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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】配線シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20241206BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20241206BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20241206BHJP
【FI】
H05B3/20 335
H05B3/20 303
H05B3/10 A
B32B7/025
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020196785
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085213
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】森岡 孝至
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅春
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0210073(US,A1)
【文献】特開2017-111937(JP,A)
【文献】特開2017-092002(JP,A)
【文献】特開2017-182890(JP,A)
【文献】国際公開第2020/189173(WO,A1)
【文献】実開昭57-180216(JP,U)
【文献】特開2020-119856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20
H05B 3/10
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第一導電性線状体が間隔をもって配列された第一疑似シート構造体と、前記第一疑似シート構造体を支持する第一樹脂層と、一対の電極と、複数の第二導電性線状体が間隔をもって配列された第二疑似シート構造体と、前記第二疑似シート構造体を支持する第二樹脂層と、を備え、
前記一対の電極は、前記第一導電性線状体及び前記第二導電性線状体の両端部に電気的に接続されて配置され、
前記一対の電極は、前記第一疑似シート構造体及び前記第二疑似シート構造体に挟まれている、
配線シート。
【請求項2】
請求項1に記載の配線シートにおいて、
前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体と前記第二導電性線状体とが重なっていない、
配線シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線シートにおいて、
前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体と前記第二樹脂層とが重なっており、前記第二導電性線状体と前記第一樹脂層とが重なっている、
配線シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配線シートにおいて、
前記第一樹脂層は、複数の第一樹脂帯状体からなり、
前記第二樹脂層は、複数の第二樹脂帯状体からなる、
配線シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の配線シートにおいて、
前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体及び前記第二導電性線状体は、波形状を成している、
配線シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の配線シートにおいて、
さらに、通気性を有する基材を備える、
配線シート。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の配線シートにおいて、
前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体と前記第二導電性線状体とが、等間隔に並んでいる、
配線シート。
【請求項8】
請求項1に記載の配線シートにおいて、
前記第一導電性線状体と前記第二導電性線状体とが、交互に並んでおり、かつ、前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体と前記第二導電性線状体とが、等間隔に並んでいる、
配線シート。
【請求項9】
複数の第一導電性線状体が間隔をもって配列された第一疑似シート構造体と、前記第一疑似シート構造体を支持する第一樹脂層と、一対の電極と、複数の第二導電性線状体が間隔をもって配列された第二疑似シート構造体と、前記第二疑似シート構造体を支持する第二樹脂層と、を備え、
前記一対の電極は、前記第一疑似シート構造体及び前記第二疑似シート構造体に挟まれている、配線シートを製造する方法であって、
前記第一樹脂層上に、第一疑似シート構造体を形成して、第一シート状導電部材を得る工程と、
前記第二樹脂層上に、第二疑似シート構造体を形成して、第二シート状導電部材を得る工程と、
前記第一シート状導電部材における第一導電性線状体の両端部に、前記一対の電極を取り付ける工程と、
前記一対の電極上に、前記第二シート状導電部材における第二導電性線状体の両端部と前記一対の電極とが接触するようにして、前記第二シート状導電部材を取り付ける工程と、を備える、
配線シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の導電性線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有するシート状導電部材(以下、「導電性シート」とも称する)は、発熱装置の発熱体、発熱するテキスタイルの材料、ディスプレイ用保護フィルム(粉砕防止フィルム)等、種々の物品の部材に利用できる可能性がある。
発熱体の用途に用いるシートとして、例えば、特許文献1には、一方向に延びた複数の線状体が間隔をもって配列された疑似シート構造体を有する導電性シートが記載されている。そして、複数の線状体の両端に、一対の電極が設けられることで、発熱体として用いることができる配線シートが得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2017/086395号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような配線シートにおいては、配線の抵抗値が安定しない場合があることが分かった。また、特許文献1に記載のような配線シートにおいては、カールが発生する場合があることが分かった。
