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特許7599332クローディン6抗体及びがんを治療するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】クローディン6抗体及びがんを治療するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20241206BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241206BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241206BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241206BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241206BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241206BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241206BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241206BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20241206BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241206BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 T
G01N33/53 D
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020515692
(86)(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 US2018051610
(87)【国際公開番号】W WO2019056023
(87)【国際公開日】2019-03-21
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】62/560,143
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンクリン,ディラン
(72)【発明者】
【氏名】スレイモン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】パラッツォロ,マイク
(72)【発明者】
【氏名】ボン エウウ,エリカ
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-533738(JP,A)
【文献】Cancer Science,2009年09月,Vol.100, No.9,pp.1623-1630
【文献】The Journal of Biological Chemistry,2009年07月10日,Vol.284, No.28,pp.18863-18872
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-90
C07K 14/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
SwissProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトクローディン6(CLDN6)タンパク質(配列番号200)に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
FTFSNYW(配列番号:455)のアミノ酸配列を含む、HC CDR1、IRLKSDNYAT(配列番号:456)のアミノ酸配列を含む、HC CDR2、NDGPPSGSもしくはNDGPPSGC(配列番号:457)のアミノ酸配列を含む、HC CDR3、ENIYSY(配列番号:476)のアミノ酸配列を含む、LC CDR1、NAK(配列番号:477)のアミノ酸配列を含む、LC CDR2、および、QHHYTVPWT(配列番号:454)のアミノ酸配列を含む、LC CDR3を含む抗体またはその抗原結合フラグメント
【請求項2】
HC CDR1がGFTFSNYW(配列番号:23)のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント
【請求項3】
体がモノクローナル抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント
【請求項4】
抗体がキメラ抗体、またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント
【請求項5】
抗体が配列番号387の重鎖可変ドメインアミノ酸配列および配列番号389の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含むヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント
【請求項6】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含むコンジュゲート。
【請求項7】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、または請求項に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
【請求項9】
請求項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項10】
請求項に記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項11】
ヒトクローディン6(CLDN6)タンパク質(配列番号200)に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを製造するための方法であって、(i)請求項10に記載の宿主細胞を細胞培養培地内で培養することと、(ii)前記細胞培養培地から前記抗体またはその抗原結合フラグメントを回収することと、を含む、前記方法。
【請求項12】
ヒトクローディン6(CLDN6)タンパク質(配列番号200)に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを含む融合タンパク質を製造するための方法であって、(i)請求項10に記載の宿主細胞を細胞培養培地内で培養することと、(ii)前記細胞培養培地から前記融合タンパク質を回収することと、を含む、前記方法。
【請求項13】
請求項1からのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載のコンジュゲート、請求項に記載の融合タンパク質、請求項に記載の核酸、請求項に記載のベクター、請求項10に記載の宿主細胞、または、これらの組み合わせを、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と混合することを含む、医薬組成物を製造するための方法。
【請求項14】
請求項1からのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載のコンジュゲート、請求項に記載の融合タンパク質、請求項に記載の核酸、請求項に記載のベクター、請求項10に記載の宿主細胞、または、これらの組み合わせと、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項15】
CLDN6発現がんを有する対象の治療において使用するための、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
CLDN6発現がんの治療のための医薬の製造における、請求項14に記載の医薬組成物の使用。
【請求項17】
CLDN6陽性がん細胞を腫瘍増殖阻害に有効な量の請求項14に記載の医薬組成物と接触させることを含む、in vitroまたはex vivoにおける腫瘍増殖の阻害方法。
【請求項18】
対象内におけるがんの再発の予防のために使用する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
CLDN6発現がんがCLDN6の低過剰発現がんである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項20】
腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
CLDN6を発現する細胞におけるアポトーシスを誘導する、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
試料中のクローディン6(CLDN6)を検出するための方法であって、前記試料を、請求項1からのいずれか1項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、請求項に記載のコンジュゲート、または、請求項に記載の融合タンパク質と接触させることと、CLDN6に結合した前記抗体またはその抗原結合フラグメント、コンジュゲート、または、融合タンパク質、を含む免疫複合体をアッセイすることと、を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された物質の参照による組み込み
本明細書と同時に提出され、以下、「51836_SeqListing.txt」という名称の315,776バイトのASCII(テキスト)ファイル(2018年9月18日に作成)で識別される、コンピュータで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列表は、その全体が参照により組み込まれる。
本開示はクローディン6(CLDN6)に結合する抗原結合タンパク質を提供する。
【背景技術】
【0002】
抗体は、細胞、細菌、ウイルスまたは毒素上の異なる抗原を特異的に標的とする抗体自体の機能による限定的な副作用を特徴とする強力な治療因子を構成している。1986年、最初の治療用モノクローナル抗体であるOrthoclone OKT3が市場に導入された。その頃から、この部類のバイオ医薬品が著しく増加している。2014年末には、がん及び炎症性疾患、心血管疾患、呼吸器疾患、ならびに、感染症を含む様々な疾患の治療用に、米国または欧州において47のモノクローナル抗体製品が承認を受けていた。
【0003】
現時点で、がんを治療するための12超のモノクローナル抗体がU.S.Food and Drug Administrationにより承認されている。これらの薬剤の中には、慢性リンパ性白血病(CLL)用に指定されているアレムツズマブ(キャンパス(登録商標))、及び、乳癌の治療に使用されているトラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))がある。一部の抗体は化学療法剤に分類されており、例えば、ブレンツキシマブベドチン(アドセトリス(登録商標))及びアドトラスツズマブエムタンシン(カドサイラ(登録商標))が挙げられる。ブリナツモマブ(ビーリンサイト)などのその他の抗体製品は、2つの異なる抗原を認識してそれらに結合するように設計されている。このような抗体製品が商業的に利用可能であるにもかかわらず、現在のがんの発症率及びがんによる死亡は依然として高いままである。がんの年間発症率が100,000人の男性及び女性あたり450人超であり、がんによる年間死亡率が100,000人の男性及び女性あたり実に170人超ということが報告されている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、クローディン6(CLDN6)に結合する抗原結合タンパク質を提供する。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6に結合し、任意選択的に、マウスCLDN6に結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質はCLDN6の細胞外ドメイン(ECD)に結合する。様々な例では、抗原結合タンパク質は、CLDN6のECDの細胞外ループ2(EL2)に結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、EL2に結合し、CLDN6のECDの細胞外ループ1(EL1)に結合しない。様々な例では、抗原結合タンパク質は、例えば、クローディン3(CLDN3)、クローディン4(CLDN4)、及び、クローディン9(CLDN9)を含む、ヒトクローディンファミリーの別のメンバーに結合する。様々な例では、抗原結合タンパク質は、CLDN6、及び、CLDN4及びCLDN9のうちの少なくとも1つに結合する。様々な例では、抗原結合タンパク質は、CLDN6に結合し、クローディンファミリーのその他のメンバーのいずれにも結合しない。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ヒト卵巣癌細胞(例えば、OVCA429細胞)が内在的に発現するCLDN6に結合し、OVCA429細胞を用いたFACS親和性アッセイにおいて約1200nM未満のIC50を示す。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質にその他の部分を何ら結合させることなく、対象(例えば、ヒト)内における腫瘍増殖を阻害する。様々な例では、非相同部分にコンジュゲートしていない(例えば、任意の化学療法剤、薬物または毒性部分にコンジュゲートしていない)抗原結合タンパク質は、対象(例えば、ヒト)内における腫瘍増殖を阻害する。
【0005】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ヒトがん細胞が発現するCLDN6に結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6と参照抗CLDN6抗体の間の結合相互作用を阻害する。特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書で提供する抗原結合タンパク質の阻害作用により、腫瘍増殖を抑制するための方法及び腫瘍またはがんを有する対象を治療するための方法においてこのような部分が有用となる。本明細書で更に論述しているが、様々な態様では、抗原結合タンパク質は、抗体、その抗原結合抗体フラグメント、または、抗体タンパク質産物である。
【0006】
本開示はまた、特定グループのアミノ酸配列のうちの少なくとも3、4、5、または全てのアミノ酸配列を含む抗原結合タンパク質を提供する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、本明細書で開示するCLDN6抗体の少なくとも3、4、5、または6つの相補性決定領域(CDR)アミノ酸配列を含む。
【0007】
本開示は更に、本明細書で詳述するアミノ酸配列を含む抗原結合タンパク質を提供する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、本明細書で更に説明する、表A、A1、B、B1、C、もしくは、D、または、これらの組み合わせに記載の配列番号:のアミノ酸配列を含む。
【0008】
本明細書では更に、関連するポリペプチド、核酸、ベクター、宿主細胞、及び、コンジュゲートを提供する。このような構成要素を含むキット及び医薬組成物を更に検討する。
【0009】
抗原結合タンパク質を製造するための方法についても提供する。様々な実施形態では、本方法は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質またはポリペプチドを発現するように、抗原結合タンパク質またはポリペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞を培養することを含む。
【0010】
本明細書では更に、がんを有する対象を治療するための方法を提供する。様々な実施形態では、本方法は、対象内におけるがんを治療するのに有効な量で本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0011】
本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、CLDN6発現がんを有する対象を治療するための方法についても提供する。本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象内における腫瘍増殖を阻害するための方法についても更に検討する。
【0012】
対象内における腫瘍のサイズを縮小させるまたは対象内におけるがんの再発を予防するための方法は、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0013】
本明細書では、本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、CLDN6の低過剰発現と診断された対象内におけるがんを治療するための方法についても提供する。
【0014】
様々な実施形態では、投与することは、腫瘍細胞における、例えば、CLDN6を発現する細胞におけるアポトーシスを誘導する。様々な実施形態では、投与することは、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)または補体依存性細胞傷害(CDC)、腫瘍壊死及び細胞の死滅もしくは消耗、及び/または、腫瘍細胞接着の阻害を誘導し、そのそれぞれは結果として、腫瘍退縮、もしくは、腫瘍増殖の緩徐化をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】正常(非がん)組織内におけるCLDN6発現のグラフを示す図である。
図2】Agilent44K法により測定したがん細胞株内におけるCLDN6発現のグラフを示す図である。
図3】RNASeqにより測定したがん細胞株内におけるCLDN6発現のグラフを示す図である。
図4】異なる細胞モデルにおけるCLDN6-GFPの局在化を示す蛍光画像のセットを示す図である。
図5】ヒトCLDN6、ヒトCLDN3、ヒトCLDN4、ヒトCLDN9、及び、マウスCLDN6の配列アライメントを示す図である。EL1及びEL2の配列を示している。
図6図6Aは、子宮内膜腫瘍を有するマウス内における、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、参照Ab2、参照Ab3、AB2、及び、AB3を用いた治療後の時間(日)に応じた腫瘍の腫瘍容積(mm)のグラフを示す図である。図6Bは、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、参照Ab2、参照Ab3、AB2、または、AB3を用いて治療した子宮内膜腫瘍を有するマウス内における14日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。
図7図7Aは、膀胱腫瘍を有するマウス内における、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、参照Ab2、及び、AB3を用いた治療後の時間(日)に応じた腫瘍の腫瘍容積(mm)のグラフを示す図である。図7Bは、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、参照Ab2、または、AB3を用いて治療した膀胱腫瘍を有するマウス内における35日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。
図8図8Aは、卵巣腫瘍を有するマウス内における、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、AB2、及び、AB3を用いた治療後の時間(日)に応じた腫瘍の腫瘍容積(mm)のグラフを示す図である。図8Bは、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、AB2、または、AB3を用いて治療した卵巣腫瘍を有するマウス内における20日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。
図9図9Aは黒色腫腫瘍を有するマウス内における、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、参照Ab2、参照Ab3、及び、AB3を用いた治療後の時間(日)に応じた腫瘍の腫瘍容積(mm)のグラフを示す図である。図9Bは、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、参照Ab2、参照Ab3、または、AB3を用いて治療した黒色腫腫瘍を有するマウス内における21日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。
図10図10Aは、対照抗体を用いて治療したマウスと比較した、AB3を用いて治療した腫瘍を有するマウス内において達成された腫瘍増殖阻害率のグラフを示す図である。図10Bは、子宮内膜癌細胞株(ARK2)、膀胱癌細胞株(UMUC4)、卵巣癌細胞株(OV90)、及び、黒色腫細胞株(M202)、ならびに、対照細胞内における、異なるレベルのCLDN6を示す、ウェスタンブロットの画像を示す図である。α-チューブリンのレベルほぼ同一であり、同等のタンパク質量であることを示した。
図11】溶媒対照、対照抗体、参照Ab1、参照Ab2、参照Ab3、及び、AB3を用いて治療した、腫瘍を有するマウスの時間(日)に応じた体重変化率のグラフを示す図である。
図12A】卵巣腫瘍を有するマウス内における、溶媒対照、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、または、示した抗CLDN6抗体のうちの1つを用いた治療後の時間(日)に応じた腫瘍の腫瘍容積(mm)のグラフを示す図である。
図12B】溶媒対照、対照IgG2抗体、AB3、参照Ab1、または、示した抗CLDN6抗体のうちの1つを用いて治療した卵巣腫瘍を有するマウス内における28日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。
図13】溶媒対照、対照抗体、参照Ab1、及び、示した抗CLDN6抗体を用いて治療した、腫瘍を有するマウスの時間(日)に応じた体重変化率のグラフを示す図である。
図14】本発明の数種類の抗CLDN6抗体、ならびに、参照Ab1及び参照2の、一連の用量反応曲線を示す図である。マウスIgGを対照として使用した。
図15図15Aは、溶媒対照、対照IgG抗体、AB3のマウス型、AB3の第1のヒト化型、及び、AB3の第2のヒト化型を用いて治療した膀胱腫瘍を有するマウス内における35日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。図15Bは、図15Aの群のそれぞれにおける腫瘍容積(mm)の変化のグラフを示す図である。
図16図16Aは、溶媒対照、対照IgG抗体、AB3のマウス型、AB3の第1のヒト化型、及び、AB3の第2のヒト化型を用いて治療した膀胱腫瘍を有するマウス内における35日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。2つの対照抗体(1つはマウスであり、1つはキメラである)についてもこの実験で試験した。図16Bは、図16Aの群のそれぞれにおける腫瘍容積(mm)の変化のグラフを示す図である。
図17図17Aは、溶媒対照、対照IgG抗体、AB1のマウス型、及び、AB1のヒト化型を用いて治療した膀胱腫瘍を有するマウス内における35日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。図17Bは、図17Aの群のそれぞれにおける腫瘍容積(mm)の変化のグラフを示す図である。
図18図18Aは、溶媒対照、対照IgG抗体、AB4のマウス型、及び、AB4のヒト化型を用いて治療した膀胱腫瘍を有するマウス内における35日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。図18Bは、図18Aの群のそれぞれにおける腫瘍容積(mm)の変化のグラフを示す図である。
図19図19Aは、溶媒対照、対照IgG抗体、AB3のマウス型、AB3のキメラ型、AB3の第1のヒト化型、AB3の第2のヒト化型、Ab1のマウス型、AB1のヒト化型、AB4のマウス型、AB4のヒト化型を用いて治療した膀胱腫瘍を有するマウス内における35日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。4つの対照抗体(1つの抗体はマウス型またはキメラ型のいずれかを有し、1つの抗体はマウス型またはヒト型を有する)についてもこの実験で試験した。図19Bは、図19Aの群のそれぞれにおける腫瘍容積(mm)の変化のグラフを示す図である。
図20図19Aに記載のとおりに治療した膀胱腫瘍を有するマウス内における55日目の腫瘍の腫瘍容積(mm)の平均変化量のグラフを示す図である。
図21図19Aに記載のとおりに治療した腫瘍を有するマウスの32日目の体重変化率のグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
クローディンファミリー
閉鎖結合または閉鎖帯としても周知の密着結合は、上皮細胞シート及び内皮細胞シートにおける傍細胞透過性を調節して細胞極性を維持する、2つの隣接細胞間に位置し整然と組織された構造体である。クローディン(CLDN)ファミリーの遺伝子は、密着結合の重要な構成要素である膜タンパク質をコードしている。CLDNタンパク質は、4つの膜貫通(TM)ヘリックス(TM1、TM2、TM3、及び、TM4)及び2つの細胞外ループ(EL1及びEL2)を含む。隣接細胞のCLDNタンパク質の細胞外ループ同士は互いに相互作用して細胞シートを密着させ、内腔の空間と基底外側の空間の間の傍細胞輸送を調節している。
【0017】
CLDNタンパク質は様々なヒトの疾患及び病態に関与している。例えば、CLDN1遺伝子内の変異が胆管の閉塞と共に進行性の皮膚の鱗屑をもたらすことが判明している。CLDN16遺伝子の変異はマグネシウム消耗疾患の原因となっている。CLDN19変異が黄斑欠損症及び近視などの眼球症状を引き起こす一方で、CLDN14変異は非症候群性劣性難聴を引き起こす場合がある。CLDN3及びCLDN4は、消化管内におけるClostridium perfringensのエンテロトキシン用の表面受容体であることが知られており、CLDN1、CLDN6及びCLDN9は、C型肝炎ウイルス(HCV)侵入用の共受容体である。がんにおいて数種類のCLDNタンパク質が異常発現していることが示されている。例えば、CLDN1が乳癌及び結腸癌において下方制御されている一方で、CLDN3及びCLDN4は複数のがんにおいて強く上方制御されている。
【0018】
クローディン6(CLDN6)はCLDNファミリーのメンバーである。ヒトCLDN6タンパク質をコードする遺伝子は、ヒト16番染色体のp腕上の16p13.3に位置しており、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ及びカエルに保存されている。CLDN6は通常、ヒトにおいて220アミノ酸前駆体タンパク質として発現しており、その最初の21アミノ酸はシグナルペプチドを構成している。CLDN6前駆体タンパク質のアミノ酸配列は、National Center for Biotechnology Information(NCBI)ウェブサイトにおいてNCBI Reference Sequence NP_067018.2として一般に利用可能であり、本明細書では配列番号:1として提供されている。配列番号:1の143位のアミノ酸はIleである。一部の例では、CLDN6をコードするDNA配列内における一塩基多型(SNP)により、143位のアミノ酸はValである。本明細書では、143位にValを有するヒトCLDN6のアミノ酸配列を配列番号:178として提供している。
【0019】
抗原結合タンパク質
本明細書では、クローディン6(CLDN6)に結合する抗原結合タンパク質を提供する。本開示の抗原結合タンパク質は、当該技術分野において周知の抗原結合タンパク質の多くの形態のうちのいずれか1つを取り得る。様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、抗体もしくは抗原結合抗体フラグメント、または、抗体タンパク質産物の形態を取る。
【0020】
本開示の様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、抗体を含むか、それから本質的になるか、または、それからなる。本明細書で使用する場合、用語「抗体」とは、重鎖及び軽鎖を含み、可変領域及び定常領域を含む、通常の免疫グロブリンフォーマットを有するタンパク質のことを意味する。例えば、抗体は、1つの「軽」鎖(通常は、約25kDaの分子量を有する)と1つの「重」鎖(通常は、約50~70kDaの分子量を有する)をそれぞれのペアが有する、「Y形状」構造の2組の同一ポリペプチド鎖ペアであるIgGであってもよい。抗体は可変領域及び定常領域を有している。IgGフォーマットにおいては、可変領域は通常、約100~110またはそれ以上のアミノ酸であり、主に抗原認識を担う3つの相補性決定領域(CDR)を含んでおり、異なる抗原に結合するその他の抗体においては実質的に異なっている。定常領域は、抗体が免疫系の細胞及び分子をリクルートすることを可能とする。可変領域が軽鎖及び重鎖のそれぞれのN末端領域で構成されている一方で、定常領域は重鎖及び軽鎖のそれぞれのC末端部分で構成されている。(Janeway et al.,“Structure of the Antibody Molecule and the Immunoglobulin Genes”,Immunobiology:The Immune System in Health and Disease,4th ed.Elsevier Science Ltd./Garland Publishing,(1999))。
【0021】
抗体のCDRの一般的な構造及び特性については当該技術分野において説明がなされている。簡潔に説明すると、抗体スキャフォールドにおいて、CDRは、それらCDRが主に抗原結合及び抗原認識を担う領域を構成する、重鎖及び軽鎖可変領域のフレームワーク内に組み込まれている。可変領域は通常、フレームワーク領域(Kabat et al.,1991により、フレームワーク領域1~4、FR1、FR2、FR3及びFR4と呼ばれており、Chothia and Lesk,1987,(上記のとおり)も参照のこと)内において、少なくとも3つの重鎖CDRまたは軽鎖CDR(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Public Health Service N.I.H.,Bethesda,Md.;Chothia and Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917;Chothia et al.,1989,Nature 342:877-883も参照のこと)を含んでいる。
【0022】
抗体は、当該技術分野において周知の任意の定常領域を含んでいてもよい。ヒト軽鎖はκ軽鎖及びλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、α、または、εに分類され、抗体のアイソタイプをそれぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、及び、IgEと規定している。IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及び、IgG4を含むがこれらに限定されない、数種類のサブクラスを有している。IgMは、IgM1及びIgM2を含むがこれらに限定されないサブクラスを有している。本開示の実施形態は、全てのこのようなクラスまたはアイソタイプの抗体を含む。軽鎖定常領域は、例えば、κまたはλ型の軽鎖定常領域、例えば、ヒトκまたはλ型の軽鎖定常領域であってもよい。重鎖定常領域は、例えば、α、δ、ε、γまたはμ型の重鎖定常領域、例えば、ヒトα、δ、ε、γまたはμ型の重鎖定常領域であってもよい。それゆえ、様々な実施形態では、抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、または、IgG4のうちのいずれか1つを含む、アイソタイプIgA、IgD、IgE、IgG、または、IgMの抗体である。様々な態様では、抗体は、半減期/安定性を向上させるまたは抗体を発現/製造により好適とするために、天然の同等物と比較して1つまたは複数のアミノ酸修飾を含む定常領域を含む。様々な例では、抗体は、天然の同等物には存在するC末端のLys残基が除去または切断されている定常領域を含む。
【0023】
抗体はモノクローナル抗体であってもよい。一部の実施形態では、抗体は、哺乳動物、例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ハムスター、ヒトなどが産生する天然抗体とほぼ同等である配列を含む。これに関連して、抗体を、哺乳動物抗体、例えば、マウス抗体、ウサギ抗体、ヤギ抗体、ウマ抗体、ニワトリ抗体、ハムスター抗体、ヒト抗体などとみなすことができる。特定の態様では、抗原結合タンパク質は、抗体、例えば、ヒト抗体などである。特定の態様では、抗原結合タンパク質はキメラ抗体またはヒト化抗体である。用語「キメラ抗体」とは、2種以上の異なる抗体に由来するドメインを含有する抗体のことを意味する。キメラ抗体は、例えば、1つの種に由来する定常ドメイン及び第2の種に由来する可変ドメインを含有し得、または、より一般的には、少なくとも2つの種に由来するアミノ酸配列のストレッチを含有し得る。キメラ抗体はまた、同一種内の2つ以上の異なる抗体のドメインを含有し得る。抗体と関連させて使用する場合の用語「ヒト化」とは、元の供給源の抗体と比較して純粋なヒト抗体により類似している構造及び免疫学的機能を有するように遺伝子操作された、非ヒト供給源に由来するCDR領域を少なくとも有する抗体のことを意味する。例えば、ヒト化は、マウス抗体などの非ヒト抗体に由来するCDRをヒト抗体に移植することを含み得る。ヒト化はまた、アミノ酸置換を選択してヒト配列により類似した非ヒト配列を作製することを含み得る。ヒト抗体の重鎖及び軽鎖定常領域の配列情報を含む情報は、Uniprotデータベースに加え、抗体工学及び抗体製造の分野の当業者に周知のその他のデータベースを介して一般に利用可能である。例えば、IgG2定常領域はUniprotデータベースからUniprot番号P01859として入手可能であり、参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
