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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20241206BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241206BHJP
   A61Q 5/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/00
A61Q5/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020554516
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-19
(86)【国際出願番号】 EP2019058826
(87)【国際公開番号】W WO2019193203
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-24
(31)【優先権主張番号】1805780.2
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ランバート,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】レイノー,ローマン
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-229804(JP,A)
【文献】特開2001-213754(JP,A)
【文献】特開2003-146902(JP,A)
【文献】米国特許第09867774(US,B1)
【文献】国際公開第2016/144196(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102462653(CN,A)
【文献】特開2004-123675(JP,A)
【文献】Hain Celestial Group, USA,Treatment Shampoo,Mintel GNPD [online],2014年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#2452257, [検索日:2023.01.12], 表題部分,成分,製品のバリエーション
【文献】The Refinery, UK,Shave Oil,Mintel GNPD [online],2006年10月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#599730, [検索日:2023.01.12], 表題部分,成分,製品のバリエーション
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 36/00-36/9068
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体および少なくとも1種の活性化粧品成分を含む化粧品組成物であって、活性化粧品成分が使い果たされたパチョリの茎の抽出物を含み、
使い果たされたパチョリの茎は、以前に水蒸気蒸留によって処理されたパチョリの茎であ
使い果たされたパチョリの茎の抽出物は、使い果たされたパチョリの茎から水、またはアルコールと水との混合物で、室温~80℃の温度で抽出されたものである、
前記化粧品組成物。
【請求項2】
化粧品組成物がスキンケア、頭皮ケアまたはボディケア組成物である、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
化粧品組成物が乾燥肌用のセラム、抗老化セラム、および抗老化ナイトクリームまたはデイクリーム、乾燥フケ防止製品、乾燥頭皮ローションあるいはボディケアローションである、請求項2に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
活性化粧品成分が使い果たされたパチョリの茎の水性および/またはアルコール抽出物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
皮脂産生を刺激するための、活性酸素種の生成を抑制するためのおよび/または創傷治癒を阻害するための請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
皮脂産生を刺激するための請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項7】
創傷治癒を阻害するための請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項8】
活性化粧品成分を調製する方法であって、
(i)使い果たされたパチョリの茎を提供する工程;および
