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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】沈降シリカ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/193 20060101AFI20241206BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20241206BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241206BHJP
   B26D 3/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C01B33/193
C09C1/28
C09D17/00
B26D3/00 601F
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021577035
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020067464
(87)【国際公開番号】W WO2020260262
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-23
(31)【優先権主張番号】19305861.7
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508079739
【氏名又は名称】ローディア オペレーションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガルベイ, パスカリン
(72)【発明者】
【氏名】コルボー-ジュスタン, フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】バートリー, ローラ
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-514819(JP,A)
【文献】特表2005-500238(JP,A)
【文献】特表2007-519793(JP,A)
【文献】国際公開第2018/202752(WO,A1)
【文献】特開2015-117138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C09C 1/28
C09D 17/00
B26D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式[SiO4/2]の単位と、式[(CH)SiO3/2]の単位とを含む沈降シリカにおいて、前記沈降シリカの13C NMRスペクトルにおいて、メチル基に割り当てられた2つの共鳴ピーク:-2.0~-5.0ppmの領域における第1のもの及び-5.5~-9.0ppmの領域における第2のものを示すことと、比(第2のピークの強度)/(第1のピークの強度)は、0.40超であることとを特徴とする沈降シリカ。
【請求項2】
前記比(第2のピークの強度)/(第1のピークの強度)は、0.50~1.60である、請求項1に記載の沈降シリカ。
【請求項3】
シリカの総重量に対して0.2重量%~10.0重量%の炭素含有量を有する、請求項1又は2に記載の沈降シリカ。
【請求項4】
40~600mgの範囲のCTAB表面積によって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項5】
50m/g~380m/gのCTAB表面積及び0.2重量%~3.5重量%の炭素含有量によって特徴付けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項6】
前記沈降シリカのメジアン粒子サイズd50及びCTAB表面積は、
|d50|>164.5-0.3×|CTAB|
(式中、|CTAB|は、m/gで表されるCTAB表面積の数値を表し、及び|d50|は、遠心沈降によって測定され、且つnmで表されるメジアン粒子サイズd50の数値を表す)
であることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の沈降シリカ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の沈降シリカを調製するための方法であって、
(i)2.0~5.0のpHを有する出発溶液を提供する工程と、
(ii)ケイ酸塩及び酸を前記出発溶液に同時に添加する工程であって、それにより、得られる反応媒体のpHは、2.0~5.0に維持される、工程と、
(iii)7.0~10.0の反応媒体のpH値が得られるまで、反応媒体へのケイ酸塩の添加を継続しながら、酸の添加を停止する工程と、
(iv)(iii)で得られた反応媒体にケイ酸塩及び酸を同時に添加する工程であって、それにより、pHは、7.0~10.0に維持される、工程と、
(v)6.0未満の反応媒体のpH値に達し、及びシリカ懸濁液が得られるまで、反応媒体への酸の添加を継続しながら、ケイ酸塩の添加を停止する工程と
を含み、工程(iv)又は(v)において、少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネート、反応媒体に添加され、沈殿反応の50%が起こった後、2.5~5.0のpHで実施される第1の沈殿段階が、アルカリ金属メチルシリコネートの添加と組み合わされ、少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネートの総量は、1.0~10.0重量%であり、アルカリ金属メチルシリコネートの量は、ケイ酸塩の初期量とアルカリ金属メチルシリコネートの初期量の合計に対して計算される、方法。
【請求項8】
