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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】電池保護装置、および車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20241206BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241206BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B60K1/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021177489
(22)【出願日】2021-10-29
(65)【公開番号】P2022074116
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】202011180289.1
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】小澤 裕之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 尚志
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-003715(JP,A)
【文献】特開2016-083959(JP,A)
【文献】特開2013-123956(JP,A)
【文献】特開2021-054286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08、25/14-29/04
B60K 1/00- 6/12、 7/00- 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のサイドシルの下方に設けられ、車両の下方に設けられる電池パックの少なくとも一側面に位置する、電池保護装置であって、
前記電池保護装置は、保護装置本体を含み、
前記車両のサイドシルには、下向きに延びる突出部が設けられ、前記突出部は、前記保護装置本体と前記電池パックとの間に位置し、鉛直方向において、前記保護装置本体の地平面に対する最高点は、前記突出部の地平面に対する最低点よりも高くなり、
前記保護装置本体には、固定部が設けられ、
前記固定部は、前記車両のサイドシルの下方に固定され、
前記保護装置本体と前記車両のサイドシルとは、前記固定部以外の部分で離間して設けられ、
前記保護装置本体は、前記電池パックの側面を遮るように下向きに延びており、前記保護装置本体と前記電池パックとは、前記固定部以外の部分で互いに離間しており、
前記電池パックには、電池パック側部が設けられており、
前記電池パック側部は、前記車両のサイドシルに固定接続されており、
前記保護装置本体と前記電池パック側部とは、前記固定部以外の部分で互いに離間していることを特徴とする電池保護装置。
【請求項2】
前記保護装置本体と前記突出部との間、及び前記突出部と前記電池パックとの間には、いずれも間隔を有することを特徴とする請求項1に記載の電池保護装置。
【請求項3】
前記電池パック側部は、前記車両のサイドシルの下面と前記保護装置本体との間に位置し、前記保護装置本体と前記電池パック側部とは、いずれも前記固定部によって前記車両のサイドシルの下面に固定されていることを特徴とする請求項に記載の電池保護装置。
【請求項4】
前記鉛直方向において、前記保護装置本体の地平面に対する最低点は、前記電池パックの地平面に対する最低点よりも低くなることを特徴とする請求項1に記載の電池保護装置。
【請求項5】
前記保護装置本体は、前記電池パックの下面に対向して離間する延出部を有し、
前記延出部は、前記鉛直方向において前記電池パックの下面と部分的に重なることを特徴とする請求項1に記載の電池保護装置。
【請求項6】
前記保護装置本体の内部にキャビティが形成されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の電池保護装置。
【請求項7】
前記保護装置本体は、第1のプレートと第2のプレートとを備え、
前記第1のプレートは、前記第2のプレートよりも前記電池パックに近接し、前記第1のプレートの一部は、前記第2のプレートに対して前記電池パック側に向けて膨出し、
前記第1のプレートの両側辺と前記第2のプレートの両側辺とが接続されて前記キャビティが形成されていることを特徴とする請求項に記載の電池保護装置。
