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特許7599329需要予測装置、需要予測方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】需要予測装置、需要予測方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20241206BHJP
【FI】
G06Q10/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020216237
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022101879
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100131152
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100181618
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 良平
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【弁理士】
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】中野 智晴
【審査官】田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-148999(JP,A)
【文献】特開2000-250888(JP,A)
【文献】特開2004-336890(JP,A)
【文献】特開2006-085646(JP,A)
【文献】特開平06-161989(JP,A)
【文献】特開2020-144690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要予測の対象となる時系列データである目的変数と、前記目的変数に基づく需要予測に用いる時系列データである説明変数と、を予測モデルに入力して需要予測を行う需要予測装置であって、
前記目的変数を取得し、需要予測に利用可能な前記説明変数の候補である説明変数候補データを生成するデータ取得生成部と、
ユーザからの需要予測結果を利用する業務の入力を受け付け、複数の前記予測モデルから、入力された需要予測結果を利用する業務に適した前記予測モデルを選定する予測モデル診断部と、
前記説明変数候補データから前記説明変数を選定し、前記予測モデル診断部で選定された前記予測モデルに、前記目的変数および選定した前記説明変数を入力し、需要予測を行う需要予測部と、
前記需要予測部の需要予測結果を示す需要予測結果データを可視化して出力する予測結果出力部と、
を備える需要予測装置。
【請求項2】
前記需要予測結果データのばらつきを演算する確率分布演算部をさらに備え、
前記予測結果出力部は、前記確率分布演算部の演算結果を用いて前記需要予測結果データを可視化して出力する、
請求項1に記載の需要予測装置。
【請求項3】
前記データ取得生成部は、社内統計データおよび社外統計データから欠損しているデータを取り除き、正規化して前記説明変数候補データを生成する、
請求項1または2に記載の需要予測装置。
【請求項4】
前記データ取得生成部は、前記目的変数の周期性の有無およびノイズの有無に基づいてデータ種別を判定し、
前記予測モデル診断部は、複数の前記予測モデルから、入力された需要予測結果を利用する業務と判定された前記目的変数のデータ種別の組み合わせに適した前記予測モデルを選定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の需要予測装置。
【請求項5】
前記需要予測部は、
前記目的変数の正規化を行い、前記説明変数候補データから、前記目的変数との相関が大きい順に一定数の前記説明変数を選定し、前記予測モデル診断部で選定された前記予測モデルに、正規化した前記目的変数および選定した一定数の前記説明変数を入力し、需要予測を行う、
請求項1から4のいずれか1項に記載の需要予測装置。
【請求項6】
需要予測の対象となる時系列データである目的変数と、前記目的変数に基づく需要予測に用いる時系列データである説明変数と、を予測モデルに入力して需要予測を行う需要予測装置であって、
ユーザからの需要予測結果を利用する業務の入力を受け付け、複数の前記予測モデルから、入力された需要予測結果を利用する業務に適した前記予測モデルを選定する予測モデル診断部と、
前記予測モデル診断部で選定された前記予測モデルに、前記目的変数および前記説明変数を入力し、需要予測を行う需要予測部と、
を備える需要予測装置。
【請求項7】
需要予測の対象となる時系列データである目的変数と、前記目的変数に基づく需要予測に用いる時系列データである説明変数と、を予測モデルに入力して需要予測を行う需要予測装置が実行する需要予測方法であって、
需要予測に利用可能な前記説明変数の候補である説明変数候補データを生成するデータ生成ステップと、
ユーザからの需要予測結果を利用する業務の入力を受け付け、複数の前記予測モデルから、入力された需要予測結果を利用する業務に適した前記予測モデルを選定する予測モデル診断ステップと、
前記説明変数候補データから前記説明変数を選定し、前記予測モデル診断ステップで選定された前記予測モデルに、前記目的変数および選定した前記説明変数を入力し、需要予測を行う需要予測ステップと、
前記需要予測ステップの需要予測結果を示す需要予測結果データを可視化して出力する予測結果出力ステップと、
を備える需要予測方法。
【請求項8】
コンピュータを、
需要予測の対象となる時系列データである目的変数を取得し、前記目的変数に基づく需要予測に用いる時系列データである説明変数の候補である説明変数候補データを生成するデータ取得生成部、
ユーザからの需要予測結果を利用する業務の入力を受け付け、複数の予測モデルから、入力された需要予測結果を利用する業務に適した前記予測モデルを選定する予測モデル診断部、
前記説明変数候補データから前記説明変数を選定し、前記予測モデル診断部で選定された前記予測モデルに、前記目的変数および選定した前記説明変数を入力し、需要予測を行う需要予測部、および、
前記需要予測部の需要予測結果を示す需要予測結果データを可視化して出力する予測結果出力部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、需要予測装置、需要予測方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習、統計的予測手法などを用いた製品、サービスなどの需要予測は、一般的に利用されるようになってきたものの、予測モデルの選定、予測モデルのパラメータ設定、需要予測に用いるデータの選定など、依然として人が行わなければならない作業は多い。また、時系列データを用いた需要予測では、影響する外乱が多岐にわたり、完全な予測をすることは難しい。通常、1つの予測モデルを作成する際は、極限まで需要予測の精度を高めるため、膨大なデータ、メモリ、プロセッサを利用して演算し、最適なパラメータを算出する。しかし、製品、サービスなどの需要は、技術革新、政治的出来事などにより容易に予測と異なる動きをするため、そのようなチューニングの負荷と比較して成果が見えづらい。