本発明の目的は、配線の抵抗値を安定化でき、かつカールの発生を抑制できる配線シート、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、複数の第一導電性線状体が間隔をもって配列された第一疑似シート構造体と、前記第一疑似シート構造体を支持する第一樹脂層と、一対の電極と、複数の第二導電性線状体が間隔をもって配列された第二疑似シート構造体と、前記第二疑似シート構造体を支持する第二樹脂層と、を備え、前記一対の電極は、前記第一疑似シート構造体及び前記第二疑似シート構造体に挟まれている、配線シートが提供される。
【0006】
本発明の一態様に係る配線シートにおいては、前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体と前記第二導電性線状体とが重なっていないことが好ましい。
【0007】
本発明の一態様に係る配線シートにおいては、前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体と前記第二樹脂層とが重なっており、前記第二導電性線状体と前記第一樹脂層とが重なっていることが好ましい。
【0008】
本発明の一態様に係る配線シートにおいては、前記第一樹脂層は、複数の第一樹脂帯状体からなり、前記第二樹脂層は、複数の第二樹脂帯状体からなることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る配線シートにおいては、前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体及び前記第二導電性線状体は、波形状を成していることが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る配線シートにおいては、さらに、通気性を有する基材を備えることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る配線シートにおいては、前記配線シートの平面視において、前記第一導電性線状体と前記第二導電性線状体とが、等間隔に並んでいることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る配線シートを製造する方法であって、前記第一樹脂層上に、第一疑似シート構造体を形成して、第一シート状導電部材を得る工程と、前記第二樹脂層上に、第二疑似シート構造体を形成して、第二シート状導電部材を得る工程と、前記第一シート状導電部材における第一導電性線状体の両端部に、前記一対の電極を取り付ける工程と、前記一対の電極上に、前記第二シート状導電部材における第二導電性線状体の両端部と前記一対の電極とが接触するようにして、前記第二シート状導電部材を取り付ける工程と、を備える、配線シートの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、配線の抵抗値を安定化でき、かつカールの発生を抑制できる配線シート、及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施形態に係る配線シートを示す概略図である。
図2図1のII-II断面を示す断面図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る配線シートの製造方法を説明するための図である。
図4】本発明の第二実施形態に係る配線シートを示す概略図である。
図5図4のV-V断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
以下、本発明について実施形態を例に挙げて、図面に基づいて説明する。本発明は本実施形態の内容に限定されない。なお、図面においては、説明を容易にするために拡大又は縮小をして図示した部分がある。
【0016】
(配線シート)
本実施形態に係る配線シート100は、図1及び図2に示すように、第一基材1と、第一疑似シート構造体2と、第一樹脂層3と、一対の電極4と、第二基材5と、第二疑似シート構造体6と、第二樹脂層7とを備えている。第一疑似シート構造体2は、複数の第一導電性線状体21が間隔をもって配列されている。第二疑似シート構造体6は、複数の第二導電性線状体61が間隔をもって配列されている。
【0017】
具体的には、配線シート100は、第一基材1上に第一樹脂層3が積層され、第一樹脂層3上に第一疑似シート構造体2が積層されている第一シート状導電部材と、第二基材5上に第二樹脂層7が積層され、第二樹脂層7上に第二疑似シート構造体6が積層されている第二シート状導電部材と、一対の電極4とを備えている。そして、第一シート状導電部材と第二シート状導電部材と間に、一対の電極4が配置され、一対の電極4が、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6に挟まれている。
このような構成であれば、仮に第一シート状導電部材が伸縮してしまった場合でも、第二シート状導電部材も同様に伸縮するため、配線シート100のカールが発生しにくい。また、このような構成であれば、一対の電極4と、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6とを、第一樹脂層3及び第二樹脂層7が両側から挟み込むように積層されるため、第一樹脂層3及び第二樹脂層7が、一対の電極4と、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6とを両側から固定でき、また、保護できる。そのため、一対の電極4から第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6が外れてしまうことを抑制でき、また、一対の電極4などが劣化することを抑制できる。このようにして、配線の抵抗値を安定化できる。
【0018】
(基材)
第一基材1及び第二基材5としては、例えば、合成樹脂フィルム、紙、金属箔、不織布、布及びガラスフィルム等が挙げられる。この第一基材1又は第二基材5により、第一疑似シート構造体2又は第二疑似シート構造体6を、直接的又は間接的に支持できる。第一基材1及び第二基材5は、それぞれ同じものであってもよく、異なるものであってもよい。
合成樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニル共重合体フィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、及びポリイミドフィルム等が挙げられる。
また、紙としては、例えば、上質紙、再生紙、及びクラフト紙等が挙げられる。不織布としては、例えば、スパンボンド不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブロー不織布、及びスパンレース不織布等が挙げられる。布としては、例えば、織物及び編物等が挙げられる。
【0019】
(疑似シート構造体)
