(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】座標位置決め機械
(51)【国際特許分類】
G01B 5/00 20060101AFI20241206BHJP
【FI】
G01B5/00 L
(21)【出願番号】P 2021560259
(86)(22)【出願日】2020-03-20
(86)【国際出願番号】 GB2020050745
(87)【国際公開番号】W WO2020208336
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-12-12
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391002306
【氏名又は名称】レニショウ パブリック リミテッド カンパニー
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファン マーク アングッド
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/144573(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0194664(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00-5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、前記機械の作業容積において可動構造体を動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を測定するための計測装置を備え、前記計測装置はヘキサポッド型計測装置であり、かつ前記駆動装置は非ヘキサポッド型駆動装置であり、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮を生じさせ、および前記駆動フレームは、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮の少なくとも一部、または前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止するよう構成された結合装置を介して前記計測フレームに連結されることを特徴とする座標位置決め機械。
【請求項2】
駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、前記機械の作業容積において可動構造体を6自由度より少ない自由度で動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を前記駆動装置よりも多い自由度で測定するための計測装置を備え、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮を生じさせ、および前記駆動フレームは、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮の少なくとも一部、または前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止するよう構成された結合装置を介して前記計測フレームに連結されることを特徴とする座標位置決め機械。
【請求項3】
駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、前記機械の作業容積において可動構造体を動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を測定するための計測装置を備え、前記計測装置は、その測定値に基づいて前記可動構造体の位置を決定できる、対応するそれぞれの複数の測定値を供するための並列配置の複数の測定変換器を含み、前記駆動装置は、前記機械における前記可動構造体と固定構造体との間に並列に配置された複数の機械的リンク機構を含み、それぞれの機械的リンク機構は前記固定構造体と前記機械的リンク機構との間で作用する駆動機構によって作動され、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮を生じさせ、および前記駆動フレームは、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮の少なくとも一部、または前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止するよう構成された結合装置を介して前記計測フレームに連結されることを特徴とする座標位置決め機械。
【請求項4】
駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、前記機械の作業容積において可動構造体を動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を測定するための計測装置を備え、前記計測装置は、その測定値に基づいて前記可動構造体の位置を決定できる、対応するそれぞれの複数の測定値を供するための並列配置の複数の測定変換器を含み、前記駆動装置は、並列配置の複数のアクチュエータを含み、前記アクチュエータの並列配置は前記測定変換器の並列配置と異なり、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮を生じさせ、および前記駆動フレームは、前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮の少なくとも一部、または前記駆動フレームの余分な熱膨張または熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止するよう構成された結合装置を介して前記計測フレームに連結されることを特徴とする座標位置決め機械。
【請求項5】
前記計測装置は、その測定値に基づいて前記可動構造体の位置を決定できる、対応するそれぞれの複数の測定値を供するための複数の測定変換器を並列配置で含むことを特徴とする請求項1または2に記載の座標位置決め機械。
【請求項6】
前記複数の測定変換器は、複数の独立した測定変換器であることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項7】
前記測定変換器は測長変換器であることを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項8】
前記測定値は、前記機械における前記可動構造体と固定構造体との間の距離間隔のそれぞれの違いに関係することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項9】
前記測定変換器は、前記距離間隔の直接の測定値を供するよう構成され、またはその測定値に基づいて前記距離間隔を決定できる、前記可動構造体が作業容積において動くときの距離間隔の変化の直接の測定値を供するよう構成されることを特徴とする請求項8に記載の座標位置決め機械。
【請求項10】
前記測定変換器のそれぞれは、エンコーダスケールおよび関連する読み取りヘッド含むことを特徴とする請求項3乃至9のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項11】
前記計測装置は、並列して配置されている複数の伸縮可能な脚部を含み、前記伸縮可能な脚部は、数が前記測定変換器の数に対応しており、前記複数の測定変換器のそれぞれは、前記複数の伸縮可能な脚部のうちの異なるそれぞれ1つと関連付けられていることを特徴とする請求項3乃至10のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項12】
6つの前記測定変換器を備えることを特徴とする請求項3乃至11のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項13】
前記駆動装置は、非伸縮の駆動装置であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項14】
前記計測装置はトップダウン計測装置であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項15】
前記計測装置はボトムアップ計測装置であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項16】
前記駆動装置はトップダウン駆動装置であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項17】
前記駆動装置はボトムアップ駆動装置であることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項18】
前記駆動装置は、前記可動構造体が作業容積において動くときに、前記可動構造体を実質的に一定の向きに維持するように構成されることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項19】
前記駆動装置は、前記機械における前記可動構造体と前記固定構造体との間で並列に接続されている複数の機械的リンク機構を含み、それぞれの前記機械的リンク機構は、前記固定構造体と前記機械的リンク機構との間で作用する駆動機構によって作動されることを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項20】
前記駆動機構はロータリ駆動機構であることを特徴とする請求項19に記載の座標位置決め機械。
【請求項21】
前記駆動機構は線形駆動機構であることを特徴とする請求項19に記載の座標位置決め機械。
【請求項22】
それぞれの前記機械的リンク機構は、前記可動構造体が作業容積を移動するときにその可動構造体を実質的に一定の向きに維持するための、少なくとも2つの実質的に平行なロッドを含むことを特徴とする請求項19、20または21に記載の座標位置決め機械。
【請求項23】
前記駆動装置は、3つの前記機械的リンク機構を含むことを特徴とする請求項19乃至22のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項24】
前記駆動装置は、3滑り装置であることを特徴とする請求項1乃至23のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項25】
前記駆動装置は、6自由度より少ない自由度で前記可動構造体を作業容積において動かすためのものであり、および前記計測装置は、前記駆動装置よりも多い自由度で作業容積内の前記可動構造体の位置を測定するためのものことを特徴とする請求項1乃至24のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項26】
前記計測装置はヘキサポッド型計測装置であることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項27】
前記駆動装置は非ヘキサポッド型駆動装置であることを特徴とする請求項1乃至26のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項28】
前記駆動装置は、前記可動構造体を3自由度で作業容積において動かすように構成されることを特徴とする請求項1乃至27のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項29】
前記3自由度は3つの並進自由度であることを特徴とする請求項28に記載の座標位置決め機械。
【請求項30】
前記計測装置は、前記可動構造体の位置を6自由度で測定するよう構成されることを特徴とする請求項1乃至29のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項31】
前記計測装置および前記駆動装置はそれぞれ、前記機械における前記可動構造体と前記固定構造体との間に配置されることを特徴とする請求項1乃至30のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項32】
前記駆動装置は複数のアクチュエータを並列配置で備えることを特徴とする請求項1乃至31のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項33】
前記計測装置は、その測定値に基づいて前記可動構造体の位置を決定できる、対応するそれぞれの複数の測定値を供するための並列配置の複数の測定変換器を含み、前記アクチュエータの並列配置は前記測定変換器の並列配置と異なることを特徴とする請求項32に記載の座標位置決め機械。
【請求項34】
前記駆動装置は、前記可動構造体の位置を、前記計測装置の測定値に基づいて決定される位置とは無関係に決定できる、対応するそれぞれの測定値を供するために、前記計測装置のものとは別個の複数の測定変換器を備えることを特徴とする請求項1乃至33のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項35】
前記結合装置は、運動学的または疑似運動学的な結合装置であることを特徴とする請求項1乃至34のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項36】
前記可動構造体は、前記駆動装置に関連付けられた駆動部および前記計測装置に関連付けられた計測部を含み、前記可動構造体の前記駆動部は、前記結合装置を介して前記可動構造体の前記計測部に結合されることを特徴とする請求項1乃至35のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項37】
前記駆動装置に関連付けられた駆動部および前記計測装置に関連付けられた計測部を有する固定構造体を備え、前記固定構造体の駆動部は前記結合装置を介して前記固定構造体の計測部に結合されることを特徴とする請求項1乃至36のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項38】
前記固定構造体の計測部は前記固定構造体の駆動部よりも低い熱膨張係数を有することを特徴とする請求項36または37に記載の座標位置決め機械。
【請求項39】
前記可動構造体は操作工具を支持することを特徴とする請求項1乃至38のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項40】
