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  • 特許-溶液重合プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】溶液重合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20241206BHJP
   C08F 2/06 20060101ALI20241206BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C08F2/01
C08F2/06
C08F10/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021532148
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(86)【国際出願番号】 US2019066275
(87)【国際公開番号】W WO2020123971
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】62/779,589
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100187964
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 剛
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ワン、アレック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ルバルカバ、ホルヘ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー、マイケル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ゾグ、ジュニア、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン、パラディープ
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-533656(JP,A)
【文献】特表2017-501247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0088893(US,A1)
【文献】国際公開第2015/081119(WO,A1)
【文献】特表2015-517592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0073114(US,A1)
【文献】国際公開第2006/009942(WO,A1)
【文献】特表2015-521692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0301903(US,A1)
【文献】特表2022-511106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/01 - 2/10
C08F 10/00 - 10/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液重合のためのシステムであって、
貧溶媒、モノマー、および溶媒を受け取り、前記モノマーを反応させてポリマーを形成するように作動する反応器システムであって、前記貧溶媒が前記ポリマーのための溶媒ではなく、下限臨界溶液温度を低下させるように作用する、反応器システムと(ここで、前記反応器システムは第1の反応器および第2の反応器を含み;前記第2の反応器は前記第1の反応器よりも高い温度および低い圧力で作動する)、
液-液分離器であって、前記反応器システムからポリマー溶液を受け取り、前記液-液分離器内の前記ポリマー溶液の前記圧力および温度を低下させることによって前記ポリマーと溶媒および未反応のモノマーを含む揮発性物質との間の分離を容易にするように作動し、前記ポリマーがポリマーに富む相に存在し、前記揮発性物質が溶媒に富む相に存在するようにする、液-液分離器と
前記液-液分離器の下流側に位置する複数の脱揮発容器であって、各脱揮発容器が前の脱揮発容器よりも低い圧力で作動し、前記複数の脱揮発容器が前記液-液分離器から前記ポリマーに富む相を受け取る、複数の脱揮発容器と、
を含み、
前記貧溶媒がエタンであり、前記モノマーがα-オレフィンであり、前記溶媒がメチルシクロヘキサンであり、
前記液-液分離器は、前記反応器システムと第1の脱揮発容器との間に位置し、70kgf/cmより高く、92kgf/cm未満の圧力、およびポリマーと前記揮発性物質との間の分離を生じさせる温度で作動する
システム。
【請求項2】
前記反応器システムが、120℃~230℃の温度、および90kgf/cm以上~200kgf/cm以下の圧力で作動する第1の反応器を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ポリマー溶液中の固形分が、前記第1の反応器の出口での前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、8~16重量%の量で存在する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の反応器が、80kgf/cm以上~180kgf/cm以下の圧力、および200~240℃の温度で作動する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記ポリマー溶液中の固形分が、前記第2の反応器の出口での前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、12~20重量%の量で存在する、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記液-液分離器内の前記圧力が、前記ポリマー溶液の沸点より上である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記液-液分離器内の前記ポリマー溶液の圧力が、180kgf/cmから、70kgf/cm より高く92kgf/cm 