(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】熱回収システム及び熱回収方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/48 20060101AFI20241206BHJP
F23G 5/46 20060101ALI20241206BHJP
F23N 5/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F23G5/48
F23G5/46 A
F23N5/00 J
(21)【出願番号】P 2021007454
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】角吉 弘憲
(72)【発明者】
【氏名】飯野 浩成
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-143503(JP,A)
【文献】特開2016-176640(JP,A)
【文献】特開2013-133983(JP,A)
【文献】特開2006-297210(JP,A)
【文献】特開2018-173245(JP,A)
【文献】特開2014-44038(JP,A)
【文献】特開2011-39011(JP,A)
【文献】特開昭63-29107(JP,A)
【文献】特表2007-512437(JP,A)
【文献】特開2005-321190(JP,A)
【文献】特開2001-174056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/48
F23G 5/46
F23N 5/00
F24H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガス生成装置と、
焼却炉と、
前記バイオガス生成装置で発生したバイオガス及び前記焼却炉で発生した一次燃焼ガスが供給される燃焼室と、
前記燃焼室で発生した燃焼ガスが供給される熱交換器と、
前記燃焼ガスの酸素濃度を制御する燃焼制御装置と、
を備え、
前記燃焼室は、前記燃焼ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計を有し、
前記燃焼制御装置は、前記熱交換器の接触部の
解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように前記酸素濃度を制御する、熱回収システム。
【請求項2】
バイオガス生成装置と、
前記バイオガス生成装置で発生したバイオガスが供給される焼却炉と、
前記焼却炉で発生した一次燃焼ガスが供給される燃焼室と、
前記燃焼室で発生した燃焼ガスが供給される熱交換器と、
前記燃焼ガスの酸素濃度を制御する燃焼制御装置と、
を備え、
前記燃焼室は、前記燃焼ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計を有し、
前記燃焼制御装置は、前記熱交換器の接触部の
解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように前記酸素濃度を制御する、熱回収システム。
【請求項3】
前記バイオガスが供給されるガス発電機をさらに備える、請求項1又は2に記載の熱回収システム。
【請求項4】
前記バイオガス生成装置は、処理槽と、前記処理槽の内部に設けられた生物汚泥床と、を備える、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項5】
前記バイオガス生成装置は、前記生物汚泥床の上方に設けられ、当該生物汚泥床に向かい合う傾斜面を有する汚泥沈降体をさらに備え、
前記汚泥沈降体は、前記処理槽の内側を上下方向に移動可能である、請求項4に記載の熱回収システム。
【請求項6】
前記燃焼室は、前記燃焼ガスの温度を測定する温度計をさらに有し、
前記燃焼制御装置は、前記温度に基づいて前記
解離圧を算出する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項7】
前記燃焼室に酸素ガス又は不活性ガスを供給するガス供給装置をさらに有し、
前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記ガス供給装置を制御する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項8】
前記燃焼室への空気供給量を調整する風量調整装置をさらに有し、
前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記風量調整装置を制御する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項9】
前記熱交換器は、真空式又は無圧式の温水ヒータである、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項10】
前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスが供給される冷却室をさらに備える、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項11】
前記酸素濃度計は、レーザー式酸素濃度計である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱回収システム。
【請求項12】
バイオガス生成装置で発生したバイオガス及び焼却炉で発生した一次燃焼ガスを燃焼室に供給し、
燃焼室で前記バイオガス及び前記一次燃焼ガスを燃焼することにより発生した燃焼ガスの酸素濃度を測定し、
前記燃焼室に連結された熱交換器の接触部の
解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、前記酸素濃度を制御し、
前記酸素濃度が制御された前記燃焼ガスを前記熱交換器に供給することを含む、熱回収方法。
【請求項13】
バイオガス生成装置で発生したバイオガスを焼却炉に供給し、
前記焼却炉で発生した一次燃焼ガスを燃焼室に供給し、
燃焼室で前記一次燃焼ガスを燃焼することにより発生した燃焼ガスの酸素濃度を測定し、
前記燃焼室に連結された熱交換器の接触部の
解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、前記酸素濃度を制御し、
前記酸素濃度が制御された前記燃焼ガスを前記熱交換器に供給することを含む、熱回収方法。
【請求項14】
前記バイオガス生成装置は、処理槽と、前記処理槽の内部に設けられた生物汚泥床と、を備える、請求項12又は13に記載の熱回収方法。
【請求項15】
前記バイオガス生成装置は、前記生物汚泥床の上方に設けられ、当該生物汚泥床に向かい合う傾斜面を有する汚泥沈降体をさらに備え、
前記汚泥沈降体は、前記処理槽の内側を上下方向に移動可能である、請求項14に記載の熱回収方法。
【請求項16】
さらに、前記燃焼ガスの温度を測定することを含み、
前記
解離圧を、前記温度に基づいて算出する、請求項12乃至15のいずれか一項に記載の熱回収方法。
【請求項17】
前記熱交換器として、真空式又は無圧式の温水ヒータを用いる、請求項12乃至16のいずれか一項に記載の熱回収方法。
【請求項18】
さらに、前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスを冷却室に供給することを含む、請求項12乃至17のいずれか一項に記載の熱回収方法。
【請求項19】
前記酸素濃度は、レーザー式酸素濃度計で測定される、請求項12乃至18のいずれか一項に記載の熱回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、熱回収システム及び熱回収方法に関する。特に、燃焼室の酸素濃度を制御する機能を有する燃焼制御装置を備えた熱回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ等の廃棄物を焼却処理するごみ焼却施設において、焼却処理で発生する熱を回収して再利用する熱回収システムが知られている。このような熱回収システムでは、収集された都市ごみ等を焼却炉で燃焼させた後、発生した燃焼ガスの熱を例えば空気予熱器等の熱交換器により回収する。空気予熱器等により回収された熱は、例えば、再び焼却炉に戻され、燃焼用空気の昇温等に利用される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の熱回収システムでは、焼却炉で発生した排ガスをさらに再燃焼室(二次燃焼室)で完全燃焼させることにより、ダイオキシン等の有害物質の発生を抑制する。このとき、再燃焼室では850℃以上(好ましくは900℃以上)の温度で2秒間以上排ガスを滞留させることが法令で求められている。そのため、再燃焼室から排出される燃焼ガスの温度も900℃以上の高温となる。
