(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】アンモニアエンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20241206BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F02M21/02 K
C01B3/04 B
F02M21/02 G
F02M21/02 301A
(21)【出願番号】P 2021143069
(22)【出願日】2021-09-02
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】針生 聡
(72)【発明者】
【氏名】小池 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴置 哲典
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2012/090739(JP,A1)
【文献】特開2020-159211(JP,A)
【文献】特開2013-234626(JP,A)
【文献】特開2016-44860(JP,A)
【文献】特開2020-172904(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2018-0124365(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
C01B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアガスが燃焼するアンモニアエンジンと、
前記アンモニアガスを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器より生成された前記改質ガスが前記アンモニアエンジンに向けて流れる改質ガス配管と、
前記アンモニアエンジンに空気を供給する第1空気供給部と、
前記改質器に空気を供給する第2空気供給部と、
前記アンモニアエンジンに向けて前記アンモニアガスを供給する第1アンモニア供給弁と、
前記改質器に向けて前記アンモニアガスを供給する第2アンモニア供給弁と、
液体アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵タンクと、
前記アンモニア貯蔵タンクに貯蔵された前記液体アンモニアを気化させて前記アンモニアガスを生成する気化器と、
前記アンモニア貯蔵タンクから前記気化器に前記液体アンモニアが流れる液体アンモニア配管と、
前記気化器から前記第1アンモニア供給弁及び前記第2アンモニア供給弁に前記アンモニアガスが流れるアンモニアガス配管と、
前記液体アンモニア配管に配設され、前記液体アンモニア配管内の圧力が規定圧以上になると開く第1安全弁と、
前記アンモニアガス配管に配設され、前記アンモニアガス配管内の圧力が規定圧以上になると開く第2安全弁と、
前記第1安全弁及び前記第2安全弁とドレイン配管を介して接続され、前記第1安全弁から排出された前記液体アンモニアと前記第2安全弁から排出された前記アンモニアガスとを保持するアンモニア保持タンクとを備え、
前記アンモニア保持タンクは、前記ドレイン配管と連結され、前記液体アンモニア及び前記アンモニアガスを導入する導入口を有する筐体と、前記筐体内に配置され、前記液体アンモニア及び前記アンモニアガスを吸着する吸着材とを有し、
前記筐体内には、前記導入口から導入された前記液体アンモニア及び前記アンモニアガスを前記吸着材まで導くアンモニア流路が設けられているアンモニアエンジンシステム。
【請求項2】
前記アンモニア保持タンクは、前記筐体内に配置され、前記吸着材から発生した熱を吸収する吸熱部材を更に有する請求項1記載のアンモニアエンジンシステム。
【請求項3】
前記導入口は、前記筐体の上部に設けられており、
前記吸熱部材は、前記吸着材の上側に配置されている請求項2記載のアンモニアエンジンシステム。
【請求項4】
前記吸着材と前記吸熱部材との間には、前記液体アンモニア及び前記アンモニアガスが流れる空間を有し、前記吸着材と前記吸熱部材とを連結する連結部材が配置されており、
前記吸熱部材と前記筐体の内側面との間には、隙間が設けられており、
前記隙間及び前記空間は、前記アンモニア流路を形成している請求項3記載のアンモニアエンジンシステム。
【請求項5】
前記吸熱部材には、前記筐体の上下方向に貫通する貫通孔が設けられており、
前記貫通孔は、前記アンモニア流路を形成している請求項3記載のアンモニアエンジンシステム。
【請求項6】
前記導入口は、前記筐体の上部に設けられており、
前記吸着材は、前記筐体の上下方向に複数配置されている請求項1記載のアンモニアエンジンシステム。
【請求項7】
