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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20241206BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241206BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C08J5/18 CES
B32B27/00 L
B32B27/32 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021048869
(22)【出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022147569
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 彰宏
(72)【発明者】
【氏名】津金 靖仁
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093551(JP,A)
【文献】特開2018-166181(JP,A)
【文献】特開平07-009625(JP,A)
【文献】特開2019-001139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
B32B 27/00
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(A-a)~(A-c)を満たす4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(A)60~95質量%と、
下記要件(B-a)~(B-c)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(B)5~40質量%((共)重合体(A)および共重合体(B)の合計量を100質量%とする。)と
を含む組成物(X)からなる層を有し、
JIS K7136に準拠し、30μm厚さのフィルムを用いて測定した全光線透過率が、80%未満である、単層または多層の離型フィルム。
(A-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が90~100モル%であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(AQ)の含有率が0~10モル%(構成単位(P)および構成単位(AQ)の含有率の合計を100モル%とする。)である。
(A-b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
(A-c)DSCで測定した融点(Tm)が200~250℃の範囲にある。
(B-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が65~72モル%であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く。)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位(BQ)の含有率が28~35モル%(構成単位(P)および構成単位(BQ)の含有率の合計を100モル%とする。)である。
(B-b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
(B-c)DSCで測定した融点(Tm)が確認されない、または、100~199℃の範囲にある。
【請求項2】
23℃から180℃の線膨張係数が、MD方向で1.0~1.7×10-4/℃であり、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との比(MD/TD)が、1.0~2.5である、請求項1に記載の離型フィルム。
【請求項3】
前記構成単位(BQ)が、エチレンおよび炭素原子数3~4のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位である、請求項1または2に記載の離型フィルム。
【請求項4】
さらに着色成分(C)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【請求項5】
繊維強化樹脂成形用である、請求項1~4のいずれか1項に記載の離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む層を有する単層または多層の離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
4-メチル-1-ペンテンを主たる構成モノマーとする4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、耐熱性、離型性、耐薬品性に優れているため各種用途に広く使用されている。例えば、該共重合体を含むフィルムは良好な離型性などの特長を活かして繊維強化樹脂成形用離型フィルム、プリント配線基板製造用離型フィルム、複合材料成形用離型フィルム、合成皮革製造用離型紙など、各種離型フィルムに使用されている(特許文献1参照)。
【0003】
例えば、フレキシブルプリント基板を製造する際には、回路パターンが形成された基板上にカバーレイフィルムを積層する工程、および、得られた積層体を熱プレス板で挟んで、加熱および加圧する熱プレス成形工程が通常は設けられている。
【0004】
前記熱プレス成形工程の際には、カバーレイフィルムと熱プレス板とが接着することを避けるために、その中間に、通常はポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリフッ化ビニルなどからなるフッ素系フィルムや、ポリメチルペンテンフィルム、ポリブチレンテレフタレート、シンジオタクティックポリスチレンなどからなる離型フィルムが用いられている(特許文献2参照)。
【0005】
