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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ステータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/493 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
H02K3/493
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021042194
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142154
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】角田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅志
【審査官】稲葉 礼子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-126556(JP,U)
【文献】特開2020-096468(JP,A)
【文献】特開昭59-080129(JP,A)
【文献】特開2017-158379(JP,A)
【文献】実開昭58-105757(JP,U)
【文献】特開2022-068051(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットを形成する複数の歯部を有するステータコアと、
前記スロットに配された巻線と、
前記巻線とロータとの間に設けられた磁性楔と、を備えたステータにおいて、
前記磁性楔は、前記ロータに対向する対向面と、前記対向面に続いて前記ロータから離れる方向に延びる側面と、を有する凸部を備え、
前記側面と前記歯部とは離間し、
前記ロータの回転軸に垂直な断面において、前記対向面の幅は前記巻線の最内面の幅以下である
ことを特徴とするステータ。
【請求項2】
前記対向面の幅は前記巻線の最内面の幅の50%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記対向面は、前記ステータの内面の延長面に沿って位置する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記磁性楔は、30%以上80%以下の磁粉含有率を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項5】
前記磁性楔は、前記磁性楔の外面を覆い、絶縁性を有する発泡材を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項6】
前記歯部は、前記ロータの回転軸に沿う溝を有し、
前記磁性楔は、前記発泡材を外面に有する鍔部を備え、
前記鍔部は、前記溝に嵌っている
ことを特徴とする請求項5に記載のステータ。
【請求項7】
前記磁性楔と前記巻線とは、空隙を介して離間している
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項8】
前記磁性楔は、外面に、前記ロータに向かう方向に凹む凹部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のステータ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の前記ステータを備えた回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータにおいて、ティース間に挟まれたコイルのロータ側に磁性楔を備えた回転電機があった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-281709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の回転電機は、磁性楔の影響により、ステータの鉄損を悪化させたり、ステータの磁束を変動させたりすることがあった。
【0005】
本発明は、ステータの鉄損及びトルクリプルを抑制できるステータ及び回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係るステータ(例えば、実施形態のステータ10)は、スロット(例えば、実施形態のスロット11S)を形成する複数の歯部(例えば、実施形態の歯部110)を有するステータコア(例えば、実施形態のステータコア11)と、前記スロットに配された巻線(例えば、実施形態の巻線12)と、前記巻線とロータ(例えば、実施形態のロータ20)との間に設けられた磁性楔(例えば、実施形態の磁性楔13)と、を備えたステータにおいて、前記磁性楔は、前記ロータに対向する対向面(例えば、実施形態の対向面13A)と、前記対向面に続いて前記ロータから離れる方向に延びる側面(例えば、実施形態の側面13B)と、を有する凸部(例えば、実施形態の凸部131)を備え、前記側面と前記歯部とは離間している。
【0007】
この構成によれば、前記側面と前記歯部とは離間させた。よって、ステータの内面近傍における磁束密度の周方向での分布の変化をなだらかにできる。これにより、ステータの鉄損及びトルクリプルを抑制できる。
【0008】
(2)前記ロータの回転軸(例えば、実施形態の回転軸P)に垂直な断面において、前記対向面の幅(例えば、実施形態の幅X)は前記巻線の最内面(例えば、実施形態の最内面12A)の幅(例えば、実施形態の幅Y)以下であってよい。
【0009】