前記機械は、座標測定機械またはコンパレータであることを特徴とする請求項1乃至39のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項41】
前記操作工具は、表面感知デバイスまたは測定プローブであることを特徴とする請求項39に記載の座標位置決め機械。
【請求項42】
前記機械は工作機械であることを特徴とする請求項1乃至39のいずれか1項に記載の座標位置決め機械。
【請求項43】
前記操作工具は、材料を成形または機械加工するための、機械的な工具であることを特徴とする請求項39に記載の座標位置決め機械。
【請求項44】
請求項1乃至39のいずれか1項に記載の座標位置決め機械を制御する方法であって、操作工具を前記可動構造体に結合し、前記駆動装置を用いて同じく可動構造体に結合された前記計測装置を備えた作業容積の中で前記操作工具を動かし、前記操作工具を用いた操作を実行し、および計測装置を用いて作業容積内の操作のための前記操作工具の位置を決定する、工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項45】
前記操作は測定操作であることを特徴とする請求項
44に記載の方法。
【請求項46】
前記操作は機械加工操作であることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項47】
座標位置決め機械のためのコントローラによって実行されると、前記コントローラに請求項44、45または46に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項48】
座標位置決め機械のコントローラを制御して請求項44、45または46に記載の方法を実行するためのコンピュータプログラム命令が格納されたコンピュータ可読媒体。
計測装置の機械的リンク機構に関連する測定変換器は、距離間隔に依存する出力を生じるように構成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座標位置決め機械に関する。座標位置決め機械には、例えば、座標測定機(CMM)や、工作機械が含まれる。
【背景技術】
【0002】
非デカルト座標位置決め機械1が、添付の図面の
図1に模式的示されている。座標位置決め機械1は、概略、第1の構造体2および第2の構造体4を備え、第1の構造体2および第2の構造体4は、それらの間に設けられている複数の伸縮自在のまたは延長できる脚部6によって、支持され、また互に対して移動できるようになっている。第1の構造体2および第2の構造体4は、プラットフォームまたはステージと称される場合もあり、伸縮可能な脚部6は、支柱ないしラムと称される場合もある。(
図1に図示されているように)そのような6つの伸縮可能な脚部6が存在する場合、装置は、一般に
ヘキサポッドと呼ばれる。
【0003】
伸縮可能な脚部6は、典型的にはボールジョイント8を介して構造体2、4に装着されており、それぞれの脚部6は、(
図1に図示されているように)その一方もしくは両方の端部にそれ自身のボールジョイント8を有しているか、または、一方もしくは両方の端部において、隣接する脚部6とボールジョイント8を共有しているかのいずれかである。それぞれの伸縮可能な脚部6は、典型的には、1対の管として形成されており、伸縮可能な脚部6の伸長および縮小を生じさせるために、一方の管が駆動機構(たとえば、モータ)によって他方の中を入れ子式に移動するようになっている。
【0004】
第1の構造体2と第2の構造体4との間のそれぞれの相対位置は、
図1において矢印13で示されているように、異なる量だけ脚部6を伸長させることによって実現することができる。任意の瞬間の相対位置は、複数の測長変換器10によって監視され、例えば、1つの変換器がそれぞれの伸縮可能な脚部6と関連付けられている。それぞれの測長変換器10は、読み取りヘッドと対になったエンコーダスケールを含むことが有り、エンコーダスケールが、1対の入れ子式の管のうちの一方に適切に装着され、読み取りヘッドが他方に適切に装着される。このようにして、脚部6の伸長によって、エンコーダスケールは読み取りヘッドを過ぎるように移動され、それによって、伸縮可能な脚部6の長さが測定される。コンピュータコントローラ5は、それぞれの伸縮可能な脚部6の長さを設定するように動作し、構造体2と構造体4との間の必要な相対移動を生じさせる。そのような6つの測長変換器10を有することによって、相対的な位置を、6つの対応するそれぞれの自由度(3つの並進自由度および3つの回転自由度)で測定することが可能となる。
【0005】
構造体2と構造体4の一方は、典型的には、座標位置決め機械1の固定された構造体の一部として提供され、構造体2と構造体4の他方は、固定された構造体に対して移動12および移動11を行う。工具(例えば、測定プローブまたはドリル)が移動する構造体に装着され、ワークピースが固定された構造体の上に装着されることが可能であり、または、その逆も同様であり、操作がワークピースに対して実施されることを可能にする(例えば、座標測定機械の場合は、測定、プローブによる探査または走査、または、工作機械の場合は、機械加工)。
【0006】
例えば、
図1に図示されているように、下側構造体4は固定されており、上側構造体2は移動可能であり、ワークピース9が下側構造体4に装着され、プローブ部品3が上側構造体2に装着される。作業容積14は、それらの最も間隔を離して配置された位置にあるときに上側構造体2と下側構造体4との間に画定され、プローブ部品3は、伸縮可能な脚部6の動作によって作業容積14の中で位置決めされている。矢印11は並進移動を指すように示されているが、個々の脚部6の適切な制御によって、構造体2は傾斜することもできる。
【0007】
代替として、上側構造体2は固定され下側構造体4は移動可能とすることができ、この場合に、プローブは下側構造体4の下側面に装着され、ワークピースは、その下方の固定された構造体の一部に装着され、装置の作業容積(または、動作容積)が下側構造体4の上方でなく下方にあるものとすることができる。
【0008】
様々なタイプの非デカルト座標位置決め機械が、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、および特許文献11に、より詳細に記載されている。
【0009】
例えば、特許文献1は、
ヘキサポッド型工作機械を記載しており、その
ヘキサポッド型工作機械は、上側の移動可能な構造体を備え、上側移動可能構造体は、上述の
図1に示されているものと原理的に同様の、6つの油圧式の伸縮可能な脚部によってベースに取り付けられている。伸縮可能な脚部は、ボールジョイントを介して、ベースおよび移動可能な構造体に取り付けられている。伸縮可能な脚部は、油圧式であり、シリンダの中を移動可能なピストンロッドを備えている。脚部伸長の量は、磁気スケールをシリンダに装着することによって、また、適切な読み取りヘッドをピストンロッドに装着することによって、測定される。このようにして、脚部の伸長はスケールを読み取りヘッドを過ぎるように移動させ、それによって、脚部の長さを測定することができる。コンピュータコントローラは、それぞれの脚部の長さを設定し、必要とされる動きを生じさせるように動作する。
【0010】
特許文献12は、エンドエフェクタを動かすためのデルタロボットの使用、および、エンドエフェクタの少なくとも一部の画像データをとらえるための撮像検出器の使用を開示している。とらえた画像データから、特に、エンドエフェクタにおける参照点から、エンドエフェクタの位置を、写真測量法によって決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第91/03145号
【文献】国際公開第95/14905号
【文献】国際公開第95/20747号
【文献】国際公開第92/17313号
【文献】国際公開第03/006837号
【文献】国際公開第2004/063579号
【文献】国際公開第2007/144603号
【文献】国際公開第2007/144573号
【文献】国際公開第2007/144585号
【文献】国際公開第2007/144602号
【文献】国際公開第2007/144587号
【文献】欧州特許公開第3054265号
【文献】米国特許出願公開第2003/0005786号
【文献】国際公開第2017/021733号
【文献】米国特許出願公開第2003/0005786号
【文献】米国特許公開第4976582号
【文献】米国特許公開第2009/0066100号
【非特許文献】
【0012】
【文献】H.J.J.ブラディック、“実験装置の機械設計”、チャップマン&ホール、ロンドン、1960年、11~30ページ
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、機械の作業容積において可動構造体を動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を測定するための計測装置を備え、前記計測装置はヘキサポッド型計測装置であり、かつ前記駆動装置は非ヘキサポッド型駆動装置であり、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、(使用中に)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮を生じさせ、また、前記駆動フレームは、(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張と熱収縮の少なくとも一部、または(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止する(防止するよう適合される)結合装置を介して前記計測フレームに連結される、座標位置決め機械が提供される。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、機械の作業容積において可動構造体を6自由度より少ない自由度で動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を前記駆動装置よりも多い自由度で測定するための計測装置を備え、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、(使用中に)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮を生じさせ、また、前記駆動フレームは、(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張と熱収縮の少なくとも一部、または(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止する(防止するよう適合される)結合装置を介して前記計測フレームに連結される、座標位置決め機械が提供される。
【0015】
本発明の第3の態様によれば、駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、機械の作業容積において可動構造体を動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を測定するための計測装置を備え、前記計測装置は、それによって前記可動構造体の位置を決定可能な、対応するそれぞれの複数の測定値を供するための並列配置の複数の測定変換器を備え、前記駆動装置は、機械における前記可動構造体と固定構造体との間に並列に配置された複数の機械的リンク機構を備え、それぞれの機械的リンク機構は前記固定構造体と前記機械的リンク機構との間で作用する駆動機構によって作動され、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、(使用中に)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮を生じさせ、また、前記駆動フレームは、(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張と熱収縮の少なくとも一部、または(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止する(防止するよう適合される)結合装置を介して前記計測フレームに連結される、座標位置決め機械が提供される。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、駆動フレームおよび計測フレームを含む座標位置決め機械であって、前記駆動フレームは、機械の作業容積において可動構造体を動かすための駆動装置を備え、および前記計測フレームは作業容積内の可動構造体の位置を測定するための計測装置を備え、前記計測装置は、それによって前記可動構造体の位置を決定可能な、対応するそれぞれの複数の測定値を供するための並列配置の複数の測定変換器を備え、前記駆動装置は、前記計測装置のものは異なるタイプの並列配置の複数のアクチュエータを備え、前記計測フレームは前記駆動フレームの熱膨張係数より低い熱膨張係数を有し、それによって、前記計測フレームと比較して、(使用中に)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮を生じさせ、また、前記駆動フレームは、(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張と熱収縮の少なくとも一部、または(前記計測フレームと比較して)前記駆動フレームの余分な熱膨張および熱収縮に関連する歪みの少なくとも一部が、前記計測フレームに伝わることを防止する(防止するよう適合される)結合装置を介して前記計測フレームに連結される、座標位置決め機械が提供される。
【0017】
上記で言及した余分な熱膨張および熱収縮は、駆動フレームと計測フレームの両方の温度における同じ(または少なくとも同様の、または所定の)変化に対する、計測フレームと比較した駆動フレームの余分の熱膨張または熱収縮であると見なすことができる。このような温度の変化は、例えば、機械が動作している環境温度の変化によって引き起こされる可能性があり、このとき駆動フレームおよび計測フレームの温度は環境温度に厳密に従う。機械が動作している環境(製造施設など)が非常に厳密に制御されていない限り、環境温度は1日を通して常に変化し、場合によっては、近くで動作している他の機械からの熱の結果として、または周囲の加熱および/または冷却システムが原因で、大幅に変化する。