【0003】
これに対し、特許文献1に記載の予測モデル選択装置では、時系列データに評価区間を設け、評価区間を複数の予測モデルで需要予測をし、一番良い結果を出した予測モデルを採用することで、人および装置の負荷を軽減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-85646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、需要予測の結果は、部品手配、在庫管理などの他の業務に利用されるが、業務によってユーザが重視する予測値は異なる。例えば、業務が部品手配であれば、部品の外注先の受注可能量に制限があり一定数以上の部品を負荷分散して手配が必要な場合があるので、需要の最大値を把握したいという要求がある。例えば、業務が在庫管理であれば、棚残を最小限に抑えるため決められた期間の需要の下限を把握したい、あるいは、機会損失を最小限に抑えるため決められた期間の需要の上限を把握したいという要求がる。
【0006】
特許文献1に記載の技術では、算出した需要予測結果をどのような業務に利用するかまでは考慮されておらず、複数の予測モデルを、需要予測結果を利用する業務によって使い分けることはできない。
【0007】
本開示は、需要予測において、複数の予測モデルを、需要予測結果を利用する業務によって使い分けることを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る需要予測装置は、需要予測の対象となる時系列データである目的変数と、目的変数に基づく需要予測に用いる時系列データである説明変数と、を予測モデルに入力して需要予測を行う。需要予測装置は、データ取得生成部と、予測モデル診断部と、需要予測部と、予測結果出力部とを備える。データ取得生成部は、目的変数を取得し、需要予測に利用可能な説明変数の候補である説明変数候補データを生成する。予測モデル診断部は、ユーザからの需要予測結果を利用する業務の入力を受け付け、複数の予測モデルから、入力された需要予測結果を利用する業務に適した予測モデルを選定する。需要予測部は、説明変数候補データから説明変数を選定し、予測モデル診断部で選定された予測モデルに、目的変数および選定した説明変数を入力し、需要予測を行う。予測結果出力部は、需要予測部の需要予測結果を示す需要予測結果データを可視化して出力する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、需要予測において、複数の予測モデルから、需要予測結果を利用する業務に適した予測モデルを選定することで、複数の予測モデルを、需要予測結果を利用する業務によって使い分けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る需要予測システムの構成例を示す図
図2】実施の形態に係る目的変数の例を示す図
図3】実施の形態に係る社内統計データおよび社外統計データのフォーマットの例を示す図
図4】実施の形態に係る予測モデル診断データの例を示す図
図5】実施の形態に係るずらし月選定用データの例を示す図
図6】実施の形態に係るずらし月選定用データから作成された相関行列の例を示す図
図7】実施の形態に係る説明変数選定用データの例を示す図
図8】実施の形態に係る説明変数月選定用データから作成された相関行列の例を示す図
図9】実施の形態に係る予測データセットの例を示す図
図10】実施の形態に係る需要予測結果データの例を示す図
図11】実施の形態に係る確率分布演算データの例を示す図
図12】実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第1のパターンの例を示す図
図13】実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第2のパターンの例を示す図
図14】実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第3のパターンの例を示す図
図15】実施の形態に係るデータ判定生成処理を示すフローチャート
図16】実施の形態に係る予測モデル診断処理を示すフローチャート
図17】実施の形態に係る需要予測処理を示すフローチャート
図18】実施の形態に係る確率分布演算処理を示すフローチャート
図19】実施の形態に係る予測結果出力処理を示すフローチャート
図20】実施の形態に係る需要予測装置のハードウェア構成の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本実施の形態に係る需要予測装置、需要予測方法およびプログラムについて図面を参照して詳細に説明する。なお、図中同一または相当する部分には同じ符号を付す。以下の実施の形態では、需要予測の評価サイクルを「月」として、製品の需要を予測する需要予測装置の例について説明する。以下、需要予測の対象である製品の需要の時系列データを目的変数、目的変数に基づく需要予測に用いる時系列データを説明変数という。需要予測装置は、ある区間の目的変数および説明変数を入力して、その後の決められた区間の製品の需要を予測する。
【0012】
実施の形態に係る需要予測システム100の構成について、図1を用いて説明する。図1に示すように、需要予測システム100は、製品の需要予測を行う需要予測装置1と各種データベースが構成された記憶装置2とを備える。以下、データベースをDBと略して記載する。記憶装置2は、社内統計データを記憶する社内統計DB21、社外統計データを記憶する社外統計DB22、説明変数候補データを記憶する説明変数候補DB23、予測モデル診断データを記憶する予測モデル診断DB24、および、評価用パラメータを記憶する評価用パラメータDB25を備える。また、記憶装置2は、需要予測結果データを記憶する需要予測結果DB26、ずらし月選定用データを記憶するずらし月選定用DB27、説明変数選定用データを記憶する説明変数選定用DB28、予測データセットを記憶する予測データセットDB29、および、確率分布演算データを記憶する確率分布演算DB30を備える。
【0013】
社内統計データおよび社外統計データはそれぞれ、会社内および会社外で統計された製品の需要変動に影響しうる時系列データである。ここでいう会社とは、需要予測の対象である製品を提供する事業者であって、需要予測を行う主体のことである。製品の需要変動に影響しうる時系列データとは、例えば、製品の在庫、注残、消費者の動向などの時系列データである。社内統計データは、例えば会社内のシステム、データベースなどから予め入手し、社内統計DB21に記憶しておくものとする。社外統計データは、例えば外部の集計企業から予め入手し、社外統計DB22に記憶しておくものとする。説明変数候補データは、社内統計データおよび社外統計データに基づいて生成された、需要予測に利用可能な説明変数の候補である。予測モデル診断データは、製品の需要予測結果を利用する業務と目的変数のデータ種別の組み合わせに適した予測モデルを示すデータである。目的変数のデータ種別の詳細については、後述する。評価用パラメータは、各種予測モデルで用いる評価用のパラメータである。評価用パラメータは、例えば、機械学習アルゴリズムの挙動を設定するハイパーパラメータである。
【0014】