酵素、例えば、パパイン及びペプシンなどを用いて、抗体をフラグメントに開裂させてもよい。パパインは、抗体を開裂して、2つのFabフラグメント及び単一のFcフラグメントを生成する。ペプシンは、抗体を開裂して、F(ab’)フラグメント及びpFc’フラグメントを生成する。本開示の様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、抗体の抗原結合フラグメント(別名、抗原結合抗体フラグメント、抗原結合フラグメント、抗原結合部位)である。様々な例では、抗原結合抗体フラグメントはFabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントである。
【0025】
抗体の構造を利用して、少なくとも約12~150kDaの分子量範囲にわたり、単量体(n=1)から、二量体(n=2)、三量体(n=3)、四量体(n=4)、及び場合によってより多量体までの範囲の価数(n)を有するますます広い範囲の代替抗体フォーマットが作製されてきたが、本明細書では、このような代替抗体フォーマットを「抗体タンパク質産物」と呼ぶ。抗体タンパク質産物としては、完全な抗体構造をベースにした抗体タンパク質産物、及び、完全な抗原結合能を保持する抗体フラグメント、例えば、scFv、Fab、及び、VHH/VH(以下で論じる)などを模倣した抗体タンパク質産物が挙げられる。その完全な抗原結合部位を保持する最も小さな抗原結合フラグメントは、専ら可変(V)領域からなるFvフラグメントである。分子を安定化させるために可溶性でフレキシブルなアミノ酸ペプチドリンカーを使用してV領域をscFv(一本鎖可変フラグメント)フラグメントに連結させる、または、定常(C)ドメインをV領域に付加してFabフラグメント[フラグメント、抗原結合]を作製する。scFvフラグメントとFabフラグメントの両方は、宿主細胞、例えば、原核生物宿主細胞内において容易に産生させることができる。その他の抗体タンパク質産物としては、ジスルフィド結合で安定化させたscFv(ds-scFv)、一本鎖Fab(scFab)に加え、オリゴマー化ドメインに連結したscFvからなる異なるフォーマットを含むディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、または、ミニボディ(miniAb)のような、二量体及び多量体の抗体フォーマットが挙げられる。最も小さなフラグメントは、ラクダ科重鎖Abならびに単一ドメインAb(sdAb)の、VHH/VHである。新規の抗体フォーマットを作製するのに最も頻繁に使用されている構成単位は、約15アミノ酸残基のペプチドリンカーによって連結された重鎖と軽鎖(VHドメインとVLドメイン)からなるVドメインを含む一本鎖可変(V)ドメイン抗体フラグメント(scFv)である。ペプチボディ、すなわち、ペプチド-Fc融合体は、更に別の抗体タンパク質産物である。ペプチボディの構造は、Fcドメイン上に移植された生物学的に活性なペプチドからなっている。ペプチボディについては当該技術分野において十分に説明がなされている。例えば、Shimamoto et al.,mAbs 4(5):586-591(2012)を参照されたい。
【0026】
その他の抗体タンパク質産物としては、一本鎖抗体(SCA)、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、二重特異性抗体または三重特異性抗体などが挙げられる。二重特異性抗体は、5つの主要なクラス、BsIgG、付加IgG、二重特異性抗体(BsAb)フラグメント、二重特異性融合タンパク質、及び、BsAbコンジュゲートに分類することができる。例えば、Spiess et al.,Molecular Immunology 67(2)Part A:97-106(2015)を参照されたい。
【0027】
様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、これら抗体タンパク質産物のうちのいずれか1つを含むか、それから本質的になるか、または、それからなる。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、scFv、Fab VHH/VH、Fvフラグメント、ds-scFv、scFab、二量体抗体、多量体抗体(例えば、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、miniAb、ラクダ科重鎖抗体、sdAb、ディアボディのペプチボディVHH/VH、トリアボディ、テトラボディ、二重特異性抗体または三重特異性抗体、BsIgG、付加IgG、BsAbフラグメント、二重特異性融合タンパク質、及び、BsAbコンジュゲート、のうちのいずれか1つを含むか、それから本質的になるか、または、それからなる。
【0028】
様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、単量体形態、または、ポリマー、オリゴマーもしくは多量体形態の、抗体タンパク質産物である。抗体が2つ以上の異なる抗原結合領域フラグメントを含む特定の実施形態では、抗体は、抗体が認識及び結合する異なるエピトープの数に応じて、二重特異性、三重特異性、もしくは、多重特異性、または、二価、三価、もしくは、多価であるとみなされる。
【0029】
様々な実施形態では、抗CLDN6抗体またはその抗体変異体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、抗原結合抗体フラグメント、一本鎖抗体、単量体抗体、ディアボディ、トリアボディ、テトラボディ、Fabフラグメント、IgG1抗体、IgG2抗体、IgG3抗体、及び、IgG4抗体、からなる群から選択される。
【0030】
様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は治療薬に連結している。以下に記載するとおり、治療薬は、化学療法剤、サイトカイン及び増殖因子、細胞傷害薬などを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において周知のいずれかであってもよい。以下の「コンジュゲート」を参照されたい。
【0031】
CLDN6及びエピトープ
本開示の抗原結合タンパク質はCLDN6に結合する。様々な態様では、CLDN6は、
(式中、XはIleまたはValである)(配列番号:202)のアミノ酸配列を有するヒトCLDN6である。
【0032】
様々な態様では、ヒトCLDN6は、配列番号:1、178、及び、200~202のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む。
【0033】
様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6のアミノ酸配列内のエピトープに結合する。様々な態様では、CLDN6はヒトCLDN6であり、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6、例えば、配列番号:1、178、及び、200~202のアミノ酸配列内のエピトープに結合する。「エピトープ」とは、抗原結合タンパク質が結合するCLDN6の領域またはCLDN6内の領域のことを意味する。一部の実施形態では、エピトープは直鎖状エピトープである。「直鎖状エピトープ」とは、抗原結合タンパク質が結合するCLDN6の領域またはCLDN6内の領域であり、CLDN6のアミノ酸配列の連続アミノ酸で構成される領域のことを意味する。直鎖状エピトープのアミノ酸は、CLDN6の一次構造において互いに隣接している。それゆえ、直鎖状エピトープは、抗原、すなわち、CLDN6のフラグメントまたはアミノ酸配列の一部である。その他の様々な実施形態では、エピトープは立体構造エピトープまたは構造エピトープである。「立体構造エピトープ」または「構造エピトープ」とは、CLDN6がその適切に折り畳まれた状態にあるときにのみ互いに近接して配置されるアミノ酸で構成されるエピトープのことを意味する。直鎖状エピトープとは異なり、立体構造エピトープまたは構造エピトープのアミノ酸は、CLDN6の一次構造(すなわち、アミノ酸配列)において互いに隣接していない。立体構造エピトープまたは構造エピトープは、抗原(CLDN6)のアミノ酸配列の連続アミノ酸では構成されていない。
【0034】
様々な態様では、エピトープは、CLDN6、例えば、ヒトCLDN6の細胞外ドメイン(ECD)内に位置している。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、WTAHAIIRDFYNPLVAEAQKREL(配列番号:2)のアミノ酸配列を有するCLDN6のECDの細胞外ループ2(EL2)に結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質が結合するエピトープは、配列番号:2の内部にある。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、配列番号:2のN末端部分、例えば、TAHAIIRDFYNPL(配列番号:3)に結合する。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、配列番号:2のC末端部分、例えば、LVAEAQKREL(配列番号:4)に結合する。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、EL2には結合するが、CLDN6の細胞外ループ1(EL1)には結合しない。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質が結合するエピトープ(複数可)は、配列番号:185の配列を含む軽鎖可変領域と配列番号:186の配列を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN6抗体が結合するエピトープとは異なる。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質が結合するエピトープ(複数可)は、配列番号:181の配列を含む軽鎖可変領域と配列番号:182の配列を含む重鎖可変領域を含む抗CLDN6抗体が結合するエピトープとは異なる。
【0035】
様々な態様では、抗原結合タンパク質はヒトCLDN6及び非ヒトCLDN6に結合する。様々な例では、非ヒトCLDN6は、チンパンジー、アカゲザル、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ゼブラフィッシュ、または、カエルのCLDN6である。様々な例では、抗原結合タンパク質はヒトCLDN6及びマウスCLDN6に結合する。
【0036】
親和性及び結合力
本明細書で提供する抗原結合タンパク質は、非共有及び可逆的な様式でCLDN6に結合する。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質のCLDN6への結合力は、抗原結合タンパク質の結合部位とエピトープの間の相互作用力の指標であるその親和性を基準として記載され得る。様々な態様では、本明細書で提供する抗原結合タンパク質は、CLDN6に対する高い親和性を有していることから、低親和性の抗原結合タンパク質と比較してより短い期間でより多くの量のCLDN6に結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、少なくとも10mol-1、少なくとも10mol-1、少なくとも10mol-1、少なくとも10mol-1、少なくとも10mol-1、または、少なくとも1010mol-1である平衡結合定数Kを有している。当業者が理解するとおり、Kは、pH、温度及び緩衝液の組成を含む因子の影響を受ける場合がある。
【0037】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質のCLDN6への結合力は、その感度を基準として記載され得る。Kとは、抗原結合タンパク質とCLDN6の間における平衡解離定数、koff/konの比率のことである。KとKは逆相関している。K値が抗原結合タンパク質の濃度(特定の実験に求められる抗原結合タンパク質の量)に関連していることから、K値が低いほど(濃度が低いほど)抗原結合タンパク質の親和性は高くなる。様々な態様では、抗原結合タンパク質のCLDN6への結合力は、Kを基準として記載され得る。様々な態様では、本明細書で提供する抗原結合タンパク質のKは、約10-1、約10-2、約10-3、約10-4、約10-5、約10-6、または、それ未満である。様々な態様では、本明細書で提供する抗原結合タンパク質のKは、マイクロモル、ナノモル、ピコモルまたはフェムトモルである。様々な態様では、本明細書で提供する抗原結合タンパク質のKは、約10-4~10-6、10-7~10-9、10-10~10-12、または、10-13~10-15の範囲内である。様々な態様では、本明細書で提供する抗原結合タンパク質のKは、約1.0×10-12M~約1.0×10-8Mの範囲内である。様々な態様では、抗原結合タンパク質のKは、約1.0×10-11M~約1.0×10-9Mの範囲内である。
【0038】
様々な態様では、抗原結合タンパク質の親和性は、フローサイトメトリーまたは蛍光活性化細胞分離(FACS)をベースとするアッセイを使用して測定またはランク付けされる。フローサイトメトリーベースの結合アッセイは当該技術分野において周知である。例えば、Cedeno-Arias et al.,Sci Pharm 79(3):569-581(2011);Rathanaswami et al.,Analytical Biochem 373:52-60(2008);及びGeuijen et al.,J Immunol Methods 302(1-2):68-77(2005)を参照されたい。様々な態様では、抗原結合タンパク質の親和性は、Trikha et al.,Int J Cancer 110:326-335(2004)及びTam et al.,Circulation 98(11):1085-1091(1998)に加えて以下に記載の競合アッセイを使用して測定またはランク付けされる。「競合アッセイ」と題された以下のセクションを参照されたい。Trikh et al.においては、抗原を発現する細胞をラジオアッセイに使用した。懸濁液中の細胞を用いて、125I標識抗原結合タンパク質(例えば、抗体)の細胞表面抗原への結合性を測定する。様々な態様では、蛍光体にコンジュゲートした異なる濃度のCLDN6抗体をCLDN6を発現する細胞とインキュベートして放射された蛍光(抗体-抗原結合の直接的な指標である)を測定するFACSベースアッセイにより、CLDN6抗体の相対親和性を測定する。それぞれの用量または濃度に対して蛍光をプロットした曲線を作成する。最大値は、結合飽和が生じるときである、蛍光がプラトーに達するまたは最高に達する最低濃度である。最大値の半分はEC50またはIC50とみなされ、最低EC50/IC50を有する抗体は、同一方法で試験したその他の抗体と比較して最も高い親和性を有するとみなされる。このようなアッセイは本明細書の実施例5に記載されている。
【0039】
様々な態様では、競合的結合阻害アッセイで測定されたIC50値は、抗原結合タンパク質のKに近似している。以下に記載する様々な例では、競合アッセイは、参照抗体、蛍光体コンジュゲート二次抗体、及び、CLDN6を発現する細胞を用いて実施されるFACSベースアッセイである。様々な態様では、細胞はCLDN6を過剰発現するように遺伝子組換えされている。一部の態様では、細胞は、ウイルスベクターを用いてCLDN6を発現するように形質導入されたHEK293T細胞である。代替態様では、細胞はCLDN6を内在的に発現する。一部の態様では、FACSベースアッセイを実施する前に、CLDN6を内在的に発現する細胞を、CLDN6低発現細胞またはCLDN6高発現細胞と予め定める。一部の態様では、細胞はがん細胞または腫瘍細胞である。様々な態様では、細胞は、細胞株、例えば、卵巣細胞株、子宮内膜細胞株、膀胱細胞株、肺細胞株、消化管(GI)細胞株、肝細胞株、肺細胞株などに由来する細胞である。様々な態様では、CLDN6を内在的に発現する細胞は、OVCA429卵巣細胞、ARK2子宮内膜細胞、OAW28卵巣細胞、UMUC-4膀胱細胞、PEO14卵巣細胞、OV177卵巣細胞、H1693肺細胞、MKN7上部GI細胞、OV-90卵巣細胞、HUH-7肝細胞、JHOS-4卵巣細胞、H1435肺細胞、及び、NUGC3上部GI細胞からなる群から選択される。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、細胞が発現するヒトCLDN6と参照抗体の間の結合相互作用を阻害するが、参照抗体は、CLDN6には結合するが本開示の抗原結合タンパク質には結合しないことが知られている。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6への結合において参照抗体と競合することにより、インビトロ競合結合アッセイで測定する際に、参照抗体に結合するヒトCLDN6の量を減少させる。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6と参照抗体の間の結合相互作用を阻害するが、その阻害はIC50で表される。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6と参照抗体の間の結合相互作用を阻害する上で、約2500nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約2000nM未満、約1500nM未満、約1000nM未満、約900nM未満、約800nM未満、約700nM未満、約600nM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、または、約100nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、または、約10nM未満のIC50を示す。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6への結合において、CLDN6に結合することが知られている参照抗体(参照抗体は本開示の抗原結合タンパク質のいずれかとは異なる)と競合する。以下の競合アッセイに関する更なる記述を参照されたい。
【0040】
結合力は、抗体-抗原複合体の総合的な力の指標を与える。結合力は、3つの主要なパラメータ、抗原結合タンパク質のエピトープへの親和性、抗原結合タンパク質とCLDN6の両方の価数、及び、相互作用する部分の構造的配置、に依存している。抗原結合タンパク質の価数(抗原結合部位の数)が多いほど、抗原結合タンパク質が結合可能な抗原(CLDN6)の量はより増加する。様々な態様では、抗原結合タンパク質はCLDN6への強い結合力を有している。様々な態様では、抗原結合タンパク質は多価である。様々な態様では、抗原結合タンパク質は二価である。様々な例では、抗原結合タンパク質は一価である。
【0041】
交差反応性
様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6に結合し、CLDNファミリーの任意のその他のメンバーに結合せず、例えば、CLDNファミリーの任意のその他のメンバーと交差反応しない。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質はCLDN-6特異的である。様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN3、CLDN4、CLDN9、またはこれらの組み合わせへの抗原結合タンパク質の選択性と比較して、少なくとも10倍、5倍、4倍、3倍、2倍高いCLDN6への選択性を有している。様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN3、CLDN4及びCLDN9のそれぞれへの抗原結合タンパク質の選択性と比較して、少なくとも10倍、5倍、4倍、3倍、2倍高いCLDN6への選択性を有している。選択性は、CLDN6またはCLDNファミリーメンバーへと抗原結合タンパク質が示すKを基準とし得、Kは、当該技術分野において周知の技術、例えば、表面プラズモン共鳴アッセイ、FACSベース親和性アッセイにより測定され得る。
【0042】
様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6に結合し、クローディン3(CLDN3)、クローディン4(CLDN4)、及びクローディン9(CLDN9)のいずれにも結合しない。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、CLDN3、CLDN4、及びCLDN9のいずれにも結合せず、CLDN6を内在的に発現するOVCA429細胞を用いたFACSベースアッセイにおいて、約1200nM未満(例えば、約1000nM未満、約750nM未満、約500nM未満、約250nM未満)のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、CLDN3、CLDN4、及びCLDN9のいずれにも結合せず、CLDN6を内在的に発現するOVCA429細胞において50%の結合飽和が達成される濃度は、約1200nM未満(例えば、約1000nM未満、約750nM未満、約500nM未満、約250nM未満)である。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、CLDN3、CLDN4及びCLDN9への選択性と比較して少なくとも5倍高いCLDN6への選択性を示し、CLDN6を内在的に発現するOVCA429細胞において50%の結合飽和が達成される濃度は、約1200nM未満(例えば、約1000nM未満、約750nM未満、約500nM未満、約250nM未満)である。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、CLDN6人工及び内在モデルへの約1200nM未満(例えば、約1000nM未満、約750nM未満、約500nM未満、約250nM未満)のIC50を示し、CLDN3、CLDN4及び/またはCLDN9とは約5倍超離れたCLDN6 IC50の比率を示す。様々な例では、抗原結合タンパク質は、CLDN6への約1200nM未満(例えば、約1000nM未満、約750nM未満、約500nM未満、約250nM未満)のIC50を示し、そのIC50と比較して少なくとも5倍高いCLDN3、CLDN4及びCLDN9のうちのいずれか1つへのIC50を示す。
【0043】
様々な実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6に結合し、CLDNファミリーの少なくとも1つのその他のメンバーと交差反応する(例えば、結合する)。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6と、CLDN3、CLDN4及びCLDN9のうちの1つまたは複数に結合する。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6及びCLDN4またはCLDN9には結合するが、CLDN3には結合しない。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6及びCLDN4には結合するが、CLDN3にもCLDN9にも結合しない。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、CLDN6及びCLDN9には結合するが、CLDN3またはCLDN4のいずれにも結合しない。
【0044】
競合アッセイ
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6と参照抗体の間の結合相互作用を阻害するが、参照抗体は、CLDN6には結合するが本開示の抗原結合タンパク質には結合しないことが知られている。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6への結合において参照抗体と競合することにより、インビトロ競合結合アッセイで測定する際に、参照抗体に結合するヒトCLDN6の量を減少させる。様々な実施形態では、参照抗体は、ヒトCLDN6の細胞外ドメインの、アミノ酸配列内のエピトープ、任意選択的に、EL2またはEL1内のエピトープに結合する。様々な態様では、参照抗体は、配列番号:179がコードする軽鎖可変配列及び配列番号:180がコードする重鎖可変配列を含む。様々な態様では、参照抗体は、配列番号:181の軽鎖可変配列及び配列番号:182の重鎖可変配列を含む。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6と参照抗体の間の結合相互作用を阻害するが、その阻害はIC50で表される。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6と参照抗体の間の結合相互作用を阻害する上で、約2500nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約2000nM未満、約1500nM未満、約1000nM未満、約900nM未満、約800nM未満、約700nM未満、約600nM未満、約500nM未満、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、または、約100nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、または、約10nM未満のIC50を示す。
【0045】
様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、ヒトCLDN6への結合において参照抗体と競合することにより、インビトロ競合結合アッセイで測定する際に、参照抗体に結合するヒトCLDN6の量を減少させる。様々な態様では、インビトロ競合結合アッセイは、特定量の本開示の抗原結合タンパク質の存在下または不存在下において、参照抗体のFcに結合した蛍光体コンジュゲート二次抗体の蛍光を測定するFACSベースアッセイである。このようなFACSベースアッセイは本明細書の実施例に記載されている。様々な態様では、FACSベースアッセイは、参照抗体、蛍光体コンジュゲート二次抗体、及び、CLDN6を発現する細胞を用いて実施される。様々な態様では、細胞はCLDN6を過剰発現するように遺伝子組換えされている。一部の態様では、細胞は、ウイルスベクターを用いてCLDN6を発現するように形質導入されたHEK293T細胞である。代替態様では、細胞はCLDN6を内在的に発現する。一部の態様では、FACSベースアッセイを実施する前に、CLDN6を内在的に発現する細胞を、CLDN6低発現細胞またはCLDN6高発現細胞と予め定める。一部の態様では、細胞はがん細胞または腫瘍細胞である。様々な態様では、細胞は、細胞株、例えば、卵巣細胞株、子宮内膜細胞株、膀胱細胞株、肺細胞株、消化管(GI)細胞株、肝細胞株、肺細胞株などに由来する細胞である。様々な態様では、CLDN6を内在的に発現する細胞は、OVCA429卵巣細胞、ARK2子宮内膜細胞、OAW28卵巣細胞、UMUC-4膀胱細胞、PEO14卵巣細胞、OV177卵巣細胞、H1693肺細胞、MKN7上部GI細胞、OV-90卵巣細胞、HUH-7肝細胞、JHOS-4卵巣細胞、H1435肺細胞、及び、NUGC3上部GI細胞からなる群から選択される。様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、ARK2細胞、OVCA429細胞、LS513細胞、または、MCF7細胞のうちの1つまたは複数が内在的に発現するCLDN6に高い親和性で結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ARK2細胞、OVCA429細胞、LS513細胞、または、MCF7細胞のうちの1つまたは複数を使用したFACSベース競合的結合阻害アッセイで測定する際に、約3000nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ARK2細胞、OVCA429細胞、LS513細胞、または、MCF7細胞のうちの1つまたは複数を使用したFACSベース競合的結合阻害アッセイで測定する際に、約2500nM未満、約2000nM未満、約1750nM未満、約1500nM未満、約1250nM未満、約1000nM未満、約750nM未満、または、約500nM未満のIC50を示す。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、ARK2細胞、OVCA429細胞、LS513細胞、または、MCF7細胞のうちの1つまたは複数を使用したFACSベース競合的結合阻害アッセイで測定する際に、約400nM未満、約300nM未満、約200nM未満、約100nM未満、約75nM未満、約50nM未満、約25nM未満、または、約10nM未満のIC50を示す。
【0046】
その他の結合アッセイ、例えば、抗体が抗原またはそのエピトープへの結合において第2の抗体と競合する能力を試験する、競合結合アッセイ、すなわち、競合アッセイは、当該技術分野において周知である。例えば、Trikha et al.,Int J Cancer 110:326-335(2004);Tam et al.,Circulation 98(11):1085-1091(1998).米国特許出願公開第US20140178905号,Chand et al.,Biologicals 46:168-171(2017);Liu et al.,Anal Biochem 525:89-91(2017);及びGoolia et al.,J Vet Diagn Invest 29(2):250-253(2017)を参照されたい。2つの抗体を比較するためのその他の方法も当該技術分野において周知であり、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)が挙げられる。SPRを使用して、抗体及び第2の抗体の結合定数を測定することができ、2つの結合定数を比較することができる。
【0047】
抗体を製造するための方法及び関連方法
抗原結合タンパク質(例えば、抗体、抗原結合抗体フラグメント、及び、抗体タンパク質産物)を製造するための好適な方法は当該技術分野において周知である。例えば、抗体を製造するための標準的なハイブリドーマ法については、例えば、Harlow and Lane(eds.),Antibodies:A Laboratory Manual,CSH Press(1988),及びCA.Janeway et al.(eds.),Immunobiology,5th Ed.,Garland Publishing,New York,NY(2001)に記載されている。本開示のCLDN6モノクローナル抗体を調製するための様々な方法は、本明細書の実施例に記載されている。
【0048】
宿主種に応じて様々なアジュバントを使用し、免疫応答を亢進させて、宿主によるより多い抗体産生をもたらすことができる。このようなアジュバントとしては、フロイントアジュバント、鉱物ゲル、例えば、水酸化アルミニウムなど、ならびに、界面活性物質、例えば、リゾレシチン、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、キーホールリンペットヘモシアニン、及び、ジニトロフェノールなど、が挙げられるがこれらに限定されない。BCG(bacilli Calmette-Guerin)及びCorynebacterium parvumは潜在的に有用なヒトアジュバントである。
【0049】
抗体を製造するためのその他の方法については表1にまとめている。
【0050】
【表1】
【0051】
どのように抗体が製造されるかに関係なく抗体がCLDN6のエピトープに結合する能力を試験するための方法は、当該技術分野において周知であり、任意の抗体-抗原結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降、SPR、及び、競合的阻害アッセイなどが挙げられる(例えば、Janeway et al.,infra,及び米国特許出願公開第2002/0197266号、ならびに、競合アッセイに関する上記セクションを参照のこと)。
【0052】
配列/構造
本明細書では、(a)表Aに記載の重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:11、17、23、29、35、41、47、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、及び、131からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表Aに記載のHC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、86、102、108、114、120、126、及び、132からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(c)表Aに記載のHC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:13、19、25、31、37、43、49、55、61、67、73、79、85、91、97、103、109、115、121、127、及び、133からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(d)表Aに記載の軽鎖(LC)CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:8、14、20、32、38、44、50、56、62、68、74、80、86、92、98、104、110、116、122、及び、128からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(e)表Aに記載のLC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:9、15、21、27、33、39、45、51、57、63、69、75、81、87、93、99、105、111、117、123、及び、129からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(f)表Aに記載のLC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:10、16、22、28、34、40、46、52、58、64、70、76、82、88、94、100、106、112、118、124、及び、130からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(g)(a)~(f)のいずれか2つ以上の組み合わせ、を含む、抗原結合タンパク質を提供する。
【0053】
【表2】