【0018】
本発明の一実施形態は、駆動フレームの余分な膨張または収縮を生じさせる熱的効果が計測フレームの歪みをもたらさないことを保証するか、または少なくともそのような効果が低減されることを保証する。このような方法で計測フレームを駆動フレームから隔絶することは、それゆえに、計測フレームと比較した駆動フレームの熱膨張/熱収縮の差に起因する計測フレームの実質的な歪みを防止または少なくとも低減し、それによって、先に考えられる計測装置と比較してより高精度の計測測定、または少なくとも、異なる動作温度にわたってより一貫性のある測定が提供される。
【0019】
計測フレームは、有利には、低い熱膨張係数(CTE)を有する。有利には、計測フレームは、15ppm/cより小さい熱膨張係数を有し、より好ましくは10ppm/cより小さい熱膨張係数、より好ましくは5ppm/cより小さい熱膨張係数、より好ましくは3ppm/cより小さい熱膨張係数、より好ましくは2ppm/cより小さい熱膨張係数、より好ましくは1ppm/cより小さい熱膨張係数、を有し、ここで、1ppm/cは1度Cあたり1×10-6を意味する。
【0020】
計測フレームは、少なくとも部分的に炭素繊維のような複合材料で形成され、そのような材料は、通常は、正確な組成に応じて、5ppm/Cより小さい熱膨張係数を有するものである。計測フレームは、少なくとも部分的にINVAR(登録商標)で形成され、その材料は、正確な組成に応じて、おおよそ0.5~1.5ppm/Cより小さい熱膨張係数を有する鉄-ニッケル系合金である。計測フレームは、少なくとも部分的にZERDUR(登録商標)のようなガラスセラミック材料で形成され、そのような材料は、正確な組成に応じて、おおよそ0.02ppm/Cまたはそれより小さい熱膨張係数を有するものである。そのような低膨張係数は、駆動フレームの少なくとも一部を形成するのに用いられる、アルミニウム(24ppm/C)、真ちゅう(19ppm/C)または鋼(13ppm/C)などの伝統材料より1桁小さい値より大きいものとすることができる。
【0021】
計測フレームの熱膨張係数は、駆動フレームの熱膨張係数の半分より小さい場合がある。計測フレームの熱膨張係数は、駆動フレームの熱膨張係数の3分の1より小さい場合がある。計測フレームの熱膨張係数は、駆動フレームの熱膨張係数の4分の1より小さい場合がある。計測フレームの熱膨張係数は、駆動フレームの熱膨張係数の5分の1より小さい場合がある。計測フレームの熱膨張係数は、駆動フレームの熱膨張係数の8分の1より小さい場合がある。計測フレームの熱膨張係数は、駆動フレームの熱膨張係数の10分の1より小さい場合がある。
【0022】
熱膨張係数が低い材料(例えば、炭素繊維および/またはINVARおよび/またはZERODUR)で作られた計測フレームであれば、温度の変化によって生じる実質的な計測誤差を防止または少なくとも低減することができる。ただし、このような材料は機械加工が難しいことが多く、通常、アルミニウムなどの標準的な工場で用いられる材料よりも大幅に高価である。従って、本発明の一実施形態は、炭素繊維などの低CTA材料の計測上の利点と、アルミニウムなどの材料に関連する製造の容易さを組み合わせるものである。例えば、炭素繊維などの低CTE材料で主に作成された計測フレームは、(鋼などの他の材料で形成され得る、より高い硬度および/または剛性および/または耐久性を必要とする、ガイドレールなどの特定の部品と共に)アルミニウムなどの従来の材料で主に作成された駆動フレームと組み合わせることができる。
【0023】
計測フレームの各部分の熱膨張係数が、駆動フレームの各部分よりも低い必要はない。実際、実用上および工学上の理由から、通常、計測フレームの一部は、アルミニウム、鋼またはプラスチックなど、取り扱いが容易な、および/またはより耐摩耗性ないし耐久性のある材料で形成する必要がある 。例えば、伸縮自在に拡張可能な計測脚の2つの部分の間のベアリングは鋼で形成されている場合がある。
【0024】
重要なのは、計測フレームの代表的な熱膨張係数が、駆動フレームの代表的な熱膨張係数よりも低いことであると考えることができる。代表的な熱膨張係数は、関連するフレームを単一の全体的な(たとえば平均の)熱膨張係数を持つ単一構造と見なした結果とすることができる。代表的な熱膨張係数は、そのフレームの熱膨張および熱収縮に最も寄与している(例えば、少なくとも25%または少なくとも50%または少なくとも75%、寄与している)関連するフレームのその部分またはそれらの部分の熱膨張係数(またはその尺度)とすることができる。代表的な熱膨張係数は、関連するフレームの(例えば、重量および/または体積および/または長さおよび/または幅および/または深さによる)最大部分を形成する材料の熱膨張係数とすること(またはその尺度)とすることができる。代表的な熱膨張係数は、所定の温度変化に対して、座標位置決め機械からの測定結果に有意な影響を持つ関連するフレームのその部分またはそれらの部分の熱膨張係数(またはその尺度)とすることができる。計測結果は、座標位置決め機械によって決定された位置または測定された結果、例えば、機械の作業容積の少なくとも4分の1(または少なくとも半分)を占める代表的なワークピースにおける2点間の距離とすることができる。重要な影響は、計測結果の少なくとも0.01%、計測結果の少なくとも0.1%、計測結果の少なくとも1%、または計測結果の少なくとも5%とすることができる。所定の温度変化は、1℃または5℃または10℃とすることができる。
【0025】
計測装置は、その測定値に基づいて可動構造体の位置を決定できる、対応するそれぞれの複数の測定値を提供するために、複数の測定変換器を並列配置で備えることができる。
【0026】
測定変換器は、測長変換器であり得る。
【0027】
測定値は、機械における可動構造体と固定構造体との間の距離間隔のそれぞれの違いに関係するとすることができる。
【0028】
測定変換器は、距離間隔の直接の測定値をもたらすよう構成することができる。
【0029】
測定変換器は、その測定値に基づいて距離間隔を決定することが可能な、構造体が作業容積において動くときの距離間隔の変化の直接の測定値をもたらすように構成することができる。
【0030】
測定変換器のそれぞれは、エンコーダスケールおよび関連する読み取りヘッドを備えることができる。
【0031】
計測装置は、並列して配置されている複数の伸縮可能な脚部を備えることができ、伸縮可能な脚部は、数が測定変換器の数に対応しており、複数の測定変換器のそれぞれは、複数の伸縮可能な脚部のうちの異なるそれぞれ1つと関連付けられている。
【0032】
座標位置決め装置は、6つのそのような測定変換器を備えることができる。
【0033】
複数の測定変換器は、複数の独立した測定変換器とすることができる。
【0034】
本明細書に記載されている複数の測定変換器は、画像ベースまたは写真測量法の計測装置と対比されることになり、例えば、この計測装置では、それぞれの画像取り込みデバイスは任意の長さもしくは距離間隔の直接的なもしくは独立した測定を行わず、または、可動構造体の少なくとも一部の位置の直接的なもしくは独立した測定を行わない。可動構造体の位置の決定は、総ての画像取り込みバイスからの画像の写真測量法の組み合わせに基づいて行うことができるだけである。画像ベースまたは写真測量の計測装置では、距離は画像データから間接的に推測できるだけである。
【0035】
駆動装置は、非伸縮の駆動装置とすることができる。伸縮式の装置では、装置の一部は、伸縮して内側にまたは少なくとも他の部分に沿って直線的に動き、この動きの間、一部は互いに実質的に整列したままである。
【0036】
計測装置は、トップダウン計測装置とすることができる。または、計測装置はボトムアップ計測装置とすることができる。計測装置が機械における可動構造体と固定構造体との間に接続されている場合、トップダウン計測装置では、可動構造体は固定構造体の下に配置され、計測装置は固定構造体から可動構造体まで下方に延在する。他方、ボトムアップ計測装置では、可動構造体は固定構造体の上に配置され、計測装置は固定構造体から可動構造体まで上方に延在する。
【0037】
駆動装置は、トップダウン駆動装置とすることができる。または、駆動装置はボトムアップ駆動装置とすることができる。駆動装置が機械における可動構造体と固定構造体との間に接続されている場合、トップダウン駆動装置では、可動構造体は固定構造体の下に配置され、駆動装置は固定構造体から可動構造体まで下に延在する。他方、ボトムアップ駆動装置では、可動構造体は固定構造体の上に配置され、駆動装置は固定構造体から可動構造体まで上に延在する。
【0038】
駆動装置は、可動構造体が作業容積において動くときに、可動構造体を実質的に一定の向きに維持するように構成することができる。
【0039】
駆動装置は、機械における可動構造体と固定構造体との間で並列に接続されている複数の機械的なリンク機構を含むことができる。
【0040】
それぞれの機械的なリンク機構は、固定構造体と機械的リンク機構との間で作用する駆動機構によって作動される(または、駆動される)ことができる。ここでは、そのような駆動機構と、例えば、機械的リンク機構の2つの部分(または、リンク)の間で作用するものと、は違うものである。例えば、典型的な六脚駆動装置では、それぞれの伸縮可能な脚部のためのモータは、伸縮可能な脚部の2つの部分間で作用して、脚部を伸長するために2つの部分を互いに離れるように押し、また、脚部を縮小させるために反対のことを行う。モータは、伸縮可能な脚部(機械的リンク機構)と固定構造体との間では作用しない。そのため、本発明の実施形態では、それぞれの機械的リンク機構が、固定構造体と機械的リンク機構との間で直接的に作用する駆動機構によって作動される(または、駆動される)得ると考えることができる。
【0041】
機械的リンク機構の被駆動部分の動きは、駆動装置の他の機械的リンク機構に関連した1つまたは複数の他の駆動機構でなく、その機械的リンク機構に関連する駆動機構によって生じるようにすることができる。
【0042】
機械的リンク機構の被駆動部分は、対応する軌道に沿って直線的に動くように配置されたキャリッジとすることができる。複数のこのような軌道は、実質的に互いに平行に配置することができる。3滑り駆動装置の場合、このような軌道が3つ設けられる。
【0043】
駆動機構は、デルタロボットに見られるようなロータリ駆動機構とすることができる。
【0044】
そのような駆動機構は、固定構造体に対して実質的に回転する方法で機械的リンク機構の被駆動部分を駆動するように構成することができる。
【0045】
回転駆動機構は、直接回転駆動機構とすることができる。
【0046】
駆動機構は、3滑り機構またはケーブルロボットに見られるような線形駆動機構とすることができる。
【0047】
このような駆動機構は、固定構造体の実質的に線形の機構に沿って、また、固定構造体の実質的に線形の軌道に沿ってなど、固定構造体に対して実質的に線形に機械的リンク機構の被駆動部分を駆動することができる。
【0048】
線形駆動機構は、直接線形駆動機構とすることができる。
【0049】
線形駆動機構は、機械的リンク機構の端部を実質的に線形に並進させるように構成することができる。
【0050】
線形駆動機構は、線形モータを含むことができる。
【0051】
各機械的リンク機構は、可動構造体が作業容積の周りを移動するときにその可動構造体を実質的に一定の向きに維持するための、少なくとも2つの実質的に平行なロッドを含むことができる。
【0052】
駆動装置は、3つのそのような機械的リンク機構を含むことができる。
【0053】
駆動装置は、3滑り装置とすることができる。
【0054】
計測装置は、固定構造体と可動構造体との間に並列に配置された複数の機械的リンク機構を備え、対応する複数の測定変換器が複数の機械的リンク機構にそれぞれ関連付けられるようにすることができる。計測配置に6つのそのような機械的リンク機構および6つの対応するそれぞれの測定変換器があり得る。
【0055】
計測装置の各機械的リンク機構は、固定構造体と可動構造体のそれぞれの点の間で接続されてもよく、それらの点の間の距離間隔が変更されることを可能にするように構成することができる。
【0056】
計測装置の機械的リンク機構に関連する測定変換器は、距離間隔に依存する出力を生じるように構成することができる。
【0057】
計測装置の各機械的リンク機構は、伸縮可能な脚部ないし延長脚部とすることができる。
【0058】
機械的リンク機構は、運動学的チェーンまたは機械的アセンブリと、呼ばれることもあれば、みなされることもある。
【0059】
駆動機構は、駆動装置の各機械的リンク機構に対して別々に設けられてもよい。
【0060】
機械的リンク機構に関連する駆動機構は、固定構造体と機械的リンク機構の端部との間で作用するように構成することができる。
【0061】
各機械的リンク機構は、少なくとも1つの剛性ロッドを備えることができる。
【0062】
各機械的リンク機構は、可動構造体が作業容積の周りを移動するときに実質的に一定の向きに可動構造体を維持するために、少なくとも2つの実質的に平行なロッドを含むことができる。
【0063】
機械的リンク機構のそれぞれは、実質的に同じ構成または設計とすることができる。
【0064】
それぞれ線形駆動機構を備えた3つの機械的リンク機構を有する駆動装置は、3滑り装置として知られている。
【0065】
駆動装置は、デルタロボット構成を、含むか、その形態であるか、またはもたらすものとすることができる。
【0066】
駆動装置は、線形デルタロボット構成を、含むか、その形態であるか、またはそれをもたらすものすることができる。
【0067】
駆動装置は、6自由度より少ない自由度で構造体を作業容積の周りを動かすように構成され、また計測装置は、駆動装置よりも多い自由度で作業容積内の構造体の位置を測定するよう構成されることができる。
【0068】
計測装置は、ヘキサポッド型計測装置とすることができる。
【0069】
駆動装置は、非ヘキサポッド型駆動装置とすることができる。
【0070】
駆動装置は、構造体を3自由度で作業容積の周りに動かすように構成することができる。
【0071】
3自由度は、3つの並進自由度とすることができる。
【0072】
計測装置は、構造体の位置を6自由度(3つの並進自由度と3つの回転自由度、すなわち位置と向き)で測定するよう構成することができる。
【0073】