離型フィルムとしては、耐熱性および加熱加圧後の離型性に加えて、基板回路への追従性に優れていることから、ポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂からなるフィルムを使用することが提案されている。ポリ-4-メチル-1-ペンテンは、融点が235℃ と高いため、温度180℃ 程度で行われる銅貼積層板の成形においても、優れた耐熱性および離型性を有している(特許文献3参照)。
【0006】
特許文献4には、優れた耐熱性と耐汚染性とを有する離型フィルムが開示されている。 また一方、4-メチル-1-ペンテン系重合体とオレフィン系エラストマーとからなるプロテクトフィルム(特許文献5)、4-メチルペンテン系重合体とオレフィン系エラストマーとの組成物から形成されるフィルム(特許文献6)、合成皮革製造用の離型紙(特許文献7)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-027745号公報
【文献】特開2005-350601号公報
【文献】特開2014-098138号公報
【文献】特開2016-098257号公報
【文献】国際公開第2015/012274号
【文献】国際公開第2013/099876号
【文献】特開2017-074775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、繊維強化樹脂の成形は、通常、金型と繊維強化樹脂との間に離型フィルムを挟み、加熱および加圧をして行い、その後、得られた成形体を金型から離型する。その際、離型フィルムには、剥離時に成形体へのフィルム残りがないこと、成形体に離型フィルムが付着した際に、離型フィルムの視認性が良いことなどが要求されるが、従来の離型フィルムではこの要求に十分に応えられなかった。また、従来の4-メチル-1-ペンテン系樹脂組成物は成形体への追従性が良くなく、成形体の微細加工時に離型フィルムとして使用すると、凹凸などに追従できず目的の成形体に加工することが困難だった。
【0009】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、従来の離型フィルムと同等の耐熱性、離型性を持ち、成形体の微細加工が可能で、剥離時に成形体へのフィルム残りがなく、成形体に付着した際に視認性が良い離型フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的な手段の一例は、以下の通りである。
[1] 下記要件(A-a)~(A-c)を満たす4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(A)60~95質量%と、
下記要件(B-a)~(B-c)を満たす4-メチル-1-ペンテン共重合体(B)5~40質量%((共)重合体(A)および共重合体(B)の合計量を100質量%とする。)と
を含む組成物(X)からなる層を有し、
JIS K7136に準拠し、30μm厚さのフィルムを用いて測定した全光線透過率が、80%未満である、単層または多層の離型フィルム。
(A-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が90~100モル%であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(AQ)の含有率が0~10モル%(構成単位(P)および構成単位(AQ)の含有率の合計を100モル%とする。)である。
(A-b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
(A-c)DSCで測定した融点(Tm)が200~250℃の範囲にある。
(B-a)4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が65~97モル%であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く。)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位(BQ)の含有率が3~35モル%(構成単位(P)および構成単位(BQ)の含有率の合計を100モル%とする。)である。
(B-b)135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
(B-c)DSCで測定した融点(Tm)が確認されない、または、100~199℃の範囲にある。
[2] 23℃から180℃の線膨張係数が、MD方向で1.0~1.7×10-4/℃であり、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との比(MD/TD)が、1.0~2.5である、[1]に記載の離型フィルム。
[3] 前記構成単位(BQ)が、エチレンおよび炭素原子数3~4のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種に由来する構成単位である、[1]または[2]に記載の離型フィルム。
[4] さらに着色成分(C)を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の離型フィルム。
[5] 繊維強化樹脂成形用である、[1]~[4]のいずれかに記載の離型フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明の離型フィルムは、従来の離型フィルムと同等の耐熱性、離型性を持ち、成形体の微細加工が可能で、剥離時に成形体へのフィルム残りがなく、成形体に付着した際に視認性が良い。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪離型フィルム≫
本発明に係る離型フィルムは、後述の4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(A)(以下、単に「重合体(A)」ともいう。)と、4-メチル-1-ペンテン共重合体(B)(以下、単に「共重合体(B)」ともいう。)とを含む組成物(X)からなる層を有する。
