IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-中性子検出器 図1
  • 特許-中性子検出器 図2
  • 特許-中性子検出器 図3
  • 特許-中性子検出器 図4
  • 特許-中性子検出器 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】中性子検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 3/06 20060101AFI20241206BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
G01T3/06
G01T1/20 C
G01T1/20 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021095554
(22)【出願日】2021-06-08
(65)【公開番号】P2022187533
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2024-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 翔平
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020860(JP,A)
【文献】特開2010-197236(JP,A)
【文献】特開2001-013254(JP,A)
【文献】特開平06-235772(JP,A)
【文献】国際公開第2014/076890(WO,A1)
【文献】米国特許第08822943(US,B2)
【文献】米国特許第05393981(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、ZnS蛍光体と6Liあるいは10Bを含む中性子コンバータから構成され、中性子を検出した際に蛍光を放出する中性子シンチレータと、
前記筐体の内部に設けられ、前記中性子シンチレータからの前記蛍光を検出する光電子増倍管と、
前記筐体の内部に設けられ、前記中性子シンチレータを光学接合により支持して前記中性子シンチレータからの蛍光を前記光電子増倍管に導くライトガイドと、
前記筐体の内部に設けられ、前記ライトガイドおよび前記中性子シンチレータの周囲を取り囲む光の反射材と、
を有する検出部、
前記検出部の外側に設けられ、前記光電子増倍管からの信号を中性子の検出信号として取り出す信号処理部、
を備えた、
ことを特徴とする中性子検出器。
【請求項2】
前記中性子シンチレータは板状に構成され、前記ライトガイドは角柱状に構成されるとともに、当該ライトガイドの全側面に板状の前記中性子シンチレータが光学接合されていることを特徴とする請求項1に記載の中性子検出器。
【請求項3】
前記光電子増倍管を前記中性子シンチレータの長手方向の端部両側に配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の中性子検出器。
【請求項4】
前記検出部の長手方向の端部両側に設けられた前記検出部の出力端子のうち、一方の側の端子が、他方の側の端子とともに前記検出部の外部に引き出される構造を有していることを特徴とする請求項3に記載の中性子検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は中性子検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、原子力発電所、あるいは核燃料再処理工場において出力監視、あるいは臨界検知のために用いる中性子検出器には、BF計数管、あるいはHe比例計数管といったガス入り検出器が、ガンマ線弁別特性、あるいは広い動作範囲、長期間の安定性の観点で使用されてきた。
【0003】
ガス入り検出器のうちHe比例計数管は熱中性子に対する感度が最も高く、優れた検出感度を有するため最も普及している中性子検出器であるが、近年、Heガスが世界的に入手困難な状況にあり、近い将来には入手不可能となる可能性が生じている。このため、Heガス代替の中性子検出器の開発が世界的に取り組まれており、この中でもっとも期待されている方式としてシンチレータを用いた代替検出器が開発されている。
【0004】
