(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20241206BHJP
A61F 13/472 20060101ALI20241206BHJP
A61F 13/551 20060101ALI20241206BHJP
A61F 13/56 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A61F13/514 500
A61F13/472
A61F13/514 330
A61F13/551 200
A61F13/56 110
(21)【出願番号】P 2021103799
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2024-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 裕美
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-099920(JP,U)
【文献】実開昭61-094505(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0319890(US,A1)
【文献】実開昭61-043209(JP,U)
【文献】特開2002-204812(JP,A)
【文献】特開2019-085659(JP,A)
【文献】実開昭53-025198(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下着当接面を形成する裏面シートの外面側の後方部に袋体が配置され、
前記袋体は、後端部に設けられた接合部にて前記裏面シートに接合され、それより前方が前記裏面シートに接合されておらず、該袋体の下着当接面に、装着時に下着とのズレ止めを図るズレ止め粘着剤層が設けられている
とともに、前記袋体の開口部は、吸収性物品の後方に位置し、後方に向けて開口していることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記袋体は、伸縮性シートからなる請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記袋体の開口部は、前記接合部より前方側に設けられている請求項1
、2いずれかに記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記袋体を含む吸収性物品の後方部には、前記袋体に設けられた前記ズレ止め粘着剤層以外に、下着とのズレ止めを図る粘着剤層が設けられていない請求項1~
3いずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド等の吸収性物品に係り、詳しくは下着当接面の後方部に袋体が配置され、該袋体の下着当接面にズレ止め粘着剤層が設けられた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
夜用ナプキンや長時間用ナプキンなどのように長さの長いナプキンの場合、ナプキンの下着当接面が全長に亘って下着に固定されているため、ナプキンが脚やお尻の動きに追従せず、肌面とナプキン表面との擦れによる痛みや痒みなどの肌へのダメージが大きくなる課題があった。
【0003】
また、使用済みナプキンを丸めて廃棄する際、ナプキンの両側が開いているため、経血が流出することで手を汚したり、サニタリーボックス内が衛生的でなかったりするなどの課題があった。
【0004】
下記特許文献1では、肌側の表面シートと非肌側の裏面シートとの間に吸収体が介在された本体部分の非肌側にアウターとの固定を図るズレ止め部材が備えられた吸収性物品において、前記吸収体とずれ止め部材との間に、発泡樹脂からなるせん断変形層が備えられ、前記せん断変形層のせん断変形により、前記せん断変形層の肌側に配置された部材と、前記せん断変形層の非肌側に配置された部材とが面方向に対して相対的に位置ずれし得るように成されている吸収性物品が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献2では、吸収性本体と、前記吸収性本体の肌非対向面側に取り付けられた袋体と、を備え、前記袋体は、前記袋体を裏返すことにより形成される内部空間に、前記吸収性本体を収納可能であり、前記吸収性本体の肌非対向面側であって、前記吸収性本体の長さ方向の中央を含む位置の上に、取り付けられている吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-156641号公報
