(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】セグメント式シートジャミングデバイス及び構成要素
(51)【国際特許分類】
F16G 13/20 20060101AFI20241206BHJP
A61F 2/54 20060101ALI20241206BHJP
B25J 17/00 20060101ALI20241206BHJP
H02N 1/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F16G13/20
A61F2/54
B25J17/00 L
H02N1/00
(21)【出願番号】P 2021576564
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 IB2020055927
(87)【国際公開番号】W WO2020261118
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-19
(32)【優先日】2019-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】コリッガン,トーマス アール.
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0066392(US,A1)
【文献】特開2011-050529(JP,A)
【文献】特表2018-517099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 13/20
A61F 2/54
B25J 17/00
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのチェーンを含むチェーンのセットであって、前記少なくとも1つのチェーンのそれぞれが、複数の接続されたセグメントを含む、チェーンのセットを備える、シートジャマブル装置であって、
前記複数の接続されたセグメントが、隣接するセグメントを含み、前記隣接するセグメントが、継手を介して接続されており、
前記チェーンのセットが、第1のセグメントのセット及び第2のセグメントのセットを含み、前記第1のセグメントのセットのうちの1つと前記第2のセグメントのセットのうちの1つとが、前記継手を介して接続されており、
前記第1のセグメントのセットが、第1のコネクタに電気的に接続されており、前記第2のセグメントのセットが、第2のコネクタに電気的に接続されており、
第1の状態では、前記隣接するセグメントが、移動力が加えられたときに、互いに対して回転移動可能であり、
第2の状態では、前記隣接するセグメントが、前記移動力が加えられたときに、互いに対して固定された角度に留ま
り、
前記第2の状態は、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの間に電圧が印加されたときに引き起こされる、シートジャマブル装置。
【請求項2】
前記チェーンのセットが、積層構成で配置されている2つ以上のチェーンを含む、請求項1に記載のシートジャマブル装置。
【請求項3】
前記2つ以上のチェーンが、前記2つ以上のチェーン上の1つ以上の継手における接続を介して積層されている、請求項2に記載のシートジャマブル装置
。
【請求項4】
前記チェーンのセットが、第1のチェーンのセット及び第2のチェーンのセットを含み、前記第1のチェーンのセットと前記第2のチェーンのセットとが交互嵌合している、請求項1に記載のシートジャマブル装置。
【請求項5】
前記継手が、回転継手及びピン継手から選択されている、請求項1に記載のシートジャマブル装置
。
【請求項6】
前記チェーンのセットの各セグメントが、導電層を備える、請求項
1に記載のシートジャマブル装置。
【請求項7】
前記チェーンのセットの各セグメントが、誘電体層を備える、請求項
1に記載のシートジャマブル装置。
【請求項8】
前記第1のセグメントのセットのそれぞれが、突出したコネクタを備えるとともに、前記第2のセグメントのセットのそれぞれが、突出したコネクタを備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のシートジャマブル装置。
【請求項9】
前記第2の状態は、前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとの間に50V以下の電圧が印加されたときに引き起こされる、請求項1~8のいずれか一項に記載のシートジャマブル装置。
【請求項10】
前記第1のコネクタと前記第2のコネクタとが、ワイヤによって接続されている、請求項1~9のいずれか一項に記載のシートジャマブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運動抵抗のために使用することが可能な、ジャミング構成要素及びジャミングデバイスに関する。
【発明の概要】
【0002】
本開示の実施形態のうちの少なくともいくつかは、少なくとも1つのチェーンを含むチェーンのセットを備える、シートジャマブル装置を対象とする。チェーンのセットのそれぞれは、一連の接続されたセグメントを含む。2つの隣接するセグメントは、継手を介して接続されている。2つの隣接するセグメントは、移動力が加えられたときに、第1の状態では互いに対して移動可能であり、2つの隣接するセグメントは、移動力が加えられたときに、第2の状態では固定された角度に留まる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
添付図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成するものであり、明細書本文と共に、本発明の利点及び原理を説明する。図面は以下のとおりである。
【0004】
【
図1A】セグメント式ジャミングデバイスの一実施例のいくつかの図を示す。
【
図1B】セグメント式ジャミングデバイスの一実施例のいくつかの図を示す。
【
図1C】セグメント式ジャミングデバイスの一実施例のいくつかの図を示す。
【
図1D】セグメント式ジャミングデバイスの一実施例のいくつかの図を示す。
【0005】
【
図2A】真空状態で使用されるジャミングデバイスの一実施例を示す。
【0006】
【
図2B】それぞれ、例示的なジャミングデバイスの一区画の概略断面図である。
【
図2C】それぞれ、例示的なジャミングデバイスの一区画の概略断面図である。
【
図2D】それぞれ、例示的なジャミングデバイスの一区画の概略断面図である。
【0007】
【
図3A】セグメント式ジャミングデバイス、及びセグメント式ジャミングデバイス内で使用することが可能なチェーンの、様々な実施例を示す。
【
