(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】パラシュート装置、射出装置及び飛行装置
(51)【国際特許分類】
B64D 17/72 20060101AFI20241206BHJP
B64D 17/80 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
B64D17/72
B64D17/80
(21)【出願番号】P 2021104124
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】下久 昌司
(72)【発明者】
【氏名】横田 有紀
【審査官】近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-070426(JP,A)
【文献】特開2016-147604(JP,A)
【文献】特開2021-070338(JP,A)
【文献】中国実用新案第211766329(CN,U)
【文献】国際公開第2015/059703(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/72
B64D 17/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラシュートと、
一端が開口し他端に底部を有する前記パラシュートを収容する筒状の収容部と、
前記収容部の底部に取り付けられてガスを発生するガス発生装置と、
前記収容部の周面部に配置されていてかつ前記パラシュートに連結された少なくとも1つの飛翔体と、
前記収容部の周面部に配置されていてかつ前記ガス発生装置に連結されており、前記ガス発生装置からのガスにより前記飛翔体を射出可能に保持した射出部と、
前記ガス発生装置からのガスにより前記パラシュートを前記底部の側から前記収容部の開口部に向かって押し出すように、前記ガス発生装置に対して摺動可能に取り付けられたカタパルトと、
を備え
、
前記カタパルトは、
一端が開口し他端に壁部を有し、前記ガス発生装置を収容するように該ガス発生装置に被されている筒状の押出部材と、
一端が前記押出部材の前記壁部に固定されていて、前記ガス発生装置内から抜出し不能に前記ガス発生装置と他端側で係合可能に形成された棒状部材と、
を有し、
前記押出部材は、開口の側の縁から外側に延出し、摺動方向において前記射出部と重ならないように設けられた少なくとも1つの鍔部を有し、
前記収容部は、該収容部に対する前記押出部材の相対的な回転を防ぐように前記鍔部と係合する係合部材を有することを特徴とするパラシュート装置。
【請求項2】
前記棒状部材は、他端において丸味を帯びて形成されていることを特徴とする請求項
1に記載のパラシュート装置。
【請求項3】
前記収容部の前記底部には、傾斜面をもって凹に形成された凹部を有し、前記棒状部材の他端は、前記凹部に収容されていることを特徴とする請求項
1または2に記載のパラシュート装置。
【請求項4】
前記ガス発生装置は、前記棒状部材を摺動可能に案内する案内孔を有し、該案内孔の内周面にOリングが設けられていることを特徴とする請求項
1から
3までのいずれか一項に記載のパラシュート装置。
【請求項5】
パラシュートと、
一端が開口し他端に底部を有する前記パラシュートを収容する筒状の収容部と、
前記収容部の底部に取り付けられてガスを発生するガス発生装置と、
前記収容部の周面部に配置されていてかつ前記パラシュートに連結された少なくとも1つの飛翔体と、
前記収容部の周面部に配置されていてかつ前記ガス発生装置に連結されており、前記ガス発生装置からのガスにより前記飛翔体を射出可能に保持した射出部と、
前記ガス発生装置からのガスにより前記パラシュートを前記底部の側から前記収容部の開口部に向かって押し出すように、前記ガス発生装置に対して摺動可能に取り付けられたカタパルトと、
を備え、
前記カタパルトは、
一端が開口し他端に壁部を有し、前記ガス発生装置を収容するように該ガス発生装置に被されている筒状の押出部材と、
一端が前記押出部材の前記壁部に固定されていて、前記ガス発生装置内から抜出し不能に前記ガス発生装置と他端側で係合可能に形成された棒状部材と、
を有し、
前記ガス発生装置は、
前記棒状部材を摺動可能に案内する案内孔を有し、該案内孔の内周面にOリングが設けられていて、前記案内孔の縁に沿って前記収容部の前記開口部の側に立設した環状凸部を有し、
前記棒状部材の延在方向と交差する方向に前記環状凸部及び前記棒状部材を径方向に貫通し、前記棒状部材の摺動により破断する係止部材が設けられている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項6】
パラシュートに連結可能な飛翔体と、
一端が開口し他端に底部を有し前記パラシュートを収容する筒状の収容部と、
前記収容部の前記底部に取り付けられてガスを発生するガス発生装置と、
前記収容部の周面部に配置されていてかつ前記ガス発生装置に連結されており、前記ガス発生装置からのガスにより前記飛翔体を射出可能に保持した射出部と、
前記ガス発生装置からのガスにより前記パラシュートを前記底部の側から前記収容部の開口部に向かって押し出すように、前記ガス発生装置に対して摺動可能に取り付けられたカタパルトと、
を備え
、
前記カタパルトは、
一端が開口し他端に壁部を有し、前記ガス発生装置を収容するように該ガス発生装置に被されている筒状の押出部材と、
一端が前記押出部材の前記壁部に固定されていて、前記ガス発生装置内から抜出し不能に前記ガス発生装置と他端側で係合可能に形成された棒状部材と、
を有し、
前記押出部材は、開口の側の縁から外側に延出し、摺動方向において前記射出部と重ならないように設けられた少なくとも1つの鍔部を有し、
前記収容部は、該収容部に対する前記押出部材の相対的な回転を防ぐように前記鍔部と係合する係合部材を有することを特徴とするパラシュートを射出する射出装置。
【請求項7】
一端が開口し他端に底部を有しパラシュートを収容する筒状の収容部と、
前記収容部の前記底部に取り付けられてガスを発生するガス発生装置と、
前記ガス発生装置からのガスにより前記パラシュートを前記底部の側から前記収容部の開口部に向かって押し出すように、前記ガス発生装置に対して摺動可能に取り付けられたカタパルトと、
を備え、
前記カタパルトは、
一端が開口し他端に壁部を有し、前記ガス発生装置を収容するように該ガス発生装置に被されている筒状の押出部材と、
一端が前記押出部材の前記壁部に固定されていて、前記ガス発生装置内から抜出し不能に前記ガス発生装置と他端側で係合可能に形成された棒状部材と、
を有し、
前記ガス発生装置には前記棒状部材を摺動可能に案内する案内孔
を有し、該案内孔の内周面にOリングが設けられてい
て、前記案内孔の縁に沿って前記収容部の前記開口部の側に立設した環状凸部を有し、
前記棒状部材の延在方向と交差する方向に前記環状凸部及び前記棒状部材を径方向に貫通し、前記棒状部材の摺動により破断する係止部材が設けられている
ことを特徴とするパラシュートを射出する射出装置。
【請求項8】
機体ユニットと、
前記機体ユニットに接続され、推力を発生する推力発生部と、
前記推力発生部を制御する飛行制御部と、
飛行時の異常を検出する異常検出部と、
請求項1から
5までのいずれか一項に記載のパラシュート装置と、
前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を射出させる落下制御部と、を備える
ことを特徴とする飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラシュート装置、射出装置及び飛行装置に関し、例えば、遠隔操作及び自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置に取り付けられるパラシュート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作及び自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置(以下、単に「回転翼機」ともいう)の産業分野への実用化が検討されている。例えば、運送業において、回転翼機(いわゆるドローン)による荷物の輸送や旅客の輸送等が検討されている。
【0003】