なお、本発明において、「(共)重合体」とは、単独重合体および共重合体の両方の概念を含む用語である。
【0013】
〔組成物(X)〕
組成物(X)は、重合体(A)と共重合体(B)とを含む組成物である。
以下、重合体(A)及び共重合体(B)のそれぞれについて説明する。
【0014】
<重合体(A)>
重合体(A)は、以下の要件(A-a)~(A-c)を満たす。組成物(X)に含まれる重合体(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0015】
要件(A-a):4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が90~100モル%であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く。)から導かれる構成単位(AQ)の含有率が0~10モル%(構成単位(P)および構成単位(AQ)の含有率の合計を100モル%とする。)である。
【0016】
重合体(A)における構成単位(P)の含有率は90~100モル%であり、好ましくは90~96モル%であり、構成単位(AQ)の含有率(構成単位(AQ)が2種以上である場合は当該2種以上の合計の含有率)は0~10モル%であり、好ましくは4~10モル%である(ただし、構成単位(P)および構成単位(AQ)の含有率の合計を100モル%とする。)。
【0017】
重合体(A)における構成単位(P)の含有率が90モル%以上であることにより、耐熱性に優れ、ハンドリングに適した弾性率の離型フィルムが得られるという利点がある。
構成単位(AQ)を形成する、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセンおよび1-エイコセンが挙げられる。エチレンおよび前記α-オレフィンは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0018】
構成単位(AQ)を形成するエチレンおよびα-オレフィンとしては、組成物(X)の層に適度な弾性率と柔軟性、可とう性を付与するという観点から、炭素数8以上18以下のオレフィン、例えば、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセンおよび1-オクタデセンが好ましい。
【0019】
重合体(A)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(P)および構成単位(AQ)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位の含有率は、例えば0~10モル%である(ただし、構成単位(P)および構成単位(AQ)の含有率の合計を100モル%とする。)。
【0020】
前記その他の構成単位を形成するモノマーの具体例等は、後述する共重合体(B)に含まれ得るその他の構成単位を形成するモノマーの具体例等と同様である。
なお、重合体(A)における各構成単位の含有率(モル%)の値は、後述する共重合体(B)と同様に、13C-NMRによる測定法によって測定した値である。
【0021】
要件(A-b):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
重合体(A)の、デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]は0.5~5.0dl/gであり、好ましくは1.0~4.0dl/g、より好ましくは1.0~3.5dl/g、さらに好ましくは1.0~3.0dl/gである。重合体(A)の極限粘度[η]が前記範囲内であると、低分子量体が少ないため、組成物(X)からなる層のべたつきが少なくなり、また、押出ラミネート法による積層体の成形が可能となる。
【0022】
重合体(A)の極限粘度[η]は、ウベローデ粘度計を用い、下記の方法により測定される値である。
20mgの重合体(A)をデカリン25mlに溶解させることでデカリン溶液を得た後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液を、デカリンを5ml加えて希釈した後、前記と同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)とする(下記の式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0023】
要件(A-c):DSCで測定した融点(Tm)が200~250℃の範囲にある。
重合体(A)の融点(Tm)は200~250℃であり、好ましくは200~245℃、より好ましくは200~240℃の範囲にある。Tmが前記範囲にある重合体(A)を用いることにより、Tmが前記範囲よりも高い場合に比べて適度な弾性率を有し、Tmが前記範囲よりも低い場合に比べて耐熱性が良好である離型フィルムを得ることができる。
【0024】
重合体(A)のTmは、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)を用い、JIS K7121に準拠して下記の方法により測定される値である。
約5mgの重合体(A)を、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計(DSC220C型)の測定用アルミニウムパン中に室温で密封し、室温から10℃/分の速度で280℃まで加熱する。重合体(A)を完全融解させるために、280℃で5分間保持し、次いで、10℃/分の速度で-50℃まで冷却する。-50℃で5分間保持した後、10℃/分の速度で280℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でピークが観測される温度を重合体の融点(Tm)とする。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用する。
