(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】灯具カバー部材
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20241206BHJP
F21V 3/00 20150101ALI20241206BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20241206BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20241206BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20241206BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20241206BHJP
F21W 103/20 20180101ALN20241206BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20241206BHJP
【FI】
F21S43/20
F21V3/00 100
B29C45/16
B29C45/26
F21W103:00
F21W103:35
F21W103:20
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021125731
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004060
【氏名又は名称】弁理士法人あお葉国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077986
【氏名又は名称】千葉 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100139745
【氏名又は名称】丹波 真也
(74)【代理人】
【識別番号】100187182
【氏名又は名称】川野 由希
(74)【代理人】
【識別番号】100207642
【氏名又は名称】簾内 里子
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝将
(72)【発明者】
【氏名】山崎 佳和
(72)【発明者】
【氏名】中島 経之
(72)【発明者】
【氏名】飯田 友範
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020470(JP,A)
【文献】特開2009-096105(JP,A)
【文献】特開2011-029059(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236699(US,A1)
【文献】国際公開第2019/181944(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 43/20
F21V 3/00
B29C 45/16
B29C 45/26
F21W 103/00
F21W 103/35
F21W 103/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向に長く形成された長尺な車両用灯具の筐体の一部を成す灯具カバー部材であり、
少なくとも一方向に長く成形された、透光性樹脂部材で構成される第1カバー部材と、
前記第1カバー部材の前面に部分的積層する、非透光性樹脂部材で構成され、前記第1カバー部材と一体成形される第2カバー部材と
を備え、
前記第1カバー部材の長手方向の第1側面
に沿って、複数の第1フランジ片が設けられ、複数の
前記第1フランジ片が、
前記第1カバー部材の長手方向の側方に突出して設けられ、
前記第2カバー部材の長手方向の第2側面
に沿って、複数の第2フランジ片が設けられ、複数の
前記第2フランジ片が、
前記第2カバー部材の長手方向の側方に突出して設けられており、
前記第1カバー部材の前記第1側面と、前記第2カバー部材の前記第2側面は、同方向の長手方向の側面であり、
複数の前記第1フランジ片および
複数の前記第2フランジ片
のそれぞれに対して、ゲート痕が形成されている、
ことを特徴とする灯具カバー部材。
【請求項2】
前記第1カバー部材の
複数の前記第1フランジ片に形成されたゲート痕は、全てダイレクトゲート痕である、
ことを特徴とする請求項1に記載の灯具カバー部材。
【請求項3】
少なくとも一部の前記第2フランジ片は、前記第1フランジ片に積層して設けられているフランジ片を含む、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の灯具カバー部材。
【請求項4】