【0005】
ここで、900℃以上の高温ガスを熱交換器に直接供給すると、熱交換器を構成する金属部材(特に、高温ガスに直接的に接触する部分)が高温腐食によって劣化するという問題がある。高温腐食とは、液体の水が関与しない腐食であり、高温環境下で発生する腐食をいう。そのため、従来の熱回収システムでは、再燃焼室で発生した高温ガスの温度を高温腐食が生じない程度の温度まで下げる必要があった。また、ダイオキシンの再合成は約400℃以上で起こることが知られている。したがって、ダイオキシンの再合成を抑制することも考慮して、再燃焼室から排出された燃焼ガスは、350℃程度まで冷却された後、熱交換器へと供給されていた。
【0006】
以上のように、従来の熱回収システムでは、350℃程度まで減温された燃焼ガスから熱回収を行う必要があった、そのため、熱回収効率を確保するために、一般的には熱交換器として蒸気ボイラが用いられていた。しかしながら、蒸気ボイラは、容器が高圧となることから有資格者(ボイラ技士)によって取り扱う必要があり、メンテナンス及び設備維持のコストの増加を招く要因となっていた。
【0007】
本発明の課題の一つは、簡易な構造で高温腐食を抑制し、熱回収効率を向上させた熱回収システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における熱回収システムは、バイオガス生成装置と、焼却炉と、前記バイオガス生成装置で発生したバイオガス及び前記焼却炉で発生した一次燃焼ガスが供給される燃焼室と、前記燃焼室で発生した燃焼ガスが供給される熱交換器と、前記燃焼ガスの酸素濃度を制御する燃焼制御装置と、を備え、前記燃焼室は、前記燃焼ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計を有し、前記燃焼制御装置は、前記熱交換器の接触部の解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように前記酸素濃度を制御する。
【0009】
本発明の一実施形態における熱回収システムは、バイオガス生成装置と、前記バイオガス生成装置で発生したバイオガスが供給される焼却炉と、前記焼却炉で発生した一次燃焼ガスが供給される燃焼室と、前記燃焼室で発生した燃焼ガスが供給される熱交換器と、前記燃焼ガスの酸素濃度を制御する燃焼制御装置と、を備え、前記燃焼室は、前記燃焼ガスの酸素濃度を測定する酸素濃度計を有し、前記燃焼制御装置は、前記熱交換器の接触部の解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように前記酸素濃度を制御する。
【0010】
前記熱回収システムは、前記バイオガスが供給されるガス発電機をさらに備えてもよい。
【0011】
前記熱回収システムにおいて、前記バイオガス生成装置は、処理槽と、前記処理槽の内部に設けられた生物汚泥床と、を備えていてもよい。このとき、前記バイオガス生成装置は、前記生物汚泥床の上方に設けられ、当該生物汚泥床に向かい合う傾斜面を有する汚泥沈降体をさらに備えていてもよい。前記汚泥沈降体は、前記処理槽の内側を上下方向に移動可能であってもよい。
【0012】
前記熱回収システムにおいて、前記燃焼室は、前記燃焼ガスの温度を測定する温度計をさらに有してもよい。この場合、前記制御装置は、前記温度に基づいて前記解離圧を算出してもよい。
【0013】
前記熱回収システムは、前記燃焼室に酸素ガス又は不活性ガスを供給するガス供給装置をさらに有していてもよい。この場合、前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記ガス供給装置を制御してもよい。
【0014】
前記熱回収システムは、前記燃焼室への空気供給量を調整する風量調整装置をさらに有していてもよい。この場合、前記燃焼制御装置は、前記酸素濃度に応じて前記風量調整装置を制御してもよい。
【0015】
前記熱回収システムにおいて、前記熱交換器は、真空式又は無圧式の温水ヒータであってもよい。
【0016】
前記熱回収システムは、前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスが供給される冷却室をさらに備えてもよい。
【0017】
前記熱回収システムにおいて、前記酸素濃度計は、レーザー式酸素濃度計であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態における熱回収方法は、バイオガス生成装置で発生したバイオガス及び焼却炉で発生した一次燃焼ガスを燃焼室に供給し、燃焼室で前記バイオガス及び前記一次燃焼ガスを燃焼することにより発生した燃焼ガスの酸素濃度を測定し、前記燃焼室に連結された熱交換器の接触部の解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、前記酸素濃度を制御し、前記酸素濃度が制御された前記燃焼ガスを前記熱交換器に供給することを含む。
【0019】
本発明の一実施形態における熱回収方法は、バイオガス生成装置で発生したバイオガスを焼却炉に供給し、前記焼却炉で発生した一次燃焼ガスを燃焼室に供給し、燃焼室で前記一次燃焼ガスを燃焼することにより発生した燃焼ガスの酸素濃度を測定し、前記燃焼室に連結された熱交換器の接触部の解離圧と前記燃焼ガスの酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、前記酸素濃度を制御し、前記酸素濃度が制御された前記燃焼ガスを前記熱交換器に供給することを含む。
【0020】
前記熱回収方法において、前記バイオガス生成装置は、処理槽と、前記処理槽の内部に設けられた生物汚泥床と、を備えていてもよい。このとき、前記バイオガス生成装置は、前記生物汚泥床の上方に設けられ、当該生物汚泥床に向かい合う傾斜面を有する汚泥沈降体をさらに備えていてもよい。前記汚泥沈降体は、前記処理槽の内側を上下方向に移動可能であってもよい。
【0021】
前記熱回収方法は、さらに、前記燃焼ガスの温度を測定することを含んでもよい。この場合、前記解離圧を、前記温度に基づいて算出してもよい。
【0022】
前記熱回収方法は、前記熱交換器として、真空式又は無圧式の温水ヒータを用いてもよい。
【0023】
前記熱回収方法は、さらに、前記熱交換器を経由した前記燃焼ガスを冷却室に供給することを含んでもよい。
【0024】
前記熱回収方法において、前記酸素濃度は、レーザー式酸素濃度計で測定されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態の熱回収システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の熱回収システムにおける熱交換器の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の熱回収システムにおける燃焼制御装置の制御の一例を示すフローチャート図である。
【
図4】第1実施形態のバイオガス生成装置の構成を示す図である。
【
図5】第1実施形態のバイオガス生成装置における汚泥沈降体の構成を示す図である。
【
図6】第1実施形態のバイオガス生成装置における整流部の構成を示す図である。
【
図7】第1実施形態のバイオガス生成装置における第1状態の構成を示す図である。
【
図8】第1実施形態のバイオガス生成装置における第2状態の構成を示す図である。
【
図9】第1状態における反応域の様子を説明するための図である。
【
図10】本発明の第1実施形態の熱回収システムにおける熱交換器の変形例の構成を示す図である。
【
図11】本発明の第2実施形態の熱回収システムの構成を示すブロック図である。
【
図12】本発明の第3実施形態の熱回収システムの構成を示すブロック図である。
【
図13】本発明の第4実施形態の熱回収システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図面において、既出の図面に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0027】
(第1実施形態)
[熱回収システムの構成]
図1は、本発明の第1実施形態における熱回収システム100の一例を示す図である。本実施形態の熱回収システム100は、バイオガス生成装置110、焼却炉115、燃焼室120、熱交換器130、冷却室140、及び燃焼制御装置150を含む。ただし、
図1に示すシステム構成は、熱回収システム100の一例に過ぎない。図示は省略するが、収集したごみ等を蓄積するごみピット、焼却炉で生成された灰を蓄積する灰ピット、廃水や汚水に含まれる高分子の有機物を微生物により低分子の有機物に変性させる処理を行う酸生成装置、バイオガス生成装置から排出された余剰汚泥を貯める貯留槽、燃焼ガスに含まれる微小な灰を収集するろ過式集じん器など、他の設備を備えていてもよい。
