(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】アブソリュートエンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
G01D5/245 110L
(21)【出願番号】P 2021062047
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勝典
(72)【発明者】
【氏名】根岸 央樹
(72)【発明者】
【氏名】崎枝 健
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/203467(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0052663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0080162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12- 5/252
G01B 7/00- 7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が基板に固定され、他端にフランジ部を有する支持軸と、
内輪が前記支持軸に固定されている少なくとも一つの軸受と、
着磁されたマグネットと、
前記支持軸の軸線方向において前記軸受と前記マグネットとの間に配置されているスペーサと、
前記マグネットを保持するマグネットホルダと、
前記マグネットからの磁束を検知する磁気センサと、
を備え、
前記マグネットホルダは、
前記軸線方向の一方側が開放されている凹部であり前記軸受の外輪に固定される軸受固定部と、
前記軸受固定部の他端側に形成されている凹部であるマグネット保持部と、を有し、
前記軸受は、前記軸線方向における前記基板と前記フランジ部との間に配置され、
前記スペーサは、前記軸受固定部の内部において前記軸受の外輪に前記軸線方向から当接する、
アブソリュートエンコーダ。
【請求項2】
前記基板は、前記支持軸を挿通可能な孔を有し、
前記支持軸は、一端に雄ネジ部を有し、前記孔に前記雄ネジ部を挿通して前記軸受とともに前記基板に固定されている、
請求項1に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項3】
前記軸線方向において前記基板と前記軸受との間に配置されているワッシャを備える、
請求項1または2に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項4】
前記スペーサは、径方向において前記軸受固定部の内周部に当接し、前記軸線方向において前記軸受の外輪に当接している、
請求項1から3のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記軸線方向における一端側の面が前記軸受の内輪の円盤部に面している、
請求項1から4のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項6】
前記スペーサは、円環状に形成されていて、内周面の内側に前記フランジ部が配置されている、
請求項1から5のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。
【請求項7】
前記支持軸は磁性材によって形成される、
請求項1から6のいずれか1項に記載のアブソリュートエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アブソリュートエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の制御機械装置において、可動要素の位置や角度を検出するために用いられるロータリエンコーダとして、絶対的な位置又は角度を検出するアブソリュート型のアブソリュートエンコーダ(以下、「アブソリュートエンコーダ」という。)が知られている。
【0003】
アブソリュートエンコーダには、副軸の回転角度に基づいて主軸の回転量を計測するものがある。このようなアブソリュートエンコーダは、副軸または副軸に取り付けられたギア等の回転体の先端に取り付けられたマグネットの磁界の変化に基づいて、副軸の回転角度を検出する。磁界の変化は、マグネットの対向に設けられた角度センサによって検出される。角度センサの検出精度は、検出対象のマグネットからの磁束以外の磁束の影響が少ないほど高くなる。
【0004】
なお、同心のリング状に設けられてそれぞれ円周上に磁極が並ぶ着磁列パターンを有し、互いに磁極数が異なる2つの磁気エンコーダと、磁気エンコーダの磁界をそれぞれ検出する磁気センサとを備える回転検出装置が知られている。この回転検出装置において、2つの磁気エンコーダの着磁列パターンの間には磁性体のスペーサを設ける(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アブソリュートエンコーダの回転軸において、例えば副軸では、角度検出用として取り付けられるマグネットの直下に軸受が配置されている。アブソリュートエンコーダにおいて、このような回転軸の構造である場合には、磁性材である軸受が磁路として働いてしまい、マグネットの角度検出面側(上側)の磁束分布に乱れが生じ、角度誤差の検出精度が悪化する場合がある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、マグネットの磁束分布に起因する回転軸の回転角度の検出精度を改善することができるアブソリュートエンコーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るアブソリュートエンコーダは、一端が基板に固定され、他端にフランジ部を有する支持軸と、内輪が前記支持軸に固定されている少なくとも一つの軸受と、着磁されたマグネットと、前記支持軸の軸線方向において前記軸受と前記マグネットとの間に配置されているスペーサと、前記マグネットを保持するマグネットホルダと、前記マグネットからの磁束を検知する磁気センサと、を備え、前記マグネットホルダは、前記軸線方向の一方側が開放されている凹部であり前記軸受の外輪に固定される軸受固定部と、前記軸受固定部の他端側に形成されている凹部であるマグネット保持部と、を有し、前記軸受は、前記軸線方向における前記基板と前記フランジ部との間に配置され、前記スペーサは、前記軸受固定部の内部において前記軸受の外輪に前記軸線方向から当接する。
【0009】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記基板は、前記支持軸を挿通可能な孔を有し、前記支持軸は、一端に雄ネジ部を有し、前記孔に前記雄ネジ部を挿通して前記軸受とともに前記基板に固定されている。
【0010】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記軸線方向において前記基板と前記軸受との間に配置されているワッシャを備える。