図3B】セグメント式ジャミングデバイス、及びセグメント式ジャミングデバイス内で使用することが可能なチェーンの、様々な実施例を示す。
【
図3C】セグメント式ジャミングデバイス、及びセグメント式ジャミングデバイス内で使用することが可能なチェーンの、様々な実施例を示す。
【
図3D】セグメント式ジャミングデバイス、及びセグメント式ジャミングデバイス内で使用することが可能なチェーンの、様々な実施例を示す。
【0008】
【
図4A】突出したコネクタを有する、セグメント式ジャミングデバイス400の一実施例を示す。
【
図4B】突出したコネクタを有する、セグメント式ジャミングデバイス400の一実施例を示す。
【0009】
【
図5A】セグメント式ジャミングデバイスを使用した実験を示す。
【
図5B】セグメント式ジャミングデバイスを使用した実験を示す。
【
図5C】セグメント式ジャミングデバイスを使用した実験を示す。
【0010】
図面では、同様の参照符号は同様の要素を示す。正確な縮尺で描かれていない場合がある、上記で特定されている図面は、本開示の様々な実施形態を明示するものであるが、「発明を実施するための形態」で注記されるように、他の実施形態もまた企図される。全ての場合において、本開示は、本明細書で開示される開示内容を、明示的な限定によってではなく、例示的な実施形態を表現することによって説明する。本開示の範囲及び趣旨に含まれる、数多くの他の修正形態及び実施形態を、当業者によって考案することができる点を理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている、特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されているものとして理解されたい。したがって、反対の指示がない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲で明示されている数値パラメータは、本明細書で開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変動し得る、近似値である。端点による数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)、及びその範囲内の任意の範囲を含む。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が別途明示しない限り、複数の指示対象を有する実施形態を包含する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、用語「又は」は、内容が別途明示しない限り、全般的に、「及び/又は」を含む意味で用いられる。
【0013】
限定するものではないが、「下部」、「上部」、「~の下」、「下方」、「上方」、及び「~の上に」を含めた、空間に関連する用語は、本明細書で使用される場合には、或る要素の別の要素に対する空間的な関係を説明するための説明を、容易にするために利用される。そのような空間に関連する用語は、図に示され本明細書で説明される特定の向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの種々の向きを包含する。例えば、図に描かれている対象物が裏返されるか又は反転される場合には、従前には他の要素の下方又は下として説明されていた部分は、それらの他の要素の上方となる。
【0014】
本明細書で使用する場合、或る要素、構成要素、又は層が、例えば、別の要素、構成要素、若しくは層「の上に」あるか、それら「に接続されている」か、それら「に結合されている」か、又はそれら「と接触している」として説明される場合は、例えば、その要素、構成要素、又は層が、特定の要素、構成要素、又は層の上に直接あるか、それらに直接接続されているか、それらと直接結合されているか、それらと直接接触していることが可能であり、あるいは、介在する要素、構成要素、又は層が、特定の要素、構成要素、若しくは層の上にあるか、それらと接続されているか、それらと結合されているか、又はそれらと接触していることも可能である。或る要素、構成要素、又は層が、例えば、別の要素「の上に直接」あるか、それ「に直接接続されている」か、それ「に直接結合されている」か、又はそれ「と直接接触している」として言及される場合は、例えば、介在する要素、構成要素、又は層は存在しない。
【0015】
調節可能な剛性と、運動に対する可変抵抗とを有する物品が、多くの場合に必要とされている。例えば、フレキシブルディスプレイは、屈曲可能であり、屈曲位置を維持することが可能である。本開示の少なくともいくつかの実施形態は、運動に対する制御された抵抗を生成する、静電式ジャミングデバイスを対象とする。そのようなジャミングデバイスは、種々の運動、例えば、屈曲運動、並進、回転などに抵抗するために、様々なデバイス、システム、及び構造体内に組み込むことができる。それらの運動は、主として平面的なもの、又は、表面に沿った、若しくは表面内のものであり得る。
【0016】
いくつかの場合には、材料のシートは、運動に抵抗するために、真空によって一体となって固定され得る。いくつかの場合には、材料のシートは、静電気によって一体となって固定され得る。これにより、真空源及びガス不透過性エンベロープの必要性が排除される。従来の静電式ジャミングデバイスは、いくつかの制限を有するものであった。一部のデバイスでは、可展面(又は、ガウス曲率がゼロの平滑面)へと成形することのみを可能とする、シートの単純な屈曲のみが可能である。従来のデバイスは、高電圧でのみ機能するため、構築することが困難な傾向にある。
【0017】
本開示の少なくともいくつかの実施形態は、或る1つの状態では屈曲を可能にし、別の状態では屈曲に抵抗するように使用することが可能な、ジャミングデバイスを対象とする。いくつかの実施形態では、ジャミングデバイスは、複数のシートを含み、それらのシートは、静電的に固定され、運動に抵抗し得る。そのようなジャミングデバイスは、導電層と、隣接する導電層間に配置されている誘電体層とを含む。本開示の少なくともいくつかの実施形態は、低電圧で動作することが可能でありながらも、有用なレベルの運動抵抗を達成することが可能な、静電式ジャミングデバイスを対象とする。低電圧とは、反対に帯電している任意の2つの導電層間の最小距離の空気の絶縁破壊電圧よりも、低い電圧を指す。既存のジャミングデバイスのうちのいくつかは、反対に帯電した2つの導体間における空気中の最短経路を、誘電体層を通る経路よりも遥かに長くするために、導電層を遥かに越えて延びている誘電体層を含む。このことにより、そのようなジャミングデバイスは、製造がより困難となり、また、誘電体層内のピンホール又は亀裂の影響を受けやすくなるが、これは、空気の絶縁破壊(短絡及びアーク放電)を可能にする、反対に帯電した導体間の距離が作り出されるためである。本開示におけるジャミングデバイスのいくつかの実施形態は、誘電体層内の亀裂、切れ目、ピンホール、及び他の欠陥にもかかわらず、短絡又はアーク放電の影響を受ける恐れがない。いくつかの実施形態では、導電層は、誘電体層の厚さで、又は誘電体層の厚さを越えて保持されており、ジャミングデバイスは、その距離の空気の絶縁破壊電圧よりも低い電圧で動作される。いくつかの場合には、低電圧ジャミングデバイスは、遥かに少ないエネルギーをデバイス内に蓄積し、人体上及び人体の近くで使用するために、より安全であるという利点を有する。