前記第2カバー部材の前記第2側面には、側方に突出して、取付け用のクランプ片が形成されている、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の灯具カバー部材。
【請求項5】
前記第2カバー部材に形成された前記クランプ片の少なくとも一部には、ゲート痕が形成されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の灯具カバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両用灯具の筐体に用いられる長尺な灯具カバー部材、特に透光性樹脂部材と非透光性樹脂部材とを用いた多色成形品の灯具カバー部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば車幅方向に長く伸びたテールランプなど、長尺な車両用灯具は意匠性の差別化に好適であり、ニーズが増加している(例えば、特許文献1)。長尺な車両用灯具の筐体の一部には、灯具カバー部材として、光を通過させるためのレンズ部と、筐体の一部とを一体成形させた多色成形品が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、長尺な樹脂成型品では、樹脂部材の流動長が長くなり、成形不具合が発生しやすい。灯具カバー部材は、光を透過させるために透光性樹脂部材で構成されるレンズ部を含む多色成形品であるため、特に成形不具合が問題になりやすい。
【0005】
本発明は、これを鑑みてなされたものであり、長尺な車両用灯具の筐体に用いられる多色成形品であり、成形不具合を抑制した灯具カバー部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題を解決するため、本開示の灯具カバーは、少なくとも一方向に長く形成された長尺な車両用灯具の筐体の一部を成す灯具カバー部材であり、少なくとも一方向に長く成形された、透光性樹脂部材で構成される第1カバー部材と、前記第1カバー部材の前面に部分的積層する、非透光性樹脂部材で構成され、前記第1カバー部材と一体成形される第2カバー部材とを備え、前記第1カバー部材の長手方向の第1側面には、複数の第1フランジ片が側方に突出して設けられ、前記第2カバー部材の長手方向の第2側面には、複数の第2フランジ片が側方に突出して設けられており、前記第1カバー部材の前記第1側面と、前記第2カバー部材の前記第2側面は、同方向の長手方向の側面であり、前記第1フランジ片および前記第2フランジ片には、ゲート痕が形成されているように構成した。
【0007】
この構成によれば、灯具カバー部材の長手方向で非意匠部となるフランジ片にゲートを設けることができる。灯具カバー部材は、車両用灯具として車両に取付けされるため、取付され車体に隠される配置の非意匠部に、長手方向に複数のゲートを、形状に好適な配置で設けることができる。長手方向の一の側面にゲートを設け、樹脂部材を均等に射出することができ、成形不良の発生を抑制できる。
【0008】
また、ある態様では、前記第1カバー部材の前記第1フランジ片に形成されたゲート痕は、全てダイレクトゲート痕であるように構成した。フランジ片は非意匠部であるため、どのようなタイプのゲートも設けることができる。ダイレクトゲートを設けることで、射出圧力を確保し、長尺で体積も大きな灯具カバー部材の成形不具合の発生を抑制した。
【0009】
また、ある態様では、少なくとも一部の前記第2フランジ片は、前記第1フランジ片に積層して設けられているフランジ片を含むように構成した。第1フランジ片、第2フランジ片は、第1カバー部材、第2カバー部材の形状に合わせて、それぞれ長手方向の一面に、射出成形に好適な個所に設けることができる。そのため、第1フランジ片と同箇所に、第2フランジ片を積層させて設けることも可能である。これにより、それぞれ射出成形に最適な個所にフランジ片を設けることができ、成形不良の発生を抑制できる。
【0010】
また、ある態様では、前記第2カバー部材の前記第2側面には、側方に突出して、取付用のクランプ片が形成されているように構成した。クランプ片は取付け用であり、クランプ片の設けられた一辺は、被取付部となる車体に隠匿される。クランプ片とフランジ片を同側面に設けることで、フランジ片が車体に隠匿される。
【0011】
また、ある態様では、前記第2カバー部材に形成された前記取付けクランプ片の少なくとも一部には、ゲート痕が形成されているように構成した。車両に隠匿されるクランプ片にゲートを設けることもできる。射出成形に最適な個所にゲートを設けることで、成形不良の発生を抑制できる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、成形不具合を抑制した灯具カバー部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る灯具カバー部材を有する車両用灯具を搭載した車両の背面図である。