【0011】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記スペーサは、径方向において前記軸受固定部の内周部に当接し、前記軸線方向において前記軸受の外輪に当接している。
【0012】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記フランジ部は、前記軸線方向における一端側の面が前記軸受の内輪の円盤部に面している。
【0013】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記スペーサは、円環状に形成されていて、内周面の内側に前記フランジ部が配置されている。
【0014】
本発明の一態様に係るアブソリュートエンコーダにおいて、前記支持軸は磁性材によって形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るアブソリュートエンコーダによれば、マグネットの磁束分布に起因する回転軸の回転角度の検出精度を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダの構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すアブソリュートエンコーダの構成を、シールドプレートを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
【
図3】
図2に示すアブソリュートエンコーダの構成を、ケースを除いた状態で概略的に示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すアブソリュートエンコーダの構成を、基板を除いた状態で概略的に示す平面図である。
【
図5】
図3に示される角度センサ支持基板を下面側から見た図である。
【
図6】
図4に示すアブソリュートエンコーダのA-A断面図である。
【
図7】
図4に示すアブソリュートエンコーダのB-B断面図である。
【
図8】
図4に示すアブソリュートエンコーダのC-C断面図である。
【
図9】
図4に示すアブソリュートエンコーダのD-D断面図である。
【
図10】
図9に示すアブソリュートエンコーダにおける第1副軸ギアの断面図である。
【
図11】
図1に示すアブソリュートエンコーダの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、アブソリュートエンコーダにおいて、主軸の複数回の回転(以下、「複数回転」ともいう。)にわたる回転量(以下、「主軸の回転量」ともいう。)を、主軸の回転に伴い減速回転する回転体の回転角度を取得することによって、特定し得ることを見出した。すなわち、回転体の回転角度を減速比で乗ずることにより、主軸の回転量を特定することができる。ここで、特定可能な主軸の回転量の範囲は、減速比に比例して増加する。例えば、減速比が50であれば、主軸50回転分の回転量を特定することができる。
【0018】
一方、必要な回転体の分解能は、減速比に比例して小さくなる。例えば、減速比が100であれば、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/100=3.6°となり、±1.8°の検出精度が求められる。一方、減速比が50の場合、主軸1回転あたり回転体に必要な分解能は360°/50=7.2°となり、±3.6°の検出精度が求められる。
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態、変形例では、同一又は同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。また、図面において歯車は歯部形状を省略して示す。また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。なお、本実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2の構成を概略的に示す斜視図である。
図2は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、シールドプレート7を除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図2では、アブソリュートエンコーダ2のケース4及び角度センサ支持基板5が透過されて示される。
図3は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、ケース4を除いた状態で概略的に示す斜視図である。
図3では、アブソリュートエンコーダ2の角度センサ支持基板5が透過されて示される。
図4は、アブソリュートエンコーダ2の構成を、角度センサ支持基板5を除いた状態で概略的に示す平面図である。
図5は、角度センサ支持基板5を下側から見た図である。
図6は、アブソリュートエンコーダ2のA-A断面図である。
図7は、アブソリュートエンコーダ2のB-B断面図である。
図8は、アブソリュートエンコーダ2のC-C断面図である。
図9は、アブソリュートエンコーダ2のD-D断面図である。
【0021】
図1乃至
図9に示すように、本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2は、第1副軸ギア40、支持軸42、マグネットMq、角度センサSq、軸受固定部411、マグネット保持部412、第1軸受43、第2軸受44、及び、スペーサ45を備える。支持軸42は、一端が基板としてのギアベース部3に固定され、他端にフランジ部423を有する。マグネットMqは、着磁されている。第1副軸ギア40は、マグネットMqを保持するマグネットホルダとしても機能する。角度センサSqは、マグネットMqからの磁束を検知する磁気センサとして機能する。軸受固定部411は、第1副軸ギア40に設けられている。軸受固定部411は、軸線方向の一方側が開放されている凹部であり第1軸受43、及び、第2軸受44の外輪に固定される。マグネット保持部412は、第1副軸ギア40において、軸受固定部411の他端側に形成されている凹部である。少なくとも一つの軸受としての第1軸受43、及び、第2軸受44は、内輪が支持軸42に固定されている。第1軸受43、及び、第2軸受44は、軸線方向におけるギアベース部3とフランジ部423との間に配置される。スペーサ45は、支持軸42の軸線方向において、第1軸受43及び第2軸受44とマグネットMqとの間に配置されている。スペーサ45は、軸受固定部411の内部において第1軸受43、及び、第2軸受44の外輪の軸線方向から当接する。以下、アブソリュートエンコーダ2の構造を具体的に説明する。
【0022】