(ii)使い果たされたパチョリの茎を、水またはアルコールと水との混合物で、室温~80℃の温度で抽出する工程、
を含み、使い果たされたパチョリの茎が以前に水蒸気蒸留によって処理されたパチョリの茎である、前記方法。
【請求項9】
抽出を水および/またはエタノールを使用して行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
スキンケアにおける使い果たされたパチョリの茎からの抽出物の使用であって、使い果たされたパチョリの茎が以前に水蒸気蒸留によって処理されたパチョリの茎であり、使い果たされたパチョリの茎からの抽出物は、使い果たされたパチョリの茎から水、またはアルコールと水との混合物で、室温~80℃の温度で抽出されたものである、前記使用。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品組成物を適用することによって、皮脂産生を刺激する化粧方法および/または活性酸素種の生成を抑制する化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチョリの茎抽出物を含む化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
パチョリ(Pogostemon cablin)は、一般的に「ミント」または「オドリコソウ」科と呼ばれるシソ科の植物の一種である。植物はふさふさしたハーブとして成長し、直立した茎は高さ約75cmに達し、小さな淡いピンクホワイトの花をつける。それはアジアの熱帯地域に自生している。
【0003】
パチョリの重くて強い香りは、何世紀にもわたって香水に使用されており、最近では、お香、防虫剤、および代替医療にも使用されている。Pogostemon cablinは、Pogostemon属の他のメンバーの中でも、パチョリ油として知られるその精油のために一般的に栽培されている。パチョリは温暖な気候から熱帯気候でよく育つ。種子を生産する花は、晩秋に極めて香りがよく、花を咲かせる。小さな種子は植えるために収穫されることがあるが、それらは極めて繊細で簡単に粉砕される。母本からの挿し木は、さらなる植物を生産するために水に根付くこともできる。
【0004】
パチョリの精油の抽出は、通常、乾燥した葉および茎の水蒸気蒸留によって達成され、蒸気火傷、軽い発酵、または乾燥によるその細胞壁の破裂が必要である。葉は年に数回収穫され、乾燥すると蒸留のために輸出されることがある。
【0005】
パチョリ油の主な化学成分は、セスキテルペンアルコールであるパチョロールである。他の重要な成分には、ゲルマクレン-B、およびノルパッチオレノールが含まれる。全体として、テルペノイド、フィトステロール、フラボノイド、有機酸、リグニン、アルカロイド、グリコシド、アルコール、およびアルデヒドを含む約140の化学物質がパチョリで同定されている(Swamy et al. in Molecules 2015, 20, 8521-8547)。揮発性物質は、主にパチョリアルコール、α-パチョレン、β-パチョレン、α-ブルネセン、セイケレン、ノルパチョレノール、ポゴストーン、オイゲノール、およびポゴストールで構成されている。不揮発性物質には、アカセチン、アピゲニン、リコカルコンA、オンブイン、ラムネチン、レツシン、アクテオシド、アガスタコシド、イソクレナトシド、チリアニン、ルブソシド、トリ-およびセスキテルペンが含まれる。
【0006】
パチョリは、ファインフレグランスおよび香料に広く使用されており、東アジアのお香の重要な成分である。パチョリの葉はハーブティーを作るために使用されてきた。一部の文化では、パチョリの葉は野菜として食べられたり、または調味料として使用されている。パチョリはまたイエシロアリに対する防虫剤としても説明されてきた。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、パチョリ油の生産に使用されてきたパチョリの茎に付加価値を与えることである。
これは、本発明の化粧品組成物および方法によって達成される。
第1の側面において、本発明は担体および少なくとも1種の活性化粧品成分を含む化粧品組成物を提供し、第1の活性化粧品成分は、パチョリの茎抽出物を含む。
【0008】
ハイドロ蒸留(hydrodistillation)または水蒸気蒸留(steam distillation)によって得られる精油とは対照的に、パチョリの茎抽出物は、液体溶媒でパチョリの茎を抽出することによって得られる。
本発明のパチョリの茎抽出物は、完全に天然で無臭である。
驚くべきことに、本発明のパチョリの茎抽出物は、すぐれたスキンケアおよび抗老化特性をもつことが見出された。
特に、抗酸化活性、抗エラスターゼ活性、抗ヒアルロニダーゼ活性、および抗チロシナーゼ活性を示すことが見出された。
したがって、具体的な態様において、本発明の化粧品組成物は、スキンケア組成物、特に抗老化組成物である。この目的のために、担体は皮膚科学的に許容される担体でなければならない。