重合体(A)は、前記要件(A-a)~(A-c)に加えて、好ましくは下記のいずれかの要件を満たす。
【0025】
要件(A-d):重合体(A)のJIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定される密度は、好ましくは820~850kg/m3、より好ましくは825~840kg/m3、特に好ましくは830~835kg/m3である。密度が前記範囲であることにより、前記範囲よりも小さい場合に比べて組成物(X)からなる層の機械的な強度が高く、前記範囲よりも大きい場合に比べて組成物(X)からなる層の衝撃強度が高くなる傾向がある。
【0026】
要件(A-e):重合体(A)の、ASTM D1238に準拠して260℃、5.0kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、後述する共重合体(B)と押出機内等で混ざりやすく、共押出できる範囲であることが好ましく、好ましくは0.5~200g/10min、より好ましくは1~150g/10min、特に好ましくは1~100g/10minである。MFRが前記範囲であると、組成物(X)を比較的均一な膜厚に押出成形しやすい。
【0027】
要件(A-f):重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0~7.0、より好ましくは2.0~6.0である。なお、重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、実施例に記載の方法により算出される値である。
【0028】
要件(A-g):重合体(A)は、破れにくい組成物(X)からなる層を得る観点から、結晶性の高い重合体であることが好ましい。結晶性の高い重合体としては、アイソタクチック構造を有する重合体、シンジオタクチック構造を有する重合体のいずれであってもよいが、特にアイソタクチック構造を有する重合体が好ましく、また入手も容易である。さらに、重合体(A)の立体規則性は特に制限されないが、組成物(X)をフィルム状に成形でき、目的とする使用方法に耐える強度を有するフィルムを得ることができる立体規則性を有していることが好ましい。
【0029】
(重合体(A)の製造方法)
重合体(A)は、オレフィン類を重合して製造してもよく、高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体を、熱分解して製造してもよい。また重合体(A)は、溶媒に対する溶解度の差で分別する溶媒分別、あるいは沸点の差で分取する分子蒸留などの方法で精製されていてもよい。
【0030】
重合体(A)を重合反応により製造する場合、例えば4-メチル-1-ペンテンおよび必要に応じて共重合させるα-オレフィンの仕込量、重合触媒の種類、重合温度、重合時の水素添加量等を調整することで、融点、立体規則性および分子量等を制御できる。重合体(A)を重合反応により製造する方法は、公知の方法であってもよい。重合体(A)は、例えば、チーグラナッタ触媒、メタロセン系触媒等の公知の触媒を用いた方法により製造され、好ましくはメタロセン系触媒を用いて製造され得る。一方、重合体(A)を、より高分子量の4-メチル-1-ペンテン系重合体の熱分解により製造する場合には、熱分解の温度や時間を制御することで、分子量を所望の値に制御できる。
【0031】
重合体(A)は、前述のように製造したもの以外にも、例えば三井化学(株)製TPX等の市販の重合体であってもよい。
【0032】
<共重合体(B)>
共重合体(B)は、以下の要件(B-a)~(B-c)を満たす。組成物(X)に含まれる共重合体(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0033】
要件(B-a):4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(P)の含有率が65~97モル%であり、エチレンおよび炭素原子数3~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く。)から選ばれる少なくとも1種から導かれる構成単位(BQ)の含有率が3~35モル%(構成単位(P)および構成単位(BQ)の含有率の合計を100モル%とする。)である。
【0034】
構成単位(P)の含有率は、好ましくは65~95モル%、より好ましくは65~90モル%である。
構成単位(P)の含有率が前記範囲であることにより、フィルムの離型性と耐熱性に優れる。
【0035】
構成単位(BQ)の含有率(構成単位(BQ)が2種以上である場合は当該2種以上の合計の含有率)は、好ましくは5~35モル%、より好ましくは10~35モル%である。
共重合体(B)における構成単位(BQ)の含有率が前記範囲にあることにより、得られるフィルムの凹凸追従性が向上する。
【0036】
構成単位(BQ)を形成する、エチレンおよび4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数3~20のα-オレフィンとしては、得られるフィルムの引張破断伸びの異方性および引裂強さの異方性をより低減することができ、さらに耐衝撃性も向上する観点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセンが好ましく、エチレンおよび炭素原子数3~4のα-オレフィン、すなわちプロピレン、1-ブテンが更に好ましく、プロピレンが特に好ましい。
【0037】
構成単位(BQ)を形成するエチレンおよびα-オレフィンとしては、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
構成単位(BQ)は、前記重合体(A)が構成単位(AQ)を含む場合、構成単位(AQ)と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0038】