【文献】特開2014-151128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載の吸収性物品では、吸収性物品の着用時に、脚を動かすなどの姿勢を変化させる着用者の動作に伴い、アウターにヨレやシワなどが生じてアウターが着用者の肌に対して相対的に位置ずれしたときでも、前記せん断変形層がせん断変形することにより、前記せん断変形層の非肌側に配置された部材の位置ずれが、前記せん断変形層の肌側に配置された部材に影響を与えることなく、前記せん断変形層の肌側に配置された部材が着用者の肌に密着した状態に維持されるようになっているが、前記せん断変形層の変形量が一定程度に制限されているため、脚やお尻を大きく動かしたときは必ずしも充分に肌の擦れを低減することができないおそれがあった。
【0008】
また、上記特許文献2記載の吸収性物品では、前記袋体が使用後の吸収性本体を衛生的に廃棄するときに役立つだけでなく、吸収性本体の使用中においても、吸収性物品の着用感を向上させるためのクッション部材として機能するようになっているが、袋体が全面に亘って吸収性本体に固定されているため、脚やお尻の動きに追従しにくく、肌と吸収性物品とが擦れて痛みや痒みなどが生じやすく、肌へのダメージを充分に低減することができなかった。
【0009】
そこで本発明の主たる課題は、吸収性物品を脚やお尻の動きに確実に追従できるようにすることで、肌との擦れを低減するとともに、使用済み吸収性物品を衛生的に廃棄できるようにした吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために第1の態様として、下着当接面を形成する裏面シートの外面側の後方部に袋体が配置され、
前記袋体は、後端部に設けられた接合部にて前記裏面シートに接合され、それより前方が前記裏面シートに接合されておらず、該袋体の下着当接面に、装着時に下着とのズレ止めを図るズレ止め粘着剤層が設けられているとともに、前記袋体の開口部は、吸収性物品の後方に位置し、後方に向けて開口していることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0011】
上記第1の態様では、下着当接面を形成する裏面シートの外面側の後方部に配置された袋体が、後端部に設けられた接合部にて前記裏面シートに接合され、それより前方が前記裏面シートに接合されておらず、該袋体の下着当接面に、装着時に下着とのずれ止めを図るズレ止め粘着剤層が設けられているため、吸収性物品の装着時に着用者が脚やお尻を大きく動かすことによって吸収性物品の後方部に幅方向に向けて外力が作用したとき、前記袋体が変形することで、吸収性物品の後方部が脚やお尻に確実に追従し、吸収性物品表面と肌面との擦れが軽減して肌へのダメージを抑えることができる。また、使用済み吸収性物品を廃棄する際に、前端から丸めて前記袋体に収納することで、吸収性物品の全体を包囲した状態で衛生的に廃棄できる。
【0012】
上記袋体の開口部を、吸収性物品の後方に位置し、後方に向けて開口するように配置しているため、開口部を形成するシート材同士の相対的な移動により袋体が変形できる範囲が増加し、装着時における身体のより大きな動きにも吸収性物品の後方部が追従できるようになる。
【0013】
第2の態様として、前記袋体は、伸縮性シートからなる請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0014】
上記第2の態様では、装着時におけるより大きな身体の動きに追従できるようにするとともに、使用済み吸収性物品を袋体に簡単に収納できるようにするため、前記袋体を伸縮性を有するシート材で形成している。
【0015】
第3の態様として、前記袋体の開口部は、前記接合部より前方側に設けられている請求項1、2いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0016】
上記第3の態様では、使用済み吸収性物品を廃棄する際に、丸めた吸収性物品を袋体内に容易に収容できるようにするため、前記袋体の開口部を、前記接合部より前方側に設けている。
【0017】
第4の態様として、前記袋体を含む吸収性物品の後方部には、前記袋体に設けられた前記ズレ止め粘着剤層以外に、下着とのずれ止めを図る粘着剤層が設けられていない請求項1~3いずれかに記載の吸収性物品が提供される。
【0018】
上記第4の態様では、吸収性物品の後方部が着用者の身体の動きに確実に追従して移動できるようにするため、前記袋体に設けられたズレ止め粘着剤層以外では下着に固定しないようにしている。
【発明の効果】
【0019】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収性物品が脚やお尻の動きに確実に追従でき、肌との擦れが低減できるとともに、使用済み吸収性物品を衛生的に廃棄できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る生理用ナプキン1の一部破断展開図である。
【
図5】装着状態を示す生理用ナプキン1の平面図である。
【
図6】使用済み生理用ナプキンの廃棄手順を示す斜視図である。
【
図7】変形例に係る生理用ナプキン1の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0022】