【0009】
特に好適な抽出物は、パチョリの茎の水性抽出物である。したがって、本発明の好ましい態様において、第1の活性化粧品成分は、パチョリの茎の水性抽出物を含む。
別の特に好適な抽出物は、パチョリの茎のアルコール抽出物である。したがって、本発明の好ましい態様において、第1の活性化粧品成分は、パチョリの茎のアルコール抽出物を含む。エタノールは特に好ましい溶媒である。
特に好ましい態様において、パチョリの茎-および特に使い果たされたパチョリの茎(exhausted Patchouli stems)は、アルコール-水混合物で抽出される。エタノール-水混合物はとりわけ好適である。
水性抽出物は、パチョリの茎を純水で抽出することによって得てもよい。任意に、水は、添加剤、例えばpHを調節するためのもの、を含んでもよい。
【0010】
驚くべきことに、使い果たされたパチョリの茎の抽出物でさえ、上記の有利な効果を有する活性化粧品成分を提供することが見出された。したがって、本発明の具体的な態様において、第1の活性化粧品成分は、使い果たされたパチョリの茎の抽出物を含む。
【0011】
本願を通して、用語「使い果たされたパチョリの茎」は、以前に水蒸気蒸留によって処理されたパチョリの茎を指す。よって、それは精油が除去された後の根の残渣を指す。
具体的な態様において、本発明は使い果たされたパチョリの茎の水性および/またはアルコール抽出物に関する。これにより、「廃棄」製品に付加価値を加えることができる。
【0012】
さらなる側面において、本発明は、活性化粧品成分を調製する方法に関し、当該方法はパチョリの茎を抽出することを含む。抽出することは、パチョリの茎が溶媒または溶媒の混合物で処理されることを意味する。溶媒(単数または複数)はまた、添加剤を含有してもよい。例えば、パチョリの茎は、水抽出、酸性抽出、酵素抽出、超音波補助水抽出、加圧水抽出またはエタノール抽出を受けてもよい。
【0013】
好ましくは、パチョリの茎は、抽出、特に切断および/または粉砕の前に、より小さな断片に縮小される。
パチョリの茎は、抽出前に洗浄してもよい。茎を洗うと、特に水で、抽出物の色が減少することが見出された。
パチョリの茎は、水、エタノールまたはそれらの混合物で抽出することが好ましい。
任意に1以上の添加剤を含有する、水中の70%エタノールでの抽出が最良の結果をもたらすことが見出された。
好適な添加剤には、限定するものではないが、酸、塩基、緩衝液、塩および/または共溶媒が含まれる。特に、抽出溶媒のpHは、酸(例えばHSOまたはクエン酸)または塩基(例えばNaOH)の添加によって調整してもよい。
【0014】
抽出は、室温または高温で、例えば、約40℃、約60℃または約80℃の温度で行ってもよい。
パチョリの茎抽出物は、例えば、濾過(例えば、KDS15フィルター上で)、活性炭処理および/または滅菌濾過によって精製してもよい。
パチョリの茎抽出物はまた濃縮してもよい。濃縮中の抽出物の溶解度を改善するために、濃縮前の抽出物に、溶媒、例えば1,3-プロパンジオールを加えることが可能である。
【0015】
具体的な態様において、本発明の方法は、(i)使い果たされたパチョリの茎を提供する工程;および(ii)使い果たされたパチョリの茎を抽出する工程を含む。
よって、結論として、本発明の組成物は、ケラチノサイト遊走の制御を介した、皮脂産生の刺激、抗酸化特性の刺激、および創傷治癒の強力な阻害を提供する。
したがって、本発明の組成物は、スキンケア、頭皮ケアおよび/またはボディケア組成物、特に乾燥肌用のセラム、抗老化セラム、抗老化ナイトクリームおよびデイクリーム、乾燥フケ防止製品、乾燥頭皮ローションまたはボディケアローションに使用してもよい。
さらなる側面において、本発明は、スキンケアにおけるパチョリの茎からの抽出物の使用に関する。これにより、上記のパチョリの茎抽出物のプラスの効果を活用することができる。
【0016】
具体的な態様において、水性抽出物および/または使い果たされたパチョリの茎からの抽出物が使用される。
パチョリの茎抽出物は、抗老化製品、フケ防止製品、または乾燥肌および/または頭皮において特に有利に使用される。
さらなる側面において、本発明は、発明の化粧品組成物をヒトの皮膚に適用することによって、皮脂産生を刺激する方法、抗酸化特性を刺激する方法および/または創傷治癒を阻害する方法に関する。
【0017】
本発明は、以下の非限定的な例によってさらに例証される。
例1:パチョリの茎抽出物の調製
乾燥した水蒸気蒸留したパチョリの茎を粉砕して粉末を得た。25gの粉末を500gのエタノール(水中70%)中、室温で30分間撹拌しながら抽出した。抽出物(ほぼ420g)をEaton KDS15フィルター(123cm)でろ過した。濾液を真空下での蒸発により5.2倍に濃縮して、約80gの濃縮生成物を得た。
濃縮生成物の1つのバッチ(バッチA)はそのまま使用した。この脱色されていない生成物は黒色であった。