本実施の形態においては、説明の便宜上、アブソリュートエンコーダ2についてXYZ直交座標系をもとに説明する。X軸方向は水平な左右方向に対応し、Y軸方向は水平な前後方向に対応し、Z軸方向は鉛直な上下方向に対応する。Y軸方向及びZ軸方向は夫々X軸方向に直交する。本説明において、X軸方向を左側或いは右側と、Y軸方向を前側或いは後側と、Z軸方向を上側或いは下側ともいう。
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、X軸方向における左側が左側であり、X軸方向における右側が右側である。また、
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Y軸方向における手前側が前側であり、Y軸方向における奥側が後側である。また、
図1,2に示すアブソリュートエンコーダ2の姿勢において、Z軸方向における上側が上側であり、Z軸方向における下側が下側である。Z軸方向で上側から視た状態を平面視と、Y軸方向で前側から視た状態を正面視と、X軸方向で左側から視た状態を側面視という。このような方向の表記はアブソリュートエンコーダ2の使用姿勢を制限するものではなく、アブソリュートエンコーダ2は任意の姿勢で使用され得る。
【0023】
図1,2に示すように、アブソリュートエンコーダ2は、既述したように、モータ1の主軸1aの複数回転にわたる回転量を特定して出力するアブソリュート型のエンコーダである。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2はモータ1のZ軸方向の上側の端部に設けられている。本発明の実施の形態では、アブソリュートエンコーダ2は、平面視で略矩形状を有しており、正面視及び側面視で主軸1aの延在方向である上下方向に薄い横長の矩形状を有している。つまり、アブソリュートエンコーダ2は上下方向よりも水平方向に長い偏平な直方体形状を有している。
【0024】
アブソリュートエンコーダ2は内部構造を収容する中空角筒状のケース4を備えている。ケース4は、少なくともモータ1の主軸1aの一部、主軸ギア10、第1中間ギア20、第2中間ギア30、第1副軸ギア40、及び第2副軸ギア50などを包囲する複数(例えば4つ)の外壁部4aを含み、上側の端部が開蓋されている。ケース4は、開蓋されている4つの外壁部4aの上側の端部に、矩形の板状部材である磁束遮へい部材としてのシールドプレート7が、基板取付ネジ8aによりケース4及びギアベース部3に固定されている。
【0025】
シールドプレート7は、軸線方向(Z軸方向)において角度センサSp,Sq,Srとアブソリュートエンコーダ2の外部との間に設けられている板状部材である。シールドプレート7は、ケース4の内部に設けられている角度センサSp,Sq,Srがアブソリュートエンコーダ2の外部で発生している磁束による磁気干渉を防ぐために、磁性体で形成されている。
【0026】
モータ1は、一例として、ステッピングモータやDCブラシレスモータであってもよい。一例として、モータ1は波動歯車装置等の減速機構を介して産業用等のロボットを駆動する駆動源として適用されるモータであってもよい。モータ1の主軸1aは上下方向の両側がモータのケースから突出している。アブソリュートエンコーダ2はモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力する。
【0027】
モータ1の形状は、平面視で略矩形状を有し、上下方向においても略矩形状を有している。つまり、モータ1は略立方体形状を有している。平面視においてモータ1の外形を構成する4つの外壁部の夫々の長さは例えば25mmであり、すなわち、モータ1の外形は、平面視で25mm角である。また、モータ1に設けられるアブソリュートエンコーダ2は、例えばモータ1の外形形状に合わせて25mm角である。
【0028】
図1,2においては、角度センサ支持基板5がケース4及びシールドプレート7とともにアブソリュートエンコーダ2の内部を覆うように設けられている。
【0029】
図5に示すように、角度センサ支持基板5は、平面視で略矩形状を有し、上下方向に薄い板状のプリント配線基板である。また、コネクタ6は、角度センサ支持基板5に接続されており、アブソリュートエンコーダ2と外部装置(不図示)を接続するためのものである。
【0030】
図2,3,4に示すように、アブソリュートエンコーダ2は、第1ウォームギア部11(第1駆動歯車)を有する主軸ギア10と、第1ウォームホイール部21(第1従動歯車)、第2ウォームギア部22(第2駆動歯車)及び第3ウォームギア部28(第3駆動歯車)を有する第1中間ギア20とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、第3ウォームホイール部31(第3従動歯車)及び第1平歯車部32(第4駆動歯車)を有する第2中間ギア30と、第2ウォームホイール部41(第2従動歯車)及び支持軸42(
図9参照)を有する第1副軸ギア40と、第2平歯車部51(第3従動歯車)を有する第2副軸ギア50とを含んでいる。また、アブソリュートエンコーダ2は、マグネットMpと、マグネットMpに対応する角度センサSpと、マグネットMqと、マグネットMqに対応する角度センサSqと、マグネットMrと、マグネットMrに対応する角度センサSrと、マイコン121とを含んでいる。
【0031】
図4,6に示すように、モータ1の主軸1aは、モータ1の出力軸であり、アブソリュートエンコーダ2に回転力を伝達する入力軸である。主軸ギア10は、モータ1の主軸1aに固定されており、主軸1aと一体にモータ1の軸受部材によって回転可能に支持されている。第1ウォームギア部11は、第1駆動歯車としてモータ1の主軸1aの回転に従って回転するように、主軸ギア10の外周に設けられている。主軸ギア10において、第1ウォームギア部11は、その中心軸が主軸1aの中心軸と一致又は略一致するように設けられている。主軸ギア10は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。主軸ギア10は、例えばポリアセタール樹脂から形成されている。
【0032】
図3,4に示すように、第1中間ギア20は、主軸ギア10の回転を、第1副軸ギア40及び第2中間ギア30に伝えるギア部である。第1中間ギア20は、軸23によって基部3bに略平行に伸びる回転軸線の周りに軸支されている。第1中間ギア20は、その回転軸線の方向に延伸する略円筒形状の部材である。第1中間ギア20は、第1ウォームホイール部21と、第2ウォームギア部22と、第3ウォームギア部28とを含み、内部に貫通孔が形成され、この貫通孔に軸23が挿通されている。この軸23をギアベース部3の基部3bに設けられた第1中間ギア軸支部3gに挿通することで、第1中間ギア20が軸支されている。第1ウォームホイール部21、第2ウォームギア部22、及び第3ウォームギア部28は、この順で互いに離れた位置に配置される。第1中間ギア20は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第1中間ギア20は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0033】