【請求項8】
前記第2のプレートは、上方から下方に向かって前記電池パック側に傾斜していることを特徴とする請求項に記載の電池保護装置。
【請求項9】
前記第1のプレートは、前記電池パック側に向けて膨出して折曲部を形成し、
前記第1のプレートの前記折曲部の下方に位置する部分は、前記電池パックの側面と平行にする鉛直部として形成されていることを特徴とする請求項に記載の電池保護装置。
【請求項10】
前記保護装置本体には、水抜き孔が設けられ、
前記水抜き孔は、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの接続部分に形成されていることを特徴とする請求項に記載の電池保護装置。
【請求項11】
前記保護装置本体は、前記電池パックのいずれかの側面に沿って設けられており、
前記保護装置本体の少なくとも一端は、前記電池パックの一側面から隣接した側面に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載の電池保護装置。
【請求項12】
車体に固定された電池パックを備えた車両であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の電池保護装置をさらに備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車の技術領域、より具体的に、電池保護装置および電池保護装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車は、将来の発展の傾向である。電池パックは、自動車に動力を提供するためのコアなパーツであるため、電池パックに対する保護は極めて重要である。電池パックを保護するために、一般的に、電池パックの側面に保護装置を設ける。
【0003】
特許文献1に開示された衝突保護装置は、衝突防止ビームと衝突防止ビーム側に設置された、潰れて縮めるエネルギー吸収ビームとを備える。衝突が発生する際、衝突防止ビームは、地面にある突起物に接触し、一部の衝突エネルギーを吸収してから、残りの衝突エネルギーが衝突防止ビームを介してエネルギー吸収ビームに伝わる。エネルギー吸収ビームは、潰れて縮めることにより、大部分の衝突エネルギーを吸収し、電池パックを保護する。しかしながら、この衝突保護装置は、電池パックの側面を好適に覆うことができないため、衝突防止ビームが衝突を受けると、容易に上方または下方へ向けて変形することにより、衝突保護装置に保護されていない電池パックの箇所に衝突し、電池パックにダメージを与える。
【0004】
特許文献2には、自動車衝突時の安全性に有益な電池パックケースが開示されている。この電池パックケースは、電池ケース縦面と取付フレームとを備える。取付フレームの断面は、三角形に近似する形状を有する。しかしながら、三角形の取付フレームは、電池ケースの一部として形成されているため、車体の重量を増加させて燃料消費性能に影響をもたらす。さらに、衝突を受けた際、電池パックを簡単に壊し、有効に電池パックを保護できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国実用新案第207781703号明細書
【文献】中国実用新案第208324862号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上の事情を鑑み、本発明が解決しようとする課題は、従来の電池保護装置が完全かつ有効に電池パックの側面を保護できないことを克服する電池保護装置およびこの電池保護装置を備える車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するために、本発明の一つの態様に係る電池保護装置は、車両のサイドシルの下方に設けられ、少なくとも電池パックの一側面に位置する。前記電池保護装置は、保護装置本体を備える。前記車両のサイドシルには、下向きに延びる突出部が設けられ、前記突出部は、前記保護装置本体と前記電池パックとの間に位置し、鉛直方向において、前記保護装置本体の地平面に対する最高点は、前記突出部の地平面に対する最低点よりも高くなる。
【0008】
電池パックの側面に保護装置本体を設置することにより、有効に電池パックを保護することができる。同時に、車両のサイドシルの突出部が電池パックと保護装置本体との間に位置し、かつ、保護装置本体の最高点が突出部の最低点よりも高いため、車両が衝突力を受ける際、保護装置本体が衝突力を受けて電池パック側へ移動し突出部に接触する。これにより、大部分の力量を車両のサイドシルに分散し、電池パックへの衝撃を軽減することができる。保護装置本体と突出部との二重の保護により、より好適に電池パックを保護することができる。