【
図3】
図2に示すIII-III線に沿った縦断面図である。
【
図4】
図2に示すIV-IV線に沿った縦断面図である。
【
図5】灯具カバー部材を示し、(A)が灯具カバー部材、(B)が一次成形品である第1カバー部材および第3カバー部材、(C)が第2カバー部材のみを示す。
【
図6】灯具カバー部材の樹脂成型工程を示す。
図3に対応する。
【
図7】灯具カバー部材の樹脂成型工程を示す。
図3に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
(車両用灯具)
図1は、本発明の好適な実施形態に係る灯具カバー部材100を有する車両用灯具1を搭載した車両CARの背面図である。灯具カバー部材100は外部から視認される部分であり、多色成形品であるため、構成する樹脂部材の配色を着色して分かりやすく示している。なお、後述する
図2、
図5、
図8においても同様である。
【0016】
車両用灯具1は、リアコンビネーションランプであり、上方領域で水平に長く延びるテールランプTALEと、テールランプTALE下方の左右側部領域に一対で配置されるストップランプSTOPと、ストップランプ下方に一対で配置されるターンシグナルランプTURNとで構成され、車両CARの背面に光照射方向を後方に向けて装着される。
【0017】
テールランプTALEは、水平方向に一文字に長く形成されており、車両用灯具1はこのテールランプTALEにより車幅方向に長く構成され、車体VBの左方端部から右方端部まで占有して配設される。
【0018】
図2は車両用灯具1を示す。なお、車両CARに装着された状態では、車両用灯具1は光照射方向を車両CAR後方として取付けられているが、以下の車両用灯具1の説明においては、車両用灯具1の光照射方向を前方として説明する。
図3は、
図2のIII-III線に沿った縦断面図である。
図4は、
図2に示すIV-IV線に沿った縦断面図である。
【0019】
図2~
図4に示すように、車両用灯具1は、左右対称に構成され、上方領域はテールランプTALEのみで構成され、左右の側方領域のストップランプSTOP、ターンシグナルランプTURNは、その長さがテールランプTALEのおおむね1/4の長さで端部を両側部に揃えて配置されることから、全体が正面視しておおむね逆U字型に構成される。
【0020】
車両用灯具1は、箱状に構成されて前面が開口されたランプボディ50、およびランプボディ50の前面に溶着される灯具カバー部材100を、灯具の筐体として備える。
【0021】
図2に示すように、車両用灯具1の上部には、車体VBに取付けられるための複数のクランプ片53が、車両用灯具1の上面から上方へ突出して設けられている。複数のクランプ片53は、ランプボディ50の一部であり、ランプボディ50の天井面の上方に、車幅方向に略等間隔に離間して、突設されている。
【0022】
加えて、車両用灯具1の上部には、複数のフランジ片101が、車両用灯具1の上面から上方へ突出して設けられている。複数のフランジ片101は、灯具カバー部材100の一部であり、灯具カバー部材100の天井面の上方に、車幅方向に略等間隔に離間して突設されている。
【0023】
複数のクランプ片53および複数のフランジ片101は、全て車両用灯具1の同一の面(本実施形態においては上面)に該面から外側に突出して形成され、お互いに重ならないように設けられている。
【0024】
クランプ片53の中央には貫通孔が形成されており、
図4に示すように、貫通孔を挿通した取付けクランプ40が車体VBに取付けられることで、車両用灯具1は車両CARに装着される。装着された車両用灯具1の上辺、特に、上方に突出したクランプ片53およびフランジ片101は、車体VBに目隠しされて、外部から遮蔽される(
図3および
図4参照)。
【0025】
図4に示すように、車両用灯具1の内部には、テールランプTALE用の室SP1と、ストップランプSTOP用の室SP2と、ターンシグナルランプTURN用の室SP3が画成されている。
【0026】
ランプボディ50は、非透光樹脂部材で構成された射出成型品である。ランプボディ50の内部の上方領域は室SP1を構成し、左右の側方領域の内側には、室SP1と室SP2を画成するための隔壁51、および室SP2と室SP3を画成するための隔壁52が立設している。
【0027】
灯具カバー部材100は、透光性を有する赤色の樹脂部材で構成される第1カバー部材110と、非透光性樹脂部材で構成される第2カバー部材120と、透光性を有し、第1カバー部材110とは異なる色(アンバー色)の樹脂部材で構成される第3カバー部材130とが、一体的に成形される多色成形品である。
【0028】
