(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】自動車用ウインドシールドモールと車体パネル
(51)【国際特許分類】
B60J 1/02 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
B60J1/02 111A
(21)【出願番号】P 2020202551
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-107616(JP,U)
【文献】特開2016-215977(JP,A)
【文献】実開昭61-090612(JP,U)
【文献】特開2009-149136(JP,A)
【文献】特開平09-117952(JP,A)
【文献】特開2004-322758(JP,A)
【文献】特開2004-066983(JP,A)
【文献】特開2003-226141(JP,A)
【文献】特開平10-258635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00-1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板厚徐変ウインドガラスの縁に装着される自動車用ウインドシールドモールであって、
車体パネルの窓枠開口部に固定された前記板厚徐変ウインドガラスの縁と前記窓枠開口部の壁との間の隙間に挿入される本体部と、前記板厚徐変ウインドガラスの縁に嵌合する嵌合溝とを有し、
前記嵌合溝は、前記本体部の一側側部に設けられ、前記本体部の一側側部の先端から突出し、自動車用ウインドシールドモールの最端部を形成する頭部と、該頭部から離れて前記本体部の一側側部から突出したガラス内面支持部との間で構成され、
前記嵌合溝の幅は、前記頭部の基部側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最大値と同じかそれより大きく、前記頭部の先端側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最小値より小さくなって
おり、
前記本体部には、前記頭部とは反対側の端部に前記窓枠開口部の周囲に当接する端部リップが形成され、前記嵌合溝とは反対側の側部に前記窓枠開口部の外周の壁に当接する側部リップが形成されていることを特徴とする自動車用ウインドシールドモール。
【請求項2】
前記本体部と前記側部リップの間には、空洞が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用ウインドシールドモール。
【請求項3】
板厚徐変ウインドガラスの縁に装着される自動車用ウインドシールドモールであって、
車体パネルの窓枠開口部に固定された前記板厚徐変ウインドガラスの縁と前記窓枠開口部の壁との間の隙間に挿入される本体部と、前記板厚徐変ウインドガラスの縁に嵌合する嵌合溝とを有し、
前記嵌合溝は、前記本体部の一側側部に設けられ、前記本体部の一側側部の先端から突出し、自動車用ウインドシールドモールの最端部を形成する頭部と、該頭部から離れて前記本体部の一側側部から突出したガラス内面支持部との間で構成され、
前記嵌合溝の幅は、前記頭部の基部側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最大値と同じかそれより大きく、前記頭部の先端側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最小値より小さくなっており、
前記頭部には基部側に頭部屈曲用溝が設けられていることを特徴とする自動車用ウインドシールドモール。
【請求項4】
板厚徐変ウインドガラスの縁に装着される自動車用ウインドシールドモールであって、
車体パネルの窓枠開口部に固定された前記板厚徐変ウインドガラスの縁と前記窓枠開口部の壁との間の隙間に挿入される本体部と、前記板厚徐変ウインドガラスの縁に嵌合する嵌合溝とを有し、
前記嵌合溝は、前記本体部の一側側部に設けられ、前記本体部の一側側部の先端から突出し、自動車用ウインドシールドモールの最端部を形成する頭部と、該頭部から離れて前記本体部の一側側部から突出したガラス内面支持部との間で構成され、
前記嵌合溝の幅は、前記頭部の基部側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最大値と同じかそれより大きく、前記頭部の先端側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最小値より小さくなっており、
前記本体部には、金属製の芯材が埋設されていることを特徴とする自動車用ウインドシールドモール。
【請求項5】
前記板厚徐変ウインドガラスと、前記板厚徐変ウインドガラスの縁に装着された請求項1から
4の何れか一項に記載の自動車用ウインドシールドモールとを備える車体パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウインドガラスの縁と車体パネルの窓枠開口部の外周の壁との間の隙間に挿入されてウインドガラスの縁に嵌合する自動車用ウインドシールドモールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車においては、
図4及び
図5に示すように、ウインドガラスGの縁G1と車体パネルPの窓枠開口部Fの外周の壁F1との隙間Sに自動車用ウインドシールドモール100が装着され、ウインドシールドモール100によって隙間Sを塞ぐことが行われている。符号108は金属製芯材、符号AはウインドガラスGの縁G1を窓枠開口部Fに固定する接着剤である。
【0003】
ウインドシールドモール100は、プラスチックあるいはゴム等の変形可能な材質を用いて押出成形により形成された一定断面形状を有し、ウインドガラスGの縁G1と窓枠開口部Fの壁F1との間に挿入される本体部101と、ウインドガラスGの縁G1に嵌合する嵌合溝107とを有する。嵌合溝107は、本体部101においてウインドガラスGの縁G1と対向する側となる一側側部に設けられ、本体部101の一側側部へ突出した頭部105と、ガラス内面支持部109との間で構成される。符号111は本体部101から嵌合溝107とは反対側へ突出形成されたリップであり、窓枠開口部Fの壁F1に当接して本体部101をウインドガラスGの縁G1へ押し付ける。
【0004】