前記複数の吸着材の上側には、前記吸着材から発生した熱を吸収する吸熱部材がそれぞれ配置されている請求項6記載のアンモニアエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアエンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアンモニアエンジンシステムとしては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載のアンモニアエンジンシステムは、機関本体と、機関本体の各機関吸気通路に向かってアンモニアを噴射するアンモニア噴射弁と、液体のアンモニアから水素を生成する水素発生装置と、機関本体の各機関吸気通路に向かって水素を噴射する水素噴射弁とを備えている。水素発生装置は、液体のアンモニアが貯蔵されたタンクと、液体のアンモニアを加熱して気化させる蒸発器と、この蒸発器で生成された気体のアンモニアの一部がアンモニア噴射弁に向けて流れる供給管と、蒸発器で生成された気体のアンモニアを分解する分解器と、この分解器に供給される空気が流れる流入管と、分解器により生成された水素が水素噴射弁に向けて流れる供給管とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のようなアンモニアエンジンシステムにおいては、機関本体(アンモニアエンジン)及び分解器(改質器)に気体のアンモニアが供給される。このとき、周囲温度の上昇等によって、液体及び気体のアンモニアが流れる配管内の圧力が必要以上に高くなると、配管及び蒸発器(気化器)が破損し、大量のアンモニアが周囲に散逸することがある。その対策としては、アンモニアが流れる配管に安全弁を配設することが考えられる。しかし、配管内の圧力が規定圧以上になると、安全弁が開くため、アンモニアが大気中に放出されてしまう。
【0005】
本発明の目的は、気化器、アンモニアエンジン及び改質器に供給されるアンモニアが大気中に放出されることを防止できるアンモニアエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るアンモニアエンジンシステムは、アンモニアガスが燃焼するアンモニアエンジンと、アンモニアガスを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する改質器と、改質器より生成された改質ガスがアンモニアエンジンに向けて流れる改質ガス配管と、アンモニアエンジンに空気を供給する第1空気供給部と、改質器に空気を供給する第2空気供給部と、アンモニアエンジンに向けてアンモニアガスを供給する第1アンモニア供給弁と、改質器に向けてアンモニアガスを供給する第2アンモニア供給弁と、液体アンモニアを貯蔵するアンモニア貯蔵タンクと、アンモニア貯蔵タンクに貯蔵された液体アンモニアを気化させてアンモニアガスを生成する気化器と、アンモニア貯蔵タンクから気化器に液体アンモニアが流れる液体アンモニア配管と、気化器から第1アンモニア供給弁及び第2アンモニア供給弁にアンモニアガスが流れるアンモニアガス配管と、液体アンモニア配管に配設され、液体アンモニア配管内の圧力が規定圧以上になると開く第1安全弁と、アンモニアガス配管に配設され、アンモニアガス配管内の圧力が規定圧以上になると開く第2安全弁と、第1安全弁及び第2安全弁とドレイン配管を介して接続され、第1安全弁から排出された液体アンモニアと第2安全弁から排出されたアンモニアガスとを保持するアンモニア保持タンクとを備え、アンモニア保持タンクは、ドレイン配管と連結され、液体アンモニア及びアンモニアガスを導入する導入口を有する筐体と、筐体内に配置され、液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着する吸着材とを有し、筐体内には、導入口から導入された液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着材まで導くアンモニア流路が設けられている。
【0007】
このようなアンモニアエンジンシステムにおいては、アンモニア貯蔵タンクに貯蔵された液体アンモニアは、液体アンモニア配管内を流れて気化器に供給される。そして、気化器において、液体アンモニアが気化されてアンモニアガスが生成される。アンモニアガスは、アンモニアガス配管内を流れて第1アンモニア供給弁及び第2アンモニア供給弁に供給される。そして、第1アンモニア供給弁及び第2アンモニア供給弁によりアンモニアエンジン及び改質器に向けてアンモニアガスがそれぞれ供給される。また、アンモニアエンジン及び改質器に空気が供給される。すると、改質器においてアンモニアガスが改質されることにより、水素を含有した改質ガスが生成され、その改質ガスがアンモニアエンジンに供給される。そして、アンモニアエンジンにおいて、アンモニアガスが改質ガス中の水素と共に燃焼する。
【0008】