テールランプTALE用の室SP1と、ストップランプSTOP用の室SP2の前面には、第2カバー部材120が配置され、ターンシグナルランプTURN用の室SP3の前面には、第3カバー部材130が配置され、各室内から出射した光は透光性樹脂部材で構成される第1カバー部材110または第3カバー部材130を通過して前方へ出射される構成となっている。非透光性樹脂部材で構成される第2カバー部材は、各室SP1,S2,S3を区画する縁取り、かつ灯具の筐体の一部として、第1カバー部材110および第3カバー部材130と一体的に形成されている。
(ランプユニット)
テールランプ用の室SP1にはテールランプ用のランプユニットLU1が配置されている。ランプユニットLU1は、導光体11およびリフレクター12を備える。
【0029】
導光体11は、棒状の光学部材であり、アクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂部材を射出成形することにより形成される。
【0030】
導光体11は長手方向をテールランプTALE用の室SP1の延伸方向に合わせて配置されており、おおむね室SP1の一方の側端部から他方の側端部まで伸びて配置される。
【0031】
導光体11の側端面が光入射部であり、LED等の不図示の発光素子が、光出射方向を光入射部となる側端面に向けて配置される。
【0032】
導光体11の長手方向に沿った前面側は、光を出射する出射面11aとして構成されている。導光体11の後面側には、導光体11内を進む光を出射面20aに向けて反射する複数のステップ(不図示)を有する反射面11bが形成されている。発光素子から出射した光は、導光体11の側端面から導光体11内に入射し、導光体11内を、全反射を繰り返しながら進み、反射面11bに入射した光はステップで出射面11aへ向けて反射され、出射面11aから前方へ出射される。
【0033】
リフレクター12は、導光体11と略同一の長さで一方向に長く形成されており、長手方向の鉛直断面がくの字型に構成され、中央の湾曲部に導光体11が保持される。リフレクター12の内側は、光を反射する反射面であり、導光体11から出射した光を前方に導くように構成されている。導光体11内に入射した光は、導光体11内を、乱反射を繰り返して進むため、導光体11の反射面11bで反射されて出射面11aから出射した光は、水平方向だけなく、水平から上方や下方へ角度をもって出射される光も含まれている。水平方向から所定角度以上を持って上方や下方へ出射した光は、リフレクター12に到達し、その内側の反射面により反射され、反射光として前方へ照射される。このように、リフレクター12を用いることで、光の利用効率を高めている。
【0034】
ランプユニットLU1の発光素子には、白色光を出射する発光素子が用いられ、発光素子から出射して前方に照射された白色光は、赤色の透光性樹脂部材で構成される第1カバー部材110を透過して、全体として水平方向に伸びる一文字の赤色光として視認される。
【0035】
導光体11およびリフレクター12は、長手方向の鉛直断面形状は、長手方向のどの位置で切断しても略同一な形状となっている。テールランプTALEは、不図示の発光素子と一本の導光体11のみを発光体として用いており、途切れなく均一な光を照射する構成で、意匠性を高めている。
【0036】
ストップランプ用の室SP2には、ストップランプ用のランプユニットLU2が配置されている。ストップランプ用のランプユニットLU2は、テールランプ用のランプユニットLU1と同等の構成となっており、その長さのみが異なる。
【0037】
テールランプ用のランプユニットLU2は、導光体21およびリフレクター22を備え、不図示の発光素子から導光体21に入射した白色光は、導光体21に形成されたステップにより反射面11bで反射し、出射面20aから赤色透光性樹脂部材で構成された第1カバー部材110を透過して前方へ出射され、赤色光として視認される。リフレクター22は、導光体21を屈曲部に保持し、内側の反射面で、導光体21から出射した光を前方に反射して、光の利用効率を高めている。
【0038】
ストップランプ用の室SP2は、テールランプ用の室SP1よりも車幅方向に短く、導光体21およびリフレクター22は、室SP2に適合した長さとなっている。
【0039】
ターンシグナルランプTURN用の室SP3には、ターンシグナル用のランプユニットLU3が配置されている。
【0040】
ランプユニットLU3は、発光素子31、リフレクター32、及び透明又は半透明の投影レンズ33、およびこれらを支持する支持部材34を備える。
【0041】
発光素子31は白色のLED光源であり、光照射方向を下方に向けて、支持部材34の底面に取付けられる。
【0042】
リフレクター32は、発光素子31から出射した光を投影レンズ33に導くように構成されており、内面が所定の反射面32aとなっている。
【0043】
投影レンズ33は、例えば、前方側表面及び後方側表面が自由曲面形状を有する自由曲面レンズからなる。
【0044】
