(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】受液器及びこれを備えた車両用空調装置用凝縮器
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20241206BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20241206BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F25B43/00 W
F25B43/00 L
F25B39/04 S
B60H1/32 613A
(21)【出願番号】P 2021034963
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】弁理士法人小竹アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】荒木 大助
(72)【発明者】
【氏名】根本 記明
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-097524(JP,A)
【文献】特開2009-121782(JP,A)
【文献】特表2008-509376(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0080313(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F25B 39/04
B60H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成されて内部に冷媒を貯留する受液器本体2と、この受液器本体2の長手方向の一方側端部に設けられた一方側開口部2aに挿着されて該一方側開口部2aを閉塞する栓体4とを有する受液器1であって、
前記栓体4は、
前記受液器本体2の内部に収容されて前記冷媒が通過するフィルタ部41と、
前記受液器本体2の前記一方側開口部2aの内周面に螺合するねじ部42aを外周面に備えた固定部42と、
前記受液器本体2の内周面に当接されて前記フィルタ部41と前記受液器本体2との間から前記固定部42への冷媒漏れを防ぐシール部材43と、
を備え、
前記フィルタ部41は、筒状のメッシュ部材41aと、前記メッシュ部材の軸方向の一端を閉塞する底壁41bと、を有し、
前記シール部材43は、前記底壁41bと前記受液器本体2の内周面との間に配され、
前記フィルタ部41の底壁41bには、前記固定部42に設けられた環状壁42dが当接され、
前記環状壁42dで囲まれた前記フィルタ部41と前記固定部42との間には、前記フィルタ部41を、前記固定部42の回転に追従させないように、且つ、前記固定部42の軸方向の動きに追従させるように前記固定部42と連結する可動接続部44
が設けられている、
ことを特徴とする受液器。
【請求項2】
前記フィルタ部41は、射出成型品であり、前記シール部材43を支持する座面41eを有し、前記座面41eは、前記フィルタ部41を成形する金型51,52,53のパーティションラインPからずれた位置に形成されることを特徴とする請求項1記載の受液器。
【請求項3】
筒状に形成されて内部に冷媒を貯留する受液器本体2と、この受液器本体2の長手方向の一方側端部に設けられた一方側開口部2aに挿着されて該一方側開口部2aを閉塞する栓体4とを有する受液器1であって、
前記栓体4は、
前記受液器本体2の内部に収容されて前記冷媒が通過するフィルタ部41と、
前記受液器本体2の前記一方側開口部2aの内周面に螺合するねじ部42aを外周面に備えた固定部42と、
前記フィルタ部41と前記固定部42との間に配置され、前記フィルタ部41に対して固定された中間部60と、
前記中間部60と受液器本体2の内周面との間に配されて、前記中間部60と前記受液器本体2との間から前記固定部42への冷媒漏れを防ぐシール部材43と、を備え、
前記中間部60には、前記固定部42に設けられた環状壁42dが当接され、
前記環状壁42dで囲まれた前記中間部60と前記固定部42との間には、前記中間部60を、前記固定部42の回転に追従させないように、且つ、前記固定部42の軸方向の動きに追従させるように前記固定部42と連結する可動接続部44が設けられている、
ことを特徴とする受液器。
【請求項4】
前記栓体4は、前記受液器本体2の内周面に当接されて前記中間部60と前記受液器本体2との間から前記固定部42への冷媒漏れを防ぐ他のシール部材61を更に備え、
前記他のシール部材61は、前記中間部60と前記固定部42との間に設けられることを特徴とする請求項3記載の受液器。
【請求項5】
前記中間部60は、射出成型品であり、前記シール部材43を支持する座面60bと、前記他のシール部材61を支持する他の座面60cとを有し、前記座面60b及び前記他の座面60cは、前記中間部60を成形する金型71,72のパーティションラインPからずれた位置に形成されることを特徴とする請求項4記載の受液器。
【請求項6】
前記シール部材43は、前記受液器本体2の内周面に形成された段部2eに当接して軸方向に圧縮されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の受液器。
【請求項7】
