第2歯付セグメント7.2も、波動発生器2と接触する脚部領域21を有している。頭部領域23に遷移する胴体領域22は、この第2歯付セグメント7.2の場合でも径方向で且つ外方でこの脚部領域21に隣接している。この第2歯付セグメント7.2は穴を有していない。その代わり、この第2歯付セグメント7.2は胴体領域22において著しく収縮され、従って、くびれ部24を有している。この場合も、外歯14は第2歯付セグメント7.2の頭部領域23の外向き円周面上に形成されている。
【0045】
第1歯付セグメント7.1及び第2歯付セグメント7.2の各々はばねセグメント8により隣接する歯付セグメント7.2及び歯付セグメント7.1にそれぞれ連結されている。ばねセグメント8は可撓性歯車ディスク6.1の円周方向の円形ライン上に位置するアーク状ウェブとして構成されている。これらばねセグメント8はほぼ穴17の中心のレベルにおいて第1歯付セグメント7.1に連結している。ばねセグメント8と第2歯付セグメント7.2との間の連結はくびれ部24のレベルで行われている。
図3において明瞭にわかるように、可撓性歯車ディスク6.1は一体に形成されている。
【0046】
穴を有していない第2歯付セグメント7.2は、ギヤの歯の力がばねセグメント8を介して穴17を有する第1歯付セグメント7.1に伝達されるようにする。このようにすることにより、ばねセグメント8を大きく構成し、これにより可撓性を高めるとともにギヤ機構1の直径が小さい場合でも依然として充分な弾性変形が達成されるようにすることができる。図示のばねセグメント8の形状は、これらが接線方向において可能な範囲で弾性を有さずに径方向でのみ弾性を有するようにするものである。
【0047】
ばねセグメント8の各々は、ギヤ機構1の中心軸線Mを含むとともにそれぞれのばねセグメント8を互いに等しい長さの2つの領域に分割する中心平面MFSを有する。ばねセグメント8は円弧の形状のウェブで形成されている為、この長さは弧の長さに対応する。穴17の各々も、ギヤ機構1の中心軸線を含むとともにそれぞれの穴17を互いに等しい大きさの2つの領域に分割する中心平面MA を有している。歯付セグメント7.1及び7.2間のばねセグメント8は非対称的に形成し、各ばねセグメント8の中心平面MFSがこれに隣接する穴17の2つの中心平面MA から異なる距離にあるようにする。従って、各ばねセグメントの中心平面MFSとこれに隣接してそれぞれ配列されている2つの中心平面MA との間の距離は大きさが異なる角度で表すことができる。
【0048】
図3にIII で示す細部を
図4に拡大して示す。
図4には第1歯付セグメント7.1及び第2歯付セグメント7.2を示してある。前述したように、第1歯付セグメント7.1は脚部領域18と、胴体領域19と、頭部領域20とを有している。穴17は第1歯付セグメント7.1の胴体領域19内に位置している。外歯14は頭部領域20内に形成されている。第2歯付セグメント7.2も脚部領域21と、くびれ部24を有する胴体領域22と、頭部領域23とを備えている。外歯14は頭部領域23の外向き円周面上に形成されている。第2歯付セグメント7.2の脚部領域21と第1歯付セグメント7.1の脚部領域18との双方は凹状くぼみを有し、歯付セグメント7.1及び7.2の各々が2箇所の支持点を以って波動発生器2上に支持されるようになっている。これにより、波動発生器2の外輪郭に対し垂直な歯付セグメント7.1及び7.2の整列が改善される。この凹状くぼみは約170°の開口角度βを有する。
【0049】
ばねセグメント8はほぼ穴17のレベルで第1歯付セグメント7.1に連結している。これらばねセグメント8は、これらばねセグメント8が第1歯付セグメント7.1に遷移する領域で逃げ切除部(レリーフカット)25を有している。この逃げ切除部25は、ばねセグメント8から第1歯付セグメント7.1への遷移領域における可撓性歯車6の可撓性を高めることができる。
【0050】
ばねセグメント8は、くびれ部24のレベルで第2歯付セグメント7.2に連結している。この第2歯付セグメント7.2はこの領域で極めて小さい幅を有する為、ここで与えられる可撓性は充分なものとなる。互いに隣接して位置する歯付セグメント7.1及び7.2は、頭部領域と脚部領域との双方で互いにある距離に配置されている。
【0051】