【0018】
絶縁破壊電圧とは、2つの導体間の所与の距離の間隙にわたって、空気を絶縁破壊させて導電性にさせる電圧を指す。このことはまた、その間隙にわたるアーク放電又は火花放電としても既知である。絶縁破壊電圧は、圧力によって変化する。本開示は、全般的に、地球上で認められる標準的な圧力の範囲内での、空気の絶縁破壊電圧に言及している。本開示では、絶縁破壊電圧は、意図的に電気的に接続されていない任意の2つの導体間における、空気を介した(他の誘電材料を介さない)最短距離に言及している。本開示では、所与の距離及び圧力における絶縁破壊電圧の値は、長年にわたって十分に研究されており、一般に、数マイクロメートルを超える間隙においては、パッシェンの法則に従うが、より小さい間隙においては、その法則から逸脱することが認められている。絶縁破壊電圧は、以下の式(1)で提示されるような、Babrauskas、Vytenisの「Arc Breakdown in Air over Very Small Gap Distances」(Interfolam 2013,Volume 2,1489~1498頁)によって提案されている簡略化された式を使用して求めることができる。
【数1】
式中、Vは、ボルトを単位とする絶縁破壊電圧であり、dは、2つの導体間の距離である。誘電強度とも称される絶縁破壊強度は、材料内で絶縁破壊を引き起こさない最大電界強度(V/m)として理解することができる。
【0019】
固定状態とは、2つの隣接する部品、シート、又は構造体間の相対運動が、それら隣接する部品、シート、又は構造体を一体に圧迫する外部圧力の導入によって抵抗される状態を説明するために使用される。相対運動とは、ジャミングデバイス内の2つの隣接する部品、シート、又は構造体間における、摺動運動、回転運動、又は並進運動を指す。運動に対する抵抗を克服するために、異なる力が必要とされる、「固定」強度のスペクトルが存在している。固定状態を引き起こす外部圧力は、機械的供給源、又は真空の適用(それにより、大気圧がシートを一体に押圧する)、シート間の静電引力などによってもたらされ得る。弛緩状態とも称される、固定解除状態とは、隣接するシート間の相対運動に、追加的な抵抗が付与されていない状態を説明するために使用される。
【0020】
図1Aは、セグメント式ジャミングデバイス100の一実施例の上面図を示し、
図1Bは、ジャミングデバイス100の側面図を示し、
図1Cは、ジャミングデバイス100の或る回転位置の上面図を示し、
図1Dは、ジャミングデバイス100の別の回転位置の上面図を示す。セグメント式ジャミングデバイス100は、少なくとも1つのチェーン110を含む、チェーンのセット105を含む。いくつかの実施例では、
図1Bに示されるように、チェーンのセット105は、チェーン110、チェーン120、及びチェーン130を含む。いくつかの実施形態では、チェーン(例えば、110)は、一連の接続されたセグメント(例えば、112、114)を含む。いくつかの実施形態では、2つの隣接するセグメント112とセグメント114とは、継手115を介して接続されている。いくつかの実施形態では、
図1C及び
図1Dに示されるように、2つの隣接するセグメント112及びセグメント114は、回転力が加えられたときに、第1の状態では互いに対して回転可能である。いくつかの実施形態では、2つの隣接するセグメントは、回転力が加えられたときに、第2の状態では固定された角度に留まる。
【0021】
いくつかの実施形態では、チェーンのセットは、積層構成で配置されている2つ以上のチェーン(例えば、110、120、及び130)を含む。いくつかの場合には、2つ以上のチェーン(例えば、110、120、及び130)は、それら2つ以上のチェーン上の1つ以上の継手(例えば、115)による接続を介して、積層されている。
【0022】
いくつかの場合には、各セグメント(例えば、112、114)は、複数のシートを含み、各シートは、複数の層を含み得る。いくつかの実施形態では、各セグメントは、紙、可鍛性の増強のためにアニール処理することが可能な金属(例えば、鋼、アルミニウム)、ポリマー材料(例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン、又はポリオキシメチレン)、複合材料(例えば、炭素繊維)、他の同様の好適な材料などの、単一の材料、及びこれらの組み合わせから構成されている。いくつかの場合には、各セグメントは、構造層、1つ以上の導電層、及び1つ以上の誘電体層を有する。ジャミングデバイス内のセグメントの積層体の導電層は、ワイヤ、機械的クランプ、導電性接着剤、又は他の好適な手段を介して、電気的に接続することができる。
【0023】
いくつかの場合には、継手115は、回転継手又はピン継手である。回転継手は、接続されるセグメント上の、1つ以上のジャミング層の開口領域を貫通する、ピン、リベット、ワイヤ、糸、又は他の手段によって作り出すことができる。他のタイプの継手もまた使用することができる。例えば、いくつかのセグメント上の穴の形状を変更することによって、ピン・イン・スロット継手を実現することが可能である。直線摺動継手もまた、2つのピン・イン・スロット継手を組み合わせることによって、又はセグメントの外部ガイドを追加することによって作り出すことが可能である。
【0024】
図2Aは、真空状態で使用されるジャミングデバイス200の一実施例を示す。いくつかの場合には、ジャミングデバイス200は、セグメント式ジャミングデバイス210、及びエンベロープ(又は、シェル若しくはパウチ)202を有する。エンベロープ202は、内部チャンバ204を画定している。エンベロープ202は、ガス不透過性材料で形成されている。ポート215は、チャンバ204を周囲と流体連通するように配置されており、このポートを介して、チャンバ204は、例えば管222を介して真空源220に結合されることによって、排気され得る。セグメント式ジャミングデバイス210は、チャンバ204内に配置されている。いくつかの場合には、セグメント式ジャミングデバイス210は、1つ以上のチェーン212を含む。いくつかの場合には、各チェーン212は、2つ以上の接続されたセグメント213を含む。
【0025】