工程(v)は、酸及びアルカリ金属メチルシリコネートが7.0~10.0のpHで反応媒体に同時に計量投入される第1の段階、それに続く、酸の添加が継続されている間、アルカリ金属メチルシリコネートの添加が停止され、及び反応媒体のpHが6.0未満に低下される第2の段階を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネートは、ナトリウム又はカリウムメチルシリコネートである、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の沈降シリカと少なくとも1つのポリマーとを含む組成物。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか一項に記載の沈降シリカ又は請求項10に記載の組成物を含む物品。
【請求項12】
靴底、床材、ガスバリア、ケーブルウェイのためのローラー、家庭用電化製品のためのシール、液体又はガスパイプのためのシール、ブレーキシステムシール、パイプ、被覆、ケーブル、エンジンサポート、バッテリーセパレーター、コンベヤーベルト、トランスミッションベルト、タイヤの形態の、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
断熱材、レゾルシノール-ホルムアルデヒド/シリカ複合材、コンクリート又は紙である、請求項11に記載の物品。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか一項に記載の沈降シリカ又は請求項10に記載の組成物を含むタイヤ又はタイヤ要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年6月27日に出願された欧州特許出願公開第19305861.7号からの優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、化学改質された沈降シリカ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマー組成物における補強充填剤としての沈降シリカの使用が知られている。沈降シリカとポリマーマトリックスとの適合性を改善するための、有機ケイ素化合物による沈降シリカ表面の化学改質も知られている。一般的に、化学改質は、シリカ沈降プロセスの最後に、多くの場合、乾燥後の更なる工程として沈降シリカに対して行われる。
【0004】
ここで、良好な熱放散特性を有する組成物を提供することができる化学的に改質された沈降シリカは、アルカリ金属アルキルシリコネートを使用することによるシリカ沈殿反応中の改質によって得ることができることが見出された。シリカ沈殿プロセスの特定の段階中、反応媒体にアルカリ金属アルキルシリコネートが存在すると、アルキル基で化学的に改質されたシリカを形成することができる。シリカの化学改質は、任意のその後の改質工程を必要とすることなく、沈降プロセス中に行われる。
【0005】
改質された沈降シリカの調製におけるアルカリ金属アルキルシリコネートの使用は、例えば、国際公開第2018/019373号パンフレットに開示されており、これは、酸、沈降シリカから選択される化合物及び/又は[SiO4/2]前駆体材料並びにオルガノシリケートの反応を含むプロセスを開示しており、この場合、改質反応は、反応中又は反応直後に起こり、沈降シリカを生成する。このプロセスで得られた沈降シリカは、塩の含有量が少なく、シリコーンエラストマー組成物、トナー又は現像液における強化充填剤としての用途を見出す。
【0006】
ここで、沈殿プロセスは、低いpHで行われる工程、それに続く、高いpHで行われる工程を含み、その間にアルカリ金属メチルシリコネートが反応媒体に添加され、得られる沈降シリカは、エラストマー組成物の熱散逸特性及び/又はその硬化挙動を改善できることが見出された。前記エラストマー組成物を含むタイヤは、とりわけ、減少した転がり抵抗によって特徴付けられる。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の目的は、例えば、ポリマー組成物中の補強充填剤として使用することができる、新規の化学改質された沈降シリカを提供することである。本発明の第2の目的は、化学的に改質された沈降シリカの製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の沈降シリカは、とりわけ、シリカに共有結合されたメチル基の存在によって特徴付けられる。本発明のシリカは、以下の説明並びに特許請求の範囲及び実施例において詳細に定義される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の沈降シリカは、式[SiO4/2]の単位と、式[(CH)SiO3/2]の単位とを含み、これは、沈降シリカの13C NMRスペクトルにおいて、メチル基に割り当てられた2つの共鳴ピーク:-2.0~-5.0ppmの領域における第1のもの及び-5.5~-9.0ppmの領域における第2のものが存在し、且つ比(第2のピークの強度)/(第1のピークの強度)が0.40超であるという事実によって特徴付けられる。
【0010】
「-X~-Yppmの共鳴ピーク」という表現は、共鳴ピークの最大値の値が、化学シフトスケールがアダマンタンの共鳴で較正される場合(38.5ppm及び29.4ppmにおいて)、-X~-Yppmの13C NMRスペクトルの領域に存在することを示すために本明細書で使用される。
【0011】
本発明のシリカのメチル基に割り当てられた共鳴は、沈降シリカの調製に使用されるアルカリ金属メチルシリコネートの同じメチル基の共鳴に対してシフトされていることが観察される。例えば、アルカリ金属メチルシリコネートがカリウムメチルシリコネートである場合、-1.1ppmの単一メチル共鳴は、-2.0~-5.5ppmの第1のピークと、-5.5~-9.0ppmの第2のピークとに分割される。第1のピークは、-3.0~-5.0ppmにあり得る。第2のピークは、-6.5~-8.5ppmにあり得る。