この構成によれば、前記対向面の幅は前記巻線の最内面の幅以下とした。よって、回転電機の主たる性能であるトルクに大きな影響を及ぼすことなく、鉄損を低減し、トルクリプルを低減できる。
【0010】
(3)前記対向面の幅は前記巻線の最内面の幅の50%以上であってよい。
【0011】
この構成によれば、前記対向面の幅は前記巻線の最内面の幅の50%以上とした。よって、回転電機の主たる性能であるトルクに大きな影響を及ぼすことなく、顕著に、鉄損を低減し、トルクリプルを低減できる。
【0012】
(4)前記対向面は、前記ステータの内面の延長面(例えば、実施形態の延長面M)に沿って位置してよい。
【0013】
この構成によれば、前記対向面は、前記ステータの内面の延長面に沿って位置させた。これにより、磁性楔の対向面を、ステータの内面の延長面に沿うように精度良く配置させることができる。よって、ステータの内面近傍における周方向での磁束密度の変化を抑制できる。
【0014】
(5)前記磁性楔は、30%以上80%以下の磁粉含有率を有してよい。
【0015】
この構成によれば、前記磁性楔は、30%以上80%以下の磁粉含有率を有した。これにより、顕著に、トルクを維持しつつ、鉄損を低減でき、トルクリプルを低減できる。
【0016】
(6)前記磁性楔は、前記磁性楔の外面(例えば、実施形態の外面13D)を覆い、絶縁性を有する発泡材(例えば、実施形態の発泡材133)を備えてよい。
【0017】
この構成によれば、前記磁性楔は、前記磁性楔の外面を覆い、絶縁性を有する発泡材を備えた。これにより、磁性楔と巻線との間の絶縁性を高めることができる。
【0018】
(7)前記歯部は、前記ロータの回転軸に沿う溝(例えば、実施形態の溝112)を有し、前記磁性楔は、前記発泡材を外面に有する鍔部(例えば、実施形態の鍔部132)を備え、前記鍔部は、前記溝に嵌っていてよい。
【0019】
この構成によれば、前記歯部は、前記ロータの回転軸に沿う溝を有した。これにより、歯部に対して磁性楔を確実に位置決めでき、固定できる。また、前記磁性楔は、前記発泡材を外面に有する鍔部(例えば、実施形態の鍔部132)を備え、前記鍔部は、前記溝に嵌っていることとした。これにより、発泡材の圧力を利用して、歯部の溝に対して磁性楔の鍔部を確実に嵌めることができる。
【0020】
(8)前記磁性楔と前記巻線とは、空隙を介して離間していてよい。
【0021】
この構成によれば、前記磁性楔と前記巻線とは、空隙を介して離間させた。これにより、磁性楔と巻線との間の絶縁性を高めることができる。
【0022】
(9)前記磁性楔は、外面に、前記ロータに向かう方向に凹む凹部(例えば、実施形態の凹部134)を備えてよい。
【0023】
この構成によれば、前記磁性楔は、外面に、前記ロータに向かう方向に凹む凹部を備えた。これにより、磁束のループが短絡することによるトルクの減少を抑制できる。
【0024】
(10)本発明に係る回転電機(例えば、実施形態の回転電機1)は、前記ステータを備えてよい。
【0025】
この構成によれば、回転電機は、前記ステータを備えた。これにより、ステータの鉄損及びトルクリプルを抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ステータの鉄損及びトルクリプルを抑制できるステータ及び回転電機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態に係る回転電機の断面図である。
図2図1のA部詳細図である。
図3】磁性楔の凸部における対向面の幅と、巻線の最内面の幅との関係の異なるケース(1)からケース(4)までと、鉄損、トルク及びトルクリプルとの関係を表す図である。
図4】ケース(1)、ケース(3)及びケース(4)についての鉄損分布と磁束密度分布を表す比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るステータ10及びそのステータ10を備えた回転電機1を説明する。なお、ロータ20の回転軸Pに直交する方向を半径方向といい、ロータ20の回転軸Pを中心として円を描く方向を周方向という場合がある。なお、回転軸Pから離れる方向を外方といい、回転軸Pに向かう方向を内方という場合がある。なお、外方の面を外面といい、内方の面を内面という場合がある。
【0029】
<回転電機>
図1は、本実施形態に係る回転電機1の断面図である。図2は、図1のA部詳細図である。なお、回転電機1の断面は、概ね、ロータの極数に応じた回転対称であるので、図1では、一部のみを図示し、他の部分の図示を省略する。
図1又は図2に示すように、回転電機1は、回転軸Pを中心として回転するロータ20と、回転軸Pを中心として環状にロータ20を覆うステータ10と、を備えている。回転電機1は、例えば、同期電動機である。回転電機1は、例えば、8極のロータ20と、巻線12を収めた48箇所のスロット11Sを有するステータ10とを備えている。
【0030】
<ロータ>
ロータ20は、回転軸Pを中心として回転する円柱状の構造体である。ロータ20は、極が異なる磁石を周方向に交互に配置したものである。ロータ20は、例えば、永久磁石を備えている。ロータ20の極数は、例えば、8極である。
【0031】
<ステータ>
ステータ10は、スロット11Sを形成する複数の歯部110を有するステータコア11と、スロット11Sに配された巻線12と、巻線12とロータ20との間に設けられた磁性楔13と、を備えている。
磁性楔13は、ロータ20に対向する対向面13Aと、対向面13Aに続いてロータ20から離れる方向に延びる側面13Bと、を有する凸部131を備えている。