明瞭性のために、エンベロープ202の上面と下面とは、
図2Aでは、実質的に間隔をあけて(すなわち、それらを側壁部が繋ぎ合わせている状態で)示されている。同様に、チェーン212は、実質的に互いに間隔をあけて示されている。いくつかの場合には、チェーン212を、互いに極めて近接させることが可能である。いくつかの場合には、ジャミングデバイス200は、シート状又は板状の構成を有する、遥かに平坦な外観であり得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、ジャミングデバイス200は、エンベロープ202内部の圧力が、ほぼ周囲圧力であるときに、弛緩状態にあり、エンベロープ内部の圧力が周囲圧力よりも低いときに、固定状態にある。
【0027】
いくつかの場合には、セグメント式ジャミングデバイス内のセグメントは、静電シートを含む。
図2Bは、チェーンのセットを有する、ジャミングデバイス200Bの一区画の概略断面図である。図示の実施形態では、ジャミングデバイス200Bは、交互嵌合している第1のチェーン210Bのセットと第2のチェーン220Bのセットとを含む。チェーンのセットのそれぞれは、少なくとも2つのセグメントを有する。いくつかの場合には、2つの隣接するセグメントは、継手240Bによって接続されている。いくつかの実施形態では、ジャミングデバイス200Bのチェーンのセットは、互いの上に積み重ねられており、それらチェーンの積層体を貫通する継手240Bは、1つに組み合わされている。いくつかの場合には、第1のチェーン210Bのセットの各セグメントは、導電層211Bを含む。いくつかの場合には、第2のチェーン220Bの各セグメントは、導電層211Bを含む。いくつかの場合には、ジャミングデバイス200Bの各セグメントは、誘電体層230Bを更に含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、ジャミングデバイス200Bは、第1のチェーン210Bのセットのセグメントのうちの少なくとも一部の導電層211B及び/又は第2のチェーン220Bのセットのセグメントのうちの少なくとも一部の導電層211Bに導電的に結合されている、第1のコネクタ(図示せず)を含む。いくつかの場合には、ジャミングデバイス200Bは、第1のチェーン210Bのセットのセグメントのうちの少なくとも一部の導電層211B及び/又は第2のチェーン220Bのセットのセグメントのうちの少なくとも一部の導電層211Bに導電的に結合されている、第2のコネクタ(図示せず)を含む。いくつかの実施態様では、第1のコネクタは、第1のチェーン210Bのセット及び第2のチェーン220Bのセットの、1つおきのセグメントの導電層211Bに導電的に結合されており、第2のコネクタは、第1のコネクタに結合されている1つおきのセグメントの間の、第1のチェーン210Bのセット及び第2のチェーン220Bのセットのセグメントの導電層に導電的に結合されている。いくつかの実施態様では、第1のコネクタは、第1のチェーン210Bのセットのセグメントの導電層211Bに導電的に結合されており、第2のコネクタは、第2のチェーン220Bのセットのセグメントの導電層211Bに導電的に結合されている。
【0029】
いくつかの場合には、第1のチェーン210Bのセット及び第2のチェーン220Bのセットは、弛緩状態では互いに対して移動可能であり、第1のチェーン210Bのセット及び第2のチェーン220Bのセットは、固定状態では互いに固定される。いくつかの場合には、固定状態は、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に50V以下の電圧が印加されたときに引き起こされる。いくつかの場合には、固定状態は、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に100V以下の電圧が印加されたときに引き起こされる。いくつかの場合には、固定状態は、200V以下の電圧が印加されたときに引き起こされる。いくつかの場合には、固定状態は、第1のチェーンのセットのうちの1つと第2のチェーンのセットのうちの1つの隣接する導電層間の距離での空気の絶縁破壊電圧以下の電圧が、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に印加されたときに引き起こされる。
【0030】
いくつかの場合には、誘電体層のそれぞれは、極めて薄い。いくつかの場合には、誘電体層のそれぞれの厚さは、10マイクロメートル以下である。いくつかの場合には、誘電体層のそれぞれの厚さは、5マイクロメートル以下である。いくつかの場合には、誘電体層のそれぞれの厚さは、1マイクロメートル以下である。いくつかの場合には、弛緩状態における、隣接するチェーンの、隣接する対の導電層の間の距離は、10マイクロメートル以下である。いくつかの場合には、弛緩状態における、隣接するチェーンの、隣接する対の導電層の間の距離は、5マイクロメートル以下である。
【0031】
いくつかの実施形態では、導電層211Bは、アニール処理若しくは硬化処理することが可能な金属(例えば、銅、アルミニウム、鋼)、積層加工された金属層若しくは箔(例えば、同じ金属又は異なる金属のもの)、導電性ポリマー、又は、炭素などの導電性粒子で充填された材料を含み得る。いくつかの実施形態では、チェーン(210B、220B)は、支持層を含み得る。支持層は、紙若しくは他の繊維質材料、ポリマー材料(例えば、ポリウレタン、ポリオレフィン)、複合材料(例えば、炭素繊維)、エラストマー(例えば、シリコーン、スチレン-ブタジエン-スチレン)、又は他の材料、及びこれらの組み合わせから作製することができる。いくつかの場合には、支持層は、50マイクロメートル以上の厚さを有する。いくつかの場合には、支持層は、125マイクロメートル以上の厚さを有する。いくつかの場合には、支持層と導電層とを1つの層に組み合わせることができる。いくつかの場合には、導電層211Bは、第1のチェーン210Bのセット及び/又は第2のチェーン220Bのセットのセグメントの構造層上の、コーティングである。導電性コーティング材料は、例えば、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、酸化インジウムスズ、炭素、黒鉛などとすることができる。いくつかの実施形態では、誘電体層は、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、混合金属酸化物、混合金属窒化物、チタン酸バリウム、又は、ポリイミド、アクリレートなどのポリマーを含み得る。いくつかの場合には、誘電体層は、誘電体フィルムとすることができる。いくつかの場合には、誘電体層230Bは、第1のチェーン210Bのセット及び/又は第2のチェーン220Bのセットのセグメント上にコーティングされている。コーティング材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、混合金属酸化物、混合金属窒化物、チタン酸バリウム、又は、ポリイミド、アクリレートなどのポリマーを挙げることができる。