第一疑似シート構造体2は、複数の第一導電性線状体21が、互いに間隔をもって配列された構造としている。また、第二疑似シート構造体6は、複数の第二導電性線状体61が、互いに間隔をもって配列された構造としている。第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61は、配線シート100の平面視において、直線状又は波形状である。そして、第一疑似シート構造体2は、第一導電性線状体21が、第一導電性線状体21の軸方向と交差する方向に、複数配列された構造としている。また、第二疑似シート構造体6は、第二導電性線状体61が、第二導電性線状体61の軸方向と交差する方向に、複数配列された構造としている。
なお、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61は、配線シート100の平面視において、波形状を成していることが好ましい。例えば、正弦波、円形波、矩形波、三角波、及びのこぎり波等の波形状であってもよい。第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6が、このような構造であれば、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の軸方向に、配線シート100を伸張した際に、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の断線を抑制できる。
【0020】
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の体積抵抗率は、1.0×10-9Ω・m以上1.0×10-3Ω・m以下であることが好ましく、1.0×10-8Ω・m以上1.0×10-4Ω・m以下であることがより好ましい。第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の体積抵抗率を上記範囲にすると、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6の面抵抗が低下しやすくなる。
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の体積抵抗率の測定は、次の通りである。第一導電性線状体21又は第二導電性線状体61の一方の端部及び端部からの長さ40mmの部分に銀ペーストを塗布し、端部及び端部から長さ40mmの部分の抵抗を測定し、第一導電性線状体21又は第二導電性線状体61の抵抗値を求める。そして、第一導電性線状体21又は第二導電性線状体61の断面積(単位:m)を上記の抵抗値に乗じ、得られた値を上記の測定した長さ(0.04m)で除して、第一導電性線状体21又は第二導電性線状体61の体積抵抗率を算出する。
【0021】
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の断面の形状は、特に限定されず、多角形、扁平形状、楕円形状、又は円形状等を取り得るが、第一樹脂層3及び第二樹脂層7との馴染み等の観点から、楕円形状、円形状であることが好ましい。
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の断面が円形状である場合には、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の太さ(直径)D(図2参照)は、5μm以上3mm以下であることが好ましい。シート抵抗の上昇抑制と、配線シート100を発熱体として用いた場合の発熱効率及び耐絶縁破壊特性の向上との観点から、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の直径Dは、8μm以上1mm以下であることがより好ましく、12μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の断面が楕円形状である場合には、長径が上記の直径Dと同様の範囲にあることが好ましい。
【0022】
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の直径Dは、デジタル顕微鏡を用いて、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61を観察し、無作為に選んだ5箇所で、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の直径を測定し、その平均値とする。
【0023】
配線シート100平面視において、第一導電性線状体21と第二導電性線状体61とが重なっていないことが好ましい。また、第一導電性線状体21と第二導電性線状体61とが、交互に並んでいることが好ましい。さらに、第一導電性線状体21と第二導電性線状体61とが、等間隔に並んでいることが好ましい。上記のような構成であれば、配線シート100を発熱体として用いる場合の温度上昇の分布を均一にする等の、配線シート100の機能の向上を図ることができる。
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の間隔L(図2参照)は、20mm以下であることが好ましく、0.5mm以上15mm以下であることがより好ましく、1mm以上10mm以下であることがさらに好ましい。
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の間隔が上記範囲であれば、導電性線状体がある程度密集しているため、疑似シート構造体の抵抗を低く維持し、配線シート100を発熱体として用いる場合の温度上昇の分布を均一にする等の、配線シート100の機能の向上を図ることができる。
【0024】
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の間隔Lは、目視又はデジタル顕微鏡を用いて、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61を観察し、隣り合う第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の間隔を測定する。
なお、隣り合う第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の間隔とは、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61を配列させていった方向に沿った長さであって、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の対向する部分間の長さである(図2参照)。間隔Lは、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の配列が不等間隔である場合には、全ての隣り合う第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の間隔の平均値である。
【0025】