前記段部2eは、テーパ面で構成されていることを特徴とする請求項6記載の受液器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の受液器1を備えた車両用空調装置用凝縮器100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルの凝縮器の出口側に設けられて液化した液冷媒を一時的に貯留する受液器と、これを備えた車両用空調装置用凝縮器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルの凝縮器の出口側には、凝縮器で凝縮した気液混合冷媒を気液分離し、液冷媒を一時的に貯留する受液器が設けられているものがある。特許文献1に示される受液器は、円筒状の受液器本体を有し、受液器本体には長手方向の一方側端部(底部)に設けられた開口部と、この開口部を閉塞する栓体(プラグ)が備えられる。受液器本体の内周面には雌ねじが形成され、栓体の外周面には雄ねじが形成され、雄ねじを雌ねじにねじ込むことにより、栓体は受液器本体の開口部を通じて挿入され固定される。また、栓体はフィルタを有し、受液器本体を通流する冷媒を濾過できるように構成されている。
【0003】
栓体の外周面には、シール用Oリングが備えられている。これにより、栓体の挿入が完了した際に、栓体の外周面と受液器本体の内周面とで形成される隙間が封止され、冷媒の漏れが防止される。
【0004】
しかしながら、このような栓体のシール構造においては、栓体の装着時に、栓体と受液器本体との間にOリングを圧縮させた状態が維持されつつ栓体が回転しながら挿入されるため、Oリングが傷付くことやOリングに周方向で不均一な歪の発生が懸念される。このため、冷媒漏れにつながらないように、生産時に十分に配慮する必要がある。
【0005】
ここで、特許文献2に示されるような受液器が提案されている。栓体は、Oリングが備えられている点では特許文献1の栓体と同様である一方、雄ねじに代えて側面に固定用ネジ穴が設けられている。また、対応する受液器本体の側面にも支持用孔が設けられている。
【0006】
特許文献2に示される受液器では、栓体を受液器本体の長手方向に沿って回転させずに挿入し、挿入が終了したのち、固定用ネジを受液器本体の支持用孔を貫通して栓体の固定用ネジ穴にねじ込むことが可能となっている。このような構成によれば、栓体を受液器本体にねじ込む必要がなく(回転しつつ軸方向に移動する必要がない)、Oリングは受液器本体の軸方向に押し込まれるだけとなり、Oリングが傷つくなどの虞を減少できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-324962号公報
【文献】特開2000-97524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2の構成においては、栓体を受液器本体に挿入したのち、固定用ネジを受液器本体の支持用孔を貫通して栓体の固定用ネジ穴にねじ込む作業が必要である。また、栓体の固定を、受液器本体の長手方向に対し直交する方向に装着した固定用ネジによって行っており、冷媒の圧力を受けて栓体が移動して冷媒の漏れにつながるおそれもある。すなわち、固定用ネジによる栓体の固定工程において、受液器本体の支持用孔を貫通して栓体の固定用ネジ穴にねじ込むだけでなく、冷媒の漏れを防止するために固定用ネジを強固に固定する必要があり、生産性の向上に改善の余地があった。
【0009】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、受液器本体の長手方向の開口部が栓体によって閉塞される受液器において、冷媒漏れ防止のための気密性の確保と栓体取付けの生産性の向上とを図った受液器を提供すること、およびこれを備えた車両用空調装置用凝縮器を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を達成するために、本発明に係る受液器は、筒状に形成されて内部に冷媒を貯留する受液器本体2と、この受液器本体2の長手方向の一方側端部に設けられた一方側開口部2aに挿着されて該一方側開口部2aを閉塞する栓体4とを有する受液器1であって、
前記栓体4は、
前記受液器本体2の内部に収容されて前記冷媒が通過するフィルタ部41と、
前記受液器本体2の前記一方側開口部2aの内周面に螺合するねじ部42aを外周面に備えた固定部42と、
前記受液器本体2の内周面に当接されて前記フィルタ部41と前記受液器本体2との間から前記固定部42への冷媒漏れを防ぐシール部材43と、
前記フィルタ部41と前記固定部42との間に設けられ、前記フィルタ部41を、前記固定部42の回転に追従させないように、且つ、前記固定部42の軸方向の動きに追従させるように前記固定部42と連結する可動接続部44と、
を備え、
前記フィルタ部は、筒状のメッシュ部材41aと、前記メッシュ部材の軸方向の一端を閉塞する底壁41bと、を有し、
前記シール部材43は、前記底壁41bと前記受液器本体2の内周面との間に配され、
前記フィルタ部の底壁には、前記固定部42に設けられた環状壁42dが当接され、
前記環状壁42dで囲まれた前記フィルタ部41と前記固定部42との間には、前記フィルタ部41を、前記固定部42の回転に追従させないように、且つ、前記固定部42の軸方向の動きに追従させるように前記固定部42と連結する可動接続部44が設けられている、
ことを特徴としている。
【0011】
したがって、フィルタ部が一体化された栓体を受液器本体の一方側開口部に取り付ける場合には、フィルタ部を、シール部材と共に一方側開口部から挿入して受液器本体の軸方向に押し込んだ後に、固定部を回してねじ部を受液器本体の内周面に螺合させる。このような取付け工程において、フィルタ部と固定部との間に設けられる可動接続部は、フィルタ部を固定部の回転に追従させないようにし、且つ、固定部の軸方向の動きに追従させるようにしているので、固定部を受液器本体にねじ込む際には、受液器本体の内周面に当接されるシール部材を回転させずに栓体を受液器本体の開口部に挿入することが可能となる。