【0054】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、表Aに記載のLC CDR1アミノ酸配列、LC CDR2アミノ酸配列、及び、LC CDR3アミノ酸配列、ならびに、表Aに記載のHC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、表Aに記載のHC CDR1アミノ酸配列、HC CDR2アミノ酸配列、及び、HC CDR3アミノ酸配列、ならびに、表Aに記載のLC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。
【0055】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表Aの単一行の配列番号:が示すアミノ酸配列のうちの少なくとも3つ、4つ、または5つを含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表Aの単一行の配列番号:が示すLC CDRアミノ酸配列のそれぞれ、及び、表Aの単一行の配列番号:が示すHC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表Aの単一行の配列番号:が示すHC CDRアミノ酸配列のそれぞれ、及び、表Aの単一行の配列番号:が示すLC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表Aの単一行の配列番号:が示す6つ全てのCDRアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:74~79、(b)配列番号:50~55、(c)配列番号:122~127、(d)配列番号:26~31、(e)配列番号:128~133、(f)配列番号:38~43、(g)配列番号:62~67、(h)配列番号:80~85、(i)配列番号:44~49、(j)配列番号:86~91、(k)配列番号:104~109、(l)配列番号:56~61、(m)配列番号:32~37、(n)配列番号:110~115、(o)配列番号:98~103、(p)配列番号:92~97、(q)配列番号:116~121、(r)配列番号:8~13、(s)配列番号:68~73、(t)配列番号:14~19、及び、(u)配列番号:20~25、からなる群から選択される6つのCDRアミノ酸配列を含む。
【0056】
様々な例では、表Aのアミノ酸配列は、少なくとも1つまたは複数(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の介在アミノ酸(複数可)によって分離されている。様々な例では、LC CDR1の配列とLC CDR2の配列の間には約10~約20のアミノ酸があり、LC CDR2の配列とLC CDR3の配列の間には約25~約40のアミノ酸がある。様々な例では、LC CDR1の配列とLC CDR2の配列の間には約14~約16のアミノ酸があり、LC CDR2の配列とLC CDR3の配列の間には約30~約35のアミノ酸がある。様々な例では、HC CDR1の配列とHC CDR2の配列の間には約10~約20のアミノ酸があり、HC CDR2の配列とHC CDR3の配列の間には約25~約40のアミノ酸がある。様々な例では、HC CDR1の配列とHC CDR2の配列の間には約14~約16のアミノ酸があり、HC CDR2の配列とHC CDR3の配列の間には約30~約35のアミノ酸がある。
【0057】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)表Bに記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、及び、175からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表Bに記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、及び、176からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(c)(a)と(b)の両方、を含む。
【0058】
【表3】
【0059】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:156及び157、(b)配列番号:148及び149、(c)配列番号:172及び173、(d)配列番号:140及び141、(e)配列番号:174及び175、(f)配列番号:144及び145、(g)配列番号:152及び153、(h)配列番号:158及び159、(i)配列番号:146及び147、(j)配列番号:160及び161、(k)配列番号:166及び167、(l)配列番号:150及び151、(m)配列番号:142及び143、(n)配列番号:168及び169、(o)配列番号:164及び165、(p)配列番号:162及び163、(q)配列番号:170及び171、(r)配列番号:134及び135、(s)配列番号:154及び155、(t)配列番号:136及び137、ならびに、(u)配列番号:138及び139、からなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む。
【0060】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号:179及び180の配列がコードする一対のアミノ酸配列を含まない。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号:181及び182の一対のアミノ酸配列を含まない。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号:183及び184の配列がコードする一対のアミノ酸配列を含まない。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号:185及び186の一対のアミノ酸配列を含まない。
【0061】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、上で言及したアミノ酸配列に類似したアミノ酸配列を含み、更に、抗原結合タンパク質は、その生物学的機能、例えば、ヒトCLDN6に結合し腫瘍増殖を抑制してがんを治療するその能力を実質的に保持している。
【0062】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、上で言及したアミノ酸配列(複数可)と比較してわずか1、2、3、4、5、6、またはそれ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、言及した配列の変異配列を含み、変異配列は、言及した配列と比較してわずか1つまたは2つのアミノ酸が異なる。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、CDRの外側で生じる1つまたは複数のアミノ酸置換、例えば、重鎖または軽鎖のフレームワーク領域(複数可)の内側で生じる1つまたは複数のアミノ酸置換、を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は1つまたは複数のアミノ酸置換を含み、更に、抗原結合タンパク質は6つのCDRのアミノ酸配列を保持している。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、上で言及したアミノ酸配列(複数可)と比較してわずか1、2、3、4、5、6、またはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有するアミノ酸配列を含む。本明細書で使用する場合、用語「保存的アミノ酸置換」とは、あるアミノ酸を、類似特性、例えば、サイズ、電荷、疎水性、親水性及び/または芳香族性を有する別のアミノ酸で置換することを意味し、以下の5つの基、
I. 小さな脂肪族の非極性またはわずかに極性の残基:
Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
II. 極性で負に荷電した残基、ならびに、そのアミド及びエステル:
Asp、Asn、Glu、Gln、システイン酸、及びホモシステイン酸;
III. 極性で正に荷電した残基:
His、Arg、Lys、オルニチン(Orn);
IV. 大きな脂肪族の非極性残基:
Met、Leu、Ile、Val、Cys、ノルロイシン(Nle)、ホモシステイン;
V. 大きな芳香族残基:
Phe、Tyr、Trp、アセチルフェニルアラニン;
のうちの1つの内部における交換が挙げられる。
【0063】
様々な態様では、保存的アミノ酸置換は、以下のアミノ酸の基のうちの1つの内部における交換である。
【0064】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、上で言及したアミノ酸配列に対して30%超または約30%、50%超または約50%、または、70%超または約70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、上で言及したアミノ酸配列に対して、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の配列同一性を有する、または、90%超の配列同一性を有する、アミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、上で言及したアミノ酸配列の全長に対して、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%の配列同一性を有する、または、90%超の配列同一性を有する、アミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、上で言及したアミノ酸配列の全長に対して少なくとも95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0065】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は言及した配列の変異配列を含み、変異配列は、上で言及した配列に対して少なくとも70%または約70%の配列同一性を有している。様々な態様では、抗原結合タンパク質は言及した配列の変異配列を含み、変異配列は、上で言及した配列に対して少なくとも80%または約80%の配列同一性を有している。様々な態様では、抗原結合タンパク質は言及した配列の変異配列を含み、変異配列は、上で言及した配列に対して少なくとも90%または約90%の配列同一性を有している。様々な態様では、抗原結合タンパク質は言及した配列の変異配列を含み、変異配列は、上で言及した配列に対して少なくとも95%または約95%の配列同一性を有している。
【0066】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表Aの単一行の配列番号:のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、または、5つの配列、及び、配列番号:8~133のいずれかに対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する少なくとも1つの変異配列、を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:74~79、(b)配列番号:50~55、(c)配列番号:122~127、(d)配列番号:26~31、(e)配列番号:128~133、(f)配列番号:38~43、(g)配列番号:62~67、(h)配列番号:80~85、(i)配列番号:44~49、(j)配列番号:86~91、(k)配列番号:104~109、(l)配列番号:56~61、(m)配列番号:32~37、(n)配列番号:110~115、(o)配列番号:98~103、(p)配列番号:92~97、(q)配列番号:116~121、(r)配列番号:8~13、(s)配列番号:68~73、(t)配列番号:14~19、及び、(u)配列番号:20~25、から選択されるセットの配列のうちの1つ、2つ、3つ、4つ、または、5つの配列を含み、抗原結合タンパク質は、セットの配列のうちの少なくとも1つに対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する少なくとも1つの変異配列を更に含む。例えば、様々な態様では、抗原結合タンパク質は、配列番号:74~79のうちの4つの配列、すなわち、配列番号:74~77を含み、抗原結合タンパク質は、2つの変異配列、配列番号:78に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する1つの変異配列、及び、配列番号:79に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する別の変異配列、を含む。
【0067】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、配列番号:134~175のいずれかに対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する一対の変異配列を含む。様々な例では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:156及び157、(b)配列番号:148及び149、(c)配列番号:172及び173、(d)配列番号:140及び141、(e)配列番号:174及び175、(f)配列番号:144及び145、(g)配列番号:152及び153、(h)配列番号:158及び159、(i)配列番号:146及び147、(j)配列番号:160及び161、(k)配列番号:166及び167、(l)配列番号:150及び151、(m)配列番号:142及び143、(n)配列番号:168及び169、(o)配列番号:164及び165、(p)配列番号:162及び163、(q)配列番号:170及び171、(r)配列番号:134及び135、(s)配列番号:154及び155、(t)配列番号:136及び137、ならびに、(u)配列番号:138及び139、に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する一対の変異配列を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、一対の配列、表Bの1つの配列、及び、配列番号:134~175のいずれかに対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する変異配列である別の配列を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、一対の配列、(a)配列番号:156及び157、(b)配列番号:148及び149、(c)配列番号:172及び173、(d)配列番号:140及び141、(e)配列番号:174及び175、(f)配列番号:144及び145、(g)配列番号:152及び153、(h)配列番号:158及び159、(i)配列番号:146及び147、(j)配列番号:160及び161、(k)配列番号:166及び167、(l)配列番号:150及び151、(m)配列番号:142及び143、(n)配列番号:168及び169、(o)配列番号:164及び165、(p)配列番号:162及び163、(q)配列番号:170及び171、(r)配列番号:134及び135、(s)配列番号:154及び155、(t)配列番号:136及び137、ならびに、(u)配列番号:138及び139、から選択される1つの配列、ならびに、(a)~(u)の配列に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する変異配列である別の配列、を含む。例えば、様々な態様では、抗原結合タンパク質は配列番号:134の配列を含み、抗原結合タンパク質は、配列番号:135に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する変異配列を更に含む。
【0068】
様々な例では、抗原結合タンパク質は、反応性アミノ酸を減少させるまたは除去して望ましくない側鎖反応を低下させるまたは防止するための1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、上で言及したアミノ酸配列のアミノ酸配列を含む。例えば、抗原結合タンパク質は、1つまたは複数の、(i)His、TyrもしくはPheで置換されたTrp残基、(ii)Gln、Ser、AlaもしくはAspで置換されたAsn残基、(iii)Ala、SerもしくはGluで置換されたPro残基の直前に存在するAsp残基、(iv)Gln、SerもしくはAlaで置換されたAsn残基、及び/または、(v)Tyr、SerもしくはAlaで置換されたCys残基、を有する、上で言及したアミノ酸配列のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、SHMイベントに基づいて、または、多数のその他の類似抗体配列の統計解析に基づいて、より高い結合親和性、より高い安定性、または、その他の好ましい特性を有することが予測されるアミノ酸置換を有する、上で言及したアミノ酸配列のアミノ酸配列を含む。一部の態様では、抗原結合タンパク質は、(a)表A1に記載のHC CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:452、455、461、465、71、及び、472からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表A1に記載のHC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:475、456、462、466、468、及び、473からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(c)表A1に記載のHC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:453、457、463、467、469、及び、474からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(d)表A1に記載のLC CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:449、476、458、464、68、及び、470からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(e)表A1に記載のLC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:450、477、459、57、69、及び、471からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(f)表A1に記載のLC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:451、454、460、58、70、及び、112からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(g)(a)~(f)のいずれか2つ以上の組み合わせ、を含む。
【0069】
【表4】
【0070】
一部の態様では、HC CDR1は配列番号:452のN末端に隣接したGlyを含み、任意選択的に、一部の態様では、HC CDR1は配列番号:452のC末端に隣接したMXを含み、式中、Xは、H、N、または、Sである。様々な態様では、HC CDR3は配列番号:453のN末端に隣接したAlaを含む。様々な態様では、LC CDR1は、配列番号:449のN末端に隣接したTAS、及び任意選択的に、配列番号:449のC末端に隣接したXHを更に含み、式中、Xは、H、S、Y、または、Qである。一部の態様では、以下に記載するとおり、配列番号:449の最初のアミノ酸はSまたはQである。一部の態様では、以下に記載するとおり、配列番号:451の最初のアミノ酸はSまたはQである。
【0071】
様々な態様では、HC CDR1は配列番号:455のN末端に隣接するGlyを含み、任意選択的に、様々な態様では、HC CDR1は配列番号:455のC末端に隣接したMXを含み、式中、Xは、N、S、または、Hである。一部の態様では、HC CDR2は、配列番号:456のN末端に隣接したGln、及び任意選択的に、配列番号:456のC末端に隣接したHを含む。様々な態様では、LC CDR1は、配列番号:476のN末端に隣接したRISを含み、任意選択的に、配列番号:476のC末端に隣接したLAを含む。様々な態様では、LC CDR2は配列番号:477のC末端に隣接したXLVEを含み、式中、XはIまたはSである。
【0072】
様々な態様では、HC CDR1は配列番号:461のC末端に隣接したMHを含む。様々な態様では、HC CDR2は、配列番号:462のN末端に隣接したTyr、及び任意選択的に、配列番号:462のC末端に隣接したTHを含む。例示的な態様では、HC CDR3は、配列番号:463の最初の2つのアミノ酸を含まない。様々な態様では、LC CDR1は、配列番号:458のN末端に隣接したRSS、及び任意選択的に、配列番号:458のC末端に隣接したLNを含む。様々な態様では、LC CDR2は配列番号:459のC末端に隣接したXRFSを含み、式中、Xは、Q、S、A、または、Dである。
【0073】
様々な態様では、HC CDR1は配列番号:465のC末端に隣接したMHを含む。様々な態様では、HC CDR2は、配列番号:466のN末端に隣接したYI、及び任意選択的に、配列番号:466のC末端に隣接したXaaを含み、式中、Xaaは、N、S、Q、または、Aである。様々な態様では、LC CDR1は、配列番号:464のN末端に隣接したLAS、及び任意選択的に、配列番号:464のC末端に隣接したLAを含む。様々な態様では、LC CDR2は配列番号:57のC末端に隣接したSLADを含む。
【0074】
様々な態様では、HC CDR1は配列番号:71のC末端に隣接したMHを含む。様々な態様では、HC CDR2は、配列番号:468のN末端に隣接したTyr、及び任意選択的に、配列番号:468のC末端に隣接したIYを含む。様々な態様では、LC CDR1は、配列番号:68のN末端に隣接したRAS、及び任意選択的に、配列番号:68のC末端に隣接したSYIHを含む。様々な態様では、LC CDR2は配列番号:69のC末端に隣接したXLESを含み、式中、Xは、N、Q、S、A、または、Dである。
【0075】
様々な態様では、LC CDR1は、配列番号:470のN末端に隣接したKSS、及び任意選択的に、配列番号:470のC末端に隣接したYLAを含む。様々な態様では、LC CDR2は配列番号:471のC末端に隣接したTRESを含む。様々な態様では、HC CDR1は配列番号:472のC末端に隣接したMNを含む。様々な態様では、HC CDR2は、配列番号:473のN末端に隣接したXaa(式中、Xaaは、N、Q、S、または、Aである)、及び任意選択的に、配列番号:473のC末端に隣接したThrを含む。
【0076】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、表A1に記載のLC CDR1アミノ酸配列、LC CDR2アミノ酸配列、及び、LC CDR3アミノ酸配列、ならびに、表A1に記載のHC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、表A1に記載のHC CDR1アミノ酸配列、HC CDR2アミノ酸配列、及び、HC CDR3アミノ酸配列、ならびに、表A1に記載のLC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。
【0077】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表A1の単一行の配列番号:が示すアミノ酸配列のうちの少なくとも3つ、4つ、または5つを含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表A1の単一行の配列番号:が示すLC CDRアミノ酸配列のそれぞれ、及び、表A1の単一行の配列番号:が示すHC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表A1の単一行の配列番号:が示すHC CDRアミノ酸配列のそれぞれ、及び、表A1の単一行の配列番号:が示すLC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表A1の単一行の配列番号:が示す6つ全てのCDRアミノ酸配列を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:449~453及び475、(b)配列番号:476~477、454~457、(c)配列番号:458~463、(d)配列番号:57、58、464~467、(e)配列番号:68~71及び468~469、ならびに、(f)配列番号:112及び470~474、からなる群から選択される6つのCDRアミノ酸配列を含む。
【0078】
様々な例では、表A1のアミノ酸配列は、少なくとも1つまたは複数(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上)の介在アミノ酸(複数可)によって分離されている。様々な例では、LC CDR1の配列とLC CDR2の配列の間には約10~約20のアミノ酸があり、LC CDR2の配列とLC CDR3の配列の間には約25~約40のアミノ酸がある。様々な例では、LC CDR1の配列とLC CDR2の配列の間には約14~約16のアミノ酸があり、LC CDR2の配列とLC CDR3の配列の間には約30~約35のアミノ酸がある。様々な例では、HC CDR1の配列とHC CDR2の配列の間には約10~約20のアミノ酸があり、HC CDR2の配列とHC CDR3の配列の間には約25~約40のアミノ酸がある。様々な例では、HC CDR1の配列とHC CDR2の配列の間には約14~約16のアミノ酸があり、HC CDR2の配列とHC CDR3の配列の間には約30~約35のアミノ酸がある。
【0079】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)表B1に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:478、480、482、484、486、及び、488からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表B1に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:479、481、483、485、487、及び、489からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(c)(a)と(b)の両方、を含む。
【0080】
【表5】
【0081】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:478及び479、(b)配列番号:480及び481、(c)配列番号:482及び483、(d)配列番号:484及び485、(e)配列番号:486及び487、ならびに、(f)配列番号:488及び489、からなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する、表B1に記載の配列番号:を有する配列の変異配列を含み、異なるアミノ酸(複数可)は、「ヒト化抗体」内の以下に記載する位置に存在している。
【0082】
ヒト化抗体
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、表A、表A1、表Bまたは表B1に記載の抗原結合タンパク質のヒト化型である。
【0083】
ヒト化AB1
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、5、8、11、12、13、20、31、33、35、38、40、48、50、55、57、59、61、65、66、67、68、70、72、74、76、79、80、82、87、90、91、98、101、及び、116のうちの1つまたは複数に、1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または、35)のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB1のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:428のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、20、31、35、48、50、59、67、70、74、79、98、101のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または、12)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB1のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:429のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0084】
【表6】
【0085】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、1、3、4、9、10、11、15、17、21、24、27、29、32、34、35、43、44、48、51、52、53、54、55、56、61、67、71、72、73、79、80、81、84、90、92、93、94、95、96、101、107のうちの1つまたは複数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、または、41)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB1のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:430のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、4、21、32、34、48、51、53、61、67、79、84、91、及び、93のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、または、13)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB1のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:431のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0086】
【表7】
【0087】
ヒト化AB3
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、3、5、18、19、23、31、33、35、40、42、49、50、52、53、54、55、56、57、58、59、61、64、76、79、80、81、87、94、95、99、106、112、114のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、または、33)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB3のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:432のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、31、35、50、55、79、99、106のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、または、7)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB3のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:433のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0088】
【表8】
【0089】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、9、17、18、25、27、28、30、34、40、43、45、48、50、52、53、55、56、70、72、74、76、84、85、90、91、93、94、97、及び、100のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または、29)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB3のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:434のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、25、34、48、53、55、84、85、90、及び、93のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、または、9)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB3のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:435のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0090】
【表9】
【0091】
ヒト化AB4
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、5、11、12、13、20、29、31、33、37、38、40、45、48、50、55、56、57、59、61、62、65、66、67、68、70、72、74、76、79、82、84、87、91、97、101、117のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、または、36)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB4のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:436のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、20、29、31、37、45、48、56、59、61、62、65、66、68、70、74、79、84、97、及び、101のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、または、19)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB4のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:437のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0092】