【0009】
一つの態様において、前記保護装置本体と前記突出部との間、及び前記突出部と前記電池パックとの間には、いずれも間隔を有してもよい。
前記保護装置本体と前記突出部との間、及び前記突出部と前記電池パックとの間に間隔が存在することにより、ある程度一部の衝突力を吸収し、電池パックが衝突力による衝撃を軽減あるいは防止できる。
【0010】
一つの態様において、前記保護装置本体には、固定部が設けられる。前記固定部は、前記車両のサイドシルの下方に固定され、前記保護装置本体と前記車両の前記サイドシルとは、前記固定部以外の部分で離間して設けられている。前記保護装置本体は、前記電池パックの側面を遮るように下向きに延びており、前記保護装置本体と前記電池パックとは、前記固定部以外の部分で互いに離間してもよい。
【0011】
前記保護装置本体は、固定部を介して車両のサイドシルの下方に固定し連結され、かつ、下向きに延びて前記電池パックの側面を遮ることにより、完全かつ有効に電池パックを保護することができる。前記保護装置本体と前記電池パックと、そして前記保護装置本体と前記車両の前記サイドシルとのいずれも、前記固定部以外の部分で互いに離間している。衝突を受けてから、一方、衝突力が固定部を介して保護装置本体により車両のサイドシルに伝達することにより、大部分の衝突力を車体に分散し、電池パックの側面に対する衝突力を大きく軽減する。一方、衝突力が作用することにより、保護装置本体が電池パック側に移動する。ただし、保護装置本体と車両のサイドシルあるいは電池パックとは、前記固定部以外の部分で互いに離間し接触しておらず、既に大部分の力量が分散された衝突力がさらに間隔に吸収され、さらに除去されることで、電池パックが衝突力による衝撃を軽減あるいは防止できる。
【0012】
一つの態様において、前記電池パックには、電池パック側部が設けられており、前記電池パック側部は、前記車両のサイドシルに固定接続されており、前記保護装置本体と前記電池パック側部とは、前記固定部以外の部分で互いに離間していてもよい。
電池パックは、電池パック側部により車体に固定されることにより、衝突力が直接電池パックに作用することを防止できる。同時に、前記保護装置本体と前記電池パック側部とは、前記固定部以外の部分で互いに離間しているため、この間隔が一部の衝突力を吸収できるため、電池パックをより好適に保護できる。
【0013】
一つの態様において、前記電池パック側部は、前記車両のサイドシルの下面と前記保護装置本体との間に位置し、前記保護装置本体と前記電池パック側部とのいずれも前記固定部によって前記車両のサイドシルの下面に固定されていてもよい。
前記保護装置本体と前記電池パック側部とのいずれも前記固定部によって前記車両のサイドシルの下面に固定される固定方式では、固定点を減らすことができる一方、より好適に力量を車両のサイドシルに伝達し、電池パック側面に受ける力量を軽減することで、有効に電池パックを保護できる。
【0014】
一つの態様において、鉛直方向において、前記保護装置本体の地平面に対する最低点は、前記電池パックの地平面に対する最低点よりも低くなってもよい。
保護装置本体の下端を電池パックの最低点よりも低く設定することにより、有効に電池パック側面の下端が直接地面における突起物に接触することを防止できるため、より好適に電池パックを保護できる。
【0015】
一つの態様において、前記保護装置本体は、前記電池パックの下面に対向して離間する延出部を有し、前記延出部は、鉛直方向において前記電池パックの下面と部分的に重なってもよい。
前記保護装置本体は、前記電池パックの下面に対向して離間する延出部を有することにより、電池保護装置が衝突を受けて転回しても、電池パック側面の下端は、直接縁石などの突起物に直接衝突することがない。延出部が電池パックの側面を好適に覆うため、電池パックを好適に保護できる。
【0016】
一つの態様において、前記保護装置本体内部にキャビティが形成されていてもよい。
このようなキャビティを設けることにより、エネルギーを吸収する空間を確保できる。衝突を受けると、保護装置本体内部のキャビティが変形し衝突力を吸収することにより、衝突力の分散や衝突エネルギーの吸収が好適に行われ、電池パックへのダメージを低減し、電池パックを保護できる。
【0017】