需要予測結果データは、需要予測結果を示す時系列データである。ずらし月選定用データは、目的関数との相関が最大となるずらし月を選定するために、ずらし月を1か月ずつ一定の回数増やして、ずらし月の分ずらした説明変数である。説明変数選定用データは、目的変数と共に予測モデルに入力する説明変数を選定するために、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらした説明変数である。予測データセットは、目的変数と説明変数との組み合わせを予測モデルに入力できるフォーマットにしたデータである。確率分布演算データは、需要予測結果データのばらつきを示すデータである。
【0015】
需要予測装置1は、目的変数のデータ種別を判定し、説明変数候補データを生成するデータ取得生成部11と、需要予測結果を利用する業務に適した予測モデルを選定する予測モデル診断部12と、予測モデル診断部12で選定された予測モデルを用いて需要予測を行う需要予測部13と、需要予測結果データのばらつきを演算する確率分布演算部14と、確率分布演算部14の演算結果を用いて需要予測結果データを可視化して出力する予測結果出力部15とを備える。
【0016】
データ取得生成部11は、目的変数を取得する。目的変数は、例えば、データ取得生成部11が外部の装置またはシステムから取得してもよいし、ユーザがデータ取得生成部11に直接入力してもよい。図2に目的変数の例を示す。図2に示すように、目的変数は、年月と値とで構成された時系列データである。
【0017】
図1に戻り、データ取得生成部11は、まず取得した目的変数のデータ種別を判定する。時系列データを用いた需要予測には、「目的変数のデータの特徴によって各予測モデルが特徴的な動きをとる」および「需要予測の仕方によって各予測モデルの精度が異なる」という傾向がある。これらの傾向から、本実施の形態では、目的変数に「周期性があるか否か」および「ノイズがある否か」を判定し、周期性およびノイズのある、なしを組み合わせた4パターンのデータ種別1~4を設ける。
【0018】
以下、データ取得生成部11による目的変数のデータ種別の判定方法の詳細なロジックを説明する。このロジックでは、目的変数の原系列を式1に示す加法型モデルを用いて分解する。Oは目的変数の原系列、TCはトレンド成分、Sは季節成分、Iはノイズ成分を示す。
=TC+S+I ・・・式1
【0019】
データ取得生成部11は、目的変数の周期性の判定を行う。周期性は、時系列データである目的変数に対して1つ前の値から次の値を引く1階差分を取り、その自己相関を算出して判定する。この時、例えば1~5か月周期といった短い周期が算出されることを除外する場合は、最低周期を6か月と設定する。データ取得生成部11は、最低周期以上ずらした自己相関の最大値が閾値以上であれば、自己相関が最大値となったずらし月を目的変数の周期とし、周期性があると判定する。データ取得生成部11は、最低周期以上ずらした自己相関の最大値が閾値に達しない場合は、目的変数は周期性がないと判定する。周期性の有無を判定する閾値は予め決められているが、ユーザによって変更可能にしてもよい。
【0020】
続いて、データ取得生成部11は、トレンド算出およびノイズ算出を行う。データ取得生成部11は、目的変数に周期性がある場合、例えば目的変数の各年のi月の平均値Yと全体の平均Yとを求め、Y-Yをトレンド成分として算出する。目的変数に周期性がない場合は、決められた期間(例えば12か月)の移動平均をトレンド成分とみなす。データ取得生成部11は、目的変数に周期性がある場合は、その周期で繰り返される季節成分Sが存在するので、目的変数の原系列Oから季節成分Sとトレンド成分TCとを減算してノイズ成分I を算出する。目的変数に周期性がない場合は、季節成分Sが存在しないので、目的変数の原系列Oからトレンド成分TCのみを減算してノイズ成分Iを算出する。なお、目的変数の原系列Oから季節成分Sを減算する方法は、既存の季節調整の手法を用いる。
【0021】
データ取得生成部11は、直近3年間のノイズ成分Iの絶対値が1を超えている場合は、その時系列データにノイズがあると判定する。データ取得生成部11は、直近3年間のノイズ成分Iの絶対値が1を超えていない場合は、その時系列データにノイズがないと判定する。
【0022】
データ取得生成部11は、時系列データに周期性があり、ノイズがあると判定した場合、データ種別1と判定し、時系列データに周期性があり、ノイズがないと判定した場合、データ種別2と判定する。データ取得生成部11は、時系列データに周期性がなく、ノイズがあると判定した場合、データ種別3と判定し、時系列データに周期性がなく、ノイズがないと判定した場合、データ種別4と判定する。
【0023】
続いて、データ取得生成部11は、説明変数候補データを生成する。データ取得生成部11は、まず、記憶装置2の社内統計DB21および社外統計DB22から社内統計データおよび社外統計データを読み出す。図3に、社内統計データおよび社外統計データのフォーマットの例を示す。社内統計データおよび社外統計データは、データ情報部分Aとデータ詳細部分Bとを含む。図3の例では、データ情報部分Aには、データ名、国、都市、分類、単位などのデータが格納されている。データ詳細部分Bには、時系列の数値が格納されている。
【0024】
図1に戻り、データ取得生成部11は、社内統計DB21および社外統計DB22から読み出した社内統計データおよび社外統計データから欠損しているデータを取り除き、需要予測に利用できるデータのみを抽出する。データを取り除くルールは予め設定されており、例えば中国では春節(1月~2月)のデータが欠損している場合が多いので、国名が中国の1月~2月のデータを取り除く。また、5G回線の利用状況といった過去の大部分が欠損しているデータも需要予測する上では不要となることが多いので、取り除く。以下、抽出した社内統計データおよび社外統計データを抽出データという。
【0025】
データ取得生成部11は、抽出データの正規化を行う。正規化は、例えばある抽出データの集合をX、平均をμ、標準偏差をσとした場合、(X-μ)/σを算出してもよいし、Xの最大値をXMAX、最小値をXMINとしたときの(X-XMIN)/(XMAX-XMIN)を算出してもよい。データ取得生成部11は、正規化した抽出データを説明変数候補データとして記憶装置2に送信し、説明変数候補DB23に記憶させる。正規化した抽出データは、需要予測に利用可能な説明変数の候補である。
【0026】
図1に戻り、予測モデル診断部12は、需要予測に利用する予測モデルを選定する。予測モデル診断部12は、まず記憶装置2の予測モデル診断DB24から予測モデル診断データを読み出す。図4に、予測モデル診断データの例を示す。予測モデル診断データは、業務内容部分Cと予測モデル部分Dとを含む。
【0027】
業務内容部分Cには、需要予測結果を利用する業務および業務を行う場所のデータが格納されている。図4の例では、需要予測結果を利用する業務は、例えば「年度計画作成」、「人員計画作成」などである。業務を行う場所は、例えば「販社」、「工場」などである。業務内容部分Cには、少なくとも需要予測結果を利用する業務のデータが格納されていればよい。業務内容部分Cは、例えば、経営状況、製品の売れ行きといった状況を示すデータを含んでもよい。
【0028】