【表10】
【0093】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、7、14、17、18、31、33、39、41、42、44、50、51、55、57、60、81、88、92、94、95、96、99、100、105のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または、24)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB4のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:438のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、33、39、55、57、81、95、及び、96のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、または、7)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB4のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:439のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0094】
【表11】
【0095】
ヒト化AB18
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、5、9、11、12、20、38、40、41、43、44、48、61、65、67、68、70、72、74、76、79、82、84、87、91、及び、116のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または、25)に、任意選択的に、以下の位置、20、48、68、70、79のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、または、5)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB18のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:440または441のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0096】
【表12】
【0097】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、1、3、9、15、18、19、21、22、49、51、69、93、84、78、105、及び、111のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または、16)に、任意選択的に、以下の位置、19、21、または、84のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、または、3)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB18のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:442または443のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0098】
【表13】
【0099】
ヒト化AB9
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、1、5、9、11、12、20、38、40、41、43、44、48、61、63、65、67、69、70、72、73、74、76、79、84、87、91、93、112、及び、113のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または、29)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB9のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:444のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0100】
【表14】
【0101】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、9、11、15、17、18、43、45、70、72、73、74、80、84、85、及び、100のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または、15)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB9のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:445のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0102】
【表15】
【0103】
ヒト化AB11
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、重鎖可変領域内の以下の位置、1、15、18、19、42、49、63、75、76、78、80、84、88、及び、93のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または、15)に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB11のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:446のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0104】
【表16】
【0105】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軽鎖可変領域内の以下の位置、4、9、17、22、64、78、80、81、82、83、84、87、89、104、及び、110のうちの1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または、15)に、任意選択的に、以下の位置、4、82、110のうちの1つまたは複数に、1つまたは複数のアミノ酸置換を有する、表BまたはB1に記載のAB11のヒト化型である。様々な例では、抗原結合タンパク質は配列番号:447または448のアミノ酸配列を含む。様々な態様では、上で列挙した位置のアミノ酸は、以下の表に記載のアミノ酸から選択される。
【0106】
【表17】
【0107】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)表Cに記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:376~379、384~387、391~396、403~408、412、413、416~419、及び、422~427からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なる、または、少なくとも70%もしくは約70%、約80%、約85%、約90%、もしくは、約95%の配列同一性を有するその変異配列、(b)表Cに記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:380~383、388~390、397~402、409~411、414、415、420、及び、421からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なる、または、少なくとも70%もしくは約70%、約80%、約85%、約90%、もしくは、約95%の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(c)(a)と(b)の両方、を含む。
【0108】
【表18】
【0109】
様々な実施形態では、ヒト化抗原結合タンパク質は、表Dに示す一対のアミノ酸配列を含む。
【0110】
【表19】
【0111】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、表Cに記載の配列番号:に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性をそれぞれが有する一対の変異配列を含む。様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、一対の配列、表Cに記載の配列番号:から選択される1つの配列、及び、表Dに記載の配列番号:を有する配列あるいは表Cに記載の配列番号:を有する配列に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する変異配列である別の配列、を含む。
【0112】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、一対の配列、表Dに記載の配列番号:から選択される1つの配列、及び、表Dに記載の配列番号:を有する配列に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する変異配列である別の配列、を含む。例えば、様々な態様では、抗原結合タンパク質は配列番号:419の配列を含み、抗原結合タンパク質は、配列番号:421に対して少なくとも70%または約70%(例えば、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%)の配列同一性を有する変異配列を更に含む。
【0113】
核酸
本開示は更に、本開示の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を提供する。本明細書で使用する場合、「核酸」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」及び「核酸分子」を含み、一般的に、一本鎖または二本鎖であり得、天然資源から合成または取得(例えば、単離及び/または精製される)され得るDNAもしくはRNAのポリマーまたはその修飾形態、天然、非天然または改変されたヌクレオチドを含有し得るDNAもしくはRNAのポリマーまたはその修飾形態、及び、未修飾オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間に存在するホスホジエステルの代わりに、天然、非天然または改変されたヌクレオチド間連結部、例えば、ホスホロアミデート連結部またはホスホロチオエート連結部などを含有し得るDNAもしくはRNAのポリマーまたはその修飾形態、のことを意味する。核酸は、本開示の抗原結合タンパク質のいずれかをコードする任意のヌクレオチド配列を含み得る。様々な態様では、核酸は、(a)表AまたはA1に記載の重鎖(HC)相補性決定領域(CDR)1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:11、17、23、29、35、41、47、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、452、455、461、465、及び、472からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表AまたはA1に記載のHC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、86、102、108、114、120、126、132、475、456、462、466、468、及び、473からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(c)表AまたはA1に記載のHC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:13、19、25、31、37、43、49、55、61、67、73、79、85、91、97、103、109、115、121、127、133、453、457、463、467、469、及び、474からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(d)表AまたはA1に記載の軽鎖(LC)CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:8、14、20、32、38、44、50、56、62、68、74、80、86、92、98、104、110、116、122、128、449、476、458、464、及び、470からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(e)表AまたはA1に記載のLC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:9、15、21、27、33、39、45、51、57、63、69、75、81、87、93、99、105、111、117、123、129、450、477、459、及び、471からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(f)表AまたはA1に記載のLC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:10、16、22、28、34、40、46、52、58、64、70、76、82、88、94、100、106、112、118、124、130、451、454、及び、460からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(g)(a)~(f)のいずれか2つ以上の組み合わせ、を含む、抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な態様では、核酸は、表AまたはA1に記載のLC CDR1アミノ酸配列、LC CDR2アミノ酸配列、及び、LC CDR3アミノ酸配列、ならびに、表AまたはA1に記載のHC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む、抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な態様では、核酸は、表AまたはA1に記載のHC CDR1アミノ酸配列、HC CDR2アミノ酸配列、及び、HC CDR3アミノ酸配列、ならびに、表AまたはA1に記載のLC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、を含む、抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な実施形態では、核酸は、(a)表AまたはA1の単一行の配列番号:が示すアミノ酸配列のうちの少なくとも3つ、4つ、または5つ、(b)表AまたはA1の単一行の配列番号:が示すLC CDRアミノ酸配列のそれぞれ、及び、表AまたはA1の単一行の配列番号:が示すHC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、(c)表AまたはA1の単一行の配列番号:が示すHC CDRアミノ酸配列のそれぞれ、及び、表AまたはA1の単一行の配列番号:が示すLC CDRアミノ酸配列のうちの少なくとも1つまたは2つ、(d)表Aの単一行の配列番号:が示す6つ全てのCDRアミノ酸配列、及び/または、(e)(a)配列番号:74~79、(b)配列番号:50~55、(c)配列番号:122~127、(d)配列番号:26~31、(e)配列番号:128~133、(f)配列番号:38~43、(g)配列番号:62~67、(h)配列番号:80~85、(i)配列番号:44~49、(j)配列番号:86~91、(k)配列番号:104~109、(l)配列番号:56~61、(m)配列番号:32~37、(n)配列番号:110~115、(o)配列番号:98~103、(p)配列番号:92~97、(q)配列番号:116~121、(r)配列番号:8~13、(s)配列番号:68~73、(t)配列番号:14~19、(u)配列番号:20~25、(v)配列番号:449~453及び475、(w)配列番号:476~477、454~457、(x)配列番号:458~463、(y)配列番号:57、58、464~467、(z)配列番号:68~71及び468~469、ならびに、(aa)配列番号:112、及び470~474、からなる群から選択される6つのCDRアミノ酸配列、を含む、抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な実施形態では、核酸は、(a)表BまたはB1に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、175、478、480、482、484、486、及び、488からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表BまたはB1に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、176、479、481、483、485、487、及び、489からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも80%または約80%、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%、少なくとも95%または約95%)の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(c)(a)と(b)の両方、を含む、抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な実施形態では、核酸は、(a)配列番号:156及び157、(b)配列番号:148及び149、(c)配列番号:172及び173、(d)配列番号:140及び141、(e)配列番号:174及び175、(f)配列番号:144及び145、(g)配列番号:152及び153、(h)配列番号:158及び159、(i)配列番号:146及び147、(j)配列番号:160及び161、(k)配列番号:166及び167、(l)配列番号:150及び151、(m)配列番号:142及び143、(n)配列番号:168及び169、(o)配列番号:164及び165、(p)配列番号:162及び163、(q)配列番号:170及び171、(r)配列番号:134及び135、(s)配列番号:154及び155、(t)配列番号:136及び137、ならびに、(u)配列番号:138及び139、からなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な実施形態では、核酸は、表Dに記載のペアからなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む。様々な態様では、核酸は、配列番号:208~375のうちのいずれか1つまたは複数の配列を含むヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸は、挿入、欠失、逆位、及び/または、置換を何ら含まない。その他の実施形態では、核酸は、1つまたは複数の、挿入、欠失、逆位、及び/または、置換を含む。
【0114】
一部の態様では、本開示の核酸は組換えである。本明細書で使用する場合、用語「組換え」とは、(i)天然もしくは合成核酸セグメントを生細胞内で複製可能な核酸分子に結合させることにより生細胞外で構築された分子、または、(ii)上記(i)に記載の分子の複製から得られた分子、のことを意味する。本明細書の目的において、複製はインビトロ複製またはインビボ複製であり得る。
【0115】
一部の態様では、核酸は、当技術分野において周知の方法を使用した化学合成及び/または酵素ライゲーション反応に基づいて構築される。例えば、Sambrook et al.,(上記のとおり);及びAusubel et al.,(上記のとおり)を参照されたい。例えば、天然ヌクレオチド、または、分子の生物学的安定性が向上するもしくはハイブリダイゼーションにより形成された二本鎖(例えば、ホスホロチオエート誘導体及びアクリジン置換ヌクレオチド)の物理的安定性が向上するように設計された様々に修飾されたヌクレオチドを使用して、核酸を化学合成してもよい。核酸を作製するために使用可能な修飾ヌクレオチドの例としては、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン、イノシン、N-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N置換アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルクエオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-N-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、及び、2,6-ジアミノプリンが挙げられるがこれらに限定されない。あるいは、Macromolecular Resources(Fort Collins,CO)及びSynthegen(Houston,TX)などの会社から、本開示の核酸のうちの1つまたは複数を購入してもよい。
【0116】
ベクター
一部の態様では、本開示の核酸はベクター内に組み込まれている。これに関連して、本開示は、本明細書で開示する核酸のいずれかを含むベクターを提供する。様々な態様では、ベクターは組換え発現ベクターである。本明細書の目的において、用語「組換え発現ベクター」とは、遺伝子組換えオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド構築物がmRNA、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、細胞内においてmRNA、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを発現させるのに十分な条件下でベクターが細胞と接触する場合に、宿主細胞によるmRNA、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの発現を可能とする遺伝子組換えオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド構築物のことを意味する。本開示のベクターは全体として天然ではない。しかしながら、ベクターの一部は天然であってもよい。本明細書で開示するベクターは、一本鎖または二本鎖であり得、天然資源から部分的に合成または取得され得るDNA及びRNA、ならびに、天然、非天然または改変されたヌクレオチドを含有し得るDNA及びRNA、を含むがこれらに限定されない、任意のタイプのヌクレオチドを含んでいてもよい。ベクターは、天然もしくは非天然のヌクレオチド間連結部、または、両方のタイプの連結部を含んでいてもよい。一部の態様では、改変されたヌクレオチド、または、非天然のヌクレオチド間連結部は、ベクターの転写または複製を妨げない。
【0117】
本開示のベクターは、任意の好適なベクターであってもよく、任意の好適な宿主を、形質導入、形質転換またはトランスフェクションするのに使用されてもよい。好適なベクターとしては、伝播及び増殖を目的としたベクター、発現を目的としたベクター、またはその両方、例えば、プラスミド及びウイルスなどが挙げられる。ベクターはプラスミドベースの発現ベクターであってもよい。様々な態様では、ベクターは、pUCシリーズ(Fermentas Life Sciences)、pBluescriptシリーズ(Stratagene,LaJoIIa,CA)、pETシリーズ(Novagen,Madison,WI)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech,Uppsala,Sweden)、及び、pEXシリーズ(Clontech,Palo Alto,CA)、からなる群から選択される。λGT10、λGT11、λZapII(Stratagene)、λEMBL4、及び、λNMI149などのバクテリオファージベクターも使用してもよい。植物発現ベクターの例としては、pBI101、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、及び、pBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの例としては、pEUK-C1、pMAM、及び、pMAMneo(Clontech)が挙げられる。一部の態様では、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクターである。様々な態様では、ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、水疱性口内炎ウイルス(VSV)ベクター、ワクシニアウイルスベクター、または、レンチウイルスベクター、である。例えば、Howarth et al.,Cell Biol.Toxicol.26(1):1-20(2010)を参照されたい。様々な態様では、ベクターは、節足動物、例えば、昆虫が感染するバキュロウイルスベクターである。様々な態様では、バキュロウイルスベクターは、オートグラファカリフォルニア多核ウイルス(AcMNPV)またはカイコ核多角体病(BmNPV)である。例えば、Khan,Adv Pharm Bull 3(2):257-263(2013);Miller,Bioessays 11(4):91-96(1989);Atkinson et al.,Pestic Sci 28:215-224(1990)を参照されたい。
【0118】
本開示のベクターは、例えば、Sambrook et al.,(上記のとおり)及びAusubel et al.,(上記のとおり)に記載されている標準的な組換えDNA技術を使用して調製することができる。原核生物または真核生物の宿主細胞内において機能する複製系を含有するように、環状または直鎖状である発現ベクターの構築物を調製することができる。複製系は、例えば、CoIEl、2μプラスミド、λ、SV40、ウシパピローマウイルスなどに由来していてもよい。
【0119】
一部の態様では、ベクターは、必要に応じて、ベクターがDNAベースであるかまたはRNAベースであるかを考慮して、ベクターを導入する宿主(例えば、細菌、真菌、植物、または、動物)のタイプに特異的な、転写及び翻訳の開始コドン及び終止コドンなどの調節配列を含む。
【0120】
ベクターは、形質転換された宿主またはトランスフェクションされた宿主の選択を可能とする1つまたは複数のマーカー遺伝子を含んでいてもよい。マーカー遺伝子としては、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質、重金属などへの耐性、原栄養をもたらす栄養要求性宿主内における相補性、などが挙げられる。本明細書で開示する発現ベクター用の好適なマーカー遺伝子としては、例えば、ネオマイシン/G418耐性遺伝子、ヒグロマイシン耐性遺伝子、ヒスチジノール耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、及び、アンピシリン耐性遺伝子、が挙げられる。
【0121】
ベクターは、ポリペプチド(その機能部位または機能変異体を含む)をコードするヌクレオチド配列、または、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して相補的なヌクレオチド配列、もしくは、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列、に機能的に連結する天然または非天然のプロモーターを含んでいてもよい。プロモーター(例えば、強い、弱い、誘導性の、組織特異的及び発達特異的な)の選択は、当業者の知るところである。同様に、ヌクレオチド配列をプロモーターと組み合わせることについても、当業者の知るところである。プロモーターは、非ウイルスプロモーターまたはウイルスプロモーター、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター、及び、マウス幹細胞ウイルスの長末端反復配列内に存在するプロモーターであってもよい。
【0122】
宿主細胞
本明細書では、本開示の核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。本明細書で使用する場合、用語「宿主細胞」とは、本明細書で開示するベクターを含有することができ、核酸がコードする発現産物(例えば、mRNA、タンパク質)を産生することができる、任意のタイプの細胞のことを意味する。一部の態様では、宿主細胞は、接着細胞または懸濁細胞、すなわち、懸濁液中で増殖する細胞である。様々な態様では、宿主細胞は、培養細胞、または、初代細胞、すなわち、生物、例えば、ヒトから直接単離されたものである。宿主細胞は、任意の細胞タイプであってもよく、任意のタイプの組織を起源としていてもよく、任意の発達段階であってもよい。
【0123】
様々な態様では、抗原結合タンパク質はグリコシル化タンパク質であり、宿主細胞はグリコシル化コンピテント細胞である。様々な態様では、グリコシル化コンピテント細胞は、イースト細胞、糸状菌細胞、原生動物細胞、藻細胞、昆虫細胞、または、哺乳動物細胞、を含むがこれらに限定されない真核細胞である。このような宿主細胞については当該技術分野において説明がなされている。例えば、Frenzel,et al.,Front Immunol 4:217(2013)を参照されたい。様々な態様では、真核細胞は哺乳動物細胞である。様々な態様では、哺乳動物細胞は非ヒト哺乳動物細胞である。一部の態様では、細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞及びその誘導体(例えば、CHO-K1、CHO pro-3)、マウス骨髄腫細胞(例えば、NS0、GS-NS0、Sp2/0)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)活性を欠損するように遺伝子操作された細胞(例えば、DUKX-X11、DG44)、ヒト胎児腎臓293(HEK293)細胞もしくはその誘導体(例えば、HEK293T、HEK293-EBNA)、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS細胞、VERO細胞)、ヒト子宮頸癌細胞(例えば、HeLa)、ヒト骨骨肉腫上皮細胞U2-OS、腺癌性ヒト肺胞基底上皮細胞A549、ヒト線維肉腫細胞HT1080、マウス脳腫瘍細胞CAD、胚性がん細胞P19、マウス胚線維芽細胞NIH 3T3、マウス線維芽細胞L929、マウス神経芽細胞腫細胞N2a、ヒト乳癌細胞MCF-7、網膜芽細胞腫細胞Y79、ヒト網膜芽細胞腫細胞SO-Rb50、ヒト肝臓癌細胞Hep G2、マウスB骨髄腫細胞J558L、または、仔ハムスター腎(BHK)細胞(Gaillet et al.2007;Khan,Adv Pharm Bull 3(2):257-263(2013))である。
【0124】
一部の態様では、ベクターを増幅または複製するための宿主細胞は、原核細胞、例えば、細菌細胞である。
【0125】
本開示で更に提供するのは、本明細書に記載の少なくとも1種の宿主細胞を含む細胞の集団である。一部の態様では、細胞の集団は、記載のベクターを含む宿主細胞に加えて、ベクターのいずれも含まない少なくとも1種のその他の細胞を含む、不均一な集団である。代替的に、一部の態様では、細胞の集団は、集団がベクターを含む宿主細胞を主に含む(例えば、ベクターを含む宿主細胞から本質的になる)、実質的に均一な集団である。一部の態様では、集団は、集団の全細胞がベクターを含む単一宿主細胞のクローンであり、その結果、集団の全細胞がベクターを含む、細胞のクローン集団である。本開示の様々な実施形態では、細胞の集団は、本明細書に記載のベクターを含む宿主細胞を含むクローン集団である。
【0126】
製造方法
本明細書では、CLDN6に結合する抗原結合タンパク質を製造するための方法についても提供する。様々な実施形態では、本方法は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を細胞培養培地内で培養すること、及び、細胞培養培地から抗原結合タンパク質を回収すること、を含む。宿主細胞は、本明細書に記載の宿主細胞のいずれかであってもよい。様々な態様では、宿主細胞は、CHO細胞、NS0細胞、COS細胞、VERO細胞、及び、BHK細胞からなる群から選択される。様々な態様では、宿主細胞を培養する工程は、増殖培地内で宿主細胞を培養して宿主細胞の成長及び増殖を持続させることを含む。様々な態様では、増殖培地は、細胞密度、培養物の生存能力、及び、生産性を適時な方法で向上させる。様々な態様では、増殖培地は、アミノ酸、ビタミン、無機塩、グルコース、及び、血清を、増殖因子、ホルモン、及び、付着因子の供給源として含む。様々な態様では、増殖培地は、アミノ酸、ビタミン、微量元素、無機塩、脂質、及び、インスリンまたはインスリン様増殖因子からなる完全合成培地である。栄養素に加え、増殖培地はまた、pH及び浸透圧の維持に役立つ。数種類の増殖培地が市販されており、当該技術分野において説明がなされている。例えば、Arora,“Cell Culture Media:A Review”MATER METHODS 3:175(2013)を参照されたい。
【0127】
様々な態様では、本方法は、フィード培地内で宿主細胞を培養することを含む。様々な態様では、本方法は、フィード培地内において流加培養法で培養することを含む。組換えタンパク質を製造するための方法は当該技術分野において周知である。例えば、Li et al.,“Cell culture processes for monoclonal antibody production”MAbs 2(5):466-477(2010)を参照されたい。
【0128】
抗原結合タンパク質を製造するための方法は、細胞培養液またはその上清からタンパク質を精製し、好ましくは、精製タンパク質を回収するための、1つまたは複数の工程を含んでいてもよい。様々な態様では、本方法は、1つまたは複数のクロマトグラフィー工程、例えば、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、を含む。様々な態様では、本方法は、プロテインAアフィニティークロマトグラフィー樹脂を使用してタンパク質を精製することを含む。