共重合体(B)は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位(P)および構成単位(BQ)以外のその他の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成単位の含有率は、例えば0~10モル%である(ただし、構成単位(P)および構成単位(BQ)の含有率の合計を100モル%とする。)。
【0039】
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン等が挙げられる。
【0040】
環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、非共役ポリエン、官能ビニル化合物、水酸基含有オレフィンおよびハロゲン化オレフィンとしては、例えば、特開2013-169685号公報の段落0035~0041に記載の化合物を用いることができる。
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、ビニルシクロヘキサン、スチレンが特に好ましい。
【0041】
共重合体(B)に、前記その他の構成単位が含まれる場合、前記その他の構成単位は、1種のみ含まれていてもよく、また、2種以上含まれていてもよい。
共重合体(B)における各構成単位の含有率(モル%)の値は、下記の条件で13C-NMRによる測定法により測定した場合のものである。
【0042】
~条件~
測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核:13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:1万回以上
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度:55mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0043】
要件(B-b):135℃デカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5~5.0dl/gである。
【0044】
共重合体(B)の、デカリン溶媒中、135℃で測定される極限粘度[η]は、0.5~5.0dl/gであり、好ましくは0.5~4.0dl/g、より好ましくは0.5~3.5dl/g、特に好ましくは1.0~3.5dl/gである。
共重合体(B)の極限粘度[η]は、前記重合体(A)の極限粘度[η]と同様の方法で測定される値である。
【0045】
要件(B-c):DSCで測定した融点(Tm)が確認されない、または、100~199℃の範囲にある。
【0046】
共重合体(B)の融点(Tm)は、DSCで測定した融点(Tm)が確認されない、または、100~199℃であり、好ましくはDSCで測定した融点(Tm)が確認されない、または、110~180℃、より好ましくはDSCで測定した融点(Tm)が確認されない、または、110~160℃、特に好ましくはDSCで測定した融点(Tm)が確認されない、または、125~150℃の範囲にある。
【0047】
共重合体(B)のTmは、前記重合体(A)のTmと同様の方法により測定される値である。
共重合体(B)は前記要件(B-a)~(B-c)に加えて、好ましくは下記のいずれかの要件を満たす。
【0048】
要件(B-d):共重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、組成物(X)からなる層のべたつきおよび外観の観点から、好ましくは1.0~3.5、より好ましくは1.1~3.0である。
共重合体(B)のMw/Mnは、実施例に記載の方法により算出される値である。
【0049】
要件(B-e):共重合体(B)のJIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定される密度は、ハンドリング性の観点から、好ましくは825~860kg/m3、より好ましくは830~860kg/m3、特に好ましくは830~850kg/m3である。
【0050】
要件(B-f):共重合体(B)の、ASTM D1238に準拠して230℃で2.16kgの荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、組成物(X)の成形時の流動性の観点から、好ましくは0.1~100g/10min、より好ましくは0.5~50g/10min、特に好ましくは0.5~30g/10minである。
【0051】
(共重合体(B)の製造方法)
共重合体(B)は、従来知られているメタロセン触媒系により、例えば、国際公開第2005/121192号、国際公開第2011/055803号、国際公開第2014/050817等に記載された方法により合成することができる。
【0052】
<組成物(X)>
組成物(X)において、重合体(A)および共重合体(B)の合計100質量%に対する重合体(A)の含有量は、60~95質量%であり、好ましくは70~90質量%、さらに好ましくは75~90質量%である。共重合体(B)の含有量は、5~40質量%であり、好ましくは10~30質量%、さらに好ましくは10~25質量%である。
【0053】
前記重合体(A)の含有量が前記範囲にあることにより、前記範囲よりも少ない場合に比べて離型性と耐熱性に優れ、前記範囲よりも多い場合に比べて、凹凸追従性に優れるフィルムが得られる。
【0054】
重合体(A)に対して共重合体(B)をブレンドすることで、離型フィルムに柔軟性を付与することができ、かつ後述する線膨張係数の比(MD/TD)のバランスを良好にすることができる。
【0055】
重合体(A)に対して共重合体(B)の含有量が多くなりすぎると、線膨張係数の比(MD/TD)のバランスは良くなるが、離型フィルムを使用して例えば炭素繊維複合材(CFRP)を成形した場合、離型フィルムが炭素繊維に入り込み、剥がすときにフィルムが切れる問題が生じる。
【0056】
組成物(X)は、JIS K7196に準拠して測定したTMA軟化温度が200℃以上(例えば200~240℃)であることが、耐熱性の観点から好ましい。TMA軟化温度は、たとえば共重合体(B)の含有量を減らしたり、重合体(A)における構成単位(AQ)の含有率を減らしたりすることにより高くすることができる。