ここで、側面13Bと歯部110とは離間している。このように、磁性楔13の凸部131の側面13Bと歯部110とは離間しているので、歯部110の内面近傍に磁束が集中しないようにできる。したがって、歯部110の内面近傍から磁性楔13の内面近傍までの間に生じる磁束密度の変化をなだらかにでき、ステータ10の内面近傍における磁束密度を、周方向で均一にできる。よって、ステータ10の鉄損及び磁束変動によるトルクリプルを抑制できる。
【0032】
<ステータコア>
ステータコア11は、例えば、電磁鋼板を積層して形成されている。ステータコア11は、ロータ20を収容する空洞を中央に有する円筒状である。ステータコア11は、外周部からロータ20の回転軸Pに向けて延びる歯部110を複数有している。ロータ20の回転軸Pに垂直な断面において、歯部110の断面は回転軸Pに沿って一様である。
ステータコア11は、歯部110とスロット11Sとを、ステータ10の周方向に沿って交互に設けている。ステータコア11は、例えば、48箇所の歯部110と、48箇所のスロット11Sを有している。
【0033】
歯部110は、ロータ20の回転軸Pに沿う溝112を有していてよい。溝112は、スロット11Sに開口するよう設けられている。溝112には、磁性楔13の両端部が嵌められて固定されている。磁性楔13が、後述の発泡材133を外面13Dに有する鍔部132を備えている場合、その鍔部132は、溝112に嵌っている。すなわち、溝112には、発泡材133を外面13Dに有する鍔部132が嵌っていてもよい。発泡材133を磁性楔13の少なくとも鍔部132の外面13Dに塗布した状態で、鍔部132を歯部110の溝112に挿入し、発泡材133を加熱すると、発泡材133が発泡して膨張し、鍔部132を内方に押し付ける力が発生する。そして、磁性楔13は、半径方向の位置を決められた状態で溝112に嵌って確実に固定される。
【0034】
<巻線>
巻線12は、スロット11Sを通るように配置されている。巻線12は、例えば、銅製の平角線である。巻線12が平角線である場合、巻線12は、平角線の断面における短辺を回転軸Pから離れる半径方向に沿わせて、長辺を周方向に沿わせた状態で、スロット11Sの中に、半径方向に重ねて束ねられている。
なお、巻線12と歯部110の壁面111との間には、絶縁シートが介在しており、ワニス等の絶縁材が充填されている。
【0035】
<磁性楔>
磁性楔13は、スロット11Sから巻線12が脱落することを防ぐため、また、ステータ10の内面近傍における磁束密度の周方向での分布を調節するため、巻線12とロータ20との間に設けられている。磁性楔13は、回転軸Pに沿って延びる棒状体である。磁性楔13は、スロット11Sの内方を塞ぐように、隣り合う歯部110同士に架け渡されている。
磁性楔13は、例えば、鉄粉のような磁性粉を含有する磁性材料によって形成されている。磁性楔13は、例えば、磁性粉を含有する樹脂を射出成型することにより製造してよい。磁性楔13は、例えば、アモルファス金属であってよい。
【0036】
磁性楔13は、30%以上80%以下の磁粉含有率を有することが好ましい。なお、磁粉含有率は、発泡材133を除く、磁性楔13を構成する成分全体の体積に対する磁性粉の体積の割合である。これにより、顕著に、トルクを維持しつつ、鉄損を低減でき、トルクリプルを低減できる。
【0037】
磁性楔13は、図2に示すように、断面がハット形状になっている。詳細には、磁性楔13は、ロータ20に対向する対向面13Aと、対向面13Aに続いてロータ20から離れる方向に延びる側面13Bと、を有する凸部131を備えている。磁性楔13は、凸部131を備えているので、歯部110との間に空隙を形成することができる。このため、歯部110の内面113近傍から磁性楔13の対向面13A近傍への磁束の伝達を抑制できる。よって、ステータ10の内面近傍における周方向での磁束密度の分布を均すことができる。
【0038】
対向面13Aは、ステータ10の内面113の延長面Mに沿って位置している。これにより、磁性楔13は、鍔部132の内面が歯部110の溝112の内面に接した状態で歯部110に固定しているので、対向面13Aを、ステータ10の内面113の延長面Mに沿うように精度良く配置させることができる。よって、ステータ10の内面近傍における周方向での磁束密度の変化を抑制できる。
【0039】
磁性楔13は、歯部110の壁面111に嵌る鍔部132を備えている。磁性楔13は、歯部110の壁面111に設けられた溝112に嵌っていてもよい。
【0040】
磁性楔13は、外面13Dに、ロータ20に向かう方向に凹む凹部134を備えている。これにより、凹部134に空隙を形成できる。そして、磁性楔13と歯部110とが接する部分(例えば、鍔部132と溝112とが接する部分)とその空隙との半径方向での位置をずらすことができる。そのため、磁束を、隣り合う歯部110の一方から、磁性楔13を介して、隣り合う歯部110の他方へ伝達し難くできる。よって、磁束のループが短絡することによるトルクの減少を抑制できる。
【0041】
磁性楔13は、磁性楔13の外面13Dを覆い、絶縁性を有する発泡材133を備えていてよい。発泡材133は、加熱すると発泡して膨張するものであってよく、時間の経過に伴い、発泡して膨張するものであってもよい。発泡材133は、液体の塗料であってよく、磁性楔13の外面13Dに貼付できるシート状のものであってもよい。これにより、磁性楔13と巻線12との間の絶縁性を高めることができる。また、磁性楔13の鍔部132の外面13Dに発泡材133を備えた状態で歯部110の溝112に挿入しておくと、発泡材133の膨張により、磁性楔13を溝112に対して確実に嵌めた状態で固定できる。
【0042】
磁性楔13と巻線12とは、空隙を介して離間していることが好ましい。これにより、磁性楔13と巻線12との間の絶縁性を高めることができる。