【0129】
様々な実施形態では、本方法は、精製タンパク質などを配合することにより、精製タンパク質を含む配合物を得るための工程を更に含む。このような工程については、Formulation and Process Development Strategies for Manufacturing, eds.Jameel and Hershenson,John Wiley & Sons,Inc.(Hoboken,NJ),2010に記載されている。
【0130】
様々な態様では、抗原結合タンパク質はポリペプチドに連結し、抗原結合タンパク質は融合タンパク質の一部である。それゆえ、本開示は、CLDN6に結合する抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質を製造するための方法を更に提供する。様々な実施形態では、本方法は、本明細書に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む宿主細胞を細胞培養培地内で培養すること、及び、細胞培養培地から融合タンパク質を回収すること、を含む。
【0131】
コンジュゲート
本開示はまた、第2の部分(例えば、非相同部分、コンジュゲート部分)に結合、連結またはコンジュゲートした抗原結合タンパク質を提供する。それゆえ、本開示は、抗原結合タンパク質と非相同部分を含むコンジュゲートを提供する。本明細書で使用する場合、用語「非相同部分」は、「コンジュゲート部分」と同義であり、本開示の抗原結合タンパク質とは異なる任意の分子(化学的または生化学的な、天然または非コードの)のことを意味する。様々な非相同部分としては、ポリマー、炭水化物、脂質、核酸、オリゴヌクレオチド、DNAもしくはRNA、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、治療薬(例えば、細胞傷害薬、サイトカイン)、または、診断薬、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0132】
一部の実施形態では、非相同部分はポリマーである。ポリマーは分枝鎖または非分枝鎖であってもよい。ポリマーは任意の分子量であってもよい。一部の実施形態では、ポリマーは約2kDa~約100kDaの平均分子量を有する(用語「約」は、水溶性ポリマーの製剤中において、記載した分子量と比較して、一部の分子の重量がより重く、一部がより軽いということを示している)。一部の態様では、ポリマーの平均分子量は、約5kDa~約50kDa、約12kDa~約40kDa、または、約20kDa~約35kDaである。
【0133】
一部の実施形態では、ポリマーは単一の反応性基(例えば、アシル化用の活性エステルまたはアルキル化用のアルデヒドなど)を有するように修飾されており、その結果、重合の度合いを制御することができている。一部の実施形態では、ポリマーは水溶性であり、その結果、ポリマーが結合するタンパク質は、生理学的環境などの水中環境において沈殿しない。一部の実施形態では、例えば、組成物を治療用途に使用する場合、ポリマーは薬学的に許容される。加えて、一部の態様では、ポリマーは、ポリマーの混合物、例えば、コポリマー、ブロックコポリマーである。
【0134】
一部の実施形態では、ポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアルキレン及びその誘導体(ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレートを含む)、アクリル酸エステルのポリマー及びメタクリル酸エステルのポリマー(ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、及び、ポリ(オクタデシルアクリレート)を含む)、ポリビニルポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリ(ビニルアセテート)、及び、ポリビニルピロリドンを含む)、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン及びそのコポリマー、セルロース(アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシルエチルセルロース、三酢酸セルロース、及び、硫酸セルロースナトリウム塩を含む)、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレン)グリコール、ポリ(エチレンオキシド)、及び、ポリ(エチレンテレフタレート)を含む)、ならびに、ポリスチレン、からなる群から選択される。
【0135】
本明細書で使用するのに特に好ましい水溶性ポリマーはポリエチレングリコール(PEG)である。本明細書で使用する場合、ポリエチレングリコールは、その他のタンパク質を誘導体化するために使用され得るPEGの形態のいずれか、例えば、モノ-(C1~C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールなどを包含することを意味する。PEGは、直鎖または分岐鎖の中性ポリエーテルであり、広範囲の分子量で利用可能であり、水及びほとんどの有機溶媒中において可溶性である。
【0136】
一部の実施形態では、非相同部分は炭水化物である。一部の実施形態では、炭水化物は、単糖(例えば、グルコース、ガラクトース、フルクトース)、二糖(例えば、スクロース、ラクトース、マルトース)、オリゴ糖(例えば、ラフィノース、スタキオース)、多糖(デンプン、アミラーゼ、アミロペクチン、セルロース、キチン、カロース、ラミナリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナン)、である。
【0137】
一部の実施形態では、非相同部分は脂質である。一部の実施形態では、脂質は、脂肪酸(エイコサノイド、プロスタグランジン、ロイコトリエン、トロンボキサン、N-アシルエタノールアミン)、グリセロ脂質(例えば、モノ-、ジ-、トリ-置換グリセロール)、グリセロリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン)、スフィンゴ脂質(例えば、スフィンゴシン、セラミド)、ステロール脂質(例えば、ステロイド、コレステロール)、プレノール脂質、糖脂質、または、ポリケチド、油、ワックス、コレステロール、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質、である。
【0138】
一部の実施形態では、非相同部分は治療薬である。治療薬は、当該技術分野において周知の治療薬のいずれかであってもよい。本明細書において検討される治療薬の例としては、天然酵素、天然資源に由来するタンパク質、組換えタンパク質、天然ペプチド、合成ペプチド、環状ペプチド、抗体、受容体作動薬、細胞傷害薬、免疫グロブリン、βアドレナリン遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、冠血管拡張薬、強心配糖体、抗不整脈薬、心臓交感神経作用薬、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、利尿薬、変力物質、コレステロール低下薬及び中性脂肪低下薬、胆汁酸隔離剤、フィブラート、3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル(HMG)-CoA還元酵素阻害薬、ナイアシン誘導体、抗アドレナリン作動薬、αアドレナリン遮断薬、中枢作用性抗アドレナリン作動薬、血管拡張薬、カリウム保持剤、サイアザイド及び関連薬剤、アンジオテンシンII受容体拮抗薬、末梢血管拡張薬、抗アンドロゲン剤、エストロゲン剤、抗生物質、レチノイド、インスリン及び類似体、α-グルコシダーゼ阻害薬、ビグアニド、メグリチニド、スルホニル尿素、チアゾリジンジオン、アンドロゲン剤、プロゲストゲン、骨代謝調節因子、下垂体前葉ホルモン、視床下部ホルモン、下垂体後葉ホルモン、ゴナドトロピン、ゴナドトロピン放出ホルモン拮抗薬、排卵誘発剤、選択的エストロゲン受容体調節因子、抗甲状腺薬、甲状腺ホルモン、バルク形成剤、緩下薬、蠕動抑制薬、細菌叢調節因子、腸内吸着剤、腸内抗感染薬、抗拒食症薬、抗悪液質薬、抗過食薬、食欲抑制剤、抗肥満薬、制酸薬、上部消化管薬、抗コリン薬、アミノサリチル酸誘導体、生物学的応答調節物質、コルチコステロイド、鎮痙剤、5-HT部分作動薬、抗ヒスタミン剤、カンナビノイド、ドーパミン拮抗薬、セロトニン拮抗薬、細胞保護薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、粘膜保護剤、プロトンポンプ阻害剤、H.pylori除菌治療薬、赤血球産生刺激剤、造血剤、貧血薬、ヘパリン、抗線維素溶解剤、止血薬、血液凝固因子、アデノシン二リン酸阻害剤、糖タンパク質受容体阻害剤、フィブリノゲン-血小板結合阻害剤、トロンボキサン-A阻害薬、プラスミノーゲン活性化因子、抗血栓薬、グルココルチコイド、鉱質コルチコイド、コルチコステロイド、選択的免疫抑制剤、抗真菌薬、予防治療、AIDS関連感染症、サイトメガロウイルスに関する薬剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害薬、ヌクレオシド類似体逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、貧血、カポジ肉腫、アミノ配糖体、カルバペネム、セファロスポリン、糖ペプチド、リンコサミド、マクロライド、オキサゾリジノン、ペニシリン、ストレプトグラミン、スルホンアミド、トリメトプリム及び誘導体、テトラサイクリン、駆虫薬、抗アメーバ薬、ビグアニド、キナ皮アルカロイド、葉酸拮抗薬、キノリン誘導体、Pneumocystis carinii治療薬、ヒドラジド、イミダゾール、トリアゾール、ニトロイミダゾール、環状アミン、ノイラミニダーゼ阻害剤、ヌクレオシド、リン吸着剤、コリンエステラーゼ阻害薬、補助療法薬、バルビツール酸及び誘導体、ベンゾジアゼピン、γアミノ酪酸誘導体、ヒダントイン誘導体、イミノスチルベン誘導体、スクシンイミド誘導体、抗痙攣薬、麦角アルカロイド、抗片頭痛製剤、生物学的応答調節物質、カルバミン酸エステル、三環式誘導体、脱分極薬、非脱分極薬、神経筋麻痺薬、CNS興奮薬、ドーパミン作動性試薬、モノアミン酸化酵素阻害薬、COMT阻害剤、アルキルスルホネート、エチレンイミン、イミダゾテトラジン、ナイトロジェンマスタード類似体、ニトロソウレア、白金含有化合物、代謝拮抗薬、プリン類似体、ピリミジン類似体、尿素誘導体、アントラサイクリン、アクチノマイシン、カンプトテシン誘導体、エピポドフィロトキシン、タキサン、ビンカアルカロイド及び類似体、抗アンドロゲン剤、抗エストロゲン剤、非ステロイド性アロマターゼ阻害薬、プロテインキナーゼ阻害性抗腫瘍剤、アザスピロデカンジオン誘導体、抗不安薬、興奮薬、モノアミン再取り込み阻害薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬、抗うつ薬、ベンズイソオキサゾール誘導体、ブチロフェノン誘導体、ジベンゾジアゼピン誘導体、ジベンゾチアゼピン誘導体、ジフェニルブチルピペリジン誘導体、フェノチアジン、チエノベンゾジアゼピン誘導体、チオキサンテン誘導体、アレルゲンエキス、非ステロイド剤、ロイコトリエン受容体拮抗薬、キサンチン、エンドセリン受容体拮抗薬、プロスタグランジン、肺界面活性剤、粘液溶解剤、抗有糸分裂薬、尿酸排泄薬、キサンチンオキシダーゼ阻害薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、メテナミン塩、ニトロフラン誘導体、キノロン、平滑筋弛緩薬、副交感神経作用薬、ハロゲン化炭化水素、アミノ安息香酸のエステル、アミド(例えば、リドカイン、アルチカイン塩酸塩、ブピバカイン塩酸塩)、解熱剤、催眠剤及び鎮静薬、シクロピロロン、ピラゾロピリミジン、非ステロイド性抗炎症薬、オピオイド、パラアミノフェノール誘導体、アルコールデヒドロゲナーゼ阻害剤、ヘパリン拮抗薬、吸着剤、吐剤、オピオイド拮抗薬、コリンエステラーゼ再賦活薬、ニコチン代替療法薬、ビタミンA類似体及び拮抗薬、ビタミンB類似体及び拮抗薬、ビタミンC類似体及び拮抗薬、ビタミンD類似体及び拮抗薬、ビタミンE類似体及び拮抗薬、ビタミンK類似体及び拮抗薬、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0139】
腫瘍転移を阻害するのに有効な1つまたは複数のサイトカイン及び増殖因子に本開示の抗原結合タンパク質をコンジュゲートしてもよく、サイトカインまたは増殖因子は、少なくとも1つの細胞集団に対する増殖抑制効果を有していることが判明している。このようなサイトカイン、リンフォカイン、増殖因子、または、その他の造血因子としては、M-CSF、GM-CSF、TNF、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IFN、TNFα、TNF1、TNF2、G-CSF、Meg-CSF、GM-CSF、トロンボポエチン、幹細胞因子、及び、エリスロポエチンが挙げられるがこれらに限定されない。本明細書で使用するための追加の増殖因子としては、アンジオジェニン、骨形成タンパク質-1、骨形成タンパク質-2、骨形成タンパク質-3、骨形成タンパク質-4、骨形成タンパク質-5、骨形成タンパク質-6、骨形成タンパク質-7、骨形成タンパク質-8、骨形成タンパク質-9、骨形成タンパク質-10、骨形成タンパク質-11、骨形成タンパク質-12、骨形成タンパク質-13、骨形成タンパク質-14、骨形成タンパク質-15、骨形成タンパク質受容体IA、骨形成タンパク質受容体IB、脳由来神経栄養因子、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養因子受容体α、サイトカイン誘導性好中球遊走因子1、サイトカイン誘導性好中球遊走因子2α、サイトカイン誘導性好中球遊走因子2β、β内皮細胞増殖因子、エンドセリン1、上皮由来好中球誘引物質、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α1、グリア細胞株由来神経栄養因子受容体α2、増殖関連タンパク質、増殖関連タンパク質α、増殖関連タンパク質β、増殖関連タンパク質γ、ヘパリン結合上皮増殖因子、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子受容体、インスリン様増殖因子II、インスリン様増殖因子結合タンパク質、ケラチノサイト増殖因子、白血病抑制因子、白血病抑制因子受容体α、神経成長因子、神経成長因子受容体、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、プレB細胞増殖刺激因子、幹細胞因子、幹細胞因子受容体、トランスフォーミング増殖因子α、トランスフォーミング増殖因子β、トランスフォーミング増殖因子β1、トランスフォーミング増殖因子β1.2、トランスフォーミング増殖因子β2、トランスフォーミング増殖因子β3、トランスフォーミング増殖因子β5、潜在型トランスフォーミング増殖因子β1、トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質I、トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質II、トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質III、I型腫瘍壊死因子受容体、II型腫瘍壊死因子受容体、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、ならびに、キメラタンパク質及びその生物学的または免疫学的に活性なフラグメント、が挙げられる。
【0140】
一部の実施形態では、コンジュゲートは本明細書に記載の抗原結合タンパク質及び細胞傷害薬を含む。細胞傷害薬は、細胞に対して毒性である任意の分子(化学的または生化学的)である。一部の態様では、細胞傷害薬を本開示の抗原結合タンパク質にコンジュゲートさせると、得られる結果は相乗的となる。言い換えると、抗原結合タンパク質と細胞傷害薬の組み合わせ治療薬の効果は相乗的であり、それはすなわち、効果は、それぞれ個々の相加効果から予測される効果よりも高いということである。それゆえ、細胞傷害薬の用量を減らすことができ、その結果、毒性問題及びその他副作用のリスクが同時に低下する。一部の実施形態では、細胞傷害薬は化学療法剤である。化学療法剤は当該技術分野において周知であり、米国特許第6,630,124号に記載の白金配位化合物、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生物質、抗有糸分裂性アルカロイド、及び、ジフルオロヌクレオシド、が挙げられるがこれらに限定されない。
【0141】
一部の実施形態では、化学療法剤は白金配位化合物である。用語「白金配位化合物」とは、イオン形態の白金をもたらす任意の腫瘍細胞増殖阻害白金配位化合物のことを意味する。一部の実施形態では、シスプラチンは、本開示の組成物及び方法に採用される白金配位化合物である。一部の実施形態では、化学療法剤はトポイソメラーゼ阻害剤である。一部の態様では、トポイソメラーゼ阻害剤はカンプトテシンまたはカンプトテシン類似体である。本開示のなおも更なるその他の実施形態では、化学療法剤は抗生物質化合物である。好適な抗生物質としては、ドキソルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、及び、ストレプトゾシン、が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、化学療法剤は抗有糸分裂性アルカロイドである。一般的に、抗有糸分裂性アルカロイドはニチニチソウから抽出可能であり、抗がん化学療法剤として有効であることが示されている。本開示のその他の実施形態では、化学療法剤はジフルオロヌクレオシドである。2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロヌクレオシドが抗ウイルス活性を有することは当該技術分野において周知である。このような化合物は、米国特許第4,526,988号及び4,808614号において開示及び教示されている。欧州特許出願公開184,365は、これら同一のジフルオロヌクレオシドが腫瘍崩壊活性を有していることを開示している。
【0142】
本開示はまた、コンジュゲートが融合タンパク質となるように、ポリペプチドに連結した本開示の抗原結合タンパク質を含むコンジュゲートを提供する。それゆえ、本開示は、ポリペプチドに連結した本開示の抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。様々な実施形態では、ポリペプチドは、診断用標識、例えば、緑色蛍光タンパク質などの蛍光タンパク質、または、その他のタグ、例えば、Mycタグである。様々な態様では、ポリペプチドは、上記のサイトカイン、リンフォカイン、増殖因子、または、その他の造血因子のうちの1つである。
【0143】
リンカー
一部の実施形態では、コンジュゲートは非相同部分に直接連結している。代替実施形態では、コンジュゲートは、本開示の化合物を非相同部分に結合させるリンカーを含む。一部の態様では、リンカーは、1~約60原子、1~30原子、もしくはそれ以上の長さ、2~5原子、2~10原子、5~10原子、または、10~20原子の長さの分子鎖を含む。一部の実施形態では、分子鎖の原子は全て炭素原子である。一部の実施形態では、リンカーの主鎖における分子鎖の原子は、C、O、N、及び、Sからなる群から選択される。分子鎖の原子及びリンカーは、より可溶性のコンジュゲートをもたらすために、それらの予測される溶解性(親水性)に従い選択してもよい。一部の実施形態では、リンカーは、標的組織もしくは標的器官または標的細胞内に存在する酵素もしくはその他の触媒または加水分解条件による開裂を受けやすい官能基を提供する。一部の実施形態では、リンカーの長さは、立体障害の可能性を低下させるのに十分長い。一部の実施形態では、リンカーはアミノ酸リンカーまたはペプチジルリンカーである。このようなペプチジルリンカーは任意の長さであってもよい。様々なリンカーは、約1~50アミノ酸長、5~50、3~5、5~10、5~15、または、10~30アミノ酸長である。
【0144】
組成物、医薬組成物及び製剤
本明細書では、本明細書で開示する抗原結合タンパク質、核酸、ベクター、宿主細胞、または、コンジュゲート、を含む組成物を提供する。一部の態様では、組成物は、単離及び/または精製形態の抗原結合タンパク質を含む。一部の態様では、組成物は、単一のタイプ(例えば、構造)の本開示の抗原結合タンパク質を含む、または、2つ以上の本開示の抗原結合タンパク質の組み合わせを含み、組み合わせは、異なるタイプ(例えば、構造)の2つ以上の抗原結合タンパク質を含む。
【0145】
一部の態様では、組成物は、例えば、特定の温度、例えば、室温において抗原結合タンパク質を安定化させること、有効期間を延長すること、分解、例えば、酸化タンパク質分解酵素介在性分解を抑制すること、抗原結合タンパク質の半減期を延長することなどにより、抗原結合タンパク質の化学-物理特性を向上させる薬剤を含む。一部の態様では、組成物は、任意選択的に、本開示の抗原結合タンパク質との混合物で、または、抗原結合タンパク質にコンジュゲートした状態で、本明細書で開示する薬剤のいずれかを非相同部分またはコンジュゲート部分として含む。
【0146】
本開示の様々な態様では、組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤を追加で含む。一部の実施形態では、本明細書で開示する抗原結合タンパク質、核酸、ベクター、宿主細胞、または、コンジュゲート(以下「活性剤」と呼ぶ)は、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と共に活性剤を含む医薬組成物へと製剤化される。これに関連して、本開示は、対象、例えば、哺乳動物への投与を目的とした活性剤を含む医薬組成物を更に提供する。
【0147】
一部の実施形態では、活性剤は、患者への投与に好適な純度レベルで医薬組成物中に含まれている。一部の実施形態では、活性剤は、少なくとも約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または、約99%の純度レベル、及び、薬学的に許容される希釈剤、担体または添加剤を有する。一部の実施形態では、組成物は、約0.001~約30.0mg/mlの濃度で活性剤を含有している。
【0148】
様々な態様では、医薬組成物は薬学的に許容される担体を含む。本明細書で使用する場合、用語「薬学的に許容される担体」としては、標準的な医薬品担体、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルションまたは水/油エマルションなどのエマルション、及び、様々なタイプの湿潤剤などのいずれかが挙げられる。この用語はまた、米国連邦政府の監督機関により承認された薬剤、または、ヒトを含む動物における使用用に米国薬局方に記載された薬剤のいずれかを包含する。
【0149】
医薬組成物は、例えば、酸性化剤、添加剤、吸着剤、エアゾール噴射剤、排気剤、アルカリ化剤、固化防止剤、抗凝固剤、抗菌防腐剤、酸化防止剤、防腐剤、基剤、結合剤、緩衝剤、キレート化剤、コーティング剤、着色剤、乾燥剤、洗剤、希釈剤、殺菌剤、崩壊剤、分散剤、溶解促進剤、染料、皮膚軟化剤、乳化剤、乳化安定剤、充填剤、フィルム形成剤、風味増強剤、風味剤、流動促進剤、ゲル化剤、造粒剤、湿潤剤(humectants)、滑沢剤、粘膜付着剤、軟膏基剤、軟膏剤、油性媒体、有機塩基、パステル剤基剤、顔料、可塑剤、艶出剤、防腐剤、金属イオン封鎖剤、皮膚浸透剤、可溶化剤、溶媒、安定化剤、坐剤基剤、表面活性剤、界面活性剤、懸濁化剤、甘味剤、治療剤、増粘剤(thickening agents)、張性剤、毒性剤、増粘剤(viscosity-increasing agents)、吸水剤、水混和性共溶媒、硬水軟化剤、または、湿潤剤(wetting agents)、を含む、任意の薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。例えば、the Handbook of Pharmaceutical Excipients,Third Edition,A.H.Kibbe(Pharmaceutical Press,London,UK,2000)(その全体は参照により組み込まれる)を参照されたい。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)(その全体は参照により組み込まれる)。
【0150】
様々な態様では、医薬組成物は、採用する用量及び濃度においてレシピエントに無毒な配合物質を含む。特定の実施形態では、医薬組成物は、活性剤、及び、1種または複数種の、薬学的に許容される塩、ポリオール、界面活性剤、浸透圧バランス調整剤、張性剤、酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤、増量剤、凍結乾燥保護剤、消泡剤、キレート化剤、防腐剤、着色剤、鎮痛剤、または、更なる医薬品、を含む。様々な態様では、医薬組成物は、任意選択的に、薬学的に許容される塩、浸透圧バランス調整剤(張性剤)、酸化防止剤、抗生物質、抗真菌剤、増量剤、凍結乾燥保護剤、消泡剤、キレート化剤、防腐剤、着色剤、及び、鎮痛剤を含むがこれらに限定されない1種または複数種の添加剤に加えて、1種または複数種のポリオール及び/または1種または複数種の界面活性剤を含む。
【0151】
特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、組成物のpH、容積モル浸透圧濃度、粘度、透明度、色、等張性、芳香、滅菌状態、安定性、溶解速度もしくは放出速度、吸着、または、浸透を、調節、維持または保持するための、配合物質を含有していてもよい。このような実施形態における好適な配合物質としては、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジンなど)、抗菌剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなど)、緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス-HCl、クエン酸塩、リン酸塩またはその他の有機酸など)、増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシンなど)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど)、充填剤、単糖、二糖、及び、その他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリンなど)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなど)、着色剤、風味剤及び希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドンなど)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウムなど)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素など)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトールなど)、懸濁化剤、界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック(登録商標)、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート20、polysorbatcなどのポリソルベート、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポールなど)、安定促進剤(例えば、スクロースまたはソルビトールなど)、張度増強剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム、マンニトール、ソルビトールなど)、送達媒体、希釈剤、添加剤及び/または医薬補助剤、が挙げられるがこれらに限定されない。REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES,18″Edition,(A.R.Genrmo,ed.),1990,Mack Publishing Companyを参照されたい。
【0152】
医薬組成物は、生理学的に適合性のあるpHを達成するように製剤化されてもよい。一部の実施形態では、医薬組成物のpHは、例えば、約4または約5~約8.0、約4.5~約7.5、または、約5.0~約7.5であってもよい。様々な実施形態では、医薬組成物のpHは5.5~7.5である。
【0153】
本開示は、医薬組成物を製造するための方法を提供する。様々な態様では、本方法は、抗原結合タンパク質、コンジュゲート、融合タンパク質、核酸、ベクター、宿主細胞、またはこれらの組み合わせを、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と混合することを含む。
【0154】
投与経路
本開示において、活性剤、または、活性剤を含む医薬組成物は、任意の好適な投与経路を介して対象に投与されてもよい。例えば、活性剤は、非経口、経鼻、経口、肺、局所、または、直腸投与を介して対象に投与されてもよい。単に様々な実施形態を説明するために投与経路に関する以下の記述を提供するが、いかなる様式においても範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0155】
非経口投与に好適な製剤としては、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤、及び、製剤を目的のレシピエントの血液と等張とする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性滅菌注射用液剤、ならびに、懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤及び防腐剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁剤、が挙げられる。用語「非経口」とは、消化管を介さずに、皮下、筋肉内、脊髄内、または、静脈内などの一部のその他の経路を介することを意味する。本開示の活性剤は、医薬品担体、例えば、滅菌液、または、水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、及び、関連糖溶液を含む液体の混合液など、アルコール、例えば、エタノールまたはヘキサデシルアルコールなど、グリコール、例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど、ジメチルスルホキシド、グリセロール、ケタール、例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールなど、エーテル、ポリ(エチレングリコール)400、石鹸または洗剤などの薬学的に許容される界面活性剤を添加したまたは添加していない、油、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくはグリセリド、または、アセチル化脂肪酸グリセリド、懸濁化剤、例えば、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースなど、または、乳化剤、及び、その他の医薬補助剤、を含む生理学的に許容される希釈剤と共に投与されてもよい。
【0156】
非経口製剤に使用可能な油としては、石油、動物油、植物油、または、合成油が挙げられる。油の具体例としては、ピーナッツ、ダイズ、ゴマ、綿実、コーン、オリーブ、ワセリン、及び、鉱物が挙げられる。非経口製剤に使用するための好適な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、及び、イソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルは好適な脂肪酸エステルの例である。
【0157】
非経口製剤に使用するための好適な石鹸としては、脂肪酸のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、及び、トリエタノールアミン塩が挙げられ、好適な界面活性剤としては、(a)カチオン性界面活性剤、例えば、ハロゲン化ジメチルジアルキルアンモニウム及びハロゲン化アルキルピリジニウムなど、(b)アニオン性界面活性剤、例えば、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、及び、オレフィンスルホネート、アルキルサルフェート、オレフィンサルフェート、エーテルサルフェート、及び、モノグリセリドサルフェート、ならびに、アルキルスルホサクシネート、オレフィンスルホサクシネート、エーテルスルホサクシネート、及び、モノグリセリドスルホサクシネートなど、(c)非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、及び、ポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマーなど、(d)両性界面活性剤、例えば、アルキル-β-アミノプロピオネート、及び、2-アルキル-イミダゾリン四級アンモニウム塩など、ならびに、(e)これらの混合物、が挙げられる。
【0158】
一部の実施形態では、非経口製剤は、液剤中に約0.5重量%~約25重量%の本開示の活性剤を含有している。防腐剤及び緩衝剤を使用してもよい。注射部位における炎症を最小化または除去するために、このような組成物は、約12~約17の親水性-親油性バランス(HLB)を有する1種または複数種の非イオン性界面活性剤を含有していてもよい。このような製剤中における界面活性剤の量は通常、約5重量%~約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤としては、ソルビタンモノオレエートなどのポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、及び、プロピレンオキシドをプロピレングリコールで濃縮することにより形成された、疎水性塩基を含むエチレンオキシドの高分子量付加化合物、が挙げられる。一部の態様では、非経口製剤は、単回用量または複数回用量の密閉容器、例えば、アンプル及びバイアルなどで提供され、使用の直前において、注射用の滅菌液体賦形剤(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存されてもよい。一部の態様では、即時注射用液剤及び即時注射用懸濁剤は、上記の部類の滅菌した散剤、顆粒剤及び錠剤から調製される。