【0032】
いくつかの場合には、誘電体層230Bは、極めて薄い。いくつかの場合には、誘電体層230Bは、10マイクロメートル以下の厚さを有する。いくつかの場合には、誘電体層230Bは、5マイクロメートル以下の厚さを有する。いくつかの場合には、誘電体層230Bは、1マイクロメートル以下の厚さを有する。いくつかの場合には、ジャミングデバイスは、低電圧によって固定される。いくつかの場合には、この低電圧は、100V以下である。いくつかの場合には、そのような電圧は、第1の導電層と第2の導電層との間の距離の絶縁破壊電圧以下である。
【0033】
静電式固定は、誘電材料を間に有する、反対に帯電した隣接する導電層の各セットを、平行板コンデンサとしてモデル化することによって理解することができる。それらの層上の反対の電荷は、互いに引き付けられる。この引力は、式(2)によって表すことが可能な、誘電材料に対する圧縮圧力を生じさせることが示され得る。
【数2】
式中、ε
rは、誘電材料の比誘電率(又は、誘電率)であり、ε
0は、自由空間の誘電率(又は、真空誘電率若しくは電気定数、8.854187817...×10
-12F/m)であり、Vは、2つの導電層間の電位差であり、dは、2つの導電層間の距離(すなわち、誘電材料(単数又は複数)の厚さ)である。
【0034】
いくつかの場合には、誘電材料の総厚さは、誘電材料の1つ以上の層を含み、また、導電層間に閉じ込められた、いくつかの空隙又はデブリも含み得る。(複数のフィルム、コーティング、空気、デブリなどを含む)複数の誘電体層が存在する場合、それらは、直列にモデル化することができる。この場合、各層は、静電容量
【数3】
を有するコンデンサとしてモデル化することができ、式中、Aは総面積であり、dは、その層の厚さであり、ε
rは、その層の比誘電率である。それら直列の層の全静電容量は、
【数4】
として算出することができ、式中、C
totは全静電容量であり、C
1、C
2...は、個々の層の静電容量である。誘電材料の積層体に対する、全固定圧力は、以下の式(3)として算出することができる:
【数5】
式中、Pは、誘電材料の積層体に対する圧力であり、C
totは、上記で算出され、d
totは、誘電体層の総厚さ(すなわち、隣接する2つの導電層間の距離)である。導電層間のこの空間に関する平均比誘電率もまた、式(4)として算出することができる:
【数6】
【0035】
静電式固定は、反対に帯電した導電層間における、並進及び回転の双方の摺動運動を可能にする。摺動境界面は、導電層と誘電体層との間、又は誘電体層と別の誘電体層との間に存在し得る。反対に帯電した2つの隣接する導電層の間には、2つ以上の摺動自在な境界面が存在し得る。電圧が印加されると、生じた圧力が、摺動自在な境界面の表面を、互いに対して押圧させて、運動に抵抗させる。運動に対する抵抗は、2つの交互嵌合しているチェーンのセットが、一体となって固定されていることを考慮することによって、モデル化することができる。静電的に固定されている、2つの同型のチェーンのセットを摺動させて引き離すことに対する抵抗は、式(5)として算出することができる:
【数7】
式中、Fは、それらのセットを引き離す(又は、それらを一体に押圧する)ために必要とされる力であり、Aは、チェーン間の重複面積(コンデンサ面積)であり、μは、摺動境界面における摩擦係数であり、Nは、境界面の総数である。これは、面積、摩擦、及び材料特性が一定ではない場合があるため、単純化されたモデルではあるが、静電式固定における主な要因を示すために有用である。これらの計算は、直線摺動運動に適用されるが、運動に対する回転抵抗についても同様の計算をすることができる。
【0036】
大きな力に抵抗することが可能な、大きい固定圧力を有することが望ましい。多くの用途に関しては、極めて低い電圧を利用することが望ましく、これにより、安全性が高まり、制御電子機器のコスト及びエネルギー消費が低減される。極めて低い電圧における固定性能(すなわち、固定圧力)は、式(2)によれば、誘電体層の比誘電率を増大させることによって、及び、導電層間の距離を縮小することによって向上させることができる。数マイクロメートルの、又は1マイクロメートル未満ほどの、極めて薄い誘電体層を使用することにより、超低電圧レベルにおける大きな固定圧力を可能にすることができる。例えば、国際電気標準会議は、超低電圧デバイスを、直流220Vを超えないものであると定義している。英国及び米国における他の規格は、超低電圧システムを、直流75V又は直流60Vを超えないものとして定義している。上述の計算に基づくと、誘電体層の総厚さが約4.4マイクロメートルである場合には(3の平均比誘電率を想定すると)、220Vにおいて、大気圧の約10%の圧力を達成することができる。超低電圧の静電式固定の課題の1つは、固定圧力が、反対に帯電した隣接する導電層間の距離の二乗により低減されることである。導電層間の摺動自在な境界面に、デブリ又は大きな空隙が存在している場合、運動に対する有用な抵抗を達成する、又は更に、それらの層を一体に引き寄せるには、固定圧力が、低くなりすぎる恐れがある。例えば、上記の4.4マイクロメートルの距離が、5.2マイクロメートルの空隙を追加することによって約9.6マイクロメートルに増大される場合には、220Vにおいて、大気圧の1%しか達成されない。それゆえ、ジャミングデバイスが低電圧で動作する適切な固定圧力には、小さい誘電距離が必要である。更には、空隙は、総誘電距離を増大させるだけではなく、平均比誘電率もまた低減させ、それにより、上記の式によれば、固定圧力の更に大幅な低減が引き起こされる。本開示のいくつかの実施形態は、極めて薄い誘電体層を使用すること、及び空隙を縮小するためにチェーンを一体に引き寄せる付勢手段を導入することによって、超低電圧での固定を可能にする。
【0037】
いくつかの場合には、ジャミングデバイス200Bは、他の要素を含む。ジャミングデバイス200Bは、第1の導電層と第2の導電層とを互いに近接させて保つように構成されている、1つ以上の付勢要素を含む。いくつかの場合には、1つ以上の付勢要素は、内部にジャミングデバイス200Bのチェーンが配置される、エンクロージャである。いくつかの場合には、1つ以上の付勢要素は、継手240Bとすることができる。いくつかの場合には、付勢要素は、発泡体又は弾性層などのバネ要素であり、このバネ要素が、層に対して小さい圧力を加えることにより、それらの層は、軽い接触を維持し、次いで電圧の印加によって、一体となって固定されるように十分に近接することができる。いくつかの場合には、導電層間の間隙は、誘電材料と、最小限の量のみの空気又は他の材料とで、完全に充填されている。