【0043】
磁性楔13の鍔部132と溝112との間には、周方向に隙間eを有していてよい。また、この隙間eには、発泡材133が充填されていてもよい。これにより、絶縁性を高めるとともに、磁束が歯部110から磁性楔13に短絡する面積を低減できる。よって、ステータ10の内面113近傍における磁束密度の周方向での分布を適切に均すことができる。
【0044】
(磁性楔の凸部と巻線の幅との関係)
次に、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xと巻線12の幅Yとの関係について説明する。
図3は、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xと、巻線12の最内面12Aの幅Yとの関係の異なるケース(1)からケース(4)までと、鉄損、トルク及びトルクリプルとの関係を表す図である。
図3に示すように、共通のロータ20を用いて、ステータ10の構造を変えたケース(1)からケース(4)までについて、鉄損、トルク及びトルクリプルを測るための数値解析及び実験を行った。なお、各ケースにおいて、磁性楔13の磁粉含有率を可変させた。
ケース(1)は、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xを巻線12の最内面12Aの幅Yの50%未満としたケースである。
ケース(2)は、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xを巻線12の最内面12Aの幅Yの50%以上90%未満としたケースである。
ケース(3)は、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xを巻線12の最内面12Aの幅Yの90%以上100%以下としたケースである。
ケース(4)は、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xを巻線12の最内面12Aの幅Yの100%超としたケースである。
数値解析及び実験の結果、図3に示すように、磁性楔13の磁粉含有率が30%から80%までの範囲で、好ましくは40%から70%の範囲で、更に好ましくは45%から65%の範囲で、顕著に、トルクを維持しつつ、鉄損を低減でき、トルクリプルを低減できることが確認された。
【0045】
また、ステータコア11及びロータ20の断面における鉄損及び磁束密度のそれぞれの分布について、数値解析結果を比較した。
図4は、ケース(1)、ケース(3)及びケース(4)についての鉄損分布と磁束密度分布を表す比較図である。
図4に示すように、ケース(3)は、ケース(1)に比べて、ロータ20の鉄損、特に、ロータ20の外面近傍における鉄損を低減できることが確認できた。また、ケース(3)は、ケース(4)に比べて、ステータコア11の鉄損、特に、ステータコア11の歯部110の内面近傍における鉄損を低減できることが確認できた。
また、ケース(3)は、ケース(1)に比べて、ロータ20の磁束変動を低減できることが確認できた。また、ケース(3)は、ケース(4)に比べて、ステータコア11の特に歯部110と磁性楔13との接続部分の磁束の集中を緩和し、磁束変動を低減できることが確認できた。
【0046】
ロータ20の回転軸Pに垂直な断面において、すなわち、図1から図4に示すように、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xは、巻線12の最内面12Aの幅Y以下であることが好ましい(ケース(1)、ケース(2)及びケース(3))。なお、最内面12Aは、巻線12のうち最も回転軸Pに近く、最もロータ20に近い内面を意味し、スロット11S内に複数の巻線12が重なって束ねられている場合、最も内方にある巻線12の内面を意味する。なお、最内面12Aの幅Yは、最も内方にある巻線12の周方向における最大寸法を意味し、巻線12が図に示すような平角線である場合、その平角線の断面における周方向に沿う辺(長辺)の寸法を意味する。磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xと、巻線12の最内面12Aの幅Yとの関係をこのようにすることで、図3に示すように、回転電機1の主たる性能であるトルクに大きな影響を及ぼすことなく、鉄損を低減し、トルクリプルを低減できる。
【0047】
また、ロータ20の回転軸Pに垂直な断面において、すなわち、図1から図4に示すように、磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xは、巻線12の最内面12Aの幅Yの50%以上であることがより好ましい(ケース(2)及びケース(3))。磁性楔13の凸部131における対向面13Aの幅Xと、巻線12の最内面12Aの幅Yとの関係をこのようにすることで、図3に示すように、回転電機1の主たる性能であるトルクに大きな影響を及ぼすことなく、鉄損を大きく低減し、トルクリプルを低減できる。
【0048】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0049】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 回転電機
10 ステータ
11 ステータコア
11S スロット
12 巻線
12A 最内面
13 磁性楔
13A 対向面
13B 側面
13D 外面
20 ロータ
110 歯部
111 壁面
112 溝
113 内面
131 凸部
132 鍔部
133 発泡材
134 凹部
M 延長面
P 回転軸
X (対向面の)幅
Y (最内面の)幅
図1
図2
図3
図4