【0012】
比(第2のピークの強度)/(第1のピークの強度)は、0.40超である。比(第2のピークの強度)/(第1のピークの強度)は、好ましくは、0.45以上、更に0.50以上、更に0.52以上である。
【0013】
比(第2のピークの強度)/(第1のピークの強度)は、5.00という高さであり得る。
【0014】
比(第2のピークの強度)/(第1のピークの強度)は、0.40~5.00、更に0.45~3.00、0.45~2.00、更に0.45~1.60、0.50~1.60であり得る。
【0015】
本発明のシリカは、シリカ構造体におけるSi原子の少なくとも一部に化学的に結合されたメチル基を含む。
【0016】
本明細書では、用語「シリカ」及び「沈降シリカ」は、同義語として用いられる。表現「沈降シリカ」は、ケイ酸ナトリウムの溶液の酸性化、それに続く、沈降物の濾過及び例えばアルコール又は超臨界流体など、有機溶媒を使用して沈降物から水を抽出するいかなる工程もない乾燥によって生成される非晶質シリカを定義する。
【0017】
本発明の沈降シリカは、少なくとも0.2重量%、典型的には0.2重量%~10.0重量%の炭素含有量を有する。本明細書全体を通して、炭素含有量は、シリカの総重量に対する重量による炭素の量として定義される。炭素含有量は、沈降シリカに化学的に結合されたメチル部位の量を表す。炭素含有量は、典型的には、10.0重量%未満であり、それは、更に5.0重量%未満であり得る。有利には、炭素含有量は、0.2重量%~5.0重量%、更に0.3~4.0重量%である。炭素含有量は、0.2重量%~3.5重量%、更に0.3~3.0重量%、好ましくは0.3~2.0重量%であり得る。
【0018】
表現、重量%及び重量による%は、同義語として使用される。
【0019】
一般的に、本発明による沈降シリカは、40~600m/gのCTAB表面積を有する。CTAB表面積は、少なくとも50m/g、少なくとも60m/g、少なくとも80m/g、更に少なくとも120m/g、少なくとも160m/g、少なくとも205m/g、少なくとも210m/gであり得る。CTAB比表面積は、最大で450m/g、最大で380m/g、更に最大で300m/gであり得る。CTAB表面積は、特に50~450m/g、とりわけ60~380m/g、例えば80~300m/gであり得る。
【0020】
一実施形態では、本発明の沈降シリカは、
- 40m/g~600m/g、好ましくは50m/g~380m/g、より好ましくは60m/g~300m/gのCTAB表面積、及び
- 0.2重量%~3.5重量%、好ましくは0.3重量%~3.0重量%の炭素含有量
によって特徴付けられる。
【0021】
本発明のシリカの更なる特徴は、所与のCTAB表面積値に対する大きいメジアン粒子サイズ(粒子直径)d50である。特に、所与のCTAB表面積での本発明のシリカのメジアン粒子サイズは、公知の有機的に改質された沈降シリカで測定される値よりも大きいことが見出された。
【0022】
本発明のシリカのメジアン粒子サイズd50及びCTAB表面積は、
|d50|>164.5-0.3×|CTAB| (I)
であるようなものであることが見出された。
【0023】
式(I)では、|CTAB|は、m/gで表されるCTAB表面積の数値を表す。|CTAB|は、無次元の数である。例として、CTABの測定値が200m/gである場合、|CTAB|は、200である。
【0024】
式(I)において、|d50|は、遠心沈降によって測定され、且つnm単位で表されるメジアン粒子サイズd50の数値を表す。例として、遠心沈降によって測定されたd50の値が100nmである場合、|d50|は、100である。d50は、その下(及びその上)で凝集体の総質量の50%が見られる直径を表す。従って、d50は、所与の分布のメジアン粒子サイズを表し、これに関連して、用語「サイズ」は、「直径」を意味するものとする。|d50|は、無次元の数である。
【0025】
本発明による沈降シリカは、典型的には、45m/g~650m/g、特に70m/g~500m/g、更に90~400m/g、例えば90~370m/gのBET表面積を有する。BET表面積は、標準NF ISO 5794-1、付録E(2010年6月)に詳述されるブルナウアー-エメット-テラー法に従って決定され得る。
【0026】
本発明による沈降シリカは、標準ISO 787/11に従って測定して最大で0.50g/cm、好ましくは0.15~0.50g/cm、特に0.15~0.40g/cmの充填密度を有する。
【0027】
本発明の沈降シリカは、沈降シリカの懸濁液を生成するケイ酸塩と酸との反応を含むプロセスによって有利に得ることができ、前記反応は、少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネートが、沈殿反応の50%が起こった後の反応媒体に提供される少なくとも1つの工程を含む。
【0028】
従って、本発明の第2の目的は、本発明の沈降シリカを調製するための方法である。
【0029】
用語「ケイ酸塩」は、本発明の方法の過程中に添加され得る1つ以上のケイ酸塩を指すために本明細書で使用される。用語「ケイ酸塩」は、アルカリ金属ケイ酸塩からなる群から選択される化合物を指すために本明細書で使用される。有利には、ケイ酸塩は、ケイ酸ナトリウム及びケイ酸カリウムからなる群から選択される。ケイ酸塩は、メタケイ酸塩又は二ケイ酸塩などの任意の公知の形態であり得る。
【0030】
ケイ酸ナトリウムが使用される場合、後者は、一般的に、2.0~4.0、特に2.4~3.9、例えば3.1~3.8のSiO/NaO重量比を有する。
【0031】