一つの態様において、前記保護装置本体は、第1のプレートと第2のプレートとを備え、前記第1のプレートは、前記第2のプレートよりも前記電池パックに近接し、前記第1のプレートの一部のプレート体は、前記第2のプレートに対して前記電池パック側に向けて膨出しており、前記第1のプレートの両側辺と前記第2のプレートの両側辺とが接続されて前記キャビティが形成されていてもよい。
前記第1のプレートおよび前記第2のプレートを連結し保護装置本体を形成することにより、保護装置本体を容易に構成するとともに、内部のキャビティを形成できる。このような第1のプレートおよび第2のプレートを連結する構造では、可能な限りキャビティの空間を拡大することができ、より好適に衝突力を吸収できる。
【0018】
一つの態様において、前記第2のプレートは、上から下に向かって前記電池パック側に傾斜していてもよい。
第2のプレートが形成する傾斜面は、地面の突起物の衝突を受ける際、保護装置本体を電池パック側へ向けて移動させることにより衝突力を吸収し、電池パックへの衝撃を低減できる。
【0019】
一つの態様において、前記第1のプレートは、前記電池パック側に向けて膨出して折曲部を形成し、前記第1のプレートの前記折曲部の下方に位置する部分は、前記電池パックの側面と平行にする鉛直部として形成されていてもよい。
衝突を受けてから、電池パック側面に平行設置された鉛直部は、電池パック側面に貼りつくことにより、電池パック側面が受ける力量を分散できる。
【0020】
一つの態様において、前記保護装置本体には、水抜き孔が設けられており、前記水抜き孔は、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの接続部分によって形成されていてもよい。
水抜き孔を設けることにより、保護装置本体内部に進入する水を排出できる。水抜き孔が第1のプレートおよび第2のプレートの接続部分に形成されることは、第1の板および第2の板を好適に固定できるとともに、より便利に排水できる。
【0021】
一つの態様において、前記保護装置本体は、前記電池パックのいずれかの側面に沿って設けられており、前記保護装置本体の少なくとも一端は、前記電池パックの一側面から隣接した側面に向かって延びていてもよい。
保護装置本体を電池パックの一側面から離接した側面に延びて設置することにより、より好適に電池パックの各側面を保護でき、衝突による電池パックへの衝撃を低減できる。
上述の各態様に係る電池保護装置は、好適に電池パックの側面を覆うことができ、かつ、電池パックへの衝撃を有効に吸収し低減することにより、好適に電池パックを保護し、その使用寿命を延長することができる。
【0022】
本発明の一態様は、車体に固定された電池パックを備えた車両であって、上述の各態様に係る電池保護装置をさらに備える車両を提供している。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る電池保護装置および車両によれば、電池保護装置は、保護装置本体および固定部を備え、保護装置本体が固定部を介して車両のサイドシルに固定され、保護装置本体が電池パックと間隔を開けて設置され、かつ、保護装置本体はキャビティを有する構造である。電池保護装置が衝突を受ける際、衝突力が保護装置本体によって固定部を経由し車両のサイドシルに伝達することにより、大部分の衝突力を車体に分散し、電池パック側面への衝突力を大きく低減する。一方、保護装置本体と電池パックとの間には間隔を有するため、衝突力の作用により保護装置本体が電池パック側へ移動し、保護装置本体の上端と車両のサイドシルの突出部と当接することにより、さらに一部の衝突力を車体に伝達する。さらに、保護装置本体と電池パックとの間に形成された間隔は、一部の衝突力を吸収および除去することができるため、電池パックが受ける衝突力を最大限に低減し、より好適に電池パックを保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一つの実施形態に係る電池保護装置の組立模式図である。
図2図1に示す構造において、A-Aに沿う断面図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係る電池保護装置の構造を示す第1の模式図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る電池保護装置の構造を示す第2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の技術課題、技術構成および効果をより明確に説明するために、以下、図面および実施形態を参照し、本発明をより詳細に説明する。ここで、具体的な実施形態は、本発明の構成を説明するために記載しており、本発明を限定する目的ではない。