計測装置および駆動装置はそれぞれ、機械における可動構造体と固定構造体との間に配置(例えば、接続)することができる。
【0074】
計測装置および駆動装置はそれぞれ、可動構造体および固定構造体の両方に接続または結合することができる。
【0075】
計測装置は、主に(例えば、50重量%または75重量%より大)炭素繊維などの複合材料、またはINVARまたはZERODURなどの他の材料で形成することができる。
【0076】
駆動装置は、複数のアクチュエータを並列配置で備えることができる。これは、例えば、従来の3軸(x、y、z)座標測定機(CMM)に存在するアクチュエータの直列配置とは対照的である。
【0077】
駆動装置は、計測装置の構成とは異なるタイプの並列配置で複数のアクチュエータを備えることができる。
【0078】
駆動装置は、主に(例えば、50重量%または75重量%より大)アルミニウムまたは鋼などのエンジニアリング材料で形成することができる。
【0079】
駆動装置は、可動構造体の位置を、計測装置の測定値に基づいて決定される位置とは無関係に決定可能な、対応するそれぞれの測定値を提供するために、計測装置のものとは別個の複数の測定変換器を備えることができる。換言すれば、駆動装置は、計測装置とは無関係にエンコードされ得る。
【0080】
駆動装置は、それに関連する少なくともいくらかの歪みが測定装置に伝わることを防止する結合装置を介して測定装置に結合することができる。
【0081】
結合装置は、運動学的または疑似運動学的結合装置とすることができる。このような結合装置は、冗長な制約をもたらすことなく、結合された部分間の6つの自由度を制約する。運動学的結合装置は、例えば、円すい、V溝、および平板配置を含み得る。
【0082】
結合装置は、複数の玉を含み得る。
【0083】
結合装置は、複数の弾性のスペーサまたはパッドを含み得る。
【0084】
可動構造体は、駆動装置に関連付けられた駆動部および計測装置に関連付けられた計測部を備えることができ、可動構造体の駆動部は、結合装置を介して可動構造体の計測部に結合される。
【0085】
可動構造体の計測部は、可動構造体の駆動部よりも低い熱膨張係数を有することができる。これら熱膨張係数の適切な代表値(相対値および絶対値)は、計測フレームおよび駆動フレームを参照して上述されている。可動構造体の計測部は、主に(例えば、50重量%または75重量%より大の)炭素繊維などの複合材料またはINVARまたはZERODURなどの他の材料で形成することができる。可動構造体の駆動部は、主に(例えば、50重量%または75重量%より大の)アルミニウムまたは鋼などのエンジニアリング材料で形成することができる。
【0086】
可動構造体の駆動部は、駆動装置に結合される。
【0087】
可動構造体の計測部は、計測装置に結合される。
【0088】
計測フレームは、可動構造体の計測部を含むと見なしてもよい。
【0089】
駆動フレームは、可動構造体の駆動部を含むと見なしてもよい。
【0090】
座標位置決め機械は、駆動装置に関連付けられた駆動部および計測装置に関連付けられた計測部を有する固定構造体を備えることができ、固定構造体の駆動部は、結合装置を介して固定構造体の計測部に結合される。
【0091】
固定構造体の計測部は、固定構造体の駆動部よりも低い熱膨張係数を有することができる。固定構造体の計測部は、主に(例えば、50重量%または75重量%より大の)炭素繊維などの複合材料またはINVARまたはZERODURなどの他の材料で形成することができる。固定構造体の駆動部は、主に(例えば、50重量%または75重量%より大の)アルミニウムまたは鋼などのエンジニアリング材料で形成することができる。
【0092】
固定構造体の駆動部は、駆動装置に結合される。
【0093】
固定構造体の計測部は、計測装置に結合される。
【0094】
計測フレームは、固定構造体の計測部を含むと見なしてもよい。
【0095】
駆動フレームは、固定構造体の駆動部を含むと見なしてもよい。
【0096】
駆動フレームは、計測フレームの一部ではない、固定構造体の部分で構成されていると見なすことができる。
【0097】
駆動フレームは、計測フレームの一部ではない、機械の部分で構成されていると見なすことができます。
【0098】
計測フレームは、完全に駆動フレーム内(例えば、その境界内)に設けることができる。逆に、駆動フレームは、完全に計測フレームの外側(例えば、境界の外側)に設けることができる。計測フレームは、駆動フレーム内から空間的に分離されている(例えば、重なっていない)場合がある。固定構造体の計測部と可動構造体の計測部の間に駆動フレームの一部が存在しない場合がある。固定構造体の計測部は、固定構造体の駆動部と可動構造体との間に設けることができる。そのような配置は、機械の組み立ておよび保守を容易にし、計測フレームと、駆動フレーム内の発熱駆動手段(例えば、モータ)との間に効果的な熱障壁をもたらす簡潔な機械構造体を提供する。
【0099】
可動構造体は、操作工具を支持する。換言すれば、操作工具は、計測装置が可動構造体に連結されているのと同時に、可動構造体によって支持される。そのような構成の座標測定機械は、例えば、単に較正される用意ができているに過ぎない(この場合、作業工具が適切な場所に存在しない)というのではなく、操作使用の用意ができている(作業工具が適切な場所にある)というものである。
【0100】
機械は、座標測定機械とすることもできる。
【0101】
機械は、コンパレータとすることもできる。
【0102】
操作工具は、表面感知デバイスまたは測定プローブとすることができる。
【0103】
機械は、工作機械とすることができる。
【0104】
操作工具は、材料を成形または機械加工するための、機械的な工具とすることができる。
【0105】
計測装置は、互いに並列で排他的に配置された、すなわち、測定変換器が互いに直列に配置されていない、測定変換器を含むことができる。
【0106】
計測装置は、その測定値に基づいて可動構造体の位置を決定できる、6つの対応するそれぞれの測定値を供するために、6つの測定変換器を並列配置で含むことができる。6つよりも少ない測定変換器を並列配置で有する計測装置は、ヘキサポッド型計測装置ではない(例えば、3脚装置は、ヘキサポッド型装置ではない)。
【0107】
計測装置は、駆動装置の異なるそれぞれの状態または構成によって結果として生じる作業容積内における可動構造体の異なる位置を測定するためのものであるとみなすことができる。換言すれば、計測装置は、駆動装置の第1の構成における可動構造体の位置(第1の位置)を測定し、次に、駆動装置は、第1の構成とは異なる第2の構成に移動し、計測装置は、駆動装置の第2の構成における可動構造体の位置(第2の位置)を測定する。駆動装置は、可動構造体を第1の位置から第2の位置に移動するために使用される機械の総ての部分を含むとみなすことができる。
【0108】
計測装置は、並列に配置された6つの伸縮可能な脚部を備えることができ、6つの測定変換器は6つの伸縮可能な脚部にそれぞれ関連付けられている。
【0109】
測定変換器は、干渉測定変換器とすることができる。
【0110】
駆動装置は、並列配置で6つより少ないアクチュエータを備えることができる。
【0111】
駆動装置は、並列運動学的装置とすることができる。
【0112】
駆動装置は、非デカルト装置とすることができる。
【0113】
駆動装置は、6つより少ないアクチュエータを備えることができる。
【0114】
駆動装置に関連するアクチュエータの並列配置は、計測装置に関連する測定変換器の並列配置とは異なり得る。
【0115】
駆動装置は、その測定値に基づいて可動構造体の位置を決定することが可能な、対応するそれぞれの測定値を提供するための複数の測定変換器を備えることができる。
【0116】
測定変換器は、光学的または画像ベースまたは写真測量の測定変換器とは対照的に、機械的測定変換器であり得る。
【0117】
測定変換器は、測長変換器とすることができる。伸縮可能な脚部などの機械の一部の長さを測定することは、伸縮可能な脚部の端など、機械の2つの部分間の距離間隔を測定することと同等であるとみなすことができる。変換器は、絶対値の長さまたは間隔を測定できないことがあるが、その長さなどに基づいて(例えば、機械の幾何モデルに基づいて)絶対値の長さまたは間隔を決定できる、長さまたは間隔の変化を測定することができる。長さを測定しないが、例えば他のセンサデータと組み合わせて位置を決定できるセンサの例は、加速度計(加速度センサ)、傾斜センサ、ジャイロスコープである。
【0118】
測定変換器は、駆動装置を制御するために使用される第2のクロックレートに匹敵する(例えば、少なくとも半分、または少なくとも同じ、または実質的に同じ)第1のクロックレートでサンプリングすることができる。
【0119】
測定変換器から受信した測定値によって、第1のクロックレートよりも低い第3のクロックレートで取得できる他のセンサまたは変換器データ(イメージセンサーからの写真測量データなど)を参照せずに、構造体の位置を決定することができる。
【0120】
第1のクロックレートは、1kHzより高く、より好ましくは10kHzより高く、より好ましくは15kHzより高いものとすることができる。
【0121】
計測装置は、計測装置が光学計測装置である場合の光学的にといった非接触方式で可動構造体に結合されることができる。
【0122】
計測装置は、計測装置がヘキサポッド型計測装置である場合など、可動構造体に機械的に結合されることができる。
【0123】
計測装置は、例えば、光学的または画像ベースまたは写真測量の装置とは対照的に、機械的計測装置とすることができる。
【0124】
計測装置は、可動構造体に機械的に結合することができる。
【0125】
伸縮可能な脚部は、固定構造体における点と可動構造体における点との間の距離間隔を変化させることを可能にする機械的装置(例えば、機械的リンク機構)を含むことができる。
【0126】
可動構造体は、作業容積の周りを動くべき対象物を支持または運ぶように構成されることが可能である。対象物は、作業容積内で取られおよび/または配置される対象物であり得る。対象物は、作業空間に位置する、ワークピースなどの別の対象物と相互作用したり、操作したりするための工具とすることができる。工具は表面感知デバイスであり得る。表面感知デバイスは測定プローブであり得る。測定プローブは接触プローブであり得る。接触プローブは、使用時にワークピース表面と物理的に接触して測定を行うスタイラスを含むことができる。測定プローブは非接触プローブであってもよい。非接触プローブは光学プローブとすることができる。工具には、ワークピースの表面を撮像するためのカメラが含まれ得る。工具は、金属または他の剛性材料を成形または機械加工するための工作機械に通常見られる機械的工具とすることができる。
【0127】
可動構造体は、可動構造体に結合された計測装置および駆動装置を備えた操作工具を運ぶように構成されてもよい。座標位置決め機械は、可動構造体に既に結合されて意図された操作を実行する用意ができている操作工具でセットすることができる。換言すれば、座標位置決め機械は、単に較正のためではなく、操作のためにセットされてもよい。
【0128】
ヘキサポッド型計測装置は、操作工具を可動構造体に取り付けるために使用されるものとは異なる取り付け具によって可動構造体に結合されることができる。
【0129】
ヘキサポッド型計測装置は、可動構造体に直接結合することができる。
【0130】
“変換器”は、本明細書では、物理量の変動を電気信号(長さの変化を測定または感知する本明細書に記載の測定変換器などの“センサ”)に、またはその逆に電気信号から物理量(入力または駆動信号に基づいて構造体に動きをもたらす、本明細書に記載のモータおよび関連する駆動リンク機構などの“アクチュエータ”)に変換するデバイスであると見なすことができる。構造体の“位置”を測定することは、構造体の位置および/または向きを適切な数の自由度で測定することとして理解されるべきである。例えば、位置が6自由度で測定される場合、構造体の位置と向きの両方が決定される。ただし、位置が3自由度でのみ測定される場合、これには構造体の向きの決定が含まれる場合と含まれない場合がある。“位置の測定”という用語は、それに応じて解釈されるべきものである。
【0131】
本発明の第5の態様によれば、上述した態様のいずれかによる座標位置決め機械を制御する方法が提供され、方法は、工具を可動構造体に結合し、駆動装置を用いて、同じく可動構造体に結合された計測装置を備えた作業容積の中で工具を動かし、工具を用いた操作を実行する、工程を有する。
【0132】
方法は、計測装置を用いて、作業容積内の操作のための工具の位置を決定することを含むことができる。
【0133】
方法は、決定された位置を実行された操作に関連付けることを含むことができる。
【0134】
操作は測定操作とすることができる。操作は機械加工操作とすることができる。
【0135】
工具は測定プローブであり、操作は作業容積に配置されたワークピースのタッチトリガ測定を行うなどの測定操作とすることができる。
【0136】
方法は、工具ではなく構造体の位置、または工具と構造体の組み合わせに基づいて実行することができる。
【0137】
本発明の第6の態様によれば、座標位置決め機械用のコントローラが提供され、コントローラは、本発明の第5の態様による方法を実行するように構成される。
【0138】
本発明の第7の態様によれば、座標位置決め機械コントローラによって実行されると、コントローラに本発明の第5の態様による方法を実行させるか、または、座標位置決め機械コントローラにロードされると、座標位置決め機械コントローラを、本発明の第6の態様による座標位置決め機械コントローラにする、コンピュータプログラムが提供される。プログラムは、担持媒体に担持されることができる。担持媒体は記憶媒体であり得る。担持媒体は伝送媒体であり得る。
【0139】
本発明の第8の態様によれば、座標位置決め機械コントローラを制御して本発明の第5の態様による方法を実行するためのコンピュータプログラム命令が格納されたコンピュータ可読媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0140】
ここで、例として、添付の図面を参照する。
【
図1】
図1は、前述したように、6つの伸縮可能な脚部を有する
ヘキサポッド型座標位置決め機械の模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の