ここで、液体アンモニア配管内の圧力が規定圧以上になると、第1安全弁が開き、第1安全弁から液体アンモニアが排出される。液体アンモニアは、ドレイン配管内を流れてアンモニア保持タンクに供給される。アンモニアガス配管内の圧力が規定圧以上になると、第2安全弁が開き、第2安全弁からアンモニアガスが排出される。アンモニアガスは、ドレイン配管内を流れてアンモニア保持タンクに供給される。アンモニア保持タンクにおいて、液体アンモニア及びアンモニアガスは、導入口から筐体内に導入された後、アンモニア流路を流れて吸着材に吸着される。このように液体アンモニア配管内及びアンモニアガス配管内の圧力が規定圧以上になることで、第1安全弁及び第2安全弁が開いても、第1安全弁から排出された液体アンモニア及び第2安全弁から排出されたアンモニアガスはアンモニア保持タンクに保持されることになる。これにより、気化器に供給される液体アンモニアとアンモニアエンジン及び改質器に供給されるアンモニアガスとが大気中に放出されることが防止される。
【0009】
アンモニア保持タンクは、筐体内に配置され、吸着材から発生した熱を吸収する吸熱部材を更に有してもよい。このような構成では、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材に吸着される際に発生した熱が吸熱部材に吸収される。従って、吸着材が熱くなることが防止されるため、吸着材の吸着性能が十分に確保される。
【0010】
導入口は、筐体の上部に設けられており、吸熱部材は、吸着材の上側に配置されていてもよい。このような構成では、吸着材及び吸熱部材が筐体内にスペース効率良く配置されると共に、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材に吸着される際に発生した熱が吸熱部材に効果的に吸収される。
【0011】
吸着材と吸熱部材との間には、液体アンモニア及びアンモニアガスが流れる空間を有し、吸着材と吸熱部材とを連結する連結部材が配置されており、吸熱部材と筐体の内側面との間には、隙間が設けられており、隙間及び空間は、アンモニア流路を形成していてもよい。このような構成では、導入口から筐体内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスは、隙間と空間とを順に流れて吸着材に吸着される。従って、吸熱部材に孔加工を施さなくても、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材に導かれる。また、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材に吸着される際に発生した熱は、連結部材を介して吸熱部材に吸収される。
【0012】
吸熱部材には、筐体の上下方向に貫通する貫通孔が設けられており、貫通孔は、アンモニア流路を形成していてもよい。このような構成では、導入口から筐体内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスは、吸熱部材の貫通孔を流れて吸着材に吸着される。従って、アンモニア保持タンクの上下方向の寸法を小さくしつつ、液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着材に導くことができる。また、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材に吸着される際に発生した熱は、吸熱部材に直接吸収される。
【0013】
導入口は、筐体の上部に設けられており、吸着材は、筐体の上下方向に複数配置されていてもよい。このような構成では、各吸着材の厚さ寸法を小さくすることにより、吸着材が液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着することで膨張しても、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材の全域に達しやすくなる。従って、吸着材の下側領域が液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着しない無駄な領域になることが防止される。
【0014】
複数の吸着材の上側には、吸着材から発生した熱を吸収する吸熱部材がそれぞれ配置されていてもよい。このような構成では、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材に吸着される際に発生した熱が吸熱部材に吸収される。従って、吸着材が熱くなることが防止されるため、吸着材の吸着性能が十分に確保される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、気化器、アンモニアエンジン及び改質器に供給されるアンモニアが大気中に放出されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るアンモニアエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示されたアンモニア吸着タンクの断面図である。
【
図3】比較例としてのアンモニアエンジンシステムを示す概略構成図である。
【
図4】
図2に示されたアンモニア保持タンクの変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニアエンジンシステムを示す概略構成図である。