このため、シール部材を傷つけることがなく、また、シール部材に周方向で不均一な歪が生じることもないので、シール部材による高い気密性を確保することが可能となる。また、受液器本体の雌ねじと栓体の雄ねじとをねじ嵌合させることで栓体を固定するので、栓体の受液器への取付けの生産性を向上することができる。
【0012】
ここで、フィルタ部41は、射出成型品であり、シール部材43を支持する座面41eを有し、この座面41eを、フィルタ部41を成形する金型51,52,53のパーティションラインPからずれた位置に形成するとよい。
【0013】
このような構成においては、シール部材を支持する座面がパーティションラインからずれた位置に形成されるので、座面にバリ等が形成されることがなく、シール部材が傷つく不都合や、シール部材の形状が歪む等の不都合がなくなり、高いシール性を維持することが可能となる。
【0014】
また、本発明に係る受液器は、筒状に形成されて内部に冷媒を貯留する受液器本体2と、この受液器本体2の長手方向の一方側端部に設けられた一方側開口部2aに挿着されて該一方側開口部2aを閉塞する栓体4とを有する受液器1であって、
前記栓体4は、
前記受液器本体2の内部に収容されて前記冷媒が通過するフィルタ部41と、
前記受液器本体2の前記一方側開口部2aの内周面に螺合するねじ部42aを外周面に備えた固定部42と、
前記フィルタ部41と前記固定部42との間に配置され、前記フィルタ部41に対して固定された中間部60と、
前記中間部60と受液器本体2の内周面との間に配されて、前記中間部60と前記受液器本体2との間から前記固定部42への冷媒漏れを防ぐシール部材43と、を備え、
前記中間部60には、前記固定部42に設けられた環状壁42dが当接され、
前記環状壁42dで囲まれた前記中間部60と前記固定部42との間には、前記中間部60を、前記固定部42の回転に追従させないように、且つ、前記固定部42の軸方向の動きに追従させるように前記固定部42と連結する可動接続部44が設けられている、
ことを特徴としている。
【0015】
このような構成においては、受液器本体2の内周面に当接されるシール部材が、フィルタ部と中間部との間に設けられるので、シール部材に固定部の回転力が全く作用しなくなり、シール部材を傷つける不都合やシール部材に不均一な歪が発生する不都合をより確実に抑えることができ、高い気密性を確保することが可能となる。
【0016】
ここで、前記栓体4は、前記受液器本体2の内周面に当接されて前記中間部60と前記受液器本体2との間から前記固定部42への冷媒漏れを防ぐ他のシール部材61を更に備え、
前記他のシール部材61は、前記中間部60と前記固定部42との間に設けられるようにしてもよい。
このような構成においては、栓体の軸方向に2つのシール部材が設けるので、シール効果を更に高めることが可能となる。
【0017】
この場合においても、中間部60は、射出成型品であり、前記シール部材43を支持する座面60bと、前記他のシール部材61を支持する他の座面60cとを有し、前記座面60b及び前記他の座面60cを、前記中間部60を成形する金型71,72のパーティションラインPからずれた位置に形成するとよい。
中間部に設けられる2つのシール部材を支持する座面がパーティションラインからずれた位置に形成されるので、座面にバリ等が形成されることがなく、高いシール性を確保することが可能となる。
【0018】
また、前記シール部材43は、前記受液器本体2の内周面に形成された段部2eに当接して軸方向に圧縮されるようにしてもよい。
このような構成においては、シール部材を軸方向に圧縮することが可能となるので、より高いシール性を確保することが可能となる。
ここで、前記段部2eは、テーパ面で構成してもよい。
【0019】
以上の受液器は、振動する環境下で用いられても冷媒漏れを確実に抑える必用がある車両用空調装置の凝縮器100に用いて好適である。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明によれば、受液器本体の長手方向の開口部が栓体によって閉塞される受液器において、冷媒漏れ防止のための気密性の確保と栓体取付けの生産性の向上とを図った受液器を提供すること、およびこれを備えた車両用空調装置用凝縮器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、本発明に係る車両用空調装置用凝縮器の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の車両用空調装置用凝縮器に固定された受液器の全体構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、受液器に用いられる栓体を示す図であり、(a)は、栓体の軸線を含む平面で切断した断面図であり、(b)は、(a)に対して、栓体の軸線を中心として90度回転させた断面を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3の栓体の構成部品を分解した図であり、(a)は、
図3(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図3(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【
図5】
図5は、
図3の栓体を受液器本体の一方側開口部(下側開口部)に取り付ける前の状態を示す図であり、(a)は、
図3(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図3(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【