図4,7に示すように、第1ウォームホイール部21は第1従動歯車として第1中間ギア20の外周に設けられている。第1ウォームホイール部21は、第1ウォームギア部11と噛み合い、第1ウォームギア部11の回転に従って回転するように設けられている。第1ウォームホイール部21と第1ウォームギア部11との軸角は90°又は略90°に設定されている。つまり、第1ウォームホイール部21は、中心軸が第1ウォームギア部11の中心軸と直交する。
【0034】
第1ウォームホイール部21の外径に特別な制限はないが、図示の例では、第1ウォームホイール部21の外径は第1ウォームギア部11の外径より小さく設定されており、第1ウォームホイール部21の外径が小さくなっている。これにより、アブソリュートエンコーダ2では、上下方向の寸法の小型化が図られている。
【0035】
第2ウォームギア部22は、第2駆動歯車として第1中間ギア20の外周に設けられている。第2ウォームギア部22は、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第2ウォームギア部22は、第1副軸ギア40の第2ウォームホイール部41と噛み合って第1副軸ギア40を回転させる。第1中間ギア20において、第2ウォームギア部22は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0036】
図4,8に示すように、第3ウォームギア部28は、第1中間ギア20の外周に設けられている。第3ウォームギア部28は、第1ウォームホイール部21の回転に伴って回転するようになっている。第3ウォームギア部28は、第2中間ギア30の第3ウォームホイール部31と噛み合って第2中間ギア30を回転させる。第1中間ギア20において、第3ウォームギア部28は、その中心軸が第1ウォームホイール部21の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。
【0037】
図4,9に示すように、第1副軸ギア40は、主軸1aの回転に従い、減速されてマグネットMqと一体となって回転する。第1副軸ギア40は、第2ウォームホイール部41と、支持軸42と、第1軸受43と、第2軸受44と、スペーサ45と、を含む。第1副軸ギア40において、第2ウォームホイール部41は、第1軸受43及び第2軸受44を介して、支持軸42により軸支される。
【0038】
図10は、アブソリュートエンコーダ2における第1副軸ギア40のD-D断面図である。
【0039】
図10に示すように、第2ウォームホイール部41は、平面視で略円形状の部材である。第2ウォームホイール部41は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第2ウォームホイール部41は、例えば、ポリアセタール樹脂から形成されている。第2ウォームホイール部41は、軸受固定部411と、マグネット保持部412と、段部413とを備えている。
【0040】
第2ウォームホイール部41は、第2従動歯車として第1副軸ギア40の外周に設けられており、第2ウォームギア部22と噛み合い、第2ウォームギア部22の回転に従って回転するように設けられている。第2ウォームホイール部41と第2ウォームギア部22との軸角は90°又は略90°に設定されている。つまり、第2ウォームホイール部41の中心軸は、第1ウォームホイール部21の中心軸と直交する。第2ウォームホイール部41の回転軸線(軸線A)は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0041】
軸受固定部411は、第2ウォームホイール部41における軸線Aを中心とした位置に設けられている円筒状の空洞部分である。軸受固定部411は、軸線A方向の一方側、具体的には
図9,10においてZ軸方向下側が開放している。軸受固定部411の内周部4111の径方向(軸線Aに対して垂直な方向、X軸方向、Y軸方向)の寸法は、第1副軸ギア40における軸受の外輪と第2ウォームホイール部41とを固定することができるような寸法であればよい。具体的には、軸受固定部411の内周部4111の径方向の寸法は、第1軸受43及び第2軸受44の外輪432,442を圧入嵌合することができるような寸法となっている。軸受固定部411の軸線A方向(Z軸方向)の寸法は、第1軸受43の外輪432及び第2軸受44の外輪442を軸線A方向において収容することができるような寸法となっている。また、軸受固定部411には、段部413が設けられている。段部413は、軸線A方向他方側、
図9,10においてZ軸方向上側に、X軸及びY軸に平行な軸線Aを中心として環状の面である。なお、第1副軸ギア40の第2ウォームホイール部41は、例えば、マグネットMqの径と第1軸受43及び第2軸受44の径とが同じである場合に、段部413を備えなくてもよい。
【0042】
マグネット保持部412は、軸受固定部411と同様に、第2ウォームホイール部41の軸線Aを中心とした位置に設けられている環状の空洞部分である。マグネット保持部412は、マグネットMqを収容可能に形成されている。マグネット保持部412は、段部413よりも軸線A方向他方側、
図9,10においてZ軸方向上側に設けられている。マグネット保持部412は、上述の空洞部分にマグネットMqを保持する。
【0043】
支持軸42は、軸本体420と、外周部421と、雄ネジ部422と、フランジ部423とを有する。支持軸42の軸本体420は、軸線A方向が長手方向となる軸状の部材である。支持軸42において、外周部421は、軸線Aを中心に例えば円筒状または略円筒状の周面である。雄ネジ部422は、軸本体420の一端側、
図9,10においてZ軸方向下側の下端部424から所定の範囲の外周部421に設けられている。フランジ部423は、軸本体420の他端側、
図9,10においてZ軸方向上側の上端部425に設けられている。フランジ部423は、上端部425において、軸本体420の外周部421の表面から径方向外側(
図10においてY軸方向)に突出している。フランジ部423の上側の面(上面部426)及び下側の面(下面部427)は、軸線A方向に垂直な方向、すなわち径方向(
図10においてY軸方向)に平坦な面である。
【0044】
支持軸42は、ギアベース部3の基部3bから略垂直に突出して取りつけられている。ギアベース部3の基部3bは、支持軸42の雄ネジ部422を挿通可能な孔として第1副軸ギア軸支部3hを有する。支持軸42は、以下のようにして、第1軸受43及び第2軸受44とともにギアベース部3の基部3bに固定されている。支持軸42の雄ネジ部422は、第1軸受43及び第2軸受44が圧入されている状態で、Z軸方向上側から下側に向かって第1副軸ギア軸支部3hに挿通される。基部3bの下側に突出した雄ネジ部422には、ナット60が締結される。このようにして基部3bに固定された支持軸42は、第1軸受43及び第2軸受44を介して第2ウォームホイール部41を回転可能に支持する。
【0045】