図1において、本実施形態のアンモニアエンジンシステム1は、車両のエンジンルームに搭載されている。アンモニアエンジンシステム1は、アンモニアエンジン2と、吸気管3と、排気管4と、メインインジェクタ5と、メインスロットルバルブ6とを備えている。
【0019】
アンモニアエンジン2は、アンモニア(NH3)ガスが燃焼するエンジンである。アンモニアエンジン2では、難燃性のアンモニアガスの燃焼を促進させるため、アンモニアガスに水素(H2)ガスが混合される。アンモニアエンジン2は、例えば4気筒エンジンである。アンモニアエンジン2は、アンモニアガスが水素ガスと共に燃焼して排気ガスが発生する4つの燃焼室を有している。
【0020】
吸気管3は、アンモニアエンジン2の吸気ポート(図示せず)と接続されている。吸気管3は、アンモニアエンジン2に供給される空気が流れる配管である。吸気管3には、空気に含まれる塵や埃等の異物を除去するエアクリーナ7が配設されている。
【0021】
排気管4は、アンモニアエンジン2の排気ポート(図示せず)と接続されている。排気管4は、アンモニアエンジン2で発生した排気ガスが流れる配管である。
【0022】
メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2の吸気ポートまたは燃焼室にアンモニアガスを噴射する燃料噴射弁である。メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2の各気筒毎に配置されている。メインインジェクタ5は、アンモニアエンジン2に向けてアンモニアガスを供給する第1アンモニア供給弁を構成している。
【0023】
メインスロットルバルブ6は、吸気管3におけるエアクリーナ7とアンモニアエンジン2との間に配設されている。メインスロットルバルブ6は、アンモニアエンジン2に供給される空気の流量を制御する流量制御弁である。
【0024】
吸気管3及びメインスロットルバルブ6は、アンモニアエンジン2に空気を供給する第1空気供給部8を構成している。
【0025】
また、アンモニアエンジンシステム1は、改質器10と、空気配管11と、改質スロットルバルブ12と、改質インジェクタ13と、改質ガス配管14と、クーラ15と、ストップバルブ16とを備えている。
【0026】
改質器10は、アンモニアガスを燃焼させて発生した熱を利用してアンモニアガスを改質することにより、水素を含有した改質ガスを生成する。改質器10は、円筒状の筐体17と、この筐体17内に収容された改質部18及び電気ヒータ19とを有している。筐体17は、アンモニアに対して耐腐食性を有するステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
【0027】
改質部18は、例えばハニカム構造のATR触媒18aを有している。ATR触媒18aは、アンモニアガスを燃焼させると共に、そのアンモニアガスの燃焼熱(自己熱)によりアンモニアガスを水素に分解することで、アンモニアガスを改質する自己熱式改質触媒である。ATR触媒18aとしては、例えばコバルト系触媒、ロジウム系触媒、ルテニウム系触媒またはパラジウム系触媒等が使用される。
【0028】
電気ヒータ19は、筐体17内における改質部18よりも上流側に配置されている。電気ヒータ19は、電力が与えられると発熱し、その熱により改質部18を加熱する。このとき、電気ヒータ19から発生する熱は、筐体17内を流れるガスを通じて改質部18に伝わると共に筐体17自体を通じて改質部18に伝わる。
【0029】
空気配管11は、吸気管3と改質器10とを接続している。空気配管11の一端は、吸気管3におけるエアクリーナ7とメインスロットルバルブ6との間に接続されている。空気配管11の他端は、改質器10の筐体17のガス入口部17aに接続されている。空気配管11は、改質器10に供給される空気が流れる配管である。改質スロットルバルブ12は、空気配管11に配設されている。改質スロットルバルブ12は、改質器10に供給される空気の流量を制御する流量制御弁である。
【0030】
空気配管11及び改質スロットルバルブ12は、改質器10に空気を供給する第2空気供給部20を構成している。
【0031】
改質インジェクタ13は、空気配管11における改質スロットルバルブ12と改質器10との間にアンモニアガスを噴射する燃料噴射弁である。改質インジェクタ13は、改質器10に向けてアンモニアガスを供給する第2アンモニア供給弁を構成している。
【0032】
改質ガス配管14は、改質器10と吸気管3とを接続している。改質ガス配管14の一端は、改質器10の筐体17のガス出口部17bに接続されている。改質ガス配管14の他端は、吸気管3におけるメインスロットルバルブ6とアンモニアエンジン2との間に接続されている。改質ガス配管14は、改質器10により生成された改質ガスがアンモニアエンジン2に向けて流れる配管である。
【0033】
クーラ15は、改質ガス配管14に配設されている。クーラ15は、例えば改質ガスとアンモニアエンジン2を冷却するためのエンジン冷却水とを熱交換することにより、改質ガスを冷却する。
【0034】