本実施形態における方向および位置関係は、車両内の搭乗者の視点から説明する。
【0026】
本実施形態において、電池パックは車両の底部に取り付けられており、例えば、車両のフロアに連結され、且つ、車両の乗員室の下方に位置する。図1を参照すると、本実施形態に係る電池保護装置10は、電池パック20の前後あるいは左右両側に設置することができる。あるいは、電池保護装置10は、電池パック20の前後および左右の何れか一つの側面に設置され、かつ、隣接する側面へ延びて設置される。例えば、電池保護装置10は、電池パック20の左側に設置されて前側へ延びて設置され、電池保護装置10は、電池パック20の右側に設置されて前側へ延びて設置され、電池保護装置10は、電池パック20の左側に設置されて前側および後側へ延びて設置される。
図2を参照すると、本実施形態に係る電池保護装置10は、保護装置本体100を備える。車両のサイドシル30には、下向きに延びる突出部310が設けられ、突出部310が保護装置本体100と電池パック20との間に位置する。鉛直方向において、保護装置本体100が地平面に対する最高点は、突出部310が地平面に対する最低点よりも高い。
【0027】
ここで、保護装置本体100の一端は、車両のサイドシル30に近接する。保護装置本体100におけるこの一端が突出部310に対向する部分は、保護装置本体100の上端部130と定義する。突出部310は、上端部130と電池パック20との間に位置する。保護装置本体100が地平面に対する最高点は、上端部130の最高点である。本実施形態において、保護装置本体100が電池パック20の側面に設置されることにより、有効に電池パック20を保護できる。同時に、車両のサイドシル30の突出部310が電池パック20と保護装置本体100の上端部130との間に位置し、かつ、上端部130の最高点が突出部310の最低点よりも高い。車両が衝突力を受けると、保護装置本体100が力量を受けて電池パック20側に移動することにより、上端部130が突出部310に接触することで、大部分の力量を車両のサイドシル30に分散することができる。これにより、電池パック20が受ける衝突力による衝撃が軽減され、保護装置本体100と突出部310との二重保護によってより好適に電池パック20を保護できる。
【0028】
本実施形態において、突出部310が保護装置本体100の上端部130より一定の距離の間隔を開けて、かつ、突出部310と電池パック20とも一定の距離の間隔を開ける。ここで、突出部310と保護装置本体100の上端部130との間の間隔距離は、突出部310と電池パック20との間の間隔距離よりも小さくてもよい。保護装置本体100の上端部130および突出部310の間隔と、突出部310および電池パック20の間隔とは、ある程度一部の衝突力を吸収できるため、電池パック20が受ける衝突力による衝撃を低減あるいは除去できる。
【0029】
さらに、図2を参照すると、本実施形態に係る電池パック20は、電池パック本体210と、電池パック本体210の片側に設けられる電池パック側部220とを備える。電池パック本体210は、車両の底部に固定されて連結される。電池パック側部220は、車両のサイドシル30の下側の表面に固定されて連結される。上述の突出部310は、上端部130と電池パック側部220との間に位置されてもよい。突出部310と電池パック側部220との間に、間隔を有する。保護装置本体100の上端部130が上向きに延びて車両のサイドシル30の下側の表面に接近し、かつ、上端部130および突出部310が電池パック側部220の側面に位置するため、電池パック側部220に対する保護を強化し、より好適に電池パック20を保護できる。
【0030】
図2を参照すると、一つの実施可能な形態として、保護装置本体100には、固定部200が設けられる。固定部200は、車両のサイドシル30の下方に固定されている。保護装置本体100と車両のサイドシル30とは、固定部200以外の部分において、間隔を開けて設置される。保護装置本体100は、下向きに延びて電池パック20の側面を遮る。保護装置本体100と電池パック20とは、固定部200以外の部分において、間隔を開けて設置される。
【0031】
本実施形態に係る保護装置本体100は、固定部200を介して車両のサイドシル30の下側の表面に固定され、かつ、下向きに延びて電池パック20の側面を遮ることにより、完全かつ有効に電池パック20を保護できる。保護装置本体100および車両のサイドシル30の間と、保護装置本体100および電池パック20の間とのいずれも、固定部200以外の部分に間隔を有する。より好ましいは、保護装置本体100と上述の電池パック側部220との間は、固定部200以外の部分に間隔を有する。