【0038】
いくつかの場合には、誘電体層230Bは、第1のチェーン210Bのセット及び/又は第2のチェーン220Bのセットのセグメントの表面の、100パーセント(100%)未満を覆っている。換言すれば、ジャミングデバイス200Bは、チェーン200Bの表面の一部分又は表面全体において、縁部が誘電材料で覆われていない露出した導電層211Bを有する。露出した導電層は、電気的接続を容易にすることができる。いくつかの場合には、誘電体層230Bは、第1のチェーン210Bのセット及び/又は第2のチェーン220Bのセットのセグメントの表面の、80パーセント(80%)未満を覆っている。いくつかの場合には、誘電体層230Bは、第1のチェーン210Bのセット及び/又は第2のチェーン220Bのセットのセグメントの表面の、60パーセント(60%)未満を覆っている。静電式ジャミングデバイスに関する1つの課題は、空気の電気絶縁破壊(又は、誘電破壊)からデバイスを保護することである。いくつかの既存の静電式ジャミングデバイスでは、数百ボルトから数千ボルトの高電圧が使用されてきた。このことは、空気中での導電層間の最短経路が、誘電体層を介した導電層間の経路よりも何倍も長くなるように、ジャミングデバイスが、導電層をはるかに越えて延びた連続的な誘電体層を含むことを必要とする。これは、殆どの電圧における空気の誘電強度が、3MV/mのみである一方で、多くの誘電材料(ポリエチレン又はポリイミドなど)が、100MV/m以上の誘電強度を有しているためである。本開示のいくつかの実施形態は、空気の絶縁破壊強度よりも低い電界強度での有用な固定圧力を可能にすることによって、この問題を解決する。特に10マイクロメートル未満の、小さい間隙距離において、実際の空気の絶縁破壊強度が著しく増大するという事実から、付加的な利益が得られる。空気の絶縁破壊電圧よりも低い電圧で動作することによって、本開示のいくつかの実施形態は、材料の大型マスターロールを作り出すことが可能な、低コストの効率的な製造方法を可能にする。それらのロールは、構造層、1つ以上の導電層、及び1つ以上の誘電体層を含み得る。次いで、それらの材料のロールを、任意の形状の、より小さい多くのセグメントへと切断して、電気的に接続し、後述するように機械的に拘束して、セグメントのオープンチェーン及びクローズドチェーンを含む完成品へと組み立てることができる。静電式チェーンジャミングデバイスは、反対に帯電した隣接する導電層間の誘電材料の厚さの空気の絶縁破壊電圧よりも、低い電圧で動作されるため、そのようなジャミングデバイスは、電弧放電(又は、アーク放電)として現れて材料の融解又は燃焼を引き起こす恐れのある、空気の電気絶縁破壊から保護される。本開示のいくつかの実施形態の別の利点は、誘電体層内の、小さいピンホール若しくは切れ目、又は他の欠陥の影響を受けない点である。高電圧においては、小さいピンホールであっても、電弧放電を引き起こす恐れがある。本開示のいくつかの実施形態は、延長された誘電体層を有することなく、ジャミングチェーンの外周部を切断することを可能にするだけではなく、チェーンの適合性を向上させ、後述される他の利点を可能にする複雑なパターンに、ジャミングチェーンを切り込むことも可能にする。
【0039】
いくつかの場合には、ジャミングデバイス200Bは、1つのチェーンのみを含み得る。いくつかの実施形態では、ジャミングデバイス200Bは、複数のチェーンを含み得る。いくつかの場合には、チェーンのセグメントは、中実とすることができ、あるいは、例えばチェーンの可撓性(屈曲性)及び/又は伸張性を向上させるために、切り込みによってパターン化することもできる。いくつかの実施形態では、チェーンのセグメントは、1つ又は2つの軸に沿った可撓性を増大させるが、第3の軸に沿った所望の剛性を有するように、パターン化された切り込みを有する。いくつかの実施形態では、チェーンのセグメントは、1つ若しくは2つの軸に沿ってセグメントを伸張可能にするように、又は、チェーンのセグメントの諸領域が、他の領域に対して、平面内で若しくは表面に沿って移動することを可能にするように、セグメントに切り込まれてたパターンを有する。このパターンは、打ち抜きダイ切断、押出、型成形、レーザ切断、ウォータージェット、機械加工、ステレオリソグラフィ若しくは他の3Dプリント、レーザアブレーション、フォトリソグラフィー、化学エッチング、回転式ダイ切断、スタンピング、他の好適なネガ型若しくはポジ型加工技術、又はこれらの組み合わせを含むがこれらに限定されない、様々な方法によって形成することができる。本開示の中実チェーン及びパターン化されたチェーンは、単層構造又は多層構造とすることができ、上述のような様々な材料及び材料の層で形成することができる。
【0040】
導電層及び誘電体層は、様々な配置を有し得る。ジャミングデバイス200Cの1つの例示的配置が、
図2Cに示されており、ここでは、導電層211Cのそれぞれが、2つの誘電体層230Cの間に挟まれている。この配置では、摺動自在な境界面は、固定解除状態における2つの誘電体層の間に存在しており、総誘電体厚さは、2つの誘電体層230Cの厚さを含み、各誘電体層230Cが、特徴的な厚さ、及び場合により空隙を有し得る。いくつかの場合には、この多層構造は、積層する、又は層を重ねることによって構築することができる。いくつかの場合には、導電層は、コア層上にコーティングされているか、又は堆積(例えば、化学蒸着又は物理蒸着)されている。いくつかの場合には、コア層は、構造的支持を提供している。いくつかの場合には、誘電体層は、導電層上にコーティングされているか、又は堆積(例えば、化学蒸着又は物理蒸着)されている。ジャミングデバイス200Cは、第1のチェーン210Cのセット、第2のチェーン220Cのセット、及び複数の継手240Cを有し、各継手240Cが、第1のチェーン210Cのセット及び第2のチェーン220Cのセットの、隣接するセグメントを接続している。
【0041】
ジャミングデバイス200Dの別の例示的配置が、
図2Dに示されており、ここでは、チェーン内の隣接するセグメントの導電層211Dが、導電的に結合されている。ジャミングデバイス200Dは、第1のチェーン210Dのセット、第2のチェーン220Dのセット、及び複数の継手240Dを有し、各継手240Dが、第1のチェーン210Dのセット及び第2のチェーン220Dのセットの、隣接するセグメントを接続している。チェーンの各セグメントは、誘電体層230Dを有する。いくつかの場合には、この多層構造は、積層する、又は層を重ねることによって構築することができる。いくつかの場合には、導電層は、コア層上にコーティングされているか、又は堆積(例えば、化学蒸着又は物理蒸着)されている。いくつかの場合には、コア層は、構造的支持を提供している。いくつかの場合には、誘電体層は、導電層上にコーティングされているか、又は堆積(例えば、化学蒸着又は物理蒸着)されている。