図6】
図6は、
図3の栓体を受液器本体の一方側開口部(下側開口部)に取り付けた状態を示す図であり、(a)は、
図3(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図3(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【
図7】
図7は、栓体のフィルタ部と可動接続部の係合アームを一体成型する製造工程を示す図であり、
図3(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(a)は、金型(上型、下型、スライド金型)を閉じる前にフィルタをキャビティに配置する状態を示す図、(b)は、(a)の状態から金型を閉じて樹脂を注入した状態を示す図、(c)は、樹脂注入後に金型を開いた状態を示す図、(d)は、金型を開いた後に製品をエジェクターピンで押し上げる状態を示す図である。
【
図8】
図8は、栓体のフィルタ部と可動接続部の固定側嵌合部とを一体成型する製造工程を示す図であり、
図3(b)と同じ平面で切断した断面図であり、(a)は、金型(上型、下型、スライド金型)を閉じる前にメッシュ部材をキャビティに配置する状態を示す図、(b)は、(a)の状態から金型を型締めして樹脂を注入した状態を示す図、(c)は、樹脂注入後に金型を開いた状態を示す図、(d)は、金型を開いた後に製品をイジェクタピンで押し上げる状態を示す図である。
【
図9】
図9は、可動接続部の係合アームを形成する置き中子と引抜き中子を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、栓体を、フィルタ部と、固定部と、これらの間に介在される中間部とによって構成した例を示す図であり、受液器本体の内周面に当接されるシール部材が、フィルタ部と中間部との間に設けられる場合を示し、(a)は、
図6(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図6(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【
図11】
図11は、栓体を、フィルタ部と、固定部と、これらの間に介在される中間部とによって構成した例を示す図であり、受液器本体の内周面に当接されるシール部材が、フィルタ部と中間部との間と、中間部と固定部との間に設けられる場合を示し、(a)は、
図6(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図6(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【
図12】
図12は、中間部を成型する製造工程を示す図であり、
図11(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(a)は、金型を型締めして樹脂を充填した状態を示す図、(b)は、コア金型を回転させて中間部から引き抜く状態を示す図、(c)は、型を開いた状態を示す図、(d)は、金型を開いた後に製品をイジェクタピンで押し上げる状態を示す図である。
【
図13】
図13は、フィルタ部と固定部からなる栓体のフィルタ部の外周に設けられるシール部材を、受液器本体2の内周面に形成された段部に当接して軸方向に圧縮ささせる例を示す図であり、(a)は、
図6(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図6(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【
図14】
図14は、フィルタ部と中間部と固定部からなる栓体のフィルタ部の外周に設けられるシール部材を、受液器本体2の内周面に形成された段部に当接して軸方向に圧縮ささせる例を示す図であり、(a)は、
図6(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図6(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【
図15】
図15は、
図14で示す構成において、さらに中継部の外周にシール部材を設けた構成例を示す図であり、(a)は、
図6(a)と同じ平面で切断した断面図であり、(b)は、
図6(b)と同じ平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面に基づき説明する。
図1において、本発明に係る受液器1を一体に備えた車両用空調装置用凝縮器100が示されている。この車両用空調装置用凝縮器100(以降、凝縮器100と示すこともある)は、車両用空調装置の冷凍サイクルに用いられるもので、アルミ合金により構成されており、例えば、車両のエンジンルームの走行風を受けやすいラジエータの前方側に立設させた状態で取り付けられる。この例において凝縮器100は、圧縮機から吐出された高温高圧のガス冷媒を走行風(車室外空気)と熱交換させることにより凝縮させて気液混合冷媒とする凝縮部Aと、凝縮部Aで凝縮された気液混合冷媒を受液器1で気液分離させた後に、液冷媒を過冷却する過冷却部Bと、を備えている。
【0023】
より具体的に凝縮器の構造を説明すると、凝縮器100は、一対のヘッダパイプ101,102と、これらのヘッダパイプ101,102間に架設された複数のチューブ103と、各チューブ間に固定されたコルゲートフィン104とを有して構成されている。
【0024】