輸送用の回転翼機は、GPS(Global Positioning System)信号等によって自己の位置を特定しながら飛行する自律飛行機能を備えている。しかしながら、何らかの原因で回転翼機に異常が発生した場合、自律飛行ができなくなり、回転翼機の落下等の事故が発生するおそれがある。そのため、回転翼機の安全性の向上が望まれている。
【0004】
特に、輸送用の回転翼機は、今後、より大きな荷物や、旅客を輸送できるように機体の大型化が進むと予想される。このような大型の回転翼機が何らかの原因で制御不能に陥って落下した場合、これまでの回転翼機に比べて、人や構造物に甚大な被害を与えるおそれがある。そのため、回転翼機の大型化を図る場合、これまで以上に安全性を重視する必要がある。
【0005】
そこで、回転翼機の安全性を向上させるために、例えば、特許文献1に開示されているような飛翔体用のパラシュート装置を回転翼機に取り付けることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の飛翔体用のパラシュートは、飛翔時に発生する気流によりパラシュートが開傘しやすいように設計されているため、上空において静止している状態から落下した場合、すぐに気流の効果が得られず、パラシュートが直ちに開傘しないことが検討により明らかとなった。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、飛行装置の飛行時又は落下時における気流の効果がすぐに得られない場合であっても、確実なパラシュートの開傘を図る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るパラシュート装置は、パラシュートと、一端が開口し他端に底部を有する前記パラシュートを収容する筒状の収容部と、前記収容部の底部に取り付けられてガスを発生するガス発生装置と、前記収容部の周面部に配置されていてかつ前記パラシュートに連結された少なくとも1つの飛翔体と、前記収容部の周面部に配置されていてかつ前記ガス発生装置に連結されており、前記ガス発生装置からのガスにより前記飛翔体を射出可能に保持した射出部と、前記ガス発生装置からのガスにより前記パラシュートを前記底部の側から前記収容部の開口部に向かって押し出すように、前記ガス発生装置に対して摺動可能に取り付けられたカタパルトと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、飛行装置の飛行時又は落下時における気流の効果がすぐに得られない場合であっても、確実にパラシュートを開傘することを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るパラシュート装置を備えた飛行装置の外観を模式的に示す図である。
【
図2】本実施の形態に係るパラシュート装置を備えた飛行装置の機能ブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るパラシュート装置におけるパラシュートが開いた状態を概略的に示す図である。
【
図4】本実施の形態に係るパラシュート装置の概略的な平面図である。
【
図5A】
図4のA-A線に沿ったパラシュート装置の部分断面図である。
【
図5B】
図4のB-B線に沿ったパラシュート装置の部分断面図である。
【
図6A】ガス発生装置の構成を説明するための
図4のA-A線に沿った断面図である。
【
図6B】ガス発生装置の構成を説明するための
図4のB-B線に沿った断面図である。
【
図8】カタパルトのピストンの構成を説明するための図である。
【
図9A】パラシュートを押し出した後の飛翔体及びカタパルトの状態を示す図である。
【
図9B】ガスによるカタパルトの摺動を説明するための部分拡大図である。
【
図10】本実施の形態に係る飛行装置のパラシュートが開いた状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
まず、本発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕パラシュート(10)と、一端が開口し他端に底部(22)を有するパラシュート(10)を収容する筒状の収容部(20)と、収容部(20)の底部(22)に取り付けられてガスを発生するガス発生装置(30)と、収容部(20)の周面部(21)に配置されていてかつパラシュート(10)に連結された少なくとも1つの飛翔体(50)と、収容部(20)の周面部(21)に配置されていてかつガス発生装置(30)に連結されており、ガス発生装置(30)からのガスにより飛翔体(50)を射出可能に保持した射出部(40)と、ガス発生装置(30)からのガスによりパラシュート(10)を底部(22)側から収容部(20)の開口部(23)に向かって押し出すように、ガス発生装置(30)に対して摺動可能に取り付けられたカタパルト(60)と、を備えることを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記パラシュート装置(1)において、カタパルト(60)は、一端が開口し他端に壁部(63)を有し、ガス発生装置(30)を収容するようにガス発生装置(30)に被されている筒状の押出部材(61)と、一端が押出部材(61)の壁部(63)に固定されていて、ガス発生装置(30)内から抜出し不能にガス発生装置(30)と他端側で係合可能に形成された棒状部材(68)と、を有していてもよい。
【0015】
〔3〕上記パラシュート装置(1)において、押出部材(61)は、開口の側の縁から外側に延出し、摺動方向において射出部(40)と重ならないように設けられた少なくとも1つの鍔部(64)を有していてもよい。
【0016】
〔4〕上記パラシュート装置(1)において、収容部(20)は、収容部(20)に対する押出部材(61)の相対的な回転を防ぐように鍔部(64)と係合する係合部材(22a)を有していてもよい。
【0017】
〔5〕上記パラシュート装置(1)において、棒状部材(68)は、他端(682)において丸味を帯びて形成されていてもよい。
【0018】
〔6〕上記パラシュート装置(1)において、収容部(20)の底部(22)には、傾斜面をもって凹に形成された凹部(322)を有し、棒状部材(68)の他端(682)は、凹部(322)に収容されていてもよい。
【0019】
〔7〕上記パラシュート装置(1)において、ガス発生装置(30)は、棒状部材(68)を摺動可能に案内する案内孔(317)を有し、該案内孔(317)の内周面にOリング(318)が設けられていてもよい。
【0020】
〔8〕上記パラシュート装置(1)において、ガス発生装置(30)は、案内孔(317)の縁に沿って開口部(23)の側に立設した環状凸部(316)を有し、棒状部材(68)の延在方向と交差する方向に環状凸部(316)及び棒状部材(68)を径方向に貫通し、棒状部材(68)の摺動により破断する係止部材(319p)が設けられていてもよい。
【0021】
〔9〕本発明に係る射出装置(2)は、パラシュート(10)に連結可能な飛翔体(50)と、一端が開口し他端に底部(22)を有しパラシュート(10)を収容する筒状の収容部(20)と、収容部(20)の底部(22)に取り付けられてガスを発生するガス発生装置(30)と、収容部(20)の周面部(21)に配置されていてかつガス発生装置(30)に連結されており、ガス発生装置(30)からのガスにより飛翔体(50)を射出可能に保持した射出部(40)と、ガス発生装置(30)からのガスによりパラシュート(10)を底部(22)側から収容部(20)の開口部(23)に向かって押し出すように、ガス発生装置(30)に対して摺動可能に取り付けられたカタパルト(60)と、を備えることを特徴とする。
【0022】
〔10〕本発明に係る射出装置は、一端が開口し他端に底部(22)を有しパラシュート(10)を収容する筒状の収容部(20)と、収容部(20)の底部(22)に取り付けられてガスを発生するガス発生装置(30)と、ガス発生装置(30)からのガスによりパラシュート(10)を底部(22)側から収容部(20)の開口部(23)に向かって押し出すように、ガス発生装置(30)に対して摺動可能に取り付けられたカタパルト(60)と、を備え、カタパルト(60)は、一端が開口し他端に壁部(63)を有し、ガス発生装置(30)を収容するようにガス発生装置(30)に被されている筒状の押出部材(61)と、一端(681)が押出部材(61)の壁部(63)に固定されていて、ガス発生装置(30)内から抜出し不能にガス発生装置(30)と他端(682)側で係合可能に形成された棒状部材(68)と、を有し、押出部材(61)は、開口の側の縁から外側に延出した少なくとも1つの鍔部(64)を有し、ガス発生装置(30)には棒状部材(68)を摺動可能に案内する案内孔(317)が設けられていることを特徴とする。