【0032】
衝突を受けると、一方、衝突力が固定部200を介して、保護装置本体100により車両のサイドシル30に伝達することにより、大部分の衝突力を車体に分散し、電池パック20の側面における衝突力を大きく軽減する。一方、衝突力が作用することにより、保護装置本体100が電池パック20側へ移動する。保護装置本体100と、車両のサイドシル30および電池パック20とは、固定部200以外の部分に間隔を開けて非接触となるため、大部分の衝突力がさらに間隔によって吸収あるいは除去されて、電池パック20がより少ない衝突力による衝撃を受けるあるいは衝撃を受けない。
【0033】
本実施形態において、電池パック側部220は、車両のサイドシル30の下側表面と保護装置本体100との間に位置し、保護装置本体100と電池パック側部220とがともに固定部200を介して車両のサイドシル30の下側表面に固定される。例えば、固定部200を通る機械式固定部材を用いて、保護装置本体100と電池パック側部220とを同時に車両のサイドシル30の下側表面に固定することができる。図2に示す例のように、固定部200において、貫通する固定孔113が形成され、上述の機械式固定部材がこの固定孔113を介して保護装置本体100と電池パック側部220とを車両のサイドシル30に固定する。
本実施形態において、保護装置本体100と電池パック側部220とが同じ固定点を介して車両のサイドシル30に固定されるため、固定点を減らすとともに、より好適に力量を車両のサイドシル30に伝達し、電池パック20の側面が受ける力量を低減することで、有効に電池パック20を保護する。
【0034】
他の構成によれば、電池パック側部220と保護装置本体100とは、それぞれ単独に車両のサイドシル30に固定されてもよい。例えば、第1の機械式固定部材が固定部200を介して保護装置本体100を車両のサイドシル30の下側表面に固定してから、第2の機械式固定部材を用いて電池パック側部220を車両のサイドシル30の下側表面に固定することが可能である。
【0035】
本実施形態において、鉛直方向に沿って、保護装置本体100が地平面に対する最低点は、電池パック20が地平面に対する最低点よりも低い。保護装置本体100の下端が電池パック20の最低点よりも低くすることにより、電池パック20の側面の下端が直接地面の突起物に接触することを有効に防止でき、より好適に電池パック20を保護できる。
【0036】
より好ましくは、図2に示す例において、保護装置本体100の下端が電池パック20の下側表面の下方まで延びて延出部140を形成する。延出部140は、鉛直方向において、電池パック20の下側表面に部分的に重なる。本実施形態に係る保護装置本体100は、電池パック20の側面を完全に覆うことができるため、より好適に電池パック20を保護する。電池保護装置10が衝突を受けて回転してから、電池パック20の側面の下端が直接に縁石などの突起物に衝突することはなく、延出部140により電池パック20の側面が好適に覆われるため、電池パック20が好適に保護される。
【0037】
図3を参照すると、電池保護装置10は、固定スタンド150を備える。固定スタンド150は、一端が保護装置本体100に連結され、その他の一端が車体に連結される。固定スタンド150は、電池保護装置10を直接車体に連結する。電池保護装置10を電池パック20に固定せず、直接車体に固定することにより、衝突力を受ける区域および変形する区域などを電池保護装置10に限定し、電池パック20への影響を低減できる。さらに、このような構成は、便利に部品を交換することができる。
【0038】
図1および図2を参照すると、電池保護装置10が電池パック20の左側に設けられ、かつ、前側へ向けて延びて設置される実施形態において、保護装置本体100は、電池パック20の左側を覆う第1の部分101と、電池パック20の前側へ延びて形成される第2の部分102とを有する。保護装置本体100の第1の部分101は、機械式固定部材を用いて固定部200を通して直接車両のサイドシル30の下側表面に固定できる。保護装置本体100の第2の部分102は、上述の固定スタンド150を介して車体に固定され連結される。
【0039】
図2に示すように、一つの実施可能な方式として、保護装置本体100の内部にキャビティが形成される。より好ましくは、キャビティの横断面は、三角形に近似する形状である。ただし、キャビティの横断面は、その他の形状であってもよい。例えば、正方形、台形、および円形など、本領域の当業者にとって容易に想到できる形状を用いることができる。