未満の圧力まで低下させられ、前記液-液分離器から生ずる前記ポリマー溶液の固形分が、20~24重量%である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記複数の脱揮発容器が、第1の脱揮発容器を含み、前記第1の脱揮発容器は、前記第1の脱揮発容器を出る前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、ポリマー流中の固形分を少なくとも60重量%のポリマーに増加させるように作動する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記複数の脱揮発容器が、第2の脱揮発容器をさらに含み、前記第2の脱揮発容器は、前記第2の脱揮発容器を出る前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、ポリマー流中の固形分を少なくとも90重量%のポリマーに増加させるように作動する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記複数の脱揮発容器で生成された前記揮発性物質が、前記反応器システムに再循環される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
方法であって、
反応器システムに、貧溶媒、モノマー、および溶媒を含む供給流を充填することであって、前記貧溶媒が、ポリマーのための溶媒ではなく、ポリマー溶液の下限臨界溶液温度を低下させるように作用する、充填することと(ここで、前記反応器システムは第1の反応器および第2の反応器を含み;前記第2の反応器は前記第1の反応器よりも高い温度および低い圧力で作動する)、
前記モノマーを反応させてポリマーを形成することであって、前記ポリマーがポリマー溶液に含まれている、ポリマーを形成することと、
リマー溶液相を液-液分離器に移動させることと、
前記液-液分離器内の前記ポリマー溶液の圧力を低下させて、前記液-液分離器内の溶媒に富む相からポリマーに富む相を分離させることと、
前記ポリマーに富む相を、前記液-液分離器の下流側に位置する複数の脱揮発容器に移動させることであって、各脱揮発容器が前の脱揮発容器よりも低い圧力で作動する、移動させることと、
前記ポリマーに富む相に存在する溶媒および未反応のモノマーを含む揮発性物質から前記ポリマーを分離することと
を含み、
前記貧溶媒がエタンであり、前記モノマーがα-オレフィンであり、前記溶媒がメチルシクロヘキサンであり、
前記液-液分離器は、前記反応器システムと第1の脱揮発容器との間に位置し、70kgf/cmより高く、92kgf/cm未満の圧力、およびポリマーと前記揮発性物質との間の分離を生じさせる温度で動作する
方法。
【請求項12】
前記ポリマーをペレット化することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記揮発性物質を前記反応器システムに再循環させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年12月14日に出願された米国出願第62/779,589号の利益を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、溶液重合プロセスに関する。具体的には、本開示は、溶媒と非溶媒の混合物を使用する上流側のエチレンプラントと統合される溶液重合プロセスに関する。
【0003】
ポリマー溶液は、下限臨界溶液温度(LCST)現象を示す可能性があり、これにより、均質なポリマー溶液が、一定温度を超えると、ポリマーに富む液相と溶媒に富む相とに分離する。この温度は、溶媒の種類、ポリマー流組成、および圧力の関数である。これらの変数のいずれかを操作して、液-液分離を誘発することができる。この分離は、特に同量の溶媒の気化と比較して、それに関連する熱負荷が非常に小さい。市販の溶液重合では、溶媒除去プロセスに関連する効率を高め、コストを削減する必要がある。
【0004】
Friedersdorfへの米国特許第6,881,800号は、連続溶液重合のプロセスとプラントに関するものである。プラントには圧力源と、前記圧力源の下流側の重合反応器と、前記重合反応器の下流側に位置する圧力下降装置と、前記圧力下降装置の下流側に位置する分離器とが含まれる。圧力源は、反応器と分離器の間にさらなる圧力源がない場合、重合の間、反応混合物に圧力を提供して反応器内に単相液体反応混合物を生成し、分離器内に二相液-液反応混合物を生成するのに十分であるとして開示されている。このプロセスは、液-液相分離を誘発させる前に、ヒーターを使用して反応器出口流を加熱することを開示している。反応器から出てくる溶液は、分離器から出てくる溶液よりもポリマー1ポンドあたりの溶媒が多いため、分離器の前に加熱すると、ポリマー1ポンドあたりの熱負荷が大幅に増加する。
【0005】
Friedersdorf et al.への国際公開第WO2008/076589号は、高密度流体の均一重合系におけるオレフィンを重合するためのプロセスを開示している。このプロセスは、(a)1基または複数の反応器において、30重量パーセント以上で存在する3つ以上の炭素原子を有するオレフィンモノマーを、1)1種または複数の触媒化合物、2)1種または複数の活性剤、3)0~50モルパーセントのコモノマー、および4)0~40重量パーセントの希釈剤もしくは溶媒と接触させることと、(b)ポリマー-モノマー混合物を含む反応器流出物を形成することと、(c)任意選択で、(b)のポリマー-モノマー混合物を、それが反応器を出た後に、およびステップ(e)で圧力が下がる前、または後に加熱することと、(d)(b)のポリマー-モノマー混合物を分離容器に収集することと、(e)ポリマー-モノマーの混合物を分離容器に収集する前または後のいずれかで、(b)のポリマー-モノマー混合物を含む反応器流出物の圧力を雲点圧力より低く下げて、ポリマーに富む相とモノマーに富む相とを含む二相混合物を形成することとを含む。反応器内の圧力は、分離容器中の圧力よりも7~100MPa高く、分離容器内の温度は、ポリマーの結晶化温度の高い方を超える、またはポリマーが結晶化温度を有さない場合80℃を超える温度である。モノマーに富む相は、ポリマーに富む相から分離され、1基または複数の反応器に再循環される。この特許は、超臨界重合媒体を確保するために、40重量パーセント未満の溶媒でこのプロセスを実行するために使用される反応器圧力が高い(最大200MPa)ことを開示している。この高い圧力により、反応器の操作が困難なものになり、壁の厚い反応器の使用を必要とし、資本およびエネルギー効率を低下させている。