【0023】
〔11〕本発明に係る飛行装置(100)は、機体ユニット(110)と、機体ユニット(110)に接続され、推力を発生する推力発生部(120)と、推力発生部(120)を制御する飛行制御部(114)と、飛行時の異常を検出する異常検出部と、上記〔1〕から〔8〕までのいずれかに記載のパラシュート装置(1)と、異常検出部(115)による異常の検出に応じて、飛翔体(50)を射出させる落下制御部(116)と、を備えることを特徴とする。
【0024】
2.実施の形態の具体例
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0025】
本実施の形態に係るパラシュート装置1を備える飛行装置100は、例えば、3つ以上のロータを有するマルチロータ型の飛行装置であり、いわゆるドローンである。本実施の形態に係るパラシュート装置1は、飛行装置100を安全に降下させるためのものである。パラシュート装置1は、公知の飛行装置に適用され、適用される飛行装置は、特定の飛行装置に限定されない。例えば、本発明の実施の形態に係るパラシュート装置1は、
図1に示す飛行装置100に適用される。
【0026】
図1は、本実施の形態に係るパラシュート装置1を備えた飛行装置100の外観を模式的に示す図である。飛行装置100は、機体ユニット110と、推力発生部121~12n(nは3以上の整数)と、パラシュート装置1と、報知装置130と、アーム部140と、を備えている。
【0027】
機体ユニット110は、飛行装置100の本体部分である。機体ユニット110は、後述のように、飛行装置100の飛行を制御するための各種機能部を収容している。なお、本実施の形態においては、一例として円柱状の機体ユニット110を図示しているが、機体ユニット110の形状は特に限定されない。
【0028】
推力発生部121~124は、推力を発生するロータである。なお、以下の説明において、各推力発生部121~124を特に区別しない場合には、単に、「推力発生部120」と表記する。
【0029】
推力発生部120は、例えば、プロペラ125と、モータ126と、筒状のハウジング127とを有する。ハウジング127は、プロペラ125及びこのプロペラ125を回転させるモータ126を収容している。ハウジング127の開口部には、プロペラ125への直接的なアクセスを防止するための網(例えば、樹脂材料や金属材料(ステンレス鋼等)等)が設けられていてもよい。
【0030】
推力発生部120の個数nは特に限定されないが、3つ以上であることが好ましい。例えば、飛行装置100は、3つの推力発生部120を備えたトライコプタ、4つの推力発生部120を備えたクワッドコプタ、6つの推力発生部120を備えたヘキサコプタ、及び8つの推力発生部120を備えたオクトコプタなどのいずれであってもよい。
【0031】
なお、本実施の形態においては、4つ(n=4)の推力発生部121~124を有するクワッドコプタを飛行装置100の一例として図示している。アーム部140は、機体ユニット110と各推力発生部120とを連結するための構造体である。アーム部140は、機体ユニット110に、例えば、機体ユニット110の中心部Cから放射状に突出して、機体ユニット110の周方向において等間隔をあけて取り付けられている。各アーム部140先端には、推力発生部120がそれぞれ取り付けられている。
【0032】
報知装置130は、飛行装置100の外部に危険を知らせる装置である。報知装置130は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の光源や音声発生装置(アンプ及びスピーカ等)により構成されている。報知装置130は、後述する異常検出部115による異常の検出に応じて、飛行装置100が危険な状態であることを光や音声によって外部に報知する。
【0033】
なお、報知装置130は、機体ユニット110の外部に露出していてもよいし、機体ユニット110の内部に収容されて、光源から発生した光やスピーカから発生した音声等を外部に出力可能な形態であってもよい。
【0034】
パラシュート装置1は、飛行装置100に異常が発生し、飛行装置100の落下のおそれがある場合に飛行装置100の落下速度を緩やかにして、飛行装置100の安全な落下を図る装置である。パラシュート装置1は、例えば、機体ユニット110上に設置されている。なお、パラシュート装置1の具体的な構成については後述する。
【0035】
図2は、本実施の形態に係るパラシュート装置1を備えた飛行装置100の機能ブロック図である。機体ユニット110は、電源部111と、センサ部112と、モータ駆動部113_1~113_n(nは3以上の整数)と、飛行制御部114と、異常検出部115と、落下制御部116と、通信部117と、記憶部118と、を含む。
【0036】
これらの機能部のうち、飛行制御部114、異常検出部115及び落下制御部116は、例えば、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)及びメモリを含むプログラム処理装置(例えば、マイクロコントローラ)によるプログラム処理によって実現される。
【0037】
電源部111は、バッテリ111aと電源回路111bとを含む。バッテリ111aは、例えば二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)である。電源回路111bは、バッテリ111aの出力電圧に基づいて電源電圧を生成し、上記機能部を構成する各ハードウェアに供給する回路である。電源回路111bは、例えば、複数のレギュレータ回路を含み、上記ハードウェア毎に適切な大きさの電源電圧を供給する。
【0038】
センサ部112は、飛行装置100の状態を検知する機能部である。センサ部112は、飛行装置100の機体の傾き等を検出する。センサ部112は、例えば、角速度センサ112aと、加速度センサ112bと、磁気センサ112cと、角度算出部112dと、を含む。
【0039】
角速度センサ112aは、角速度(回転速度)を検出するセンサである。例えば、角速度センサ112aは、x軸、y軸及びz軸の3つの基準軸に基づいて角速度を検出する3軸ジャイロセンサである。
【0040】
加速度センサ112bは、加速度を検出するセンサである。例えば、加速度センサ112bは、x軸、y軸及びz軸の3つの基準軸に基づいて加速度を検出する3軸加速度センサである。
【0041】
磁気センサ112cは、地磁気を検出するセンサである。例えば、磁気センサ112cは、x軸、y軸及びz軸の3つの基準軸に基づいて方位(絶対方向)を検出する3軸地磁気センサ(電子コンパス)である。
【0042】
角度算出部112dは、角速度センサ112a及び加速度センサ112bの少なくとも一方の検出結果に基づいて、飛行装置100の機体の傾きを算出する。ここで、飛行装置100の機体の傾きとは、地面(水平方向)に対する機体(機体ユニット110)の角度のことである。
【0043】
例えば、角度算出部112dは、角速度センサ112aの検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよいし、角速度センサ112a及び加速度センサ112bの検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよい。なお、角速度センサ112aや加速度センサ112bの検出結果を用いた角度の算出方法は、公知の計算式を用いてもよい。
【0044】
また、角度算出部112dは、角速度センサ112a及び加速度センサ112bの少なくとも一方の検出結果に基づいて算出した角度を、磁気センサ112cの検出結果に基づいて補正してもよい。角度算出部112dは、例えば、飛行制御部114等と同様に、マイクロコントローラによるプログラム処理によって実現される。
【0045】
なお、センサ部112は、上述した角速度センサ112a、加速度センサ112b及び磁気センサ112cに加えて、例えば、気圧センサ、風量(風向き)センサ、超音波センサ、GPS受信機、及びカメラ等を含んでもよい。
【0046】