〔生理用ナプキン1の基本構造〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、
図1~
図4に示されるように、ポリエチレンシートなどからなる不透液性の裏面シート2と、経血やおりものなど(以下、まとめて体液ともいう。)を速やかに透過させる透液性の表面シート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプまたは合成パルプなどからなる吸収体4と、肌当接面側の両側部に前後方向に沿うほぼ全長に設けられたサイドシート7とを備え、かつ前記吸収体4の周囲においては、その前後端縁部では前記裏面シート2と表面シート3との外縁部がホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合され、またその両側縁部では吸収体4よりも側方に延出している前記裏面シート2と前記サイドシート7とがホットメルトなどの接着剤やヒートシール、超音波シール等の接合手段によって接合されることにより、吸収体が介在しないフラップ部が形成されたものである。なお、図示例では、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために、前記吸収体4をクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5で囲繞しているが、この被包シート5は設けなくてもよい。また、図示しないが、前記表面シート3の非肌側に隣接して、前記表面シート3とほぼ同形状の親水性の不織布などからなるセカンドシートを配設してもよい。
【0023】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記裏面シート2は、ポリエチレン等の少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、蒸れ防止の観点から透湿性を有するものを用いるのが望ましい。この遮水・透湿性シート材としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートが好適に用いられる。前記裏面シート2としては、プラスチックフィルムと不織布とを積層させたポリラミ不織布を用いてもよい。前記吸収体4が介在する本体部分の裏面シート2の非肌側面(外面)であって、着用者の体液排出部Hを含む前方部には、ナプキン長手方向に沿って1または複数条の、図示例では3条の前方部ズレ止め粘着剤層8、8…が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着の内面に固定するようになっている。前記裏面シート2は、後述する袋体10の配置部位を除く部分が下着当接面を形成している。
【0024】
次いで、前記表面シート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、スパンレース法、スパンボンド法、サーマルボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記表面シート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0025】
前記裏面シート2と表面シート3との間に介在される吸収体4は、たとえば綿状パルプと吸水性ポリマーとにより構成されている。前記吸水性ポリマーは吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。
【0026】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0027】
前記表面シート3の幅寸法は、図示例では、
図3及び
図4の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記表面シート3とは別のサイドシート7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシート7が配設されている。かかるサイドシート7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。具体的には、坪量を13~23g/m
2として作製された不織布を用いるのが望ましく、かつ体液の透過を確実に防止するためにシリコン系、パラフィン系、アルキルクロミッククロリド系撥水剤などをコーティングした撥水処理不織布が好適に使用される。
【0028】
前記サイドシート7は、
図3及び
図4に示されるように、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置から裏面シート2の外縁までの範囲に亘ってホットメルトなどの接着剤によって接着され、当該サイドシート7と裏面シート2との積層シート部分により、吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないサイドフラップ部を形成している。このサイドフラップ部は、ほぼ着用者の体液排出部Hに相当する側部位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のウイング状フラップ部W、Wを形成するとともに、これより臀部側(後部側)位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のヒップホールド用フラップ部W