【0006】
Shigekauzu et al.への米国特許第6,255,410号は、二相系において従来の高圧条件よりも実質的に低い圧力でポリオレフィンを生成するためのプロセスを開示している。このプロセスは、(a)メタロセンおよび助触媒のオレフィンモノマーおよび触媒系を連続的に供給することと、(b)モノマー供給物を連続的に重合して、モノマー-ポリマー混合物をもたらすことと、(c)二相混合物を連続溶融ポリマー相および連続モノマー蒸気に連続的に定着させることであって、場合により後者を、少なくとも部分的に(a)に再循環させることができる、定着させることとを含む。(b)では、混合物は、ポリマーの融点より高い温度でポリマーに富む相およびモノマーに富む相をもたらすように、雲点圧力より低い圧力である。重合は、触媒系の生産性が、その温度で雲点を超える圧力の2倍で得られる生産性を超える温度および圧力で行われる。この特許は、触媒担体に必要とされる少量の溶媒のみを開示しており、溶液重合プロセスに関連するより低い温度および圧力を用いるという利点がない。
【0007】
上記の参考文献に記載の重合プロセスは、通常は、エネルギー集約的であり、重合反応器と分離器との間の熱交換、超臨界重合条件、および/またはさらなるポリマー-溶媒分離手段を必要とする。より少ないエネルギーを使用し、効率を高め、コストを削減する溶媒分離手段を用いる新しい重合プロセスを開発する必要がある。また、補助的でエネルギー集約的な装置を除去し、それによって資本コストと操業コストを削減する必要がある。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、溶液重合のためのシステムを開示し、該システムは、貧溶媒、モノマー、および溶媒を受け取り、モノマーを反応させてポリマーを形成するように作動する反応器システムであって、貧溶媒がポリマーのための溶媒ではなく、下限臨界溶液温度を低下させるように作用する、反応器システムと;反応器システムの下流側に位置する複数の脱揮発容器であって、各脱揮発容器は、前の脱揮発容器よりも低い圧力で作動し、複数の脱揮発容器は、反応器システムからポリマー溶液を受け取る、複数の脱揮発容器と;液-液分離器であって、反応器システムからポリマー溶液を受け取り、液-液分離器内のポリマー溶液の圧力および温度を低下させることによってポリマーと揮発性物質との間の分離を容易にするように作動し、ポリマーがポリマーに富む相に存在し、揮発性物質が溶媒に富む相に存在する、液-液分離器とを、含む。
【0009】
本明細書では、方法も開示し、該方法は、反応器システムに、貧溶媒、モノマー、および溶媒を含む供給流を充填することであって、貧溶媒がポリマーのための溶媒ではなく、ポリマー溶液の下限臨界溶液温度を低下させるように作動する、充填することと、モノマーを反応させて、ポリマーを形成することであって、ポリマーがポリマー溶液に含まれている、ポリマーを形成することと、ポリマー溶液相を液-液分離器に移動させることと、液-液分離器内のポリマー溶液の圧力を低下させて、液-液分離器内の溶媒に富む相からポリマーに富む相を分離させることと、ポリマーに富む相を、液-液分離器の下流側に位置する複数の脱揮発容器に移動させることであって、各脱揮発容器は前の脱揮発容器よりも低い圧力で作動する、移動させることと、ポリマーに富む相に存在する揮発性物質からポリマーを分離させることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】貧溶媒を含む溶液中でモノマーを溶液重合するために使用されるシステムの例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される「連続撹拌槽型反応器」または「CSTR」という用語は、反応物が連続的に供給され、生成物が連続的に引き出される槽型反応器を指す。CSTRは、完全なバックミキシングに近い状態が存在するように、機械的に撹拌される。
【0012】
本明細書で使用される「沸騰反応器」という用語は、液相および気相の両方が存在するような条件で作動させられる反応器を指す。液体として反応器に導入された溶媒およびモノマーの少なくとも一部が蒸発し、蒸気として反応器を出ることにより、重合熱の一部が除去され、その結果、反応器から出る液体流において、断熱反応器と比較してより高いポリマー濃度が生じる。反応器から出る蒸気流は冷却され、反応器へ再循環される。この冷却プロセスにおいて凝縮させられた液体も、反応器へ再循環される。これらの反応器は一般的には十分に混合され、蒸気再循環流を導入するだけで混合することができるが、混合は機械的撹拌によって増強することができる。沸騰反応器は、それ自体または他の沸騰反応器、CSTR、ループ反応器、またはポリオレフィンを作製するための任意の他の反応器と組み合わせて使用することができ、一段または多段の反応器であることができる。
【0013】
CSTRの変形形態は、プロセス流体が再循環させられる導管を含むループ反応器である。多くの場合、ループ反応器は、1つまたは複数の熱交換器、再循環ポンプ、および反応物質および触媒のための噴射装置も含む。ループ反応器内の熱交換器は、シェルアンドチューブ式、混合エレメントインサートを備えるシェルアンドチューブ式、プレートアンドフレーム式、またはフラットプレート式熱交換器であることができる。
【0014】
「管状反応器」という用語は、単純なチューブの形状の反応器を表すことが意図されている。本発明の管状反応器は、少なくとも10/1の長さ/直径(L/D)比を有する。管状反応器は、撹拌されても、撹拌されなくてもよい。管状反応器は、断熱的にまたは等温的に作動させられてもよい。断熱的に作動させられる場合、重合が進むにつれて、残りのコモノマーがますます消費され、溶液の温度が上昇する(それらの両方が、残りのコモノマーをポリマー溶液から分離させる効率を改善する)。管状反応器の長さに沿った温度の上昇が3℃より大きい(すなわち、管状反応器からの放出温度が、管状反応器に供給する反応器からの放出温度よりも少なくとも3℃高い)ことが特に好ましい。