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61は、特に制限はないが、金属ワイヤーを含む線状体(以下「金属ワイヤー線状体」とも称する)であることがよい。金属ワイヤーは高い熱伝導性、高い電気伝導性、高いハンドリング性、汎用性を有するため、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61として金属ワイヤー線状体を適用すると、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6の抵抗値を低減しつつ、光線透過性が向上しやすくなる。また、配線シート100を発熱体として適用したとき、速やかな発熱が実現されやすくなる。さらに、上述したように直径が細い線状体を得られやすい。
なお、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61としては、金属ワイヤー線状体の他に、カーボンナノチューブを含む線状体、及び、糸に導電性被覆が施された線状体が挙げられる。
【0026】
金属ワイヤー線状体は、1本の金属ワイヤーからなる線状体であってもよいし、複数本の金属ワイヤーを撚った線状体であってもよい。
金属ワイヤーとしては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)を含むワイヤーが挙げられる。また、金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよく、後述する炭素材料やポリマーにより表面が被覆されたものであってもよい。特に、タングステン及びモリブデン並びにこれらを含む合金から選ばれる一種以上の金属を含むワイヤーが、低い体積抵抗率の観点から好ましい。
金属ワイヤーとしては、炭素材料で被覆された金属ワイヤーも挙げられる。金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると、金属光沢が低減し、金属ワイヤーの存在を目立たなくすることが容易となる。また、金属ワイヤーは、炭素材料で被覆されていると金属腐食も抑制される。
金属ワイヤーを被覆する炭素材料としては、非晶質炭素(例えば、カーボンブラック、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン、メソポーラスカーボン、及びカーボンファイバー等)、グラファイト、フラーレン、グラフェン及びカーボンナノチューブ等が挙げられる。
【0027】
カーボンナノチューブを含む線状体は、例えば、カーボンナノチューブフォレスト(カーボンナノチューブを、基板に対して垂直方向に配向するよう、基板上に複数成長させた成長体のことであり、「アレイ」と称される場合もある)の端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚ることにより得られる。このような製造方法において、撚りの際に捻りを加えない場合には、リボン状のカーボンナノチューブ線状体が得られ、捻りを加えた場合には、糸状の線状体が得られる。リボン状のカーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブが捻られた構造を有しない線状体である。このほか、カーボンナノチューブの分散液から、紡糸をすること等によっても、カーボンナノチューブ線状体を得ることができる。紡糸によるカーボンナノチューブ線状体の製造は、例えば、米国特許出願公開第2013/0251619号明細書(日本国特開2012-126635号公報)に開示されている方法により行うことができる。カーボンナノチューブ線状体の直径の均一さが得られる観点からは、糸状のカーボンナノチューブ線状体を用いることが望ましく、純度の高いカーボンナノチューブ線状体が得られる観点からは、カーボンナノチューブシートを撚ることによって糸状のカーボンナノチューブ線状体を得ることが好ましい。カーボンナノチューブ線状体は、2本以上のカーボンナノチューブ線状体同士が編まれた線状体であってもよい。また、カーボンナノチューブ線状体は、カーボンナノチューブと他の導電性材料が複合された線状体(以下「複合線状体」とも称する)であってもよい。
【0028】
複合線状体としては、例えば、(1)カーボンナノチューブフォレストの端部から、カーボンナノチューブをシート状に引き出し、引き出したカーボンナノチューブシートを束ねた後、カーボンナノチューブの束を撚るカーボンナノチューブ線状体を得る過程において、カーボンナノチューブのフォレスト、シート若しくは束、又は撚った線状体の表面に、金属単体又は金属合金を蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング、湿式めっき等により担持させた複合線状体、(2)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と共に、カーボンナノチューブの束を撚った複合線状体、(3)金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体と、カーボンナノチューブ線状体又は複合線状体とを編んだ複合線状体等が挙げられる。なお、(2)の複合線状体においては、カーボンナノチューブの束を撚る際に、(1)の複合線状体と同様にカーボンナノチューブに対して金属を担持させてもよい。また、(3)の複合線状体は、2本の線状体を編んだ場合の複合線状体であるが、少なくとも1本の金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体又は複合線状体が含まれていれば、カーボンナノチューブ線状体又は金属単体の線状体若しくは金属合金の線状体若しくは複合線状体の3本以上を編み合わせてあってもよい。
複合線状体の金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛等の金属単体、及び、これら金属単体の少なくとも一種を含む合金(銅-ニッケル-リン合金、及び、銅-鉄-リン-亜鉛合金等)が挙げられる。
【0029】
第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61は、糸に導電性被覆が施された線状体であってもよい。糸としては、ナイロン、ポリエステル等の樹脂から紡糸した糸等が挙げられる。導電性被覆としては、金属、導電性高分子、炭素材料等の被膜等が挙げられる。導電性被覆は、メッキや蒸着法等により形成することができる。糸に導電性被覆が施された線状体は、糸の柔軟性を維持しつつ、線状体の導電性を向上させることができる。つまり、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6の抵抗を、低下させることが容易となる。
【0030】
(樹脂層)
第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、樹脂を含む層である。この第一樹脂層3又は第二樹脂層7により、第一疑似シート構造体2又は第二疑似シート構造体6を、直接的又は間接的に支持できる。また、第一樹脂層3により第二導電性線状体61を保護でき、第二樹脂層7により第一導電性線状体21を保護できる。この観点から、配線シート100の平面視において、第一導電性線状体21と第二樹脂層7とが重なっており、第二導電性線状体61と第一樹脂層3とが重なっていることが好ましい。