予測モデル部分Dには、業務で用いる上で重視する予測値、目的変数のデータ種別、および、重視する予測値に適した予測モデル1~3が格納されている。業務で用いる上で重視する予測値は、予め設定されている。例えば業務が年度計画作成である場合、各月の細かなばらつきはあまり重視されず、大きいメッシュの年間の総合計が重視される。また、重視する予測値に適した予測モデルは、例えば予めシミュレーション、試験などを行って、データ種別毎に重視する予測値を算出するのに適した予測モデルを選定して格納しておく。例えば、重視する予測値が需要の最大値であれば、すべての予測モデルの中で、シミュレーション、試験などで予測した決められた期間の需要の最大値が最も大きかった予測モデルから順に、予測した決められた期間の需要の最大値が大きい予測モデルを選定する。図中、予測モデルは「~」と記載しているが、予測モデルには、例えば、ニューラルネットワーク、XG-Boost、サポートベクターマシンなどがある。重視する予測値に適した予測モデルは、3つに限らず少なくとも1つあればよい。
【0029】
業務内容部分Cに状況を示すデータを含む場合には、予測モデル部分Dには、その状況下の業務で用いる上で重視する予測値が格納される。例えば、経営状況が芳しくない状態での在庫管理では、棚残を最小限に抑えるため需要の下限の予測値を重視する。製品の売れ行きが好調であるときの在庫管理では、機会損失を最小限に抑えるため需要の上限の予測値を重視する。
【0030】
図1に戻り、予測モデル診断部12は、予測モデル診断データに含まれる業務一覧を選択可能に表示する業務選定画面を出力する。ユーザは、業務選定画面に表示された業務一覧から需要予測結果を利用する業務を、インターフェースを介して選択し、入力する。業務内容部分Cに状況を示すデータを含む場合には、業務選定画面は、予測モデル診断データに含まれる業務一覧と状況とを選択可能に表示する。予測モデル診断部12は、ユーザによって入力された業務、および、目的変数のデータ種別をキーに、予測モデル診断データを参照して使用する予測モデルを選定する。予測モデル診断部12は、使用する予測モデルを一時記憶領域に記憶する。
【0031】
業務内容部分Cに状況を示すデータを含む場合には、予測モデル診断部12は、ユーザによって入力された業務および状況と、目的変数のデータ種別とをキーに、予測モデル診断データを参照して使用する予測モデルを選定する。
【0032】
需要予測部13は、まず目的変数の正規化を行う。需要予測部13は、例えば、データ取得生成部11が説明変数候補データを生成する際に実行した抽出データの正規化と同様の手法を用いて目的変数を正規化する。続いて、需要予測部13は、説明変数の選定を行う。説明変数を選定する理由は、多すぎる説明変数を学習することによる過学習を防ぐためである。
【0033】
ここで、相関係数を尺度とした説明変数の選定方法の例について、説明する。需要予測部13は、説明変数候補DB23が記憶する説明変数候補データから1つずつ説明変数を読み出す。例えば、kか月先を予測する場合、需要予測部13は、予測したい月から遡ってkか月以上前のデータを利用する必要がある。このため、需要予測部13は、まず説明変数をkか月分前にずらし、記憶装置2のずらし月選定用DB27が記憶するずらし月選定用データに格納する。需要予測部13は、ずらし月を1か月ずつ増やして、この処理を一定回数繰り返す。ずらし月を1か月ずつ増やして一定回数繰り返すのは、前述の通りkか月先を予測したい場合に、kか月以上前、つまりk+nか月前のデータを利用してもよいためである(nは正の整数)。
【0034】
図5に、ずらし月選定用データの例を示す。図5の例では、需要予測部13は、kか月分前からずらし月を1か月ずつ増やして説明変数をずらす処理を12回繰り返している。ずらし月選定用データは、目的変数部分Eと説明変数部分Fとを含む。目的変数部分Eには、正規化した目的変数の年月および目的変数の値が格納されている。説明変数部分Fには、説明変数をkか月分前にずらした値からkか月+12か月分前にずらした値までが格納されている。
【0035】
図1に戻り、需要予測部13は、kか月分前からずらし月を増やして説明変数をずらす処理を一定回数(図5の例では12回)繰り返した後に、目的変数と1つの説明変数との相関係数をそれぞれ算出し、相関行列を作成する。相関行列で算出する相関係数は例えばピアソンの積率相関係数とする。図6に、ずらし月選定用データから作成された相関行列の例を示す。相関行列の中で、目的変数と目的変数との相関係数は確実に1となるので目的変数と目的変数との相関係数を除いて最大の相関係数を持つ説明変数のずらし月が、目的関数との相関が最大となるずらし月である。
【0036】
需要予測部13は、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらしたすべての説明変数を説明変数選定用DB28が記憶する説明変数選定用データに格納する。図7に説明変数選定用データの例を示す。説明変数選定用データは、目的変数部分Gと説明変数部分Hとを含む。目的変数部分Gには、ずらし月選定用データと同様に正規化した目的変数の年月および目的変数の値が格納されている。説明変数部分Hには、説明変数1からNのそれぞれを、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらした値が格納されている。ずらし月選定用DB27が1つの目的変数に対し、1つの説明変数の月をずらしたデータが格納されるデータベースであったのに対し、説明変数選定用DB28は、1つの目的変数に対し、複数の説明変数の、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらしたデータが格納される。
【0037】
図1に戻り、需要予測部13は、目的変数とすべての説明変数との相関係数をそれぞれ算出し、相関行列を作成する。相関行列で算出する相関は、目的変数と1つの説明変数に対する相関行列の作成と同様に、例えばピアソンの積率相関係数を用いる。図8に、説明変数月選定用データから作成された相関行列の例を示す。相関行列の中で、目的変数と目的変数との相関係数は確実に1となるので、需要予測部13は、目的変数と目的変数との相関係数を除いた、目的変数との相関係数の最大値から相関係数が大きい順に一定数の説明変数を選定し、記憶装置2の予測データセットDB29が記憶する予測データセットに格納する。
【0038】
図9に、予測データセットの例を示す。予測データセットは、目的変数部分Iと説明変数部分Jとを含む。目的変数部分Iには、ずらし月選定用データおよび説明変数選定用データと同様に正規化した目的変数の年月および目的変数の値が格納されている。説明変数部分Jには、相関係数の最大値から相関係数が大きい順に選定された一定数の説明変数の、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらしたデータが格納されている。図9に示す予測データセットのフォーマットは、予測モデルに入力できるフォーマットである。ここまでピアソンの積率相関係数を用いて説明変数を選定する方法について説明したが、説明変数を選定する方法はこれに限らない。例えばDTW(Dynamic Time Warping)に代表されるデータ同士の距離を測定する手法を用いて、目的変数との距離が短い順に一定数の説明変数を選定してもよい。
【0039】