ヘキサポッド型座標位置決め機械の模式的側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態が基づいており、計測装置および別個の駆動装置を有する座標位置決め機械の模式的側面図である。
【
図4】
図4は、本発明を具現化する座標位置決め機械の模式的側面図であり、計測装置が駆動装置からある程度切り離されて示されている。
【
図5】
図5は、
図4の座標位置決め機械の実用的な実施形態の第1の斜視図を示している。
【
図9A】
図9Aは、本発明の実施形態の動作を模式的に示す図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の実施形態の動作を模式的に示す図である。
【
図9C】
図9Cは、本発明の実施形態の動作を模式的に示す図である。
【
図9D】
図9Dは、本発明の実施形態の動作を模式的に示す図である。
【
図9E】
図9Eは、本発明の実施形態の動作を模式的に示す図である。
【
図16A】
図16Aは、異なるタイプの非
ヘキサポッド型駆動装置を有する実施形態を模式的に示す図である。
【
図16B】
図16Bは、異なるタイプの非
ヘキサポッド型駆動装置を有する実施形態を模式的に示す図である。
【
図18A】
図18Aは、
図16Aおよび16Bの実施形態の変形例を模式的に示し、計測装置が駆動装置からある程度分離されていることを示している。
【
図18B】
図18Bは、
図16Aおよび16Bの実施形態の変形例を模式的に示し、計測装置が駆動装置からある程度分離されていることを示している。
【
図19】
図19は、
図16Aおよび
図16Bの実施形態の変形例を、トップダウンではなくボトムアップの
ヘキサポッド型計測装置で模式的に示している。
【
図20】
図20は、
図16Aおよび
図16Bの実施形態の変形例を模式的に示し、
ヘキサポッド型計測装置に固定長の計測ストラットが用いられることを示している。
【
図21】
図21は、
図20の実施形態の変形例を模式的に示し、計測ストラットにオフセット支点板が用いられることを示している。
【
図22】
図22は、デルタロボットタイプの非
ヘキサポッド型駆動装置を有する実施形態を模式的に示している。
【
図23】
図23は、
図22の実施形態の変形例を概略的に示しており、計測装置と駆動装置との間の分離の量が増していることを示している。
【
図24】
図24は、
図22の実施形態の変形例を模式的に示し、計測装置と駆動装置との間の分離の量が減少していることを示している。
【
図25】
図25は、直列の運動学的タイプの非
ヘキサポッド型駆動装置を有する実施形態を模式的に示している。
【
図26】
図26は、直列の運動学的タイプの非
ヘキサポッド型駆動装置を有する別の実施形態を模式的に示している。
【
図27】
図27は、計測装置よりも自由度が少ない駆動装置を提供する概念を示している。
【
図28】
図28は、
ヘキサポッド型駆動装置の動きが制約される、二重の
ヘキサポッド型装置を示している。
【
図29】
図29は、本発明を具体化する座標位置決め機械を制御する方法を表すフロー図である。
【
図30】
図30は、本発明の一実施形態における計測装置と駆動装置との間で用いるのに適した運動学的結合部の斜視図である。
【
図33】
図33は、
図30の結合部の第2の部分に関する球が第1部分のV溝内にどのように着座するかを示している。
【
図34】
図34は、V溝内に着座する球によって作られる6つの接触点を示している。
【
図35】
図35は、結合部の第1部分と第2部分が異なる熱膨張を受けるときに接触点がどのように動くかを示している。
【
図36】
図36は、本発明の実施形態における計測装置と駆動装置との間で用いるのに適した別の形態の運動学的結合部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0141】
図1を参照して上述した座標位置決め機械1の側面図が、
図2に模式的に示されている。座標位置決め機械1は、機械1の作業容積14内で移動可能な上部構造体2を備える。6つの伸縮可能な脚部6は、上部構造体2を作業容積14において動かすための
ヘキサポッド型駆動装置18(実線で示されている)と、作業容積14内で上部構造体の位置を測定するための同じく
ヘキサポッド型計測装置16(点線で示されている)の両方を形成する。従って、座標位置決め機械1は、駆動ストラットと計測ストラットを組み合わせたものである。
【0142】
比較で示すと、本発明の実施形態が基にしている座標位置決め機械21が
図3に模式的に示されている。
図2の機械と同様に、座標位置決め機械21は、機械21の作業容積34内で移動可能な上部構造体22、上部構造体22を作業容積34において動かすための駆動装置28(実線で示される)、および作業容積34内の可動上部構造体22の位置を測定するための計測装置26(点線で示される)を備えている。
【0143】
図2に示す座標位置決め機械1では、
ヘキサポッド型計測装置16と
ヘキサポッド型駆動装置18が組み合わされているが、
図3に示す本発明を具現化する座標位置決め機械21では、駆動装置28は、計測装置26とは、異なりまた個別のものである。このようにして計測装置26を駆動装置28から分離することにより、技術的な利点が得られるが、それは、これらの2つの異なる装置を極めて異なる(場合によっては競合する)技術的考慮事項を考慮して設計できるからである。
【0144】
計測装置26を駆動装置28から分離および区別することによって、駆動装置28を比較的軽量かつ高速にすることができ、それによって、構造体22を、高い加速度および方向の急速な変化を伴って作業容積34において迅速に動かすことができる。重量や速度などの要素に焦点を合わせると、駆動装置28の位置精度がある程度犠牲になることがあるが、これは、代わりに位置精度を考慮して設計された計測装置26を提供することによって解消される。
【0145】
計測装置26は受動的であり、重量を加えまた熱を発生する駆動構成要素を必要としないため、(距離を測定するために用いられる測定スケールを含む)部品の慣性および熱歪みによって引き起こされる計測誤差を制御および低減することができる。
【0146】
駆動装置28とは別個でまた異なっている測定装置26を用いることによって、可動構造体を作業容積において迅速に駆動でき、しかも要求の厳しい位置決め用途に求められる精度を維持できる座標位置決め機械21を得ることができる。
【0147】
そのような設計により、特に高精度を念頭に設計されていない駆動装置28として比較的安価な既製の駆動機構を選択することも可能になり、専用の計測装置26によって結合されて必要な精度をもたらし、従って、生産コストを下げることができる。
【0148】
機械的計測装置は低摩擦接合部を持つことで利益を得ることもあるが、駆動装置は通常、特に負荷がかかっている場合に、より高い摩擦を必然的に持つことになる、より堅牢で実質的な接合部を必要とし、そのため計測装置26を駆動装置28から切り離すことで解消する設計上の矛盾が存在する。計測装置26の接合部は、より低摩擦のタイプとすることができ、また、駆動装置28と同じ負荷を受けることはない。結果として、測定装置26を駆動装置28から分離することにより、ワークピースに近づく方向に応じて異なる測定値が記録されることになるヒステリシス効果を低減することができる。
【0149】
図3の座標位置決め機械21では、計測装置26は
ヘキサポッド型装置であり、一方、駆動装置28は非
ヘキサポッド型装置(すなわち、
ヘキサポッド型装置以外または
ヘキサポッド型装置とは異なるもの)である。
ヘキサポッドベースの計測装置26を用いることによって、
ヘキサポッドが、その距離から6自由度の位置の非常に正確で信頼性の高い決定を導くことができる距離を直接測定することを可能にする並列配置の測定変換器を有した、堅牢な機械システムを与えるため、特に有益である。
【0150】
ヘキサポッドベースの計測装置26はまた、移動構造体22の位置を決定またはサンプリングすることができる速度に関して、いくつかの画像ベースの計測装置よりも優れている。画像ベースの(写真測量)計測装置の場合、サンプリングレートは、本質的に画像センサのサンプリングレートによって制限され、さらに、移動プラットフォームの位置を導出するために大量の画像情報に基づいて複雑な計算を実行するのにかかる時間によって制限される。例えば、特許文献12の画像ベースのシステムに関しては、“画像検出器によって供給されるフレームレートは通常、数百ヘルツに過ぎない”と述べられており、これは、振動などの望ましくない高周波の動きを検出することを回避できることから利点であると記載されている。
【0151】
しかしながら、本出願人は、ヘキサポッド型計測装置の伸縮可能な脚部に関連する測定変換器からのデータの直接サンプリングによって、はるかに高い動的帯域幅を達成できることを認識している。例えば、機械コントローラは通常、アブソリュートエンコーダから65μs(15kHz)ごとに位置データを要求することがあるが、より高いサンプリングレートも可能である。相対値エンコーダシステムは連続正弦波出力を生成し、これにより、連続出力をサンプリングできる速度によってのみ制限される、さらにより細かな動作制御が可能になる。画像ベースのシステムとは異なり、これらの値から可動構造体の位置を決定するために必要な計算は過度に時間がかかることはない。
【0152】
画像ベースのシステムの特許文献12は、対応する測定値のセットを独立して与える並列配置の測定変換器を用いることを記載しておらず、ここで、セットの各測定値は、動くプラットフォームの異なる点と固定構造体の点との間の距離ないし距離間隔を直接表しまたは関係しており、測定値から動くプラットフォームの位置および/または向きを決定できる。特に、特許文献12は、ヘキサポッド型計測装置を用いることについては記載していない。
【0153】
図1に示すような
ヘキサポッド型駆動装置では、6つのストラットのそれぞれに、関連するストラットの一部を必然的に構成する、つまりストラットと共に動くモータを必要とする。従って、
ヘキサポッドを作動させて可動構造体を作業容積において動かすと、比較的重いモータ部品の重量も動くこととなる。この余分な質量を動かす必要がある場合、駆動装置の潜在的な速度(または加速度)が低下し、機械内にさらなる熱が発生し、これが計測装置に至ると悪影響を生じる。
図3に示すような非
ヘキサポッド型駆動装置が提供されることによって、モータ部品を可動部品から他へ移すことができることから、これらの問題を解消できる。
【0154】
さらに、可動構造体22に6自由度より少ない自由度の動きをもたらす非ヘキサポッド型駆動措置を用いることによって、必要なアクチュエータを少なくでき(つまり、ヘキサポッドに必要な6つのアクチュエータよりも少なくでき)、これによって、コストと複雑さが削減され、さらにモータ部品の発熱が少なくなるため発生する熱量を少なくでき、結果として、計測結果を改善することができる。
【0155】
図3の
ヘキサポッド型計測装置26は、
図1および
図2の
ヘキサポッド型装置と概して類似しているが、駆動をもたらすために必要とされるいかなるアクチュエータまたはモータの構成要素がない。この例の駆動装置28は、例えば特許文献13に開示されているような、いわゆる“3滑り”装置であり、実質的に平行に配置された3つの対応するそれぞれの線形軌道51に沿って移動する3つのキャリッジ56を有する。これらの装置を、
図5~
図8を参照して以下でより詳細に説明する。
【0156】
再び
図3を参照すると、座標位置決め機械21は、機械21の固定構造体の一部を形成する下部構造体24を備え、下部構造体24にはワークピース29が取り付けられている。測定プローブ30は、上部構造体22で支持されており、それによって、作業容積34を動くことができる。作業容積34は、上部構造体22と下部構造体24が最も離れた位置にあるときに、それらの間に画定され、プローブ構成要素30は、駆動装置28の操作によって作業容積34内に配置される。
【0157】
また、
図3には、駆動装置28を制御して構造体22の所望の動きを生じさせるためのコントローラCが模式的に示されており、コントローラCは、ハードウェアまたはソフトウェアまたはそれらの組み合わせで実装することができる。明瞭さと簡潔さのために、コントローラCは後続の図面からは省略されている。
【0158】
本発明の一実施形態を
図4に示す。駆動装置28と計測装置26との間のさらなる距離間隔を設けるために、駆動装置28は、結合装置38を介して計測装置26に結合され、これによって、(以下でより詳細に説明するように)駆動装置28に関連する少なくともいくらかの熱的に誘導される歪みが計測装置26へ伝わるのを防ぐことができる。結合装置38は、可動構造体22に関連する第1の結合部38aと、固定構造体24に関連する第2の結合部38bとを含む。
【0159】
図4に示す模式的な実施形態では、可動構造体22は、計測装置26に関連付けられた計測部22aと、駆動装置28に関連付けられた駆動部22bとを含み、ここで、可動構造体22の計測部22aは、第1の結合部38aを介して可動構造体22の駆動部分22bに結合されている。可動構造体22の計測部22aは、計測装置26に結合される。可動構造体22の駆動部22bは、駆動装置28に結合される。
【0160】
同様に、固定構造体24は、計測装置26に関連する計測部24aと、駆動装置28に関連する駆動部24bとを含み、ここで、固定構造体24の計測部24aは、第2の結合部38bを介して固定構造体24の駆動部24bに結合されている。固定構造体24の計測部24aは、計測装置26に結合される。固定構造体24の駆動部24bは、駆動装置28に結合される。
【0161】
この例では、結合装置38の各結合部38a、38bは、運動学的または疑似運動学的な結合部の形態である。物体を別の物体に相対的に配置するという観点において、運動学的設計の考慮事項は、最小限の数の制約を用いて物体の運動の自由度を制約することで対処でき、特に過剰な制約を回避する必要がある。過剰制約を行うと、2つの物体間に複数の接触点が生じ、一方の物体が他方に対して複数の位置で静止する可能性がある。結果として、いくつかの位置のどこで物体が静止するかわからないため、物体の位置は再現できない。特に、過剰制約がある場合、所定位置の制約の間に矛盾があり、その結果、どの制約の組み合わせで物体の実際の位置が決まるかを確実に判断することができない。これらの考えは、非特許文献1に記載されている。
【0162】