それぞれのヘッダパイプ101,102は、押し出し成形にて、あるいは平板状の部材を巻いて略円筒状に形成され、長手方向の両端部に形成された開口部がキャップ部材101a,101b,102a,102bによって閉塞されている。また、一方のヘッダパイプ101には、内部空間を長手方向で複数(例えば3つの空間101s1、101s2、101s3)に仕切る仕切壁101c,101dが設けられ、他方のヘッダパイプ102には、内部空間を長手方向で複数(例えば2つの空間102s1、102s2)に仕切る仕切壁102cが設けられている。一方のヘッダパイプ101の仕切壁101dと他方のヘッダパイプ102cは、同じ高さ位置に配置され、チューブ103とコルゲートフィン104とで構成される熱交換部は、前記仕切壁101d,102cより上側の部分を気相を含む冷媒が通流する前記凝縮部Aとし、仕切壁101d,102cより下側の部分を液相冷媒が通流する前記過冷却部Bとしている。
【0025】
チューブ103は、押し出し成形にて扁平状に形成され、内部が長手方向に延びる複数の流路に区画され、一方の端部を一方のヘッダパイプ101に所定の間隔で挿入固定し、他方の端部を他方のヘッダパイプ102に所定の間隔で挿入固定している。また、一方のヘッダパイプ101の上端付近には、空間101s1に連通する冷媒流入口105が設けられ、他方ヘッダパイプ102の下端付近には、空間102s2に連通する冷媒流出口106が設けられている。
【0026】
一方のヘッダパイプ101のチューブ103が挿入固定される側とは反対側の外周面には、
図2にも示されるように、ヘッダパイプ101の長手方向に沿って受液器1がブラケット107、108を介してろう付け固定されている。一方のヘッダパイプ101の仕切壁101dに臨む上側の空間(仕切壁101cと仕切壁101dとの間の空間101S2)は受液器1の内部と連通して凝縮部Aから流入された冷媒を受液器1に送出し、また、一方のヘッダパイプ101の仕切壁101dに臨む下側の空間(仕切壁101dとキャップ101bとの間の空間101S3)は受液器1の内部と連通して受液器1から流出された冷媒を過冷却部Bへ送出している。
【0027】
受液器1は、主にアルミ合金により構成されるもので、円筒状に形成されて内部に冷媒を貯留する受液器本体2を備え、長手方向の上側端部に設けられた上側開口部(他方側開口部)2bは、キャップ部材3をろう付け固定することで閉塞されている。また、長手方向の下側端部に設けられた下側開口部(一方側開口部)2aは、後述する栓体4によって閉塞されている。そして、受液器本体2のキャップ部材3と栓体4との間には、乾燥剤5が充填されている。
【0028】
前記一方のヘッダパイプ101の前記仕切壁101dの上側近傍の側壁には、冷媒流出孔101eが形成され、この位置に対応する受液器本体2の側壁には、冷媒流入孔2cが形成され、これら冷媒流出孔101eと冷媒流入孔2cとは、ブラケット108に設けられた通孔108aを介して連通し、一方のヘッダパイプ101の空間101S2に流れ込む冷媒を受液器1の乾燥剤5が充填されている空間に送出するようにしている。
【0029】
また、一方のヘッダパイプ101の側壁の前記仕切壁101dより下側には、冷媒流入孔101fが形成され、この位置に対応する受液器本体2の側壁には、冷媒流出孔2dが形成され、これら冷媒流入孔101fと冷媒流出孔2dとは、ブラケット108に設けられた通孔108bを介して連通している。冷媒流出孔2dは、栓体4の後述するフィルタ部41の側部に臨む位置に設けられ、したがって、ヘッダパイプ101から受液器1に流入された冷媒は、乾燥剤5及びフィルタ部41を通過した後に過冷却部Bに通じる一方のヘッダパイプ101の空間101S3に流出するようになっている。
【0030】
栓体4は、
図3及び
図4にも示されるように、受液器本体2の内部に収容されて冷媒が通過するフィルタ部41と、受液器本体2の下側開口部(一方側開口部)2aを閉塞する固定部42と、フィルタ部41の外周面と受液器本体2の内周面とで形成される隙間を封止するOリングからなるシール部材43と、フィルタ部41と固定部42との間に介在された可動接続部44と、を有して構成されている。
【0031】
フィルタ部41は、筒状のメッシュ部材41aを樹脂でインサート成形することにより製造されるもので、メッシュ部材41aの軸方向の一端(下端)を閉塞するように底壁41bが形成され、他端(上端)が開口されようにメッシュ部材41aの開口縁に環状枠41cが設けられ、環状枠41cと底壁41bとは、軸方向に渡されたリブ41dにより結合され、周面にリブ41dが形成された部分を除いてメッシュ部材41aを表出させるようにしている。したがって、冷媒は、フィルタ部41の開口部分(環状枠41cの内側)を介してフィルタ部41の内側に流入され、底壁41bに衝突した後に流れが径方向に変更され、メッシュ部材41aを通過して径方向に流出される。
【0032】
固定部42は、円柱状に形成され、受液器本体2の下側開口部(一方側開口部)2aの内周面に形成された雌ねじ2fと螺合する雄ねじからなるねじ部42aを外周面に備え、ねじ部42aの終端には、受液器本体2の下側開口部2aの開口端(受液器本端2の下端)の周縁に当接するフランジ部42bが一体に形成されている。また、固定部42の底面には、固定部42を回転させる工具を挿着する工具嵌合孔42cが形成されている。さらに、固定部42のフランジ部42bとは反対側には、フィルタ部41の底壁41bに当接される環状壁42dが設けられている。
【0033】
そして、フィルタ部41の底壁41bであって、環状壁42dの先端が当接する下面周縁には、シール部材43を支持する段部からなる座面41eが形成され、この座面41e にシール部材43を支持させて受液器本体2の内周面に当接させ、フィルタ部41と受液器本体2との間(フィルタ41の外周面と受液器本体2の内周面とで形成される隙間)から固定部42への冷媒漏れを防ぐようにしている。