B、W
Bを形成する。前記ウイング状フラップ部W、Wの外面側(裏面シート2の外面側)にはウイングズレ止め粘着剤層8aが備えられ、下着に対する装着時に、前記ウイング状フラップ部W、Wを基端部の折返し線RL(
図1参照。)位置にて反対側(裏面シート2側)に折り返し、下着のクロッチ部分に巻き付けて止着するようになっている。前記ヒップホールド用フラップ部W
B、W
Bの外面側(裏面シート2の外面側)には粘着剤層が備えられておらず、装着時に着用者の臀部を覆うようになっている。
【0029】
一方、前記サイドシート7の内方側部分はほぼ二重に折り返されるとともに、この二重シート内部の長手方向中間部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の、図示例では4本の糸状弾性伸縮部材9、9…が伸長状態で配設されている。この二重シート部分は前後端部では
図4に示されるように、外側に1回折り返して積層された状態で吸収体4側に接着された非起立部分を形成している。これによって、
図3に示されるように、長手方向中間部の前記糸状弾性伸縮部材9…の配置範囲が、前記糸状弾性伸縮部材9…の収縮力により肌側に起立する左右対の立体ギャザーBS、BSを形成する。
【0030】
図1に示されるように、前記表面シート3の肌当接面側には、適宜のパターンで圧搾溝6が形成されている。前記圧搾溝6は、表面シート3の肌当接面側からの圧搾により、表面シート3及び吸収体4を一体的に裏面シート2側に窪ませた凹溝である。前記圧搾溝6は、少なくとも着用者の体液排出部Hに対応する領域の両側部に長手方向に沿って左右対で設けられている。
【0031】
〔袋体10について〕
本生理用ナプキン1では、
図2に示されるように、前記裏面シート2の外面側の後方部に袋体10が配置されている。前記袋体10は、内部に物体が収容できるように、一部に開口部を備えるとともに、この開口部以外の周囲の辺部が閉塞された積層シートからなるものである。
【0032】
前記袋体10は、生理用ナプキン1の後端部に設けられた接合部11にて前記裏面シート2に接合され、それより前方が前記裏面シート2に接合されておらず、該袋体10の下着当接面に、装着時に下着とのズレ止めを図る後方部ズレ止め粘着剤層12が設けられている。
【0033】
図2に示される袋体10は、裏面シート2の外面側に積層させるとともに、生理用ナプキン1の後方から前方に延在させたシート材を、生理用ナプキン1の前後方向中間部で外側に折り返して、その折り返し部分の両側部がそれぞれ両側シール部13で接合され、後端に後方に向けて開口する開口部14が形成された略方形状の袋状部10Aと、この袋状部10Aの後方に連続するとともに、前記袋状部10Aを構成する裏面シート2側のシート材を生理用ナプキン1の後方の端縁まで延在させた延在部10Bとからなるものである。前記延在部10Bの先端部には、該袋体10を裏面シート2に接合する前記接合部11が設けられている。前記袋状部10Aと延在部10Bとは連続する1枚のシート材によって形成するのが製作上好ましいが、別体のシート材によって形成したものを接合して構成してもよい。
【0034】
前記袋体10は、後方端部の前記接合部11のみで裏面シート2に接合され、この接合部11以外では前記裏面シート2に接合されておらず、この接合部11を基点として、それより前方部分が移動できるようになっている。すなわち、本生理用ナプキン1は、下着に対する装着状態で、前方部が前方部ズレ止め粘着剤層8…及びウイングズレ止め粘着剤層8a…で下着のクロッチ部分に固定され、後方部が前記後方部ズレ止め粘着剤層12…で下着の後方部分に固定されているが、前記後方部ズレ止め粘着剤層12…が、後端部に備えられた接合部11でしかナプキン本体に固定されない前記袋体10に設けられているため、
図5に示されるように、生理用ナプキン1の装着時に着用者が脚やお尻を動かすことによって、生理用ナプキン1の後方部に幅方向に向けた外力が作用したとき、前記袋体10が変形することで、生理用ナプキン1の後方部が脚やお尻の動きに追従して変形できるようになっている。このため、従来の生理用ナプキンのように、ナプキン後方部も前方部と同様に裏面シートの外面に設けられたズレ止め粘着剤層によって下着に固定され、ナプキン後方部に幅方向に向けた外力が作用しても、下着の引張力によって身体の動きに追従しにくいものに比べて、本生理用ナプキン1では、ナプキン表面と肌面との擦れが大きく減少して、肌へのダメージを極めて小さく抑えることができる。一方、生理用ナプキン1の前方部は、前方部ズレ止め粘着剤層8及びウイングズレ止め粘着剤層8aによって下着のクロッチ部分にしっかりと固定されているため、着用者の体液排出部Hに確実にフィットして体液の漏れが防止できる。