通信部117は、外部装置180と通信を行うための機能部である。ここで、外部装置180は、飛行装置100の動作を制御し、飛行装置100の状態を監視する送信機やサーバ等である。通信部117は、例えば、アンテナ及びRF(Radio Frequency)回路等によって構成されている。通信部117と外部装置180との間の通信は、例えば、ISMバンド(2.4GHz帯)の無線通信によって実現される。
【0047】
通信部117は、外部装置180から送信された飛行装置100の操作情報を受信して飛行制御部114に出力するとともに、センサ部112によって計測された各種計測データ等を外部装置180へ送信する。また、通信部117は、異常検出部115によって飛行装置100の異常が検出された場合に、飛行装置100に異常が発生したことを示す情報を外部装置180に送信する。更に、通信部117は、飛行装置100が地上に落下した場合に、飛行装置100が落下したことを示す情報を外部装置180に送信する。
【0048】
モータ駆動部113_1~113_nは、各推力発生部120に設けられ、飛行制御部114からの指示に応じて、駆動対象のモータ126を駆動する機能部である。なお、以下の説明において、各モータ駆動部113_1~113_nを特に区別しない場合には、単に、「モータ駆動部113」と表記する。
【0049】
モータ駆動部113は、飛行制御部114から指示された回転数でモータ126が回転するように、モータ126を駆動する。例えば、モータ駆動部113は、ESC(Electronic Speed Controller)である。
【0050】
飛行制御部114は、飛行装置100の各機能部を統括的に制御する機能部である。飛行制御部114は、飛行装置100が安定して飛行するように推力発生部120を制御する。具体的には、飛行制御部114は、通信部117によって受信した外部装置180からの操作情報(上昇や下降、前進や後退等の指示)と、センサ部112の検出結果とに基づいて、各推力発生部120のモータ126の適切な回転数を算出する。飛行制御部114は、算出した回転数を各モータ駆動部113にそれぞれ指示して、安定した状態における所望の方向への機体の飛行を図る。
【0051】
飛行制御部114は、例えば、風等の外部からの影響によって機体の姿勢が乱れた場合、角速度センサ112aの検出結果に基づいて、各推力発生部120のモータ126の適切な回転数をそれぞれ算出する。飛行制御部114は、算出した回転数を各モータ駆動部113にそれぞれ指示して、機体が水平になるようする。
【0052】
また、例えば、飛行制御部114は、飛行装置100のホバリング時に飛行装置100のドリフトを防止するために、加速度センサ112bの検出結果に基づいて各推力発生部120のモータ126の適切な回転数を算出する。飛行制御部114は、算出した回転数を各モータ駆動部113にそれぞれ指示する。また、飛行制御部114は、通信部117を制御して、外部装置180との間で上述した各種データの送受信を実現する。
【0053】
記憶部118は、飛行装置100の動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、記憶部118は、フラッシュメモリ及びROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。記憶部118に記憶される上記パラメータは、例えば、後述する残容量閾値118a及び傾き閾値118b等である。
【0054】
異常検出部115は、飛行時の異常を検出する機能部である。具体的には、異常検出部115は、センサ部112の検出結果と、バッテリ111aの状態と、推力発生部120の動作状態とを監視し、飛行装置100が異常状態であるか否かを判定する。
【0055】
ここで「異常状態」とは、飛行装置100の自律飛行が不可能になるおそれがある状態をいう。つまり、異常事態の発生とは、例えば、推力発生部120が故障したこと、バッテリ111aの残容量が所定の閾値よりも低下したこと及び機体(機体ユニット110)が異常に傾いたこと、の少なくとも1つが発生した場合のことである。
【0056】
異常検出部115は、推力発生部120の故障を検出した場合、飛行装置100が異常状態であると判定する。ここで、推力発生部120の故障とは、例えば、飛行制御部114が指定した回転数でモータ126が回転しないこと、プロペラ125が回転しないこと、プロペラ125が破損したこと等をいう。
【0057】
また、異常検出部115は、バッテリ111aの残容量が所定の閾値(以下、「残容量閾値」とも称する。)118aよりも低下したことを検出した場合、飛行装置100が異常状態であると判定する。ここで、残容量閾値118aは、例えば、飛行制御部114が指示した回転数でモータが回転できなくなる程度の容量値とすればよい。残容量閾値118aは、例えば、予め記憶部118に記憶されている。
【0058】
また、異常検出部115は、飛行装置100(機体)の異常な傾きを検出した場合、飛行装置100が異常であると判定する。例えば、異常検出部115は、角度算出部112dによって算出した角度が所定の閾値(以下、「傾き閾値」とも称する。)118bを超えている状態が所定期間継続した場合、飛行装置100が異常状態であると判定する。
【0059】
例えば、飛行装置100が前後方向に移動するときの角度(ピッチ角)や飛行装置100が左右方向に移動するときの角度(ロール角)を予め実験により取得する。傾き閾値118bは、その実験によって得られた角度よりも大きい値に設定すればよい。傾き閾値118bは、例えば、予め記憶部118に記憶されている。
【0060】
落下制御部116は、飛行装置100の落下を制御するための機能部である。具体的には、落下制御部116は、異常検出部115によって飛行装置100が異常状態であることが検出された場合、飛行装置100を安全に落下させるための落下準備処理を実行する。
【0061】
具体的には、落下制御部116は、落下準備処理として以下に示す処理を実行する。すなわち、落下制御部116は、異常検出部115による異常の検出に応じて報知装置130を制御して、危険な状態であることを外部に報知する。また、落下制御部116は、異常検出部115による異常の検出に応じて各モータ駆動部113を制御して、各モータ126の回転を停止させる。さらに、落下制御部116は、異常検出部115による異常の検出に応じて、パラシュートの開傘を指示する制御信号をパラシュート装置1に出力して、パラシュート10を開傘させる。
【0062】
図3は、本実施の形態に係るパラシュート装置1におけるパラシュート10が開いた状態を概略的に示す図である。パラシュート10は、傘体(キャノピー)11と、吊索12と、連結索13と、を含む。吊索12は、紐状の部材であり、例えば、金属材料(例えばステンレス鋼)又は繊維材料(例えば、ナイロン紐)により形成されている。吊索12は、その一端が傘体11に連結され、他端がパラシュート収容器20(取付け部22a)に連結されている。つまり、吊索12は、パラシュート10とパラシュート収容器20とを連結している。
【0063】
連結索13は、傘体11と、後述する各飛翔体50とを連結している。連結索13は、紐状の部材であり、例えば、金属材料(例えばステンレス鋼)又は繊維材料(例えば、ナイロン紐)により形成されている。連結索13は、その一端が、例えば、傘体11のエッジ(周縁)側に取り付けられていて、他端が飛翔体50に取り付けられている。
【0064】
各連結索13は、互いに離間して、傘体11の周縁部に取り付けられている。例えば、開いた状態のパラシュート10(傘体11)を傘体11の頂点側から見たときの形状が円形状である場合、各連結索13は、傘体11の円周方向に沿って、傘体11の周縁部に等間隔に取り付けられている。
【0065】
なお、飛翔体50が1つだけ設けられる場合、連結索13は、一端がパラシュート10の周縁部に取り付けられていればよい。この場合、連結索13が取り付けられるパラシュート10の周縁部上の位置については、特に限定されない。
【0066】
ここで、飛行装置100を低速で落下させるために必要な傘体11の直径Dは、例えば、下記式(1)に基づいて算出することができる。式(1)において、mは飛行装置100の総重量、vは飛行装置100の落下速度、ρは空気密度、Cdは抵抗係数である。
【0067】
【0068】
例えば、飛行装置100の総重量m=250〔kg〕、抵抗係数Cd=0.9、空気密度ρ=1.3kg/m3としたとき、飛行装置100の落下速度vを5〔m/s〕とするために必要な傘体11の直径Dは、式(1)より14.6〔m〕と算出される。