【0015】
本開示において使用される管状反応器は、追加のエチレン、水素、および溶媒の供給ポートを有してもよい。供給物は「加減」されてもよく、すなわち、追加のエチレン、水素、および/または溶媒の温度は、周囲温度より高く(好ましくは約100℃まで)加熱されるが、その温度は、管状反応器の放出温度よりも低い。一実施形態では、エチレンは100~200℃に加減される。また、エチレンおよび水素を溶媒とともに添加することが望ましい。溶媒の量(エチレンに基づき、重量比として表される)は、好ましくは10/1~0.1/1、特に、5/1~1/1である。
【0016】
本明細書において使用される「断熱的にフラッシングした」という用語は、1つまたは複数の反応器とフラッシング容器との間でポリマー溶液に熱が加えられないフラッシングステップを指す。
【0017】
加熱チャネル内のゾーンの寸法(幅または高さなど)あるいは断面積に対して使用される「実質的に均一」により、同じものが収束も発散も全くしていないか、またはその寸法の平均の10%以下だけ収束および/または発散していることが意味されている。
【0018】
「固形分」という用語は、ポリマー溶液中のポリマーの量を指す。「ポリマー濃度」という用語は、ポリマー溶液中のポリマーの濃度を指す場合、「固形分」と同義的に使用される。
【0019】
「ポリマー」は、同じ種類のモノマーであるか異なる種類のモノマーであるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製される化合物を指す。一般的な用語「ポリマー」は、「オリゴマー」、「ホモポリマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」、および「インターポリマー」という用語を包含する。
【0020】
「インターポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。一般的な用語「インターポリマー」には、用語「コポリマー」(通常は、2つの異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために使用される)および用語「ターポリマー」(通常は、3つの異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために使用される)が含まれる。それはまた、4つ以上のタイプのモノマーを重合することによって作製されたポリマーも包含する。
【0021】
「オリゴマー」は、その鎖に20個未満の炭素原子を有する、ダイマー、トリマー、テトラマー、またはポリマーなどの、わずかなモノマー単位のみからなるポリマー分子を指す。
【0022】
アルファオレフィン(またはα-オレフィン)は、化学式C2xのアルケン(オレフィンとも呼ばれる)である有機化合物のファミリーであり、第一位またはアルファ(α)位に二重結合を有することで区別される。
【0023】
「沸点圧力」とは、所定の温度において第1の気泡が形成される圧力を意味する。
【0024】
「ポリマー溶液」は、ポリマーおよび揮発性物質が単相(液相)にある溶解ポリマーを含む溶液を意味する。
【0025】
溶液の粘度は、Anton Paar GermanyGmbH製のAntonPaar MCR102レオメータを使用して測定される。レオメータには、C-ETD300電気加熱システムが装備されている。カップアンドボブ型システム(同心円筒体の組み合わせ)は、直径27mmのカップと、直径25mmのボブとを備え、両者の間に1mmの間隙を残している。ボブは、150bar(約153kgf/cm)の圧力セル内で、回転モードで作動する。粘度測定は、30bar(約31kgf/cm、窒素雰囲気で得られる)の圧力、温度の範囲(150~250℃)、ポリマー濃度の範囲(20~90重量パーセント)、せん断速度の範囲(0.1~>100相互秒(s-1))、およびポリマー分子量の範囲(15,000~200,000g/モル)において得られる。すべての場合の溶媒は、ExxonMobilによるISOPAR(商標)Eであった。得られた粘度測定値は、100~2,000,000センチポイズ超の範囲であった。
【0026】
本明細書では、α-オレフィンの溶液重合のためのプロセスを開示する。このプロセスには、1基または2基の高圧攪拌断熱反応器を使用して炭化水素溶媒中でα-オレフィンの均一重合を行い、設計されたポリエチレンおよびエラストマー製品を作製することが含まれる。反応器は低変換条件で操作され、モノマーと貧溶媒の混合物を使用して、システムの下限臨界溶液温度(LCST)を下げる。好ましい実施形態では、モノマーは、エチレンである。貧溶媒は、ポリマー(例えば、ポリオレフィン)が溶けにくい、より好ましくはポリマーが不溶性である液体である。
【0027】
この統合されたエタンとエチレンの供給流は、エチレンをエタンから分離するためのエチレンプラント(炭化水素プラント)でのコストのかかる「脱エタン」ステップを排除するのに役立つ。このプロセスは、エチレンホモポリマーなどのオレフィン系ポリマー、または他のアルケンとのインターポリマー(例えば、コポリマーまたはターポリマー)、および任意選択で、ジエン(例えば、EPDMターポリマー)を作製するために使用することができる。
【0028】
本明細書にも、α-オレフィンの溶液重合が行われるシステムが開示されている。このシステムは、α-オレフィンが貧溶媒(例えば、エタン)を含む溶媒系で重合される1基または複数の反応器を含む。一実施例では、このシステムは、互いに直列になった複数の反応器を含み、これらの反応器は、ポリマー-溶媒溶液(以下、ポリマー溶液と称する)を生成するために、1種または複数のモノマーの溶液重合のために使用される。反応器のうちの少なくとも1基は、断熱条件下で重合を促進する。反応器は、液-液分離器および脱揮発システムと流体連通しており、脱揮発システムは、少なくとも1つの脱揮発容器、好ましくは少なくとも2つの脱揮発容器を含む。連続した各脱揮発容器は、前の容器よりも低い圧力で作動する。この配置は、ペレット化、造粒および凝固の前に、ポリマー流中の固形分を少なくとも92重量%に増加させる。
【0029】