【0034】
可動接続部44は、固定部42の環状壁42dに囲まれた接続凹所45の底面45a中央に立設された係合突起46と、フィルタ部41の底壁41bから下方へ突出し、係合突起46を相対回転可能に係合する係合受部47と、を有して構成されている。
【0035】
係合突起46は、接続凹所45の底面45aから突出された円柱状の軸部46aと、この軸部46aの先端に拡径されるように一体に設けられた円錐台状の係合部46bと、から構成されている。
【0036】
係合受部47は、フィルタ部41の底壁部41bから下方へ延びる一対の係合アーム47a,47bを有している。この一対の係合アーム47a,47bは、前記係合突起46の軸部46aの径よりも大きい間隔であって、係合部46bの底面の径よりも小さい間隔で対峙し、互いに対峙する面には、係合部46bの形状に合わせた係合凹部48a,48bが形成されている。
【0037】
したがって、係合突起46の係合部46bをその先端から係合受部47の一対の係合アーム47a,47b間に押し入れると、係合アーム47a,47bが係合部46bの外周面によって弾性的に押し広げられ、係合部46bの全体が一対の係合アーム47a,47b間の終端まで押し込まれると、一対の係合アーム47a,47bが自身の復元力で元の形状に戻り(完全に形状が復元する態様だけでなく、弾性的に押し広げられつつもある程度復元した態様も含む)、係合部46bが係合凹部48a,48bに回転自在に係合された状態となる。
【0038】
また、このような係合突起46が係合受け部47に係合された状態で、フィルタ部41の底壁41bに固定部42の環状壁42dの先端が当接し、あるいは近傍に位置し、栓体4を受液器本体2に取り付ける際にシール部材43が座面41eから外れないようになっている。なお、シール部材43が座面41eから外れないようにするため、環状壁42dの外周の直径は、座面41eの直径よりも大きい。
【0039】
そして、フィルタ部41を固定部42に可動接続部44を介して回転可能に接続させた栓体4を受液器本体2の下側開口部2aに取り付けるには、
図5に示されるように、受液器本体2の下側開口部2aに栓体4をフィルタ部41から挿入して押し込む。すると、フィルタ部41が受液器本体2の開口端部内面に形成された雌ねじ2fを通過し、これに続く受液器本体2の内周面に沿って軸方向に挿入される。そして、固定部42のねじ部42aが受液器本体2の雌ねじ2fに差し掛かった後に、固定部42の底面に形成された工具嵌合孔42cに工具を差し入れて固定部42を回転させ、
図6に示されるように、栓体4をフランジ部42bが受液器本体2に当接するまでねじ込む。
【0040】
すると、その過程で、シール部材43は、受液器本体2の内壁とフィルタ部41との間に圧接された状態で軸方向に移動するが、可動接続部44は、フィルタ部41と固定部42を回転自在に連結しているので、シール部材43と受液器本体2の内周面との間の摩擦力、及び、シール部材43とフィルタ部41の底壁41bとの間の摩擦力により、フィルタ部41は受液器本体2に対して回転することが防止される。
【0041】
このように、可動接続部44は、フィルタ部41を、固定部42の回転に追従させないように、且つ、固定部42の軸方向の動きに追従させるように固定部42と連結しているので、シール部材43は受液器本体2の内壁に圧接した状態で強引に回転されることはなく、シール部材43の表面が傷つく不都合や、シール部材43に周方向で不均一な歪を発生させる不都合がなくなる。このため、シール部材43による高い気密性を維持することが可能となる。また、係合突起46の係合部46bの底面の径が互いに対峙する係合アーム47a、47bの間隔よりも大きいので、固定部42を回転させて栓体4を受液体本体2から取り外す際、係合突起46によってフィルタ部41を下側開口部2aに向けて移動することができ、受液体本体2にフィルタ部41が残留することを防止できる。
【0042】
ところで、フィルタ部41とこれと一体をなす可動接続部44の係合受部47(係合アーム47a,47b)は、例えば、
図7及び
図8に示されるような金型を用いて射出成形される。
ここで用いる金型は、フィルタ部41と係合アーム47a,47bの外形を形作る固定金型51と、フィルタ部41の内側形状を形作る可動金型52と、フィルタ部41の側面開口部を形作るスライド金型53と、一対の係合アーム47a,47bの互いに対峙する面を形成する置き中子54と引抜き中子55と、を備えている。
【0043】
固定金型51は、フィルタ部41を形成するフィルタ部形成用凹部51aとこのフィルタ部形成用凹部51aの中央に続いて形成された中子収容孔51bとが設けられている。また、フィルタ部形成用凹部51aには、金型同士が接触する部分(固定金型51と可動金型52及びスライド金型53とのパーティションラインP)から外れた部分(この例では、スライド金型53との当接面より図中下側の部分)にシール部材43を支持する座面41eを形成する座面形成用段部51cが形成されている。
【0044】
置き中子54と引き抜き中子55は、
図9にも示されるように、一対の引き抜き中子55が置き中子54を挟み込むようにスライド可能に取り付けられて構成され、固定金型51の中子収容孔51bに配置されている。
【0045】
置き中子54は、中子収容孔51bの所定箇所に固定されているもので、中子収容孔51bの内径に合わせて形成された円柱部54aと、この円柱部54aの中心軸を含み、且つ、円柱部54aの直径と同じ幅に形成されたガイド壁54bとを備え、このガイド壁54bを円柱部54aから離れるに従って徐々に肉薄に形成し(ガイド壁54bの両側面を軸心に対して傾斜させるように形成し)、ガイド壁54bの両側面に軸方向に延びる係止突条54cが設けられている。