【0035】
また、前記袋体10は、
図6に示されるように、使用済み生理用ナプキンを廃棄する際に、丸めた使用済み生理用ナプキンを包む袋としても利用することができる。使用済み生理用ナプキンを廃棄する手順は、以下の通りである。
【0036】
図6(A)に示されるように、使用済み生理用ナプキンを下着から取り外し、生理用ナプキン1の前方端部から肌側面を内側にして前後方向に丸める。
図6(B)に示されるように、後方端部まで丸めたら、前記袋体10を接合部11を基点として前後方向にひっくり返し、
図6(C)に示されるように、開口部14を手で開いて、丸めた使用済み生理用ナプキンを内部に収容する。これによって、
図6(C)に示されるように、使用済み生理用ナプキンを袋体10によって完全に包んだ状態でコンパクトに廃棄できる。このように、本生理用ナプキン1では、使用済み生理用ナプキンの全体を袋体10によって包囲した状態で衛生的に廃棄できるため、臭気の拡散も少なくなる。また、前記接合部11によってナプキン本体の後端部に連続して袋体10が固定されているため、前端部から後端部まで前後方向に丸めた使用済み生理用ナプキンを袋体10内に挿入しやすい。更に、裏面シート2外面の前方部に設けられた前方部ズレ止め粘着剤層8…及びウイングズレ止め粘着剤層8aが、丸めた使用済み生理用ナプキンの内側に巻き込まれ、後端部まで丸めた状態で外周面には粘着剤層が存在しないため、丸めた使用済み生理用ナプキンを袋体10に挿入する際、粘着剤層にくっついたりせず、袋体10内にスムーズに滑り込ませることができる。
【0037】
以下、前記袋体10の構造について更に詳しく説明すると、
前記袋体10を構成するシート材としては、不織布やプラスチックシートなどを用いることができるが、特に伸縮性を有するシート材を用いるのが好ましい。伸縮性シートを用いることにより、袋体10の伸縮によって装着時のより大きな身体の動きに対しても生理用ナプキン1の後方部が確実に追従できるようになるとともに、使用済み生理用ナプキンを開口部14から袋体10の内部に収納しやすくなり、かつ使用済み生理用ナプキンを収納した後、開口部14が口開きしにくくなり、衛生的な状態及び臭気の拡散を防止した状態を確実に保持できる。前記伸縮性シートとしては、伸縮性を有するプラスチックフィルムや不織布などを用いることができる。
【0038】
前記袋体10の袋状部10Aは、両側部及び底部にマチのない「マチなし」としてもよいし、少なくとも両側部にマチを設けた「マチ付き」としてもよい。マチ付きの場合のマチの形態としては、底部から開口部14に向けて漸次マチ幅が拡大する三角形状のマチを両側部のみに設けてもよいし、両側部及び底部にそれぞれ等幅のマチを設けてもよい。このマチ部は、生理用ナプキン1の個装状態では、折り畳まれて積層されている。全長(前後方向の長さ)が29cm以下の短い生理用ナプキン1の場合は、マチ付きの袋状部10Aとすることで、袋体10のナプキン前後方向の長さを短くしても、廃棄時にしっかりと使用済み生理用ナプキンを包むことができるようにするのが好ましい。
【0039】
前記袋体10は、前述のように1枚のシート材の折り返しによって形成してもよいし、2枚以上のシート材を接合して形成してもよい。例えば、裏面シート2側に配置したシート材の外面側に、下着当接面を構成する別体のシート材を積層して周囲の辺部を接合することにより袋状部10Aを形成してもよい。このとき、裏面シート2側のシート材として伸縮性シートを用いることにより、袋体10の変形性を高めるとともに、外面側のシート材として通常の不織布やプラスチックシートを用いることにより、後方部ズレ止め粘着剤層12の下着との固定性を高めるようにしてもよい。
【0040】
前記袋体10の幅寸法(ナプキン幅方向の長さ)は、
図1又は
図2に示される生理用ナプキン1の展開時の最大幅に対して、70~90%とするのがよい。これにより、使用済み生理用ナプキンのフラップ部を側方に展開した状態で丸めたときも、確実に袋体10の内部に収容できるようになる。
【0041】
前記袋体10の開口部14は、生理用ナプキン1の後方に位置し、生理用ナプキン1の後方に向けて開口するように設けるのが好ましい。これによって、開口部14において積層された前記袋状部10Aを構成する裏面シート2側のシート材と外面側のシート材との間で相対的な変形によって袋体10の変形性が向上し、身体のより大きな動きにもナプキン後方部が追従できるようになる。また、使用済み生理用ナプキンを廃棄する際、丸めた使用済み生理用ナプキンを袋体10の内部に収容しやすくなる。一方、図示しないが、前記開口部14をナプキン前方端部に設け、生理用ナプキン1の前方に向けて開口するように配置してもよい。この場合、使用済み生理用ナプキンを廃棄する際は、後端部まで丸めた使用済み生理用ナプキンに対して、袋体10を開口部14から裏返して表裏を反転させることにより包むようにする。
【0042】