【0028】
バイオガス生成装置110は、嫌気性微生物を用いて工場廃水、し尿、生活排水等を含む汚水201に含まれる有機物の分解処理を行う処理設備である。バイオガス生成装置110では、低級有機酸等の汚水201中の有機物が嫌気性微生物により処理されて、メタンガス、二酸化炭素、水素等のバイオガス202に分解される。バイオガス生成装置110で生成されたバイオガス202は、燃焼室120に供給される。なお、説明の便宜上、
図1には、バイオガス生成装置110のみ図示しているが、バイオガス生成装置110の前段には、汚水201の前処理を行う設備(加熱槽、酸生成装置等)が設けられていてもよい。
【0029】
本実施形態では、バイオガス生成装置110として、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Bed)方式の嫌気性処理装置を用いる。UASB方式の嫌気性処理装置は、メタン発酵能を有する嫌気性微生物を粒子化して高密度に保持した生物汚泥床を用いる点に特徴がある。粒子化した嫌気性微生物は、グラニュールと呼ばれる黒い粒状体となって処理槽内に存在し、グラニュールの集合体が生物汚泥床として機能する。なお、本実施形態では、嫌気性微生物を例示して説明するが、好気性微生物を用いることも可能である。本実施形態のバイオガス生成装置110の具体的な構造については、後述する。
【0030】
焼却炉115は、搬入された都市ごみ等の廃棄物203を焼却する設備である。焼却炉115は、廃棄物203を焼却処理により灰化して無害化する。本実施形態では、焼却炉115として、ストーカ式焼却炉を用いるが、これに限られるものではない。焼却炉115で廃棄物203を焼却する際、一次燃焼ガス204が発生する。焼却炉115で発生した一次燃焼ガス204は、燃焼室120に供給される。
【0031】
燃焼室120は、焼却炉115で発生した一次燃焼ガス204を再燃焼させる設備である。本実施形態では、一次燃焼ガス204に加えて、バイオガス生成装置110で発生したバイオガスも燃焼室120に供給される。供給されたバイオガスは、運転開始時の着火燃料として用いたり、補助エネルギーとして、燃焼室120の内部温度の昇温のために用いたりすることができる。本実施形態では、燃焼室120の内部において、供給されたガスが950℃の温度で2秒間滞留する。そのため、燃焼室120では、バイオガス202に含まれる可燃性ガス(例えばメタンガス)及び一次燃焼ガス204に含まれる未燃ガスが完全燃焼する。燃焼室120で完全燃焼して生成された二次燃焼ガス206は、図示しない煙道を経由して熱交換器130へ供給される。
図1では、図示を省略するが、燃焼室120には、空気を送る送風装置と当該送風装置から供給される空気の供給量を調整するダンパが設けられていてもよい。
【0032】
本実施形態では、燃焼室120の内部に酸素濃度計122が配置されている。具体的には、酸素濃度計122は、燃焼室120の内部における排気口近傍に配置されている。ただし、酸素濃度計122は、排気口近傍に限らず、酸素濃度の測定に適した位置であれば任意の位置に配置することができる。例えば、酸素濃度計122は、燃焼室120と熱交換器130とを連結する煙道に配置されてもよい。
【0033】
酸素濃度計122は、二次燃焼ガス206に含まれる酸素濃度を測定する。本実施形態では、酸素濃度計122としてレーザー式酸素濃度計を用いるため、リアルタイムに二次燃焼ガス206の酸素濃度を測定することが可能である。さらに、燃焼室120は、内部に温度計124が配置されている。本実施形態では、燃焼室120の室内温度(すなわち、二次燃焼ガス206のガス温度)をリアルタイムに測定する構成となっている。燃焼室120は、上述のように燃焼ガスが少なくとも2秒間滞留するため、精度よく酸素濃度及び室内温度を測定するのに好適である。酸素濃度計122及び温度計124の役割については後述する。
【0034】
本実施形態の燃焼室120には、ガス供給装置126も連結されている。ガス供給装置126は、燃焼制御装置150に接続されており、燃焼制御装置150の制御に応じて酸素ガス又は不活性ガス(例えば窒素ガス)を燃焼室120に供給する。後述するように、燃焼制御装置150は、燃焼室120の内部の酸素濃度を測定し、所定の条件を満たした場合に酸素濃度を調整するように構成されている。その際、ガス供給装置126は、燃焼室120への酸素ガス、又は、不活性ガスの供給源として機能する。
【0035】
熱交換器130は、燃焼室120から供給された二次燃焼ガス206の熱を回収する設備である。具体的には、本実施形態では、熱交換器130として、真空式温水ヒータを用いる。真空式温水ヒータは、容器内を大気圧より低圧な状態にして熱媒水(熱媒体として利用する水)を減圧沸騰させ、その蒸気の熱を利用して温水を取り出す構造となっている。
【0036】
図2は、本発明の第1実施形態の熱回収システム100における熱交換器130の構成を示す図である。上述のとおり、熱交換器130は、真空式温水ヒータである。熱交換器130は、筐体131の内部が加熱室132及び熱交換室133に区切られている。加熱室132には、燃焼室120から送られた二次燃焼ガス206が供給される。加熱室132に供給された二次燃焼ガス206は、熱交換室133に満たされた熱媒水134の加熱に利用された後、燃焼ガス208として排出される。
【0037】
加熱室132の内壁を構成する金属部材は、高温の二次燃焼ガス206に曝されつつ、二次燃焼ガス206の熱を熱交換室133に伝える役割を有する。本実施形態では、熱交換器130(ここでは、真空式温水ヒータ)のうち、二次燃焼ガス206が直接的に接触する部分を「接触部」と呼ぶ。接触部は、耐熱性及び伝熱性に優れた鉄を含む合金材料で構成することが好ましい。例えば、接触部を構成する金属材料として、硫酸及び塩酸に対して高い耐食性を有するS-TEN鋼(登録商標)を用いてもよい。
【0038】
熱交換室133は、大気圧よりも減圧されている。そのため、熱媒水134は、80℃前後で減圧沸騰して蒸気を発生する。熱媒水134の上方には、熱交換部135が配置されており、発生した蒸気の熱を利用して熱交換が行われる。熱交換部135は、給水管136を有し、流入口136aから水が供給されるとともに、流出口136bから温水が得られるようになっている。熱交換によって減温された蒸気は、筐体131の上部に設けられた排気口131aから排気される。
【0039】
本実施形態では、燃焼室120から排出された高温(例えば、950℃)の二次燃焼ガス206を直接的に熱交換器130に供給することができる。つまり、従来技術のように、燃焼室120から排出された二次燃焼ガス206を350℃程度まで冷却した後に熱交換器130へ供給する必要がない。そのため、従来技術のように蒸気ボイラを用いる必要がなく、温水ヒータ等の熱交換器を用いても高い効率で熱を回収することができる。
【0040】
また、真空式温水ヒータは、筐体131の内部が減圧状態となるため、ボイラの法規制を受けない。そのため、蒸気ボイラを利用する従来技術とは異なり、熱交換器130を管理するためにボイラ技士を選任する必要がない。このように、本実施形態の熱回収システム100は、熱交換器130として、ボイラの法規制を受けない温水ヒータを利用することができるため、メンテナンス及び設備維持に要するコストを低減することができる。
【0041】
図1に説明を戻すと、冷却室140には、熱交換器130を経由した燃焼ガス208が供給される。冷却室140は、燃焼ガス208の温度を350℃程度まで下げるための設備である。冷却室140には、図示しない水噴射装置が設けられ、容器内に水を噴射することにより燃焼ガス208の温度を低減する。冷却室140で減温された燃焼ガス210は、図示しない煙道を経由して下流側の他の設備(例えば、ろ過式集じん器等)へ送られる。
【0042】
以上説明した流れによって嫌気性微生物を用いた有機物(汚水201中の有機物)の分解処理により発生したバイオガス202及び廃棄物203の焼却処理により発生した一次燃焼ガス204を燃焼させて得た燃焼ガス(具体的には、二次燃焼ガス206)から熱を回収することができる。このとき、本実施形態では、燃焼制御装置150によって燃焼室120の内部における二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御する。具体的には、燃焼制御装置150は、燃焼室120に配置された酸素濃度計122及び温度計124から取得した測定値を用いて燃焼室120の内部の酸素濃度を調整する。この酸素濃度の調整により、燃焼室120の内部における二次燃焼ガス206の酸素分圧が制御される。この点について、以下に詳細に説明する。
【0043】
[燃焼制御装置の動作]