一般的に、ケイ酸塩は、典型的には、3.9重量%~25.0重量%、例えば5.6重量%~23.0重量%、特に5.6重量%~20.7重量%の濃度を有する溶液として提供される。本明細書全体を通して、溶液中のケイ酸塩濃度は、SiOの重量で表される。
【0032】
用語「酸」は、本発明の方法の過程中に添加され得る1つ以上の酸を指すために本明細書で使用される。任意の酸をプロセス中に使用することができる。一般的に、硫酸、硝酸若しくは塩酸などの鉱酸又は酢酸、ギ酸若しくは炭酸などの有機酸が使用される。硫酸が好ましい。
【0033】
酸は、希釈又は濃縮形態で反応媒体に計量投入され得る。プロセスの異なる段階で異なる濃度の同じ酸を用いることができる。
【0034】
プロセスの好ましい実施形態では、プロセスの全ての段階で硫酸及びケイ酸ナトリウムが用いられる。
【0035】
本発明の方法は、沈殿反応の50%が起こった後、少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネートが反応媒体に添加されるという事実によって特徴付けられる。
【0036】
「沈殿反応の50%が起こった後」という表現は、本明細書では、前記所与の段階までに生成されたSiOの量が、このプロセスで生成されるSiOの最終量の50重量%を超える、プロセスの任意の段階を示すために使用される。
【0037】
プロセスに応じて、シリカ沈降の割合は、様々な方法で監視され得る。プロセスの一変形形態では、シリカの総量の50重量%の形成は、プロセス中に添加されるケイ酸塩の総量の50%の反応媒体への添加に対応する。
【0038】
別の変形形態では、反応媒体の中和率が50%に達したとき、シリカの総量の50重量%の形成が達成される。用語「中和比」は、反応媒体に添加された酸によって生成されたHのモル数と、反応媒体中のケイ酸塩に由来するアルカリ金属のモル数との比として定義される。
【0039】
適切なアルカリ金属メチルシリコネートの注目すべき例は、一般式(II):
HO-[Si(CH)(OM)-O-]H (II)
又は(III):
(CHSi(OM)
(式中、nは、1~6、特に1~3、好ましくは1の整数であり、及びMは、アルカリ金属、好ましくはナトリウム又はカリウムである)
のものである。
【0040】
好ましくは、アルカリ金属メチルシリコネートは、ナトリウム又はカリウムメチルシリコネートから選択される。
【0041】
本発明の方法は、
(i)2.0~5.0、好ましくは2.5~5.0のpHを有する出発溶液を提供する工程と、
(ii)ケイ酸塩及び酸を前記出発溶液に同時に添加する工程であって、それにより、得られる反応媒体のpHは、2.0~5.0に維持される、工程と、
(iii)7.0~10.0の反応媒体のpH値が得られるまで、反応媒体へのケイ酸塩の添加を継続しながら、酸の添加を停止する工程と、
(iv)(iii)で得られた反応媒体にケイ酸塩及び酸を同時に添加する工程であって、それにより、pHは、7.0~10.0に維持される、工程と、
(v)6.0未満の反応媒体のpH値達し、及びシリカ懸濁液が得られるまで、反応媒体への酸の添加を継続しながら、ケイ酸塩の添加を停止する工程と
を含み、工程(iv)又は(v)において、少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネートが反応媒体に計量投入されることを特徴とする。
【0042】
アルカリ金属メチルシリコネートの添加は、ケイ酸塩の総量の50%が反応媒体に添加された後に行われる。所与の最終量のシリカを得るためのケイ酸塩の総量は、共通の一般知識に従ってプロセスの最初に当業者によって決定され得る。
【0043】
プロセスの第1の実施形態では、アルカリ金属メチルシリコネートの全体の添加は、工程(iv)中に行われる。
【0044】
プロセスの第2の実施形態では、アルカリ金属メチルシリコネートの全体の添加は、工程(v)中に行われる。
【0045】
前記実施形態の第1の態様では、工程(v)は、2つの段階、酸及びアルカリ金属メチルシリコネートが7.0~10.0のpHで反応媒体に同時に計量投入される第1の段階、それに続く、酸の添加が継続される間、アルカリ金属メチルシリコネートの添加が停止され、及び反応媒体のpHが6.0未満に低下される第2の段階を含む。
【0046】
このプロセスは、追加の工程、特に反応媒体へのケイ酸塩及び/又は酸の添加によってpHが更に変動する工程を含み得る。
【0047】
理論に拘束されることを望まないが、沈殿反応の50%が起こった後、2.5~5.0のpHで行われる第1の沈殿段階とアルカリ金属メチルシリコネートの添加とを組み合わせることは、生成物のNMRスペクトルに異なるメチル基が存在することからわかるように、沈降シリカの構造の異なる部分におけるアルカリ金属アルキルシリコネートのメチル部位の組み込みを可能にする。
【0048】
上記で概説した全てのプロセスの実施形態では、少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネートの添加の段階に関係なく、反応媒体に計量投入される前記化合物の累積量は、少なくとも0.5重量%、典型的には少なくとも1.0重量%、更に少なくとも5.0重量%である。少なくとも1つのアルカリ金属メチルシリコネートの総量は、典型的には、10.0重量%以下である。適切な範囲は、一般的に、1.0~10.0重量%、2.0~10.0重量%、更に2.0~8.0重量%である。アルカリ金属メチルシリコネートの量は、出発溶液中のシリカ濃度に対して計算される(ケイ酸塩の初期量と、アルカリ金属メチルシリコネートの初期量との合計として計算される)。
【0049】
反応媒体に計量投入される前記化合物の累積量は、沈降シリカの炭素含有量が少なくとも0.2重量%、典型的には0.2~10.0重量%であるようなものである。アルカリ金属メチルシリコネートの添加速度は、当業者に知られている手段により、沈降シリカにおけるメチル部位の所望の含有量を得るように適合させることができる。