【0069】
以上の飛行装置100は、安全装置としてパラシュート装置1を備えている。本実施の形態に係るパラシュート装置1は、パラシュート10と、一端が開口し他端に底部22を有しパラシュート10を収容する筒状のパラシュート収容器(収容部)20と、パラシュート収容器20の底部22に取り付けられてガスを発生するガス発生装置30と、パラシュート10に連結された6つの筒状の飛翔体50と、パラシュート収容器20に周面部21に配置されていてかつガス発生装置30に連結されており、ガス発生装置30からのガスにより飛翔体50を射出可能に保持した射出部40と、ガス発生装置30からのガスによりパラシュート10を底部22側からパラシュート収容器20の開口部23に向かって押し出すように、ガス発生装置30に対して摺動可能に取り付けられたカタパルト60と、を備える。以下、パラシュート装置1の構成について具体的に説明する。
【0070】
図4は、本実施の形態に係るパラシュート装置1の概略的な平面図である。なお、
図4において、パラシュート10及び蓋26は図示されていない。
【0071】
パラシュート装置1は、パラシュート10と、射出装置(パラシュート収容器20、ガス発生装置30、射出部40、飛翔体50、カタパルト60及び射出制御部70)2と、を有している。
【0072】
(射出装置)
図5Aは、
図4のA-A線に沿ったパラシュート装置1の部分断面図である。
図5Bは、
図4のB-B線に沿ったパラシュート装置1の部分断面図である。本実施の形態に係るパラシュート装置1が有する射出装置2は、パラシュート10に連結可能な6つの飛翔体50と、一端が開口し他端に底部22を有しパラシュート10を収容する筒状のパラシュート収容器20と、パラシュート収容器20の底部22に取り付けられてガスを発生するガス発生装置30と、パラシュート収容器20の周面部21に配置されていてかつガス発生装置30に連結されており、ガス発生装置30からのガスにより飛翔体50を射出可能に保持した射出部40と、ガス発生装置30からのガスによりパラシュート10を底部22側からパラシュート収容器20開口部23に向かって押し出すように、ガス発生装置30に対して摺動可能に取り付けられたカタパルト60と、を備える。以下、具体的に、射出装置2の構成を説明する。
【0073】
射出装置2は、パラシュート10を収容し、収容したパラシュート10を外部に向かって射出する。射出装置2は、パラシュート収容器20と、ガス発生装置30と、射出部40と、飛翔体50と、カタパルト60と、射出制御部70と、を含む。
【0074】
パラシュート収容器20は、パラシュート10の使用前において、傘体11が折り畳まれた状態におけるパラシュート10を収容している。パラシュート収容器20は、例えば、樹脂等により形成されている。パラシュート収容器20は、周面部21と、底部22と、を有する。パラシュート収容器20は、パラシュート10を収容する筒状の容器である。パラシュート収容器20は、例えば、一端が開口して開口部23を有し、他端が底部22によって少なくとも部分的に閉鎖されて形成されている。
【0075】
パラシュート収容器20は、機体ユニット110の上面、すなわち飛行装置100の飛行時において地面と反対の側に面する面に設定されている。例えば、パラシュート収容器20は、機体ユニット110の上面において、機体ユニット110の中心となる中心点Cとパラシュート収容器20の中心を通る軸線X1とが同軸に設置されていることが好ましい。
【0076】
周面部21は、軸線X1周りに設けられており、例えば、筒状でありかつテーパ状に形成されている。周面部21は、底部22から開口部23に向かって拡径するように形成されている。
【0077】
底部22は、開口部23に対向して位置している。底部22は、開口部23側の縁とは反対側の縁において周面部21と一体に成形されている。底部22には、軸線X1を中心とした収容孔が形成されている。後述するガス発生装置30は、収容孔を通じて、パラシュート収容器20内に進入して、開口部23とは反対側から底部22に取り付けられている。パラシュート収容器20におけるパラシュート10及びガス発生装置30は、周面部21及び底部22により画成された空間に収容されている。
【0078】
底部22には、さらに2つの取付け部(係合部材)22aが設けられている。取付け部22aは、開口部23に面する底部22の面に設けられている。取付け部22aは、軸線X1を挟んで対向する位置に設けられている。取付け部22aは、後述するカタパルト60に係合してカタパルト60の回動を防止している。
【0079】
取付け部22aは、例えば、底部22及び後述する固定プレート32に固定プレート32の側から挿通されたネジ等によりパラシュート収容器20に固定されている。各取付け部22aには、パラシュート10の吊索12の分岐した2つの一端がそれぞれ連結されている。
【0080】
蓋26は、パラシュート収容器20の開口部23を覆う。蓋26は、例えば、樹脂材料から形成されていてもよいし、薄膜部材であってもよい。蓋26は、軸線X1に沿った断面においてドーム状に形成されている。蓋26は、収容器20の周面部21に配置された飛翔体50、射出部40及びパラシュート10が外部に露出しないように、パラシュート収容器20の開口部23を全体的に覆うことが好ましい。これにより、パラシュート収容器20の内部に雨や埃等が侵入することを防止することが可能となる。蓋26とパラシュート収容器20との間には、密封装置が設けられていてもよい。
【0081】
蓋26は、例えば、取り外し可能な金具(図示せず)によって、周面部21に固定されている。例えば、金具は、射出部40から射出された飛翔体50が蓋26に接触したときに蓋26が容易に外れる程度の固定力よって、蓋26を周面部21に固定している。
【0082】
図6A及び
図6Bは、ガス発生装置30の構成を説明するための断面図である。ガス発生装置30は、後述する飛翔体50を射出部40から射出するための推力の基になるガスを発生する装置である。ガス発生装置30は、パラシュート収容器20の収容孔を通じてパラシュート収容器20内に部分的に挿入されている。例えば、ガス発生装置30は、パラシュート収容器20の開口部23側から見たときのパラシュート収容器20の軸線X1上に配置され、パラシュート収容器20内の底部22に開口部23とは反対の側から固定されている。
【0083】
ガス発生装置30は、パラシュート収容器20においてパラシュート10の下側に位置する。ガス発生装置30は、パラシュート収容器20の軸線X1に対して同軸的に又は略同軸的にパラシュート収容器20の底部22に取り付けられている。ガス発生装置30は、ハウジング31と、固定プレート32と、ガス発生剤33と、点火薬34と、封止部材35と、を有する。
【0084】
ハウジング31は、内部にガス発生剤33を保持する。ハウジング31は、例えば、一端が開口し、他端が閉鎖されて形成されている。ハウジング31は、周壁部311と、天井壁部312とを有している。周壁部311は、軸線X1に沿って延びていて、軸線X1周りに環状に形成されている。
【0085】
周壁部311は、天井壁部312とは反対の側で開口した側に6つの連結口313を有する。連結口313は、周方向に互いに等間隔をあけてハウジング31に形成されている。連結口313は、筒状に形成されており、ハウジング31内部と外部とを連通するようにハウジング31から突出して形成された部分である。連結口313には、後述するガス導入管路42の一端が挿入されている。
【0086】
周壁部311の外周面の一部には、リード線(図示せず)を案内する案内部314が設けられている。案内部314は、周壁部311から径方向外側に、他の周壁部311の部分よりも肉厚が大きく形成された部分である。案内部314には、その延在方向が軸線X1に対して交差するように延びる案内孔315が形成されている。案内部314は、ハウジング31の周方向において隣り合う2つの連結口313の間に設けられている。
【0087】
案内孔315のハウジング31の内部に通じる部分は、点火薬34によって塞がれている。案内孔315を案内されたリード線の一端は、点火薬34に接続されている。
【0088】