【0159】
注射用製剤については本開示に従う。注射用組成物の有効な医薬品担体の必要条件については当業者に周知である(例えば、Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Company,Philadelphia,PA,Banker and Chalmers,eds.,pages 238-250(1982),及びASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel,4th ed.,pages 622-630(1986)を参照のこと)。
【0160】
用量
本開示の活性剤は、腫瘍増殖を阻害するための方法に加えて、がんを治療または予防するための方法を含む本明細書において更に記載するその他の方法、に有用であると考えられている。本開示の目的のために、投与する活性剤の量または用量は、例えば、対象すなわち動物における治療効果または予防効果を適切な期間にわたり達成するのに十分である必要がある。例えば、本開示の活性剤の用量は、投与時点から、約1~4分間、1~4時間もしくは1~4週間、またはそれ以上の期間、例えば、5~20もしくはそれ以上の週間の期間において、本明細書に記載のがんを治療するのに十分である必要がある。特定の実施形態では、期間は更により長くてもよい。用量は、特定の活性剤の効果、ならびに、治療する動物(例えば、ヒト)の症状、及び、動物(例えば、ヒト)の体重によって決定される。
【0161】
投与用量を決定するための多くのアッセイは当該技術分野において周知である。本明細書の目的のために、それぞれのセットが異なる用量の活性剤を投与される哺乳動物セット間における、所定用量の本開示の活性剤の哺乳動物への投与によるがんの治療度合いを比較することを含むアッセイを使用して、哺乳動物に投与する開始用量を決定することができる。所定用量の投与によるがんの治療度合いは、例えば、マウス異種移植モデルにおいて活性剤で達成される腫瘍退縮度合いによって表すことが可能である。腫瘍退縮を評価するための方法は当該技術分野において周知であり、本明細書の実施例に記載されている。
【0162】
本開示の活性剤の用量はまた、特定の本開示の活性剤の投与に付随し得る任意の副作用の存在、内容及び程度によって決定される。一般的には、年齢、体重、全身健康、栄養、性別、投与する本開示の活性剤、投与経路、及び、治療する症状の重症度などの様々な因子を考慮して、それぞれ個々の患者を治療するための本開示の活性剤の用量を主治医が決定する。例としてであり本開示を限定する意図はないが、本開示の活性剤の用量は、約0.0001~約1g/kg(治療する対象の体重)/日、約0.0001~約0.001g/kg(体重)/日、または、約0.01mg~約1g/kg(体重)/日であってもよい。
【0163】
制御放出製剤
一部の実施形態では、本開示の活性剤を投与する体内に放出される本開示の活性剤が、時間及び体内における位置に応じて制御されることになるように、本明細書に記載の活性剤をデポー剤形態に改質してもよい(例えば、米国特許第4,450,150号を参照のこと)。本開示の活性剤のデポー剤形態は、例えば、活性剤と、ポリマーなど多孔性物質または非多孔性物質を含む、埋め込み型の組成物であってもよく、活性剤は、多孔性物質に内包されているまたは多孔性物質中に拡散している、及び/または、非多孔性物質の分解により拡散する。そのため、対象の体内における所望の位置へとデポー剤を埋め込むと、活性剤が所定の速度でインプラントから放出される。
【0164】
特定の態様では、活性剤を含む医薬組成物は、任意のタイプのインビボ放出特性を有するように改質されている。一部の態様では、医薬組成物は、即時放出製剤、制御放出製剤、持続放出製剤、徐放製剤、遅延放出製剤、または、二相放出製剤である。制御放出用のペプチドを製剤化するための方法は当該技術分野において周知である。例えば、Qian et al.,J Pharm 374:46-52(2009)、ならびに、国際特許出願公開第WO2008/130158号、WO2004/033036号、WO2000/032218号及びWO1999/040942号を参照されたい。
【0165】
本組成物は、例えば、ミセルもしくはリポソームまたは一部のその他の封入形態を更に含んでいてもよく、あるいは、長期貯蔵及び/または送達効果をもたらす徐放形態で投与されてもよい。
【0166】
使用
本開示の抗原結合タンパク質は腫瘍増殖を阻害するのに有用である。特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書で提供する抗原結合タンパク質の阻害作用により、がんを治療するための方法においてこのような部分が有用となる。
【0167】
それゆえ、本明細書では、対象内における腫瘍増殖を阻害するための方法、及び、対象内における腫瘍のサイズを縮小させるための方法を提供する。様々な実施形態では、本方法は、対象内における腫瘍増殖を阻害するまたは腫瘍のサイズを縮小させるのに有効な量で本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む。様々な態様では、卵巣腫瘍、黒色腫腫瘍、膀胱腫瘍、または、子宮内膜腫瘍の増殖を阻害する。様々な態様では、卵巣腫瘍、黒色腫腫瘍、膀胱腫瘍、または、子宮内膜腫瘍のサイズを縮小させる。
【0168】
本明細書で使用する場合、用語「阻害する」または「縮小させる」及びそれらから派生する単語は、100%すなわち完全な阻害または縮小でなくてもよい。むしろ、当業者が潜在的な利点または治療効果を有すると認識する阻害または縮小の度合いは様々である。この点において、本開示の抗原結合タンパク質は、任意の量またはレベルに、腫瘍増殖を阻害または腫瘍のサイズを縮小させ得る。様々な実施形態では、本開示の方法によりもたらされる阻害は、少なくとも10%または約10%の阻害(例えば、少なくとも20%または約20%の阻害、少なくとも30%または約30%の阻害、少なくとも40%または約40%の阻害、少なくとも50%または約50%の阻害、少なくとも60%または約60%の阻害、少なくとも70%または約70%の阻害、少なくとも80%または約80%の阻害、少なくとも90%または約90%の阻害、少なくとも95%または約95%の阻害、少なくとも98%または約98%の阻害)である。様々な実施形態では、本開示の方法によりもたらされる縮小は、少なくとも10%または約10%の縮小(例えば、少なくとも20%または約20%の縮小、少なくとも30%または約30%の縮小、少なくとも40%または約40%の縮小、少なくとも50%または約50%の縮小、少なくとも60%または約60%の縮小、少なくとも70%または約70%の縮小、少なくとも80%または約80%の縮小、少なくとも90%または約90%の縮小、少なくとも95%または約95%の縮小、少なくとも98%または約98%の縮小)である。
【0169】
本明細書では更に、がん、例えば、CLDN6発現がんを有する対象を治療するための方法を提供する。様々な実施形態では、本方法は、対象内におけるがんを治療するのに有効な量で本開示の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0170】
本明細書の目的において、本明細書で開示する方法のがんは、任意のがん、例えば、リンパ系または血流を介して身体の別の部位に転移し得る、異常で無秩序な細胞分裂により生じた任意の悪性増殖または悪性腫瘍であってもよい。一部の態様では、がんは、急性リンパ性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、骨癌、脳癌、乳癌、肛門、肛門管または直腸肛門のがん、眼球のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、首、胆嚢または胸膜のがん、鼻、鼻腔または中耳のがん、口腔のがん、外陰部のがん、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性がん、結腸癌、食道癌、子宮頸癌、胃腸カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌、腎臓癌(kidney cancer)、喉頭癌、肝臓癌、肺癌、悪性中皮腫、黒色腫、多発性骨髄腫、上咽頭癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、膵臓癌、腹膜、大網及び腸間膜のがん、咽頭癌、前立腺癌、直腸癌、腎臓癌(renal cancer)(例えば、腎細胞癌(RCC))、小腸癌、軟組織癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、尿管癌、及び、膀胱癌、からなる群から選択されるがんである。特定の態様では、がんは、頭頸部癌、卵巣癌、子宮頸部癌、膀胱癌及び食道癌、膵臓癌、胃腸癌、胃癌、乳癌、子宮内膜癌及び結腸直腸癌、肝細胞癌、膠芽腫、膀胱癌、肺癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)、細気管支肺胞上皮癌、からなる群から選択される。様々な態様では、がんは、卵巣癌、黒色腫、膀胱癌、肺癌、肝臓癌、子宮内膜癌である。様々な態様では、がんは、CLDN6の中程度発現から高発現を特徴とする任意のがんである。例えば、図1図3を参照されたい。様々な態様では、がんは、急性骨髄性白血病、大型B細胞リンパ腫、胃癌、前立腺癌、黒色腫、結腸癌、直腸癌、膀胱癌、子宮頸癌、肝臓癌、乳癌、腎明細胞癌、頭頸部癌、肉腫、腎臓非染色性がん、低グレード神経膠腫、副腎皮質癌、膠芽腫、腎乳頭細胞癌、肺扁平上皮癌、甲状腺癌、肺腺癌、膵臓癌、子宮内膜癌、子宮肉腫、または、卵巣癌である。様々な態様では、がんは、卵巣癌、子宮内膜癌、子宮癌、肺癌、胃癌、乳癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、子宮頸癌、及び、膀胱癌、から選択される。
【0171】
本明細書で使用する場合、用語「治療する」及びそれに関連する単語は、必ずしも100%すなわち完全な治療を意味するものではない。むしろ、当業者が潜在的な利点または治療効果を有すると認識する治療の度合いは様々である。この点において、本開示のがんを治療するための方法は、任意の量または任意のレベルの治療を提供することができる。更に、本開示の方法により提供される治療は、治療するがんの1つまたは複数の症状もしくは症候または徴候の治療を含んでいてもよい。また、本開示の方法により提供される治療は、がんの進行を遅らせることを包含していてもよい。例えば、本方法は、がんに対するT細胞活性または免疫応答を向上させること、腫瘍またはがんの増殖を抑制すること、腫瘍細胞の転移を抑制すること、腫瘍細胞またはがん細胞の細胞死を促進させることなどにより、がんを治療することができる。様々な態様では、本方法は、少なくとも1日間、2日間、4日間、6日間、8日間、10日間、15日間、30日間、2ヶ月間、3ヶ月間、4ヶ月間、6ヶ月間、1年間、2年間、3年間、4年間、または、それ以上の期間、がんの発症または再発を遅延させる目的で治療する。様々な態様では、本方法は、対象の生存期間を延長させる目的で治療する。
【0172】
本開示の抗原結合タンパク質をまた使用して、試料中におけるCLDN6を検出してもよく、または、CLDN6陽性がんを診断してもよい。それゆえ、本開示は、試料中におけるクローディン6(CLDN6)を検出するための方法を提供する。様々な実施形態では、本方法は、試料を、本明細書に記載の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質と接触させること、及び、CLDN6に結合した抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質を含む免疫複合体をアッセイすること、を含む。本開示はまた、対象内におけるクローディン6(CLDN6)陽性がんを診断するための方法を提供する。様々な実施形態では、本方法は、対象から採取した細胞または組織を含む生体試料を、本明細書に記載の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質と接触させること、及び、CLDN6に結合した抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質を含む免疫複合体をアッセイすること、を含む。
【0173】
対象
本開示の一部の実施形態では、対象は、マウス及びハムスターなどのげっ歯目の哺乳動物、ウサギなどのウサギ目の哺乳動物、ネコ科(ネコ)及びイヌ科(イヌ)を含む食肉目の哺乳動物、ウシ科(ウシ)及びブタ(Swines)(ブタ(pigs))を含む偶蹄目の哺乳動物、または、ウマ科(ウマ)を含む奇蹄目の哺乳動物、を含むがこれらに限定されない哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物は、霊長目、Ceboid目、または、Simoid目(サル)の哺乳動物、または、類人猿目(ヒト及びエイプ)の哺乳動物である。一部の態様では、哺乳動物はヒトである。
【0174】
キット
一部の実施形態では、本開示の抗原結合タンパク質はキットで提供される。様々な態様では、キットは、単位用量として抗原結合タンパク質(複数可)を含む。本明細書の目的において、「単位用量」とは、好適な担体中に分散した個々の量のことを意味する。様々な態様では、単位用量は、対象に、所望の効果、例えば、腫瘍増殖の阻害、腫瘍のサイズの縮小、がんの治療をもたらすのに十分な量のことである。それゆえ、本明細書では、任意選択的に単位用量で提供される、本開示の抗原結合タンパク質を含むキットを提供する。様々な態様では、キットは、いくつかの単位用量、例えば、1週間分または1ヶ月分の単位用量を含み、任意選択的に、そのそれぞれは、個別にパッケージ化されている、または別の方法で、その他の単位用量から分離されている。一部の実施形態では、キットの構成要素/単位用量は、患者に投与するための取扱説明書と共にパッケージ化されている。一部の実施形態では、キットは、患者に投与するための1つまたは複数の器具、例えば、針及び注射器などを含む。一部の態様では、本開示の抗原結合タンパク質、その薬学的に許容される塩、抗原結合タンパク質を含むコンジュゲート、または、抗原結合タンパク質を含む多量体もしくは二量体は、レディートゥーユース形態、例えば、注射器、点滴静注バッグなどにプレパッケージされる。一部の態様では、キットは、その他の治療薬もしくは診断薬または薬学的に許容される担体(例えば、溶媒、緩衝剤、希釈剤など)を更に含み、それらとしては、本明細書に記載するもののいずれかが挙げられる。特定の態様では、キットは、薬剤、例えば、化学療法または放射線療法に使用する治療薬と共に、本開示の抗原結合タンパク質を含む。
【0175】
様々な実施形態
本開示の様々な実施形態では、抗原結合タンパク質はヒトクローディン6(CLDN6)タンパク質(配列番号:200)に結合し、(a)抗原結合タンパク質は、CLDN6の細胞外ドメイン(ECD)の細胞外ループ2(EL2)に結合し、CLDN6のECDの細胞外ループ1(EL1)に結合しない、(b)クローディン3(CLDN3)、クローディン4(CLDN4)及びクローディン9(CLDN9)のいずれにも結合せず、OVCA429細胞が内在的に発現するCLDN6に参照抗体が約1200nM未満で結合するのを阻害する、または、(c)これらの組み合わせである。様々な例では、抗原結合タンパク質は、WTAHAIIRDFYNPLVAEAQKREL(配列番号:2)のアミノ酸配列内のエピトープに結合する、または、CLDN6のTAHAIIRDFYNPL(配列番号:3)もしくはLVAEAQKREL(配列番号:4)のアミノ酸配列に結合する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、クローディン3(CLDN3)、クローディン4(CLDN4)及びクローディン9(CLDN9)のうちのいずれか1つまたは複数に結合しない。様々な例では、抗原結合タンパク質はCLDN3に結合しない。様々な例では、抗原結合タンパク質は、CLDN6、CLDN4及びCLDN9には結合するが、CLDN3には結合しない。様々な例では、抗原結合タンパク質は、CLDN6及びCLDN4には結合するが、CLDN3またはCLDN9には結合しない。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、CLDN6及びCLDN9には結合するが、CLDN3またはCLDN4には結合しない。
【0176】
様々な例では、本開示の抗原結合タンパク質は、OVCA429細胞が内在的に発現するCLDN6に参照抗体が約1200nM未満で結合するのを阻害し、参照抗体は、配列番号:181の軽鎖可変配列及び配列番号:182の重鎖可変配列、または、配列番号:185の軽鎖可変配列及び配列番号:186の重鎖可変配列、を含む。様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、OVCA429細胞が内在的に発現するCLDN6に参照抗体が約1000nM未満または750nM未満(例えば、約500nM未満、約250nM未満、約100nM未満)で結合するのを阻害し、参照抗体は、配列番号:181の軽鎖可変配列及び配列番号:182の重鎖可変配列、または、配列番号:185の軽鎖可変配列及び配列番号:186の重鎖可変配列、を含む。
【0177】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)表AまたはA1に記載の重鎖CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:11、17、23、29、35、41、47、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、452、455、461、465、及び、472からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表AまたはA1に記載の重鎖CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、86、102、108、114、120、126、132、475、456、462、466、468、及び、473からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、(c)表AまたはA1に記載の重鎖CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:13、19、25、31、37、43、49、55、61、67、73、79、85、91、97、103、109、115、121、127、133、453、457、463、467、469、及び、474からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、(d)表AまたはA1に記載の軽鎖CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:8、14、20、32、38、44、50、56、62、68、74、80、86、92、98、104、110、116、122、128、449、476、458、464、及び、470からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、(e)表AまたはA1に記載の軽鎖CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:9、15、21、27、33、39、45、51、57、63、69、75、81、87、93、99、105、111、117、123、129、450、477、459、及び、471からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、(f)表AまたはA1に記載の軽鎖CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:10、16、22、28、34、40、46、52、58、64、70、76、82、88、94、100、106、112、118、124、130、451、454、及び、460からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、(g)(a)~(f)のいずれか2つ以上の組み合わせ、を含む。
【0178】
様々な態様では、抗原結合タンパク質は、表AまたはA1に記載の軽鎖CDR1アミノ酸配列、軽鎖CDR2アミノ酸配列、及び、軽鎖CDR3アミノ酸配列、ならびに、表AまたはA1に記載の重鎖CDRアミノ酸配列のうちの1つまたは2つ、を含む。一部の例では、抗原結合タンパク質は、表AまたはA1に記載の重鎖CDR1アミノ酸配列、重鎖CDR2アミノ酸配列、及び、重鎖CDR3アミノ酸配列、ならびに、表AまたはA1に記載の軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの1つまたは2つ、を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:74~79、(b)配列番号:50~55、(c)配列番号:122~127、(d)配列番号:26~31、(e)配列番号:128~133、(f)配列番号:38~43、(g)配列番号:62~67、(h)配列番号:80~85、(i)配列番号:44~49、(j)配列番号:86~91、(k)配列番号:104~109、(l)配列番号:56~61、(m)配列番号:32~37、(n)配列番号:110~115、(o)配列番号:98~103、(p)配列番号:92~97、(q)配列番号:116~121、(r)配列番号:8~13、(s)配列番号:68~73、(t)配列番号:14~19、(u)配列番号:20~25、(v)配列番号:449~453及び475、(w)配列番号:476~477、454~457、(x)配列番号:458~463、(y)配列番号:57、58、464~467、(z)配列番号:68~71及び468~469、ならびに、(aa)配列番号:112、及び470~474、からなる群から選択される6つのCDRアミノ酸配列、を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、(a)表Bに記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、及び、175からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、(b)表Bに記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、及び、176からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%(例えば、少なくとも85%または約85%、少なくとも90%または約90%)の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(a)と(b)の両方、を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、(a)配列番号:156及び157、(b)配列番号:148及び149、(c)配列番号:172及び173、(d)配列番号:140及び141、(e)配列番号:174及び175、(f)配列番号:144及び145、(g)配列番号:152及び153、(h)配列番号:158及び159、(i)配列番号:146及び147、(j)配列番号:160及び161、(k)配列番号:166及び167、(l)配列番号:150及び151、(m)配列番号:142及び143、(n)配列番号:168及び169、(o)配列番号:164及び165、(p)配列番号:162及び163、(q)配列番号:170及び171、(r)配列番号:134及び135、(s)配列番号:154及び155、(t)配列番号:136及び137、ならびに、(u)配列番号:138及び139、からなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む。
【0179】
様々な実施形態では、抗原結合タンパク質は、(a)表B1またはCに記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:376~379、384~387、391~396、403~408、412、413、416~419、422~427、478、480、482、484、486、及び、488からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なる、または、少なくとも70%もしくは約70%、約80%、約90%、もしくは、約95%の配列同一性を有するその変異配列、(b)表B1またはCに記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:380~383、388~390、397~402、409~411、414、415、420、421、479、481、483、485、487、及び、489からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なる、または、少なくとも70%もしくは約70%、約80%、約90%、もしくは、約95%の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(c)(a)と(b)の両方、を含む。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、表Dに記載の一対のアミノ酸配列を含む。
【0180】
本開示は、(A)任意選択的に、YTFTTYT(配列番号:11)のアミノ酸配列を含む、YTFTXYT(式中、Xは、T、V、D、または、Sである)(配列番号:452)のアミノ酸配列を含む、HC CDR1、(B)任意選択的に、INPSSGYT(配列番号:12)のアミノ酸配列を含む、IXPSSGYT(式中、Xは、Q、S、A、または、Nである)(配列番号:475)のアミノ酸配列を含む、HC CDR2、(C)任意選択的に、ANGDYYVAY(配列番号:13)のアミノ酸配列を含む、AXGDYYVAY(式中、Xは、N、Q、H、または、Dである)(配列番号:453)のアミノ酸配列を含む、HC CDR3、(D)任意選択的に、SSVSSTY(配列番号:8)のアミノ酸配列を含む、SSVSSXY(式中、Xは、T、V、F、または、Dである)(配列番号:449)のアミノ酸配列を含む、LC CDR1、(E)任意選択的に、STS(配列番号:9)のアミノ酸配列を含む、XTX(式中、1位のXは、S、T、Q、または、Aであり、3位のXは、S、T、D、または、Qである)(配列番号:450)のアミノ酸配列を含む、LC CDR2、及び、(F)任意選択的に、HQYHRSPLT(配列番号:10)のアミノ酸配列を含む、HXYXRSPLT(式中、2位のXは、Q、H、または、Sであり、4位のXは、H、Y、Q、または、Sである)(配列番号:451)のアミノ酸配列を含む、LC CDR3、を含む、抗原結合タンパク質を提供する。
【0181】
抗原結合タンパク質は、(A)任意選択的に、FTFSNYW(配列番号:23)のアミノ酸配列を含む、FTFSXYX(式中、5位のXは、N、S、R、Q、または、Aであり、7位のXは、W、H、Y、または、Fである)(配列番号:455)のアミノ酸配列を含む、HC CDR1、(B)任意選択的に、IRLKSDNYAT(配列番号:24)のアミノ酸配列を含む、IRLKXDXYAT(式中、5位のXは、S、N、A、または、Tであり、7位のXは、Q、S、A、または、Nである)(配列番号:456)のアミノ酸配列を含む、HC CDR2、(C)任意選択的に、NDGPPSGC(配列番号:25)のアミノ酸配列を含む、XDGPPSGX(式中、1位のXは、N、D、または、Tであり、8位のXは、S、T、A、C、または、Yである)(配列番号:457)のアミノ酸配列を含む、HC CDR3、(D)任意選択的に、ENIYSY(配列番号:20)のアミノ酸配列を含む、EXIYSY(式中、Xは、Q、S、A、D、または、Nである)(配列番号:476)のアミノ酸配列を含む、LC CDR1、(E)任意選択的に、NAK(配列番号:21)のアミノ酸配列を含む、XAK(式中、1位のXは、Q、S、A、D、または、Nである)(配列番号:477)のアミノ酸配列を含む、LC CDR2、及び、(F)任意選択的に、QHHYTVPWT(配列番号:22)のアミノ酸配列を含む、QXHYXVPWT(式中、2位のXは、H、Q、S、または、Tであり、5位のXは、T、S、N、または、Gである)(配列番号:454)のアミノ酸配列を含む、LC CDR3、を含む。
【0182】
抗原結合タンパク質は、(A)任意選択的に、YTFTSYT(配列番号:29)のアミノ酸配列を含む、YTXTXYT(式中、3位のXは、F、Y、S、または、Tであり、5位のXは、S、T、Y、または、Dである)(配列番号:461)のアミノ酸配列を含む、HC CDR1、(B)任意選択的に、INPSSTYT(配列番号:30)のアミノ酸配列を含む、IXPSSXYT(式中、2位のXは、Q、S、A、または、Nであり、6位のXは、T、S、V、D、または、Gである)(配列番号:462)のアミノ酸配列を含む、HC CDR2、(C)任意選択的に、SRGELGGFAY(配列番号:31)のアミノ酸配列を含む、XRGEXGGFAY(式中、1位のXは、S、A、T、または、Vであり、5位のXは、L、V、または、Fである)(配列番号:463)のアミノ酸配列を含む、HC CDR3、(D)任意選択的に、QSLVHSDGNTY(配列番号:26)のアミノ酸配列を含む、QSLVHSXGXTY(式中、7位のXは、D、N、E、Q、S、または、Aであり、9位のXは、Q、S、A、D、または、Nである)(配列番号:458)のアミノ酸配列を含む、LC CDR1、(E)任意選択的に、KVS(配列番号:27)のアミノ酸配列を含む、XVX(式中、1位のXは、K、Q、または、Rであり、3位のXは、S、T、または、Vである)(配列番号:459)のアミノ酸配列を含む、LC CDR2、及び、(F)任意選択的に、SQSTHVPYT(配列番号:28)のアミノ酸配列を含む、SXXTHVPYT(式中、2位のXは、Q、H、または、Tであり、3位のXは、S、G、T、または、Dである)(配列番号:460)のアミノ酸配列を含む、LC CDR3、を含む。
【0183】
様々な態様では、本開示の抗原結合タンパク質は、抗体、例えば、モノクローナル抗体である。様々な例では、抗原結合タンパク質はIgGである。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、軟寒天3D増殖アッセイ内におけるコロニー増殖を少なくとも約50%阻害する、または、ヒトがん細胞を注入した異種移植マウス内における腫瘍増殖を阻害する。様々な態様では、抗原結合タンパク質は、卵巣癌細胞、黒色腫癌細胞、膀胱癌細胞、または、子宮内膜癌細胞を注入した異種移植マウス内における腫瘍増殖を阻害する。様々な例では、抗原結合タンパク質は、卵巣癌細胞、膀胱癌細胞、または、子宮内膜癌細胞を注入した異種移植マウス内における腫瘍増殖を少なくとも50%阻害する。
【0184】
本開示は、本明細書に記載の抗原結合タンパク質と非相同部分を含むコンジュゲートを提供する。本開示はまた、本明細書に記載の抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。本開示は、本開示の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質、をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を更に提供する。本開示は、本開示の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質、をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含むベクターを提供する。本開示では更に、本開示の核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0185】
本開示は、(i)本開示の宿主細胞を細胞培養培地内で培養すること(宿主細胞は、先行請求項のいずれか1項に記載の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む)、及び、(ii)細胞培養培地から抗原結合タンパク質を回収すること、を含む、クローディン6(CLDN6)タンパク質に結合する抗原結合タンパク質を製造するための方法を提供する。(i)本開示の宿主細胞を細胞培養培地内で培養すること(宿主細胞は、本開示の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む)、及び、(ii)細胞培養培地から融合タンパク質を回収すること、を含む、クローディン6(CLDN6)タンパク質に結合する抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質を製造するための方法も提供する。
【0186】
本開示は更に、本開示の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、融合タンパク質、核酸、ベクター、宿主細胞、または、これらの組み合わせを、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と混合することを含む、医薬組成物を製造するための方法を提供する。本開示の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、融合タンパク質、核酸、ベクター、宿主細胞、または、これらの組み合わせと、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤、を含む、医薬組成物も提供する。
【0187】
本明細書では、がんを治療するのに有効な量で本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、CLDN6発現がんを有する対象を治療するための方法を提供する。腫瘍増殖を阻害するのに有効な量で本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象内における腫瘍増殖を阻害するための方法も提供する。本開示は、腫瘍のサイズを縮小させるのに有効な量で本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象内における腫瘍のサイズを縮小させるための方法を提供する。がんの再発を予防するのに有効な量で本明細書に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象内におけるがんの再発を予防するための方法を更に提供する。
【0188】