【0050】
ケイ酸塩と酸との反応全体が実施される反応槽は、通常、適切な撹拌装置及び加熱装置を備えている。
【0051】
ケイ酸塩と酸との反応全体は、一般的に、40~96℃、特に80~95℃の温度で行われる。本発明の1つの変形形態によれば、ケイ酸塩と酸との反応全体は、通常、40~96℃、特に80~95℃の一定温度で行われる。
【0052】
本発明の別の変形形態によれば、反応終了時の温度は、反応開始時の温度よりも高く、従って、反応の開始時の温度は、好ましくは、40~80℃に維持され、次いで、温度は、好ましくは、80~96℃の値まで上昇され、その値で反応の最後まで維持される。
【0053】
プロセスの実施形態のそれぞれについて直前に説明した工程の終わりに沈降シリカの懸濁液が得られ、続いてこれを分離工程(液体/固体分離)にかける。従って、その実施形態の全てにおけるプロセスは、典型的には、沈降シリカの懸濁液を濾過し、沈降シリカを乾燥させる更なる工程を含む。このプロセスは、有機溶媒、例えばアルコール又は超臨界流体などを使用して沈降物から水を抽出する工程を含まない。
【0054】
この分離は、通常、濾過及びそれに続いて必要に応じて洗浄を含む。この濾過は、任意の適切な方法に従い、例えばベルトフィルター、回転フィルター、例えば真空フィルター又は好ましくはフィルタープレスによって実施される。
【0055】
続いて、濾過ケークに対して液化操作が行われる。用語「液化」は、本明細書では、固体、即ち濾過ケークが流体様の塊に転化するプロセスを示すことを意図される。液化工程後、濾過ケークは、流動性を有する流体様形態であり、沈降シリカは、懸濁状態である。
【0056】
液化工程は、懸濁状態のシリカの粒子サイズ分布の低下をもたらす機械的処理を含み得る。前記機械的処理は、濾過ケークを高剪断ミキサー、コロイドタイプミル又はボールミルに通すことによって実施され得る。任意選択的に、液化工程は、例えば、水又は酸を添加することによって濾過ケークを化学作用に供することによって実施され得る。機械的及び化学的処理の両方が実施され得る。液化工程後に得られる沈降シリカの懸濁液は、その後、乾燥される。
【0057】
乾燥は、当技術分野で知られている手法に従って実施され得る。好ましくは、乾燥は、噴霧によって行われる。この目的のために、任意の種類の適切な噴霧器、特にタービン、ノズル、液体圧力又は二流体噴霧乾燥器を使用することができる。
【0058】
乾燥操作がノズル式噴霧乾燥器を使用して実施される場合、得ることのできる沈降シリカは、通常、実質的に球形のビーズ形態である。この乾燥操作後、任意選択的に、回収された生成物に対して粉砕又は微粉化の工程を行うことが可能であり、得ることができる沈降シリカは、一般的に粉末の形態である。
【0059】
最後に、上記で示されたように乾燥、粉砕又は微粉化された生成物は、任意選択的に集塊化工程に供され得、これは、例えば、直接圧縮、湿式造粒(即ち水、シリカ懸濁液などの結合剤を使用する)、押出成形又は好ましくは乾式圧密からなる。この集塊化工程によって得ることができる沈降シリカは、一般的に顆粒の形態である。
【0060】
本発明の沈降シリカは、断熱材料の製造などの多くの用途で使用することができる。本発明の沈降シリカは、レゾルシノール-ホルムアルデヒド/シリカ複合材の調製において、コンクリート又は紙における吸収剤として又は添加剤としても使用することができる。
【0061】
本発明の沈降シリカは、ポリマー組成物の充填剤として特に有利な用途を見出し得る。
【0062】
従って、本発明の更なる目的は、本発明の沈降シリカを含む組成物である。組成物は、有利には、本発明の沈降シリカと少なくとも1つのポリマーとを含む。少なくとも1つのポリマーは、熱硬化性ポリマー及び熱可塑性ポリマーの中から選択され得る。熱硬化性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、フェノキシ樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、マレイミド樹脂及びシアネート樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0063】
適切な熱可塑性ポリマーの注目すべき非限定的な例としては、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸エステル/スチレンコポリマー、アクリロニトリル/スチレンコポリマー、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ABS、ASA及びAESなどのスチレン系ポリマー、ポリメチルメタクリレートなどのアクリルポリマー、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリアリールエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、熱可塑性ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/α-オレフィンコポリマーなどのポリオレフィン、エチレン/ビニルアセテートコポリマー、エチレン/(メタ)アクリル酸エステルコポリマー、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、エチレン/アクリル酸コポリマーなどのα-オレフィンと様々なモノマーとのコポリマー、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン及び脂肪族グリコール/脂肪族ジカルボン酸コポリマーなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。
【0064】