図は、ポリマーまたはコポリマーを生成するためにモノマー(または複数のモノマー)を重合するために使用され得る例示的な溶液重合システム100(以下、システム100)の概略図である。システム100は、反応器システム103を含み、反応器システム103は、互いに流体連通した(直列または並列のいずれかで配置された)1基または複数の反応器ユニットを含み得る。そのような反応器システムの一例は、米国特許第4,616,937号、同第4,753,535号、および同第4,808,007号に提示されており、これらの内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
反応器システム103は、モノマー、コモノマー、水素、触媒、開始剤、溶媒などを受け取るように作動する。一実施形態では、反応器システム内の反応器は、連続撹拌槽反応器(CSTR)、ループ型反応器(例えば、単一ループ反応器、二重ループ反応器)、沸騰反応器であってよく、一段または多段の反応器であり得る。一実施形態では、このプロセスは、1基または複数の反応器において複数の触媒を用いてもよい。
【0031】
一実施形態では、反応器システムが複数の反応器を用いる場合、これらの反応器はすべて同じタイプであってもよい(例えば、すべての反応器はループ型反応器であってもよく、またはすべての反応器は連続撹拌槽型反応器であってもよい)。別の実施形態では、反応器は、異なる反応器タイプ(例えば、1つの反応器は、ループ型反応器であってもよく、他方の反応器は、連続撹拌槽型反応器であってもよい)またはそれらの組み合わせであってもよい。一実施形態では、反応器のうちの少なくとも1基は断熱反応器であり、すなわち、反応中に反応器に熱が供給されない。
【0032】
ここで再び図を参照すると、反応器システム103は、2基の反応器、すなわち、互いに直列である第1の反応器102および第2の反応器104を含む。好ましい実施形態では、第1の反応器102および第2の反応器104は両方とも連続撹拌槽型反応器である。両方の反応器は、断熱条件下で操作される。反応器の操作の詳細は、後で詳述する。
【0033】
反応器システム103の下流側には、互いに直列になった複数の脱揮発容器、すなわち、反応器システムと流体連通しかつ互いに流体連通している、第1の脱揮発容器110、および第2の脱揮発容器112が位置している。反応器システム102と第1の脱揮発容器108との間に配置されているのは、溶媒および未反応のモノマーの一部をポリマーから分離するように作動する液-液分離器106である。液-液分離器106は、溶媒および未反応のモノマーの一部を蒸発させ、それを流れ212を介して反応器システム103に放出することによって、ポリマー濃度を増加させる。
【0034】
脱揮発容器からポリマー溶液の移動を容易にする容積式ポンプは、各脱揮発容器の下流側に配置される。第1の容積式ポンプ110は、第1の脱揮発容器110の下流側に配置され、第2の容積式ポンプ114は、第2の脱揮発容器112の下流側に配置される。
【0035】
一実施形態では、ポンプ110および114は両方ともスクリューポンプである。別の実施形態では、ポンプ110および114は両方ともギアポンプである。第2のポンプ114から放出されたポリマー溶液は、押出機116に充填され、そこで、溶媒を実質的に含まないポリマー溶液がペレット化される。押出機で抽出された溶媒および未反応のモノマーは、再循環され、凝縮器120および122を介して反応器システム103に充填される。
【0036】
一実施形態では、システム100を利用してオレフィンポリマーを生成する一様式において、α-オレフィンモノマーは、触媒、開始剤、溶媒、および水素とともに反応器システム103に充填される。エタンとともにα-オレフィンモノマーなどの反応物は、流れ302を介して反応システム103に導入され、一方で水素は、流れ304を介して反応システム103に同時に導入される。
【0037】
一実施形態では、α-オレフィンモノマーは、エチレンのみを含み得る。別の実施形態では、α-オレフィンモノマーは、3~12個の炭素原子を有するα-オレフィンコモノマーとともにエチレンを含み得る。このようなα-オレフィンモノマーの例示的な例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキサン、1-オクテン、および1-デセンのうちの1つまたは複数がある。1-オクテンが好ましい。
【0038】
ポリマーを可溶化することに加えて、供給溶媒は、反応熱を吸収するためのヒートシンクとして機能する。不活性炭化水素溶媒の例としては、C5~12炭化水素が挙げられ、これは、非置換であっても、またはペンタン、メチルペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、水素化ナフサなどのC1~4アルキル基、またはそれらの組み合わせによって置換されてもよい。好ましい溶媒はメチルシクロヘキサンである。
【0039】
流れ202(反応物を反応器システム103に供給する)内の溶媒対モノマーの重量比は5対10である。好ましい実施形態では、流れ202内の溶媒対モノマーの重量比は6対8である。
【0040】
一実施形態では、溶媒は、貧溶媒を含む(すなわち、溶媒は、2つ以上の流体を含み、そのうちの1つは、製造されているポリマーと適合しない)。貧溶媒は、アルカンである。貧溶媒は、好ましくはエタンである。プロパン、ブタン、ヘキサンなどの他の貧溶媒アルカンもまた、エタンの代わりに、またはエタンと組み合わせて使用され得る。好ましい実施形態では、プロセスは、「自然に」エタンおよびエチレンを有する炭化水素プラントからの供給流を利用する。エタンの存在は、システムの下限臨界溶液温度(LCST)の低下を促進する。流れ302でエタンをα-オレフィン供給と組み合わせる利点は、それ(エタン)が、エタン/エチレン流れ内のエチレンを反応させることにより、エタンからエチレンを分離しやすくすることであり、したがって、上流側のエチレンプラントの設備投資と運用コストが削減される。エタンは、溶液のLCSTを低下させることにより貧溶媒として機能し、したがって反応器の流出流を予熱する必要なしに効果的な液-液分離を促進する。
【0041】
流れ202内の溶媒に対する貧溶媒の重量比は、1対10である。好ましい実施形態では、流れ202内の溶媒に対する貧溶媒の重量比は1対5である。
【0042】