Heガスに代わる検出媒体としてシンチレータを用いた中性子検出器として、ZS蛍光体とLiあるいは10Bを含む中性子コンバータから構成される、板状で両面から蛍光が放出可能とした構造の半透明型中性子シンチレータを検出器筐体の内部に配置し、中性子がこのシンチレータに入射した際に、放出される蛍光を、上記半透明型中性子シンチレータの端側に配置した光電子増倍管で検出し、この光電子増倍管から出力される信号を信号処理し中性子信号として取り出すように構成している。(例えば、特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-20860号公報(第1図、第2図、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のHeガスに代わる検出媒体として、シンチレータを用いた中性子検出器は、以上のように構成されているので、板状のシンチレータにおいて、中性子との相互作用により発生したシンチレーション光に対して、シンチレータの両端に配置された光電子増倍管の集光率が異なるため、光電子増倍管近傍であるシンチレータ両端付近に中性子が入射した場合と、光電子増倍管から離れたシンチレータ中央付近に中性子が入射した場合とでは、検出器の出力信号として得られるパルス信号の波高値が異なり、シンチレータ中央付近に中性子が入射した場合のパルス波高値はシンチレータ両端付近に中性子が入射した場合と比較して小さくなる。
【0007】
シンチレータを用いた中性子検出器では、ガンマ線との相互作用により発生するパルス信号はノイズ信号となるため、中性子によるパルス信号とガンマ線によるパルス信号を弁別するために、波高弁別レベルを設定している。
【0008】
ここで、中性子によるパルス波高値はガンマ線によるパルス波高値よりも大きいため、設定した波高弁別レベル未満のパルス波高値のパルス信号についてはガンマ線によるパルス信号とみなして後段の計数回路にて計数処理をしないが、板状のシンチレータにおいて、中央付近に中性子が入射した場合のパルス波高値が波高弁別レベルよりも低い場合には、中性子による信号として処理されず、計数効率が低くなるという問題点がある。
【0009】
また、従来のガス入り検出器の場合、検出器の有感領域にガスを充填するため、検出器の指向性は問題とならなかったが、板状のシンチレータを用いた検出器の場合、中性子が板状のシンチレータの正面方向から入射する場合と側面方向から入射する場合とでは、検出感度が異なるという問題点がある。
【0010】
さらに、Heガスの代替検出器とする場合、これまでに原子力発電所、あるいは核燃料再処理工場において、実際に適用されたHe比例計数管の定期取替に対応可能である必要性が考えられるため、既存のHe比例計数管の外形寸法と同等以下で、He比例計数管と同等以上の検出感度を有する必要性があるという制約条件がある。
【0011】
本願は上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、Heガスを用いることなく、既存のHe比例計数管の代替となり得る、小型かつ中性子検出効率の高い中性子検出器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に開示される中性子検出器は、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられ、ZnS蛍光体と6Liあるいは10Bを含む中性子コンバータから構成され、中性子を検出した際に蛍光を放出する中性子シンチレータと、
前記筐体の内部に設けられ、前記中性子シンチレータからの前記蛍光を検出する光電子増倍管と、
前記筐体の内部に設けられ、前記中性子シンチレータを光学接合により支持して前記中性子シンチレータからの蛍光を前記光電子増倍管に導くライトガイドと、
前記筐体の内部に設けられ、前記ライトガイドおよび前記中性子シンチレータの周囲を取り囲む光の反射材と、
を有する検出部、
前記検出部の外側に設けられ、前記光電子増倍管からの信号を中性子の検出信号として取り出す信号処理部、
を備えた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本願に開示される中性子検出器によれば、Heガスを用いることなく、既存のHe比例計数管の代替となり得る小型かつ中性子検出効率の高い中性子検出器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る中性子検出器の一例を示した図である。
図2】実施の形態1に係る中性子検出器で測定した測定結果の一例を示す図である。
図3】実施の形態2に係る中性子検出器の一例を示した図である。
図4】実施の形態3に係る中性子検出器の一例を示した図である。