図1に戻り、需要予測部13は、記憶装置2の予測データセットDB29から、予測データセットを読み出す。需要予測部13は、予測モデル診断部12が一時記憶領域に記憶した予測モデルの評価用パラメータを、記憶装置2の評価用パラメータDB25から読み出す。各予測モデルの評価用パラメータは評価用パラメータDB25に予め記憶されている。需要予測部13は、予測モデル診断部12が一時記憶領域に記憶した予測モデルに予測データセットを入力として与え、評価用パラメータを用いて決められた期間の需要予測を行う。機械学習に代表されるseed値を設定する予測モデルの場合、需要予測部13は、seed値を変更し、複数回(例えば1000回)予測する。需要予測部13は、すべての需要予測結果に対して、正規化された値を元の値に戻す処理を行う。需要予測部13は、正規化された値を元の値に戻した需要予測結果を示す需要予測結果データを記憶装置2の需要予測結果DB26に格納する。
【0040】
図10に、需要予測結果データの例を示す。需要予測結果データは、予測手法部分Lと予測結果部分Mとを含む。予測手法部分Lには、使用した予測モデルおよび設定したseed値が格納されている。予測結果部分Mには、需要予測結果の正規化された値を元の値に戻したデータが格納されている。
【0041】
図1に戻り、需要予測部13が、seed値を変更し、複数回(例えば1000回)予測した場合、需要予測結果はある程度のばらつきを持つ。確率分布演算部14は、需要予測結果データのばらつきを数値化する。ここでは、ばらつきを数値化する統計値として、最大値、第一四分位数、第二四分位数、第三四分位数および最小値を用いる。ばらつきを数値化する統計値は、需要予測結果データのばらつきをどの程度可視化するかによって決めればよい。具体的には、確率分布演算部14は、記憶装置2の需要予測結果DB26が記憶する需要予測結果データのうち、1つの予測モデルの着目する月の異なるseed値の需要予測結果データを読み出し、その最大値、第一四分位数、第二四分位数、第三四分位数および最小値を算出する。確率分布演算部14は、すべての予測モデルのすべての年月についてこの処理を繰り返し、演算結果である最大値、第一四分位数、第二四分位数、第三四分位数および最小値を示す確率分布演算データを確率分布演算DB30に格納する。
【0042】
図11に、確率分布演算データの例を示す。確率分布演算データは、予測モデル毎に、確率分布演算部14が算出した各年月の最大値、第一四分位数、第二四分位数、第三四分位数および最小値のデータを有する。
【0043】
図1に戻り、予測結果出力部15は、記憶装置2の確率分布演算DB30が記憶する確率分布演算データを読み出し、確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化する。例えば、予測結果出力部15は、確率分布演算データが示す値をグラフで表示する。本実施の形態では、需要予測結果を利用する業務に役立つ情報を提供するという観点から、予測結果出力部15が表示するグラフとして、以下の3パターンの例を採用する。
【0044】
図12に、実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第1のパターンの例を示す。第1のパターンのグラフでは、すべての予測モデル(図12の例では3種類)に対し、確率分布演算データが示す第二四分位数=中央値を線グラフで表している。
【0045】
図13に、実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第2のパターンの例を示す。第2のパターンのグラフでは、すべての予測モデル(図13の例では3種類)に対し、第二四分位数=中央値の線グラフに加え、確率分布演算データが示す最大値と最小値との間の領域、あるいは、第一四分位数と第三四分位数との間の領域を着色してグラフ化し、需要がとりうる上限と下限を表示するものである。最大値および最小値のグラフを表示するか、第一四分位数および第三四分位数のグラフを表示するかは、ユーザがどの程度のリスクを把握したいかによるため、ユーザが表示を変更できるものとする。
【0046】
図14に、実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第3のパターンの例を示す。第3のパターンのグラフは、すべての予測モデル(図14の例では3種類)に対し、複合的な分布を表示するものである。第3のパターンのグラフは、第2のパターンのグラフに加え、ある年月のデータを抽出して1つの分布で閲覧可能である。閲覧可能な分布は、例えば、各予測モデルのばらつきが正規分布を成すものと仮定し、複数回(例えば1000回)の予測データの平均および標準偏差を算出し、取りうる値を確率分布として表現したものである。なお、確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化したグラフは、予測結果出力部15が画面表示してユーザに提示してもよいし、ユーザが使用する端末に送信して表示させてもよい。
【0047】
ここで、需要予測装置1が実行する処理の流れについて、図15図19を用いて説明する。図15に示すデータ判定生成処理は、需要予測装置1のデータ取得生成部11が目的変数を取得したときに開始する。データ取得生成部11は、入力された目的変数に周期性があるか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、データ取得生成部11は、最低周期以上ずらした自己相関の最大値が閾値以上であれば、自己相関が最大値となったずらし月を目的変数の周期とし、周期性があると判定する。データ取得生成部11は、最低周期以上ずらした自己相関の最大値が閾値に達しない場合は、目的変数は周期性がないと判定する。
【0048】
目的変数に周期性があると判定した場合(ステップS11;YES)、データ取得生成部11は、目的変数にノイズがあるか否かを判定する(ステップS12)。具体的には、データ取得生成部11は、例えば目的変数の各年のi月の平均値 と全体の平均とを求め、 をトレンド成分として算出する。データ取得生成部11は、時系列データに周期性がある場合は、目的変数の原系列から季節成分とトレンド成分とを減算してノイズ成分を算出する。データ取得生成部11は、直近3年間のノイズ成分の絶対値が1を超えている場合は、その時系列データにノイズがあると判定する。データ取得生成部11は、直近3年間のノイズ成分の絶対値が1を超えていない場合は、その時系列データにノイズがないと判定する。
【0049】
目的変数にノイズがあると判定した場合(ステップS12;YES)、データ取得生成部11は、目的変数のデータ種別をデータ種別1と判定する(ステップS13)。目的変数にノイズがないと判定した場合(ステップS12;NO)、データ取得生成部11は、目的変数のデータ種別をデータ種別2と判定する(ステップS14)。
【0050】
一方、目的変数に周期性がないと判定した場合(ステップS11;NO)、データ取得生成部11は、目的変数にノイズがあるか否かを判定する(ステップS15)。具体的には、データ取得生成部11は、決められた期間(例えば12か月)の移動平均をトレンド成分とみなす。データ取得生成部11は、時系列データに周期性がない場合は、目的変数の原系列からトレンド成分のみを減算してノイズ成分を算出する。データ取得生成部11は、直近3年間のノイズ成分の絶対値が1を超えている場合は、その時系列データにノイズがあると判定する。データ取得生成部11は、直近3年間のノイズ成分の絶対値が1を超えていない場合は、その時系列データにノイズがないと判定する。
【0051】