【0040】
キャビティを形成する構成によれば、エネルギーを吸収する空間を確保できる。そして、三角形に近似する形状の横断面を有するキャビティは、比較的に安定している。衝突を受けると、保護装置本体100内部のキャビティが変形し、衝突力を吸収するため、衝突力の分散や衝突エネルギーの吸収に有利であり、電池パック20へのダメージを低減し、より好適に電池パック20を保護できる。
【0041】
図2に示す例のように、保護装置本体100は、電池パック20に近接する第1のプレート110と、電池パック20から遠く離間する第2のプレート120とを備える。第1のプレート110は、電池パック20側に膨出する。固定部200は、第1のプレート110に設置することができる。第2のプレート120は、鉛直方向において下向きに電池パック20側に傾斜する傾斜板であってもよい。第1のプレート110の両端と第2のプレート120の両端とは、連結されて三角形に近似する形状のキャビティ構造を形成する。電池パック側部220は、車両のサイドシル30と第1のプレート110との間に位置し、第1のプレート110と、電池パック20の側面および電池パック側部220とは、固定部200以外の部分に間隔を開けて一定の距離を有する。
【0042】
電池保護装置10が地面における突起物の衝突を受けると、保護装置本体100内部のキャビティが変形し衝突力を吸収する。保護装置本体100の外側向きの表面は傾斜面であるため、傾斜面が地面における突起物の衝突を受けると、保護装置本体100を電池パック20側へ移動させる傾向がある。第1のプレート110と電池パック20との間に存在する間隔は、衝突力を吸収し、低減することができる。
【0043】
上述の実施例に係る第1のプレート110の両端と、第2のプレート120の両端とは、溶接の方法で接続することができるが、これに限らない。第1のプレート110は、可能な限り電池パック20の側面に接近して設置されることにより、キャビティの空間を拡大し、より多い衝突力を吸収できる。図2に示す例のように、第1のプレート110は、電池パック側部220と電池パック本体210との連結部230に向けて膨出することにより、可能な限り第1のプレート110と第2のプレート120とが形成する三角形に近似する形状のキャビティの空間を拡大し、より好適に衝突力を吸収する。
【0044】
さらに、第1のプレート110は、電池パック側部220と電池パック本体210との連結部230に向けて膨出することにより、折曲部111を形成する。折曲部111の下方には、電池パック本体210の側面と平行する鉛直部112が設けられる。衝突を受けると、電池パック本体210の側面と平行する鉛直部112は、電池パック本体210の側面に張りつけることができる。これにより、電池パック20が受ける力量が分散される。折曲部111の上方における第1のプレート110の部分は、電池パック側部220の下側表面に平行するように形成できる。この構成により、衝突を受ける際、第1のプレート110と電池パック側部220の接触面積が比較的に大きいため、電池パック20が受ける力量の分散に有利である。
【0045】
上述の固定部200は、第1のプレート110に設けられることが可能である。より具体的に、機械式固定部材を用いて固定孔113を通して、第1のプレート110を電池パック側部220に連結し、さらに車両のサイドシル30の下側表面に連結することができる。第2のプレート120には、機械式固定部材を通過するために、固定孔113に対応する加工孔121が設けられてもよい。
【0046】
図3を参照すると、第1のプレート110には、くり抜いて形成される軽量穴114が設けられる。軽量穴114は、ある程度電池保護装置10の自身の重量を軽減することができる。軽量穴114は、第2のプレート120に設けられてもよい。
【0047】
図4を参照すると、保護装置本体100は、さらに水抜き孔160が形成されている。水抜き孔160は、第1のプレート110と第2のプレート120とが連結する位置に設置される。例えば、第2のプレート120の側辺に複数の切り欠きを形成し、第1のプレート110と第2のプレート120とを溶接する際、この切り欠きが水抜き孔160を形成する。第1のプレート110と第2のプレート120とを連結して保護装置本体100を形成する際、第1のプレート110と第2のプレート120との連結部に水抜き孔160を形成することは、簡単な製造方法を実現しながら、電池保護装置10に進入する水の排出に有利である。当然ながら、キャビティ内の水を排出できれば、水抜き孔160は、第1のプレート110および/あるいは第2のプレート120に形成してもよい。