本実施形態の熱回収システム100において、燃焼制御装置150は、少なくともプロセッサ及び記憶部を備え、記憶部に格納された制御プログラムをプロセッサが実行することにより、燃焼室120の燃焼制御を実行する。ただし、燃焼制御装置150は、燃焼室120の燃焼制御に加えて、熱回収システム100を構成する他の構成要素の制御を実行してもよい。
【0044】
本実施形態において、燃焼制御装置150は、燃焼室120で発生する二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御することにより、二次燃焼ガス206の酸素分圧を調整する。具体的には、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部の解離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧が所定値以下となるように、上述の酸素分圧を調整するように構成されている。なお、「差圧」は、解離圧と酸素分圧との差分であり、正の値で表されるものとする。例えば、酸素分圧から解離圧を減算した値の絶対値を差圧として用いることができる。
【0045】
本実施形態の場合、二次燃焼ガス206は800℃以上の高温であるため、二次燃焼ガス206と接触した金属材料は、高温腐食により劣化する。ここで、金属元素Mが酸化物MαOβになる高温腐食の反応式は、式(1)で表される。
【0046】
【0047】
このとき、式(1)の自由エネルギー(ΔG)は、式(2)で表される。
【0048】
【0049】
ここで、ΔG0は標準生成自由エネルギー(標準生成ギブズエネルギーともいう)、Rは気体定数、Tは絶対温度、αxはxの活量、PO2は酸素分圧である。
【0050】
高温腐食の酸化還元反応は、式(2)におけるΔGの値によって決まる。すなわち、ΔGが負であれば、式(1)の反応は進行し、金属元素Mは酸化する。逆に、ΔGが正であれば、式(1)の逆反応が進行し、酸化物MαOβは還元される。つまり、ΔG=0のとき、金属元素Mの酸化還元反応は、平衡状態となる。
【0051】
上述のΔG=0のときの酸素分圧(PO2)は、金属元素Mと酸化物MαOβとが平衡になる酸素分圧であり、解離圧と呼ばれる。解離圧(PO2)は、式(3)で表される。
【0052】
【0053】
つまり、金属元素Mが酸素を含むガス中に存在するとき、ガスの酸素分圧が解離圧を上回ると、金属元素Mは、酸化されて酸化物MαOβになる。逆に、ガスの酸素分圧が解離圧を下回ると、酸化物MαOβは、還元されて金属元素Mになる。このことは、ガスの酸素分圧が解離圧と一致しているとき、金属元素Mは、酸化されず、高温腐食が起こらないことを意味する。
【0054】
式(3)において、標準生成自由エネルギー(ΔG0)は、物質に固有の値である。したがって、解離圧も物質に固有の値である。ただし、式(3)から明らかなように、解離圧は、温度によって変化する。つまり、金属部材の標準生成自由エネルギーと温度とが分かれば、当該金属部材の解離圧が算出できる。したがって、算出した金属部材の解離圧と当該金属部材に接触するガスの酸素分圧とを一致させれば、金属部材の高温腐食を抑制できることが分かる。
【0055】
そこで、本実施形態では、二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御して熱交換器130の接触部の解離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧とを一致又は略一致させることにより、熱交換器130の接触部の酸化還元反応を平衡状態とする。つまり、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部の解離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧を所定値以下とすることにより、熱交換器130の高温腐食による劣化を抑制することができる。
【0056】
熱交換器130の接触部における解離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧をどの程度の範囲内に収めるかについては、熱交換器130の劣化をどの程度抑えるかによって適宜選択すればよい。例えば、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部における解離圧の10%(好ましくは5%、さらに好ましくは3%)をしきい値(所定値)として設定し、前述の差圧がしきい値以下である場合に、熱交換器130の接触部の酸化還元反応は平衡状態にあると判定してもよい。また、燃焼制御装置150は、熱交換器130の接触部の解離圧を基準として±10%(好ましくは5%、さらに好ましくは3%)の範囲内に、二次燃焼ガス206の酸素分圧が収まるように酸素濃度を制御してもよい。
【0057】
熱交換器130の接触部の材料はあらかじめ分かっているため、温度が特定できれば、接触部の解離圧を求めることができる。また、二次燃焼ガス206の酸素濃度(すなわち、燃焼室120の内部における酸素濃度)とガス流量が分かれば、二次燃焼ガス206の酸素分圧を求めることができる。そのため、本実施形態では、燃焼室120の排気口近傍に酸素濃度計122を配置し、二次燃焼ガス206の酸素濃度を測定する構成となっている。ガス流量の測定には、温度計124で測定した温度や圧力計(図示せず)で測定した燃焼室120内の圧力を用いることができる。
【0058】
また、本実施形態では、燃焼室120の内部に温度計124を配置し、燃焼室120の室内温度を測定する構成となっている。そのため、燃焼制御装置150は、温度計124から取得した温度に基づいて、熱交換器130の接触部の解離圧を温度変化に対応して求めることが可能である。例えば、熱回収システム100を連続運転ではなく、間欠運転する場合、燃焼室120の昇温時及び降温時は、二次燃焼ガス206の温度が変化する。この場合においても、燃焼室120の温度をリアルタイムに測定することにより、熱交換器130の接触部における解離圧の変化を燃焼室120の室内温度の変化に追随して求めることが可能である。したがって、仮に、熱回収システム100を間欠運転させた場合、燃焼室120が昇温中又は降温中であっても、解離圧の変化に応じて酸素分圧を変化させることにより接触部の高温腐食を抑制することができる。
【0059】
なお、熱回収システム100を連続運転する場合、又は、燃焼室120の昇温時又は降温時を考慮しなくて済む場合は、燃焼室120の室内温度が一定であるとして熱交換器130の接触部の解離圧を求めてもよい。この場合、燃焼室120の室内温度を把握する必要はなく、温度計124は省略することができる。
【0060】
以上のように、本実施形態の熱回収システム100における燃焼制御装置150は、燃焼室120で発生する二次燃焼ガス206の酸素濃度を制御することにより、熱交換器130の接触部の解離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧が所定値以下となるように二次燃焼ガス206の酸素濃度(燃焼室120内の酸素濃度)を調整する。これにより、二次燃焼ガス206による熱交換器130の接触部(熱交換器130のうち二次燃焼ガス206に接触する部分)の高温腐食による劣化を抑制することができる。
【0061】
[燃焼制御装置の制御フロー]
図3は、本発明の第1実施形態の熱回収システム100における燃焼制御装置150の制御の一例を示すフローチャート図である。
図3に示す制御は、燃焼制御装置150に含まれるプロセッサが、記憶部に格納された制御プログラムを実行することにより実行される。なお、
図3では、所定間隔で定期的に制御プログラムが実行される例を示すが、ループ処理により連続的に制御プログラムが実行されるようにしてもよい。
【0062】
図3において、制御プログラムが実行されると、燃焼制御装置150は、温度計124から燃焼室120の室内の温度を取得する(ステップS301)。本実施形態では、燃焼室120の室内の温度を950℃に設定している。すなわち、燃焼室120で発生した二次燃焼ガス206の温度は、950℃であるとみなすことができる。
【0063】
次に、燃焼制御装置150は、取得した温度に基づいて熱交換器130における接触部の解離圧を算出する(ステップS302)。本実施形態では、接触部の構成材料としてS-TEN鋼などの鋼材を用いるため、標準生成自由エネルギーは既知である。そのため、温度が取得できれば、上述の式(3)により接触部の解離圧を算出することができる。なお、ここでは解離圧を算出する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、あらかじめ温度と解離圧とを対応づけた参照テーブルを準備しておき、取得した温度に基づいて参照テーブルから解離圧を取得してもよい。
【0064】