目的変数にノイズがあると判定した場合(ステップS15;YES)、データ取得生成部11は、目的変数のデータ種別をデータ種別3と判定する(ステップS16)。目的変数にノイズがないと判定した場合(ステップS15;NO)、データ取得生成部11は、目的変数のデータ種別をデータ種別4と判定する(ステップS17)。
【0052】
続いて、データ取得生成部11は、記憶装置2の社内統計DB21および社外統計DB22から社内統計データおよび社外統計データを読み出す(ステップS18)。図3に示すように、社内統計データおよび社外統計データは、データ情報部分Aとデータ詳細部分Bとを含む。図3の例では、データ情報部分Aには、データ名、国、都市、分類、単位などのデータが格納されている。データ詳細部分Bには、時系列の数値が格納されている。
【0053】
図15に戻り、データ取得生成部11は、社内統計DB21および社外統計DB22から読み出した社内統計データおよび社外統計データから欠損しているデータを取り除き、需要予測に利用できるデータのみを抽出する(ステップS19)。データを取り除くルールは予め設定されている。
【0054】
データ取得生成部11は、抽出データの正規化を行う(ステップS20)。正規化は、例えばある抽出データの集合をX、平均をμ、標準偏差をσとした場合、(X-μ)/σを算出してもよいし、Xの最大値をXMAX、最小値をXMINとしたときの(X-XMIN)/(XMAX-XMIN)を算出してもよい。データ取得生成部11は、正規化した抽出データを説明変数候補データとして記憶装置2の説明変数候補DB23に格納し(ステップS21)、処理を終了する。正規化した抽出データは、需要予測に利用可能な説明変数の候補である。ステップS18~ステップS21は、データ生成ステップの例である。
【0055】
図16に示す予測モデル診断処理は、データ取得生成部11が説明変数候補データを記憶装置2に送信すると開始する。予測モデル診断部12は、記憶装置2の予測モデル診断DB24から予測モデル診断データを読み出す(ステップS31)。図4に示すように、予測モデル診断データは、業務内容部分Cと予測モデル部分Dとを含む。図4の例では、業務内容部分Cには、「年度計画作成」、「人員計画作成」などの需要予測結果を利用する業務と、「販社」、「工場」などの業務を行う場所のデータとが格納されている。予測モデル部分Dには、業務で用いる上で重視する予測値、目的変数のデータ種別、および、重視する予測値に適した予測モデル1~3が格納されている。
【0056】
図16に戻り、予測モデル診断部12は、予測モデル診断データに含まれる業務一覧を選択可能に表示する業務選定画面を出力する(ステップS32)。予測モデル診断部12は、ユーザによって需要予測結果を利用する業務が選択され、入力されたか否かを判定する(ステップS33)。予測モデル診断部12は、ユーザによって需要予測結果を利用する業務が入力されない場合(ステップS33;NO)、ステップS33を繰り返して入力を待機する。予測モデル診断部12は、ユーザによって需要予測結果を利用する業務が入力された場合(ステップS33;YES)、入力された需要予測結果を利用する業務および目的変数のデータ種別をキーに、予測モデル診断データを参照して使用する予測モデルを選定する(ステップS34)。予測モデル診断部12は、使用する予測モデルを一時記憶領域に記憶し(ステップS35)、処理を終了する。ステップS31~ステップS35は、予測モデル診断ステップの例である。
【0057】
図17に示す需要予測処理は、予測モデル診断部12が、使用する予測モデルを一時記憶領域に記憶すると開始する。需要予測部13は、目的変数の正規化を行う(ステップS41)。需要予測部13は、例えば、データ取得生成部11がデータ判定生成処理のステップS20で実行した正規化と同様の手法を用いて目的変数を正規化する。
【0058】
続いて、需要予測部13は、説明変数候補DB23が記憶する説明変数候補データから1つずつ説明変数を読み出す(ステップS42)。kか月先を予測する場合、需要予測部13は、予測したい月から遡ってkか月以上前のデータを利用する必要がある。このため、需要予測部13は、まず読み出した説明変数をkか月分前にずらし(ステップS43)、記憶装置2のずらし月選定用DB27が記憶するずらし月選定用データに格納する(ステップS44)。需要予測部13は、ステップS43およびステップS44を一定回数繰り返したか否かを判定する(ステップS45)。一定回数繰り返していない場合(ステップS45;NO)、需要予測部13は、ずらし月を1か月ずつ増やして(ステップS46)、ステップS43およびステップS44を繰り返す。一定回数繰り返すのは、kか月先を予測したい場合に、kか月以上前、つまりk+nか月前のデータを利用してもよいためである(nは正の整数)。
【0059】
図5に、ずらし月選定用データの例を示す。図5の例では、需要予測部13は、kか月分前からずらし月を1か月ずつ増やして説明変数をずらす処理を12回繰り返している。ずらし月選定用データは、目的変数部分Eと説明変数部分Fとを含む。目的変数部分Eには、目的変数の年月および目的変数の値が格納されている。説明変数部分Fには、説明変数をkか月分前にずらした値からkか月+12か月分前にずらした値までが格納されている。
【0060】
図17に戻り、一定回数繰り返した場合(ステップS45;YES)、需要予測部13は、目的変数と1つの説明変数との相関係数をそれぞれ算出し、目的変数と1つの説明変数との相関行列を作成する(ステップS47)。相関行列で算出する相関係数は例えばピアソンの積率相関係数とする。需要予測部13は、目的関数との相関が最大となるずらし月を選定する(ステップS48)。図6に、ずらし月選定用データから作成された相関行列の例を示す。相関行列の中で、目的変数と目的変数との相関係数は確実に1となるので目的変数と目的変数との相関係数を除いて最大の相関係数を持つ説明変数のずらし月が、目的関数との相関が最大となるずらし月である。
【0061】
図17に戻り、需要予測部13は、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらしたすべての説明変数を説明変数選定用DB28が記憶する説明変数選定用データに格納する(ステップS49)。図7に説明変数選定用データの例を示す。説明変数選定用データは、目的変数部分Gと説明変数部分Hとを含む。目的変数部分Gには、ずらし月選定用データと同様に目的変数の年月および目的変数の値が格納されている。説明変数部分Hには、説明変数1からNのそれぞれを、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらした値が格納されている。
【0062】
図17に戻り、需要予測部13は、説明変数候補データに含まれるすべての説明変数について、ステップS43~ステップS49の処理を行ったか否かを判定する(ステップS50)。需要予測部13は、すべての説明変数について処理を行っていない場合(ステップS50;NO)、ステップS43に戻り、ステップS43~ステップS49の処理を繰り返す。すべての説明変数について処理を行った場合(ステップS50;YES)、需要予測部13は、目的変数とすべての説明変数との相関係数をそれぞれ算出し、目的変数とすべての説明変数との相関行列を作成する(ステップS51)。相関行列で算出する相関は、ステップS47と同様に、例えばピアソンの積率相関係数を用いる。図8に、説明変数月選定用データから作成された相関行列の例を示す。