【0042】
図3A~
図3Dは、セグメント式ジャミングデバイス、及びセグメント式ジャミングデバイス内で使用することが可能なチェーンの、様々な実施例を示す。
図3Aは、シート状のセグメントを有する、例示的なジャミングデバイス300Aを示す。ジャミングデバイス300Aは、1つ以上のチェーン310Aを含む。各チェーン310Aは、継手315Aを介して接続されている、2つ以上の隣接するセグメント(312A及び314A)を有する。この実施例では、セグメント(312A、314A)は、丸みを帯びた角部を有する、矩形の形状である。各セグメントは、2つの継手を有し、各継手は、2つの反対側の縁部の中心に近接している。
図3Bは、セグメント式ジャミングデバイス300Bの別の実施例を示す。セグメント式ジャミングデバイス300Bは、説明される実施形態のうちのいずれか1つを使用することが可能な、第1のチェーン310Aのセット及び第2のチェーン320Aのセットを有する。一実施例では、チェーンの各セットは、
図3Aに示されているチェーンと同様であり、各チェーン310Aは、隣接するセグメント(312A及び314A)が継手315Aを介して接続されている、2つ以上のセグメントを有し、各チェーン320Aは、隣接するセグメント(322A及び324A)が継手315Aを介して接続されている、2つ以上のセグメントを有する。ジャミングデバイス300Bは、2つのチェーン(310A及び320A)のセットの間に配置されているスペーサ325Aを有する。
【0043】
いくつかの場合には、スペーサ325Aは、硬質材料、例えば、ポリカーボネート、PET、ポリカーボネート、アクリル、又は、任意の他の硬質プラスチック若しくは軟質プラスチックのものとすることができる。また、アルミニウム、ステンレス鋼、青銅などの金属で作製することも可能である。一実施形態では、スペーサ325Aは、継手(315A)に近接して配置されている。スペーサは、断面の断面二次モーメント(second area moment(又はmoment area of inertia、又はsecond moment of area))、及び、所望の運動面外の軸におけるチェーンの曲げ強度を増大させることができる。このことは、スペーサが、比較的薄いセグメントを、より遠くに押し離すことによって、行われる。いくつかの場合には、このチェーン構成は、運動面外への屈曲に抵抗するためのチェーンの強度を、大幅に向上させる。
【0044】
図3Cは、セグメント式ジャミングデバイス内で使用することが可能な、1つの例示的なチェーン300Cを示す。チェーン300Cは、2つ以上のセグメント(312C、314C)を有し、2つの隣接するセグメント(312C、314C)は、継手315Cを介して接続されている。この実施例では、継手315Cは、セグメント(312C、314C)の一方の縁部に近接して配置されている。いくつかの実施態様では、このチェーン構成は、より大きい固定表面を提供し、屈曲に対してより良好な抵抗を有する。より大きい固定表面積は、抵抗することが可能な力を直接増大させ、また、外部構成要素との一体化及び位置合わせのための、追加的な表面積も提供することができる。
【0045】
より複雑な機構もまた、セグメント式固定によって作り出すことができる。各セグメントは、3つ以上の継手を有することができ、それらは、オープンチェーン配置又はクローズドチェーン配置へと接続することができる。直線継手、ピン・イン・スロット継手、及び他のタイプの継手もまた採用することができる。例えば、制御された運動、高い機械的効率、規定された速度プロファイル又は、リンク機構設計の当業者には既知の多くの他の利点を有する、四棒リンク機構又は他の複合機構を作り出すことが可能である。更なる利点、及びそれらを採用するための技術は、Erdman、Arthur Gらの「Mechanism Design:Analysis and Synthesis」(Pearson Education Taiwan,2004)に記述されている。
【0046】
図3Dは、より複雑な機構300Dの一実施例を示す。この配置は、シザー機構と称される場合が多い。機構300Dは、2つ以上のセグメント(312D、314D)を有し、各セグメントは、それぞれ、隣接するセグメントを接続している、3つの継手315Dを有する。この機構の1つの利点は、小さい運動入力で、大きい距離にわたる直線運動を生じさせる点である。このデバイスは、大きい領域をカバーするように拡張することができ、次いで、その位置を保持して外力に抵抗するように、固定させることができる。
【0047】
図4A、
図4Bは、突出したコネクタを有する、セグメント式ジャミングデバイス400の一実施例を示す。この実施例では、セグメント式ジャミングデバイス400は、第1のセグメント412のセット及び第2のセグメント414のセットを備える。セグメント(412、414)は、本明細書で説明されるようなセグメントの実施形態のうちの、いずれか1つを有し得る。いくつかの実施態様では、各セグメント412は、突出したコネクタ416を有する。各セグメント414は、突出したコネクタ417を有する。いくつかの場合には、セグメント412は、継手415を介してセグメント414と接続されている。いくつかの実施形態では、コネクタ416は、互いに電気的に接続されており、コネクタ417は、互いに電気的に接続されている。いくつかの実施形態では、コネクタ416及びコネクタ417は、それぞれ、ワイヤ418及びワイヤ419と接続されている。いくつかの場合には、ワイヤ418及びワイヤ419は、導電性エポキシでコネクタに取り付けられており、いくつかの実施形態では、ワイヤは、セグメント内の穴を貫通して、隣接するセグメント間にピン継手415を作り出している。いくつかの場合には、コネクタ416とコネクタ417との間に、電圧が印加される。
【0048】
図5A~
図5Cは、セグメント式ジャミングデバイス500を使用する実験を示す。セグメント式ジャミングデバイス500は、エンベロープ510内に配置されている、1つ以上のチェーン502を含む。エンベロープ510は、管522を介して真空源520に接続されている、ポート515を有する。
図5Bの図では、セグメント式ジャミングデバイス500は、エンベロープ内の圧力が周囲圧力よりも低い、固定状態にある。固定状態にあるセグメント式ジャミングデバイス500は、図示のように、特定の重量に耐えることができる。
図5Cの図では、セグメント式ジャミングデバイス500は、エンベロープ内の圧力がほぼ周囲圧力である、弛緩状態にある。弛緩状態にあるセグメント式ジャミングデバイス500は、図示のように、特定の重量に耐えることができない。
