(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】DCDCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2021022504
(22)【出願日】2021-02-16
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】河野 明大
(72)【発明者】
【氏名】後藤 克也
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169333(JP,A)
【文献】特開2017-153209(JP,A)
【文献】特開2011-091759(JP,A)
【文献】特開2013-118769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準電圧とフィードバック電圧を比較するコンパレータと、
パワーFETのオン時間を制御するオン時間制御回路と、
前記コンパレータの信号と前記オン時間制御回路の信号に応じて前記パワーFETを制御する信号を出力するR-Sフリップフロップ回路と、を備え、
前記オン時間制御回路は、前記パワーFETのオンしたことに基づく信号で制御されるスイッチと、前記スイッチがオンしたことで放電され
る一方、前記スイッチがオフしたことで第一の電流源で充電されるコンデンサと、第二の電流源と前記コンデンサの電圧でゲート電圧が制御され
、前記スイッチがオフすると前記パワーFETのオン又はオフに依らず前記スイッチがオフしてから所定の時間経過後にオフからオンに遷移するように制御されるMOSトランジスタで構成され
る検出回路と、を備え
、前記検出回路は、前記MOSトランジスタのドレインの電圧レベルに対応したレベルを含む信号を前記R-Sフリップフロップ回路のリセット端子へ出力することを特徴とするDCDCコンバータ。
【請求項2】
前記第二の電流源は、デプレッション型のMOSトランジスタで構成されることを特徴とする請求項1に記載のDCDCコンバータ。
【請求項3】
前記スイッチは、前記MOSトランジスタと同じ導電型のMOSトランジスタで構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のDCDCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DCDCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
DCDCコンバータなどの電源装置において、負荷応答性に優れたコンスタント・オンタイム制御がしばしば用いられる。コンスタント・オンタイム制御は、オン時間制御回路の信号に基づいた出力信号でスイッチングトランジスタを制御する制御方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来のオン時間制御回路を示す回路図である。従来のオン時間制御回路は、容量42と、容量42が電流源41の流す電流で所望の電圧に充電されるまでの時間を計測するコンパレータ45などで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のオン時間制御回路は、コンパレータ45が容量42の電圧を検出してから信号を出力するまでのディレイ時間の影響により、スイッチングトランジスタを高い周波数でスイッチングすることが困難であった。特に、消費電流が低いDCDCコンバータは、コンパレータ45の動作電流(電流源44の電流)も少なく設定することが要求されるため、高周波化が困難であった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、消費電流が少なく、且つ高い周波数でスイッチング動作が可能なDCDCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のDCDCコンバータは、基準電圧とフィードバック電圧を比較するコンパレータと、パワーFETのオン時間を制御するオン時間制御回路と、前記コンパレータの信号と前記オン時間制御回路の信号に応じて前記パワーFETを制御する信号を出力するR-Sフリップフロップ回路と、を備え、前記オン時間制御回路は、前記パワーFETのオンしたことに基づく信号で制御されるスイッチと、前記スイッチがオンしたことで放電される一方、前記スイッチがオフしたことで第一の電流源で充電されるコンデンサと、第二の電流源と前記コンデンサの電圧でゲート電圧が制御され、前記スイッチがオフすると前記パワーFETのオン又はオフに依らず前記スイッチがオフしてから所定の時間経過後にオフからオンに遷移するように制御されるMOSトランジスタで構成される検出回路と、を備え、前記検出回路は、前記MOSトランジスタのドレインの電圧レベルに対応したレベルを含む信号を前記R-Sフリップフロップ回路のリセット端子へ出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のDCDCコンバータによれば、消費電流が少なく、且つ高い周波数でスイッチング動作が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のDCDCコンバータを示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態のオン時間制御回路を示す回路図である。
【
図3】本実施形態のオン時間制御回路の他の例を示す回路図である。
【
図4】従来のオン時間制御回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のDCDCコンバータ100を示すブロック図である。
本実施形態のDCDCコンバータ100は、パワーFET2と、インダクタ3と、ショットキーダイオード4と、コンデンサ5と、コンパレータ10と、オン時間制御回路11と、基準電圧回路12と、R-Sフリップフロップ回路13と、出力制御回路14と、ドライバー回路15と、フィードバック抵抗17及び18を備えている。
【0012】
フィードバック抵抗17及び18は、出力端子OUTとGND端子の間に接続されている。コンパレータ10は、反転入力端子-がフィードバック抵抗17及び18の出力端子に接続され、非反転入力端子+が基準電圧回路12に接続されている。R-Sフリップフロップ回路13は、セット端子Sがコンパレータ10の出力端子に接続され、リセット端子Rがオン時間制御回路11の出力端子に接続され、出力端子Qが出力制御回路14の入力端子に接続され、出力端子QBがオン時間制御回路11の入力端子に接続されている。ドライバー回路15は、入力端子が出力制御回路14の出力端子に接続され、出力端子がパワーFET2のゲートに接続されている。パワーFET2は、ソースが電源端子に接続され、ドレインがインダクタ3の一方の端子とショットキーダイオード4のカソードに接続されている。インダクタ3の他方の端子は、出力端子OUTとコンデンサ5の一方の端子に接続されている。ショットキーダイオード4の他方の端子は、GND端子に接続されている。コンデンサ5の他方の端子は、GND端子に接続されている。