モノマーは、反応器システム103へ供給される前に、水素と混合され、溶媒に溶解/分散される。混合前に、水、酸素、または他の極性不純物などの潜在的な触媒毒を除去するために、溶媒およびモノマー(「原料」と称されることもある)は一般的に精製される。原料精製は、分子ふるい、アルミナベッド、または酸素除去触媒を使用してもよい。溶媒も、同様の様式で精製されてもよい。反応器システム103への供給物は、一般的に40℃未満、好ましくは20℃未満の温度まで冷却される。供給物の冷却は、反応器システム内の熱交換器サイズの減少を促進することができる。冷却は、反応器システム内で、または反応器システムに入る前に行うことができる。好ましい実施形態では、供給物の冷却は、反応器システムに入る前に実施することができる。
【0043】
一実施形態では、触媒は、反応のために溶媒中で予め混合されてもよく、または反応器システム103内の1基または複数の反応器に別々の流れとして供給されてもよい。一実施形態では、触媒の一部またはすべては、流れ203を介して第1の反応器102に導入され、一方、追加の触媒は、流れ205を介して第2の反応器104に追加され得る。使用される触媒は、ジーグラー・ナッタ触媒、ビスメタロセン触媒、拘束幾何触媒、多価アリールオキシエーテル複合体、ホスフィニミン、またはそれらの組み合わせであることができる。
【0044】
一実施形態では、第1の反応器102は、90kgf/cm以上の圧力、好ましくは95kgf/cm以上、より好ましくは100kgf/cm以上の圧力で作動する。一実施形態では、第1の反応器102は、200kgf/cm以下の圧力、好ましくは195kgf/cm以下、より好ましくは180kgf/cm以下の圧力で作動する。好ましい実施形態では、第1の反応器102は、145kgf/cm~165kgf/cmの圧力で作動する。一実施形態では、反応器システム102は、120~230℃の範囲の温度で作動する。一実施形態では、第1の反応器102から出るポリマー溶液は、130~240℃、好ましくは150~170℃の温度であり得る。
【0045】
ポリマー(固形分)は、第1の反応器102の出口において、8~16重量%、好ましくは9~15重量%、より好ましくは11~13重量%の量でポリマー溶液中に存在する。重量パーセント(wt%)は、ポリマー流の総重量に基づく。メルトインデックスI(またはI2)およびI10(またはI10)を、それぞれ190℃で、2.16kgおよび10kg荷重でASTM D-1238(方法B)に従って測定する。それらの値はg/10分で報告される。メルトインデックス比(メルトフロー比とも呼ばれる)I10/Iは、2つの値の比であり、無次元である。第1の反応器102の出口でのポリマーのメルトインデックス比は、0.1~1,500の範囲であり得る。
【0046】
一実施形態では、第1の反応器102から出るポリマー溶液の粘度は、上述のように測定すると、50~6,000センチポイズである。密度測定のための試料は、ASTM D4703に従って調製される。測定は、ASTM D792、方法Bに従って、1時間の試料プレスの間に行われる。
【0047】
例示的な実施形態では、第1の反応器102から出た生成物は0.865~0.920g/cmの密度、0.25~210.0のメルトインデックスI、および6.0~8.5のメルトフロー比I10/Iを有する。160℃の反応器温度および12重量%のポリマー濃度で、反応器システム出口における溶液粘度は、上記で詳述したように測定され、350センチポイズを超えることが予想される。
【0048】
第2の反応器104は、第1の反応器102よりも高い温度で作動する。一実施形態では、第2の反応器は、第1の反応器102よりも低い圧力で作動する。第2の反応器104は、ポリマー流中の固形分を、第1の反応器102から生ずるポリマー流の固形分と比較して、10重量%を超えて、好ましくは15重量%を超えて、好ましくは20重量%を超えて、より好ましくは25重量%を超えて増加させるように作動する。一実施形態では、第2の反応器104から生ずる固形分は、ポリマー流の総重量に基づいて12~20重量%、好ましくは14~18重量%、より好ましくは15~17重量%である。
【0049】
一実施形態では、第2の反応器104は、第1の反応器102よりも低い圧力で作動する。第2の反応器104は、80kgf/cm以上の圧力、好ましくは85kgf/cm以上、より好ましくは90kgf/cm以上の圧力で作動する。一実施形態では、第2の反応器104は、180kgf/cm以下の圧力、好ましくは175kgf/cm以下、より好ましくは170kgf/cm以下の圧力で作動する。好ましい実施形態では、第2の反応器102は、130kgf/cm~143kgf/cmの圧力で作動する。
【0050】
第2の反応器104は、第1の反応器よりも高い温度で作動する。第2の反応器は、第1の反応器102の温度よりも少なくとも25%高い、好ましくは少なくとも30%高い、より好ましくは少なくとも35%高い温度を有する。一実施形態では、第2の反応器104は、190~250℃の範囲の温度で作動する。一実施形態では、第2の反応器102を出るポリマー溶液は、200~240℃、好ましくは210~230℃、より好ましくは218~224℃の温度を有し得る。
【0051】
一実施形態(不図示)では、ポリマー溶液の活性は、(反応器システム103の下流側に位置する)流れ206に位置するポート(不図示)でポリマー溶液に触媒中和剤(加水分解剤と称されることもある)を添加することによって、実質的に終了または低減される。触媒中和剤は、触媒活性を可能な限りゼロ近くまで減少させるように機能する。触媒中和剤の例としては、水またはアルコールがあり、それは、溶液中のポリマーの総重量に基づいて10~100ppmの量でポリマー溶液に添加される。
【0052】
次いで、ポリマー溶液は、反応器システム103から液-液分離器106に移される。第2の反応器からのポリマー溶液の圧力は、第2の反応器104の出口圧力(130kgf/cm~143kgf/cm)から液-液分離器内で92kgf/cm未満まで減少する。反応器システム103への供給流の成分であるエタンの存在により、システムの下限臨界溶液温度(LCST)を、液-液分離を誘発するための最低温度である約193℃に効果的に低下させる。
【0053】