近年、自動車の運転中に運転者の視線移動を少なくして安全性を高めるため、
図6に示すように、インストルメントパネルなどに設けられた表示装置121に表示される車両速度などの走行情報を、ウインドガラスGaの手前側に設けられたヘッドアップデイスプレイ装置125によって、ウインドガラスGaに投影して運転者D側へ反射させ、その反射した運転情報の虚像127を、運転者DがウインドガラスGaの前方位置に視認できるようにした自動車がある。
【0005】
走行情報などをウインドガラスGaで反射させる自動車にあっては、ウインドガラスGaの内面反射による像と外面反射による像との二重の像が運転者に視認されるのを防ぐため、
図7に示すような板厚徐変ウインドガラスGaが採用されている。
板厚徐変ウインドガラスGaは、自動車に取り付けられた状態における上側から下側へ向かって板厚tが小さくされ、上端で最大、下端で最小の板厚となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来のウインドシールドモールは、板厚徐変ウインドガラスの板厚変化を考慮したものではないため、板厚徐変ウインドガラスの板厚が小の部分では、板厚徐変ウインドガラスの縁にウインドシールドモールの嵌合溝が緩く嵌合し、一方、板厚徐変ウインドガラスの板厚が大の部分では、板厚徐変ウインドガラスの縁にウインドシールドモールの嵌合溝がきつく嵌合することになり、嵌合作業が難しかったり、嵌合状態が一定化しなかったりする問題がある。
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、板厚徐変ウインドガラスへの嵌合作業が容易になり、嵌合状態を一定化させることができる自動車用ウインドシールドモールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の手段は、板厚徐変ウインドガラスの縁に装着される自動車用ウインドシールドモールであって、車体パネルの窓枠開口部に固定された前記板厚徐変ウインドガラスの縁と前記窓枠開口部の壁との間の隙間に挿入される本体部と、前記板厚徐変ウインドガラスの縁に嵌合する嵌合溝とを有し、前記嵌合溝は、前記本体部の一側側部に設けられ、前記本体部の一側側部から突出した頭部と、該頭部から離れて前記本体部の一側側部から突出したガラス内面支持部との間で構成され、前記嵌合溝の幅は、前記頭部の基部側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最大値と同じかそれより大きく、前記頭部の先端側で前記板厚徐変ウインドガラスの板厚最小値より小さくなっていることを特徴とする。
第二の手段は、板厚徐変ウインドガラスと、前記板厚徐変ウインドガラスの縁に装着された前記第一の手段の自動車用ウインドシールドモールとを備える車体パネルである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウインドシールドモールの嵌合溝の幅が、頭部の基部側で板厚徐変ウインドガラスの板厚最大値と同じかそれより大きく、頭部の先端側で板厚徐変ウインドガラスの板厚最小値より小さくなっているため、板厚が変化する板厚徐変ウインドガラスの縁の何れの位置にも嵌合溝が対応することができ、嵌合作業が容易になると共に、良好な嵌合を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明における一実施形態のウインドシールドモールの斜視図及び特定位置での断面図である。
【
図2】
図1に示したウインドシールドモールの拡大断面図である。
【
図3】
図1に示したウインドシールドモールが装着された自動車の一部を示す斜視図及び特定位置での断面図である。
【
図4】従来のウインドシールドモールが装着された自動車の一部を示す斜視図である。
【
図5】
図4の5-5断面図であり、従来のウインドシールドモールを示す図である。
【
図6】ヘッドアップデイスプレイ装置の作用を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示すウインドシールドモール10は、
図3に示すように自動車の車体パネルPaの窓枠開口部Faに固定された板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1と窓枠開口部Faの外周の壁Fa1との間の隙間Saに挿入されて隙間Saを塞ぐものである。符号Aaは板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1を、窓枠開口部Faに固定する接着剤である。
【0013】
ウインドシールドモール10は、
図7に示した板厚徐変ウインドガラスGaの側部の縁に装着される側部用部分10a、10bと、前記板厚徐変ウインドガラスGaの上部の縁に装着される上部用部分10cで構成され、側部用部分10a、10bが上部用部分10cの両端に溶着等で接合されている。ウインドシールドモール10の側部用部分10a、10bと上部用部分10cは、押出成形された同一の断面形状からなり、プラスチックまたはゴムで形成されている。
【0014】
ウインドシールドモール10の各部について、
図2を用いて説明する。ウインドシールドモール10は、本体部11と嵌合溝41を有する。
【0015】
本体部11は、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1と窓枠開口部Faの外周の壁Fa1との間の隙間Saに挿入される部分である。本体部11には、金属製の芯材29が埋設されている。
【0016】
嵌合溝41は、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1が挿入されて嵌合する部分であり、本体部11において板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1と対向する一側側部12に設けられている。
【0017】
嵌合溝41は、本体部11の一側側部12から突出した頭部21と、該頭部21から離れて一側側部12から突出したガラス内面支持部31との間で構成されている。
【0018】
頭部21は、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の外面に当接する部分であり、本体部11において板厚徐変ウインドガラスのGaの外面側と対応する一端に基部側23が設けられ、先端側25が本体部11の一側側部12から突出するように形成されている。