第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、接着剤を含む層であることが好ましい。例えば第一樹脂層3に第一疑似シート構造体2を形成する際に、接着剤により、第一導電性線状体21の第一樹脂層3への貼り付けが容易となる。
【0031】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、乾燥又は硬化可能な樹脂からなる層であってもよい。これにより、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6を保護するのに十分な硬度が第一樹脂層3及び第二樹脂層7に付与され、第一樹脂層3及び第二樹脂層7は保護膜としても機能する。また、硬化又は乾燥後の第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、耐衝撃性を有し、衝撃による配線シート100の変形も抑制できる。
【0032】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、短時間で簡便に硬化することができる点で、紫外線、可視エネルギー線、赤外線、電子線等のエネルギー線硬化性であることが好ましい。なお、「エネルギー線硬化」には、エネルギー線を用いた加熱による熱硬化も含まれる。
【0033】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7の接着剤は、熱により硬化する熱硬化性のもの、熱により接着するいわゆるヒートシールタイプのもの、湿潤させて貼付性を発現させる接着剤等も挙げられる。ただし、適用の簡便さからは、第一樹脂層3及び第二樹脂層7が、エネルギー線硬化性であることが好ましい。エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0034】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート(トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等)、環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート(ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)、オリゴエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ変性(メタ)アクリレート、前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート、及びイタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0035】
エネルギー線硬化性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
【0036】
接着剤組成物が含有するエネルギー線硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。さらに、後述する熱可塑性樹脂と組み合わせてもよく、組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0037】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、粘着剤(感圧性接着剤)から形成される粘着剤層であってもよい。粘着剤層の粘着剤は、特に限定されない。例えば、粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、粘着剤は、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、及びゴム系粘着剤からなる群から選択される少なくともいずれかであることが好ましく、アクリル系粘着剤であることがより好ましい。
【0038】
アクリル系粘着剤としては、例えば、直鎖のアルキル基又は分岐鎖のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体(つまり、アルキル(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)、環状構造を有する(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系重合体(つまり、環状構造を有する(メタ)アクリレートを少なくとも重合した重合体)等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の双方を示す語として用いており、他の類似用語についても同様である。
【0039】
アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合の形態としては、特に限定されない。アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0040】
アクリル系重合体が共重合体である場合、共重合の形態としては、特に限定されない。アクリル系共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
【0041】
アクリル系共重合体は架橋剤により架橋されていてもよい。架橋剤としては、例えば、公知のエポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。アクリル系共重合体を架橋する場合には、アクリル系重合体の単量体成分に由来する官能基として、これらの架橋剤と反応する水酸基やカルボキシル基等をアクリル系共重合体に導入することができる。
【0042】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7が粘着剤から形成される場合、第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、粘着剤の他に、さらに上述したエネルギー線硬化性樹脂を含有していてもよい。また、粘着剤としてアクリル系粘着剤を適用する場合、エネルギー線硬化性の成分として、アクリル系共重合体における単量体成分に由来する官能基と反応する官能基と、エネルギー線重合性の官能基の両方を一分子中に有する化合物を用いてもよい。当該化合物の官能基と、アクリル系共重合体における単量体成分に由来する官能基との反応により、アクリル系共重合体の側鎖がエネルギー線照射により硬化可能となる。粘着剤がアクリル系粘着剤以外の場合においても、アクリル系重合体以外の重合体成分として、同様に側鎖がエネルギー線重合性である成分を用いてもよい。