【0063】
図17に戻り、相関行列の中で、目的変数と目的変数との相関係数は確実に1となるので、需要予測部13は、目的変数と目的変数との相関係数を除いた相関係数の最大値から相関係数が大きい順に一定数の説明変数を選定し(ステップ52)、記憶装置2の予測データセットDB29が記憶する予測データセットに格納する(ステップ53)。説明変数を選定する理由は、多すぎる説明変数を学習することによる過学習を防ぐためである。
【0064】
図9に、予測データセットの例を示す。予測データセットは、目的変数部分Iと説明変数部分Jとを含む。目的変数部分Iには、ずらし月選定用データおよび説明変数選定用データと同様に目的変数の年月および目的変数の値が格納されている。説明変数部分Jには、相関係数の最大値から相関係数が大きい順に選定された一定数の説明変数の、目的関数との相関が最大となるずらし月の分ずらしたデータが格納されている。
【0065】
図17に戻り、需要予測部13は、記憶装置2の予測データセットDB29から、予測データセットを読み出す。需要予測部13は、予測モデル診断部12が一時記憶領域に記憶した予測モデルの評価用パラメータを、記憶装置2の評価用パラメータDB25から読み出す(ステップS54)。各予測モデルの評価用パラメータは評価用パラメータDB25に予め記憶されている。需要予測部13は、予測モデル診断部12が一時記憶領域に記憶した予測モデルに予測データセットを入力として与え、評価用パラメータを用いて決められた期間の需要予測を実行する(ステップS55)。機械学習に代表されるseed値を設定する予測モデルの場合、需要予測部13は、seed値を変更し、複数回(例えば1000回)予測する。需要予測部13は、すべての需要予測結果に対して、正規化された値を元の値に戻す処理を行う。需要予測部13は、正規化された値を元の値に戻した需要予測結果を示す需要予測結果データを記憶装置2の需要予測結果DB26に格納し(ステップS56)、処理を終了する。ステップS41~ステップS56は、需要予測ステップの例である。
【0066】
図10に、需要予測結果データの例を示す。需要予測結果データは、予測手法部分Lと予測結果部分Mとを含む。予測手法部分Lには、使用した予測モデルおよび設定したseed値が格納されている。予測結果部分Mには、需要予測結果の正規化された値を元の値に戻したデータが格納されている。
【0067】
図18に示す確率分布演算処理は、需要予測部13が、需要予測結果データを記憶装置2の需要予測結果DB26に格納すると開始する。確率分布演算部14は、需要予測結果DB26が記憶する需要予測結果データのうち、1つの予測モデルの着目する月の異なるseed値の需要予測結果データを読み出し(ステップS61)、ばらつきを数値化する統計値を算出する(ステップS62)。例えば、ばらつきを数値化する統計値として、最大値、第一四分位数、第二四分位数、第三四分位数および最小値を用いる。ばらつきを数値化する統計値は、需要予測結果データのばらつきをどの程度可視化するかによって決めればよい。
【0068】
確率分布演算部14は、すべての予測モデルのすべての年月についてステップS61およびステップS62の処理を行ったか否かを判定する(ステップS63)。すべての予測モデルのすべての年月について処理を行っていない場合(ステップS63;NO)、ステップS61に戻り、ステップS61およびステップS62の処理を繰り返す。すべての説明変数について処理を行った場合(ステップS63;YES)、確率分布演算部14は、算出した統計値を示す確率分布演算データを確率分布演算DB30に格納し(ステップS64)、処理を終了する。
【0069】
図11に、確率分布演算データの例を示す。確率分布演算データは、予測モデル毎に、確率分布演算部14が算出した各年月の最大値、第一四分位数、第二四分位数、第三四分位数および最小値のデータを有する。
【0070】
図19に示す予測結果出力処理は、確率分布演算部14が、確率分布演算データを確率分布演算DB30に格納すると開始する。予測結果出力部15は、記憶装置2の確率分布演算DB30が記憶する確率分布演算データを読み出す(ステップS71)。予測結果出力部15は、読み出した確率分布演算データを用いて、需要予測結果データを可視化し(ステップS72)、処理を終了する。例えば、予測結果出力部15は、確率分布演算データが示す値をグラフで表示する。ステップS71およびステップS72は、予測結果出力ステップの例である。
【0071】
図12に、実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第1のパターンの例を示す。第1のパターンのグラフでは、すべての予測モデル(図12の例では3種類)に対し、確率分布演算データが示す第二四分位数=中央値を線グラフで表している。
【0072】
図13に、実施の形態に係る確率分布演算データを用いて、需要予測結果データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第2のパターンの例を示す。第2のパターンのグラフでは、すべての予測モデル(図13の例では3種類)に対し、第二四分位数=中央値の線グラフに加え、確率分布演算データが示す最大値と最小値との間の領域、あるいは、第一四分位数と第三四分位数との間の領域を着色してグラフ化し、需要がとりうる上限と下限を表示するものである。最大値および最小値のグラフを表示するか、第一四分位数および第三四分位数のグラフを表示するかは、ユーザが表示を変更可能にしてもよい。
【0073】
図14に、実施の形態に係る確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化するグラフの第3のパターンの例を示す。第3のパターンのグラフは、すべての予測モデル(図14の例では3種類)に対し、複合的な分布を表示するものである。第3のパターンのグラフは、第2のパターンのグラフに加え、ある年月のデータを抽出して1つの分布で閲覧可能である。閲覧可能な分布は、例えば、各予測モデルのばらつきが正規分布を成すものと仮定し、複数回(例えば1000回)の予測データの平均および標準偏差を算出し、取りうる値を確率分布として表現したものである。
【0074】
実施の形態に係る需要予測装置1によれば、需要予測において、複数の予測モデルから、需要予測結果を利用する業務に適した予測モデルを選定することで、複数の予測モデルを、需要予測結果を利用する業務によって使い分けることが可能になる。また、業務に適した予測モデルを用いた予測結果をユーザに提供することにより、需要予測結果を利用する業務における、人および装置の負荷を軽減すること、および、機会損失、棚残増加などの経営上のリスクを低減することが期待できる。
【0075】
需要予測装置1のハードウェア構成について図20を用いて説明する。図20に示すように、需要予測装置1は、一時記憶部101、記憶部102、計算部103、入力部104、送受信部105および表示部106を備える。一時記憶部101、記憶部102、入力部104、送受信部105および表示部106はいずれもBUSを介して計算部103に接続されている。
【0076】