第1軸受43は、内輪431と外輪432と転動体433とを有している。内輪431は、支持軸42の外周部421に装着可能な内周部4311を有する環状の部材である。外輪432は、内輪431の外周側に設けられている。外輪432は、内輪431と同軸で内輪431よりも大径の環状の部材である。転動体433は、内輪431と外輪432との間に複数配置されている球状の部材である。第1軸受43では、内輪431が支持軸42の外周部421に圧入されている。第1軸受43では、外輪432の円筒部4322が第2ウォームホイール部41の軸受固定部411の内周部4111に圧入されている。第1軸受43は、外輪432の軸線A方向(Z軸方向)上側の円盤部4321がスペーサ45に当接している。また、第1軸受43では、内輪431の軸線A方向(Z軸方向)上側の円盤部4323がフランジ部423の下面部427に接している。このように、第1軸受43は、軸線A方向及び径方向において第2ウォームホイール部41及び支持軸42に精度よく固定されている。
【0046】
第2軸受44は、内輪441と外輪442と転動体443とを有している。内輪441は、支持軸42の外周部421に装着可能な内周部4411を有する環状の部材である。外輪442は、内輪441の外周側に設けられている。外輪442は、内輪441と同軸で内輪441よりも大径の環状の部材である。転動体443は、内輪441と外輪442との間に複数配置されている球状の部材である。第2軸受44では、内輪441が支持軸42の外周部421に圧入されている。第2軸受44では、外輪442の軸線A方向(Z軸方向)上側の円盤部4421が第1軸受43の外輪432の下側の円盤部4321に当接している。また、第2軸受44では、外輪442の円筒部4422が第2ウォームホイール部41の軸受固定部411の内周部4111に圧入されている。
【0047】
スペーサ45は、軸線Aを中心とした環状の円盤部451と、円筒状の外周部452及び内周部453とを有している円環状または略円環状の部材である。スペーサ45は、径方向において、軸受固定部411の内周部4111に配置されている。スペーサ45は、軸線A方向において一方側(Z軸方向下側)が第1軸受43の外輪432の円盤部4321に当接している。また、スペーサ45は、軸線A方向において他方側(Z軸方向上側)がマグネットMqのZ軸方向下側の円盤面Mq1に接触している。マグネットMqは、Z軸方向上側の円盤面Mq2がマグネット保持部412のZ軸方向上側の面に接している。このため、スペーサ45は、マグネットMqを介して第2ウォームホイール部41のマグネット保持部412に当接している。スペーサ45の内周部453の径方向内側には、支持軸42のフランジ部423が配置されている。
【0048】
ワッシャ46は、軸線A方向において基部3bと第2軸受44との間に配置されている。ワッシャ46は、第2軸受44の外輪442よりも小径である。第2軸受44の外輪442よりも小径なワッシャ46が基部3bと第2軸受44との間に配置されていることにより、第1軸受43の外輪432及び第2軸受44の外輪442は、支持軸42に対して回転可能である。つまり、第1副軸ギア40において、第2ウォームホイール部41は、支持軸42に対して回転可能である。ワッシャ46は、軸線A方向において他方側(Z軸方向上側)が第2軸受44の内輪441のZ軸方向下側の円盤部4412に接触していてもよい。
【0049】
以上のように構成されていることにより、アブソリュートエンコーダ2において、第1副軸ギア40が有している複数の軸受(第1軸受43及び第2軸受44)は、軸受固定部411に圧入されて固定されていることで、軸線A方向及び径方向において支持軸42に対して第1副軸ギア40を精度よく固定されている。
【0050】
マグネットMqは、第2ウォームホイール部41の先端側(Z軸方向上側)において支持軸42の軸線A上に設けられている永久磁石である。マグネットMqは、径方向において、軸受固定部411の内周部4111に嵌合している。マグネットMqは、スペーサ45に突き当てられることで、軸受固定部411の軸線A方向において上側に固定されている。角度センサSqは、マグネットMqと同様に軸線A上に設けられている。角度センサSqは、マグネットMqの磁束の変化を検出可能な範囲であるマグネットMqの近傍、例えば、軸線A上またはその近傍に設けられる。角度センサSqは、マグネットMqから発生する磁束の変化を検出する。
【0051】
図4,8において、第2中間ギア30は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速して第2副軸ギア50に伝える円盤状のギア部である。第2中間ギア30は、第2ウォームギア部22と、第2副軸ギア50に設けられる第2平歯車部51との間に設けられる。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合う。第2中間ギア30は、第1中間ギア20の第3ウォームギア部28と噛み合う第3ウォームホイール部31と、第2平歯車部51を駆動する第1平歯車部32とを有する。第2中間ギア30は、例えば、ポリアセタール樹脂で形成されている。第2中間ギア30は、平面視で略円形状の部材である。第2中間ギア30は、ギアベース部3の基部3bに軸支されている。
【0052】
第2中間ギア30を備えることにより、その分、後述する第2副軸ギア50を第3ウォームギア部28から遠ざけた位置に配置することができる。このため、マグネットMp、Mqとの間の距離を長くして互いの漏れ磁束の影響を減らすことができる。また、第2中間ギア30を備えることにより、その分減速比を設定できる範囲が拡がり設計の自由度が向上する。
【0053】
第3ウォームホイール部31は、第2中間ギア30の外周に設けられており、第3ウォームギア部28と噛み合い、第3ウォームギア部28の回転に従って回転するように設けられている。第1平歯車部32は、第2中間ギア30の外周にその中心軸が第3ウォームホイール部31の中心軸と一致又は略一致するように設けられている。第1平歯車部32は、第2平歯車部51と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第3ウォームホイール部31及び第1平歯車部32の回転軸線は、第1ウォームギア部11の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。
【0054】
図8において、第2副軸ギア50は、主軸1aの回転に従って回転し、主軸1aの回転を減速してマグネットMrに伝える、平面視で円形状のギア部である。第2副軸ギア50は、ギアベース部3の基部3bから略垂直に伸びる回転軸線周りに軸支されている。第2副軸ギア50は、第2平歯車部51と、マグネットMrを保持する磁石保持部とを含む。
【0055】