【0013】
図2は、本実施形態のオン時間制御回路11を示す回路図である。
本実施形態のオン時間制御回路11は、電流源21及び24と、コンデンサ22と、NMOSトランジスタ23及び25と、反転回路26を備えている。
【0014】
電流源21は、一端が電源端子に接続され、他端がコンデンサ22の一端に接続されている。NMOSトランジスタ23は、ドレインがコンデンサ22の一端に接続され、ソースがGND端子に接続され、ゲートがR-Sフリップフロップ回路13の出力端子QBに接続されている。コンデンサ22の他端は、GND端子に接続されている。電流源24は、一端が電源端子に接続され、他端が反転回路26の入力端子に接続されている。NMOSトランジスタ25は、ドレインが電流源24の他端に接続され、ソースがGND端子に接続され、ゲートがコンデンサ22の一端に接続されている。反転回路26の出力端子は、R-Sフリップフロップ回路13のリセット端子Rに接続されている。オン時間制御回路11は、NMOSトランジスタ23のゲートが入力端子、反転回路26の出力端子が出力端子である。電流源24とNMOSトランジスタ25は、コンデンサ22の電圧を検出する検出回路を構成する。
【0015】
以下、
図1及び2を参照して、本実施形態のオン時間制御回路11及びDCDCコンバータ100の動作を説明する。
【0016】
DCDCコンバータ100は、電源端子に電圧Vinが入力されると、出力端子から出力電圧Voutを出力する。フィードバック抵抗17及び18は、出力電圧Voutに基づき帰還電圧を出力する。コンパレータ10は、帰還電圧が基準電圧回路12の出力する基準電圧より下回ると、Hレベルの信号を出力する。R-Sフリップフロップ回路13は、セット端子SにHレベルの信号が入力されるため、出力端子QがHレベルの信号を出力し、出力端子QBがLレベルの信号を出力する。出力制御回路14は、Hレベルの信号が入力されると、出力端子からLレベルの信号を出力し、ドライバー回路15を介してパワーFET2をオンする。
【0017】
オン時間制御回路11は、Lレベルの信号が入力されると、所定の時間経過後にHレベルの信号を出力する。R-Sフリップフロップ回路13は、リセット端子RにHレベルの信号が入力されるため、出力端子QがLレベルの信号を出力し、出力端子QBがHレベルの信号を出力する。出力制御回路14は、Lレベルの信号が入力されると、出力端子からHレベルの信号を出力し、ドライバー回路15を介してパワーFET2をオフする。
【0018】
図2のオン時間制御回路11は、入力端子にR-Sフリップフロップ回路13の出力端子QBからHレベルの信号が入力されていると、NMOSトランジスタ23がオンし、NMOSトランジスタ25がオフしているので、出力端子からLレベルの信号を出力している。
【0019】
オン時間制御回路11は、入力端子にR-Sフリップフロップ回路13の出力端子QBからLレベルの信号が入力されると、NMOSトランジスタ23がオフし、電流源21の電流によってコンデンサ22への充電が開始される。コンデンサ22の電圧が充電によって上昇し、NMOSトランジスタ25のゲート電圧が所定の電圧になると、反転回路26の入力端子の電圧がLレベルになるため、オン時間制御回路11は出力端子からHレベルの信号を出力する。
【0020】
ここで、電流源24は、デプレッショントランジスタで構成することによって、反転回路26の入力端子の電圧がHレベルからLレベルになるためのNMOSトランジスタ25のゲート電圧を電圧特性、温度特性に対して一定にすることが可能である。即ち、オン時間制御回路11は、電源電圧や温度に対して一定のオン時間を保証することが可能である。
【0021】
以上説明したように、本実施形態のDCDCコンバータ100は、オン時間制御回路11にコンパレータを用いないため、消費電流が少なく、且つ高い周波数でスイッチング動作が可能となる。また、電源電圧や温度に対して一定のオン時間を保証することが可能である。更に、オン時間制御回路11にコンパレータを用いないため、回路の面積削減に有効である。
【0022】
図3は、本実施形態のオン時間制御回路11の他の例を示す回路図である。
図3のオン時間制御回路11は、電流源31及び34と、コンデンサ32と、PMOSトランジスタ33及び35を備えている。
【0023】
電流源31は、一端がGND端子に接続され、他端がコンデンサ32の一端に接続されている。PMOSトランジスタ33は、ドレインがコンデンサ32の一端に接続され、ソースが電源端子に接続され、ゲートがR-Sフリップフロップ回路13の出力端子Qに接続されている。コンデンサ32の他端は、電源端子に接続されている。電流源34は、一端がGND端子に接続され、他端がR-Sフリップフロップ回路13のリセット端子Rに接続されている。PMOSトランジスタ35は、ドレインが電流源34の他端に接続され、ソースが電源端子に接続され、ゲートがコンデンサ32の一端に接続されている。オン時間制御回路11は、PMOSトランジスタ33のゲートが入力端子、電流源34の他端が出力端子である。電流源34とPMOSトランジスタ35は、コンデンサ32の電圧を検出する検出回路を構成する。
【0024】
図3のオン時間制御回路11の動作は、
図2のオン時間制御回路11とは信号のレベルが反転しただけの動作になるため、詳細な説明は省略する。従って、オン時間制御回路11を
図3のように構成しても、
図2のオン時間制御回路11と同様の効果を得ることが出来る。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、NMOSトランジスタ23やPMOSトランジスタ33は、スイッチの機能があればよくMOSトランジスタに限定されない。また例えば、オン時間制御回路11は、R-Sフリップフロップ回路13の出力信号によって動作を開始する構成としたが、パワーFET2がオンしたことを示す信号であればよく、この信号に限定されない。
【符号の説明】
【0026】
2 パワーFET
3 インダクタ
4 ショットキーダイオード
5 コンデンサ
10 コンパレータ
11 オン時間制御回路
12 基準電圧回路
13 R-Sフリップフロップ回路
14 出力制御回路
15 ドライバー回路
17、18 フィードバック抵抗
21、24、31、34 電流源
22、32 コンデンサ
23、25 NMOSトランジスタ
26 反転回路
33、35 PMOSトランジスタ
100 DCDCコンバータ