ストップバルブ16は、改質ガス配管14におけるクーラ15よりも下流側に配設されている。ストップバルブ16は、改質ガス配管14を開閉する開閉弁である。
【0035】
また、アンモニアエンジンシステム1は、アンモニア貯蔵タンク21と、気化器22と、液体アンモニア配管23と、アンモニアガス配管24,25と、安全弁26,27と、アンモニア保持タンク28と、ドレイン配管29,30とを備えている。
【0036】
アンモニア貯蔵タンク21は、アンモニアを液体状態で貯蔵する。つまり、アンモニア貯蔵タンク21は、液体アンモニアを貯蔵する。気化器22は、アンモニア貯蔵タンク21に貯蔵された液体アンモニアを気化させてアンモニアガスを生成する。
【0037】
液体アンモニア配管23は、アンモニア貯蔵タンク21と気化器22とを接続する。液体アンモニア配管23は、アンモニア貯蔵タンク21から気化器22に液体アンモニアが流れる配管である。液体アンモニア配管23は、アンモニアに対して耐腐食性を有するステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
【0038】
アンモニアガス配管24は、気化器22と各メインインジェクタ5とを接続する。アンモニアガス配管24は、気化器22から各メインインジェクタ5にアンモニアガスが流れる配管である。
【0039】
アンモニアガス配管25は、気化器22と改質インジェクタ13とを接続する。アンモニアガス配管25は、気化器22から改質インジェクタ13にアンモニアガスが流れる配管である。アンモニアガス配管25の一端は、アンモニアガス配管24に接続されている。アンモニアガス配管24,25は、液体アンモニア配管23と同じ金属材料で形成されている。
【0040】
安全弁26は、液体アンモニア配管23に配設されている。安全弁26は、液体アンモニア配管23内の圧力が規定圧以上になると開く圧力調整弁(第1安全弁)である。安全弁26の規定圧は、例えば液体アンモニア配管23の破裂が起きないような圧力に設定されている。安全弁26が開くと、安全弁26の排出口26aから液体アンモニアが排出される。
【0041】
安全弁27は、アンモニアガス配管24に配設されている。安全弁27は、アンモニアガス配管24におけるアンモニアガス配管25との接続部よりも上流側(気化器22側)に配設されている。安全弁27は、アンモニアガス配管24内の圧力が規定圧以上になると開く圧力調整弁(第2安全弁)である。安全弁27の規定圧は、例えばアンモニアガス配管24,25の破裂が起きないような圧力に設定されている。安全弁27が開くと、安全弁27の排出口27aからアンモニアガスが排出される。
【0042】
アンモニア保持タンク28は、安全弁26,27とそれぞれドレイン配管29,30を介して接続されている。ドレイン配管29の一端は、安全弁26の排出口26aに接続されている。ドレイン配管29の他端は、アンモニア保持タンク28に接続されている。ドレイン配管30の一端は、安全弁27の排出口27aに接続されている。ドレイン配管30の他端は、ドレイン配管29に接続されている。ドレイン配管29,30は、液体アンモニア配管23と同じ金属材料で形成されている。
【0043】
安全弁26の排出口26aから排出された液体アンモニアは、ドレイン配管29内を流れてアンモニア保持タンク28に供給される。安全弁27の排出口27aから排出されたアンモニアガスは、ドレイン配管30,29内を流れてアンモニア保持タンク28に供給される。アンモニア保持タンク28は、安全弁26の排出口26aから排出された液体アンモニアと安全弁27の排出口27aから排出されたアンモニアガスとを保持する。
【0044】
図2は、アンモニア保持タンク28の断面図である。
図2において、アンモニア保持タンク28は、筐体31と、この筐体31内に配置された吸着材32及び吸熱部材33とを有している。
【0045】
筐体31は、有底円筒状の容器34と、この容器34の上端部に固定された円形状の蓋35とを有している。蓋35の中央部には、液体アンモニア及びアンモニアガスを筐体31内に導入するための導入口36が設けられている。蓋35の中央部には、上記のドレイン配管29が連結されている。具体的には、ドレイン配管29は、蓋35の中央部における導入口36を画成する内壁面に連結されている。これにより、ドレイン配管29内を流れてきた液体アンモニア及びアンモニアガスが導入口36から筐体31内に導入される。筐体31は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。
【0046】
吸着材32及び吸熱部材33は、筐体31内において筐体31の上下方向に複数(ここでは2つ)ずつ交互に配置されている。つまり、筐体31内には、筐体31の下側から上側に向かって吸着材32、吸熱部材33、吸着材32及び吸熱部材33の順に積層されている。吸着材32及び吸熱部材33は、平面視円形状を呈している。
【0047】