【0046】
引き抜き中子55は、置き中子54のガイド壁54bの両側面にスライド自在に取り付けられるもので、ガイド壁54bと同程度の幅と高さに形成され、上端をガイド壁54bの上端と一致させるように置き中子54に組み付けた状態において、置き中子54の円柱部54aに当接し、且つ、中子収容孔51bの内周面に摺動可能に当接する半円柱部55aと、この半円柱部55aから斜め上方に延設されたスライド壁部55bとを備えている。スライド壁部55bのガイド壁54bと対峙する面には、前記係止突条54cとスライド可能に係合する係止溝55cが形成され、また、スライド壁部55bの背面には、前記係合アーム47a,47bの係合凹部48a,48bを形成する凹部形成用突起55dが設けられている。
【0047】
また、置き中子54の円柱部54aのガイド壁54bの両側には、イジェクタピン56を挿通させる通孔54dが形成されている。このイジェクタピン56は、この通孔54dを挿通させて一端が引き抜き中子55の半円柱部55aに当接され、他端が置き中子54の下方に圧縮ばね57を間に介在させて配置された押し上げ板58に接続されている。
【0048】
以上の構成において、フィルタ部41とこれと一体をなす係合アーム47a,47bを形成するには、
図7(a)、
図8(a)に示されるように、引き抜き中子55を置き中子54に組み付け、圧縮バネ57の付勢力によって引き抜き中子55の半円柱部55aを置き中子54の円柱部54aに当接させた状態とする。また、型締めする前に固定金型51のフィルタ部形成用凹部51aにメッシュ部材41aを配置する。
【0049】
そして、その状態で
図7(b)、
図8(b)に示すように、可動金型52を固定金型51に向かって移動させると共に、スライド金型53をフィルタ部形成用凹部51aに向かって移動させて型締めする。そして、これら金型によって囲まれたギャピティ部分に図示しないゲートから溶融樹脂を注入する。
【0050】
その後、樹脂が硬化した後に、
図7(c)、
図8(c)に示すように、可動金型52とスライド金型53を外す。これにより、メッシュ部材41aの内側とスライド金型53で覆われていない部分が樹脂によって一体化したフィルタ部41が形成される。
その後、押し上げ板58を押し上げてイジェクタピン56で引き抜き中子55を押し上げる。すると、一対の引き抜き中子55は、押し上げられるにつれて互いに接近するので、凹部形成用突起55dが係合アーム47a,47bの係合凹部48a,48bから外れると、フィルタ部41aを係合受部47(係合アーム47a,47b)と共に固定金型51から取り外すことが可能となる。
【0051】
また、フィルタ部41のシール部材43を取り付ける座面41eは、固定金型51のフィルタ部形成用凹部51aの座面形成用段部51cで形成され、フィルタ部41を成形する金型(固定金型51、可動金型52、スライド金型53)のパーティションラインPからずれた位置に形成されるので、座面41eにバリが発生する不都合がなく、座面の成形精度を確保することが可能となる。このため、シール部材(Oリング)43を座面に当接させた場合に、シール部材43を傷つけることがなく、シール性能を維持することが可能となる。
【0052】
以上の構成においては、フィルタ部41と固定部42とを可動接続部44で接続した例を示したが、
図10に示されるように、栓体4は、フィルタ部41と固定部42との間に中間部60を設け、この中間部60を、フィルタ部41に対して固定すると共に、固定部42に対して前記可動接続部44を介して連結し、受液器本体2に当接するシール部材43を、フィルタ部41と中間部60との間に設けるようにしてもよい。
【0053】
中間部60は、その上面(フィルタ部41の底壁41bと対峙する面)に雌ねじ60aが軸方向に形成され、この雌ねじ60aにフィルタ部41の底壁41bから突設された雄ねじ41fを羅合させることによってフィルタ部41に固定されている。
また、中間部60の下面(固定部42の接続凹所45と対峙する面)に接続凹所45に向けて突出する係合受部47(係合アーム47a,47b)が形成されている。
【0054】
そして、Oリング43は、中間部60の上面周縁(フィルタ部41の底壁41bと当接する面の周縁)に設けられた座面60bに支持され、中間部60と受液器本体2との間をシールしている。
尚、他の構成は、
図6で示す構成と同様であるので、同一箇所に同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
このような構成においては、フィルタ部41が中間部60を介して固定部42と連結され、しかも、固定部42をねじ込む際の回転力が全く作用しない中間部60とフィルタ部41との間にシール部材43が配置されているので、シール部材43を傷つける不都合や、シール部材43に周方向で不均一な歪が発生する不都合がなくなり、高いシール性を確保することが可能となる
【0056】
図11に
図10の変形例が示されている。この例では、受液器本体2の内周面に当接されて中間部60と受液器本体2との間から固定部42への冷媒漏れを防ぐ他のシール部材61が更に設けられ、この他のシール部材61は、中間部60の下面周縁(固定部42の環状壁42dと当接する面の周縁)に設けられた座面60cに支持され、中間部60と受液器本体2との間をシールしている。
【0057】
このような構成においては、固定部42をねじ込む際の回転力が全く作用しないシール部材43が中間部60とフィルタ部41との間に配置されることに加え、中間部60と固定部42との間にも受液器本体2の内周面に当接される他のシール部材61が配置されているので、シール性能を更に高めることが可能となる。
【0058】