【0048】
図1を参照すると、本発明のその他の実施形態に係る車両は、車体に固定された電池パック20と、上述の実施形態に係る電池保護装置10とを備える。電池保護装置10は、電池パック20の衝突時の安全性を向上できる。
【0049】
図1および図2を参照すると、本発明の一つの実施形態において、電池保護装置10は、電池パック20の側面に設置される。電池保護装置10は、保護装置本体100を含む。保護装置本体100は、電池パック20の左側を覆う第1の部分101と、電池パック20の前側に延びる第2の部分102とを備える。保護装置本体100の第1の部分101は、機械式固定部材を介して車両のサイドシル30の下側表面に固定され、第2の部分102は、固定スタンド150を介して車体に固定され連結される。保護装置本体100には、固定部200が設けられ、保護装置本体100は、電池パック20に近接する第1のプレート110と、電池パック20から離間する第2のプレート120とを備える。第1のプレート110は、電池パック側部220および電池パック本体210の連結部230に向けて膨出する。第2のプレート120は、鉛直方向に沿って下向きに電池パック20側へ傾斜する傾斜板である。第1のプレート110の両側辺と第2のプレートの両側辺とは、溶接されて三角形に近似する形状のキャビティを形成する。固定部200は、第1のプレート110に設置され、第1のプレート110と電池パック側部220とは、固定部200を通る機械式固定部材を介して車両のサイドシル30の下側表面に固定され連結される。第1のプレート110は、電池パック20および車両のサイドシル30とは、固定部200以外の部分に間隔を開けて互いに非接触となる。
【0050】
車両のサイドシル30は、下向きに突出する突出部310を有する。突出部310は、電池パック側部220と保護装置本体100の上端部130との間に位置し、かつ、突出部310と保護装置本体100の上端部130との間の距離は、突出部310と電池パック側部220との間の距離よりも小さい。鉛直方向において、上端部130の最高点は、突出部310の最低点よりも高い。保護装置本体100の下端は、電池パック20の下側の表面の下方へ延びて延出部140を形成する。延出部140は、鉛直方向において、電池パック20の下側表面の一部に重なる。第1のプレート110において、複数の軽量穴114が設けられる。第1のプレート110と第2のプレート120とが連結する位置において、水抜き孔160が設けられる。
【0051】
衝突力を受ける際、衝突力が固定部200を介して保護装置本体100により車両のサイドシル30に伝達されることにより、大部分の衝突力が車体に分散され、電池パック20の側面における衝突力が大きく軽減する。一方、衝突力が作用することにより、保護装置本体100は、電池パック20側へ向けて移動すると、保護装置本体100の上端と突出部310とが当接することにより、一部の衝突力を車体に伝達する。保護装置本体100と車両のサイドシル30および電池パック20とは、固定部200以外の部分に互いに間隔を開けて非接触であるため、既に大部分が分散された衝突力がこの間隔によって吸収あるいは除去される。同時に、保護装置本体100の内部に形成されたキャビティも衝突力を吸収できるため、衝突力による電池パック20への衝撃を低減あるいは除去できる。その他、保護装置本体100の上端が車両のサイドシル30の下側表面に延び、下端が延びて電池パック20の下側表面の一部を遮ることにより、電池パック20の側面を完全に保護し、衝突力による電池パック20への衝撃を低減あるいは除去できる。
【0052】
上述の各実施形態の各技術特徴は、様々な組み合わせを行うことができる。説明を簡潔にするために、上述の各実施形態の各技術特徴の全ての可能な組み合わせを説明していない。ただし、これらの技術特徴の組合せに矛盾がない限り、本明細書の記載範囲に含まれる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
10 電池保護装置
100 保護装置本体
101 第1の部分
102 第2の部分
110 第1のプレート
111 折曲部
112 鉛直部
113 固定孔
114 軽量穴
120 第2のプレート
121 加工孔
130 上端部
140 延出部
150 固定スタンド
160 水抜き孔
200 固定部
20 電池パック
210 電池パック本体
220 電池パック側部
230 連結部
30 サイドシル
310 突出部
図1
図2
図3
図4