液-液分離器は、ポリマー溶液の圧力、温度、または圧力と温度の両方を低下させることにより、揮発性物質からポリマーの分離を容易にする。言い換えれば、エタンを使用すると、エネルギーを消費することなく、揮発性物質からのポリマーの分離が容易になる。別の言い方をすれば、ポリマー溶液が反応器システムから液-液分離器に移動されるので、ポリマー溶液の温度および圧力は上昇しない。
【0054】
第2の反応器が少なくとも220℃で作動するとともに、反応器の流出物(つまりポリマー溶液)は、追加のエネルギー入力なしで液-液分離を誘発できるシステムの下限臨界溶液温度を上回る。ポリマー溶液が液-液領域に移動するが、システムの沸点圧力(約70kgf/cmである)を上回ったままであるので、液-液分離器内の圧力を92kgf/cm未満に下げることにより、液-液分離が促進される。ポリマー溶液がより低い臨界溶液温度以下に変位すると、ポリマー溶液が溶媒に富む相とポリマーに富む相とに分離するのを促進する。ポリマーに富む相は、分離して液-液分離器の底部に、溶媒に富む相は、ポリマーに富む相の上になる。ポリマーに富む相は、液-液分離器の底部から除去され、流れ210を介して第1の脱揮発容器108に移動される。一実施形態では、液-液分離器から生ずる流れ210は、第2の反応器104から生ずる流れ206よりも固形分が少なくとも25%多い。流れ210は、分離器の底部から除去されたポリマー溶液の総重量に基づいて20~24重量%の固形分を含む。
【0055】
溶媒に富む相は、流れ212を介して除去され、流れ208を介して反応器システム103に再循環される。一実施形態では、溶媒に富む相は、第2の反応器104に再循環される。液-液分離器の前に極性化合物がポリマー流に導入されないため、液-液分離器を出る溶媒に富む流れは、追加の精製ステップを経る必要なしに、反応器供給セクションに直接送り返され得る。
【0056】
一実施形態では、得られるポリマーに富む流れ210の反応性は、液-液分離器の下流側および第1の脱揮発容器108の上流側に配置されたヒーター209を使用して終了される。ヒーター209(流れ210に沿って配置される)は、ポリマー流の温度を少なくとも215℃、好ましくは少なくとも220℃に上昇させる。システム100内の反応を終了させることに加えて、この温度の上昇は、溶液が以下に記載される脱揮発システムに導入されるときに、ポリマー溶液からの溶媒のフラッシングを容易にする。
【0057】
次いで、ポリマー溶液は、脱揮発システムに放出され、脱揮発システムは、一連の脱揮発容器、すなわち、第1の脱揮発容器108、および第2の脱揮発容器112を含み、両容器は互いに直列に流体連通している。第1の脱揮発容器108は、第2の脱揮発容器112の上流側に位置している。一連の各脱揮発容器は、前の容器よりも低い圧力で作動し、各脱揮発容器は、ポリマー溶液からの溶媒の断熱フラッシングを促進し、フラッシング前よりも高いポリマー濃度を有するポリマー溶液を残す。
【0058】
ポリマー溶液は、第1の脱揮発容器108に入った時点で約20~24重量%の固形物、好ましくは21~23重量%の固形物を含む。第1の脱揮発容器108において、ポリマー溶液は、ポリマー溶液の総重量に基づいて少なくとも60重量%のポリマー、好ましくは65重量%のポリマーに濃縮されるように、溶媒の少なくとも60重量%が除去されるフラッシュを受ける。一実施形態では、フラッシングは断熱的に行われる。
【0059】
一実施形態では、第1の脱揮発容器108は、ポリマー溶液からの溶媒除去を促進するために断熱的に作動する。一実施形態では、第1の脱揮発容器内の圧力は、6~12kgf/cm、好ましくは8~10kgf/cmに維持され、したがって溶媒をフラッシュオフさせ、ポリマー溶液中のポリマー含有量を、流れ214を介して第1の脱揮発容器を出るポリマー溶液の総重量に基づいて45~90重量%、好ましくは50~70重量%に増加させることを可能にする。一実施形態では、ポリマー溶液中に存在する溶媒の少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%(第1の脱揮発容器108に入る時点で)がフラッシュオフされる。フラッシュされた溶媒は、ライン216を介して第1の脱揮発容器108から凝縮タンク122に移動され、そこから、流れ226および228を介して反応器システム103に再循環される。
【0060】
第1の脱揮発容器108から出るポリマー溶液の温度は、170℃~220℃であり、その圧力は、2~12kgf/cmである。第1の脱揮発容器108から出るポリマー溶液は、第1の脱揮発容器108から出るポリマー溶液の総重量に基づいて50~90重量%の量のポリマーを含有する。一実施形態では、固形分は、第1の脱揮発容器108を出るポリマー溶液の総重量に基づいて少なくとも60重量%のポリマー、好ましくは少なくとも65重量%に増加する。
【0061】
次いで、ポリマー溶液は、第1の脱揮発容器108から流れ214を介して任意選択的な第1の容積式ポンプ110へ放出される。オプションの第1の容積式ポンプ110は、ポリマー溶液の圧力の増加を容易にする。この圧力上昇(第1の任意選択的な容積式ポンプ110によってもたらされる)は、固形分濃度を、第2の脱揮発容器112を出るポリマー溶液の総重量に基づいて90重量%以上、好ましくは92重量%以上、より好ましくは95重量%以上の量に増大させるように、ポリマー溶液が第2の脱揮発容器112内で断熱的にフラッシュされたときに、ポリマー溶液からの揮発性物質(例えば、溶媒および未反応モノマー)の脱揮発をさらに促進する。
【0062】
第2の脱揮発容器112も、ポリマー溶液からの溶媒除去を促進するために断熱的に作動し得る。一実施形態では、第2の脱揮発容器112(図を参照されたい)に入るポリマー溶液は、210~260℃、好ましくは220~240℃の温度である。一実施形態では、第2の脱揮発容器内の圧力は、0.5~1kgf/cmに維持され、溶媒がフラッシュオフし、ポリマー溶液中の固形分を、第2の脱揮発容器112の出口でのポリマー溶液の総重量に基づいて90~97重量%、好ましくは92~95重量%に増加させることを可能にする。第2の脱揮発容器112から出たポリマー溶液の温度は、180℃~240℃、好ましくは190~230℃である。
【0063】
第2の脱揮発容器112内の(ポリマー溶液の)フラッシングから除去された揮発性物質は、流れ219を介して凝縮容器122に移動され、そこから溶媒回収容器124を介して反応器システム103に再循環される。流れ226および228は、反応システム103への揮発性物質の移動を容易にする。熱交換器126およびポンプ128は、それぞれ揮発性流の温度および圧力を上昇させるために使用される。