リード線は、ガス発生装置30を点火するための電気配線である。リード線は、例えば、ビニール線、すずめっき線、又はエナメル線等から構成されている。リード線の一端における点火薬34は、例えば、樹脂等を混ぜ込んだ液状の液剤をリード線の先端に塗り固めることにより形成したものである。点火薬34は、ガス発生剤33と接触している。リード線の他端は、射出制御部70に接続されている。点火薬34は、例えば、射出制御部から出力された点火信号に応じて発火する。
【0089】
天井壁部312がパラシュート収容器20の開口部23の側に面しているように、ガス発生装置30は、パラシュート収容器20に取り付けられている。
【0090】
天井壁部312は、ハウジング31の開口部とは反対の側に面する面に凸の環状凸部316を有する。天井壁部312には、環状凸部316において軸線X1に対して同軸的に又は略同軸的にハウジング31を貫通する案内孔317が形成されている。つまり、環状凸部316は、案内孔317の周縁に沿って立設されている。案内孔317は、後述するカタパルト60のピストン68を摺動可能に案内している。案内孔317の内周面には環状の溝が形成されており、この溝内にOリング318が嵌め込まれている。
【0091】
天井壁部312の環状凸部316は、軸線X1と交差する径方向に貫通する貫通孔319が形成されている。貫通孔319には、ピストン68の摺動により破断するシアピン等のピン(棒状の係止部材)319p(
図5A,
図5B参照)が挿通されていている。なお、ピン319pは、ピストン68にも挿通されている。これによりピストン68は、ハウジング31に対して係止されている。
【0092】
ハウジング31の開口部の側は、固定プレート32によって閉鎖されている。固定プレート32は、例えば、平面視円形状に形成されている。固定プレート32は、底部22の外径より僅かに小さい外径であることが好ましい。固定プレート32は、底部22において、例えば、ネジ等により、開口部23とは反対の側から固定されている。
【0093】
固定プレート32は、例えば、平面視円形状の凸部321を有する。凸部321は、固定プレート32がハウジング31に取り付けられた状態において、ハウジング31に面する固定プレート32の側からハウジング31に向かって凸に、ハウジング31内部に突入するように形成されている。凸部321における外径は、ハウジング31の周壁部311における内径と略同じである。
【0094】
固定プレート32は、ハウジング31に取り付けられた状態において、案内孔317に対向する位置に、例えば、平面視円形又は略円形の凹部322を有する。凹部322は、軸線X1に対して同軸上に天井壁部312とは反対側に斜面をもって凹に形成されている。凹部322は、ハウジング31から離れるにつれて中心(軸線X1)にむかって縮径するように(テーパ状に)なっている。なお、凹部322は、平面視多角形に形成されていてもよい。凹部322は、ピストン68の球状端部682を部分的に収容可能になっている。
【0095】
ハウジング31と固定プレート32との接触する部分には、環状のシール部材36が設けられている。シール部材36により、ハウジング31内において発生したガスが、ハウジング31と固定プレート32との間から外部に流出することはない。
【0096】
ハウジング31及び固定プレート32は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等により製造されている。なお、ハウジング31及び固定プレート32は、樹脂に限らず金属により製造されていてもよい。
【0097】
ハウジング31及び固定プレート32は、ネジ等の締結具により互いに締結されている。ハウジング31と固定プレート32とにより、ハウジング31の内部にはガスが充満するガス発生室GSが画成されている。ガス発生室GSには、ガス発生剤33が充填されている。ガス発生剤33は、固定プレート32に対して離間した状態において天井壁部312の側に設けられている。
【0098】
ガス発生剤33は、封止部材35によって表面の一部が覆われた状態において、ガス発生室GS内に配置されている。本実施の形態において、ガス発生剤33は、ハウジング31内に着脱不能に固定されている。射出制御部から出力された点火信号に応じて発火した点火薬34により、ガス発生剤33が化学的に反応するとガスが発生する。封止部材35は、ガス発生剤33からガスが発生した場合、発生したガスの圧力によって容易に破壊される材料によって形成されている。例えば、封止部材35は、ポリエステル等の薄膜である。
【0099】
図5Aに戻って、射出部40は、飛翔体50を保持し、保持した飛翔体50をガス発生装置30から供給されるガスにより外部に射出する。射出部40は、飛翔体50毎に設けられている。パラシュート装置1における射出装置2は、6つの飛翔体50を別々に保持するために、6つの射出部40を備えている。
【0100】
射出部40は、パラシュート収容器20に設けられている。具体的には、各射出部40は、周面部21の内周面上に設けられている。なお、各射出部40は、カバー部材(図示せず)を介して周面部21の内周面上に設けられていてもよい。
【0101】
射出部40は、保持体41と、ガス導入管路42とを含む。保持体41は、筒状(例えば円筒状)に形成されている。保持体41は、飛翔体50の内部に挿入されている。保持体41の先端側及び基端側の両端部は開口しており、基端側の端部410には、ガス導入管路42がガス供給可能に連結されている。保持体41の基端側の端部410は、例えば、径方向に突出した鍔を持ったフランジ状に形成されており、飛翔体50の一端部を支持している。
【0102】
ガス導入管路42は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料や樹脂材料により形成された管状の部材である。ガス導入管路42の一方の端部は、保持体41における基端側の端部410の開口に挿入されている。これにより、ガス導入管路42と保持体41の内部空間とが連通する。保持体41とガス導入管路42との連結部分には、密封装置(図示せず)が設けられている。密封装置により、ガス発生装置30のガスが充満するガス発生室GSからガス導入管路42を介して保持体41内に導入されたガスの漏れが防がれる。
【0103】
保持体41の先端側の端部411には、ガス発生装置30のガスが充満するガス発生室GSからガス導入管路42を介して保持体41内に導入されたガスが飛翔体50の内周面と保持体41の外周面との隙間から漏れないように密封装置(ガスケット)43が設けられている。
【0104】
射出部40は、パラシュート収容器20の軸線X1に対して、長手方向に沿って保持体41の中心を通る軸線X2が延在する方向において、先端側の端部411がパラシュート収容器20の軸線X1から離れる方向に傾斜している。
【0105】
複数の射出部40は、パラシュート収容器20の軸線X1周りに等間隔に配置されている。例えば、パラシュート装置1が6つの射出部40を有している場合、各射出部40は、パラシュート収容器20の軸線X1周りに約60°(≒360°/6)の間隔で配置されている。
【0106】
飛翔体50は、パラシュート10をパラシュート収容器20の外部に引き連れて、パラシュート10の開傘(展開)を補助する部材である。飛翔体50は、例えば、樹脂材料や金属材料により形成されている。飛翔体50は、例えば、棒状に形成されている。より具体的には、飛翔体50は、例えば、一部が中空の円柱状(例えば中空の弾丸状)に形成されている。
【0107】
飛翔体50は、パラシュート10と連結された状態において射出部40の保持体41と係合されている。具体的には、飛翔体50は、先端側において閉鎖されていて、連結索13を介してパラシュート10に連結されている。飛翔体50は、基端側において開放されていて、保持体41が挿入されている。飛翔体50は、射出部40に保持された状態において、保持体41の基端側の端部410上に支持されている。
【0108】
なお、本実施の形態においては、6つの飛翔体50が設けられていたが、少なくとも1つの飛翔体50が設けられていればよく、飛翔体50の数は特に限定されない。
【0109】
飛翔体50は、保持体41に対して、パラシュート装置1の未使用時に飛翔体50が射出部40から落下することを防止するために、ピン(シアピン)51によって固定されている。例えば、飛翔体50の側面に形成された貫通孔と、射出部40の保持体41の外周面に形成された孔とが整合した状態において、飛翔体50側の貫通孔と保持体41の側の孔にピン(シアピン)51を挿入する。これにより、パラシュート装置1の未使用時、飛翔体50は、射出部40に固定された状態になる。