発光素子31から出射した光は、リフレクター32の反射面32aによって前方に反射され、投影レンズ33を通過して、アンバー色の透光性樹脂部材で構成された第3カバー部材130を通過して前方に出射され、外部からアンバー色の光として視認される。
【0045】
本実施形態においては、ランプユニットにプロジェクタ型や導光体を用いたリフレクター型を採用したが、これに限られず、従来周知の他構成を用いても問題なく、その種類は問わない。
【0046】
(灯具カバー部材100)
灯具カバー部材100について詳しく説明する。
図5は、車両用灯具1の灯具カバー部材100を示す。
図5(A)は灯具カバー部材100を示す。
図5(B)は第1カバー部材110および第3カバー部材130のみを示す。
図5(C)は第2カバー部材120のみを示す。実際は各部材は一体的に成形され、分離不可であるが、説明のために分離して示している。
【0047】
灯具カバー部材100は、前述の通り、第1カバー部材110、第2カバー部材120、第3カバー部材130が一体的に成形された多色成形品である。
【0048】
第1カバー部材110は、テールランプTALEおよびストップランプSTOPのアウターレンズを、第3カバー部材130はターンシグナルランプTURNのアウターレンズを、それぞれ構成する。
【0049】
第2カバー部材120は、各ランプのアウターレンズの枠部および筐体の一部であり、長尺なテールランプTALEの長尺枠部125と、ストップランプSTOPおよびターンシグナルランプTURNの枠部となる枝部126からなる。
【0050】
第1カバー部材110の略中央には、テールランプTALE用の領域とストップランプSTOP用の領域を区画するための凹部117が水平方向に伸びて形成されている。両ランプ領域を区画するために、第2カバー部材120が、長尺枠部125としてこの凹部117を埋めて積層される(
図4も参照のこと)。
【0051】
灯具カバー部材100の上方に設けられるフランジ片101は、
図3に示すように、裏面側に第1カバー部材110の第1フランジ片111、表面側に第2カバー部材120の第2フランジ片121が積層されて一体成形された積層構造となっている。表側となる第2フランジ片121の表面には、ゲート痕Gが形成されている。また、
図5(B)に示すように、第1カバー部材110の第1フランジ片111の表面にもゲート痕Gが形成される。第1フランジ片111のゲート痕Gは、第2フランジ片121に積層されるため、秘匿されて外部から視認されることはない。
【0052】
ゲート痕Gは、ダイレクトゲート痕であり、比較的大きな径の大きな射出痕が形成されている。ゲート痕Gは、凹部117にも形成されており、このダイレクトゲート痕も、長尺枠部125に積層されて外部から視認されることはない。
図5に示すゲート痕SGはサイドゲート痕である。サイドゲート痕は、第3カバー部材130と第1カバー部材110の端面に形成されている。
【0053】
灯具カバー部材100を成形するには、まず、透光性樹脂部材で構成される第1カバー部材110および第3カバー部材が一次成形される。このとき、第1カバー部材110は、第1フランジ片111および凹部117の位置にダイレクトゲートが設けられて射出成形される。次に、非透光性樹脂部材で構成される第2カバー部材120でまとめ成形され、各カバー部材が一体的に成形された灯具カバー部材100が成形される。このとき、長尺枠部125は、主として第2フランジ片121に設けられたダイレクトゲートで射出成形され、枝部126は主として端面に設けられたサイドゲートで射出成形される。
【0054】
長尺な車両用灯具の灯具カバー部材は、射出成形時に、樹脂部材の流動長が長くなり、成形不具合が発生しやすい。またアウターレンズ部には透光性樹脂部材を用いる多色成形品であり、成形不良により光透過にムラができると、配光不良で製品不良となってしまう。
【0055】
このため、本実施形態においては、射出成形時のゲートを設けるためのフランジ片101を、灯具カバー部材100の長手方向の一面に突設することで、長手方向に樹脂部材を均等に射出して、成形不具合の発生を抑制した。フランジ片101は長手方向に自由に設けることができ、射出成形に最適な個所に適宜設けることができる。
【0056】
車両用灯具1の上面は、車体VBに秘匿される。非意匠部となる箇所に、複数のフランジ片101を略均一に分散させて設けて成形精度を上げた。フランジ片101を車体VBで秘匿されるため、フランジ片101を設けることによる意匠性の低下は抑止される。フランジ片101は隠匿されるため、フランジ片101をカットする工程も不要となる。
【0057】
また、ゲート痕Gは、比較的径の大きなダイレクトゲート痕である。ダイレクトゲートを用いた射出成形は、ランナーを介さずに直接に金型のキャビティ空間にゲートが接続されるため、圧力損失が少ないという利点がある。本実施形態の灯具カバー部材100の長尺な部分においては、体積も大きくなることから、ダイレクトゲートを用いて樹脂成形することで、成形圧力を高め、長尺な多色成形品における成形不良を抑制した。