例示的実施形態
【0049】
項目A1.少なくとも1つのチェーンを含むチェーンのセットであって、チェーンのセットのそれぞれが、一連の接続されたセグメントを含む、チェーンのセットを備える、シートジャマブル装置であって、2つの隣接するセグメントが、継手を介して接続されており、2つの隣接するセグメントが、移動力が加えられたときに、第1の状態では互いに対して移動可能であり、2つの隣接するセグメントが、移動力が加えられたときに、第2の状態では固定された角度に留まる、シートジャマブル装置。
【0050】
項目A2.チェーンのセットが、積層構成で配置されている2つ以上のチェーンを含む、項目A1の装置。
【0051】
項目A3.2つ以上のチェーンが、それら2つ以上のチェーン上の1つ以上の継手における接続を介して積層されている、項目A2の装置。
【0052】
項目A4.チャンバを画定しているエンベロープであって、ガス不透過性材料で形成されている、エンベロープと、チャンバを流体連通するように配置されているポートと、を更に備え、少なくとも1つのチェーンが、チャンバ内に配置されている、項目A1~項目A3のうちの少なくとも1つの装置。
【0053】
項目A5.第2の状態が、エンベロープ内部の圧力が周囲圧力よりも低いときである、項目A4の装置。
【0054】
項目A6.チェーンのセットが、第1のチェーンのセット及びチェーンのセットを含み、第1のチェーンのセットと第2のチェーンのセットとが交互嵌合している、項目A1~項目A5のうちの少なくとも1つの装置。
【0055】
項目A7.チェーンのセットの各セグメントが、導電層を備える、項目A6の装置。
【0056】
項目A8.チェーンのセットの各セグメントが、誘電体層を備える、項目A7の装置。
【0057】
項目A9.第1のチェーンのセットが、第1のコネクタに電気的に接続されており、第2のチェーンのセットが、第2のコネクタに電気的に接続されている、項目A7の装置。
【0058】
項目A10.第2の状態が、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に電圧が印加されたときに引き起こされる、項目A9の装置。
【0059】
項目A11.継手が、回転継手又はピン継手である、項目A1の装置。
【0060】
項目A12.チェーンのセットが、第1のセグメントのセット及び第2のセグメントのセットを含み、第1のセグメントのセットのうちの1つと第2のセグメントのセットのうちの1つとが、継手を介して接続されている、項目A1の装置。
【0061】
項目A13.チェーンのセットの各セグメントが、導電層を備える、項目A12の装置。
【0062】
項目A14.チェーンのセットの各セグメントが、誘電体層を備える、項目A12の装置。
【0063】
項目A15.第1のセグメントのセットが、第1のコネクタに電気的に接続されており、第2のセグメントのセットが、第2のコネクタに電気的に接続されている、項目A12の装置。
【0064】
項目A16.第2の状態が、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に電圧が印加されたときに引き起こされる、項目A15の装置。
【0065】
項目A17.第1のセグメントのセットのそれぞれが、突出したコネクタを備える、項目A15の装置。
【0066】
項目A18.第2のセグメントのセットのそれぞれが、突出したコネクタを備える、項目A15の装置。
【0067】
項目B1.少なくとも1つのチェーンを含むチェーンのセットであって、チェーンのセットのそれぞれが、一連の接続されたセグメントを含む、チェーンのセットと、チャンバを画定しているエンベロープであって、ガス不透過性材料で形成されているエンベロープと、チャンバを流体連通するように配置されているポートと、を備える、シートジャマブル装置であって、少なくとも1つのチェーンが、チャンバ内に配置されており、2つの隣接するセグメントが、継手を介して接続されており、2つの隣接するセグメントが、移動力が加えられたときに、第1の状態では互いに対して移動可能であり、2つの隣接するセグメントが、移動力が加えられたときに、第2の状態では固定された角度に留まる、シートジャマブル装置。
【0068】
項目B2.チェーンのセットが、積層構成で配置されている2つ以上のチェーンを含む、項目B1の装置。
【0069】
項目B3.2つ以上のチェーンが、それら2つ以上のチェーン上の1つ以上の継手における接続を介して積層されている、項目B2の装置。
【0070】
項目B4.第2の状態が、エンベロープ内部の圧力が周囲圧力よりも低いときである、項目B1~項目B3のうちの少なくとも1つの装置。
【0071】
項目B5.継手が、回転継手又はピン継手である、項目B1~項目B4のうちの少なくとも1つの装置。
【0072】
項目C1.少なくとも1つのチェーンを含むチェーンのセットであって、チェーンのセットが、第1のセグメントのセット及び第2のセグメントのセットを含む、チェーンのセットを備える、シートジャマブル装置であって、第1のセグメントのセットのうちの1つと第2のセグメントのセットのうちの1つとが、継手を介して接続されており、第1のセグメントのセットが、第1のコネクタに導電的に結合されており、第2のセグメントのセットが、第2のコネクタに導電的に結合されており、チェーンのセットの各セグメントが、導電層を備え、チェーンのセットのそれぞれが、一連の接続されたセグメントを含み、2つの隣接するセグメントが、移動力が加えられたときに、第1の状態では互いに対して移動可能であり、2つの隣接するセグメントが、移動力が加えられたときに、第2の状態では固定された角度に留まる、シートジャマブル装置。
【0073】
項目C2.チェーンのセットが、積層構成で配置されている2つ以上のチェーンを含む、項目C1の装置。
【0074】
項目C3.2つ以上のチェーンが、それら2つ以上のチェーン上の1つ以上の継手における接続を介して積層されている、項目C2の装置。
【0075】
項目C4.第2の状態が、第1のコネクタと第2のコネクタとの間に電圧が印加されたときに引き起こされる、項目C1~項目C3のうちのいずれか1つの装置。
【0076】
項目C5.継手が、回転継手又はピン継手である、項目C1~項目C4のうちのいずれか1つの装置。
【0077】
項目C6.チェーンのセットの各セグメントが、誘電体層を備える、項目C1~項目C5のうちのいずれか1つの装置。
【0078】
項目C7.第1のセグメントのセットのそれぞれが、突出したコネクタを備える、項目C1~項目C6のうちのいずれか1つの装置。
【0079】
項目C8.第2のセグメントのセットのそれぞれが、突出したコネクタを備える、項目C1~項目C7のうちのいずれか1つの装置。