【0110】
ピン51は、飛翔体50が射出するときに、ピン51に対して飛翔体50の射出方向(軸線X2に沿った方向)に加わる力によって破壊可能に構成されている。これにより、ピン51によって飛翔体50の射出を妨害するおそれがない。ピン51としては、例えば、アルミ合金、樹脂等を用いることが好ましい。なお、飛翔体50の先端側と射出部40の保持体41の先端側の端部411との間の距離は、飛翔体50を放出するためのガス圧が適切になるように、飛翔体50の側面に形成された貫通孔の位置を適宜設定することが可能であってもよい。
【0111】
カタパルト60は、ガス発生装置30に天井壁部312の側から取り付けられていて、パラシュート10を開口部23に向かって押し出す部材である。カタパルト60は、ガス発生装置30に対して軸線X1に沿って摺動可能に取り付けられている。
【0112】
カタパルト60は、押出部材61と、ピストン(棒状部材)68とを含む。押出部材61は、例えば、アルミ合金、樹脂等により平面視円形に形成されている。
図7Aは、カタパルト60の押出部材61の平面図である。
図7Bは、
図7AにおけるA-A線に沿った断面図である。
図7Cは、
図7AにおけるB-B線に沿った断面図である。
【0113】
押出部材61は、6つの周壁部62と、天井壁部63と、鍔部64とを含む。各周壁部62は、軸線X1周りに互いに所定の間隔をあけて設けられていて、軸線X1に沿って延びている。周方向において各周壁部62の間には、スリット65が設けられている。各周壁部62は、それぞれの一端において天井壁部63によって互いに連結されている。押出部材61は、全体として筒状に形成されている。なお、本実施の形態において、押出部材61は、6つの周壁部62を有しているが、射出部40及び飛翔体50の数に応じて適宜変更することができる。
【0114】
カタパルト60がガス発生装置30に取り付けられた状態において、ガス発生装置30のハウジング31における案内部314に対応する周壁部62aの外径は、他の周壁部62bの外径よりも大きくなっている。つまり、周壁部62aは、周壁部62bに対して径方向において外側にある。周壁部62a,62bは、カタパルト60がガス発生装置30に取り付けられた状態において、ガス発生装置30のハウジング31に沿った形状を有している。
【0115】
カタパルト60がガス発生装置30に取り付けられた状態において、各スリット65は、射出部40のガス導入管路42及び飛翔体50に対応する位置にある。これにより、パラシュート収容器20からの飛翔体50の射出運動をカタパルト60が阻害することはない。
【0116】
天井壁部63は、軸線X1付近の中心部において、カタパルト60の内側から見た場合、鍔部64とは反対側に凹に形成された凹部66を有する。凹部66は、ピストン68の一方の端部681を固定的に収容する。つまり、押出部材61と、ピストン68とは、互いに固定されている。
【0117】
鍔部64は、天井壁部63とは反対側の各周壁部62の端部(縁部)に設けられている。鍔部64は、各周壁部62から径方向において外側に延出している。鍔部64のうち、径方向において対向する一対の鍔部64には、周壁部62に向かって延びる切欠き67が形成されている。本実施の形態において、切欠き67は、複数の周壁部62のうち、例えば、周壁部62a及び周壁部62aに径方向において対向している周壁部62bに連結されている鍔部64に設けられている。
【0118】
カタパルト60がガス発生装置30に取り付けられた状態において、切欠き67には、パラシュート収容器20に設けられた取付け部22aが部分的に入り込むようになっている。これにより、ガス発生装置30に対するカタパルト60の回転は抑制され、パラシュート収容器20からの飛翔体50の射出運動をカタパルト60が阻害することはない。
【0119】
図8は、カタパルト60のピストン68の構成を説明するための図である。ピストン68は、カタパルト60がガス発生装置30に取り付けられた状態において、軸線X1に沿って所定の長さを有する棒状の金属又は樹脂製の部材である。長手方向に交差するピストン68の断面形状は円形である。ここで長手方向は、ピストン68の摺動方向であり、軸線X1に沿って平行又は略平行な方向である。一端から他端までのピストン68の長さは、パラシュート収容器20の底部22から開口部23までの軸線X1に沿った長さの最大で約0.
8倍以下であることが好ましい。カタパルト60は、パラシュート10がパラシュート収容器20に収容された状態でパラシュート10の下側に位置し、軸線X1に沿ったピストン68の長さは、軸線X1に沿ったパラシュート収容器20の高さの0.8倍以下であることが好ましい。
【0120】
ピストン68は、ガス発生装置30のハウジング31の案内孔317に挿通されて、ハウジング31内においてはガス発生剤33を貫通している。ピストン68は、その一方の端部681がカタパルト60の凹部66に収容された状態において、カタパルト60の天井壁部63に、例えば、接着等により固定されている。ピストン68の一方の端部681の側には、貫通孔69が形成されている。貫通孔69は、軸線X1に対して、例えば、直交して延びている。貫通孔69には、ハウジング31に対してピストン68を係止するためのピン319pが挿通される。
【0121】
ピストン68の他方の端部は、丸味を帯びて球状端部682として形成されている。ピストン68の球状端部682は、例えば、半球面を有している。ピストン68は、球状端部682の側に鍔部683を有する。鍔部683は、軸線X1周りにおいて、ピストン68の全周にわたって環状に形成されている。鍔部683の外径は、ハウジング31の案内孔317の内径よりも大きくなっている。したがって、パラシュート収容器20の開口部23に向かったピストン68の摺動は、鍔部683がハウジング31の天井壁部312に接触することで制限される。
【0122】
ピストン68がピン319pによりハウジング31に係止された状態において、球状端部682は、固定プレート32の凹部322内に収容されている。
【0123】
パラシュート装置1には射出制御部70が設けられている(
図5A,
図5B参照)。射出制御部70は、射出部40からの飛翔体50及びカタパルト60の押出部材61の射出を制御する回路である。射出制御部70は、例えば、機体ユニット110内の落下制御部116からパラシュート10の開傘を指示する制御信号を受信した場合、点火信号を出力する電子回路である。なお、本実施の形態において射出制御部70は、パラシュート収容器20の外部、例えば、機体ユニット110の内部に設けられているが、パラシュート収容器20に収容されていてもよい。
【0124】
射出制御部70は、例えば、機体ユニット110内の落下制御部116からパラシュート10の開傘を指示する制御信号を受信した場合、点火信号を出力する電子回路である。点火信号がリード線を介してガス発生装置30に入力されることにより、点火薬34が発火して、ガス発生剤33からガスが発生する。後述するように、飛翔体50は、ガス発生装置30から発生したガスの圧力を受けることによって推力を得て、射出部40から射出される。また、カタパルト60の押出部材61は、ガス発生装置30から発生したガスの圧力により摺動される。
【0125】
次に、本実施の形態に係るパラシュート装置1におけるパラシュート10の開傘の流れについて説明する。
図9Aは、パラシュート10を押し出した後の飛翔体50及びカタパルト60の状態を示す図である。
図9Bは、ガスによるカタパルト60の摺動を説明するための部分拡大図である。なお、
図9Aにおいてパラシュート10は図示されていない。
【0126】
例えば、パラシュート装置1を備えた飛行装置100が飛行しているときに、強風によって飛行装置100の機体(機体ユニット110)の傾きが傾き閾値118bを超えた状態が所定期間にわたって継続し、異常検出部115が異常状態であると判定した場合、飛行装置100側の落下制御部116が、パラシュート10の開傘を指示する制御信号をパラシュート装置1の射出制御部70に対して送信する。
【0127】
射出制御部70は、パラシュート10の開傘を指示する制御信号を受信すると、リード線を介してガス発生装置30に点火信号を出力する。具体的には、射出制御部70がリード線に所定の電流を流して、リード線の一端と接触している点火薬34を点火させる。
【0128】