【0057】
組成物(X)は、重合体(A)と共重合体(B)とを前記割合で混合することによって得られるが、例えばオレフィン類の重合反応により組成物(X)を得てもよい。
組成物(X)を重合体(A)と共重合体(B)との混合により得る場合、混合方法としては、特に限定されないが、例えば、二軸押出機でコンパウンド、ペレット同士をドライブレンド等することによって混合する方法等が挙げられる。
【0058】
組成物(X)は、本発明の目的を損なわない範囲内において、さらに例えば、耐候安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、核剤、滑剤、顔料、染料、老化防止剤、塩酸吸収剤、無機又は有機の充填剤、有機系又は無機系の発泡剤、架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、難燃剤等の各種添加剤や、重合体(A)および共重合体(B)以外の樹脂を含有していてもよい。組成物(X)における、重合体(A)および共重合体(B)以外の成分の含有量は、重合体(A)および共重合体(B)の合計100質量部に対して好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0059】
〔離型フィルム〕
本発明において「フィルム」とは、便宜上の名称であって、「フィルム」とは平面状の成形物の総称であり、これにはシート、膜(メンブレン)、テープなども含む概念である。
【0060】
組成物(X)は、押出キャスト成形法、押出ラミ成形法、カレンダー成形法、インフレーション成形、ロール成形等の各種成形法により、目的とする成形体、例えばフィルム、シート等に加工することができる。また、前述の成形加工方法により得た成形体を、さらに一軸延伸あるいは二軸延伸して得たものであることも好ましい。
【0061】
本発明の離型フィルムは、JIS K7136に準拠し、30μm厚さのフィルムを用いて測定した全光線透過率が80%未満であり、好ましくは79%以下、より好ましくは78%以下である。全光線透過率が前記範囲であることにより、本発明の離型フィルムは視認性が良好になり、本発明の離型フィルムが成形体に付着した際に、付着した離型フィルムを視覚により容易に認識することができる。離型フィルムの透過率が高く、視認性が低い場合は、付着した離型フィルムを認識することが困難になり、フィルムの剥がし残りが生じるおそれがある。
【0062】
本発明の離型フィルムは、前記のような視認性を得るために、着色剤等の着色成分(C)を含むことができる。着色成分(C)は、前記組成物(X)中に含まれていてもよい。本発明の離型フィルムにおける着色成分(C)の含有量は、前記重合体(A)と共重合体(B)との合計を100質量部としたとき、好ましくは4質量部以上、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは6質量部以上である。
【0063】
前記着色成分(C)としては、例えば、有機又は無機の顔料を、単独で又は2種類以上混合して用いることができる。顔料のなかでは、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。以下に、有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。また、着色剤としては、本発明の効果を損なわない範囲内で染料を含有させることができる。
【0064】
青色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー1、1:2、9、14、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17、19、25、27、28、29、33、35、36、56、56:1、60、61、61:1、62、63、66、67、68、71、72、73、74、75、76、78、79等を挙げることができる。白色顔料としては、例えばC.I.ピグメントホワイト 6、18、21を挙げることができる。緑色顔料としては、例えばC.I.ピグメントグリーン1、2、4、7、8、10、13、14、15、17、18、19、26、36、45、48、50、51、54、55、58、59、62、63等を挙げることができる。無機顔料としては、硫酸バリウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、酸化チタン、四酸化鉄などの金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等を挙げることができる。
【0065】
本発明の離型フィルムに視認性を付与する方法としては、着色成分(C)を含有させる方法以外に、例えばエンボス加工等を施す方法などが挙げられる。
【0066】
本発明の離型フィルムは、23℃から180℃の線膨張係数が、MD方向で1.0~1.7×10-4/℃であることが好ましく、1.04~1.6×10-4/℃であることがより好ましく、1.05~1.6×10-4/℃であることがさらに好ましい。また、本発明の離型フィルムは、MD方向の線膨張係数とTD方向の線膨張係数との比(MD/TD)が、1.0~2.5であることが好ましく、1.1~2.2であることがより好ましく、1.2~2.0であることがさらに好ましい。
【0067】
本発明の離型フィルムが、線膨張係数に関する前記要件を満たすと、炭素繊維複合材(CFRP)を成形する際の凹凸追従性の観点から好ましい。
【0068】
<積層フィルム>
また、本発明の離型フィルムは、前述した組成物(X)から得られる単層フィルムのほか、最表面層の少なくとも一層が組成物(X)からなる積層フィルムもまた好ましい態様である。
【0069】
積層フィルムの層構成として、例えば、A層(表面層)、B層(接着層)、C層(基材層)、B'層(接着層)およびA'層(表面層)からなる5層構造を有するフィルムが挙げられ、この場合、A層(表面層)およびA'層(表面層)が、組成物(X)からなる層であることが好ましい。