図5】実施の形態4に係る中性子検出器の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願は、原子力発電所、あるいは核燃料再処理工場のような高い放射線照射環境下で、測定対象場における放射線線量率を測定する放射線検出器に係り、特に、シンチレータを用いた中性子検出器に関するものである。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る中性子検出器の構成の一例を示した図である。図1において、中性子検出器は、検出部1と信号処理部2により構成される。なお、図1において、図1(a)は、本実施の形態1の中性子検出器全体を示した概要構成図であり、図1(b)は上記検出部1のうち、以下で詳しく説明するシンチレータの中央部(図1(a)の一点鎖線AAを参照)の断面を示す断面図である。
【0017】
検出部1は中性子に反応し発光を生じるシンチレータ部4と、光電子増倍管5と、光電子増倍管ブリーダー回路6とを、遮光および電磁遮蔽効果のある検出器筐体3(以下、単に「筐体3」と呼ぶ)に組み込んだ構造となっている。
【0018】
シンチレータ部4は角柱状のライトガイド15の側面に、Liあるいは10Bを含む中性子シンチレータ14を光学接合にて貼り合わせ、周囲を反射材13で覆う構造とする。反射材13には、白色の塗料のほか、フッ素樹脂製のテープなどを使用してもよい。
【0019】
信号処理部2は、上記検出部1からの信号である出力された電荷を増幅する増幅回路7と、中性子のパルスをノイズ、あるいはγ線のパルスと弁別する波高弁別回路8と、出力波形を矩形波に整形する波形整形回路9と、パルス数を計数するカウンタ10と、検出部1へ高電圧を供給する高圧電源11により構成される。
【0020】
検出部1へ中性子線(中性子)が入射すると、中性子シンチレータ14で発光が生じ、反射材13およびライトガイド15により、効率よく、光がシンチレータ部4の内部を反射しながら光電子増倍管5へ伝達されることで感度の向上が期待できる。
【0021】
図2は実施の形態1に係る中性子検出器の検出性能を確認するため、中性子検出器による中性子検出に関わる計数率の照射位置依存性を測定した結果である。
ライトガイド15が有る検出器、およびライトガイド15が無い検出器の、計2種類の検出器を用意し、それぞれの検出器に対し、放射線を照射する位置を変化させながら、本実施の形態1に係る中性子検出器の計数率を測定した。
【0022】
放射線源は60Coを用い、5mm幅にコリメートして検出器側面より照射した。
その結果、検出器の中央位置(光電子増倍管から約45mm離れた位置)では、ライトガイドが無い検出器での計数率の測定結果に比べ、ライトガイドが有る検出器での計数率の測定結果が約5倍となり、検出器先端近傍(光電子増倍管から80mmの位置)では、ライトガイドが無い検出器に比べ、ライトガイドが有る検出器では約8倍の感度向上効果が認められた。
【0023】
なお、ライトガイドは、アクリル製で10mm×10mm×92mmのものを、中性子シンチレータはLi含有ガラスシンチレータ(6.6mm×90mm×t1.3mm)を使用した。
【0024】
実施の形態2.
次に、実施の形態2に係る中性子検出器について図3を用いて説明する。図3は実施の形態2に係る中性子検出器の構成の一例を示した図である。図3においても、中性子検出器は、検出部1と信号処理部2により構成される。本実施の形態2の中性子検出器の特徴について、実施の形態1と異なる点を中心に、以下詳しく説明する。なお、図3において、図3(a)は、本実施の形態2の中性子検出器全体を示した概要構成図であり、図3(b)は上記検出部1のシンチレータ部4の中央部(図3(a)の一点鎖線BBを参照)の断面を示す断面図である。
【0025】
上記実施の形態1に係る中性子検出器では、ライトガイド15の側面のうち1面に対し、中性子シンチレータ14を貼り合わせる構造について述べたが、本実施の形態2に係る中性子検出器では、図3に示すように、ライトガイド15の側面のうち、4面に対し中性子シンチレータ141、142、143、144を張り合わせる構造としたことにより、実施の形態1に係る中性子検出器に比較して、更なる感度向上が期待できる。
【0026】
また、実施の形態1に係る中性子検出器では、中性子シンチレータの面に対し垂直方向に入射する中性子に対しては高い感度が得られるが、水平方向に入射する中性子に対しての感度が低下する欠点があったが、実施の形態2に係る中性子検出器によれば、全周方向に対して均一な感度が得られ、方向特性の向上が期待できる。
【0027】
実施の形態3.