計算部103は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。計算部103は、記憶部102に記憶されている制御プログラムに従って、データ取得生成部11、予測モデル診断部12、需要予測部13、確率分布演算部14および予測結果出力部15の処理を実行する。
【0077】
一時記憶部101は、例えばRAM(Random-Access Memory)である。一時記憶部101は、記憶部102に記憶されている制御プログラムをロードし、計算部103の作業領域として用いられる。
【0078】
記憶部102は、フラッシュメモリ、ハードディスク、DVD-RAM(Digital Versatile Disc - Random Access Memory)、DVD-RW(Digital Versatile Disc - ReWritable)などの不揮発性メモリである。記憶部102は、需要予測装置1の処理を計算部103に行わせるためのプログラムを予め記憶し、また、計算部103の指示に従って、このプログラムが記憶するデータを計算部103に供給し、計算部103から供給されたデータを記憶する。記憶装置2に構成される各種DBは、記憶部102に構成されてもよい。
【0079】
入力部104は、キーボード、ポインティングデバイス、音声入力機器などの入力装置と、入力装置をBUSに接続するインターフェース装置である。入力部104を介して、ユーザが入力した情報が計算部103に供給される。ユーザがデータ取得生成部11に目的変数を直接入力する構成では、入力部104は、データ取得生成部11として機能する。
【0080】
送受信部105は、ネットワークに接続する網終端装置または無線通信装置、およびそれらと接続するシリアルインターフェースまたはLAN(Local Area Network)インターフェースである。データ取得生成部11が外部の装置またはシステムから目的変数を取得する構成では、送受信部105は、データ取得生成部11として機能する。予測結果出力部15が確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化したグラフをユーザが使用する端末に送信する構成では、送受信部105は、予測結果出力部15として機能する。
【0081】
表示部106は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどの表示装置である。需要予測装置1が確率分布演算データを用いて需要予測結果データを可視化したグラフを画面表示する構成では、表示部106は、予測結果出力部15として機能する。
【0082】
図1に示す需要予測装置1のデータ取得生成部11、予測モデル診断部12、需要予測部13、確率分布演算部14および予測結果出力部15の処理は、制御プログラムが、一時記憶部101、計算部103、記憶部102、入力部104、送受信部105および表示部106などを資源として用いて処理することによって実行する。
【0083】
その他、前記のハードウェア構成およびフローチャートは一例であり、任意に変更および修正が可能である。
【0084】
計算部103、一時記憶部101、記憶部102、入力部104、送受信部105、表示部106などの需要予測装置1の処理を行う中心となる部分は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、前記の動作を実行するためのコンピュータプログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc - Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc - Read Only Memory)などのコンピュータが読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、前記の処理を実行する需要予測装置1を構成してもよい。また、インターネットに代表される通信ネットワーク上のサーバ装置が有する記憶装置に当該コンピュータプログラムを格納しておき、通常のコンピュータシステムがダウンロードすることで需要予測装置1を構成してもよい。
【0085】
また、需要予測装置1の機能を、OS(Operating System)とアプリケーションプログラムの分担、またはOSとアプリケーションプログラムとの協働により実現する場合などには、アプリケーションプログラム部分のみを記録媒体、記憶装置に格納してもよい。
【0086】
また、輸送波にコンピュータプログラムを重畳し、通信ネットワークを介して提供することも可能である。例えば、通信ネットワーク上の掲示板(BBS, Bulletin Board System)に前記コンピュータプログラムを掲示し、通信ネットワークを介して前記コンピュータプログラムを提供してもよい。そして、このコンピュータプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、前記の処理を実行できる構成にしてもよい。
【0087】
上記の実施の形態では、需要予測装置1は、製品の需要を予測したがこれに限らず、需要予測の対象は、需要が変動する材または役務であればよい。例えば、需要予測装置1は、サービス、農作物などの需要を予測してもよい。この場合、目的変数は、需要予測の対象であるサービス、農作物などの需要の時系列データである。
【0088】
上記の実施の形態では、需要予測の評価サイクルが「月」である例について説明したが、これに限らない。例えば、需要予測の評価サイクルは「週」、「半月」、「四半期」、「半年」、「1年」などであってもよい。
【0089】
上記の実施の形態では、記憶装置2に、社内統計DB21、社外統計DB22、説明変数候補DB23、予測モデル診断DB24、評価用パラメータDB25、需要予測結果DB26、ずらし月選定用DB27、説明変数選定用DB28、予測データセットDB29、および、確率分布演算DB30が構成されたが、これらのDBの一部または全部を需要予測装置1の記憶装置に構成してもよい。
【0090】
上記の実施の形態では、予測結果出力部15は、確率分布演算部14の演算結果を用いて需要予測結果データを可視化して出力するが、これに限らない。予測結果出力部15は、確率分布演算部14の演算結果を用いずに、需要予測結果データを可視化して出力してもよい。この場合、需要予測装置1は、確率分布演算部14を備えなくてもよい。
【0091】
上記の実施の形態では、データ取得生成部11は、社内統計データおよび社外統計データに基づいて、説明変数候補データを生成したが、これに限らず、どちらか一方に基づいて説明変数候補データを生成してもよい。また、需要予測を行う主体は、需要予測の対象である製品を提供する事業者に限らない。
【符号の説明】
【0092】
1 需要予測装置、2 記憶装置、11 データ取得生成部、12 予測モデル診断部、13 需要予測部、14 確率分布演算部、15 予測結果出力部、21 社内統計DB、22 社外統計DB、23 説明変数候補DB、24 予測モデル診断DB、25 評価用パラメータDB、26 需要予測結果DB、27 ずらし月選定用DB、28 説明変数選定用DB、29 予測データセットDB、30 確率分布演算DB、100 需要予測システム、101 一時記憶部、102 記憶部、103 計算部、104 入力部、105 送受信部、106 表示部。
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