本発明のシリカは、エラストマー組成物の補強充填剤として有利に用いられ得る。従って、本発明の好ましい目的は、本発明のシリカと1つ以上のエラストマーとを含む組成物である。エラストマーは、好ましくは、-150℃~+300℃、例えば-150℃~+20℃の少なくとも1つのガラス転移温度を示す。
【0065】
例えば、特にエチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、イソブチレン若しくは酢酸ビニル、ポリブチルアクリレート又はこれらの混合物などの少なくとも1つの不飽和を含む脂肪族又は芳香族モノマー由来のエラストマーを使用することができる。高分子鎖に沿って且つ/又はその1つ以上の末端に位置する化学基によって官能化されたエラストマー(例えば、シリカの表面と反応することができる官能基によって)である官能化エラストマー及びハロゲン化ポリマーも挙げることができる。
【0066】
適切なエラストマーの注目すべき非限定的な例は、ジエンエラストマーである。ジエンエラストマーの中では、例えば、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー又はこれらの混合物、特にスチレン/ブタジエンコポリマー(SBR、特にESBR(エマルジョン)又はSSBR(溶液))、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、エチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)及び更に関連する官能化ポリマー(例えば、シリカと相互作用することができる、ペンダント極性基又は鎖末端における極性基を示す)を挙げることができる。
【0067】
天然ゴム(NR)及びエポキシ化天然ゴム(ENR)も挙げることができる。
【0068】
ポリマー組成物は、硫黄で加硫され得るか、又は特に過酸化物若しくは他の架橋系(例えば、ジアミン若しくはフェノール樹脂)で架橋され得る。
【0069】
一般的に、ポリマー組成物は、少なくとも1つの(シリカ/ポリマー)カップリング剤及び/又は少なくとも1つの被覆剤を更に含み、これらは、とりわけ、酸化防止剤を更に含み得る。
【0070】
カップリング剤の注目すべき非限定的な例は、例えば、「対称」又は「非対称」シランポリスルフィドであり、より具体的にはビス((C1~C4)アルコキシル(C1~C4)アルキルシリル(C1~C4)アルキル)ポリスルフィド(具体的にはジスルフィド、トリスルフィド又はテトラスルフィド)、例えばビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ポリスルフィド又はトリエトキシシリルプロピルテトラスルフィドなどのビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ポリスルフィドなどを挙げることができる。モノエトキシジメチルシリルプロピルテトラスルフィドも挙げることができる。3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシランなど、マスクされた又は遊離のチオール官能基又はチオエステル基を含むシランも挙げることができる。
【0071】
ポリマー組成物中の本発明のシリカの重量比は、かなり広い範囲で変動することができる。重量比は、通常、ポリマーの重量の10%~200%、特に20%~160%を表す。一実施形態では、本発明の沈降シリカは、ポリマーの重量の20%~80%、例えば30%~70%を表し得る。代替の実施形態では、それは、ポリマーの重量の80%~140%、例えば90%~120%を表し得る。
【0072】
本発明の特定の目的は、典型的には、ポリマーの重量の20%~160%の量の本発明の沈降シリカと、上で詳述されたジエンエラストマー、天然ゴム及びエポキシ化天然ゴムからなる群から選択される少なくとも1つのポリマーとを含む組成物である。
【0073】
本発明によるシリカは、有利には、補強無機充填剤の全て及び更にポリマー組成物の補強充填剤の全てを構成し得る。
【0074】
本発明の沈降シリカを含む組成物は、多くの物品の製造のために使用され得る。本発明の沈降シリカと上記の組成物とを含む完成品の非限定的な例は、例えば、靴底、床材、ガスバリア、難燃性材料並びにまたエンジニアリング部品、例えばケーブルウェイのためのローラー、家庭用電化製品のためのシール、液体若しくはガスパイプのためのシール、ブレーキシステムシール、パイプ(フレキシブル)、被覆(特にケーブル被覆)、ケーブル、エンジンサポート、バッテリーセパレーター、コンベヤーベルト又はトランスミッションベルトなどである。本発明の組成物は、タイヤ及びタイヤ部品の製造において有利に使用され得る。
【0075】
本発明の更なる目的は、本発明の沈降シリカを含むタイヤ又はタイヤ部品である。
【0076】
参照により本明細書に援用されるいずれかの特許、特許出願及び刊行物の開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【0077】
ここで、本発明は、以下の実施例に関連して説明され、その目的は、単に例示的なものであるにすぎず、本発明の範囲を限定することを意図しない。
【実施例
【0078】
分析方法
本発明の沈降シリカの物理化学的特性を、以下に記載する方法を用いて決定した。
【0079】
CTAB表面積
標準NF ISO 5794-1、付録G(2010年6月)に従ってCTAB表面積を決定した。
【0080】
全炭素含有量の決定
全炭素含有量は、Horiba EMIA 320 V2などの炭素/硫黄分析装置を使用して測定した。炭素/硫黄分析装置の原理は、誘導炉(約170mAに調整)内の酸素流中、燃焼促進剤(約2gのタングステン(特にLecocel 763-266)、約1gの鉄及び約0.25gのスズ)の存在下での固体試料の燃焼に基づく。分析される試料(約0.2gの重量)に存在する炭素は、酸素と化合してCO、COを形成する。その後、これらのガスは、赤外線検出器によって分析される。試料からの水分及びこれらの酸化反応中に生じた水は、赤外線測定に干渉しないように、脱水剤(過塩素酸マグネシウム)を含むカートリッジ上を通すことによって除去される。