【0070】
基材層を構成する樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、プロピレンの単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、ブテンの単独重合体、エチレン・ブテン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・α-オレィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共
重合体、環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、これらの樹脂を不飽和カルボン酸やその誘導体によりグラフト変性した樹脂、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド46ポリアミドMXD6、ポリアミド6T、ポリアミド6I、ポリアミド9T等のポリアミ
ド樹脂、ポリエチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリウレタン、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、およびこれらの部分イオン架橋物が挙げられる。
【0071】
基材層を構成する樹脂としては、前記の樹脂を1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
接着層としては、例えば、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物による変性ポリオレフィン樹脂、より具体的には変性ポリ4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂が挙げられる。
【0072】
前記積層フィルムを得る方法については特に制限されないが、あらかじめ押出キャスト成形またはインフレーション成形にて得られた表面層フィルム上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の公知の積層法により積層する方法や、複数のフィルムを独立して成形した後、各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、複数の成分を多層の押出機に供して成形する共押出成形が好ましい。
【0073】
本発明の離型フィルムの厚みは特に限定されないが、通常500μm以下であり、好ましくは10~500μm、より好ましくは20~250μm、さらに好ましくは20~100μmである。
【0074】
〔用途〕
本発明の離型フィルムは、様々な用途に用いうるが、特に炭素繊維複合材(CFRP)等の繊維強化樹脂の成形用離型フィルムとして好適に用いることができる。本発明の離型フィルムを繊維強化樹脂の成形用離型フィルムとして用いると、従来の離型フィルムと同等の耐熱性、離型性を持ちながら、繊維強化樹脂成形体の微細加工が可能であり、剥離時に成形体へのフィルム残りがなく、離型フィルムが成形体に付着したときに、視認性が良く、付着した離型フィルムを容易に認識することができる。
【実施例
【0075】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例において使用した材料を以下に示す。
【0076】
[4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(A)]
重合体(A-1)の製造
国際公開第2006/054613号の比較例9に記載の重合方法に準じて、4-メチル-1-ペンテン、その他のα-オレフィン(1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等質量混合物)、水素の割合を変更することによって、4-メチル-1-ペンテン(共)重合体(A)である重合体(A-1)を得た。重合体(A-1)の物性を表1に示す。
【0077】
[4-メチル-1-ペンテン共重合体(B)]
共重合体(B-1)の製造
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
【0078】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0079】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥し、4-メチル-1-ペンテン共重合体(B)である共重合体(B-1)を得た。得られた共重合体(B-1)は44.0gで、共重合体(B-1)中の4-メチル-1-ペンテン含量は85mol%、プロピレン含量は15mol%であった。共重合体(B-1)の物性を表1に示す。
【0080】
共重合体(B-2)の製造
充分窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し攪拌機を回した。
【0081】
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.40MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいた、メチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
【0082】
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥し、4-メチル-1-ペンテン共重合体(B)である共重合体(B-2)を得た。得られた共重合体(B-2)は36.9gで、共重合体(B-2)中の4-メチル-1-ペンテン含量は72mol%、プロピレン含量は28mol%であった。共重合体(B-2)の物性を表に示す。
【0083】
[着色成分(C)]
着色成分(C)としてC.I. Pigment White 6およびC.I. Pigment Blue 15:3を使用した。