このような運動学的結合は、理想的な制約を与えるための最小数の接触点(または点状接触)を備えており、結合部の片方の歪みが結合部の他方に伝わる際の歪みを分離するのにも極めて効果的である。従って、第1の結合部38aは、可動構造体22の駆動部22bの(駆動装置28からその部分に作用する力に起因する)歪みが計測部22aに(従って、計測装置26に)伝わるのを防ぐのに役立ち、また、固定構造体24に関する第2の結合部38bについても同様である。これについては、
図30~
図36を参照して以下で詳細に説明する。
【0163】
これは、駆動フレーム37(すなわち、計測フレーム36の他の部分であり、可動構造体22の駆動部分22b、固定構造体24の駆動部分24b、駆動装置28、線形起動51およびキャリッジ56を含む、)から良好な機械的離隔がある、明確に描写された計測フレーム36(すなわち、固定構造体24の計測部分24a、可動構造体22の計測部分22a、および計測装置26)をもたらす。
【0164】
第1および第2の結合部38a、38bによって与えられる機械的離隔は、駆動フレーム37の駆動または負荷に関連した歪みを計測フレーム36から切り離すのに効果的であるだけでなく、駆動フレーム37の熱的な膨張と収縮の影響を計測フレーム36から切り離すのにも効果的である。さらに、計測フレーム36は、熱膨張係数(CTE)が低い材料で形成されており、これにより熱環境の変化による影響を実質的に受けないことを維持することができる。計測フレーム36と駆動フレーム37との間の第1および第2の結合部38a、38bはまた、確実に、駆動フレーム37を構成する装置のそれらの部分の熱的な膨張または収縮によって計測フレーム37の歪みが誘発されないようにし、少なくとも、確実に、計測フレーム37のそのような歪みが少なくとも低減されるようにする。
【0165】
例えば、計測装置26(
図5~
図8を参照して以下でより詳細に説明される)の伸縮可能な脚部は、炭素繊維などの複合材料で形成され、一方、固定構造体24の測定部24aおよび可動構造体22の計測部22aは、INVAR(登録商標)またはZERODUR(登録商標)などの材料、あるいは炭素繊維などの複合材料で形成することができる。ただし、このようなCTEが低い材料は機械加工が難しいことが多く、通常、アルミニウムなどの標準的な、工場で用いられる材料よりも大幅に高価である。アルミニウムは、炭素繊維、INVAR、ZERODURなどの材料よりもはるかに高いCTEを持っているが、第1および第2の結合部38a、38bによってもたらされる機械的/熱的絶縁により、駆動フレーム37と計測フレーム36との間の熱膨張/収縮の差に起因して計測フレーム36に歪みをもたらすことなく、このようなアルミニウムなど従来の材料で駆動フレーム37の重要な部分を形成することが可能になる。
【0166】
例えば、固定構造体24の計測部24aおよび可動構造体22の計測部22aの一方または両方は、炭素繊維(および計測装置26の伸縮可能な脚部)で形成され得る一方で、固定構造体24の駆動部24bおよび可動構造体22の駆動部22bの一方または両方をアルミニウムまたは鋼で形成することができる。例えば、(アルミニウムまたは鋼で形成される)駆動プラットフォーム22bは、それが(結合部38aを介して)結合される(炭素繊維で形成される)計測プラットフォーム22aよりも、温度の変化によって膨張および収縮するが、結合部38aの特性によって、差力を誘発することなく一方が他方に対して膨張および/または収縮することを可能にする。すなわち、結合部の一方側の形状は、応力を誘発または伝えることなく、結合部の他方の側の特形状面を滑ることを許容している。同じことが、もう一方の端の計測プラットフォーム24aおよび結合された駆動プラットフォーム24bにも当てはまる。このことは、周囲温度が変化する環境で計測に大きな利点をもたらすことがわかっている。
【0167】
この実施形態では、各結合部38a、38bは、運動学的設計原理に従った3つの接触点を与える3つの球の組を含む(
図4の模式図には2つだけが示されている)。剛体の球の代わりに複数の弾性のスペーサないしパッド、例えば、三角形の角に配置された3つのそのようなスペーサを用いることも有益である。これは、接点が点状ではなく、弾性スペーサの小さな領域に広がっていたとしても、一定程度の運動学的結合をもたらす。弾性スペーサ(例えばゴム製)を用いることは、それが駆動フレーム37の振動および/または熱膨張/収縮を吸収するように作用するので、その振動などが計測フレーム36(および特に計測装置26)に伝わらないので有益である。運動学的結合部38a、38bに剛性球を用いる代わりに、例えばゴム製の、ある程度柔軟性を有する球を用い、可動構造体22および/または固定構造体24に対して法線方向における膨張および/または収縮の差を少なくともある程度吸収するようにすることも可能である。
【0168】
また、そのような結合部は、両端に(すなわち、可動構造体22および固定構造体24に関連して)、または一端のみに(すなわち、可動構造体22および固定構造体24の一方のみに関連して)設けられ、または全く無い(すなわち、可動構造体22および固定構造体24のどちらにも無い)ことが理解できる。
【0169】
次に、
図5~
図8を参照して実施形態をより詳細に説明するが、これら図は、
図3および
図4の極めて模式的な図よりも、機械構造をより詳細に表している。
【0170】
図5~
図8に示される
ヘキサポッド型計測装置26は、上部構造体22と下部構造体24との間に配置された、概して同じ構造体の6つの伸縮可能な脚部60を備える。
図4に示したように、可動構造体22は、計測装置26に関連付けられた計測部22aと、駆動装置28に関連付けられた駆動部22bとを含み、ここで、可動構造体22の計測部22aは第1の結合部38aを介して可動構造体22の駆動部22bに結合されている。可動構造体22の計測部22aは、玉継ぎ手68を介して計測装置26に結合されている。可動構造体22の駆動部22bは、玉継ぎ手58を介して駆動装置28に結合されている。
【0171】
同様に、固定構造体24は、計測装置26に関連する計測部24aと、駆動装置28に関連する駆動部24bとを含み、ここで、固定構造体24の計測部24aは、第2の結合部38bを介して固定構造体24の駆動部24bに結合されている。固定構造体24の計測部24aは、計測装置26に結合されている。固定構造体24の駆動部24bは、駆動装置28に結合されている。
【0172】
6つの伸縮可能な脚部60のそれぞれは、上部管64および下部管62を備え、下部管62は上部管64内で伸縮自在にスライドすることができる。伸縮可能な脚部60は、概略、特許文献14および国際特許出願PCT/GB2017/050909号に記載されているものと同様の構造であるが、この実施形態では、伸縮可能な脚部を駆動する必要がなく、従って、モータ関連の構成を必要としない。但し、伸縮可能な脚部60の全体的な構造は、概して類似している。
【0173】
図5~
図8に示す例では、下部構造体24は固定されており、上部構造体22は、6つの伸縮可能な脚部60の操作によって下部構造体24に対して動くことができ、測定プローブ30は上部構造体22の下面に装着されている。この構成では、ワークピース(
図5~
図8では不図示)は、下部構造体24の計測部24aの上に取り付けられ、それによって、機械21の作業容積は、上部および下部構造体22、24それぞれの計測部22a、24aの間に存在する。測定プローブ30は、ワークピースに接触する先端を備えたスタイラスを含み、測定プローブ30は、軸32を介して可動構造体22の計測部22aに接続されている。
【0174】
伸縮可能な脚部60は、可動構造体22によって支持される構成要素(図示の例では、構成要素は測定プローブ30である)、または機械の作業容積内の少なくとも構成要素の特定の部分(例えば、測定プローブの先端)を配置する(すなわち、位置を決定する)ためのものである。
【0175】
各伸縮可能な脚部60の上端および下端は、個々の玉継ぎ手68を介して、上部構造体22(具体的には、上部構造体22の計測部22a)および下部構造体24(具体的には、下部構造体24の計測部24a)にそれぞれ接続されている。各伸縮可能な脚部60の上部および下部管62、64は、
図5の伸縮可能脚部の1つに破線の輪郭で示される、細長い部材66を囲み、細長い部材66にはエンコーダスケール10が取り付けられている。細長部材66は、それ自体、例えば伸縮式の構成によって伸縮可能なものである。各細長部材66は、その上部継手68からその下部継手68まで延在しており、上部構造体22の計測部22a(従って、測定プローブ30)の正確な位置決めおよび向きを決定するのは、細長部材66のそれぞれの長さである。従って、スタイラスの先端がワークピースの面と接触したときの正確な位置を決定するために、ワークピースの測定または走査の操作中に正確に測定しなければならないのは細長部材66の長さである。
【0176】
この実施形態における駆動装置28は、例えば、特許文献15に記載されている、いわゆる“3滑り”装置である。3滑り装置は、可動構造体22と固定構造体24との間に並列に接続された実質的に同じ設計の3つの機械的リンク機構50によるものである。各機械的リンク機構50は、固定長の2つの実質的に平行な剛性ロッド52、54を含み、可動構造体22が作業容積34を動くときに、可動構造体22を実質的に一定の向きに維持するように作用する。各機械的リンク機構50はまた、キャリッジ56を備え、ロッド52、54は、それらの下端でキャリッジ56に、そしてそれらの上端で、玉継ぎ手58を介して可動構造体22の駆動部分22bに、それぞれ枢動可能に結合される。
【0177】
3つの直線軌道51は、固定構造体24の駆動部24b上に実質的に垂直に(実質的に平行に)配置され、ここで、3つのキャリッジ56が、3つの直線軌道51に沿って(上下に)移動するように配置されている。3つの直線軌道51は、座標位置決め機械21の固定構造体の一部を効果的に形成し、固定構造体24(具体的には、固定構造体24の駆動部24b)の拡張とみなすことができる。各キャリッジ56は、線形駆動機構によってその対応するそれぞれの軌道51に沿って実質的に線形に駆動され、ここで、線形駆動機構の位置は、
図3の参照符号29によって概略的にマークされている。線形駆動機構は、線形モータを含むことができる。線形駆動機構は、ステッパモータを含むことができる。
【0178】
従って、各機械的リンク機構50は、固定構造体(線形軌道)51と機械的リンク機構50との間で作用する駆動機構によって作動される。より具体的には、駆動機構は、固定構造体(線形軌道)51と、機械的リンク機構50の端部、すなわちキャリッジ56との間で作用する。換言すると、駆動機構は機械的リンク機構を固定構造体に直接結合し(“グランドに結合し”)、それらの間に力を与えて、(線形駆動機構の場合)機械的リンク機構を押したり引いたりし、または(回転駆動機構の場合)機械的リンク機構を回転させる。駆動機構と固定構造体との間に追加の可動リンク機構はなく、そのような追加のリンク機構は、駆動機構自体によって生成されない機械的リンク機構の被駆動部分の動きを引き起こすことがある。
【0179】
例えば、
図5~
図8に(そして
図3および
図4にさらに概略的に)示されている“3滑り”駆動構成では、各キャリッジ56は、そのキャリッジ56に関連するモータ(不図示)の作用によってそれぞれの軌道51を直線的に上下に駆動され、他のキャリッジ56に関連する他のモータの作用によって駆動されることはない。典型的な
ヘキサポッド型駆動装置の場合(
図1に示すように)、個別の伸縮可能脚部のモータは脚部をその長さに沿って直線的に伸縮できるだけであるが、使用に際して各脚部は横方向にも動く。すなわち、脚部(および関連するモータ)の横方向の動きは、他の脚部における他のモータの作用に起因し、それによって、各モータは実際に他のストラットの重量を(それぞれのモータと共に)動かしていることになる。
【0180】
従って、
図3~
図8に示すような駆動装置は、可動部品を比較的軽量に保つことができ、この例では、薄くて軽いロッド52、54とすることができ、(
図1に示すような6つの伸縮可能脚部を備えた典型的な
ヘキサポッド型駆動装置のように)、各モータは他のモータの重量を動かすことはない。これにより、高い加速度と迅速な方向転換で素早く動くことが可能な軽量の駆動装置が可能になる。
【0181】
計測装置26の6つの伸縮可能な脚部60それぞれの伸縮構造は、駆動装置28の機械的リンク機構50のそれぞれの非伸縮構造と対比されるべきである。伸縮式の装置では、装置の一部は、伸縮して内側にまたは少なくとも他の部分に沿って直線的に滑動しまたは動き、この動きの間、一部は互いに実質的に整列状態を維持する。しかしながら、これは、本実施形態の駆動装置28には当てはまらない。なぜなら、各キャリッジ56が、対応するそれぞれの軌道51に沿って直線的に動くので、装置の一部(剛性ロッド52、54)は、装置の他の部分(軌道51)と実質的に整列状態を維持せず、または、他の部分に対して一定の角度でさえ維持せず、駆動装置28が作動されるとこれらの2つの部分の間の角度が変化する。
図3~
図8に示される駆動装置28は、従って、非伸縮式駆動装置として説明することができる。しかしながら、駆動装置28の並列リンク機構のそれぞれは、それが伸縮自在に伸長できるものでないとしても(すなわち、それが伸縮自在に伸長できる脚部でないとしても)、人の脚が伸縮自在でなくても伸縮可能であると説明されるのと同じように、依然として伸縮可能な脚部であるまたは伸縮可能な脚部をもたらすものと見なすことができる。伸縮可能な装置は、どのようなタイプの装置であっても、2つの点の間の距離間隔を変えることが可能な装置であると見なすことができる。
【0182】
より概略的な体裁に戻り、
図9A~
図9Eを参照して、実施形態の3滑りの操作を説明する。
図9A~
図9Eのそれぞれは、
図3で使用されたものと同様の表現を用いており、2つのキャリッジはそれぞれ56aおよび56bとして識別され、2つの線形軌道はそれぞれ51aおよび51bとして識別されている。簡潔にするために、
図4を参照して上述した結合装置38は、
図9A~
図9Eには示されていないが、本発明の実施形態では(可動構造体22または固定構造体24のいずれかまたは両方に)存在する。
【0183】
図5~
図8を参照して上述した並列ロッド52、54によってもたらされる制約によって、(3滑り駆動装置28の操作による)可動構造体22の動きは、3つの並進自由度に制限され、その結果、可動構造体22が作業容積を移動するとき、可動構造体22は実質的に一定の向きを保持する。3自由度の動きに対するこの制約は、