【0081】
結果は、シリカ試料の総重量に対する元素炭素の重量パーセントとして表される。
【0082】
13C NMR分光法
生成物は、7.04Tで動作するBruker Avance固体300分光計での1D 13C MAS NMR分光法によって特性評価された。90°パルス、3msの接触時間及び5秒のリサイクル時間及び10000~20000のトランジェントによる交差分極において、回転周波数が10KHzの市販の4mm高速プローブ(DVT4)が使用された。メチルの共鳴の同定のために分析されたスペクトルの領域は、-15~10ppmであった。
【0083】
校正は、38.5ppm及び29.4ppmでの2つの化学シフトによって特徴付けられるアダマンタンに対して行った。
【0084】
データ分析は、内蔵のTOPSPIN 4.0.6ソフトウェアを使用して実行された。-2.0~-5.0ppm及び-5.5~-9.0ppmのスペクトルで最も強いシグナルを手動で選択し、各ピークの強度を決定した。
【0085】
BET表面積の決定
BET表面積は、標準NF ISO 5794-1、付録E(2010年6月)に詳述されているブルナウアー-エメット-テラー法に従い、以下の調整を用いて決定された:試料を200℃±10℃で予備乾燥させ、測定のために使用される分圧P/Pは、0.05~0.3であった。
【0086】
ディスク式遠心沈降機(CPS)での遠心沈降による粒子サイズ分布及び粒子サイズの決定
d50の値は、CPS Instruments社によって販売されている遠心光沈降速度計タイプ「CPS DC 24000UHR」を使用するディスク式遠心沈降機での遠心沈降によって決定された。この計測器は、デバイスによって供給されるオペレーティングソフトウェア(オペレーティングソフトウェアバージョン11g)を備えている。
【0087】
国際公開第2018/202752A1号パンフレット(段落[00155]~[00178])に記載されているのと同じ方法及び同じツールを本発明のシリカのd50の決定に使用した。
【0088】
実施例1
25Lステンレス鋼反応器に16.7Lの精製水、260.2gのNaSO(固体)を導入した。溶液を攪拌し、加熱して92℃に達した。この温度で全ての反応を実施した。媒体のpHが3.8の値に達するまで、7.7重量%の硫酸溶液を反応器に計量投入した。
【0089】
次いで、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.46、SiO濃度=19.5重量%、全プロセス中に使用)は、7.7重量%の硫酸溶液と同時に112g/分の流量で15分間にわたり導入された。反応媒体のpHが4.1の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。この工程後、ケイ酸ナトリウム溶液を同じ流量で更に10分間導入し、95重量%の硫酸を使用してpHを4.1に一定に保った。
【0090】
反応媒体がpH値8.0に達するまで、ケイ酸塩の添加を123g/分の流量に維持しながら、酸の導入を停止した。
【0091】
同時に、8分間にわたり、178g/分の流量で反応器にケイ酸ナトリウム及び95重量%の硫酸溶液を計量投入した。反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。次いで、331gのカリウムメチルシリコネート溶液(SILRES(登録商標)BS 16、Wacker Chemie AG、50重量%)を、ケイ酸ナトリウムの流量を一定に維持しながら反応媒体中で10分間にわたり計量投入した。95重量%の硫酸を使用して、pHを8.0のpHに維持した。
【0092】
同時添加の最後に、反応媒体のpHを硫酸95重量%で4.8にした。反応混合物を5分間放置した。
【0093】
こうして得られたシリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。このようにして得られた濾過ケークを、水を加えながら機械的に分解して、固形分が15.4重量%になるようにした。得られたシリカ懸濁液のpHを、7.7重量%の硫酸溶液を加えることにより6.2にした。得られた懸濁液をノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS1を得た。沈降シリカS1の特性を表1に報告する。
【0094】
実施例2
25Lステンレス鋼反応器に15.7Lの精製水及び244.4gのNaSO(固体)を導入した。溶液を攪拌し、加熱して92℃に達した。この温度で全ての反応を実施した。媒体のpHが3.8の値に達するまで、7.7重量%の硫酸溶液を反応器に計量投入した。
【0095】
次いで、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.46、SiO濃度=19.5重量%、全プロセス中に使用)を7.7重量%の硫酸溶液と同時に105g/分の流量で15分間にわたり導入した。反応媒体のpHが4.1の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。この工程後、ケイ酸ナトリウム溶液を同じ流量で更に10分間導入し、95重量%の硫酸を使用してpHを4.1に一定に保った。
【0096】
反応媒体がpH値8.0に達するまで、ケイ酸塩の添加を123g/分の流量に維持しながら、酸の導入を停止した。
【0097】