この中間部60とこれと一体をなす可動接続部44の係合アーム47a,47bは、例えば、
図12に示されるような金型を用いて射出成形される。
ここで用いられる金型は、中間部60の下側半分と係合アーム47a,47bの外形を形作る固定金型71と、中間部60の上側半分を形作る中継金型72と、外周面にねじが刻まれたコア金型73と、一対の係合アーム47a,47bの互いに対峙する面を形成する置き中子54及び引抜き中子55と、を備えている。
【0059】
固定金型71には、中間部60の下半分を形成する中間部用凹部71aとこの中間部用凹部71aの中央に続いて形成された中子収容孔71bが設けられている。また、中間部用凹部71aには、中継金型72との当接面(固定金型71と中継金型72とのパーティションラインP)から外れた部分(この例では、当接面より図中下方の部分)に他のシール部材61を支持する座面60cを形成する座面形成用段部71cが形成されている。
【0060】
中継金型72には、中間部60の上半分を形成する中間部用凹部72aと、コア金型73を挿通させる通孔72bが設けられている。また、中間部用凹部72aには、固定金型71との当接面(固定金型71と中継金型72とのパーティションラインP)から外れた部分(この例では、当接面より図中上方の部分)にシール部材43を支持する座面60bを形成する座面形成用段部72cが形成されている。
【0061】
置き中子54と引き抜き中子55は、
図9と同様の構成であり、一対の引き抜き中子55が置き中子54にスライド可能に取り付けられ、中子収容孔71bに配置されている。
【0062】
以上の構成において、中間部60とこれと一体をなす係合アーム47a,47bを形成するには、
図12(a)に示されるように、引き抜き中子55を置き中子54に組み付け、圧縮バネ57の付勢力によって引き抜き中子55を置き中子54の円柱部54aに当接させた状態とする。
その状態で、中継金型72を固定金型71に付き合せると共に、コア金型73のねじが刻まれた部分を中間部60を形成するキャビティ部分に突出させた状態となるように型締めする。そして、これら金型によって囲まれたギャピティ部分に図示しないゲートから溶融樹脂を注入する。
【0063】
樹脂が硬化した後に、
図12(b)に示すように、コア金型73を回転させながら引き抜き、コア金型73のねじが刻まれた部分を中間部60から外す。これにより、中間部60に雌ねじ60aが成形される。その後、
図12(c)に示すように、中継金型72をコア金型73と共に外す。
その後、
図12(d)に示すように、押し上げ板58を押し上げてイジェクタピン56で引き抜き中子55を押し上げ、引き抜き中子55の凹部形成用突起55dが係合アーム47a,47bの係合凹部48a,48bから外れると、係合アーム47a,47bを中間部60と共に固定金型71から取り外すことが可能となる。
【0064】
また、中間部60のシール部材を取り付ける2つの座面60b、60cは、中間部60を成形する金型(固定金型71と中継金型72)のパーティションラインPからずらした位置に形成されるので、成形される座面にバリが発生する不都合はなく、成形精度を確保することが可能となる。このため、シール部材43,61を座面60b、60cに支持させた場合に、シール部材43,61を傷つけることがなく、高いシール性能を確保することが可能となる。
【0065】
図13に栓体4の他のシール構造が示されている。この例においては、シール部材43を受液器本体2の内周面に当接させる仕方が
図6とは異なる。即ち、フィルタ部41の底壁41bを径方向外側に突出させ、この突出させた部分の固定部42が当接する側とは反対側に座面41eを形成してシール部材43を支持させ、シール部材43を、受液器本体2の内周面に形成された段部2eに当接して軸方向に圧縮されるようにしている。
ここで、段部2eは、受液器本体2の内周面と垂直に形成するようにしてもよいが、この例では、下側開口部2aに向かって内周面が末広がりとなるテーパ面に形成されている。
【0066】
したがって、この例では、シール部材43を軸方向に圧縮することが可能となるので、栓体42の締め付け力を強くすることで高いシール性を確保することが可能となる。
【0067】
以上の軸方向に圧縮するシール構造は、中間部60を有する栓体4に利用してもよい。例えば、
図14に示すように、
図10の構成に対して、中間部60を径方向外側に突出させ(フィルタ部41の径を中間部60よりも小さくし)、この突出させた部分に座面60dを形成してシール部材43を支持させ、シール部材43を、受液器本体2の内周面に形成された段部2eに当接して軸方向に圧縮されるようにしてもよい。
【0068】
また、
図15に示すように、
図14の構成に対して、中間部60に他のシール部材61を支持する他の座面60cを有するようにしてもよい。シール部材43に加えて他のシール部材61が配置されているので、シール性を更に高めることが可能となる。
【0069】
こられの例でも、段部2eは、受液器本体2の内周面と垂直に形成するようにしても、図示されるように、テーパ面に形成するようにしてもよい。
これらの構成においても、
図13と同様に、栓体4の締め付け力を強くすることでシール性能を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1 受液器
2 受液器本体
2a 下側開口部(一方側開口部)
2b 上側開口部(他方側開口部)
2e 段部
4 栓体
41 フィルタ部
42 固定部
42a ねじ部
43 シール部材
44 可動接続部
41e,60b,60c 座面
51 固定金型
52 可動金型
53 スライド金型
54 置き中子
55 引抜き中子
60 中間部
100 凝縮器
P パーティションライン