吸着材32は、液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着する。吸着材32は、発熱時にアンモニアを物理吸着し、吸熱時にアンモニアを脱離する。また、吸着材32は、アンモニアを物理吸着すると膨張し、アンモニアを脱離すると収縮する。そのような吸着材32としては、Be、Mg、Ca等のアルカリ土類金属とF、Cl、Br等のハロゲン元素との化合物が用いられる。また、吸着材32としては、ゼオライトまたは活性炭等を用いてもよい。
【0048】
吸熱部材33は、吸着材32から発生した熱を吸収する。吸熱部材33は、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。また、吸熱部材33としては、パッケージングされた蓄熱材等を用いてもよい。
【0049】
吸着材32は、上述したようにアンモニアの吸着時に膨張する。このため、吸着材32がアンモニアを吸着していない通常状態では、吸着材32の径は、吸熱部材33の径よりも小さくなっている。また、通常状態では、下側の吸着材32と容器34の底面との間には隙間が設けられ、上側の吸着材32と下側の吸熱部材33との間には隙間が設けられている。
【0050】
吸着材32と吸熱部材33との間には、連結部材37が配置されている。連結部材37は、吸着材32と吸熱部材33とを連結する。連結部材37は、液体アンモニア及びアンモニアガスが流れる空間38を有している。空間38は、吸着材32と面している。そのような空間38を有する連結部材37としては、例えば金網等が用いられる。
【0051】
下側の連結部材37は、複数の柱部39を介して容器34の底面に固定されている。上側の連結部材37は、複数の柱部39を介して下側の吸熱部材33に固定されている。これにより、吸着材32、吸熱部材33及び連結部材37が積層状態で容器34に支持されている。上側の吸熱部材33は、導入口36と面している。
【0052】
吸着材32及び吸熱部材33と容器34の内側面34aとの間には、液体アンモニア及びアンモニアガスが流れる環状の隙間40が設けられている。隙間40は、連結部材37に設けられた空間38と連通している。
【0053】
隙間40及び空間38は、導入口36から筐体31内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着材32に導くアンモニア流路を構成している。導入口36から筐体31内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスは、隙間40及び空間38を流れて吸着材32の上面に達すると共に、隙間40を流れて吸着材32の側面に達する。そして、液体アンモニア及びアンモニアガスは、吸着材32の上面及び側面から吸着材32の内部に入り込んで吸着される。
【0054】
以上のようなアンモニアエンジンシステム1において、イグニッションスイッチ(図示せず)がON操作されると、電気ヒータ19が通電されることで、電気ヒータ19により改質部18が加熱されると共に、ストップバルブ16が開弁する。
【0055】
また、ポンプ(図示せず)によってアンモニア貯蔵タンク21から気化器22に液体アンモニアが供給され、気化器22において液体アンモニアが気化してアンモニアガスが生成される。アンモニアガスは、アンモニアガス配管24,25内を流れてメインインジェクタ5及び改質インジェクタ13に供給される。
【0056】
そして、メインスロットルバルブ6が開弁することで、アンモニアエンジン2に空気が供給される。また、改質インジェクタ13及び改質スロットルバルブ12が開弁することで、改質部18にアンモニアガス及び空気が供給される。
【0057】
そして、改質部18の温度が活性化温度(燃焼温度)に達すると、ATR触媒18aによりアンモニアガスが燃焼する。具体的には、下記式のように、アンモニアと空気中の酸素とが化学反応する(発熱反応)。
NH3+3/4O2→1/2N2+3/2H2O …(A)
【0058】
すると、アンモニアガスの燃焼熱によって改質部18の温度が更に上昇する。そして、改質部18の温度が反応温度(改質温度)に達すると、ATR触媒18aによりアンモニアガスが改質される。具体的には、下記式のように、アンモニアの分解反応が起こり(吸熱反応)、水素を含む改質ガスが生成される。
NH3→3/2H2+1/2N2 …(B)
【0059】
改質ガスは、改質ガス配管14及び吸気管3を流れてアンモニアエンジン2に供給される。また、メインインジェクタ5が開弁することで、アンモニアエンジン2にアンモニアガスが供給される。すると、アンモニアエンジン2において、アンモニアガスが改質ガス中の水素と共に燃焼する。
【0060】
ところで、外気温の上昇等により車両のエンジンルーム内の温度が高くなり過ぎると、液体アンモニア配管23内及びアンモニアガス配管24,25内の圧力が異常値に達することがある。ただし、液体アンモニア配管23内の圧力が規定圧に達すると、安全弁26が開く。アンモニアガス配管24,25内の圧力が規定圧に達すると、安全弁27が開く。このため、液体アンモニア配管23、アンモニアガス配管24,25及び気化器22の破裂が防止される。
【0061】
しかし、