濃縮生成物の2つ目のバッチ(バッチB)を活性炭フィルター(24cm)で脱色した。この脱色工程は効率的に色を減少させた。それは乾物をほぼ2分の1に減らした。
2つのバッチは、最終的にEaton S60フィルター(24cm)と滅菌PESろ過ユニット(VWR)でろ過し、防腐剤なしで最終生成物を保管した。
【0018】
2つのバッチの特性を以下の表に示す:
【表1】
【0019】
異なる溶媒の比較のために、水、100%エタノール、70%エタノールおよび50%エタノールでも抽出を行った。色(ガードナー)および乾物含有量は生抽出物で測定した。結果を下に示す。
【表2】
本質的に、色または乾物含有量さえも違いは観察されなかったが(100%エタノールを除く)、乾物含有量の収量は概して極めて低かった。
【0020】
例2:パチョリの茎抽出物の分析
乾燥した水蒸気蒸留したパチョリの茎を粉砕して粉末を得た。75gの粉末を、550gのエタノール(水中70%)中、20℃で攪拌しながら60分間抽出した。抽出物を0.7μmセルロースフィルターでろ過し、5回濃縮してエタノールを除去し、最後に0.35μmセルロースフィルターでろ過した。その後、抽出物を凍結乾燥した。
【0021】
遠心分配クロマトグラフィー(CPC)による粗抽出物の分画
粗抽出物(1.078g)を、3:3:4の比率(v/v)のメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、アセトニトリルおよび水からなる二相溶媒系30mlに溶解した。遠心分配クロマトグラフィー(CPC)は、FCPE300(登録商標)装置(Rousselet Robatel Kromaton)を使用して、303mlのカラム、1200rpmのカラム回転速度、20ml/分の流速で行った。
【0022】
移動相(2相溶媒系の下相)のイソクラティック溶離を、上昇モードで75分間行った(5分間の初期流量ランプは0~20ml/分)。モード選択バルブを20分間切り替えることにより、最終的にカラムを押し出した。CPCクロマトグラムは220nmでモニターした。実験全体にわたって20mlの画分を収集し、薄層クロマトグラフィー(TLC)プロファイルに従って組み合わせた。TLCは、プレコートシリカゲル60 F254 Merckプレートで、移動溶媒系EtOAc/トルエン/ギ酸/酢酸(70/30/11/11;v/v)で行い、254nmおよび360nmのUV光下で可視化し、乾燥したプレートに50%HSOおよびバニリンをスプレーした後、加熱することで露見させた。結果として16の副画分が収集された。
【0023】
NMR分析および主要代謝物の同定
F1からF16までの各画分のアリコート(最大約20mgまで)を700μlのDMSO-d6に溶解し、TXIクライオプローブを備えたBruker Avance AVIII-600分光計(Karlsruhe、ドイツ)で298Kの13CNMRで分析した。TOPSPIN 3.2ソフトウェア(Bruker)を使用してスペクトルを手動で位相調整し、ベースラインを補正し、DMSO-d6(δ39.80ppm)の中心共鳴(the central resonance)でキャリブレーションした。13CNMR信号の全ての絶対強度は自動的に収集され、ローカルで開発されたコンピュータースクリプトを使用して、画分シリーズのスペクトル全体でビニングされた。結果の表は階層的クラスタリング分析(HCA)のためにPermutMatrixバージョン1.9.3ソフトウェア(LIRMM、モンペリエ、フランス)にインポートされた。得られた13C化学シフトクラスターは、2次元マップ上の樹状図として可視化された。代謝物の同定のために、HCAから得られた各13C化学シフトクラスターは、低分子量天然物(2018年3月においてnは約2950)の構造および予測される化学シフトを含むデータベース管理ソフトウェアACD/NMR Workbook Suite 2012ソフトウェア(ACD/Labs、オンタリオ、カナダ)の構造検索エンジンに手動で送信した。並行して、Pogostemon cablin種(nは約70)において既に報告されている最大数の代謝物の名前および化学構造を取得するために文献調査を行った。追加の2DNMR実験(HSQC、HMBC、およびCOSY)は、デレプリケーションプロセスの最後に、データベースによって提案された分子構造を確認するために、推定上同定された化合物を含有する画分に対して行った。
【0024】
以下の主な代謝物が同定された:
- ベルバスコシド
- アピゲニン-7-O-グルクロニド
- コハク酸
- グルコシル-サイトスポロンV(2異性体)
- 乳酸
- コリン
- α-D-フルクトース
- β-D-フルクトース
- α-D-グルコース
- β-D-グルコース
- β-D-フルクトピラノース
- 7,3’-ジメチルエリオジクチオール
- パキポドール
- サイトスポロンV
- p-ヒドロキシ安息香酸
- プロトカテク酸