解離圧を算出したら、燃焼制御装置150は、酸素濃度計122から燃焼室120の室内の酸素濃度を取得する(ステップS303)。本実施形態では、酸素濃度計122としてレーザー式酸素濃度計を用いるため、リアルタイムに燃焼室120の内部の酸素濃度を測定することができる。酸素濃度計122は、燃焼室120の排気口近傍の酸素濃度を測定するように配置されている。したがって、酸素濃度計122で測定された酸素濃度は、燃焼室120で発生した二次燃焼ガス206の酸素濃度とみなすことができる。
【0065】
次に、燃焼制御装置150は、取得した酸素濃度に基づいて二次燃焼ガス206の酸素分圧を算出する(ステップS304)。燃焼室120の形状等は既知であり、燃焼室120の室内の温度はすでに取得してあるため、酸素濃度計122を配置した領域における二次燃焼ガス206のガス流量も算出することができる。したがって、酸素濃度が取得できれば、演算により、二次燃焼ガス206の酸素分圧を求めることができる。ただし、この例に限らず、ガス流量が既知であれば、あらかじめ酸素濃度と酸素分圧とを対応づけた参照テーブルを準備しておき、取得した酸素濃度に基づいて参照テーブルから酸素分圧を取得してもよい。
【0066】
上述の過程を経て、二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の解離圧とを求めたら、燃焼制御装置150は、酸素分圧と解離圧との差圧を算出し、算出した差圧が所定値以下であるか否か(すなわち、酸素分圧が解離圧を基準として所定範囲内に収まるか否か)を判定する(ステップS305)。本実施形態では、燃焼制御装置150は、酸素分圧と解離圧との差圧が所定値(例えば解離圧の10%の値)以下であるか否かを判定する。この判定処理により、燃焼制御装置150は、二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の解離圧とが平衡状態にあるか否かを把握することができる。
【0067】
ステップS305の判定がYESの場合、二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の解離圧とが平衡状態にあるため、燃焼制御装置150は、制御処理を終了する。ステップS305がNOの場合、燃焼制御装置150は、酸素分圧が解離圧よりも高いか否かを判定する(ステップS306)。
【0068】
ステップS306の判定がYESの場合、燃焼制御装置150は、燃焼室120の内部の酸素濃度を下げる(ステップS307)。具体的には、燃焼制御装置150は、ガス供給装置126を制御して燃焼室120の内部に所定量の不活性ガスを供給する。不活性ガスの供給により、燃焼室120の内部における酸素濃度を相対的に下げることができる。ステップS306の判定がNOの場合、燃焼制御装置150は、燃焼室120の内部の酸素濃度を上げる(ステップS308)。具体的には、燃焼制御装置150は、ガス供給装置126を制御して燃焼室120の内部に所定量の酸素ガスを供給する。酸素ガスの供給により、燃焼室120の内部における酸素濃度を相対的に上げることができる。このように、燃焼制御装置150は、燃焼室120の酸素濃度をリアルタイムに監視すると共に、燃焼室120の内部の酸素濃度(すなわち、二次燃焼ガス206の酸素分圧)を制御することができる。
【0069】
ステップS307又はステップS308の制御処理によるガスの供給が終了したら、燃焼制御装置150は、制御処理をステップS301に戻す。その後、燃焼制御装置150は、再びステップS301以降の制御処理を行い、酸素分圧と解離圧との差圧が所定値以下になるまで制御プログラムの実行を継続する。最終的に、燃焼制御装置150は、酸素分圧と解離圧との差圧が所定値以下になってステップS305の判定がYESになると、制御プログラムの実行を終了する。
【0070】
以上のように、本実施形態の熱回収システム100は、燃焼制御装置150を備えることにより、燃焼室120の内部の酸素濃度(すなわち、二次燃焼ガス206の酸素分圧)を監視することができる。また、熱回収システム100は、燃焼制御装置150が算出した二次燃焼ガス206の酸素分圧と熱交換器130の接触部の解離圧とを比較した結果に応じて、燃焼室120の内部の酸素濃度を制御し、酸素分圧と解離圧とを同一又は略同一の範囲内に収めることができる。これにより、熱回収システム100は、950℃程度の高温の二次燃焼ガス206が熱交換器130の接触部と接触しても、両者の間で平衡状態を維持することができる。このように、高温の二次燃焼ガス206を利用して熱交換ができるため、温水ヒータ等の法規制を受けない熱交換器を用いても、高い効率で熱を回収することができる。つまり、本実施形態によれば、簡易な構造で高温腐食を抑制し、熱回収効率を向上させた熱回収システム100を提供することができる。
【0071】
なお、
図3において、ステップS301からステップS304までの制御フローの順番は、この例に限られるものではない。例えば、
図3の制御フローは、酸素濃度を取得した後に、温度を取得してもよい。また、
図3の制御フローは、酸素濃度及び温度を取得した後に、
解離圧及び酸素分圧を算出してもよい。
【0072】
[バイオガス生成装置の構成]
図4は、第1実施形態のバイオガス生成装置110の構成を示す図である。バイオガス生成装置110は、少なくとも処理槽22、生物汚泥床24、及び汚泥沈降体26を備える。さらに、本実施形態のバイオガス生成装置110は、原水供給管28、筒状部材(ドラフトチューブ)30、返送装置32、スカム阻止部材34、処理水排出トラフ36、処理水放出口38、及び昇降装置40を備える。ただし、
図4に示す例は一例に過ぎず、この例に限られるものではない。
【0073】
処理槽22は、鋼板または合成樹脂により形成された円筒状の筐体である。処理槽22は、本実施形態のバイオガス生成装置110の外枠に相当する。本実施形態のバイオガス生成装置110は、UASB方式で上向流により発酵処理を行うため、処理槽22として鉛直方向に長軸を有する中空部材を用いる。なお、処理槽22の一部の内壁には、後述する汚泥沈降体26を内壁に沿って上下方向に移動させるためのガイドレール22a(
図7及び
図8参照)が設けられている。なお、本実施形態では、処理槽22の形状を円筒状とした例を示したが、直方体状であってもよい。また、直方体状の筐体が複数連なった構造とすることも可能である。さらに、鋼板または合成樹脂に限らず、鉄筋コンクリート構造(RC構造)としてもよい。
【0074】
生物汚泥床24は、処理槽22の内部の下方に設けられている。生物汚泥床24は、スラッジベッドとも呼ばれる。生物汚泥床24は、嫌気性微生物が自己造粒して形成されたグラニュールの集合体である。グラニュールは、嫌気性微生物の自己造粒機能を利用した沈降性に優れる黒色粒状の物質である。グラニュールは、微生物固定化用の担体を用いることなく、高密度かつ高活性のメタン生成菌を保持することができる。
【0075】
汚泥沈降体26は、上向流によって上昇したグラニュールを生物汚泥床24に向かって沈降させるための部材である。汚泥沈降体26は、生物汚泥床24の上方に設けられている。汚泥沈降体26は、笠状の本体部26aと、本体部26aの上面に設けられた整流部26bとを含む。汚泥沈降体26の本体部26aは、生物汚泥床24に向かい合う傾斜面を有する。換言すれば、汚泥沈降体26の本体部26aは、側面視における形状が下方を底面とする円錐台となる。整流部26bは、複数の傾斜板を積層することにより構成された複数の管状構造を含む部材である。管状構造の断面形状は任意であり、例えば三角形、四角形、五角形、六角形、ひし形、又は円形であってもよい。
【0076】
図5は、第1実施形態のバイオガス生成装置110における汚泥沈降体26の構成を示す図である。
図5に示されるように、本実施形態の本体部26aは、複数の扇状部材26a-1を組み合わせて構成されている。しかしながら、本体部26aは、1枚の板状部材を加工して一体成形されていてもよい。いずれにしても、本体部26aは、生物汚泥床24に向かう傾斜面を有する笠状の部材であることが好ましい。
【0077】
また、
図5に示されるように、本実施形態の整流部26bは、上下方向に管状構造26b-1の開口端を向けて配置される。なお、整流部26bの上に、浮き上がり防止用のネットカバーを設けてもよい。ここで、本体部26aの上面には、複数の貫通孔26cが設けられている。整流部26bの内部の管状構造26b-1は、本体部26aの上面に設けられた複数の貫通孔26cにそれぞれ連通している。本体部26aを通過した被処理水は、複数の管状構造26b-1を通って上方に流れる。
【0078】
図6は、第1実施形態のバイオガス生成装置110における整流部26bの構成を示す図である。具体的には、
図6(A)は、複数の傾斜板26b-2の構成を示す図である。
図6(B)は、複数の傾斜板26b-2を組み合わせて構成された整流部26bを示す図である。なお、
図6(B)では、整流部26bとして、管状構造26b-1の断面形状が六角形である例を示している。