図4から明らかなように、第1歯付セグメント7.1は第2歯付セグメント7.2とは異なる個数の歯を有するようにしうる。従って、可撓性歯車6の歯の個数は歯付セグメント7.1及び7.2の個数の整数倍ではない。従って、歯付セグメント7.1及び7.2の個数は全ての可撓性歯車6の歯の個数により決定されない。従って、歯付セグメント7.1及び7.2における歯の個数及び配置の双方又は何れか一方は、必ずしも均一とならない。歯付セグメント7.1及び7.2における全ての歯が同じ形状を有するようにするためには、波動発生器2の幾何学的形状、すなわち互いに反対側に配列された2つのカムを有する楕円の断面形状を選択して、一定の半径が歯のかみ合わせが行われる角度に亘ってより一層上側の高位点(エレベーション)の領域内に延在するようにすることができる。全ての歯付セグメント7.1及び7.2がこの区分、すなわちこの角度内に位置するようにすることにより、一定の半径を有するとともに軸線を中心に回転する理想的な歯車が得られるようになる。この軸線はギヤ機構1の中心軸線Mからある距離に位置している。この場合の距離はリングギヤの半径に比べて10%よりも短い長さの比率を有している。唯一の境界条件は、隣接するギヤ機構の要素7.1及び7.2上に位置する2つの外歯間の距離がこの領域内の歯幅の整数倍であることである。現在では、この歯幅は外歯14の2つの隣接する歯間の距離の2倍として規定してある。
【0052】
以下において、可撓性歯車6の構造を
図2に関して再び詳細に説明する。この可撓性歯車は4つの可撓性歯車ディスク6.1、6.2、6.3及び6.4を有している。これら4つの可撓性歯車ディスク6.1~6.4は、
図3及び4につき既に説明してあるように個別の歯車として構成してある。これらの可撓性歯車ディスク6.1~6.4は、これらの正面が互いに接触支持するように軸線方向に配置されている。又、これらの可撓性歯車ディスク6.1~6.4は、これら全ての可撓性歯車ディスク6.1~6.4の第2歯付セグメント7.2が上下に位置するように円周方向で整列されている。従って、これら全ての可撓性歯車ディスク6.1~6.4の第1歯付セグメント7.1も上下に位置する。従って、これら全ての可撓性歯車ディスク6.1~6.4の穴17もほぼ一致し、これらの穴が可撓性歯車6の全幅Bに亘って軸線方向Mに延在する。スリーブ13を穴17内に配置することにより、これらスリーブ内にボルト12が入れられる。従って、可撓性歯車ディスク6.1~6.4が最初にリングギヤの歯内に支持され、次いでボルト12又はピンエレメント11上にそれぞれ支持される。このようにすることにより、トルク伝達が可能となる。
【0053】
可撓性歯車ディスク6.1~6.4の各々は個別的に中心軸線Mに対し垂直方向に僅かに傾けることができる。その結果、例えば軸受問題による中心軸線M又はリングギヤの軸線に対する1つの可撓性歯車ディスクの傾きをその他の可撓性歯車ディスクによりそれぞれ補償することができる。例えば、製造公差により生ぜしめられる個々の可撓性歯車ディスクのフランク方向の誤差も他の可撓性歯車ディスクにより補償することができる。
【0054】
可撓性歯車ディスク6.1~6.4の各々は円周方向において互いに僅かにオフセットさせることができる為、リングギヤの歯における個々の可撓性歯車ディスクの歯かみ合わせ領域の可撓的なかみ合わせを可能にでき、これによりバックラッシュを0°まで低減させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1→ギヤ機構
2→波動発生器
3→基体
4→転動体
5→変形可能なスリーブ
6→可撓性歯車
6.1→歯車ディスク
6.2→歯車ディスク
6.3→歯車ディスク
6.4→歯車ディスク
7.1→第1歯付セグメント
7.2→第2歯付セグメント
8→ばねセグメント
9→リングギヤ
10→ハウジング
11→ピンエレメント
12→ボルト
13→スリーブ
14→外歯
15→内歯
17→穴
18→第1歯付セグメントの脚部領域
19→第1歯付セグメントの胴体領域
20→第1歯付セグメントの頭部領域
21→第2歯付セグメントの脚部領域
22→第2歯付セグメントの胴体領域
23→第2歯付セグメントの頭部領域
24→くびれ部
25→逃げ切除部
M→ギヤ機構の中心軸線
U→円周方向
B→可撓性歯車の幅
MFS→ばねセグメントの中心平面
MA →穴の中心平面
β→開口角度