本体部11の一側側部12からの頭部21の突出量は、ガラス内面側支持部31の突出量よりも大にされている。
【0019】
頭部21は、先端側25がガラス内面側支持部31側へ近づくように傾斜した状態で本体部11の一側側部12から突出して形成され、頭部21とガラス内面支持部31との間隔dが、頭部21の基部側23から先端側25へ向かって小さくされている。
頭部21の基部側23には、ガラス内面支持部31と対向する面に頭部屈曲用溝27が形成され、該頭部屈曲用溝27の存在によって、頭部21をガラス内面支持部31との間隔d(嵌合溝41の幅)が拡がる方向へ屈曲し易くされている。
【0020】
ガラス内面支持部31は、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の内面と当接して支持する部分であり、本体部11の一側側部12からの突出量が、頭部21の突出量よりも小に形成されている。
【0021】
頭部21とガラス内面支持部31との間隔dは、嵌合溝41の幅に相当する。以下において、符号dは、嵌合溝41の幅を示す符号としても使用する。
嵌合溝41の幅dは、頭部21の基部側23の幅d1が板厚徐変ウインドガラスGaの板厚最大値と同じかそれより大きくされ、頭部21の先端側25の幅d2が板厚徐変ウインドガラスGaの板厚最小値より小さくされている。
図2の例では、頭部屈曲用溝27との境界位置の幅d1が、板厚徐変ウインドガラスGaの板厚最大値と同じかそれより大きくされている。
【0022】
本体部11には、頭部21とは反対側の端部に窓枠開口部Faの周囲に当接する端部リップ35が形成され、また嵌合溝41とは反対側の側部に窓枠開口部Faの外周の壁Fa1に当接する側部リップ37が形成されている。
【0023】
ウインドシールドモール10の装着状態を
図3に示す。ウインドシールドモール10の装着は、車体パネルPaの窓枠開口部Faに固定された板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1と窓枠開口部Faの外周の壁Fa1との間の隙間Saに、ウインドシールドモール10の本体部11を、嵌合溝41が板厚徐変ウインドガラスGa側を向くようにして挿入して、嵌合溝41に板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1を挿入し、嵌合させることにより行う。
【0024】
その際、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の板厚は、板厚徐変ウインドガラスGaの下端から上端に向かって増大しているため、板厚徐変ウインドガラスGaの下部側の板厚小の位置では、3a-3a断面図のように、ウインドシールドモール10の嵌合溝41の幅が小になっている頭部21の先端側25で、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の外面と当接し、頭部21の先端側25とガラス内面支持部31とによって板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1を挟む。
【0025】
一方、板厚徐変ウインドガラスGaの上部側の板厚大の位置では、3b-3b断面図のように、ウインドシールドモール10の嵌合溝41の幅が小になっている頭部21の先端側25において、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の板厚に応じて頭部21が外方へ屈曲して嵌合溝41の幅が拡げられ、頭部21の先端側25から基部側23の部分に渡って板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の外面に当接し、頭部21の先端側25から基部側23の部分とガラス内面支持部31とによって板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1を挟む。
【0026】
ウインドシールドモール10の嵌合溝41の幅が、頭部21の基部側23で板厚徐変ウインドガラスGaの板厚最大値と同じかそれより大きくなっているため、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の厚みが大の部分であっても、嵌合溝41の奥までの挿入が容易になる。
【0027】
また、ウインドシールドモール10の嵌合溝41の幅が、頭部21の先端側25で板厚徐変ウインドガラスGaの板厚最小値より小さくなっているため、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の厚みが小の部分であっても、頭部21の先端側25が板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の外面に当接することになり、ウインドシールドモール10の嵌合溝41に板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1を正しく嵌合させることができる。
【0028】
さらに、ウインドシールドモール10の頭部21には基部側23に頭部屈曲用溝27が設けられているため、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1の板厚増加に応じて頭部21が屈曲し易く、板厚徐変ウインドガラスGaの縁Ga1をウインドシールドモール10の嵌合部41への挿入・嵌合が容易になる。
【0029】
前記のように、本発明によれば、板厚が変化する板厚徐変ウインドガラスの縁の何れの位置に対してもウインドシールドモールの嵌合溝を対応させることができ、板厚徐変ウインドガラスの縁への嵌合作業が容易になると共に、良好な嵌合を行うことができる。
【符号の説明】
【0030】
10 ウインドシールドモール
11 本体部
12 本体部の一側側部
21 頭部
23 頭部の基部側
25 頭部の先端側
27 頭部屈曲用溝
29 芯材
31 ガラス内面支持部
35 端部リップ
37 側部リップ
41 嵌合溝
d 溝幅及び頭部とガラス内面支持部との間隔
Fa 窓枠開口部
Fa1 窓枠開口部の壁
Ga 板厚徐変ウインドガラス
Ga1 板厚徐変ウインドガラスの縁
Sa 板厚徐変ウインドガラスの縁と窓枠開口部の壁との間の隙間
Pa 車体パネル