【0079】
図6(A)に示されるように、複数の傾斜板26b-2は、それぞれが複数の屈曲部を有する板状部材で構成されている。各傾斜板26b-2の材料としては、プラスチック、金属等を用いることができる。
図6(A)に示す複数の傾斜板26b-2を重ね合わせると、
図6(B)に示されるように、複数の管状構造26b-1を有する整流部26bを形成することができる。なお、複数の傾斜板26b-2を接着剤等で貼り合せて整流部26bを形成してもよいし、重ね合わせた複数の傾斜板26b-2に前述のネットカバー等を被せて整流部26bを形成してもよい。いずれにしても、
図6(B)に示される構造を、汚泥沈降体26の本体部26aの上面に配置できればよい。
【0080】
一般的に、UASB方式の嫌気性処理装置では、装置の運転中、生物汚泥床を構成するグラニュールが上向流に乗って処理槽の外に流出(フラッシュアウト)しないように留意する必要がある。そのためには、被処理水の上昇速度よりもグラニュールの沈降速度が速くなるように調整することが重要である。グラニュールの沈降速度は、ストークスの式から求めることができる。ストークスの式によれば、グラニュールの沈降速度は、グラニュールの粒子密度及び粒径が大きいほど速くなる。また、被処理水の上昇速度(水面積負荷)は、処理槽の断面積(分離面積)で、被処理水の流量を除した値である。したがって、処理槽の分離面積を大きくすることが、被処理水の上昇速度を小さくする上で重要である。
【0081】
以上のことを考慮し、本実施形態のバイオガス生成装置110は、汚泥沈降体26を処理槽22の内部に配置することにより、処理槽22の有効分離面積を増加させ、被処理水の上昇速度を落としている。特に、整流部26bでは、中空構造の内部の表面積を分離面積として加えることができるため、グラニュールが効率よく沈降する。被処理水から分離されたグラニュールは、再び処理槽22の内部を下降して、最終的に、再び生物汚泥床24に戻る。このように、汚泥沈降体26は、グラニュールの分離にも大きく寄与する。
【0082】
さらに、本実施形態のバイオガス生成装置110は、運転開始時から所定の期間(具体的には、生物汚泥床24の馴養期間)は、汚泥沈降体26よりも下方の領域、すなわち反応域を狭くすることにより、グラニュールの成長を促進させ、グラニュールの粒子密度を向上させている。この事は、前述のとおり、グラニュールの沈降速度を早くすることに寄与する。
【0083】
上述の効果を得るために、本実施形態では、汚泥沈降体26が、処理槽22の内壁に沿って上下方向に移動可能となっている。つまり、汚泥沈降体26を上下方向に移動させることにより、バイオガス生成装置110の運転状況に応じて、反応域を狭くしたり、反応域を広くしたりすることができる。この制御については、
図7及び
図8を用いて後述する。
【0084】
図4に戻ってバイオガス生成装置110の説明を続ける。原水供給管28は、原水(
図1に示す酸生成装置110から供給される一次処理水)を処理槽22の内部に供給する。
図4では、1本の供給管のみ示されているが、この例に限らず、複数本の供給管を並列させてもよい。なお、詳細は後述するが、本実施形態の原水供給管28の開口端は、筒状部材30の下方に位置しており、供給された原水が筒状部材30の内部に送られる。
【0085】
筒状部材30は、細長い中空のパイプであり、処理槽22の反応域(すなわち、汚泥沈降体26の下方)に設けられる。具体的には、筒状部材30は、処理槽22の内壁から離隔して、上下方向に開口端が向くように配置される。処理槽22の反応域には、生物汚泥床24が形成される。したがって、バイオガス生成装置110の運転中における筒状部材30は、生物汚泥床24の内部に位置する。
【0086】
返送装置32は、処理槽22の上方から下方へと被処理水を戻す役割を有している。具体的には、返送装置32は、汚泥沈降体26よりも上方の被処理水(すなわち、グラニュールを含まない被処理水)及び/又は汚泥沈降体26よりも下方の被処理水(すなわち、グラニュールを含む被処理水)を、前述の筒状部材30の下端側に戻す機能を有する。つまり、返送装置32は、分離域の被処理水を再び反応域に戻したり、被処理水を反応域内で循環させたりする役割を有している。後述するように、本実施形態のバイオガス生成装置110は、反応域で良好な対流が生じるように、筒状部材30の内部の流速を速める構造を有する。返送装置32によって再び反応域に戻された被処理水は、筒状部材30の下端側の開口から筒状部材30の内側に戻されるため、筒状部材30の内部における流速の増加に寄与する。
【0087】
返送装置32は、循環ポンプ111及び返送管112を用いて被処理水を再び反応域に戻す流路を形成する。流路には、循環ポンプのほか、ヒータ113及び水温センサ114が設けられている。ヒータ113は、返送管112を流れる被処理水を加熱する。水温センサ114は、返送管112を流れる被処理水の温度を計測する。
【0088】
ヒータ113は、コイルヒータ、比熱接触槽、多重管式熱交換器、プレート式熱交換器など、様々なヒータを用いることができる。また、ヒータ113を用いて被処理水を加熱する方式に代えて、二次燃焼ガス206の余熱を利用して被処理水を加熱することも可能である。例えば、熱交換器130にて余熱を利用して得た蒸気を用いて被処理水を昇温させてもよい。
【0089】
水温センサ114としては、例えばサーミスタを用いることができる。本実施形態では、水温センサ114の出力信号に基づいてヒータ113を制御し、処理槽22内の被処理水の温度制御を行っている。また、本実施形態では、ヒータ113としてコイルヒータ等の接触式ヒータを用いる。ヒータ113として接触式ヒータを用いることにより、ヒータ113に接触した被処理水の温度は60度を超える。そのため、ヒータ113は、槽内温度を維持するだけでなく、増えすぎたグラニュール及び被処理水中のタンパク質を分解することもできる。
【0090】
スカム阻止部材34は、汚泥沈降体26の上方に設けられる。スカムとは、余剰汚泥等がガスによって浮上したものである。スカム阻止部材34は、汚泥沈降体26とは反対に、側面視における形状が上方を底面とする円錐台の部材であり、中心付近に被処理水を通す開口が設けられている。
【0091】
処理水排出トラフ36は、スカム阻止部材34の上方に設けられる。処理水排出トラフ36は、処理槽22の内部を上昇した処理水を通過させる開口を中心に有し、開口の周囲に溢れた処理水を受ける溝を有した構造を有する。この溝に溜まった処理水が、処理水放出口38から放出される。
【0092】
昇降装置40は、汚泥沈降体26を上下方向に移動させるための駆動装置である。昇降装置40は、一端が汚泥沈降体26に連結された支持部材40a、支持部材40aの他端に連結されたリフター40b、及び支持部材40aとリフター40bとを支持する支持枠40cを含む。昇降装置40による汚泥沈降体26の移動は、手動で行われてもよいし、自動制御で行われてもよい。また、本実施形態では、支持枠40cに目盛り40dが付されている。例えば、手動でリフター(例えば昇降シリンダー)を動かして汚泥沈降体26を移動させる場合、目盛り40dによって移動距離が分かるようにしておけば、任意の位置に汚泥沈降体26を配置することができる。
【0093】
以上説明した本実施形態のバイオガス生成装置110の動作について、
図7~
図9を用いて説明する。
【0094】
[バイオガス生成装置の動作]
図7は、第1実施形態のバイオガス生成装置110における第1状態の構成を示す図である。
図8は、第1実施形態のバイオガス生成装置110における第2状態の構成を示す図である。なお、
図7及び
図8に示すバイオガス生成装置110は、説明の便宜上、
図4に示した一部の構成を省略している。また、
図4では図示を省略したが、
図7及び
図8に示されるように、処理槽22は、汚泥沈降体26を内壁に沿って上下方向に移動させるためのガイドレール22aを有する。ただし、ガイドレール22aは必須の構成ではない。例えば、処理槽22が小型である場合は、省略することも可能である。
【0095】
図7に示す第1状態は、汚泥沈降体26を処理槽22の下方(第1位置)に配置して、相対的に反応域50を縮小した状態(すなわち、分離域60を拡大した状態)である。なお、説明の便宜上、
図7において、汚泥沈降体26の下端を反応域50の上限として図示したが、実際には、汚泥沈降体26よりも下方であれば反応域50として機能し得る。また、説明の便宜上、
図7では生物汚泥床24を矩形の領域(斜線部)で表している。しかし、実際の動作時には、反応域50に被処理水の対流が生じるため、反応域50のほぼ全域にグラニュールが存在した状態となる。この点については、
図8に示す第2状態でも同様である。
【0096】