第2平歯車部51は、第2副軸ギア50の外周に設けられている。第2平歯車部51は、第1平歯車部32と噛み合い、第3ウォームホイール部31の回転に従って回転するように設けられている。第2平歯車部51の回転軸線は、第1平歯車部32の回転軸線と平行又は略平行に設けられている。第2副軸ギア50は、樹脂材料や金属材料など種々の材料から形成することができる。第2副軸ギア50は、ポリアセタール樹脂から形成されている。
【0056】
ここで、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に噛み合うために、第1ウォームホイール部21が第1ウォームギア部11に向かう方向を第1噛み合い方向P1(
図4の矢印P1方向)とする。同様に、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に噛み合うために、第2ウォームギア部22が第2ウォームホイール部41に向かう方向を第2噛み合い方向P2(
図4の矢印P2方向)とする。さらに、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に噛み合うために、第3ウォームギア部28が第3ウォームホイール部31に向かう方向を第3噛み合い方向P3(
図4の矢印P3方向)とする。本実施の形態においては、第1噛み合い方向P1、第2噛み合い方向P2、及び第3噛み合い方向P3は共に水平面(XY平面)に沿う方向となっている。
【0057】
マグネットMpは、主軸ギア10の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定される。マグネットMpは、ホルダ部16を介して主軸ギア10の中心軸に設けられているマグネット支持部17に支持されている。ホルダ部16は、アルミニウム合金などの非磁性体により形成されている。ホルダ部16の内周面は、マグネットMpの径方向における外周面に接してこの外周面を保持するように、マグネットMpの外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。また、マグネット支持部17の内周面は、ホルダ部16の外周面に接するように、ホルダ部16の外径や外周面の形状に対応して、例えば、環状に形成されている。マグネットMpは、主軸ギア10の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。角度センサSpは、主軸ギア10の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMpの上面に上下方向に対向するように、角度センサ支持基板5の下面5aに設けられる。
【0058】
一例として、角度センサSpは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSpは、マグネットMpの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMpの回転角度を特定することにより、主軸ギア10の回転角度、つまり主軸1aの回転角度を特定する。主軸1aの回転角度の分解能は角度センサSpの分解能に対応する。マイコン121は、後述するように、特定された第1副軸ギア40の回転角度及び特定された主軸1aの回転角度に基づいて主軸1aの回転量を特定し、これを出力する。マイコン121は、一例としてモータ1の主軸1aの回転量をデジタル信号として出力するようにしてもよい。
【0059】
角度センサSqは、第2ウォームホイール部41の回転角度、すなわち第1副軸ギア40の回転角度を検知する。マグネットMqは、第1副軸ギア40の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMqは、第1副軸ギア40の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。
図3に示すように、角度センサSqは、第1副軸ギア40の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMqの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0060】
一例として、角度センサSqは、角度センサSpが固定された角度センサ支持基板5に、角度センサSpが固定される面と同一の面において固定されている。角度センサSqは、マグネットMqの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMqの回転角度、つまり第1副軸ギア40の回転角度を特定する。
【0061】
角度センサSrは、第2平歯車部51の回転角度、すなわち第2副軸ギア50の回転角度を検知する。マグネットMrは、第2副軸ギア50の上面に双方の中心軸が一致又は略一致するように固定されている。マグネットMrは、第2副軸ギア50の回転軸線に対して垂直な方向に並んだ2極の磁極を有している。
図3に示すように、角度センサSrは、第2副軸ギア50の回転角度を検知するために、その下面が隙間を介してマグネットMrの上面に上下方向に対向するように設けられる。
【0062】
一例として、角度センサSrは、アブソリュートエンコーダ2の後述するギアベース部3に配設された基板支柱110によって支持されている角度センサ支持基板5に固定されている。角度センサSrは、マグネットMrの磁極を検知し、検知情報をマイコン121に出力する。マイコン121は、入力された磁極に関する検知情報に基づいてマグネットMrの回転角度、つまり第2副軸ギア50の回転角度を特定する。
【0063】
各磁気センサには比較的分解能が高い磁気式角度センサを使用してもよい。磁気式角度センサは、それぞれの回転体の軸方向において、各永久磁石の磁極を含む端面と、一定の隙間を介して対向配置され、これら磁極の回転に基づいて対向する回転体の回転角を特定してデジタル信号を出力する。磁気式角度センサは、一例として、磁極を検知する検知素子と、この検知素子の出力に基づいてデジタル信号を出力する演算回路と、を含む。検知素子は、例えばホールエレメントやGMR(Giant Magneto Resistive)エレメントなどの磁界検知要素を複数(例えば4つ)含んでもよい。
【0064】
演算回路は、例えば複数の検知素子の出力の差や比をキーとしてルックアップテ
ーブルを用いてテーブル処理によって回転角を特定するようにしてもよい。この検知素子と演算回路とは一つのICチップ上に集積されてもよい。このICチップは薄型の直方体形状の外形を有する樹脂中に埋め込まれてもよい。各磁気センサは、不図示の配線部材を介して検知した各回転体の回転角に対応するデジタル信号である角度信号をマイコン121に出力する。例えば、各磁気センサは各回転体の回転角を複数ビット(例えば7ビット)のデジタル信号として出力する。
【0065】
図11は、アブソリュートエンコーダの機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図11に示すように、マイコン121は、角度センサ支持基板5のギアベース部3の基部3b側の面にはんだ付けや接着などの方法により固定されている。マイコン121は、CPUで構成され、角度センサSp,Sq,Srのそれぞれから出力される回転角度を表すデジタル信号を取得し、主軸ギア10の回転量を演算する。