【0058】
本実施形態においては、長尺で不具合の発生しやすい長尺枠部125や、成形精度の求められる第1カバー部材110の成形には、ダイレクトゲートを主として用い、それよりも流動長の短い枝部126や第3カバー部材130の成形には、成形しやすいサイドゲートを主として用いた成形を行った。フランジ片を用いることで、それぞれの形状や形態に合わせて成形方法を選択できる。
【0059】
第1カバー部材110は、第1フランジ片111と凹部117にダイレクトゲート痕が形成されており、どちらも第1カバー部材110に積層され、視認されることはない。透光性樹脂部材で構成され、長尺で体積も大きな第2カバー部材120がダイレクトゲートのみで成形される。成形圧力も高く、透光性樹脂部材で構成され、かつ体積の大きな第1カバー部材110の成形不具合の発生が抑制される。
【0060】
(金型と成形工程)
上記のように構成される灯具カバー部材100の成形工程、主としてフランジ片101を用いたダイレクトゲートでの二色成形工程について説明する。
図6および
図7は、灯具カバー部材100の成形金型の概略構成図であり、成形工程を示す説明図である。
図5および
図6は、
図3に対応しており、成形金型は
図2のIII-III線に対応する位置での切断面である。また、
図5(B)に示す第1カバー部材110が一次成形品、
図5(C)に示す第2カバー部材120が二次成形品であるため、合わせて参照いただきたい。
【0061】
図6(A)に示すように、まず固定側金型60と一次可動側金型70とが互いに向き合った状態で配置され、型締めされる。最初に一次成形品として第1カバー部材110が成形されるため、型締めされた状態で、金型内部には、第1カバー部材110の形状に対応した成形空間S1が画成される。本実施形態においては、第1カバー部材110の裏面側が固定側金型60の成形面で成形され、表面側が一次可動側金型70の成形面で成形される。
【0062】
一次可動側金型70は、第1ダイレクトゲート機構71を有する。第1ダイレクトゲート機構71は、ゲート72と、樹脂流路73と、ゲートピン74とを有する。
【0063】
ゲート72は、成形空間S1における第1フランジ片111に対応する位置で、成形空間S1に開口している。
【0064】
ゲートピン74は、棒状の部材であり、不図示の駆動装置によりゲート72へ進退移動可能に構成され、これによりゲート72が開閉される。
【0065】
樹脂流路73は、成形空間S1に溶融樹脂部材を供給するための流路である。樹脂流路73は、不図示の加熱装置により加熱されて高温に維持される。これにより樹脂流路で溶融樹脂部材が固化するのが抑止される。
【0066】
型締め状態では、ゲート72はゲートピン74により閉じられている。
【0067】
次に、
図6(B)に示すように、まず、ゲートピン74がゲート72から離れて、ゲート72が開くと共に、所定の融解温度に加熱された赤色透光性樹脂部材が、成形空間S1に射出され、成形空間S1に充填される。充填後にゲートピン74がゲート72へ移動して、ゲート72が閉じられ、成形空間S1に充填された樹脂部材が冷却されて固まり、第1カバー部材110が成形される。
【0068】
次に、図 6(C)に示すように、型開きされて、一次可動側金型70が離間される。ゲートピン74を閉じることにより、ゲートカットが成されるため、第1ダイレクトゲート機構71は、一次可動側金型70と共に離間し、第1カバー部材110は、固定側金型60に貼りついた状態のままとなる。第1カバー部材110の第1フランジ片111には、第1ダイレクトゲート機構71によるゲート痕Gが形成されている。ゲートピン74を有する第1ダイレクトゲート機構71を用いることで、ゲートカットの工程が不要となり、続けて二次成形を行うことができる。
【0069】
次に、
図7(A)に示すように、二次可動側金型80が固定側金型60と型締めされる。二次成形品として第2カバー部材120がまとめ成形されるため、型締めされた状態で、金型内部には、一次成形品である第1カバー部材110がインサートされた形態で、第2カバー部材120の形状に対応した成形空間S2が画成される。
【0070】
二次可動側金型80は、第2ダイレクトゲート機構81を有する。第2ダイレクトゲート機構81は、ゲート82と、樹脂流路83と、ゲートピン84とを有し、第1ダイレクトゲート機構71とほぼ同等の構成であり、各要素の詳細な説明を省略する。
【0071】
ゲート82は、成形空間S2における第2フランジ片121に対応する位置で、成形空間S2に開口している。
【0072】
次に、