【0043】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7に用いられる熱硬化性樹脂としては、特に限定されず、具体的には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノキシ樹脂、アミン系化合物、酸無水物系化合物などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イミダゾール系硬化触媒を使用した硬化に適すという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミン系化合物及び酸無水物系化合物を使用することが好ましく、特に、優れた硬化性を示すという観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、それらの混合物、又はエポキシ樹脂と、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アミン系化合物及び酸無水物系化合物からなる群から選択される少なくとも1種との混合物を使用することが好ましい。
【0044】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7に用いられる湿気硬化性樹脂としては、特に限定されず、湿気でイソシアネート基が生成してくる樹脂であるウレタン樹脂、変性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0045】
エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いる場合、光重合開始剤や熱重合開始剤等を用いることが好ましい。光重合開始剤や熱重合開始剤等を用いることで、架橋構造が形成され、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6を、より強固に保護することが可能になる。
【0046】
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサントン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、2-クロロアントラキノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニル-ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
熱重合開始剤としては、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩(ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸ナトリウム、及びペルオキソ二硫酸カリウム等)、アゾ系化合物(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、及び有機過酸化物(過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、及びクメンヒドロパーオキサイド等)等が挙げられる。
【0048】
これらの重合開始剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの重合開始剤を用いて架橋構造を形成する場合、その使用量は、エネルギー線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、1質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、1質量部以上10質量部以下であることが特に好ましい。
【0049】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、硬化性でなく、例えば、熱可塑性樹脂組成物からなる層であってもよい。そして、熱可塑性樹脂組成物中に溶剤を含有させることで、熱可塑性樹脂層を軟化させることができる。これにより、例えば第一樹脂層3に第一疑似シート構造体2を形成する際に、第一導電性線状体21の第一樹脂層3への貼り付けが容易となる。一方で、熱可塑性樹脂組成物中の溶剤を揮発させることで、熱可塑性樹脂層を乾燥させ、固化させることができる。
【0050】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエーテルサルホン、ポリイミド及びアクリル樹脂等が挙げられる。
溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化アルキル系溶媒及び水等が挙げられる。
【0051】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7は、無機充填材を含有していてもよい。無機充填材を含有することで、硬化後の第一樹脂層3及び第二樹脂層7の硬度をより向上させることができる。
【0052】
無機充填材としては、例えば、無機粉末(例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、及び窒化ホウ素等の粉末)、無機粉末を球形化したビーズ、単結晶繊維、及びガラス繊維等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材としては、シリカフィラー及びアルミナフィラーが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7には、その他の成分が含まれていてもよい。その他の成分としては、例えば、有機溶媒、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、及び濡れ性調整剤等の周知の添加剤が挙げられる。
【0054】
第一樹脂層3及び第二樹脂層7の厚さは、配線シート100の用途に応じて適宜決定される。例えば、接着性の観点から、第一樹脂層3及び第二樹脂層7の厚さは、3μm以上150μm以下であることが好ましく、5μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0055】
(電極)
電極4は、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61に電流を供給するために用いられる。電極4は、公知の電極材料を用いて形成できる。電極材料としては、導電性ペースト(銀ペースト等)、金属箔(銅箔等)、及び金属ワイヤー等が挙げられる。電極4は、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61の両端部に電気的に接続されて配置される。電極材料が金属ワイヤーである場合、金属ワイヤーは、1本であってもよいが、2本以上であることが好ましい。