点火薬34が点火することにより、ガス発生剤33が化学的に反応してガスが発生する。ガスの圧力が高まると、ガスが封止部材35を破ってガス発生室GS内に充満する。
【0129】
ガス発生室GS内のガスは、各連結口313から各ガス導入管路42を通って各射出部40の保持体41内部に導入される。各保持体41に保持されている飛翔体50は、保持体41の先端側の端部411から放出されたガスの圧力を受けて、射出部40の保持体41の軸線X2に沿った方向に移動し、蓋26に衝突する。蓋26は、飛翔体50の衝突によりパラシュート収容器20から外れ、飛翔体50は、パラシュート収容器20から外部に射出される。
【0130】
さらに、ガス発生室GSにおけるガスは、固定プレート32の凹部322に入り込み、ピストン68の球状端部682に作用する。球状端部682は、凹部322にその先端において点接触又は略点接触した状態にあり、凹部322との接触面積は極めて小さい。したがって、ピストン68の球状端部682には、固定プレート32の側からガスがピストン68を持ち上げるようにピストン68に作用する。
【0131】
ピストン68の球状端部682に対向する位置にある一方の端部681は、ガス発生室GS内よりも気圧の低い大気中にあるため、ピストン68は、長手方向に沿ってパラシュート収容器20の開口部23に向かって摺動する。これにより、カタパルト60の押出部材61がガス発生装置30から離れるように開口部23に向かって、ピストン68の鍔部683がハウジング31の天井壁部312に衝突するまで持ち上げられる。押出部材61の上昇により、パラシュート10は、パラシュート収容器20の底部22側から開口部23に向かって押し出される。
【0132】
図10は、本実施の形態に係る飛行装置100のパラシュート10が開いた状態を模式的に示す図である。各飛翔体50がパラシュート収容器20から射出されると、パラシュート10(傘体11)が連結索13を介して各飛翔体50によって引っ張られる。飛翔体50によるパラシュート10の引っ張りは、パラシュート収容器20の底部22の側から開口部23へのカタパルト60の押出部材61の摺動によるパラシュート10の押出しにより助成される。
【0133】
パラシュート10がパラシュート収容器20から放出された後、パラシュート10の傘体11は、各飛翔体50によってさらに引っ張られ、畳まれた状態から広げられる。これにより、傘体11内へ空気の流れ込み、傘体11が開傘する。
【0134】
以上の本実施の形態に係るパラシュート装置1によれば、ガス発生装置30から発生したガスがガス導入管路42を通って射出部40から放出されることにより、そのガスの圧力によって飛翔体50を射出部40から射出するとともに、ガス発生室GS内のガスの圧力により、カタパルト60のピストン68が上昇し押出部材61を持ち上げることができる。これにより、カタパルト60が飛翔体50によるパラシュート10の傘体11の引っ張りを補助するので、傘体11をより迅速にパラシュート収容器20から放出することができる。
【0135】
したがって、飛行装置100のような、上空において静止している状態を保つことが可能な回転翼機が、落下時に気流の効果を得られない場合であっても、本実施の形態に係るパラシュート装置1を取り付けることにより、素早く確実にパラシュートを開傘させ、緩やかに落下させることが可能となる。
【0136】
また、各飛翔体50は、射出部40の軸線X2が延びる向に飛び出す。すなわち、各飛翔体50は、パラシュート収容器20の軸線X1から離れる方向に飛行する。これにより、各飛翔体50は、真上に(パラシュート収容器20の軸線X1と平行な方向に)射出する場合に比べて、放出されたパラシュート10の傘体11をその頂点部分からエッジ(周縁)側に効果的に引っ張ることができる。これにより、傘体11を速やかに広げて空気をはらみ易くすることができる。
【0137】
さらに、カタパルト60のピストン68は、球状端部682に設けられた鍔部683がハウジング31の天井壁部312に接触して、ハウジング31から抜け出ることがないので、パラシュート10とともに、カタパルト60がパラシュート収容器20の外部に放出されることはない。
【0138】
さらに、カタパルト60は、鍔部64を有しているので、パラシュート10をパラシュート収容器20の底部22の側から支持する面を稼ぐことができる。これにより、パラシュート10の放出を効果的に補助することができる。また、この鍔部64は、射出部40及び飛翔体50と、軸線X1の方向において重ならないようになっており、飛翔体50の射出の妨げになることはない。
【0139】
さらに、カタパルト60の押出部材61は、パラシュート収容器20の底部22に設けられた取付け部22aと切欠き67において係合しているので、カタパルト60の押出部材61がピストン68を中心に回転することが防がれている。これにより、押出部材61が軸線X1の方向において射出部40及び飛翔体50と重なって、ガス発生の際にカタパルト60と飛翔体50とが互いに互いの動きを妨害することを防ぐことができる。
【0140】
さらに、ピストン68は、球状端部682を有しているので、ガス発生室GS内のガスがピストン68を持ち上げるように球状端部682に効果的に作用することができる。
【0141】
さらに、ガス発生装置30の固定プレート32には斜面をもった凹部322が設けられており、この凹部322にピストン68の球状端部682が収容されているので、発生したガスが斜面に沿ってピストン68の球状端部682に作用しやすくなっている。
【0142】
さらに、ハウジング31の案内孔317にはOリング318が設けられているので、ガス発生室GS内のガスが案内孔317を通じて外部に漏れ出ることを防ぎ、ガス発生室GS内のガスは、ピストン68に効果的に作用する。
【0143】
さらに、ピストン68は、ピン319pによりハウジング31に対して係止されているので、例えば、飛行装置100の急降下によりピストン68が押出部材61を押し上げるように移動することを防ぐことができる。
【0144】
<その他>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態において、押出部材61は、複数の周壁部62を有していたが、周方向に一体に形成された一の周壁部62を有していてもよい。
【0145】
例えば、上記の実施の形態において、パラシュート10の射出装置2は、射出部40及び飛翔体50を有していたが、パラシュート収容器20と、ガス発生装置30と、カタパルト60と、射出制御部70と、を含むだけでもよい。この射出装置によっても、ガス発生装置30から発生したガスの圧力により、ピストン68が上昇し押出部材61を持ち上げることができる。これにより、パラシュート10の傘体11をパラシュート収容器20から押し出すので、傘体11をより迅速にパラシュート収容器20から放出することができる。
【符号の説明】
【0146】
1…パラシュート装置、2…射出装置、10…パラシュート、11…傘体(キャノピー)、12…吊索、13…連結索、20…パラシュート収容器(収容部)、21…周面部、22…底部、22a…取付け部(係合部材)、23…開口部、26…蓋、30…ガス発生装置、31…ハウジング、311…周壁部、312…天井壁部、313…連結口、314…案内部、315…案内孔、316…環状凸部、317…案内孔、318…Oリング、319…貫通孔、319p…ピン(棒状の係止部材)、32…固定プレート、321…凸部、322…凹部、33…ガス発生剤、34…点火薬、35…封止部材、36…シール部材、40…射出部、41…保持体、410…基端側の端部,411…先端側の端部、42…ガス導入管路、50…飛翔体、51…ピン(シアピン)、60…カタパルト、61…押出部材、62,62a,62b…周壁部、63…天井壁部、64…鍔部、65…スリット、66…凹部、67…切欠き、68…ピストン(棒状部材)、681…一方の端部、682…球状端部(他端)、683…鍔部、70…射出制御部、100…飛行装置、110…機体ユニット、111…電源部、111a…バッテリ、111b…電源回路、112…センサ部、112a…角速度センサ、112b…加速度センサ、112c…磁気センサ、112d…角度算出部、113…モータ駆動部、114…飛行制御部、115…異常検出部、116…落下制御部、117…通信部、118…記憶部、118a…残容量閾値、118b…傾き閾値、120…推力発生部、125…プロペラ、126…モータ、127…ハウジング、130…報知装置、140…アーム部、180…外部装置