図7(B)に示すように、まずゲートピン84がゲート82から離れて、ゲート82が開くと共に、所定の融解温度に加熱された非透光性樹脂部材が、成形空間S2に射出され、成形空間S2に充填される。下方の成形空間S2には、図示しない他のゲートから射出された樹脂部材が充填される。充填後に、ゲートピン84がゲート82へ移動して、ゲート82が閉じられ、成形空間S2に充填された樹脂部材が冷却されて固まり、第2カバー部材120が、第1カバー部材110と一体的に成形され、灯具カバー部材100が成形される。
【0073】
次に、
図7(C)に示すように、型開きされ、まず二次可動側金型80が離間される。ゲートピン84を閉じることにより、ゲートカットが成されるため、第2ダイレクトゲート機構81は、二次可動側金型80と共に離間する。第2カバー部材120の第2フランジ片121には第2ダイレクトゲート機構81によるゲート痕Gが形成されている。第1フランジ片111に形成されたゲート痕Gは、第2フランジ片121に積層されることにより、隠匿される。その後、成形された灯具カバー部材100は、不図示の押出ピンによる押出で、取り外しされる。
【0074】
(変形例)
本開示の構成は、上記内容に限られない。変形例について、
図8を用いて説明する。同等の構成を持つものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0075】
図8は変形例である車両用灯具1aを示す。
図8(A)は車両用灯具1aを示し、
図8(B)は灯具カバー部材100aを示す。
図8(C)は一次成形品である第1カバー部材110aと第3カバー部材130を示す。
図8(D)は第2カバー部材120aを示す。
【0076】
車両用灯具1aは、灯具カバー部材100aおよびランプボディ50aを備える。灯具カバー部材100aは、第1カバー部材110a、第2カバー部材120a、第3カバー部材130が一体成形された多色成形品である。
【0077】
図8(B)に示すように、車両用灯具1aは、上面から上方に突出して設けられた、第1カバー部材110aおよび第2カバー部材120aが積層されたフランジ片101b、101c、101dを備える。また、第1カバー部材110aの一部として、第1フランジ片111a、111eが突設されている。さらに、第2カバー部材120aの一部として、第2フランジ片121a、121eが突設されている。
【0078】
即ち、第1カバー部材110aに設けられた第1フランジ片111a、111b、111c、111d、111eと、第2カバー部材120aに設けられた第2フランジ片121a、121b、121c、121d、121eとは、必ずしも積層して設けられておらず、一部のフランジ片が積層し、その他のフランジ片は積層せずに、長手方向にお互いにずれて設けられている。このように、フランジ片は、必ずしも積層して設ける必要はなく、灯具カバー部材の長手方向の同側辺に、第1カバー部材、第2カバー部材のそれぞれの形状に合わせて、それぞれ射出成形に好適な位置に設けてもよい。
【0079】
また、第2フランジ片121cには、正面にダイレクトゲート痕ではなく、端面にサイドゲートによるゲート痕SGが形成されている。射出成形時にフランジ片に設けられるゲートの形態は、ダイレクトゲートに限られず、例えば、幅の狭く成形圧力が必要ではない箇所にサイドゲートを用いるなど、それぞれの形状や形態に合わせて、好適なゲート形態を選択してもよい。
【0080】
フランジ片101bは、幅広に形成されており、第1フランジ片111bに第2フランジ片121bが積層されて形成されているが、それぞれのゲート痕Gは重ならずにずれて設けられている。このように、ゲートまで同位置に設ける必要はなく、同フランジ片でゲート位置をずらして設けてもよい。
【0081】
フランジ片101dには、その中央に貫通孔が形成されている。これは、フランジ片101dは車両用灯具1aの取付け用のクランプ片であり、取付けクランプ40が貫通孔に挿通して車体VBに取付けられる。このように、取付け用のクランプ片が灯具カバー部材に突設して設けられる場合、クランプ片をゲート用のフランジ片として用いてもよい。
【0082】
第1カバー部材110a、第2カバー部材120aのそれぞれの形状や形態に合わせて、それぞれ射出成形に好適なフランジ片やゲートを用いることで、成形不具合の発生が抑制される。
【0083】
以上、本発明の好ましい実施形態について述べたが、上記の実施形態は本発明の一例であり、これらを当業者の知識に基づいて組み合わせることが可能であり、そのような形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 :車両用灯具
1a :車両用灯具
53 :クランプ片
100 :灯具カバー部材
101 :フランジ片
110 :第1カバー部材
111 :第1フランジ片
120 :第2カバー部材
121 :第2フランジ片
CAR :車両
G :ゲート痕
SG :ゲート痕