次に、実施の形態3に係る中性子検出器について図4を用いて説明する。図4は実施の形態3に係る中性子検出器の構成の一例を示した図である。図4においても、中性子検出器は、検出部1と信号処理部2により構成される。本実施の形態3の中性子検出器の特徴について、実施の形態1および2と異なる点を中心に、以下詳しく説明する。なお、図4において、図4(a)は、本実施の形態3の中性子検出器全体を示した概要構成図であり、図4(b)は上記検出部1のシンチレータ部4の中央部(図4(a)の一点鎖線CCを参照)の断面を示す断面図である。
【0028】
上記実施の形態1および2に係る中性子検出器では、シンチレータ部4の一方の端面に対し光電子増倍管5を組み合わせる構造であったが、実施の形態3に係る中性子検出器では、図4に示すようにシンチレータ部4の両方の端面に対し光電子増倍管51、52を有していることが構成上、大きく異なる。そして、実施の形態3に係る中性子検出器では、これらの光電子増倍管51、52を組み合せることで、更なる感度向上が期待できる。
【0029】
すなわち、図4に示したように、光電子増倍管51には、光電子増倍管ブリーダー回路61と電荷を増幅する増幅回路71と高圧電源111とを組み合わせ、光電子増倍管52には、光電子増倍管ブリーダー回路62と電荷を増幅する増幅回路72と高圧電源112とを組み合わせる。
【0030】
また、検出部1の光電子増倍管51を通じて出力される電荷を増幅する増幅回路71には、中性子のパルスをノイズ、あるいはγ線のパルスと弁別する波高弁別回路81、出力波形を矩形波に整形する波形整形回路91、パルス数を計数するカウンタ101が接続され、検出部1の光電子増倍管52を通じて出力される電荷を増幅する増幅回路72には、中性子のパルスをノイズ、あるいはγ線のパルスと弁別する波高弁別回路82、出力波形を矩形波に整形する波形整形回路92、パルス数を計数するカウンタ102が接続される。
【0031】
つまり、実施の形態1に係る中性子検出器では、ライトガイドが有るので、図2に示したように、ライトガイド無のものに比べると感度は高くなるが、光電子増倍管から遠い位置の反応に対して感度が低い欠点があった(実施の形態2に係る中性子検出器でも同様)。
【0032】
これに対して、実施の形態3に係る中性子検出器では、上述のように、シンチレータ部4の両方の端面に対し光電子増倍管51、52を組み合せるようにしたので、両端で高い感度が得られるという特徴を持つ。
【0033】
実施の形態4.
次に、実施の形態4に係る中性子検出器について図5を用いて説明する。図5は実施の形態4に係る中性子検出器の構成の一例を示した図である。図5においても、中性子検出器は、上述の実施の形態1~3と同様、検出部1と信号処理部2により構成される。また、実施の形態3に係る中性子検出器と同様、シンチレータ部4の両方の端面に対し光電子増倍管51、52を有している。そこで、本実施の形態4の中性子検出器の特徴について、実施の形態3と異なる点を中心に、以下詳しく説明する。なお、図5において、図5(a)は、本実施の形態4の中性子検出器全体を示した概要構成図であり、図5(b)は上記検出部1のシンチレータ部4の中央部(図5(a)の一点鎖線DDを参照)の断面を示す断面図である。
【0034】
上記実施の形態3に係る中性子検出器では、検出部1の両端から出力される構造について説明したが、パイプの内部などを測定する場合には検出器出力は片側からしか取れない場合がある。このような場合でも、図5に示すとおり、検出器先端側の配線を折り返し、筐体3の内部に収め、片側から引き出す構造とすることで、実施の形態4に係る中性子検出器では、適用範囲が実施の形態3の中性子検出器よりも、さらに広くなった中性子検出器を得ることができる。
【0035】
また、実施の形態4の中性子検出器では、上述のような構造を採用したため、シンチレータ部4の両方の端面に対し光電子増倍管51、52を有していても、検出部1へ電圧を供給する電源は、1個の高圧電源113だけで済み、実施の形態3の場合のように、2個必要とはしない(図5参照)。
【0036】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0037】
1 検出部、2 信号処理部、3 筐体(検出器筐体)、4 シンチレータ部、5、51、52 光電子増倍管、6、61、62 光電子増倍管ブリーダー回路、7、71、72 増幅回路、8、81、82 波高弁別回路、9、91、92 波形整形回路、10、101、102 カウンタ、11、111、112、113 高圧電源、13 反射材、14、141、142、143、144 中性子シンチレータ、15 ライトガイド
図1
図2
図3
図4
図5