同時に、18分間にわたり、167g/分の流量でケイ酸ナトリウム及び95重量%の硫酸溶液を計量投入した。反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。次いで、368gのカリウムメチルシリコネート溶液(SILRES(登録商標)BS 16、Wacker Chemie AG、50重量%)を10分間にわたり反応媒体に計量投入した。95重量%の硫酸を使用してpHを8.0のpH値に維持した。
【0098】
同時添加の最後に、反応媒体のpHを硫酸95重量%で4.8にした。反応混合物を5分間放置した。
【0099】
こうして得られたシリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。このようにして得られた濾過ケークを、アルミン酸ナトリウム溶液(Al濃度:12重量%)を加えながら機械的に分解させて、3000ppmのAl/SiO濃度を得た。得られたシリカ懸濁液のpHは、7.7重量%の硫酸溶液の添加により6.2にした。得られた懸濁液をノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS2を得た。沈降シリカS2の特性を表1に報告する。
【0100】
実施例3
25Lステンレス鋼反応器に16.7Lの精製水及び260.2gのNaSO(固体)を導入した。溶液を攪拌し、加熱して92℃に達した。この温度で全ての反応を実施した。媒体のpHが3.8の値に達するまで、7.7重量%の硫酸溶液を反応器に計量投入した。
【0101】
次いで、ケイ酸ナトリウム溶液(SiO/NaO比=3.46、SiO濃度=19.5重量%、全プロセスで使用)を7.7重量%の硫酸溶液と同時に112g/分の流量で15分間にわたり導入した。反応媒体のpHが4.1の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。この工程後、ケイ酸ナトリウム溶液を同じ流量で更に10分間導入し、95重量%の硫酸を使用してpHを4.1に一定に保った。
【0102】
反応媒体がpH値8.0に達するまで、ケイ酸塩の添加を123g/分の流量に維持しながら、酸の導入を停止した。
【0103】
同時に、8分間にわたり、178g/分の流量でケイ酸ナトリウム及び95重量%の硫酸溶液を計量投入した。反応媒体のpHが8.0の値に維持されるように、硫酸溶液の流量を調整した。次いで、993gのカリウムメチルシリコネート溶液(SILRES(登録商標)BS 16、Wacker Chemie AG、50重量%)を、ケイ酸ナトリウムの流量を一定に維持しながら10分間にわたり反応媒体に計量投入した。95重量%の硫酸を使用して、pHを8.0の値に維持した。
【0104】
同時添加の最後に、反応媒体のpHを硫酸95重量%で4.8にした。反応混合物を5分間放置した。
【0105】
こうして得られたシリカ懸濁液を濾過し、フィルタープレスで洗浄した。このようにして得られた濾過ケークを、水を加えながら機械的に分解させて、15.4重量%の固形分に到達させた。得られたシリカ懸濁液のpHは、7.7重量%の硫酸溶液の添加により6.2にした。得られた懸濁液をノズル式噴霧乾燥器によって乾燥させ、沈降シリカS3を得た。沈降シリカS3の特性を表1に報告する。
【0106】
【表1】
【0107】
比較シリカCS1:Zeosil(登録商標)Premium 200MP(Solvay SAから入手可能)の試料。
【0108】
実施例4 - 比較例1
シリカS1は、SBR/BRマトリックスで評価された。エラストマー100部当たりの重量部(phr)として表される組成物は、以下の表2に記載される。
【0109】
【表2】
【0110】
ゴム組成物の調製プロセスは、2つの連続する調製段階で実施された:高温熱機械加工の第1の段階、それに続く、加硫系を導入するための110℃未満の温度での機械加工の第2の段階。
【0111】
第1の段階は、Brabenderブランドの内部ミキサー型の混合装置(380mLの容量)を使用して行った。第1の段階の第1のパスにおいて、エラストマー及び強化充填剤(分割での導入)をカップリング剤、樹脂、DPG及びステアリン酸と混合した。持続時間は、約3~4分30秒であり、滴下温度は、約140~150℃であった。混合物を冷却した後(100℃未満の温度)、第2のパスで酸化亜鉛と保護剤/酸化防止剤とを組み込み、シラン化を続行することを可能にした。このパスの持続時間は、4分であり、落下温度は、約150~160℃であった。
【0112】
混合物を冷却した後(100℃未満の温度)、第2の段階中に加硫系(硫黄及び促進剤、例えばCBS)を添加した。これを、50℃に予熱されたオープンミルで実施した。この段階の継続時間は、2~6分であった。各最終混合物を次いで厚さ2~3mmのプラーク形態にカレンダー加工した。
【0113】
加硫物の機械的特性
測定は、160℃で1時間硬化された加硫された組成物で実施した。
【0114】
加硫物のショアA硬度測定は、標準ASTM D 2240に従って行った。所与の値を3秒で測定した。
【0115】
標準NF ISO 37の指示に従い、速度500mm/分でInstron 5564装置においてH2型の試験検体を用いて一軸引張り試験を実施した。引張り歪みのx%で測定された応力に対応するx%弾性率及び引張り強度は、MPaで表され、破断伸びは、MPaで表される。
【0116】
動的剪断(ΔG’)における損失係数(tanδ)及び弾性率の振幅の値は、加硫された試料(断面8mm及び高さ7mmの平行六面体試験片)において記録された。試料は、40℃の温度及び10Hzの周波数で二重交互正弦波剪断歪みを受けた。歪み振幅掃引プロセスを、0.1%から50%まで外側に進み、次いで50%から0.1%まで戻る往路-復路サイクルに従って行った。表3に報告されている値は、戻り歪み振幅スキャンから得られ、損失係数の最大値(tanδmax)に関する。
【0117】
【表3】
【0118】
本発明のシリカを含む組成物は、従来技術による沈降シリカを含む組成物に対して著しく低減されたエネルギー散逸値(ΔG’及びtanδmax)及び同様の機械的特性を示す。