【0084】
[着色剤マスターバッチ]
着色剤マスターバッチ(C-1)の製造
重合体(A-1)に対し、C.I. Pigment White 6を含有率0.5%、C.I. Pigment Blue 15:3を含有率3%、ステアリン酸マグネシウムを含有率3%、ステアリン酸亜鉛を含有率3%になるように配合し、二軸押出機(株式会社池貝製、PCM45、φ=45mm,L/D=30)にて、シリンダ温度:270℃、回転数150rpmにて溶融混練し、着色剤マスターバッチ(C-1)を得た。
重合体の物性測定方法を以下に示す。
【0085】
<重合体の各構成単位の含有率(モル%)>
各構成単位の含有率(モル%)の値は、下記の条件で13C-NMRによる測定法により測定した。
【0086】
~条件~
測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核:13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:1万回以上
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度:55mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0087】
<極限粘度[η]>
重合体の極限粘度[η]は、ウベローデ粘度計を用い、下記の方法により測定した。
20mgの重合体(A)をデカリン25mlに溶解させることでデカリン溶液を得た後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液を、デカリンを5ml加えて希釈した後、前記と同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)とする(下記の式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
【0088】
<融点(Tm)>
重合体の融点(Tm)は、示差走査熱量計(DSC:Differential scanning calorimetry)を用い、JIS K7121に準拠して下記の方法により測定した。
【0089】
約5mgの重合体を、セイコーインスツル(株)製の示差走査熱量計(DSC220C型)の測定用アルミニウムパン中に室温で密封し、室温から10℃/分の速度で280℃まで加熱した。重合体を完全融解させるために、280℃で5分間保持し、次いで、10℃/分の速度で-50℃まで冷却した。-50℃で5分間保持した後、10℃/分の速度で280℃まで2度目の加熱を行ない、この2度目の加熱でピークが観測される温度を重合体の融点(Tm)とした。なお、複数のピークが検出される場合には、最も高温側で検出されるピークを採用した。
【0090】
【表1】
【0091】
(実施例1~7、比較例1~4)
実施例1~7、比較例1~4にかかる組成物(X)は、重合体(A)、共重合体(B)および着色成分(C)の含有量が表2に記載する量となるように、重合体(A)、共重合体(B)および着色剤マスターバッチ(C-1)を配合し、サーモ・プラスチックス工業株式会社製一軸押出機(TP20型)にて混錬して製造し、さらに、シリンダ温度280℃、ダイス温度280℃、ロール温度60℃の条件で押し出して、離型フィルムとして厚さ約30μmの押出フィルムを得た。
得られた押出フィルムについて下記の測定および評価を行った。
【0092】
(引張破断点伸度、引張破断点応力)
引張破断点伸度および引張破断点応力の測定は、JIS K67817127に準拠して前記押出フィルムを試験片として、インストロン社製万能引張試験機3380を用いて、引張速度200mm/minで実施した。
【0093】
(引き裂き強度)
引き裂き強度の測定は、JIS K7128に準拠して前記押出フィルムを試験片として、インストロン社製万能引張試験機3380を用いて、引張速度200mm/minで実施した。
【0094】
(線膨張係数)
線膨張係数の測定は、TMA法により、昇温5℃/min、試料サイズ4mm幅、チャック間10mm、測定荷重49mNの条件下で、実施した。線膨張係数は23℃から180℃の範囲で測定した。装置はセイコーインスツル社製TMA-SS120を使用した。
【0095】
(全光線透過率TT)
全光線透過率TTの評価は、JIS K7136に準拠して前記押出フィルムを試験片として、日本電色工業社製MNDH2000を用いて、実施した。
【0096】
[炭素繊維複合材用の離型フィルムの評価]
炭素繊維に樹脂を含侵させたプリプレグを4層重ねて厚み1mmにして、金型を用いて真空バッグ成形にて180℃、2h、0.3MPa下で、炭素繊維複合材の成形体を作製した。成形する際は、積層させたプリプレグの上下に、プリプレグを挟む形で、実施例、比較例で得られた押出フィルムを離型フィルムとして設置した。
【0097】
(フィルム視認性)
目視により、以下指標で離型フィルムの視認性を評価した。
〇:炭素繊維複合材の上に、フィルムを視認できる。
×:炭素繊維複合材の上に、フィルムを視認できない。
【0098】
(成形後の凹凸追従性)
成形後の離型フィルムの金型への凹凸追従性を以下指標で評価した。
〇:フィルムシワが発生することなく、金型凹凸部に追従している。
△:一部フィルムシワが発生しているが、金型凹凸部に追従している。
×:金型凹凸部に追従していない。
【0099】
(成形後のフィルムの剥がしやすさ)
成形後の離型フィルムの剥がしやすさを以下指標で評価した。
〇:剥がす際に抵抗なく、力を入れずにフィルムが剥がれる。
△:剥がす際に抵抗があるが、フィルムが剥がれる。
×:剥がれない。
【0100】
(成形体表面外観)
目視により、成形体の表面の外観を以下指標で評価した。
〇:成形体が均一な外観であり、優れた光沢性を有する。
△:成形体が均一な外観だが、やや光沢性に劣る。
×:成形品が不均一な外観である。
なお、不均一な外観とは、具体的には、熱変形によるフィルム皴の成形体への転写や成形体へのフィルムの食込みによる部分的な傷や凹みが生じている態様を言う。
【0101】
【表2】