本実施形態において、「第1位置」は、運転開始時から所定の期間(具体的には、生物汚泥床24の馴養期間)に汚泥沈降体26を配置する位置である。第1位置は、処理槽22の深さ等を考慮して適宜決定すればよい。運転開始時は、グラニュールが負荷変動に対して非常に弱いため、反応域50を狭くして負荷変動を抑える。これにより、グラニュールの結合力の低下が抑制され、グラニュールが内部ガスにより浮き上がってしまうという不具合を抑制することができる。また、反応域50を狭くすることにより、反応域50の有機物濃度が高まるため、グラニュールの成長が促される。
【0097】
このように、本実施形態では、生物汚泥床24の馴養期間は、
図7に示す第1状態における処理(第1処理)を行い、グラニュールの成長促進に重きを置く。これにより、本実施形態のバイオガス生成装置110は、生物汚泥床24の馴養期間の短縮を図ることができる。
【0098】
さらに、運転開始時は、グラニュールの成長が不足しているため、生物汚泥床24が十分に機能しない。また、非常に粒径の小さいグラニュールが多く存在するため、分離域60における固液分離性能を高めることが望ましい。本実施形態のバイオガス生成装置110は、運転開始時には、反応域50の縮小に伴って分離域60が拡大されるため、反応域50におけるグラニュールの成長促進と分離域60における固液分離性能の向上との両立が可能である。
【0099】
次に、
図8に示す第2状態は、汚泥沈降体26を処理槽22の上方(第2位置)に配置して、相対的に反応域50を拡大した状態(すなわち、分離域60を縮小した状態)である。換言すれば、第2状態は、汚泥沈降体26を前述の第1位置よりも上方の第2位置に配置して、相対的に反応域50を拡大した状態である。グラニュールが十分に成長して馴養期間を経過したと判断された場合、次は、反応域50の処理能力を上げることに重きを置く。つまり、反応域50を拡大することにより、被処理水とグラニュールの接触時間を増加させ、処理の効率を上げる。そのために、本実施形態では、第1位置から第2位置へと汚泥沈降体26を上方向に移動させることにより、反応域50を拡大した状態で処理(第2処理)を行う。
【0100】
なお、グラニュールが十分に成長したか否か、すなわち生物汚泥床24の馴養期間が経過したか否かは、作業者が処理槽22に設けられた覗き窓22b(
図4参照)などから目視で確認して判断すればよい。
【0101】
また、本実施形態のバイオガス生成装置110は、運転中に、被処理水の供給量の増減に応じて反応域50の拡大又は縮小を行うこともできる。例えば、被処理水の供給量(すなわち、生物汚泥床24を通過する有機物の供給量)が増加した場合は、汚泥沈降体26を上方向に移動させて反応域50を拡大し、反応域50の処理の効率を向上させることが望ましい。例えば、被処理水の供給量が所定量を超えたとき、第2処理から第1処理に切り換えることが可能である。
【0102】
さらに、本実施形態では、
図7に示す第1状態において、反応域50に対流を生じさせることにより、グラニュールの成長を促進させる構成となっている。この点について、
図9を用いて説明する。
【0103】
図9は、第1状態における反応域50の様子を説明するための図である。前述のように、本実施形態のバイオガス生成装置110は、循環ポンプ111を用いて分離域60の中間水を反応域50に戻す流路を形成する返送装置32を備えている。返送装置32によって筒状部材30の下端側に戻された被処理水は、再び筒状部材30の内側を通って上昇する。その際、循環ポンプ111によって流速が速められた被処理水が筒状部材30の内側に供給されるため、筒状部材30の内側の流速が局所的に上がる。
【0104】
したがって、筒状部材30の上方の開口端では、大きな流速でグラニュールと被処理水が流出することによる上昇流が生じる。また、筒状部材30の下方の開口端では、筒状部材30に流入する被処理水の流れによって開口端近傍に負圧が生じる。その負圧によって、筒状部材30の下方の開口端では、グラニュールと被処理水が筒状部材30の内部に引き込まれる。その結果、
図9に示すように、反応域50には、被処理水の強い対流が生じる。このとき、汚泥沈降体26が第1位置まで移動して反応域50が狭められているため、微細なグラニュールは互いに絡み合って大きくなる。その結果、グラニュールの成長が著しく促進される。さらに、筒状部材30から上方に向かって流出したグラニュールは、直上に位置する汚泥沈降体26によって進行が遮られると、他のグラニュールと衝突し、さらに大きな粒径のグラニュールを形成する。
【0105】
以上のように、本実施形態によれば、汚泥沈降体26を第1位置まで下げて反応域50を狭くすることにより、グラニュールの成長を促進させることができる。さらに、筒状部材30を用いて反応域50に強い対流を生じさせることにより、グラニュールの成長を促進させることができる。
【0106】
本実施形態のバイオガス生成装置110は、処理槽22の内部を上下方向に移動可能な汚泥沈降体26を備える。これにより、運転状況に応じて反応域及び分離域の範囲を自由に拡大又は縮小することができる。そして、運転開始初期の生物汚泥床24の馴養期間には、汚泥沈降体26を下方に移動させることにより反応域50を狭くし、グラニュールの成長を促進させることができる。
【0107】
また、本実施形態のバイオガス生成装置110は、処理槽の内壁から離隔して設けられた筒状部材30と被処理水を筒状部材30の下端側に戻す返送装置32とを備える。これにより、運転開始初期の生物汚泥床24の馴養期間には、汚泥沈降体26を下方に移動させつつ筒状部材30の内側における上昇流の流速を速め、反応域50全体に強い対流を生じさせることができる。その結果、反応域50を狭くする効果に対して対流による効果も加わり、グラニュールの成長を著しく促進させることができる。
【0108】
(変形例1)
本実施形態では、燃焼制御装置150の制御により、熱交換器130の接触部の解離圧と二次燃焼ガス206の酸素分圧との差圧を所定値以下とすることを説明したが、熱交換器130の接触部の劣化を抑えるという観点によれば、この例に限られるものではない。例えば、二次燃焼ガス206の酸素分圧が熱交換器130の接触部の解離圧を上回る場合には、上述の所定値以下に差圧を収め、酸素分圧が解離圧を下回る場合には、特に制限を設けなくてもよい。換言すれば、燃焼制御装置150は、二次燃焼ガス206の酸素分圧が、熱交換器130の接触部の解離圧を下回るように二次燃焼ガス206の酸素濃度を調整してもよい。
【0109】
この場合、熱交換器130の接触部は、常に還元雰囲気に置かれることになるため、接触部の高温腐食による劣化を抑えることができる。
【0110】
(変形例2)
本実施形態では、熱交換器130として、真空式温水ヒータを用いる例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、熱交換器130として、大気圧式温水ヒータを用いることも可能である。大気圧式温水ヒータは、容器内を大気開放した状態で熱媒水を沸騰させ、その蒸気の熱を利用して温水を取り出す構造となっている。大気圧式温水ヒータは、容器内に圧力がかからないため、無圧式温水ヒータとも呼ばれる。
【0111】
図10は、本発明の第1実施形態の熱回収システム100に用いる熱交換器130の変形例の構成を示す図である。具体的には、
図10は、熱交換器130として用いる大気圧式温水ヒータ230の構成を示している。大気圧式温水ヒータ230は、筐体231の内部が加熱室232及び媒体室233に区切られている。加熱室232には、燃焼室120から送られた二次燃焼ガス206が供給される。加熱室232に供給された二次燃焼ガス206は、媒体室233に充填された熱媒水234の加熱に利用された後、燃焼ガス208として排出される。
【0112】
媒体室233で加熱された熱媒水234は、熱交換部235に供給され、加熱された熱媒水234の熱を利用して熱交換が行われる。熱交換部235は、給水管236を有し、流入口236aから水が供給されるとともに、流出口236bから温水が得られるようになっている。媒体室233と熱交換部235との間には、ポンプ237が設けられている。ポンプ237は、媒体室233と熱交換部235との間で熱媒水234を循環させる役割を有する。
【0113】
本実施形態では、燃焼室120から排出された高温(例えば、950℃)の二次燃焼ガス206を直接的に熱交換器130に供給することができる。つまり、従来技術のように、燃焼室120から排出された二次燃焼ガス206を350℃程度まで冷却した後に熱交換器130へ供給する必要がない。そのため、従来技術のように蒸気ボイラを用いる必要がなく、温水ヒータ等の熱交換器を用いても高い熱回収効率を確保することができる。
【0114】