【0064】
第2の容積式ポンプ114は、ポリマー溶液(6重量%未満、好ましくは5重量%未満の溶媒含有量)を流れ218を介して、ポリマーがペレット化され、移動用にパッケージ化されるペレタイザー116などの造粒および凝固装置に充填することを容易にする。
【0065】
2つの脱揮発容器108および112内で生成された揮発性物質、ならびにペレタイザー内で生成された揮発性物質は、溶媒回収容器124に移動され、そこから反応器システム103に再循環される。第1の脱揮発容器108からの揮発性物質は、流れ216および凝縮容器122を介して溶媒回収容器124に移動される。第2の脱揮発容器112からの揮発性物質は、流れ219および凝縮容器122を介して溶媒回収容器124に移動される。ペレタイザー116からの揮発性物質は、流れ220、222、224、226および228を介して溶媒回収容器124に移動され、そこから反応器システム103に再循環される。
【0066】
次いで、再循環された揮発性物質は、エチレンおよびエタン(流れ302を参照)および水素(流れ304を参照)を含む供給物とともに、流れ202を介して反応器システム103に供給される。反応器システム103内の反応は、上記のように進行する。
【0067】
本明細書に開示されるシステムは、貧溶媒としてのエタンの添加が、追加のエネルギーを必要とせずに液-液分離を誘発するのに十分な値まで下限臨界溶液温度を低下させるという点で有利である。液-液分離を容易にするために、反応器の流出物の流れを予熱する必要はない。したがって、これは費用効果が高く、エネルギー効率の高い方法である。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。

[1] 溶液重合のためのシステムであって、 貧溶媒、モノマー、および溶媒を受け取り、前記モノマーを反応させてポリマーを形成するように作動する反応器システムであって、前記貧溶媒が前記ポリマーのための溶媒ではなく、下限臨界溶液温度を低下させるように作用する、反応器システムと、
前記反応器システムの下流側に位置する複数の脱揮発容器であって、各脱揮発容器が前の脱揮発容器よりも低い圧力で作動し、前記複数の脱揮発容器が前記反応器システムからポリマー溶液を受け取る、複数の脱揮発容器と、
液-液分離器であって、前記反応器システムからポリマー溶液を受け取り、前記液-液分離器内の前記ポリマー溶液の前記圧力および温度を低下させることによって前記ポリマーと揮発性物質との間の分離を容易にするように作動し、前記ポリマーがポリマーに富む相に存在し、前記揮発性物質が溶媒に富む相に存在する、液-液分離器とを、含むシステム。
[2] 前記貧溶媒がエタンであり、前記モノマーがα-オレフィンであり、前記溶媒がメチルシクロヘキサンである、[1]に記載のシステム。
[3] 前記反応器システムが、120℃~230℃の温度、および90kgf/cm 以上~200kgf/cm 以下の圧力で作動する第1の反応器を含む、[1]に記載のシステム。
[4] 前記ポリマー溶液中の固形分が、前記第1の反応器の出口での前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、8~16重量%の量で存在する、[3]に記載のシステム。
[5] 前記反応器システムが、前記第1の反応器よりも高い温度および低い圧力で作動する第2の反応器をさらに含む、[3]に記載のシステム。
[6] 前記第2の反応器が、80kgf/cm 以上~180kgf/cm 以下の圧力、および200~240℃の温度で作動する、[5]に記載のシステム。
[7] 前記ポリマー溶液中の前記固形分が、前記第2の反応器の前記出口での前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、12~20重量%の量で存在する、[6]に記載のシステム。
[8] 前記液-液分離器内の前記圧力が、前記ポリマー溶液の沸点より上である、[1]に記載のシステム。
[9] 前記液-液分離器内の前記ポリマー溶液の圧力が、180kgf/cm から92kgf/cm まで低下させられ、前記液-液分離器から生ずる前記ポリマー溶液の固形分が、20~24重量%である、[1]に記載のシステム。
[10] 前記複数の脱揮発容器が、第1の脱揮発容器を含み、前記第1の脱揮発容器は、前記第1の脱揮発容器を出る前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、前記ポリマー流中の固形分を少なくとも60重量%のポリマーに増加させるように作動する、[1]に記載のシステム。
[11] 前記複数の脱揮発容器が、第2の脱揮発容器をさらに含み、前記第2の脱揮発容器は、前記第2の脱揮発容器を出る前記ポリマー溶液の総重量に基づいて、前記ポリマー流中の固形分を少なくとも90重量%のポリマーに増加させるように作動する、[10]に記載のシステム。
[12] 前記複数の脱揮発容器で生成された前記揮発性物質が、前記反応器システムに再循環される、[1]に記載のシステム。
[13] 方法であって、
反応器システムに、貧溶媒、モノマー、および溶媒を含む供給流を充填することであって、前記貧溶媒が、前記ポリマーのための溶媒ではなく、ポリマー溶液の前記下限臨界溶液温度を低下させるように作用する、充填することと、
前記モノマーを反応させてポリマーを形成することであって、前記ポリマーが前記ポリマー溶液に含まれている、ポリマーを形成することと、
前記ポリマー溶液相を液-液分離器に移動させることと、
前記液-液分離器内の前記ポリマー溶液の圧力を低下させて、前記液-液分離器内の溶媒に富む相からポリマーに富む相を分離させることと、
前記ポリマーに富む相を、前記液-液分離器の下流側に位置する複数の脱揮発容器に移動させることであって、各脱揮発容器が前の脱揮発容器よりも低い圧力で作動する、移動させることと、
前記ポリマーに富む相に存在する揮発性物質から前記ポリマーを分離することと
を含む方法。
[14] 前記ポリマーをペレット化することをさらに含む、[13]に記載の方法。
[15] 揮発性物質を前記反応器システムに再循環させることをさらに含む、[13]に記載の方法。
図1