図11に示すマイコン121の各ブロックは、マイコン121としてのCPUがプログラムを実行することによって実現されるファンクション(機能)を表したものである。マイコン121の各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。従って、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0066】
マイコン121は、回転角取得部121p、回転角取得部121q、回転角取得部121r、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び出力部121eを備える。回転角取得部121pは、角度センサSpから出力された信号をもとに主軸ギア10、つまり、主軸1aの回転角度を示す角度情報である回転角度Apを取得する。回転角取得部121qは、角度センサSqから出力された信号をもとに第1副軸ギア40の回転角度を示す角度情報である回転角度Aqを取得する。回転角取得部121rは、角度センサSrで検知された第2副軸ギア50の回転角度を示す角度情報である回転角度Arを取得する。
【0067】
テーブル処理部121bは、回転角度Apと、回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第1対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Apに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。また、テーブル処理部121bは、回転角度Arと、回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数とを格納した第2対応関係テーブルを参照して、取得した回転角度Arに対応する主軸ギア10の回転数を特定する。
【0068】
回転量特定部121cは、テーブル処理部121bによって特定された主軸ギア10の回転数と、取得した回転角度Aqとに応じて、主軸ギア10の複数回転にわたる第1回転量を特定する。出力部121eは、回転量特定部121cによって特定された主軸ギア10の複数回転にわたる回転量を、当該回転量を示す情報に変換して出力する。
【0069】
なお、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eは、第1ウォームギア部11の角度位置情報の外部制御装置(コントローラ)への出力を行う角度位置情報出力部としても機能する。また、テーブル処理部121b、回転量特定部121c、及び、出力部121eは、同じく第1ウォームギア部11の角度位置情報を補正するための角度誤差情報の外部制御装置への出力も行う。
【0070】
このように構成されたアブソリュートエンコーダ2は、角度センサSq,Srの検知情報に基づいて特定された第1副軸ギア40及び第2副軸ギア50の回転角度に応じて主軸1aの回転数を特定すると共に、角度センサSpの検知情報に基づいて主軸1aの回転角度を特定することができる。そして、マイコン121は、特定された主軸1aの回転数及び主軸1aの回転角度に基づいて、主軸1aの複数回の回転にわたる回転量を特定する。
【0071】
主軸1aに設けられた主軸ギア10の第1ウォームギア部11の条数は例えば1であり、第1ウォームホイール部21の歯数は例えば20である。つまり、第1ウォームギア部11と第1ウォームホイール部21とは、減速比が20/1=20の第1変速機構を構成する(
図4参照)。第1ウォームギア部11が20回転するとき第1ウォームホイール部21は1回転する。第1ウォームホイール部21と第2ウォームギア部22は同軸上に設けられて第1中間ギア20を構成しており、一体となって回転することから、第1ウォームギア部11が20回転するとき、すなわち主軸1a及び主軸ギア10が20回転するとき、第1中間ギア20は1回転し、第2ウォームギア部22は1回転する。
【0072】
第2ウォームギア部22の条数は例えば5であり、第2ウォームホイール部41の歯数は例えば25である。つまり、第2ウォームギア部22と第2ウォームホイール部41とは、減速比が25/5=5の第2変速機構を構成する(
図4参照)。第2ウォームギア部22が5回転するとき第2ウォームホイール部41は1回転する。第2ウォームホイール部41が形成された第1副軸ギア40は、マグネットMqと一体となって回転するようになっており、このため、第1中間ギア20を構成する第2ウォームギア部22が5回転するとき、マグネットMqは1回転する。以上より、主軸1aが100回転すると、第1中間ギア20が5回転し、第1副軸ギア40及びマグネットMqが1回転する。つまり、角度センサSqの第1副軸ギア40の回転角度に関する検知情報により、主軸1aの50回転分の回転数を特定することができる。
【0073】
第3ウォームギア部28の条数は例えば1であり、第3ウォームホイール部31の歯数は例えば30である。つまり、第3ウォームギア部28と第3ウォームホイール部31とは、減速比が30/1=30の第3変速機構を構成する(
図4参照)。第3ウォームギア部28が30回転するとき第3ウォームホイール部31は1回転する。第3ウォームホイール部31が形成された第2中間ギア30は、第3ウォームホイール部31の中心軸と一致又は略一致する中心軸を有する第1平歯車部32が設けられている。このため、第3ウォームホイール部31が回転するとき、第1平歯車部32も回転する。第1平歯車部32は、第2副軸ギア50に設けられている第2平歯車部51と噛み合っており、このため、第2中間ギア30が回転するとき、第2副軸ギア50も回転する。
【0074】
第2平歯車部51の歯数は例えば40であり、第1平歯車部32の歯数は例えば24である。つまり、第1平歯車部32と第2平歯車部51とは、減速比が40/24=5/3の第4変速機構を構成する(
図4参照)。第1平歯車部32が5回転するとき第2平歯車部51は3回転する。第2平歯車部51が形成された第2副軸ギア50は、後述するようにマグネットMrと一体となって回転するようになっており、このため、第1中間ギア20を構成する第3ウォームギア部28が5回転するとき、マグネットMrは1回転する。以上より、主軸1aが1000回転すると、第1中間ギア20が50回転し、第2中間ギア30が5/3回転し、第2副軸ギア50及びマグネットMrが1回転する。つまり、角度センサSrの第2副軸ギア50の回転角度に関する検知情報により、主軸1aの1000回転分の回転数を特定することができる。
【0075】
[アブソリュートエンコーダの作用]
以下、アブソリュートエンコーダ2の作用について説明する。
【0076】
上述のように(