- シリンガレシノール
- バニリン
- ラムノシトリン
- ルテオリン-7-O-グルクロニド
- ヒドロキシメチルグルタル酸
- 12-ヒドロキシジャスモン酸
- カフェオイル誘導体
- アピゲニン-7-糖類
【0025】
CPC画分の組成は以下のとおりであった(Maj=メジャー;Med=ミディアム;Min=マイナー)。
【表3】
【0026】
例3:生物活性のスクリーニング
例1からの2つのバッチAおよびBを抗酸化活性(DPPH)、抗エラスターゼ活性、抗ヒアルロニダーゼ活性、および抗チロシナーゼ活性について試験した。
結果を以下の表に示す:
【表4】
脱色されていないバッチAは明らかに高い生物活性を示した。
脱色されたバッチBは、わずかな抗酸化活性しか表さなかったが、バッチAと同様の抗チロシナーゼ活性を示した。
【0027】
例4:創傷治癒
正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)を、ヒドロコルチゾン、トランスフェリン、エピネフリン、ウシ下垂体抽出物(BPE)、組換えヒト上皮成長因子(rhEGF)およびインスリンなどの成長因子を補充したケラチノサイト成長培地(KGM、Lonza)の存在下、12-ウェル培養プレートにおいて、I型コラーゲンでプレコートされたウェルあたり200,000細胞で播種した。コンフルエンスで、サプリメントなしのケラチノサイト基礎培地において、細胞を0.5%(v/v)の濃度の例1のパチョリの茎抽出物または1ng/mlのヘパリン結合上皮成長因子(HB-EGF)(陽性対照)で終夜プレインキュベートした。このプレコンディショニング段階の後、ウェルの底に付着している細胞単層をP200滅菌コーンで引っ掻き、続いてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。その後、基礎培地において、NHEKを0.5%のパチョリ抽出物または1ng/mlのHB-EGFで8時間再度刺激した。
【0028】
創傷治癒過程は、反転光学顕微鏡(Zeiss)を使用してTおよびT8hで記録された写真によって分析した。画像分析後、スクラッチクロージングのパーセンテージを未処理の状態と比較して決定した。
パチョリの茎抽出物は、NHEKスクラッチアッセイにおいて創傷治癒を約-50%有意に阻害し、一方HB-EGFは約+60%の増強をもたらしたことが分かった。創傷治癒の阻害は、ケラチノサイトの過剰増殖を伴う状態、例えば角質増殖症または乾燥フケ、において特に重要である。
【0029】
例5:抗酸化作用
NHEKは、I型コラーゲンでプレコートされたウェルあたり20,000細胞で、ガラス底ありの黒いプレートに播種した。細胞を37℃、5%COで24時間インキュベートした。翌日、細胞を、0.5%(v/v)の濃度の例1のパチョリの茎抽出物または200μMのレスベラトロール(陽性対照)とともに24時間インキュベートした。このプレインキュベーションの後、細胞を50μMのジクロロ-ジヒドロ-フルオレセイン(DCFH)プローブとともに30~45分間インキュベートした。その後、細胞をPBSで2回すすぎ、PBSのみでまたは5mMtert-ブチルペルオキシド(TBP)を含有するPBSでインキュベートして、酸化ストレスを誘発した。蛍光読み取りは、1時間、10分ごとに行い、488nmで励起し、525nmで発光した。
パチョリの茎の抽出物が活性酸素種(ROS)の生成を-28%減少させることがわかり、抗酸化特性が証明された。
【0030】
例6:皮脂産生の調節
ヒト脂腺細胞を96ウェルプレートに播種し(50,000細胞/ウェル)、25μg/mlのゲンタマイシンを補充したケラチノサイト無血清培地(SFM)で24時間培養した。その後、培地を除去し、1%(v/v)の濃度の例1のパチョリの茎抽出物または参照の1μMのオルマコスタットグラサレチルと置き換えた。細胞を4時間プレインキュベートした。その後、ビタミンC、ビタミンD3、インスリンおよびカルシウム(アンドロゲンなし)を含有する脂質生成混合物を添加し、細胞を7日間インキュベートした。3日間のインキュベーション後、培地の半分を除去し、処理を更新した(脂質生成混合刺激が含まれる)。刺激されていない対照条件を並行して行った。インキュベーションの終わりに、細胞をすすぎ、固定し、透過処理した。その後、細胞に含有される脂肪滴を、主に中性脂質を標識する特定のBodipy(登録商標)蛍光脂質プローブを使用して標識した。並行して、Hoechst33258溶液を使用して細胞核を染色した。画像の取得は、INCell analyzer(商標)2200を使用して行った。ウェルごとに5枚の写真を撮影した(×20対物レンズ)。標識は、細胞の総数に対して正規化された蛍光強度測定によって定量化した。
パチョリの茎抽出物は、脂質生成刺激下で皮脂細胞からの皮脂産生を+39%有意に誘導することが分かった。皮脂産生の刺激は、乾燥肌の治療、および皮膚バリアと皮膚透過性の回復に特に有用である。