図3に示されるように、アンモニア保持タンク28及びドレイン配管29,30が具備されていない場合には、以下の不具合が発生する。即ち、液体アンモニア配管23内の圧力が規定圧に達することで、安全弁26が開いても、液体アンモニアが大気中に漏洩してしまう。また、アンモニアガス配管24,25内の圧力が規定圧に達することで、安全弁27が開いても、アンモニアガスが大気中に漏洩してしまう。
【0062】
そのような課題に対し、本実施形態では、液体アンモニア配管23内の圧力が規定圧以上になると、安全弁26が開き、安全弁26から液体アンモニアが排出される。液体アンモニアは、ドレイン配管29内を流れてアンモニア保持タンク28に供給される。アンモニアガス配管24,25内の圧力が規定圧以上になると、安全弁27が開き、安全弁27からアンモニアガスが排出される。アンモニアガスは、ドレイン配管30,29内を流れてアンモニア保持タンク28に供給される。アンモニア保持タンク28において、液体アンモニア及びアンモニアガスは、導入口36から筐体31内に導入された後、隙間40及び空間38を流れて吸着材32に吸着される。このように液体アンモニア配管23内及びアンモニアガス配管24,25内の圧力が規定圧以上になることで、安全弁26及び安全弁27が開いても、安全弁26から排出された液体アンモニア及び安全弁27から排出されたアンモニアガスはアンモニア保持タンク28に保持されることになる。これにより、気化器22に供給される液体アンモニアとアンモニアエンジン2及び改質器10に供給されるアンモニアガスとが大気中に放出されることが防止される。
【0063】
ここで、安全弁26から排出された液体アンモニア及び安全弁27から排出されたアンモニアガスを、吸着材32に吸着させずに単にタンクに溜めることも考えられる。しかし、この場合には、タンクの体格がかなり大型(例えば20倍程度)になってしまう。本実施形態では、筐体31内に吸着材32を配置することにより、液体アンモニア及びアンモニアガスを単にタンクに溜める場合に比べて、アンモニア保持タンク28の体格を十分に小さくしつつ、安全弁26から排出された液体アンモニア及び安全弁27から排出されたアンモニアガスを回収することができる。
【0064】
また、本実施形態では、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材32に吸着される際に発生した熱が吸熱部材33に吸収される。従って、吸着材32が熱くなることが防止されるため、吸着材32の吸着性能が十分に確保される。
【0065】
また、本実施形態では、吸熱部材33は、吸着材32の上側に配置されている。このため、吸着材32及び吸熱部材33が筐体31内にスペース効率良く配置されると共に、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材32に吸着される際に発生した熱が吸熱部材33に効果的に吸収される。
【0066】
また、本実施形態では、導入口36から筐体31内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスは、吸熱部材33と筐体31の内側面34aとの間の隙間40と連結部材37に設けられた空間38とを順に流れて吸着材32に吸着される。従って、吸熱部材33に孔加工を施さなくても、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材32に導かれる。また、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材32に吸着される際に発生した熱は、連結部材37を介して吸熱部材33に吸収される。
【0067】
また、本実施形態では、筐体31の上下方向に配置された複数の吸着材32の厚さ寸法を小さくすることにより、吸着材32が液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着することで膨張しても、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材32の全域に達しやすくなる。従って、吸着材32の下側領域が液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着しない無駄な領域になることが防止される。
【0068】
図4は、
図2に示されたアンモニア保持タンク28の変形例を示す断面図である。
図4において、本変形例のアンモニア保持タンク28は、上記の筐体31及び吸着材32と、吸熱部材43とを有している。
【0069】
吸熱部材43には、筐体31の上下方向に貫通する複数(ここでは4つ)の貫通孔44が設けられている。これらの貫通孔44は、導入口36から筐体31内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着材32に導くアンモニア流路を構成している。貫通孔44は、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材32の大部分に吸着されるように設けられている。貫通孔44は、例えば