金属箔又は金属ワイヤーの金属としては、銅、アルミニウム、タングステン、鉄、モリブデン、ニッケル、チタン、銀、金等の金属、又は、金属を2種以上含む合金(例えば、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼鉄、真鍮、りん青銅、ジルコニウム銅合金、ベリリウム銅、鉄ニッケル、ニクロム、ニッケルチタン、カンタル、ハステロイ、及びレニウムタングステン等)が挙げられる。また、金属箔又は金属ワイヤーは、錫、亜鉛、銀、ニッケル、クロム、ニッケルクロム合金、又は、はんだ等でめっきされたものであってもよい。特に、銅及び銀並びにこれらを含む合金から選ばれる一種以上の金属を含むものが、低い体積抵抗率の金属という観点から好ましい。
【0056】
一対の電極4の一方の電極の幅は、配線シート100の平面視において、10mm以下であることが好ましく、3000μm以下であることがより好ましく、1500μm以下であることがさらに好ましい。なお、一方の電極が金属ワイヤーである場合には、電極の幅は、金属ワイヤーの直径であり、金属ワイヤーを2本以上用いた場合の一方の電極の幅とは、各金属ワイヤーの直径の和のことをいう。
【0057】
電極4の厚さは、2μm以上200μm以下であることが好ましく、2μm以上170μm以下であることがより好ましく、10μm以上150μm以下であることが特に好ましい。電極の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり疑似シート構造体との抵抗値を低く抑えられる。また、電極として十分な強度が得られる。なお、電極4が金属ワイヤーである場合には、電極4の厚さは、金属ワイヤーの直径である。
【0058】
電極4と第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6との抵抗値の比は、0.0001以上0.3以下であることが好ましく、0.0005以上0.1以下であることがより好ましい。電極4と第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6との抵抗値の比は、「[電極4の抵抗値]÷[第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6に用いられている第一導電性線状体及び第二導電性線状体が電極4と並列接続されている形態における合成抵抗値]」により求めることができる。この範囲内にあることで、配線シート100を発熱体として用いた場合、電極部分での異常発熱が抑制される。配線シート100をシート状ヒーターとして用いる場合、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6のみが発熱し、発熱効率の良好なシート状ヒーターを得ることができる。
電極4と第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6の抵抗値は、テスターを用いて測定することができる。まず電極4の抵抗値を測定し、電極4を貼付した第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6の抵抗値を測定する。その後、電極4を貼付した第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6の抵抗値から電極4の測定値を引くことで、電極4並びに第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6のそれぞれの抵抗値を算出する。
【0059】
(配線シートの製造方法)
次に、本実施形態に係る配線シート100の製造方法について説明する。この製造方法により、配線シート100を製造できる。
本実施形態に係る配線シート100の製造方法は、第一樹脂層3上に、第一疑似シート構造体2を形成して、図3(A)に示す第一シート状導電部材を得る工程(以下、「第一シート状導電部材作製工程」との称する)、第二樹脂層7上に、第二疑似シート構造体6を形成して、図3(B)に示す第二シート状導電部材を得る工程(以下、「第二シート状導電部材作製工程」とも称する)、図3(C)に示すように、前記第一シート状導電部材における第一導電性線状体21の両端部に、一対の電極4を取り付ける工程(以下、「電極取付工程」とも称する)、並びに、図3(D)に示すように、一対の電極4上に、前記第二シート状導電部材における第二導電性線状体61の両端部と一対の電極4とが接触するようにして、前記第二シート状導電部材を取り付ける工程(以下、「重ね合せ工程」とも称する)、を備える方法である。
【0060】
第一シート状導電部材作製工程においては、第一基材1に設けられた第一樹脂層3上に、図3(A)に示すような複数の第一導電性線状体21が間隔をもって配列された第一疑似シート構造体2を設ける。
第一疑似シート構造体2を設ける方法としては、特に限定されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、ドラム部材(図示しない)の外周面に第一樹脂層3付きの第一基材1を、第一樹脂層3が上となるように配置した状態で、ドラム部材を回転させながら、第一樹脂層3が粘着状態(未硬化、乾燥前、ヒートシールでの加熱時等の状態)にあるときに、第一導電性線状体21を波形など所定形状となるように第一樹脂層3と第一導電性線状体21を相対移動させて付着させ、ロール状に巻き取る。その後、必要に応じて、第一樹脂層3を硬化する。さらにその後、螺旋状に巻き付けた第一導電性線状体21の束をドラム部材の軸方向に沿って切断し、必要に応じて流れ方向にも切断し所定の寸法に切断する。これにより、第一疑似シート構造体2を形成すると共に、第一樹脂層3上に配置する。そして、第一疑似シート構造体2が形成された第一基材1をドラム部材から取り出す。この方法によれば、例えば、ドラム部材を回転させながら、第一導電性線状体21の繰り出し部をドラム部材の軸と平行な方向に沿って移動させることで、第一疑似シート構造体2における隣り合う第一導電性線状体21の間隔を調整することが容易である。
【0061】
第二シート状導電部材作製工程においては、第二基材5に設けられた第二樹脂層7上に、図3(B)に示すような複数の第二導電性線状体61が間隔をもって配列された第二疑似シート構造体6を設ける。
第二疑似シート構造体6を設ける方法としては、前述の第一疑似シート構造体2を設ける方法と同様である。
【0062】
電極取付工程においては、図3(C)に示すように、前記第一シート状導電部材における第一導電性線状体21の両端部に、一対の電極4を取り付ける。
電極4を取り付ける方法としては、特に限定されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、第一樹脂層3上に、第一導電性線状体21と電極4とが接するように、電極4を配置する。その後、電極4を第一樹脂層3に対して圧着させることで、第一疑似シート構造体2に、電極4を取り付けることができる。
【0063】
重ね合せ工程においては、図3(D)に示すように、一対の電極4上に、前記第二シート状導電部材における第二導電性線状体61の両端部と一対の電極4とが接触するようにして、前記第二シート状導電部材を取り付ける。