前記袋体10を裏面シート2に接合する接合部11は、袋体10の後方端部のみに設けられ、それより前方には設けられていない。このように、接合部11を後方端部のみに設け、それより前方部分を非接合領域とすることにより、この非接合領域が変形領域となり、袋体10の大部分がナプキン本体と相対移動できるようになる。
【0043】
図2に示されるように、前記接合部11は、袋体10の後方端縁に沿って生理用ナプキン1の幅方向に延びるように形成されており、その幅寸法A、つまり生理用ナプキン1の前後方向の長さ寸法は、最大部分で10mm以上、好ましくは10~30mmとするのがよい。前記幅寸法Aを10mm以上とすることにより、一定量以上のナプキン本体に対する接合強度を確保することができ、袋体10の変形に対して接合部11の剥離が防止できる。
【0044】
前記接合部11の平面形状としては、
図2に示されるように、後方側外形線が、ナプキン後方に向けて膨出する曲線状の生理用ナプキン1の外形線に沿う曲線からなるとともに、前方側外形線が生理用ナプキン1の幅方向に延びる直線からなる略部分円形状としてもよいし、
図7に示されるように、袋体10の後方端縁を生理用ナプキン1の略幅方向に沿って延びる略等幅の湾曲した帯状に形成してもよい。前記接合部11は、袋体10が変形しやすいように、袋体10の幅方向中間部のみとし、両側部には接合部を設けないようにしてもよいし、袋体10の全幅に亘って形成してもよい。中間部のみとした場合は、接合部11のナプキン幅方向の長さは、少なくとも50~120mmは確保しておくのが好ましい。
【0045】
前記接合部11を設ける範囲は、
図2に示されるように、吸収体4が介在しない後部フラップ部の領域のみに設けてもよいし、図示しないが、フラップ部と吸収体4が厚み方向に重なる部分とに跨がって設けてもよい。フラップ部のみに設けた場合は、接合部11が設けられる部分のナプキン本体の剛性がそれほど高くないため、ナプキン本体が身体に追従して変形しやすくなる。一方、吸収体4が介在する領域に跨がって設けた場合は、吸収体4が介在する部分の剛性によって接合部11の変形が抑制され、接合部11の剥離が防止できる。
【0046】
前記袋体10の開口部14は、前記接合部11より前方側に設けられている。すなわち、接合部11からナプキン前方に離隔した位置に開口部14が設けられている。換言すると、前記開口部14は、接合部11の前方に、袋体10が裏面シート2に接合されない非接合部を介して設けられている。接合部11からナプキン前方に離隔して開口部14が設けられることにより、接合部11と開口部14との間に遊びができて、丸めた使用済み生理用ナプキンを開口部14から袋体10内に収容しやすくなる。
【0047】
本生理用ナプキン1では、
図2に示されるように、吸収体4が介在する本体部分に設けられるズレ止め粘着剤層は、着用者の体液排出部Hを含む前方部と、前記袋体10を含む後方部とで別々に配置されている。すなわち、前方部には前記前方部ズレ止め粘着剤層8…が裏面シート2の外面に配置され、後方部には前記後方部ズレ止め粘着剤層12…が袋体10の外面に配置されている。
【0048】
前記袋体10を含む生理用ナプキン1の後方部には、この袋体10に設けられた後方部ズレ止め粘着剤層12…以外に、下着とのずれ止めを図る粘着剤層が設けられていない。これによって、生理用ナプキン1の後方部が着用者の身体の動きに確実に追従して移動できるようになる。前記後方部ズレ止め粘着剤層12…は、前記袋体10の裏面シート2に接合されない領域であって、袋状部10Aの外面(下着当接面)の吸収体4と重なる幅方向の中央部に設けられている。
【0049】
図2に示されるように、前記後方部ズレ止め粘着剤層12は、接合部11より前方に所定の離隔距離Bを空けた位置に設けられている。この離隔距離Bが大きいほど、装着時にナプキン後方部が変形できる範囲が大きくなるが、あまり大きくしすぎると、ナプキン後方部の安定性が低下し、逆にフィット性が悪化するおそれがある。そのため、前記離隔距離Bの最適な範囲としては、10~50mm、好ましくは10~30mmとするのがよい。
【0050】
ところで、新たに開封した生理用ナプキン1を下着に装着する作業の過程で、袋体10が後方端部に設けられた接合部11でしかナプキン本体に接合していないため、袋体10の非接合領域がヒラヒラして下着に固定しにくいおそれがある。その対策として、袋体10の前方部分をナプキン本体に仮止めする仮止め手段を設けてもよい。前記仮止め手段としては、生理用ナプキン1の着用中における脚やお尻の動きに伴う外力によって簡単に解除可能な接合力を有するものであり、接合力の弱い粘着剤層や、両端部がそれぞれ袋体10及びナプキン本体に接合され、その中間部にミシン目などの易破断部を備えた不織布片などによって構成することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…生理用ナプキン、2…裏面シート、3…表面シート、4…吸収体、5…被包シート、6…圧搾溝、7…サイドシート、8…前方部ズレ止め粘着剤層、9…糸状弾性伸縮部材、10…袋体、10A…袋状部、10B…延在部、11…接合部、12…後方部ズレ止め粘着剤層、13…両側シール部、14…開口部