図5に示されるように、吸熱部材43の径方向中心Gに対して点対称となるように配置されている。なお、貫通孔44の数は、1つであってもよい。
【0070】
導入口36から筐体31内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスは、吸熱部材43の各貫通孔44を流れて吸着材32の上面に達すると共に、隙間40を流れて吸着材32の側面に達する。そして、液体アンモニア及びアンモニアガスは、吸着材32の上面及び側面から吸着材32の内部に入り込んで吸着される。
【0071】
このような本実施形態では、導入口36から筐体31内に導入された液体アンモニア及びアンモニアガスは、吸熱部材43の貫通孔44を流れて吸着材32に吸着される。従って、アンモニア保持タンク28の上下方向の寸法を小さくしつつ、液体アンモニア及びアンモニアガスを吸着材32に導くことができる。また、液体アンモニア及びアンモニアガスが吸着材32に吸着される際に発生した熱は、吸熱部材33に直接吸収される。
【0072】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、吸着材32及び吸熱部材33は、筐体31の上下方向に複数ずつ交互に配置されているが、特にそのような形態には限られない。吸着材32及び吸熱部材33または吸熱部材43の数は、それぞれ1つであってもよい。
【0073】
また、上記実施形態では、筐体31の蓋35に導入口36が1つのみ設けられ、この導入口36から筐体31内に液体アンモニア及びアンモニアガスが導入されているが、特にそのような形態には限られない。導入口36の数は、複数であってもよい。
【0074】
また、液体アンモニア導入用の導入口とアンモニアガス導入用の導入口とを蓋35に別々に設けてもよい。この場合には、安全弁26と液体アンモニア導入用の導入口とがドレイン配管29により接続されると共に、安全弁27とアンモニアガス導入用の導入口とがドレイン配管30により接続されてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、筐体31の上部に導入口36が設けられているが、特にその形態には限られず、筐体31の側部に導入口36を設けてもよい。この場合には、吸着材32及び吸熱部材33または吸熱部材43は、筐体31内において筐体31の上下方向に垂直な方向に並んで配置されていてもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、吸着材32は、液体アンモニア及びアンモニアガスを物理吸着しているが、特にその形態には限られず、例えば液体アンモニア及びアンモニアガスを化学吸着する吸着材を使用してもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、吸着材32から発生した熱を吸収する吸熱部材33または吸熱部材43が筐体31内に配置されているが、特にその形態には限られず、吸熱部材33または吸熱部材43は無くてもよい。例えば、筐体31の外周面に、筐体31の温度を検出する温度計と筐体31を冷却するペルチェ素子とが取り付けられていてもよい。この場合には、吸着材32から発生した熱により筐体31の温度が所定温度まで上昇すると、ペルチェ素子を動作させることで筐体31の外部に熱が放出される。このような構成では、吸熱部材33または吸熱部材43が無い分だけ、アンモニア保持タンクの軽量化を図ることができる。
【0078】
また、上記実施形態では、改質部18は、アンモニアガスを燃焼させる機能とアンモニアガスを水素に分解する機能とを併せ持ったATR触媒18aを有しているが、特にそのような形態には限られない。改質部18は、アンモニアガスを燃焼させる燃焼触媒と、アンモニアガスを水素に分解する改質触媒とを別々に有していてもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、電気ヒータ19により改質部18が加熱されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、管状火炎等のような燃焼器を用いて改質部18を加熱してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1…アンモニアエンジンシステム、2…アンモニアエンジン、5…メインインジェクタ(第1アンモニア供給弁)、8…第1空気供給部、10…改質器、13…改質インジェクタ(第2アンモニア供給弁)、14…改質ガス配管、20…第2空気供給部、21…アンモニア貯蔵タンク、22…気化器、23…液体アンモニア配管、24,25…アンモニアガス配管、26…安全弁(第1安全弁)、27…安全弁(第2安全弁)、28…アンモニア保持タンク、29,30…ドレイン配管、31…筐体、32…吸着材、33…吸熱部材、34a…内側面、36…導入口、37…連結部材、38…空間(アンモニア流路)、40…隙間(アンモニア流路)、43…吸熱部材、44…貫通孔(アンモニア流路)。