本開示は、試料を、本開示の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質と接触させること、及び、CLDN6に結合した抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質、を含む免疫複合体をアッセイすること、を含む、試料中のクローディン6(CLDN6)を検出するための方法を提供する。本明細書では、対象から採取した細胞または組織を含む生体試料を、本開示の抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質と接触させること、及び、CLDN6に結合した抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質、を含む免疫複合体をアッセイすること、を含む、対象内におけるクローディン6(CLDN6)陽性がんを診断するための方法についても提供する。
【0189】
本開示はまた、CLDN6の低過剰発現と診断された対象内におけるがんを治療するための方法を提供する。様々な実施形態では、本方法は、がんの再発を予防するのに有効な量で本明細書で開示する医薬組成物を対象に投与することを含む。一部の態様では、投与することは、腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導し、任意選択的に、投与することは、CLDN6を発現する細胞におけるアポトーシスを誘導する。様々な態様では、対象は腫瘍を有し、腫瘍は、4つのグループ、高発現、中発現、低発現、及び、非発現のうちの1つへと半定量的に分類される。様々な例では、高発現は、12対数Fragments Per Kilobase Million(FPKM)超のCLDN6 RNAと定義され、CLDN6 RNAはRNASeqにより測定される、または、免疫組織化学(IHC)で測定したCLDN6タンパク質レベルは3+超である。様々な例では、中発現は、10対数FPKM超のCLDN6 RNAと定義され、CLDN6 RNAはRNASeqにより測定される、または、IHCで測定したCLDN6タンパク質レベルは2+超である。様々な例では、低発現は、6対数FPKM超のCLDN6 RNAと定義され、CLDN6 RNAはRNASeqにより測定される、または、IHCで測定したCLDN6タンパク質レベルは1+超である。様々な例では、非発現は、6対数FPKM未満のCLDN6 RNAと定義され、CLDN6 RNAはRNASeqにより測定される、または、CLDN6タンパク質レベルはIHCの検出限界未満である。様々な態様では、上記腫瘍を有する対象も同様に、CLDN6の高発現、中発現、低発現、または、非発現と記載される。
【0190】
本開示を単に例示するために以下の実施例を提供するが、いかなる様式においてもその範囲を限定するものではない。
【実施例
【0191】
[実施例1]
本実施例では、細胞と組織の異なる供給源におけるCLDN6 RNAレベルの解析についての説明を行う。
【0192】
異なる供給源物質におけるCLDN6発現のベースラインを設定するために、患者試料、正常組織、及び、Translational Oncology Research laboratory(TORL)が作製した細胞株におけるCLDN6発現の発現レベルを評価した。
【0193】
National Cancer Institute(NCI)が管理しているThe Cancer Genome Atlas(TCGA)データベース内に含まれる情報を利用して、患者試料中におけるCLDN6 RNAのレベルを測定した。Common Fundが管理しているGenotype-Tissue Expression(GTEX)データベース内の情報を利用して、正常組織内におけるCLDN6レベルを測定した。GTEXデータベースに由来する組織の解析により、その他の組織の中でもとりわけ、脳、下垂体、膵臓、腎臓、肺、甲状腺、子宮頸部を含む様々な部位において、CLDN6が検出可能であることが判明した(図1)。
【0194】
Agilent 44Kマイクロアレイ(4×44Kアレイチップ、Agilent Technologies,Santa Clara,CA)及びRNAシークエンシング(RNA-Seq)アッセイを使用して、TORLがん細胞株内におけるCLDN6発現レベルを測定した。BGI Americas(Cambridge,MA)において、BGI Americasの「定量用RNASeq」サービスを使用してRNASeqを実施した。図2及び図3に示すとおり、乳癌細胞、腎臓癌細胞、結腸癌細胞、肉腫細胞、及び、肝臓癌細胞内においてCLDN6発現レベルが検出可能であったが、卵巣癌細胞、頭頸部癌細胞、肺癌細胞、及び、膀胱癌細胞が最も高いレベルのCLDN6を発現していた。
【0195】
[実施例2]
本実施例では、CLDN6を過剰発現するように遺伝子操作された細胞の作製についての説明を行う。
【0196】
CLDN6を過剰発現するように遺伝子操作されたモデルを作製した。これらのモデルを使用して、実施例5に記載のCLDN6抗体の有効性を確認した。簡潔に説明すると、CMVプロモーターと脳心筋炎ウイルス(EMCV)の弱毒された配列内リボソーム進入部位(IRES)を有するバイシストロン性ベクター内に、CLDN6をコードするヌクレオチド配列を導入した。目的遺伝子(GOI)cDNA(CLDN6)とピューロマイシンcDNAの間にIRESを配置した。ウッドチャック転写後調節因子(WPRE)をピューロマイシンcDNAの下流に配置した。ベクターはまた、GFPマーカー配列またはMycDDKタグの一方を発現していた。GFPを含有する発現ベクターの配列は、本明細書において配列番号:189として提供されている。
【0197】
HEK293T細胞(スクリーニング用途用)及びNIH3T3細胞(免疫化用)の中に発現ベクターをウイルス形質導入した。ピューロマイシンを含有する培地(1μg/ml)内における生存に基づいて、明確に形質導入された細胞を選択した。明確な細胞をサブクローニングして、安定して均一な、CLDN6過剰発現細胞のクローン集団を得た。
【0198】
BD Biosciences Accuri(商標)フローサイトメーター(San Jose,CA)上の参照CLDN6モノクローナル抗体(mAb)を使用したフローサイトメトリーにより、サブクローンCLDN6発現を確認した。二次抗体及びコンジュゲート:Alexa Fluor(登録商標)647ヤギ抗マウスIgG(minimal x-reactivity)抗体(Biolegend,San Diego,CA;カタログ番号405322)を使用して、参照CLDN6 mAbとサブクローンが発現するCLDN6の間の結合活性を検出した。
【0199】
CLDN6-緑色蛍光タンパク質(GFP)融合タンパク質を発現する細胞を用いたCellavista(登録商標)イメージングシステム(Synentec,Mountain View,CA)を使用した蛍光顕微鏡により、CLDN6の細胞局在を確認した。図4に示すとおり、細胞膜内にGFPの蛍光が検出され、CLDN6が細胞膜に局在していることが立証された。
【0200】
[実施例3]
本実施例では、参照抗体及び対照抗体の作製についての説明を行う。
【0201】
抗体の重鎖及び軽鎖可変領域をExpiCHO(商標)Expression System(ThermoFisher Scientific,Waltham,MA)内にクローニングして組換えマウスIgG2Aキメラ抗体を作製することにより、ベンチマーク(参照)CLDN6特異的抗体及び対照抗体を作製した。実施例5に記載の新たに作製したCLDN6特異的抗体と共に、これらの抗体の試験を行った。
【0202】
簡潔に説明すると、製造業者のプロトコルに従いExpiCHO(商標)Expression System(カタログ番号:A29133,ThermoFisher Scientific,USA)を使用して、対照抗体配列とベンチマーク抗体配列を含有するプラスミドをトランスフェクションした。キットに備えられた培地内で、1日目に37℃、8%CO下で、それから、トランスフェクション後、32℃、5%CO下で、細胞を培養した。1,000gで10分間に続き5,000gで30分間の遠心分離でExpiCHO(商標)培養培地を透明にすることにより、抗体を精製した。次に、0.45μmフィルターに続き0.22μmフィルターを使用して上清を濾過した。それに続き、製造業者のプロトコルに従いプロテインA/G樹脂(Life Technologies,Carlsbad,CA;カタログ番号20424)を使用して、上清に対してアフィニティ精製を実施した。ELISA精製に先立ち、培養培地内における抗体力価を大まかに測定して、注入した培地の量が樹脂の結合能の80%未満を占めることを確実なものとした。インキュベーション後、PBSで樹脂を洗浄し溶出緩衝液(Life Technologies,カタログ番号21004)で溶出した。トリス緩衝液(pH8.0)を加えることにより、溶出画分を直ちに生理学的pHに調整した。それに続き、PBS緩衝液で、Amicon Ultra-15 Centrifugal Filter Unit(Life Technologies,カタログ番号UFC900324)を使用して、精製抗体に対して緩衝液交換及びタンパク質濃縮を実施した。BCAタンパク質アッセイで抗体濃度を測定した。SDS-PAGE及びクマシー染色を実施して抗体の純度を検査した。精製タンパク質をアリコートして、長期保存用に-80℃で保管、または、即時使用用に4℃で保管した。
【0203】
非還元条件下対還元条件下におけるSDS-PAGEに続くクマシー染色により抗体の統合性を確認すると、非還元条件下で150kDaあたりに1本の主要なバンドが認められ、その一方で、還元条件下で50kDa及び25kDaに2本のバンドが認められた。
【0204】
プラスミド内に含まれる抗体配列がCLDN3、CLDN4またはCLDN9に特異的な抗体配列である以外は基本的に同一の方法で、配列類似性を有するその他のCLDNファミリーメンバー(図5)、すなわち、CLDN3、CLDN4及びCLDN9に特異的な抗体を作製した。
【0205】
[実施例4]
本実施例では、内在性のCLDN6を高発現する細胞株の特性解析についての説明を行う。
【0206】
FACS及びウェスタンブロットにより、がん細胞株のパネルについて、それら細胞株におけるCLDN6の内在性発現の解析を行った。簡潔に説明すると、CLDN6を過剰発現している細胞(例えば、実施例2に記載の、CLDN6を過剰発現しているHEK293T細胞)、及び、実施例1で測定したところCLDN6を高レベルまたは低レベルで内在的に発現している細胞株、を使用したFACSにより、標的への抗体の結合を確認した。参照抗体または対照抗体(実施例3に記載)と共にCLDN6発現細胞を氷上で30分間インキュベートし、洗浄後、Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートヤギ抗マウスIgG(minimal x-reactivity)抗体(Biolegend カタログ番号405322)と共に氷上で30分間インキュベートした。BD Biosciences Accuri(商標)フローサイトメーター(San Jose,CA)で蛍光を読んだ。
【0207】
参照抗体及び対照抗体を用いて、ニトロセルロース上でウェスタンブロットを実施した。簡潔に説明すると、細胞溶解物に由来する試料を煮沸してタンパク質成分を変性させた。SDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)を使用して、ポリペプチドの長さ毎に変性タンパク質を分離した。次に、分離タンパク質をアクリルアミドゲルからニトロセルロース膜に転写した。2%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液を使用して膜をブロックし、非特異的な抗体結合を最小化した。参照抗体または対照抗体と共に膜をインキュベートした。参照抗体または対照抗体を認識する西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート二次抗体で膜を染色して、化学発光により二次抗体を検出した。
【0208】
過剰発現株を使用して対照抗体及び参照抗体を確認し、確認が済むと、対照抗体及び参照抗体を使用して内在性の細胞株を特性決定した。CLDN6を過剰発現している細胞を陽性対照としてこれらのアッセイに含ませた。
【0209】
子宮内膜癌細胞株、膀胱癌細胞株、肺癌細胞株、及び、上部GI癌細胞株に加えて、4種の卵巣癌細胞株が、表面上に高レベルでCLDN6を発現することがFACSアッセイで判明した。高レベルのCLDN6発現はまた、ウェスタンブロットにより検出された。ウェスタンブロットによる検出で、別の2種の卵巣癌細胞株、別の肝臓癌細胞株、別の肺癌細胞株、及び、別の上部GI癌細胞株が、表面上に中レベルでCLDN6を発現することが判明した。子宮内膜腫瘍細胞及び膀胱腫瘍細胞もまたインビボの異種移植片として高レベルのCLDN6を発現した。試験したがん細胞株によるCLDN6の内在性発現レベルについては表2にまとめている。
【0210】
【表20】
【0211】
[実施例5]
本実施例では、CLDN6特異的抗体を作製するためのマウスの免疫化についての説明を行う。
【0212】
Fred Hutchinson Cancer Research Centerの技術に従い3種の異なるペプチド免疫原の混合物でBalb/cマウス及びCD1マウスを免疫化することにより、CLDN6特異的抗体を作製した。3種のペプチドは、CLDN6細胞外ドメイン内の第2のループ(すなわち、EL2)にまたがっていた。ペプチドとしては、全長のEL2、EL2の第1(N末端)の半分にまたがるペプチド、及び、EL2の第2(C末端)の半分にまたがるペプチドが挙げられる。3種のペプチドの配列を表3に記載する。
【0213】
【表21】
【0214】
また、ヒトCLDN6-myc-DDK発現ベクターを含むプラスミドを使用して、全長CLDN6を過剰発現している3T3細胞でマウスを免疫化した。
【0215】
免疫化マウスから脾細胞を採取し、BTX Electrofusion(BTX,Holliston,MA)を用いて骨髄腫株と融合して、ハイブリドーマを作製した。7680の初代ハイブリドーマ培養物を作製し、384ウェルプレート内で培養した。3種の異なるペプチド標的を発現するビーズを使用したビーズアレイにより、抗体がペプチドに結合する能力を評価した。1920の潜在的な陽性抗体を96ウェルプレートに再アレイし、フローサイトメトリーを用いて、内在細胞株モデル及び人工細胞株モデルに対するスクリーニングを更に行った。
【0216】
次に、陽性ハイブリドーマ上清について、フローサイトメトリーを用いて、標的領域(例えば、その他のCLDNタンパク質)に対する配列類似性を有する内在モデル及び人工モデルのタンパク質に対するカウンタースクリーニングを行った。第2のスクリーニング及びカウンタースクリーニングから、更なる試験用に約20のCLDN6特異的抗体を選択した。これらの抗体をサブクローニングして、可変重鎖配列及び可変軽鎖配列を同定した。表B及び配列表を参照されたい。
【0217】
ExpiCHO(商標)Expressionを使用してCLDN6抗体を全長IgG抗体としてフォーマットした。抗体の重鎖及び軽鎖可変領域を、pcDNA(商標)3.4-TOPO(登録商標)ベクター(カタログ番号:A14697,ThermoFisher Scientific,USA)をベースとして研究室で遺伝子操作した抗体発現ベクターにクローニングし、キット(ExpiCHO(商標)Expression System,カタログ番号:A29133,ThermoFisher Scientific,USA)内において提供されるプロトコルに従いCHO細胞にトランスフェクションした。抗体を精製してから、抗体のCLDN6への細胞表面結合及び抗体IC50を、製造業者のプロトコルに従いAlexa Fluor(登録商標)647 NHSエステル(スクシンイミジルエステル)(カタログ番号A20106,ThermoFisher Scientific)をCLDN6抗体に直接コンジュゲートしたFACSで測定した。150,000の細胞を含む50μl容積のシステムを用いて、0.32nM~1000nM(系列希釈1:5、6点)までで、CLDN6抗体を試験した。
【0218】
FACSアッセイにおいて、CLDN6発現細胞を使用して、細胞表面上のCLDN6に結合してその他のCLDNファミリーメンバーと交差反応するCLDN6抗体の能力を測定した。GFPに融合したヒトCLDN6、GFP、CLDN9-GFP、CLDN4-GFP、もしくは、CLDN3-GFPに融合したマウスCLDN6、または、GFP単独(CLDN6を伴わない)、を発現するように遺伝子操作したHEK293T細胞を、CLDN6発現の人工モデルとして使用した。ARK2細胞、OVCA429細胞、LS513細胞、及び、MCF7細胞を、CLDN6発現の内在モデル、及び、CLDN3/4発現用のモデルとして使用した。
【0219】
試験したそれぞれのタイプの細胞及びそれぞれのmAb用に、細胞表面タンパク質を保護するためにEDTA(トリプシンの代わりに)を用いて培養フラスコの表面から細胞を剥離させた。次に、Alexa Fluor(登録商標)標識CLDN6mAbと共に剥離細胞を、所定濃度、暗黒下、氷上で30分間インキュベートした。CLDN6 mAbをAlexa Fluor(登録商標)647NHSエステル(スクシンイミジルエステル)で直接標識した。洗浄後、FL4Hチャネルで抗体-抗原タンパク質結合を検出するBD Accuri(商標)Flow Cytometer C6を用いて細胞を読んだ。それぞれの抗体を様々な濃度で試験して用量-蛍光曲線を作成した。生物学的用量反応データをプロットしてEC50/IC50を得るための曲線タイプにフィッティングすることができるオンラインで利用可能な極めて簡便なIC50ツールキットを使用して、FL4H(生シングレット細胞にゲートをかけた)の値に基づき、抗体のEC50/IC50(最大値の半分における抗体の濃度)を計算した。最大値は、蛍光が最大限となる、抗体の最低濃度であった。抗体がその他のCLDNタンパク質、例えば、CLDN9、CLDN3及びCLDN4などと交差反応する能力についても抗体をスクリーニングした。これらの値を使用して、試験した抗体セットにおけるそれぞれの抗体の相対親和性を測定した。類似した方法を使用して(しかし、CLDN6、CLDN3、CLDN4及びCLDN9の異なる発現プロファイルを有する細胞を用いて)、交差反応性データを得た。
【0220】
この方法で測定された相対親和性データ及び交差反応性データについては、表4及び5に列挙している。
【0221】
【表22】
【0222】
【表23】
【0223】
[実施例6]
本実施例では、キメラマウスIgG mAbの特性解析についての説明を行う。
【0224】
軟寒天3D増殖アッセイ及び異種移植片結合アッセイを実施して、実施例5に記載のmAbを更に特性決定した。簡潔に説明すると、48ウェルプレートのそれぞれのウェルについて、1×RPMI培地内の0.6%SeaPlaqueアガロース中の10,000の細胞を含有する250μLの最上層混合液を、1×RPMI培地内の固化した250uLの0.6%SeaPlaqueアガロースの下部層の上部に播種した。1×RPMI培地を含有する250uLの液体フィーダー層を固化した最上層上に入れた。トラスツズマブ、CLDN6 mAb、または、マウスIgG2a対照を含有させるまたは含有させずに、150ng/mL(1uM)で開始して1.5ng/mLで終了する1:10に希釈して、軟寒天アッセイの全3層を調製した。それぞれの試験条件を複製を用いて実施した。細胞を3週間コロニー形成させてから、0.05%ニュートラルレッドで染色を行い、EVOS XL倒立光学顕微鏡で観察した。処理対対照においてコロニー数が≧20%減少した細胞株を感受性とみなした。
【0225】
表6に示すとおり、示した抗体で処理すると、細胞株の多くがコロニー数の減少を示した。
【0226】
【表24】
【0227】
ヒトがん細胞株を注入した異種移植マウスを用いてインビボ結合試験を実施した。簡潔に説明すると、6週齢のCD-1無胸腺ヌードマウス(Charles River Laboratories)を用いてヒトがん細胞株の異種移植モデルを作製した。それぞれの細胞株の皮下注入においては、以下の条件、ARK2では0.75×10の細胞、UMUC4では1.0×10の細胞、OV90では1.0×10の細胞、及び、M202では0.5×10の細胞(全て、50%マトリゲル(BD Biosciences)を含む)、に従った。十分な数のマウスに注入を行い、治療群あたり8匹のマウスを得た。腫瘍が150~300mmの平均サイズに到達すると、マウスを治療群に無作為化した。治療用に、それぞれの治療抗体(AB3、AB2、参照Ab1、参照Ab2、参照Ab3(トラスツズマブ)、及び、非標的化IgG2対照)を、尾静脈(IV)注入用の1mg/mlの作用濃度となるように滅菌生理食塩水中に希釈した。M202試験用に、トラメチニブ(DMSO溶媒和物、MedChem Express)を、5日間の投与、2日間の休薬による最初の週間サイクルのスケジュールで、1.0mg/kg(10%Cremaphor,10%PEG400)でPO投与してから、残りの2週間の投与では0.5mg/kgに減量して投与した。週に3回キャリパーで腫瘍異種移植片を測定し、高さ×幅×長さと掛けることにより腫瘍容積(mm)を求めた。2~7週間マウスを治療した。試験終了時、動物を安楽死させてから腫瘍組織を切除及び分割して、バイオマーカー解析用の急速冷凍組織またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織として保存した。全ての動物実験は、IACUC、及び、University of CaliforniaのLos Angeles Animal Research Committeeにより承認されたプロトコル下で実施した。StudyDirector(San Francisco,CA)のStudyLogソフトウェアを使用してデータを解析した。結果はそれぞれの群の平均容積で示している。エラーバーは平均値の標準誤差(SE)を示している。
【0228】
異種移植アッセイの結果については図6図10に示している。図6A及び図6Bに示すとおり、AB2及びAB3のそれぞれは、子宮内膜腫瘍を有するマウス内における14日目の腫瘍容積において、対照IgG2抗体と比較して、大幅な平均変化量をもたらした。図7A及び図7Bに示すとおり、AB3は、膀胱腫瘍を有するマウス内における35日目の腫瘍容積において、対照IgG2抗体と比較して、大幅な平均変化量をもたらした。図8A及び図8Bは、AB2及びAB3のそれぞれが、卵巣腫瘍を有するマウス内における20日目の腫瘍容積において、対照IgG2抗体と比較して、大幅な平均変化量をもたらしたことを示している。図9A及び図9Bは、図9A及び図9Bに使用したモデルがCLDN6、CLDN3、CLDN4及びCLDN9のいずれも発現せず、その結果、陰性対照として使用されたことから、AB3がCLDN特異的な様式で作用したことを示している。図9A及び図9Bのデータはまた、AB3が、参照Ab1及び参照Ab2と比較してより少ないオフターゲット活性を有していることを示唆している。図10A図6図9の結果をまとめたものである。図10Aに示すとおり、AB3は、そのそれぞれがCLDN6を発現する子宮内膜腫瘍、膀胱腫瘍、及び、卵巣腫瘍を有するマウス内における腫瘍増殖を有意に抑制したが、CLDN6を発現しない黒色腫腫瘍(図10B)を有するマウス内における腫瘍増殖を抑制しなかった。図11に示すとおり、治療中のマウスの体重の平均変化は有意に変化せず、治療の安全性を示唆していた。
【0229】
ヒト卵巣癌細胞株であるOV90の異種移植モデルを用いて、第2のセットの実験を実施した。実施例5に記載の10種のmAbのうちの1つ、対照抗体(マウスIgG2a抗体、参照CLDN6 Ab)、または、PBS溶媒対照をマウスに注入した。群あたり8匹のマウスがおり、それぞれの動物に4日毎に10mg/kgの抗体を静脈内注入した。図12A及び図12Bに示すとおり、実施例5に記載の数種類の抗体は、卵巣腫瘍を有するマウス内における腫瘍容積を減少させた。溶媒対照と比較して試験を行った全ての抗体が腫瘍容積を減少させたが、その中でも、AB3、AB4、AB7及びAB10が最も良い性能を示した。図13に示すとおり、AB3、AB4、AB7またはAB10を用いて治療した動物の体重は有意に変化せず、それらの安全性を示唆していた。
【0230】
[実施例7]
本実施例では、キメラマウスIgG mAbの更なる特性解析についての説明を行う。
【0231】
内部移行の定量アッセイを実施した。簡潔に説明すると、陽性対照(抗体結合後に内部移行する周知の細胞表面受容体である、遍在的に発現するトランスフェリン受容体(TfR))を用いて、参照Ab1、AB3またはAB4の結合が誘発するCLDN6タンパク質の内部移行に関する試験を実施した。
【0232】
TfR及びCLDN6抗体を、Texas Red(商標)-X、スクシンイミジルエステル、混合異性体、カタログ番号T6134(ThermoFisher Scientific)で標識した。細胞を付着及び増殖させるための抗体処理の1日前に、μ-Slide 8 Wellチャンバー(カタログ番号80826,ibidi Cells In Focus Inc.)内に細胞を播種した。標識抗体と共に細胞を、暗黒下、氷上で30分間インキュベートした。次に、CLDN6またはTfR標識細胞を含有するチャンバーをEchoラボ蛍光顕微鏡で読み、内部移行前の画像を収集した。次に、チャンバーを37℃で40分間インキュベートして内部移行を進めてから、Echoラボ蛍光顕微鏡で再度画像を収集した。AB3及びAB4は、参照Ab1がもたらしたCLDN6の内部移行度合いと比較して、CLDN6のより大きな内部移行度合いをもたらした(データは省略)。
【0233】
[実施例8]
本実施例では、キメラマウスIgG mAbの更なる特性解析についての説明を行う。
【0234】
実施例5に記載した選択抗体を用いて、以下のとおりに2次元(2D)増殖アッセイを実施した。細胞を複製して、ウェルあたり5,000~20,000の細胞で24ウェルプレート内に播種した。翌日、mAbの6点の1~5希釈(トラスツズマブ、CLDN6 mAb、または、マウスIgG2a対照のいずれかの100nMで開始した)及び1ng/μL固定濃度のモノメチルアウリスタチンE(MMAE)コンジュゲート抗マウス二次(Moradec,LLC)で細胞を処理して、用量反応曲線を作成した。抗体処理の日である1日目に未処理ウェルの細胞を定量し、後ほど6日目に細胞増殖の範囲を測定した。mAbで処理したウェルを6日目に定量し、それぞれの処理条件における増殖を、未処理細胞の増殖に対する正規化パーセント比率として求めた。Z1パーティクルカウンター(Beckman Coulter,Inc)上で定量を実施した。
【0235】
結果を図14に示す。AB2、AB3、AB4、及び、AB5は、最も高い増殖阻害効果を示した。これら抗体のそれぞれにおけるIC50は0.1nM~1nMであった。AB7、AB10、AB11及びAB15のそれぞれはまた、本アッセイにおいて、AB2、AB3、AB4及びAB5よりも比較的度合いは低いが、増殖阻害能を示した。
【0236】
[実施例9]
本実施例では、本開示の抗体のヒト化についての説明を行う。
【0237】
表Aに記載の抗体のサブセットをヒト化解析用に選択した。AB1、AB3、AB4、AB9、AB11、及び、AB18抗体の重鎖可変(VH)配列及び軽鎖可変(VL)配列を、ヒトVH遺伝子及びヒトVLκ遺伝子に由来する既知のヒト生殖細胞系配列(IMGT(登録商標)the international ImMunoGeneTics information system(登録商標)www.imgt.org;創設者及び管理者:Marie-Paule Lefranc,Montpellier,France)のライブラリと比較したが、使用したデータベースは、IMGTヒトVH遺伝子(F+ORF、273の生殖細胞系配列)及びIMGTヒトVLκ遺伝子(F+ORF、74の生殖細胞系配列)であった。受容体ヒト生殖細胞系は、親抗体の配列に最も近い受容体ヒト生殖細胞系から選択した。
【0238】
表7は、それぞれの抗体のそれぞれのVH及びVLにおける、受容体配列として選択されたヒト生殖細胞系配列及び選択されたヒト重鎖結合領域(J遺伝子)に関する情報について記載している。IMGT(登録商標)the international ImMunoGeneTics information system(登録商標)www.imgt.org(創設者及び管理者:Marie-Paule Lefranc,Montpellier,France)に蓄積されているヒト結合領域配列から結合領域(J遺伝子)を選択した。
【0239】
【表25】
【0240】
CDRはAbM定義に従い定義した(CDR定義を比較するテーブルについては、Dr.Andrew C.R.Martinのウェブサイトwww.bioinf.org.uk/abs/を参照のこと)。
【0241】
ヒト生殖細胞系フレームワーク(すなわち、VH及びVL内の非CDR残基)部位の対応する親マウス配列への改変は、ヒト化抗体の結合を最適化するために必要となり得る。ヒト化抗体の型用の配列は配列番号:376~421として提供されている。
【0242】
AB1用に、HCのCDR2のAsn52(連番)及びLCのCDR2のAsn54のそれぞれについて、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の低い可能性を有するように決定した。
【0243】
AB3用に、HCのCDR1のAsn31(連番)、HCのCDR2のAsn57、LCのCDR1のAsn28、及び、LCのCDR2のAsn50のそれぞれについて、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の低い可能性を有するように決定した。HCのCDR1のTrp33について、とりわけストレス条件下において、溶媒に曝露される可能性があり酸化の可能性を有するように決定した。HCのCDR3について、溶媒に曝露される可能性があることから抗体の製造時に問題となり得る遊離Cys106がCDR内にあるように決定した。Tyr、SerまたはAlaへの改変にはこのCys残基が推奨された。これら改変抗体の結合の維持について試験を行った。LCのCDR2のIle53について、溶媒に曝露され非特異的結合をもたらすことができるように決定した。このIle残基がSerへと改変されることが示唆された。この改変抗体の結合の維持について試験を行った。
【0244】
AB4用に、HCのCDR2のAsn52(連番)及びLCのCDR2のAsn58のそれぞれについて、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の低い可能性を有するように決定した。LCのCDR1内の配列DGNTは、イソアスパルテート形成(配列DGにおける)の高い可能性を有することに加えてアミド分解(配列NTにおける)の可能性を有するように決定されることと同じくらい問題となるように決定された。この配列が改変用に推奨された。
【0245】
AB9用に、HCのCDR1内のAsn33(連番)、ならびに、HCのCDR2内のAsn52及びAsn59について、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の低い可能性を有するように決定した。Asn54について、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の中程度の可能性を有するように決定した。HCのCDR2内のNGG配列について、アミド分解に続いてイソアスパルテート形成の高/中程度の可能性を有するように決定した。それゆえ、このアミノ酸配列を改変することが推奨された。HCのCDR3内の遊離Cys106は、溶媒に曝露される可能性があるように決定されることから抗体の製造時に問題となり得る。このCys残基がTyr、SerまたはAlaへと改変されることが示唆される。これら改変抗体の結合の維持について試験を行った。HCのCDR1内のArg28はヒト抗体内には頻繁に存在していない。この残基をThrへと改変し、結合の維持について試験を行った。AB9用に、LCのCDR1内のTrp32(連番)について、とりわけストレス条件下において、溶媒に曝露される可能性を有し酸化を受け得るように決定した。同一CDRのLeu24はヒト抗体内には頻繁に存在していない。この残基をArgへと改変し、結合の維持について試験を行った。
【0246】
AB11用に、HCのCDR2内のAsp54-Ser55(連番)について、イソアスパルテート形成の低い可能性を有するように決定した。LCのCDR2内のAsn57について、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の低い可能性を有するように決定した。
【0247】
AB18用に、HCのCDR1内のAsn33及びCDR-H2 Asn50(連番)について、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の低い可能性を有するように決定した。HCのCDR2内のAsp-Pro(DP)配列について、酸性条件下で断片化を受ける可能性を有するように決定した。VLドメイン内において、LCのCDR1内のAsn34及びAsn37について、配列及び立体構造に基づいてアミド分解の低い可能性を有するように決定した。LCのCDR3内のTrp56について、とりわけストレス条件下において、溶媒に曝露される可能性を有し酸化を受け得るように決定した。
【0248】
表8は、ヒト化VHとヒト化VLを組み合わせるためのスキームを示している。ヒト化型がない場合、キメラmAbと同等である。好ましいペアを下線を付した太字テキストで示している。
【0249】
【表26】
【0250】
表8に記載のヒト化抗体を構築して、基本的に実施例5に記載のとおりに発現させた。基本的に実施例5に記載のとおりにFACSアッセイを実施し、ヒト化抗体の相対的な抗原結合力を測定した。2つの用量(1.5μgまたは0.3μg)のヒト化抗体のヒトCLDN6またはマウスCLDN6(遺伝子操作された293Tクローンが発現するタンパク質)のいずれかへの結合について試験を行った。アッセイの結果を表9に記載する。
【0251】
【表27】
【0252】
同様に、FACSアッセイを実施し、示したがん細胞株が発現するCLDN6への結合における、ヒト化抗体(1.5μgまたは0.3μgのいずれか)の相対的な抗原結合力を測定した。アッセイの結果を表10に記載する。2nd Ab onlyを陰性対照として使用した。64A-chim、h64A、及び、SC27-108-chimを参照抗体として使用した。対応する親抗体(ヒト化前の抗体)を対照として使用し、「chim」と名付けた。
【0253】
【表28】
【0254】
インビトロ抗原結合データに基づいて、3種のヒト化抗体を更なる試験及び開発用に選択した。それら抗体をAB1、AB3及びAB4から誘導した。
【0255】