第二シート状導電部材を取り付ける方法としては、特に限定されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、第一疑似シート構造体2に設けられた一対の電極4上に、第二導電性線状体61の両端部と一対の電極4とが接触するように、第二シート状導電部材を配置する。その後、第一樹脂層3と第二樹脂層7とを圧着させることで、電極4付きの第一シート状導電部材に、第二シート状導電部材を取り付けることができる。さらに、第二疑似シート構造体6に設けられた一対の電極4上に、第一導電性線状体21の両端部と一対の電極4とが接触するように、第一シート状導電部材を配置する。その後、第一樹脂層3と第二樹脂層7とを圧着させることで、電極4付きの第二シート状導電部材に、第一シート状導電部材を取り付けることができる。
【0064】
(第一実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、次のような作用効果を奏することができる。
(1)本実施形態においては、一対の電極4の両側に2つのシート状導電部材(第一シート状導電部材及び第二シート状導電部材)が配置されている。そのため、片側のシート状導電部材だけが伸縮してしまうことがなく、配線シート100のカールが発生しにくい。
(2)本実施形態においては、一対の電極4と、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6とを、第一樹脂層3及び第二樹脂層7が両側から挟み込むように積層されるため、第一樹脂層3及び第二樹脂層7が、一対の電極4と、第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6とを両側から固定でき、また、保護できる。そのため、一対の電極4から第一疑似シート構造体2及び第二疑似シート構造体6が外れてしまうことを抑制でき、また、一対の電極4などが劣化することを抑制できる。このようにして、配線の抵抗値を安定化できる。
【0065】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る配線シート100Aは、図4及び図5に示すように、第一基材1Aと、第一疑似シート構造体2と、第一樹脂層3Aと、一対の電極4と、第二基材5Aと、第二疑似シート構造体6と、第二樹脂層7Aとを備えている。第一疑似シート構造体2は、複数の第一導電性線状体21が間隔をもって配列されている。第二疑似シート構造体6は、複数の第二導電性線状体61が間隔をもって配列されている。第一樹脂層3Aは、複数の第一樹脂帯状体31からなり、第二樹脂層7Aは、複数の第二樹脂帯状体71からなる。
なお、本実施形態では、第一基材1A及び第二基材5Aを用いていること、及び、第一樹脂層3A及び第二樹脂層7Aがストライプ状に形成されていること以外は第一実施形態と同様の構成であるので、第一基材1A及び第二基材5A、並びに、第一樹脂層3A及び第二樹脂層7Aについて説明し、それ以外の前の説明と共通する箇所は省略する。
【0066】
第一基材1A及び第二基材5Aは、通気性を有する基材であることが好ましい。このような構成であれば、通気性が良好な配線シート100Aが得られる。
第一基材1A及び第二基材5Aとして、穴を有するように成形された基材又は基材シートの厚さ方向に機械的もしくは化学的に貫通させた穴を有するものを使用できる。また、例えば、第一基材1A及び第二基材5Aとして、メッシュ、不織布、織布及びニット等の多孔質なものでも、さらに通気性を向上させるため、穴をあけて使用することもできる。
したがって、第一基材1A及び第二基材5Aに用いる通気性能力を付与する前の基材としては、前述の第一基材1及び第二基材5と同じものが挙げられる。
【0067】
第一樹脂層3Aは、複数の第一樹脂帯状体31からなり、第二樹脂層7Aは、複数の第二樹脂帯状体71からなる。このような構成であれば、第一樹脂帯状体31及び第二樹脂帯状体71のない部分では空気が通るので、通気性が良好な配線シート100Aが得られる。
また、図4及び図5に示すように、配線シート100の平面視において、第一導電性線状体21と第二樹脂帯状体71とが重なっており、第二導電性線状体61と第一樹脂帯状体31とが重なっていることが好ましい。このような構成であれば、第一樹脂帯状体31により第二導電性線状体61を保護でき、第二樹脂帯状体71により第一導電性線状体21を保護できる。
第一樹脂帯状体31及び第二樹脂帯状体71は、接着剤をストライプ状に塗布することにより形成できる。ここで、接着剤として、硬化性のものを用いることが好ましい。このような第一樹脂帯状体31及び第二樹脂帯状体71により、第一導電性線状体21及び第二導電性線状体61を強固に固定できるので、配線の抵抗値をより安定化できる。
【0068】
本実施形態に係る配線シート100Aにおいては、JIS-L1096:2010に記載のフラジール試験において、空気量が、350cm/(cm・s)以上であることが好ましく、450cm/(cm・s)以上2000cm/(cm・s)以下であることがより好ましく、600cm/(cm・s)以上1000cm/(cm・s)以下であることが特に好ましい。
【0069】
(第二実施形態の作用効果)
本実施形態によれば、前記第一実施形態における作用効果(1)及び(2)と同様の作用効果、並びに、下記作用効果(3)を奏することができる。
(3)第一樹脂帯状体31及び第二樹脂帯状体71のない部分では空気が通るので、通気性が良好な配線シート100Aが得られる。
【0070】
[実施形態の変形]
本発明は前述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
例えば、前述の実施形態において、配線シート100は第一基材1及び第二基材5を備えているが、これに限定されない。例えば、第一基材1及び第二基材5を用いずに、代わりに、工程フィルムを用いて、配線シートを製造してもよい。このような場合、工程フィルムは、配線シートの製造後には剥離される。そして、第一疑似シート構造体2と、第一樹脂層3と、一対の電極4と、第二疑似シート構造体6と、第二樹脂層7とを備える配線シートが得られる。
【0071】
(配線シートの用途)
配線シート100は、フレキシブル性や均一な発熱という従来にない特徴を有することから、発熱体(シート状ヒーター)として用いることが好ましい。この場合、発熱体の用途としては、例えば、窓ガラス用のデフォッガー(曇り取り)、及びデフロスター(霜取り)等が挙げられる。近年では、電気自動車のバッテリーの温度コントロールにヒーターが使われており、薄いヒーターはラミネート型セルの個別の温度コントロールに好適である。また、発熱体としての利用以外にも、電気信号の配線のためのフラットケーブルとしても利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1,1A…第一基材、2…第一疑似シート構造体、21…第一導電性線状体、3,3A…第一樹脂層、31…第一樹脂帯状体、4…電極、5,5A…第二基材、6…第二疑似シート構造体、61…第二導電性線状体、7,7A…第二樹脂層、71…第二樹脂帯状体、100,100A…配線シート。
図1
図2
図3
図4
図5