図1~11参照)、アブソリュートエンコーダ2の第1副軸ギア40は、第2従動歯車としての第2ウォームホイール部41と、支持軸42と、第1軸受43と、第2軸受44と、スペーサ45と、を含む。支持軸42は、雄ネジ部422がギアベース部3の第1副軸ギア軸支部3hにナット60により固定される。支持軸42は、上端部425にフランジ部423を有する。第1軸受43、及び、第2軸受44は、軸線方向におけるギアベース部3とフランジ部423との間に配置される。第1軸受43の外輪432及び第2軸受44の外輪442は、第1副軸ギア40の軸受固定部411に固定されている。マグネットMqは、第1副軸ギア40のマグネット保持部412に保持されている。軸線A方向において、マグネットMqと第1軸受43及び第2軸受44との間には、スペーサ45が配置されている。スペーサ45の内周部453の径方向内側には、支持軸42のフランジ部423が配置されている。第1副軸ギア40の支持軸42の直立は、以下のように得ている。具体的には、第1副軸ギア40の軸線A方向下側において、第2軸受44の内輪441の軸線A方向下側の円盤部4423がワッシャ46を介してギアベース部3の基部3bに接している。また、第1副軸ギア40の軸線方向上側において、支持軸42に圧入されている第1軸受43の内輪431の軸線A方向上側の円盤部4323がフランジ部423の下面部427に接している。さらに、支持軸42は、第1副軸ギア軸支部3hに挿通され、雄ネジ部422にナット60を締結して基部3bに固定される。この状態において、ナット60の締結により支持軸42に作用する力は、第1軸受43の内輪431の上側の円盤部4323に作用する。このように、第1副軸ギア40は、支持軸42の上端部425に設けられているフランジ部423と、支持軸42に圧入されている第1軸受43及び第2軸受44とが位置決めされることにより、支持軸42の直立が得られる。
【0077】
以上のように構成されていることにより、アブソリュートエンコーダ2は、上述したように支持軸42の直立を得ていることで、支持軸42の軸線A方向下側に直立を得るための不図示のフランジなどの軸の支持構造を設ける必要がない。このため、アブソリュートエンコーダ2によれば、第1副軸ギア40の全体としての上下方向(軸線A方向)の高さを増加させることを抑制しつつ、スペーサ45の上下方向の厚みを十分に確保することができる。また、アブソリュートエンコーダ2によれば、スペーサ45の上下方向の厚みを十分に確保することができるため、マグネットMqと磁性体である第1軸受43及び第2軸受44の軸線A方向の距離を増加する。このため、アブソリュートエンコーダ2によれば、第1軸受43及び第2軸受44が磁路となってしまう影響を軽減することができる。具体的には、アブソリュートエンコーダ2において、マグネットMqの角度検出面側の表面磁束密度の分布が安定することにより、主軸1aの複数回転量の判定に使用する第1副軸ギア40の角度情報の検出精度向上を図ることができる。その結果として、アブソリュートエンコーダ2によれば、複数回転量の判定不良に対する改善効果が得られる。従って、アブソリュートエンコーダ2によれば、回転角度の検出の誤差を抑制することができる。
【0078】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係るアブソリュートエンコーダ2に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよく、公知の技術と組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0079】
例えば、アブソリュートエンコーダ2において、以上説明した第1副軸ギア40の構成を、第2副軸ギア50に組み合わせて、第2副軸ギア50の振動を抑制して副軸の回転角度の検出精度を改善してもよい。
【0080】
例えば、アブソリュートエンコーダ2において、以上説明した第1副軸ギア40が備える軸受が、第1軸受43及び第2軸受44の2つに限定されず、3つ以上の複数であってもよい。この場合において、外輪が圧入されている軸受は、少なくとも1つの軸受の外輪が第1副軸ギア40に圧入されていればよい。
【0081】
例えば、アブソリュートエンコーダ2において、第1副軸ギア40が備えているスペーサ45の形状は、スペーサ45は、第1軸受43の外輪432に当接していればよい。換言すれば、スペーサ45の形状は、内輪431及び支持軸42が、マグネットMqやスペーサ45に接触しない構成であればよい。このため、スペーサ45の形状は、上述した環状に限定されず、例えば、円盤状に形成されていて一部に凹部を有していてもよい。
【0082】
例えば、アブソリュートエンコーダ2の支持軸42において、支持軸42の材質は、磁性材としてもよい。支持軸42の材質を磁性材とすることで、軸本体420から径方向外側(軸線A方向に垂直な方向)に延びるフランジ部423は、マグネットMqからの磁束の磁路を形成することができる。つまり、磁性材により形成される支持軸42は、フランジ部423がマグネットMqから第1軸受43及び第2軸受44に向かう磁束の磁気シールドとして機能することで、第1軸受43及び第2軸受44が磁路として働くことを防ぐことができる。従って、支持軸42は、磁性材で形成することにより、マグネットMqの角度検出面側(上側)の磁束分布に乱れが生じることを抑制して、角度誤差の検出精度を改善することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…モータ、1a…主軸、1b…圧入部、2…アブソリュートエンコーダ、3…ギアベース部、3b…基部、3g…第1中間ギア軸支部、3h…第1副軸ギア軸支部、4…ケース、4a…外壁部、5…角度センサ支持基板、5a…下面、6…コネクタ、7…シールドプレート、8a…基板取付ネジ、10…主軸ギア、11…第1ウォームギア部、16…ホルダ部、17…マグネット支持部、20…第1中間ギア、21…第1ウォームホイール部、22…第2ウォームギア部、23…軸、28…第3ウォームギア部、30…第2中間ギア、31…第3ウォームホイール部、32…第1平歯車部、40…第1副軸ギア、41…第2ウォームホイール部、42…支持軸、43…第1軸受、44…第2軸受、45…スペーサ、46…ワッシャ、50…第2副軸ギア、51…第2平歯車部、60…ナット、110…基板支柱、121…マイコン、121b…テーブル処理部、121c…回転量特定部、121e…出力部、121p…回転角取得部、121q…回転角取得部、121r…回転角取得部、411…軸受固定部、412…マグネット保持部、413…段部、420…軸本体、421…外周部、422…雄ネジ部、423…フランジ部、424…下端部、425…上端部、426…上面部、427…下面部、431…内輪、432…外輪、433…転動体、441…内輪、442…外輪、443…転動体、451…円盤部、452…外周部、453…内周部、4111…内周部、4311…内周部、4321,4323…円盤部、4322…円筒部、4411…内周部、4412,4421,4423…円盤部、4422…円筒部、Sp…角度センサ、Sq…角度センサ、Sr…角度センサ