図9Aの3DOFというラベルの付いた矢印で示されている。
【0184】
一方、6つの対応する測定変換器を並列配置で含む
ヘキサポッド型計測装置26の6つの伸縮可能な脚部60によって、その測定値に基づいて可動構造体の位置を、
図9Aの6DOFというラベルの付いた矢印で示されるように、6自由度総てで決定できる、6つの対応するそれぞれの測定値が与えられる。
【0185】
図9Bに示すように、それぞれの軌道51a、51bに沿って、キャリッジ56aを下げ、キャリッジ56bを上げると、機械的リンク機構50のロッド52、54が固定長であることから、可動構造体22は(測定プローブとともに)、作業容積内を左方かつ下方に動き、実質的に同じ向きを維持する。これにより、キャリッジ56aに最も近い伸縮可能脚部60が短くなり、キャリッジ56bに最も近い伸縮可能脚部60が長くなり、これらの長さの変化が、伸縮可能な脚部60内の測定変換器(例えば、エンコーダ)10によって測定される。それらの変換器測定値に基づき、作業容積34内の可動構造体22の位置を決定することができ、また、測定プローブ30は可動構造体22に対して既知の固定された空間関係にあることから、測定プローブ30(およびプローブ先端)の位置も同様に決定できる。
図9Cは、
図9Bと同じであるが、明瞭にするために移動の表示はなく、それにより移動操作後の構成要素の最終的な位置を示している。
【0186】
同様に、
図9Dに示すように、それぞれの軌道51a、51bに沿って、キャリッジ56aを上げ、キャリッジ56bを下げることにより、可動構造体22(およびそれとともに測定プローブ30)を、作業容積34内を右方向に動かし、再び実質的に同じ向きを維持することができる。これにより、キャリッジ56aに最も近い伸縮可能な脚部60が長くなり、キャリッジ56bに最も近い伸縮可能な脚部60が短くなり、これらの長さの変化が、伸縮可能な脚部60内の測定変換器(例えば、エンコーダ)10によって測定される。これらの変換器の測定値に基づき、作業容積34内の可動構造体22および測定プローブ30の位置を決定することができる。
図9Eは、
図9Dと同じであるが、明瞭にするために移動の表示がなく、それにより、移動操作後の構成要素の最終的な位置を示している。
【0187】
上述の3滑りの実施形態では、
ヘキサポッド型計測装置26の伸縮可能脚部60および駆動装置28のロッド50は、底部から上方に延び、従って、その実施形態は、“ボトムアップ”装置として説明することができる。
図10は、代替の“トップダウン”装置を示し、これは、
ヘキサポッド型計測装置26の伸縮可能な脚部60および駆動装置28のロッド50が上から下に延在すること(それ故、“トップダウン”装置)を除いて、概略“ボトムアップ”装置と同じである。これを可能にするために、
ヘキサポッド型計測装置26を支持するためにフレーム25aが提供され、結果として、フレームは上部から効果的に“吊るす”ことができる。フレーム25aは、固定構造体24(この場合、固定構造体24の6脚部24a、すなわち、計測フレーム36の動かない部分)への拡張として、座標位置決め機械21の固定構造体の一部を効果的に形成する。前述の実施形態と同様に、結合装置38a、38bは、計測フレーム36(特に計測装置26)を駆動フレーム37(特に駆動装置28)から分離するために設けられる。
【0188】
さらに別の“トップダウン”装置が
図11に概略的に示されている。この装置は、
ヘキサポッド型計測装置26が上部の周りに延在するフレーム25によって支持されており、3滑り駆動装置28の内側に設けられているという点で、
図10の実施形態とは異なる。フレーム25は、フレーム25の一部にもなる垂直線形軌道51と共に固定構造体24への拡張として、座標位置決め機械21の固定構造体の一部を効果的に形成する。
図11の実施形態は、計測装置26を駆動装置28から分離するための結合装置38をこの場合ももたらすが、
図11の実施形態では、結合装置は可動構造体22にのみに存在し固定構造体24には無い。測定プローブ30は、可動構造体22の計測部22aの下面に取り付けられ、可動構造体22の駆動部22bに接触することなく(例えば、可動構造体の駆動部22bに形成された開口を通って)駆動部22bを通って延在する。
【0189】
図13~
図15との比較のために、
図12は、
図5~
図8を参照して上述したものに密接に対応する実際の3滑り実施形態を示すためのものであり、主に閉じた駆動フレームを有する点が異なり、駆動フレームの上部プレートによって垂直軌道51に追加の剛性と安定性が与えられている。前述の実施形態と同様に、
図12の計測フレームは、上部(すなわち、可動構造体)および下部(すなわち、固定構造体)の両方において、少なくともある程度、駆動フレームから切り離されている。
【0190】
図13は、
図11に模式的に示されている“トップダウン”装置の実際の実施形態を示しているが、可動構造体で駆動フレームと計測フレームをある程度分離している点で
図11の例とは異なる。
図14は
図13の変形例であり、可動構造体と固定構造体の両方で駆動フレームと計測フレームの分離をもたらす。
図15は、さらなる変形例であり、駆動フレーム内に配置された別個の計測フレームを有し、ここでは、可動構造体と固定構造体の両方で計測フレームから駆動フレームを分離している。
【0191】
本発明は、駆動装置28が3滑りの形態である実施形態に限定されないことが理解される。
図16Aは、
ヘキサポッド型計測装置26が異なるタイプの非
ヘキサポッド型駆動装置28に結合されている実施形態を模式的に示している。
図16Aの実施形態では、3滑り実施形態のように、その一端がキャリッジ56によって軌道51に沿い直線的に駆動される固定長のロッド52ではなく、固定長の延長ロッドが、代わりに旋回ガイド76内に設けられた適切な線形駆動機構によってガイド76を介して駆動され、これにより、
図16Aの矢印で示される距離間隔が変化し、それによって構造体22を動かすことができる。
【0192】
図16Aおよび
図16Bでは、
図11と同様に、計測装置26および駆動装置28は、フレーム25によってトップダウン方式で支持され、ここで、フレーム25は、座標位置決め機械21の固定構造体の一部を形成する。
図16Aに示す位置から、両方のロッドがそれぞれのガイド76を介して下向きに駆動されると、構造体22は、
図16Bに示すような位置に移動することができる。前述と同様、構造体22の位置は、
ヘキサポッド型計測装置26によって測定される。前述の実施形態と同様の方法で、計測フレーム22a、26は、可動構造体22の部分22aと部分22bとの間の結合部38aによって、駆動フレーム22b、28から少なくともある程度分離されており、ここで、固定フレーム25は、理論上駆動フレームと計測フレームの両方の一部である(その結果、可動構造体22には熱的/機械的分離があるが、固定構造体24には無い)。
図16Aおよび16Bの駆動装置28はまた、非伸縮式駆動装置である。なぜなら、各駆動ストラットは、(はるかに短い)ガイドを通って、いずれかの側に延在し、また移動する固定長ロッドを有するからであり、これは伸縮式装置とは見なされない。
【0193】
3滑り装置と同様に、
図16Aの実施形態における駆動装置28の各機械的リンク機構は、固定構造体と機械的リンク機構との間で作用する駆動機構によって作動され、その結果として、この実施形態は、速度と加速度の点で同じ利点を有している。
【0194】
図17は、
図16Aの模式的に示された装置の実際的な実施形態を示している。
図17の実施形態は、本出願人、レニショーによって商標EQUATORで販売されている非デカルトタイプの座標測定機械に厳密に基づいている。
ヘキサポッド型計測装置26は、
図5のそれとほぼ同様で、それぞれ上部管64と下部管62を備えた6つの伸縮脚部を含み、ここで下部管62は上部管64内で伸縮自在にスライドする。この実施形態では、伸縮可能な脚部は、フレーム25から計測プラットフォーム22a(可動構造体22の一部)までトップダウン構成で支持される。旋回ガイド76は、フレーム25の構造によって
図17で隠されている。3つの固定長駆動ロッド72は、3つの旋回駆動ガイド76をそれぞれ通り、それらの下端で駆動プレート22b(可動構造体22の一部)に結合される。この実施形態では、可動構造体22の2つの部分22a、22bは、剛性の柱23によって空間的に分離されている。
図5のロッド52、54と同様に、3組の並列ロッド対72、74は、3自由度で運動を制約するように配置される。
【0195】
より模式的な表現に戻ると、
図18Aおよび
図18Bは、
図16Aおよび
図16Bの機械の変形例を示し、ここで、計測装置26(計測フレーム36の一部)は、駆動装置28(駆動フレーム37の一部)からさらに分離/切り離しされている。これは、
図10を参照して上述した3滑り実施形態に類似しており、従って、これ以上の説明は不要である。
図19は、
図16A装置の代替を示しており、ここでは、トップダウン装置の代わりにボトムアップ方式の
ヘキサポッド型計測装置26が示されている。
【0196】
図20は、
図16Aおよび
図16Bの実施形態の変形例を模式的に示しており、固定長計測ストラットが、その実施形態の駆動装置28の固定長ストラットと同様に、
ヘキサポッド型計測装置26で用いられている。
図20に示されるような6つの固定長の伸長するストラットは、
図20の矢印によって示されるストラットの可変長部分を備え、前述の実施形態の6つの伸縮可能なストラットと機能的に同等であるとみなされる。すなわち、そのストラットは、前述の実施形態の伸縮可能なストラットと同等である。従って、「伸縮可能な脚部」および「伸長する脚部」という用語は、本明細書では同等であると理解されるべきであり、このことは、2つの点の間の距離間隔を変えることを可能にする任意のタイプの機械的装置またはこれら2点間のリンク機構を意味する。しかしながら、
図20の計測装置26の固定長の伸長するストラットのそれぞれは、伸縮装置として説明することはできない。すなわち、各計測ストラットは非伸縮装置である。
図17により詳細に示されるように、駆動装置28は、それが3つの伸長ストラットのみを有するので、依然として非
ヘキサポッド型駆動装置である。
図21は、固定支持体(旋回プレート)25aが、駆動ストラットに用いられる固定支持体(旋回プレート)25bから空間的にオフセットされた計測ストラットに用いられる、
図20の実施形態の変形例を模式的に示しており、これらのプレート25a、25bの間に設けられる結合部38b(例えば、前述の実施形態による運動学的結合を形成する3つの球)によって、駆動フレームと計測フレームとの間の熱的/機械的切り離しがもたらされる。もちろん、
図21の実施形態は、(
図20のように)可動プラットフォーム22でも切り離しをもたらすように変更することができる。
【0197】
2つの異なるタイプの非
ヘキサポッド型駆動装置が採用されている実施形態が上述されてきた。すなわち、3滑り線形駆動装置(例えば、
図5)および旋回線形駆動装置(例えば、
図17)の両方は非伸縮装置である。駆動装置には他にも多く実現可能であり、これらのほんの一部が簡単に説明するものである。他のものは当業者には明らかである。
【0198】
図22は、デルタロボットタイプの非
ヘキサポッド型(および非伸縮)の駆動装置を有する実施形態を模式的に示している。デルタロボットは並列ロボットの一種であり、特許文献16に例が詳しく記載れている。
図23は、
図22の実施形態の変形例を模式的に示しており、計測フレームと駆動フレームとの間の切り離しの量が増していることを示している。
図24は、固定構造体ではなく可動構造体で計測フレームと駆動フレームとの間の切り離しを有する、
図22の実施形態の変形例を模式的に示している。3滑り装置と同様に、デルタロボット装置では、各機械的リンク機構は固定構造体と機械的リンク機構との間で作用する駆動機構によって作動され、それによって、これらのデルタロボットの実施形態は、速度と加速度の点で同じ利点を共有する(デルタロボット装置では、駆動機構は回転駆動機構であるが、3滑り装置では、駆動機構は線形駆動機構である)。さらに、(特許文献16に記載されているような)適切な制約により、デルタロボット駆動装置28は、3自由度、すなわち、
ヘキサポッド型計測装置26によって測定されているよりも少ない自由度で構造体22に運動をもたらすように構成することができる。
【0199】
回転駆動機構の位置は
図22の参照番号27で示される一方、線形駆動機構の位置は
図3の参照番号29で示される。いずれの場合も、駆動機構は固定構造体と駆動装置との間で直接作用する。
図3の場合、駆動機構は、(例えば、
図5に示されるような機械的リンク機構50の一部として、駆動装置の一部を形成する)キャリッジ56を駆動するように作用し、一方、
図22の場合、駆動機構は、可動構造体と固定構造体との間に取り付けられている機械式リンク機構の上部を駆動(回転)するように作用する。
【0200】
本出願の実施形態での使用に適した非ヘキサポッド型駆動装置の別の例は、ケーブル駆動ロボット装置(別には、ケーブル吊りロボット、または単にケーブルロボット、またはワイヤー駆動ロボットとして知られている)である。これは、複数の柔軟なケーブルをアクチュエータとして用いるタイプの並列マニピュレータ(並列運動学的装置)である。各ケーブルの一端は、対応するそれぞれのモータによって回転するロータの周りに巻かれ、他端はエンドエフェクタに接続される。ケーブルロボットの例は、特許文献17に開示されている。ケーブルは通常、シリアルロボットまたは並列ロボットの剛性リンク機構よりもはるかに軽量であるため、ケーブルロボットのエンドエフェクタは、高い加速度と速度を実現できる。ヘキサポッド型測定装置で達成できる高い測定レートと動的帯域幅だけでなく高精度によって、ヘキサポッド型測定装置とケーブル駆動装置の組み合わせは特に有利である。
【0201】
他のタイプの非
ヘキサポッド型駆動装置も想定されている。例えば、
図25は、(並列運動学的に対抗するように)直列の運動学タイプの非
ヘキサポッド型(および非伸縮の)駆動装置を模式的に示しており、この装置は、回転ジョイントによって直列に接続された複数のセグメントないしリンクを持ち、駆動装置の一端がグランドに取り付けられ、もう一方の端は計測装置に取り付けられている。
図4に示す実施形態と同様に、