基本的に実施例6に記載のとおりに膀胱癌細胞株UMUC4を注入した異種移植マウスを用いて、AB1、AB3及びAB4のヒト化型のインビボ結合試験を実施した。簡潔に説明すると、6週齢のCD-1無胸腺ヌードマウス(Charles River Laboratories)を用いてUMUC4の異種移植モデルを作製した。腫瘍が150~300mmの平均サイズに到達した後、マウスを治療群に無作為化した。ヒト化抗体を、尾静脈(IV)注入用の1mg/mlの作用濃度となるように滅菌生理食塩水中に希釈した。週に3回キャリパーで腫瘍異種移植片を測定し、高さ×幅×長さと掛けることにより腫瘍容積(mm)を求めた。2~7週間マウスを治療した。試験終了時、動物を安楽死させてから腫瘍組織を切除及び分割して、バイオマーカー解析用の急速冷凍組織またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織として保存した。
【0256】
異種移植アッセイの結果については図15図21に示している。図15は、2型のヒト化AB3(AB3-2及びAB3-4)の異種移植アッセイ結果を示しており、治療はQ4Dで投与される10mg/kgを含んでいた。対照は、溶媒対照(PBS)、ヒトIgG(10mg/kg Q4D)、及び、AB3のマウス型(10mg/kg Q4D)を含んでいた。この図に示すとおり、ヒト化AB3-4は、35日間の治療期間にわたる腫瘍容積の減少を示した。図16は、2種の追加の対照(64A MSE及びそのキメラ型(64A-CHIM))を実施した以外は図15に示す実験と同一の治療の異種移植アッセイ結果を示している。図15と同様に、図16は、ヒト化AB3-4を用いた治療後における腫瘍容積の著しい減少を示している。
【0257】
図17は、ヒト化AB1-5の異種移植アッセイ結果を示している。対照は、溶媒対照(PBS)、ヒトIgG(10mg/kg Q4D)、及び、AB1のマウス型(10mg/kg Q4D)を含んでいた。図17に示すとおり、ヒト化AB1-5を用いて治療したマウスは腫瘍容積の著しい減少を示した。
【0258】
図18は、ヒト化AB4-3の異種移植アッセイ結果を示している。対照は、溶媒対照(PBS)、ヒトIgG(10mg/kg Q4D)、及び、AB4のマウス型(10mg/kg Q4D)を含んでいた。ヒト化AB4-3を用いて治療したマウスは腫瘍容積の著しい減少を示さなかった。
【0259】
図19図21は、図15図18の全4種のヒト化抗体を試験した異種移植アッセイの結果を示している。参照CLDN6抗体のマウス型及びキメラ型を対照として使用した。図19に示すとおり、ヒト化AB3-4及びAB1-5を用いて治療したマウスは腫瘍容積の減少を示した。図20は、55日目までの期間にわたる腫瘍容積を示している。アッセイにおけるマウスの体重については図21に示している。
【0260】
[実施例10]
AB1、AB3及びAB4の異なる配列を用いてインシリコ解析を実施した。詳細には、それぞれの抗体における、(a)元の親クローン、(b)最も近いマウス生殖細胞系配列、(c)最も近いヒト生殖細胞系配列、及び、(d)ヒト化配列、の配列をアラインした。親和性成熟を経たと考えられているアミノ酸をアスタリスクでマークする一方で、抗体データベース情報によるその位置のアミノ酸とは異なるアミノ酸についてはハッシュタグでマークする。それぞれの配列のCDRについては囲み線を付した。この解析に基づいて、表10に記載の配列を有する数種類のヒト化抗体を作製する。
【0261】
【表29】
【0262】
基本的に実施例5に記載のとおりにこれらのコンセンサス配列で定義される配列を有する複数の抗体を作製し、抗原結合についてFACSによりインビトロで試験を行い(基本的に実施例5に記載のとおりに)、マウス内における腫瘍容積を減少させる能力についてインビボで試験を行う(基本的に実施例6に記載のとおりに)。
【0263】
刊行物、特許出願及び特許を含む本明細書で引用した全ての参照文献は、それぞれの参照文献が個別及び明示的に参照により組み込まれることが示されその全体が本明細書に記載されるかのように、同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0264】
本開示を記述する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、用語「a」、「an」、「the」及び同様の指示対象の使用は、本明細書で特に明記しない限りまたは文脈上特に明確に矛盾しない限り、単数形と複数形の両方を対象として含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」及び「含有する」は、特に明記しない限り、オープンエンド用語(すなわち、「含むがこれらに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。
【0265】
本明細書における値の範囲の列挙は単に、本明細書で特に明記しない限り、範囲に含まれるそれぞれの独立した値及びそれぞれの終点を個別に意味するための略記法として機能することを目的としており、それぞれの独立した値及び終点は、それらが本明細書において個別に引用されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0266】
本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で特に明記しない限りまたは文脈上特に明確に矛盾しない限り、任意の好適な順番で実施することができる。本明細書で提供する全ての実施例または様々な用語(例えば、「など」)の使用は単に、本開示をより適切に明らかにすることを目的としており、特に請求しない限り、本開示の範囲に限定をもたらすものではない。本開示の実施に不可欠な任意の非請求要素を示すものとして、本明細書の用語を解釈するべきではない。
【0267】
本開示の好ましい実施形態は本明細書に記載されており、本発明者らが知る本開示を実施するためのベストモードを含む。これら好ましい実施形態の変形形態は、上記の記述を読解することにより当業者に明らかとなり得る。本発明者らは当業者がこのような変形形態を必要に応じて採用することを見込んでおり、本発明者らは、本明細書が明示的に記載した以外の別の方法で本開示が実施されることを意図している。それゆえ、本開示は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙する主題の全ての変更及び等価物を含む。更に、全ての可能な変形形態を含む上記の要素の任意の組み合わせは、本明細書で特に明記しない限りまたは文脈上特に明確に矛盾しない限り、本開示に包含される。
本発明は以下を提供する。
1. ヒトクローディン6(CLDN6)タンパク質(配列番号:200)に結合する抗原結合タンパク質であって、
a.前記抗原結合タンパク質は、CLDN6の細胞外ドメイン(ECD)の細胞外ループ2(EL2)に結合し、CLDN6の前記ECDの細胞外ループ1(EL1)に結合しない、
b.クローディン3(CLDN3)、クローディン4(CLDN4)及びクローディン9(CLDN9)のいずれにも結合せず、OVCA429細胞が内在的に発現するCLDN6に参照抗体が約1200nM未満で結合するのを阻害する、または、
c.これらの組み合わせである、
前記抗原結合タンパク質。
2. WTAHAIIRDFYNPLVAEAQKREL(配列番号:2)のアミノ酸配列内のエピトープに結合する、上記1に記載の抗原結合タンパク質。
3. CLDN6のTAHAIIRDFYNPL(配列番号:3)またはLVAEAQKREL(配列番号:4)のアミノ酸配列に結合する、上記2に記載の抗原結合タンパク質。
4. クローディン3(CLDN3)、クローディン4(CLDN4)及びクローディン9(CLDN9)のうちのいずれか1つまたは複数に結合しない、上記1から上記3のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
5. CLDN3に結合しない、上記4に記載の抗原結合タンパク質。
6. CLDN6、CLDN4及びCLDN9に結合する、上記5に記載の抗原結合タンパク質。
7. CLDN9に結合しない、上記5に記載の抗原結合タンパク質。
8. CLDN6及びCLDN4に結合する、上記7に記載の抗原結合タンパク質。
9. CLDN4に結合しない、上記5に記載の抗原結合タンパク質。
10. CLDN6及びCLDN9に結合する、上記9に記載の抗原結合タンパク質。
11. 前記参照抗体は、配列番号:181の軽鎖可変配列及び配列番号:182の重鎖可変配列、または、配列番号:185の軽鎖可変配列及び配列番号:186の重鎖可変配列、を含む、上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
12. a.表Aに記載の重鎖CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:11、17、23、29、35、41、47、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、及び、131からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
b.表Aに記載の重鎖CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、86、102、108、114、120、126、及び、132からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
c.表Aに記載の重鎖CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:13、19、25、31、37、43、49、55、61、67、73、79、85、91、97、103、109、115、121、127、及び、133からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
d.表Aに記載の軽鎖CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:8、14、20、32、38、44、50、56、62、68、74、80、86、92、98、104、110、116、122、及び、128からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
e.表Aに記載の軽鎖CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:9、15、21、27、33、39、45、51、57、63、69、75、81、87、93、99、105、111、117、123、及び、129からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
f.表Aに記載の軽鎖CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:10、16、22、28、34、40、46、52、58、64、70、76、82、88、94、100、106、112、118、124、及び、130からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
g.(a)~(f)のいずれか2つ以上の組み合わせ、
を含む、上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
13. 前記変異配列は少なくとも約80%または少なくとも85%もしくは約85%の配列同一性を有する、上記12に記載の抗原結合タンパク質。
14. 前記変異配列は少なくとも約90%の配列同一性または少なくとも95%もしくは約95%の配列同一性を有する、上記13に記載の抗原結合タンパク質。
15. 表Aに記載の軽鎖CDR1アミノ酸配列、軽鎖CDR2アミノ酸配列、及び、軽鎖CDR3アミノ酸配列、ならびに、表Aに記載の重鎖CDRアミノ酸配列のうちの1つまたは2つ、を含む、上記12に記載の抗原結合タンパク質。
16. 表Aに記載の重鎖CDR1アミノ酸配列、重鎖CDR2アミノ酸配列、及び、重鎖CDR3アミノ酸配列、ならびに、表Aに記載の軽鎖CDRアミノ酸配列のうちの1つまたは2つ、を含む、上記12に記載の抗原結合タンパク質。
17. a.配列番号:74~79、
b.配列番号:50~55、
c.配列番号:122~127、
d.配列番号:26~31、
e.配列番号:128~133、
f.配列番号:38~43、
g.配列番号:62~67、
h.配列番号:80~85、
i.配列番号:44~49、
j.配列番号:86~91、
k.配列番号:104~109、
l.配列番号:56~61、
m.配列番号:32~37、
n.配列番号:110~115、
o.配列番号:98~103、
p.配列番号:92~97、
q.配列番号:116~121、
r.配列番号:8~13、
s.配列番号:68~73、
t.配列番号:14~19、及び、
u.配列番号:20~25、
からなる群から選択される6つのCDRアミノ酸配列を含む、上記12から上記16のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
18. a.表Bに記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、及び、175からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
b.表Bに記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、及び、176からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、
c.(a)と(b)の両方、
を含む、上記12から上記19のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
19. 前記変異配列は少なくとも約80%または少なくとも約85%の配列同一性を有する、上記18に記載の抗原結合タンパク質。
20. 前記変異配列は少なくとも約90%または少なくとも約95%の配列同一性を有する、上記19に記載の抗原結合タンパク質。
21. a.配列番号:156及び157、
b.配列番号:148及び149、
c.配列番号:172及び173、
d.配列番号:140及び141、
e.配列番号:174及び175、
f.配列番号:144及び145、
g.配列番号:152及び153、
h.配列番号:158及び159、
i.配列番号:146及び147、
j.配列番号:160及び161、
k.配列番号:166及び167、
l.配列番号:150及び151、
m.配列番号:142及び143、
n.配列番号:168及び169、
o.配列番号:164及び165、
p.配列番号:162及び163、
q.配列番号:170及び171、
r.配列番号:134及び135、
s.配列番号:154及び155、
t.配列番号:136及び137、ならびに、
u.配列番号:138及び139、
からなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む、上記18に記載の抗原結合タンパク質。
22. 抗体である、上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
23. モノクローナル抗体である、上記22に記載の抗原結合タンパク質。
24. IgGである、上記22または上記23に記載の抗原結合タンパク質。
25. 軟寒天3D増殖アッセイ内におけるコロニー増殖を少なくとも約50%阻害する、上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
26. ヒトがん細胞を注入した異種移植マウス内における腫瘍増殖を阻害する、上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
27. 卵巣癌細胞、黒色腫癌細胞、膀胱癌細胞、または、子宮内膜癌細胞を注入した異種移植マウス内における腫瘍増殖を阻害する、上記26に記載の抗原結合タンパク質。
28. 卵巣癌細胞、膀胱癌細胞、または、子宮内膜癌細胞を注入した異種移植マウス内における腫瘍増殖を少なくとも50%阻害する、上記27に記載の抗原結合タンパク質。
29. (a)表AまたはA1に記載のHC CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:11、17、23、29、35、41、47、53、59、65、71、77、83、89、95、101、107、113、119、125、131、452、455、461、465、及び、472からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、(b)表AまたはA1に記載のHC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:12、18、24、30、36、42、48、54、60、66、72、78、84、90、86、102、108、114、120、126、132、475、456、462、466、468、及び、473からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、(c)表AまたはA1に記載のHC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:13、19、25、31、37、43、49、55、61、67、73、79、85、91、97、103、109、115、121、127、133、453、457、463、467、469、及び、474からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、(d)表AまたはA1に記載のLC CDR1アミノ酸配列、すなわち、配列番号:8、14、20、32、38、44、50、56、62、68、74、80、86、92、98、104、110、116、122、128、449、476、458、464、及び、470からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、(e)表AまたはA1に記載のLC CDR2アミノ酸配列、すなわち、配列番号:9、15、21、27、33、39、45、51、57、63、69、75、81、87、93、99、105、111、117、123、129、450、477、459、及び、471からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、(f)表AまたはA1に記載のLC CDR3アミノ酸配列、すなわち、配列番号:10、16、22、28、34、40、46、52、58、64、70、76、82、88、94、100、106、112、118、124、130、451、454、及び、460からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、(g)(a)~(f)のいずれか2つ以上の組み合わせ、を含む、抗原結合タンパク質。
30. a.配列番号:74~79、
b.配列番号:50~55、
c.配列番号:122~127、
d.配列番号:26~31、
e.配列番号:128~133、
f.配列番号:38~43、
g.配列番号:62~67、
h.配列番号:80~85、
i.配列番号:44~49、
j.配列番号:86~91、
k.配列番号:104~109、
l.配列番号:56~61、
m.配列番号:32~37、
n.配列番号:110~115、
o.配列番号:98~103、
p.配列番号:92~97、
q.配列番号:116~121、
r.配列番号:8~13、
s.配列番号:68~73、
t.配列番号:14~19、
u.配列番号:20~25、
v.配列番号:449~453及び475、
w.配列番号:476~477、454~457、
x.配列番号:458~463、
y.配列番号:57、58、464~467、
z.配列番号:68~71及び468~469、ならびに、
aa.配列番号:112及び470~474、
からなる群から選択される6つのCDRアミノ酸配列を含む、抗原結合タンパク質。
31. a.表Bに記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:135、137、139、141、143、145、147、149、151、153、155、157、159、161、163、165、167、169、171、173、及び、175からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
b.表Bに記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:134、136、138、140、142、144、146、148、150、152、154、156、158、160、162、164、166、168、170、172、174、及び、176からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、
c.(a)と(b)の両方、
を含む、抗原結合タンパク質。
32. 前記変異配列は少なくとも約85%の配列同一性または約90%もしくは約95%の配列同一性を有する、上記31に記載の抗原結合タンパク質。
33. a.配列番号:156及び157、
b.配列番号:148及び149、
c.配列番号:172及び173、
d.配列番号:140及び141、
e.配列番号:174及び175、
f.配列番号:144及び145、
g.配列番号:152及び153、
h.配列番号:158及び159、
i.配列番号:146及び147、
j.配列番号:160及び161、
k.配列番号:166及び167、
l.配列番号:150及び151、
m.配列番号:142及び143、
n.配列番号:168及び169、
o.配列番号:164及び165、
p.配列番号:162及び163、
q.配列番号:170及び171、
r.配列番号:134及び135、
s.配列番号:154及び155、
t.配列番号:136及び137、ならびに、
u.配列番号:138及び139、
からなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む、抗原結合タンパク質。
34. a.表Cに記載の重鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:376~379、384~387、391~396、403~408、412~413、416~419、及び、422~427からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、
b.表Cに記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列、すなわち、配列番号:380~383、388~390、397~402、409~411、414~415、及び、420~421からなる群から選択される配列、あるいは、わずか1つもしくは2つのアミノ酸が異なるまたは少なくとも70%もしくは約70%の配列同一性を有するその変異配列、あるいは、
c.(a)と(b)の両方、
を含む、抗原結合タンパク質。
35. 前記変異配列は少なくとも約85%の配列同一性を有する、上記6に記載の抗原結合タンパク質。
36. 前記変異配列は少なくとも約90%または約95%の配列同一性を有する、上記7に記載の抗原結合タンパク質。
37. a.配列番号:376及び380、
b.配列番号:377及び380、
c.配列番号:377及び381、
d.配列番号:377及び382、
e.配列番号:377及び383、
f.配列番号:378及び381、
g.配列番号:378及び382、
h.配列番号:378及び383、
i.配列番号:379及び381、
j.配列番号:379及び382、
k.配列番号:379及び383、
l.配列番号:384及び388、
m.配列番号:385及び388、
n.配列番号:385及び389、
o.配列番号:386及び388、
p.配列番号:386及び389、
q.配列番号:387及び389、
r.配列番号:422及び389、
s.配列番号:391及び397、
t.配列番号:392及び397、
u.配列番号:393及び398、
v.配列番号:394及び398、
w.配列番号:395及び398、
x.配列番号:396及び398、
y.配列番号:423及び398、
z.配列番号:424及び398、
aa.配列番号:425及び398、
bb.配列番号:426及び398、
cc.配列番号:427及び398、
dd.配列番号:403及び409、
ee.配列番号:404及び409、
ff.配列番号:405及び410、
gg.配列番号:405及び411、
hh.配列番号:406及び410、
ii.配列番号:406及び411、
jj.配列番号:407及び410、
kk.配列番号:407及び411、
ll.配列番号:408及び410、
mm.配列番号:408及び411、
nn.配列番号:412及び414、
oo.配列番号:413及び414、
pp.配列番号:416及び420、
qq.配列番号:417及び420、
rr.配列番号:417及び421、
ss.配列番号:418及び420、
tt.配列番号:418及び421、
uu.配列番号:419及び420、ならびに、
vv.配列番号:419及び421、
からなる群から選択される一対のアミノ酸配列を含む、抗原結合タンパク質。
38. (A)任意選択的に、YTFTTYT(配列番号:11)のアミノ酸配列を含む、YTFTXYT(式中、Xは、T、V、D、または、Sである)(配列番号:452)のアミノ酸配列を含む、HC CDR1、
(B)任意選択的に、INPSSGYT(配列番号:12)のアミノ酸配列を含む、IXPSSGYT(式中、Xは、Q、S、A、または、Nである)(配列番号:475)のアミノ酸配列を含む、HC CDR2、
(C)任意選択的に、ANGDYYVAY(配列番号:13)のアミノ酸配列を含む、AXGDYYVAY(式中、Xは、N、Q、H、または、Dである)(配列番号:453)のアミノ酸配列を含む、HC CDR3、
(D)任意選択的に、SSVSSTY(配列番号:8)のアミノ酸配列を含む、SSVSSXY(式中、Xは、T、V、F、または、Dである)(配列番号:449)のアミノ酸配列を含む、LC CDR1、
(E)任意選択的に、STS(配列番号:9)のアミノ酸配列を含む、XTX(式中、1位のXは、S、T、Q、または、Aであり、3位のXは、S、T、D、または、Qである)(配列番号:450)のアミノ酸配列を含む、LC CDR2、及び、
(F)任意選択的に、HQYHRSPLT(配列番号:10)のアミノ酸配列を含む、HXYXRSPLT(式中、2位のXは、Q、H、または、Sであり、4位のXは、H、Y、Q、または、Sである)(配列番号:451)のアミノ酸配列を含む、LC CDR3、
を含む、抗原結合タンパク質。
39. (A)任意選択的に、FTFSNYW(配列番号:23)のアミノ酸配列を含む、FTFSXYX(式中、5位のXは、N、S、R、Q、または、Aであり、7位のXは、W、H、Y、または、Fである)(配列番号:455)のアミノ酸配列を含む、HC CDR1、
(B)任意選択的に、IRLKSDNYAT(配列番号:24)のアミノ酸配列を含む、IRLKXDXYAT(式中、5位のXは、S、N、A、または、Tであり、7位のXは、Q、S、A、または、Nである)(配列番号:456)のアミノ酸配列を含む、HC CDR2、
(C)任意選択的に、NDGPPSGC(配列番号:25)のアミノ酸配列を含む、XDGPPSGX(式中、1位のXは、N、D、または、Tであり、8位のXは、S、T、A、C、または、Yである)(配列番号:457)のアミノ酸配列を含む、HC CDR3、
(D)任意選択的に、ENIYSY(配列番号:20)のアミノ酸配列を含む、EXIYSY(式中、Xは、Q、S、A、D、または、Nである)(配列番号:476)のアミノ酸配列を含む、LC CDR1、
(E)任意選択的に、NAK(配列番号:21)のアミノ酸配列を含む、XAK(式中、1位のXは、Q、S、A、D、または、Nである)(配列番号:477)のアミノ酸配列を含む、LC CDR2、及び、
(F)任意選択的に、QHHYTVPWT(配列番号:22)のアミノ酸配列を含む、QXHYXVPWT(式中、2位のXは、H、Q、S、または、Tであり、5位のXは、T、S、N、または、Gである)(配列番号:454)のアミノ酸配列を含む、LC CDR3、
を含む、抗原結合タンパク質。
40. (A)任意選択的に、YTFTSYT(配列番号:29)のアミノ酸配列を含む、YTXTXYT(式中、3位のXは、F、Y、S、または、Tであり、5位のXは、S、T、Y、または、Dである)(配列番号:461)のアミノ酸配列を含む、HC CDR1、 (B)任意選択的に、INPSSTYT(配列番号:30)のアミノ酸配列を含む、IXPSSXYT(式中、2位のXは、Q、S、A、または、Nであり、6位のXは、T、S、V、D、または、Gである)(配列番号:462)のアミノ酸配列を含む、HC CDR2、
(C)任意選択的に、SRGELGGFAY(配列番号:31)のアミノ酸配列を含む、XRGEXGGFAY(式中、1位のXは、S、A、T、または、Vであり、5位のXは、L、V、または、Fである)(配列番号:463)のアミノ酸配列を含む、HC CDR3、
(D)任意選択的に、QSLVHSDGNTY(配列番号:26)のアミノ酸配列を含む、QSLVHSXGXTY(式中、7位のXは、D、N、E、Q、S、または、Aであり、9位のXは、Q、S、A、D、または、Nである)(配列番号:458)のアミノ酸配列を含む、LC CDR1、
(E)任意選択的に、KVS(配列番号:27)のアミノ酸配列を含む、XVX(式中、1位のXは、K、Q、または、Rであり、3位のXは、S、T、または、Vである)(配列番号:459)のアミノ酸配列を含む、LC CDR2、及び、
(F)任意選択的に、SQSTHVPYT(配列番号:28)のアミノ酸配列を含む、SXXTHVPYT(式中、2位のXは、Q、H、または、Tであり、3位のXは、S、G、T、または、Dである)(配列番号:460)のアミノ酸配列を含む、LC CDR3、
を含む、抗原結合タンパク質。
41. 上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質を含むコンジュゲート。
42. 上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質。
43. 上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質、上記41に記載のコンジュゲート、または、上記42に記載の融合タンパク質、をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸。
44. 上記43に記載の核酸を含むベクター。
45. 上記43に記載の核酸または上記44に記載のベクターを含む宿主細胞。
46. クローディン6(CLDN6)タンパク質に結合する抗原結合タンパク質を製造するための方法であって、(i)上記45に記載の宿主細胞を細胞培養培地内で培養することであって、前記宿主細胞は、上記のいずれかに記載の抗原結合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む、前記培養することと、(ii)前記細胞培養培地から前記抗原結合タンパク質を回収することと、を含む、前記方法。
47. クローディン6(CLDN6)タンパク質に結合する抗原結合タンパク質を含む融合タンパク質を製造するための方法であって、(i)上記45に記載の宿主細胞を細胞培養培地内で培養することであって、前記宿主細胞は、上記30に記載の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を含む、前記培養することと、(ii)前記細胞培養培地から前記融合タンパク質を回収することと、を含む、前記方法。
48. 上記1から上記40のいずれかに記載の抗原結合タンパク質、上記41に記載のコンジュゲート、上記42に記載の融合タンパク質、上記43に記載の核酸、上記44に記載のベクター、上記45に記載の宿主細胞、または、これらの組み合わせを、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と混合することを含む、医薬組成物を製造するための方法。
49. 上記1から上記40のいずれかに記載の抗原結合タンパク質、上記41に記載のコンジュゲート、上記42に記載の融合タンパク質、上記43に記載の核酸、上記44に記載のベクター、上記45に記載の宿主細胞、または、これらの組み合わせと、薬学的に許容される担体、希釈剤または添加剤と、を含む、医薬組成物。
50. CLDN6発現がんを有する対象を治療するための方法であって、前記がんを治療するのに有効な量で上記49に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
51. 対象内における腫瘍増殖を阻害するための方法であって、腫瘍増殖を阻害するのに有効な量で上記49に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
52. 対象内における腫瘍のサイズを縮小させるための方法であって、腫瘍のサイズを縮小させるのに有効な量で上記49に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
53. 対象内におけるがんの再発を予防するための方法であって、がんの再発を予防するのに有効な量で上記49に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
54. CLDN6の低過剰発現と診断された対象内におけるがんを治療するための方法であって、がんの再発を予防するのに有効な量で上記49に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
55. 前記投与することは腫瘍細胞におけるアポトーシスを誘導する、上記50から上記54のいずれかに記載の方法。
56. 前記投与することはCLDN6を発現する細胞におけるアポトーシスを誘導する、上記50から上記55のいずれかに記載の方法。
57. 試料中のクローディン6(CLDN6)を検出するための方法であって、前記試料を、上記1から上記40のいずれかに記載の抗原結合タンパク質、上記41に記載のコンジュゲート、または、上記42に記載の融合タンパク質と接触させることと、CLDN6に結合した前記抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質、を含む免疫複合体をアッセイすることと、を含む、前記方法。
58. 対象内におけるクローディン6(CLDN6)陽性がんを診断するための方法であって、前記対象から採取した細胞または組織を含む生体試料を、上記1から上記40のいずれかに記載の抗原結合タンパク質、上記41に記載のコンジュゲート、または、上記42に記載の融合タンパク質と接触させることと、CLDN6に結合した前記抗原結合タンパク質、コンジュゲート、または、融合タンパク質、を含む免疫複合体をアッセイすることと、を含む、前記方法。
図1
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図12A
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【配列表】
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