また、大気圧式温水ヒータ230は、筐体231の上部に開口部231aが設けられており、筐体231の内部が大気圧に維持される。そのため、大気圧式温水ヒータ230は、筐体231の内部圧力が高圧になることがなく、ボイラの法規制を受けない。したがって、熱交換器130として大気圧式温水ヒータ230を用いた場合、ボイラ技士を管理者として配置するする必要がない。すなわち、熱交換器130として法規制を受けない温水ヒータを利用することができるため、メンテナンス及び設備維持に要するコストを低減することができる。
【0115】
(変形例3)
本実施形態の熱回収システム100において、熱交換器130としては、上述した真空式温水ヒータ及び大気圧式温水ヒータ以外のあらゆる熱交換器を用いることができる。本実施形態では、燃焼室120から排出された高温の二次燃焼ガス206を直接的に熱交換器130に供給することができるため、どのような熱交換器を用いても高い熱回収効率を実現することができる。
【0116】
(変形例4)
図3に示した制御フローでは、ステップS305において酸素分圧と
解離圧との差圧を算出し、算出した差圧が所定値以下であるか否か(すなわち、酸素分圧が
解離圧を基準として所定範囲内に収まるか否か)を判定する例を示したが、この例に限られるものではない。例えば、
図3において、ステップS305を省略してもよい。
【0117】
この場合、燃焼制御装置150は、ステップS302で熱交換器130の接触部の解離圧を算出し、ステップS304で二次燃焼ガス206の酸素分圧を算出した後、ステップS306で酸素分圧は解離圧よりも高いか否かを判定する。その後、この判定結果に応じて燃焼制御装置150は、ステップS307又はステップS308の制御処理を実行し、燃焼室120の酸素濃度を増加又は減少させる。このようにして、酸素濃度を制御したら、燃焼制御装置150は、再びステップS301から制御処理を繰り返し実行する。
【0118】
本変形例の燃焼制御装置150は、上述したループ処理を常時実行することにより、酸素分圧と解離圧との比較結果をフィードバックして、酸素分圧と解離圧とを同一又は略同一の範囲内に収める。これにより、熱交換器130の接触部と燃焼室120で発生した二次燃焼ガス206との間で平衡状態を維持することができる。
【0119】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ガス供給装置126を用いて燃焼室120の内部における酸素濃度を調整する例について説明したが、この例に限られるものではない。例えば、燃焼室120の内部における酸素濃度は、燃焼室120への空気供給量をダンパ又はバルブ等の風量調整装置を用いて調整することも可能である。
【0120】
図11は、本発明の第2実施形態の熱回収システム100aの構成を示すブロック図である。
図11において、第1実施形態で説明した熱回収システム100と同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0121】
図11に示すように、本実施形態の熱回収システム100aは、送風装置127及びダンパ128を備える。送風装置127は、空気を燃焼室に供給する。ダンパ128は、送風装置127と燃焼室120との間に設けられ、燃焼室120への空気の供給量を調整する。すなわち、ダンパ128は、燃焼室120へ供給される空気の流量を調整する風量調整装置として機能する。
【0122】
本実施形態では、燃焼制御装置150aがダンパ128を制御する。具体的には、燃焼制御装置150aは、ダンパ128を制御することにより、燃焼室120へ供給される空気の量を調整することができる。つまり、燃焼制御装置150aは、燃焼室120への空気供給量を調整することにより、燃焼室120の内部における酸素濃度を調整することができる。例えば、第1実施形態において
図3に示した制御フローを参照すると、ステップS306の判定に応じて、燃焼制御装置150aは、ダンパ128を制御することにより、燃焼室120の内部の酸素濃度を下げたり(ステップS307)、上げたり(ステップS308)することができる。このように、燃焼制御装置150aは、燃焼室120の酸素濃度をリアルタイムに監視すると共に、燃焼室120の内部の酸素濃度(すなわち、二次燃焼ガス206の酸素分圧)を制御することができる。
【0123】
(第3実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態では、バイオガス生成装置110で発生したバイオガス202を燃焼室120に供給する例について説明したが、本実施形態では、バイオガス202を焼却炉115に供給する例について説明する。
【0124】
図12は、本発明の第3実施形態の熱回収システム100bの構成を示すブロック図である。
図12において、第1実施形態及び第2実施形態で説明した熱回収システム100及び100aと同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0125】
図12に示すように、本実施形態の熱回収システム100bでは、バイオガス生成装置110で発生したバイオガス202(例えば、メタンガス)が、焼却炉115に供給されて廃棄物203の焼却処理に利用される。これにより、焼却炉115における焼却処理に要する燃料(例えば、運転開始時の着火燃料)としてバイオガス202を利用することができ、重油等の従来の燃料の使用量を低減することができる。また、バイオガス202をごみ焼却中の焼却炉115の内部温度の昇温用に用いることも可能である。なお、
図12では、バイオガス生成装置110から直接的に焼却炉115に対してバイオガス202を供給しているが、この例に限らず、ガス精製装置やガスタンク等の他の設備を経由して焼却炉115に供給される構成としてもよい。
【0126】
(第4実施形態)
第1実施形態及び第2実施形態では、バイオガス生成装置110で発生したバイオガス202を燃焼室120に供給する例について説明したが、本実施形態では、バイオガス202の一部をガス発電機160に供給する例について説明する。
【0127】
図13は、本発明の第4実施形態の熱回収システム100cの構成を示すブロック図である。
図13において、第1実施形態及び第2実施形態で説明した熱回収システム100及び100aと同じ要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0128】
図13に示すように、本実施形態の熱回収システム100cでは、バイオガス生成装置110で発生したバイオガス202(例えば、メタンガス)が、燃焼室120とガス発電機160とに供給される。ガス発電機160としては、例えば、バイオガス発電機を用いることができる。バイオガス発電機は、メタンガス等のバイオガスを燃料として発電する設備である。本実施形態では、バイオガス生成装置110で発生したバイオガス202をガス発電機160にも供給することにより、熱回収に加えて電力回収も可能であるという効果を奏する。なお、
図13では、バイオガス生成装置110から直接的にガス発電機160に対してバイオガス202を供給している。しかし、この例に限らず、バイオガス202は、ガス精製装置やガスタンク等の他の設備を経由してガス発電機160に供給されてもよい。
【0129】
本発明の実施形態及びその変形例は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。上述した実施形態の熱回収システムを基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0130】
また、上述した実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0131】
22…処理槽、22a…ガイドレール、22b…覗き窓、24…生物汚泥床、26…汚泥沈降体、26a…本体部、26b…整流部、26b-1…管状構造、26b-2…傾斜板、26c…貫通孔、28…原水供給管、30…筒状部材(ドラフトチューブ)、32…返送装置、34…スカム阻止部材、36…処理水排出トラフ、38…処理水放出口、40…昇降装置、40a…支持部材、40b…リフター、40c…支持枠、50…反応域、60…分離域、100、100a…熱回収システム、110…バイオガス生成装置、111…循環ポンプ、112…返送管、113…ヒータ、114…水温センサ、115…焼却炉、120…燃焼室、122…酸素濃度計、124…温度計、126…ガス供給装置、127…送風装置、128…ダンパ、130…熱交換器、131…筐体、131a…排気口、132…加熱室、133…熱交換室、134…熱媒水、135…熱交換部、136…給水管、136a…流入口、136b…流出口、140…冷却室、150、150a…燃焼制御装置、160…ガス発電機、201…汚水、202…バイオガス、203…廃棄物、204…一次燃焼ガス、206…二次燃焼ガス、208…燃焼ガス、210…燃焼ガス、230…大気圧式温水ヒータ、231…筐体、231a…開口部、232…加熱室、233…媒体室、234…熱媒水、235…熱交換部、236…給水管、236a…流入口、236b…流出口、237…ポンプ