図25に示す駆動装置は、駆動に関連した歪みが計測装置に伝わるのを防ぐのに役立つ結合部を介して計測装置に取り付けられる。
図26は、(
図26に示すように)直交する軸x、yおよびzに沿ってそれぞれ移動可能である直列に接続された3つの部分を有する、直列運動学的タイプの非
ヘキサポッド型駆動装置を有する別の実施形態を模式的に示している。従って、
図26の実施形態は、デカルトタイプの直列駆動装置を有するが、一方
図25の実施形態は、非デカルトタイプの直列駆動装置を有する。これらのタイプの駆動装置は周知であり、ここでさらに説明する必要はない。
【0202】
特に
図9Aを参照して上述したように、駆動装置28は、可動構造体22に3つの並進自由度を与え、一方、
ヘキサポッド型計測装置26は、6自由度で測定するよう構成されている。本発明の一態様によれば、機械の作業容積内で移動可能な構造体、構造体を6自由度より少ない自由度で作業容積を動かすための駆動装置、および駆動装置よりも多い自由度で作業容積内の構造体の位置を測定するための計測装置、を含む座標位置決め機械が提案される。これが
図27に模式的に示される。駆動装置および計測装置の一方または両方は、
ヘキサポッド型装置、3滑り装置またはデルタロボット装置などの並列運動学的装置とすることができる。特に、この態様では、計測装置は、
ヘキサポッド型計測装置である必要はないことに留意すべきである。
【0203】
動きよりも多い自由度で測定、特に直接測定を行うことは標準ではない。通常、N個の駆動部分(回転または線形)があり、各駆動部分は個別にエンコードされてN個の対応する測定値をもたらす。例えば、3軸CMMの場合、3つの被駆動線形軸があって、それぞれに位置エンコーダがあり、従って、3つの対応する測定値が存在する(すなわち、3自由度で駆動および測定の両方を行う)。ヘキサポッドの場合、6つの可変長ストラットがあって、それぞれに位置エンコーダがあり、6つの対応する測定値が存在する(すなわち、6自由度で駆動および測定の両方を行う)。
【0204】
しかしながら、本出願人は、比較的不正確で、限られた自由度(例えば3自由度)で動くように制約され、極めて正確で6つの総ての自由度で測定することができる別個の計測装置と組み合わされる駆動装置を提供できることが望ましくまた有利であることを認識するに至っており、それ故に、機械的に制約された駆動装置のどのような不正確さを補うことも可能となる。例えば、動くプラットフォームが回転せずに、作業容積内で並進するように制約されている場合、構造体の歪みやその他のタイプの不正確さが原因でプラットフォームが不用意に回転し、少なくともその一部が高速動作に関連した動的な影響が原因である場合がある。このような回転は、動きの自由度より多い自由度で測定することによって検出され得る。
図27の構想を
図28に模式的に示される、二重の
ヘキサポッド型装置に適用することも可能であり、この場合、駆動の
ヘキサポッドは、適切な機械的拘束によって6自由度より少ない自由度の動きに制約される。
【0205】
当業者に明らかなように、非
ヘキサポッド型駆動装置、または6自由度より少ない自由度に制約されている駆動装置の他の多くの形態が存在する。例えば、示されている3滑り装置の多くの可能な変形例が存在する。1つの変形例は、3つ以上の駆動装置および関連する機械的リンク機構を有する装置を提供することである。そして、
図3に示されるような垂直軌道51の代わりに、軌道が、代わりに、水平に、例えば、点から半径方向外向きに配置され、その結果、構造体22の動きが、水平軌道に沿ったキャリッジ56の動きによってももたらされるようにすることができる。他にも多くのそのような実現可能なものが存在する。
【0206】
本発明の実施形態は、主に、接触プローブのスタイラスが測定を行うためにワークピース表面と物理的に接触する接触プローブの使用に関連して説明されてきたが、本発明は接触プローブに限定されないことが理解される。同じ考え方は、物理的な接触を行わずに表面が検出される、光学プローブなどの非接触プローブにも等しく適用できる。本発明は、一般に、接触によるか否かにかかわらず、表面を感知するように構成されたどのような表面感知デバイスにも適用可能である。本発明はまた、例えば、物品の製造中に物品の構成部品を配向するために、表面感知装置以外の構成要素の位置決めにも適用することができる。あるいは、構成要素は、金属または他の剛性材料を成形または機械加工するための工作機械において典型的に見られる工具などの、工具またはその一部であることがある。構成要素は、可動構造体自体であることがある。工具には、ワークピースの表面を撮像するためのカメラが含まれてよい。構成要素には、ワークピースの表面またはその近くの渦電流を検出および/または測定するための渦電流プローブが含まれてよい。他の多くの実現可能なものが当業者には明らかであり得る。
【0207】
本発明の実施形態では、ヘキサポッド型計測装置26は、純粋に較正目的のために設けられず、可動構造体に一時的に結合されて、駆動装置と計測装置の組み合わせの較正を実行し、その後、機械の操作の使用ために取り外されることに留意すべきである。むしろ、ヘキサポッド型計測装置は、可動構造体に結合されたままで、操作のための使用中に可動構造体に関連する位置測定をもたらすことを目的としている。本発明の実施形態では、較正のみの計測装置とは対照的に、可動構造体は、計測装置および駆動装置も可動構造体に結合された操作工具を支持するように構成されている。ヘキサポッド型計測装置は、操作工具を可動構造体に取り付けるために用いられるものとは異なる取り付け具によって可動構造体に結合されてもよい。ヘキサポッド型計測装置は、(例えば、主に操作工具用の取り付け具によってではなく)可動構造体に直接結合されてもよい。
【0208】
座標位置決めを制御する方法が、
図29のフローチャートに示されている。ステップS1で、計測装置26は、可動構造体(またはプラットフォーム)22に結合される。ステップS2で、駆動装置28は、可動構造体(またはプラットフォーム)22に結合される。ステップS3で、工具(例えば、測定プローブ30または切削工具)を、可動構造体(またはプラットフォーム)22に結合する。従って、この時点で、3つ総てが可動構造体(またはプラットフォーム)22に結合されていることになる。ステップS4では、駆動装置28を用いて、工具を作業容積34において動かす(このとき、計測装置26も可動構造体に結合されている)。ステップS5で、測定プローブ30でワークピース表面にタッチトリガ操作をしたり、切削工具や工作機械でワークピース表面に機械加工をしたりするなど、工具による操作を行う。ステップS6で、計測装置26を用いて、操作が行われたときに作業容積34内の工具の位置を決定する(例えば、測定プローブ30の先端または切削工具の位置を決定できるようにする)。ステップS7で、決定された位置は、実行された操作に関連付けられる(例えば、タッチトリガイベントがそのイベントの位置測定に関連付けられる)。
【0209】
図4を参照して、以上説明したように、運動学的結合は、結合部の他方に伝わり得る、結合部の一方における歪みを分離するのに極めて効果的である。このように、第1の結合部38aは、可動構造体22の駆動部22bの(駆動装置28からその部分に作用する力に起因する)歪みが計測部22aに(従って、計測装置26に)伝わるのを防ぐのに役立ち、また、固定構造体24に関する第2の結合部38bについても同様である。次に、そのような運動学的結合について、
図30~
図35を参照してより詳細に説明する。
【0210】
図30は、第1の部分81および第2の部分82を有する運動学的結合部80の斜視図である。運動学的結合部80は、
図4の結合部38aおよび38bのいずれかまたは両方に適用することができる。例えば、(下方の)カップリング38bに適用する場合、
図30の第1および第2の部分81、82は、それぞれ
図4の計測部分および駆動部分24a、24bに対応するか、または少なくともその一部を形成する。第1の部分81は、3つのV溝83a、83b、83cを有し、これらは、(第1および第2の部分81、82が互いに結合されるとき)第2の部分82の3つの対応するそれぞれの球84a、84b、84cと係合する。
図30には、付勢機能部85および配向機能部86も示されている。この例では、付勢機能部85は、(ボルトなどの)付勢部材が通過することができる穴であり、ボルトは第2の部分82の対応するねじ穴(不図示)と係合する。追加の制約を与えないように、付勢部材が穴の側面に接触しないように配置され、それによって、付勢部材が、第1の部分81を第2の部分82に対して付勢するように作用し、確実に、これら2つを互いに運動学的に接触したままで、離れないようにする。但し、付勢は、代わりに、例えば、重力または磁気的手段によってもたらされてもよい。この例における任意機能である配向機能部86は、2つの中心から外れた穴であり、これを通して、第2の部分82上の対応する突出ピン(不図示)が突出し、第1の部分81が第2の部分82上に正しく配向されることを保証する。例えば、V溝が回転対称でない配置の場合には、配向機能部は必要とされない。実際には、運動学的結合部80の外観は、図によって示唆されるよりもさらに離れたものとできる。外観における間隔は、関連するプラットフォームの全体的なサイズに依存し、機械的安定性と力の伝達条件が考慮に入れられる。
【0211】
第1の部分81の上面図および斜視図を
図31および
図32に示す。使用中、第1の部分81は、第2の部分82上に配置され、それによって、第2の部分82の3つの球84a、84b、84cのそれぞれが、
図33に最も明確に示されているように、第1の部分81の3つのV溝83a、83b、83c内で、またV溝83a、83b、83cに対して着座する。結合されると、各球84a、84b、84cは、それが静止しているV溝83a、83b、83cの互いに対向する面と点状の接触をし、
図34に示すように、合計6つの点状の接触C1~C6を作る。運動学的拘束の原理により、上記でさらに説明したように、各点状の接触は6つの自由度のうちの1つの自由度で制約を生じさせ、正確に6つの点状の接触を持つと、過剰な制約のない完全な(運動学的)拘束が得られる。実際には、純粋な点接触は理論的な運動学的拘束を与えるが、実際には、荷重は単一の点に集中するのではなく、小さな表面積に広がることが理解できる。ただし、運動学的拘束の基本原則は依然として適用される。6つの制約を用いて、6つの自由度を制約するために、結合部の半分は、結合部の他の半分に対して固定された空間関係を保つ。例えば、
図4を参照すると、可動構造体22の計測部分22aは、可動構造体22の駆動部分22bに対して固定された空間的関係に留まる。
【0212】
上述のように、
図4の下方結合部38bに適用される場合、
図30の第2の部分82は、
図4の駆動部分24bに対応し、これは、計測部分24aよりも高い熱膨張係数を有する(これらのCTEが一致していない)。結果として、機械の使用中に同じ環境温度にさらされるとき、環境温度が上昇すると、(第2の結合部82を含む)駆動部24bが、(第1の結合部81を含む)計測部24aよりも大きく膨張する。通常、固定された結合部の両側の部分のCTEが異なると、結合部に(つまり、CTEが異なる2つの部分間の境界面で)ひずみが発生するが、この場合、結合部の運動学的設計はそのようなひずみの発生を回避するのに役立つ。これは、3つの球84a~84c(
図30を参照)によって形成される三角形が、結合部の反対側に対して、単に外側に拡張し、接触点C1/C2、C3/C4、C5/C6の各対が対応するV溝83a、83b、83cに沿って直線的に移動するからである。これにより、結合部に余分なひずみが発生することがない。
図30の結合部80を
図4の上方結合部38aに適用した場合にも、同様の解析が適用される。この文脈での運動学的結合の有効性は、点状制約C1~C6のそれぞれが単一の自由度のみを制約し、必要に応じて他の自由度での移動を許容するという事実によって説明でき(例えば、一部が拡張しまたは収縮しまたはゆがむ場合、それが他の部分とは異なる)、それによって、結合部に不要なひずみが発生するのを防ぐことができる。
【0213】
6つの接触点C1~C6が異なって配置される他の形態の運動学的結合が可能であることが理解できる。例えば、
図36は、接触点の3-2-1配置を示しており、ここでは、3つの接触点C1、C2、C3のグループが、ピラミッド型のくぼみ内の球84aの接触によって作られ、2つの接触点C4、C5の対がV溝のくぼみ内での球84bの接触によって作られ、および1つだけの点C6が平面上の球84cの接触によって作られる。このような運動学的結合は、部分81と部分82の熱膨張および収縮が異なることに起因して結合部にひずみが発生するのを防ぐのにも役立ち、部分82が部分81に対して膨張すると、接点C4、C5は、V溝に沿って外側に移動し、接触点C6は平面に沿って移動する。結果として、部分81、82との間にいくらかの相対回転があり得るが、この影響は制御され、また、例えば、計測装置26のもう一方の端での同じ量の回転によって補償することができる(すなわち、
図4の結合部38aにおける回転は、結合部38bにおけるものと同じであり、全体の構成を変更することなく、計測装置26全体がわずかに回転する)。
【0214】
他のタイプの非運動学的結合は、上述の弾性のスペーサまたはパッドなどの他の用途にも適しており、これらは、駆動フレームの余分な熱的膨張および収縮の少なくとも一部が計測に伝達されるのを防ぐからである。
【0215】
座標測定機械21の動作は、機械21で動作するプログラム動作によって、特に
図3に模式的に示されるコントローラCなどの座標測定機械コントローラ上で動作するプログラムによって制御できることが理解される。伸縮可能な脚部の制御は、コントローラC上で動作するプログラムによって提供できることが理解される。そのような動作プログラムは、コンピュータ可読媒体に格納することができ、または、例えば、インターネットウェブサイトで提供されるダウンロード可能なデータ信号のような信号で具体化することができる。添付の特許請求の範囲は、それ自体で動作プログラムをカバーするものとして、またはキャリア上の記録として、または信号として、または任意の他の形式で理解されるべきである。
【0216】
上述の実施形態は、主に座標測定機械の文脈で説明されたが、考え方は、コンパレータ、走査機械、工作機械、(例えば、光学部品用の)位置決め装置、プロトタイプ製造機械および他のさまざまな用途の装置など、どのようなタイプの座標位置決め機械にもより一般的に適用可能である。