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特許7599445充電効率の特性が異なる複数の蓄電池に充電する充電制御装置、プログラム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】充電効率の特性が異なる複数の蓄電池に充電する充電制御装置、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/02 20160101AFI20241206BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241206BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20241206BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241206BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H02J7/02 F
H02J7/10 L
H02J7/35 A
H02J3/38 130
H02J3/00 170
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022022427
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119491
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】平田 紀史
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/239640(WO,A1)
【文献】特開2017-022918(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0199121(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/02
H02J 7/10
H02J 7/35
H02J 3/38
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電電力量が変動する発電装置と、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なる複数の蓄電池とに接続された充電制御装置であって、
所定時間帯における発電装置の発電電力量を推定する発電電力量推定手段と、
所定時間帯における各蓄電池の温度を推定する温度推定手段と、
蓄電池毎に、発電装置の定格電力で充電した際における温度に基づく充電効率を推定する充電効率推定手段と、
蓄電池毎に、充電効率に基づく優先度を付与する蓄電池優先度付与手段と、
発電装置の発電電力量を、優先度の高位の蓄電池から順に、定格電力に基づく単位時間あたりの充電電力量を分電する充電分電手段と
を有することを特徴とする充電制御装置。
【請求項2】
蓄電池優先度付与手段は、時間帯毎に、充電効率が高い順に、優先度を高位から順に付与する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
発電装置は、太陽光発電装置である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の充電制御装置。
【請求項4】
発電電力量推定手段は、
訓練段階として、説明変数として過去時間帯の時系列の発電電力量と、目的変数として予測時間帯における発電電力量とを予め対応付けた教師データによって訓練した機械学習エンジンであり、
推定段階として、過去時間帯の時系列の発電電力量を入力し、予測時間帯における発電電力量を推定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれ1項に記載の充電制御装置。
【請求項5】
温度推定手段は、蓄電池毎に、
説明変数として過去時間帯の時系列の温度と、目的変数として予測時間帯における温度とを予め対応付けた教師データによって訓練した機械学習エンジンであり、
推定段階として、過去時間帯の時系列の温度を入力し、予測時間帯における温度を推定する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれ1項に記載の充電制御装置。
【請求項6】
温度推定手段は、
ネットワークを介して外部の気象サーバから、当該蓄電池が設置された地域の気温を取得し、
機械学習エンジンによって、訓練段階として、過去時間帯の時系列の気温を更に説明変数として訓練し、推定段階として、過去時間帯の時系列の気温を更に入力する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれ1項に記載の充電制御装置。
【請求項7】
充電効率推定手段は、蓄電池毎に、
訓練段階として、説明変数として温度と、目的変数として充電効率とを対応付けた教師データによって訓練した機械学習エンジンであり、
推定段階として、予測時間帯の温度を入力し、充電効率を推定する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれ1項に記載の充電制御装置。
【請求項8】
蓄電池毎に、充電可能電力量を取得する充電可能電力量取得手段と、
充電分電手段は、発電装置の発電電力量から、充電可能電力量に応じた充電電力量を分電する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の充電制御装置。
【請求項9】
発電電力量が変動する発電装置と、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なる複数の蓄電池とに接続された充電制御装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定時間帯における発電装置の発電電力量を推定する発電電力量推定手段と、
所定時間帯における各蓄電池の温度を推定する温度推定手段と、
蓄電池毎に、発電装置の定格電力で充電した際における温度に基づく充電効率を推定する充電効率推定手段と、
蓄電池毎に、充電効率に基づく優先度を付与する蓄電池優先度付与手段と、
発電装置の発電電力量を、優先度の高位の蓄電池から順に、定格電力に基づく単位時間あたりの充電電力量を分電する充電分電手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
発電電力量が変動する発電装置と、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なる複数の蓄電池とに接続された充電制御装置の充電制御方法であって、
充電制御装置は、
所定時間帯における発電装置の発電電力量を推定すると共に、所定時間帯における各蓄電池の温度を推定する第1のステップと、
蓄電池毎に、発電装置の定格電力で充電した際における温度に基づく充電効率を推定する第2のステップと、
蓄電池毎に、充電効率に基づく優先度を付与する第3のステップと、
発電装置の発電電力量を、優先度の高位の蓄電池から順に、定格電力に基づく単位時間あたりの充電電力量を分電する第4のステップと
を実行することを特徴とする充電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池に対する充電制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザ宅内に配置された電気自動車や家庭用蓄電池などを制御するVPP(Virtual Power Plant)の技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、電力機器の充電性能情報(例えば充放電効率)を、その電力機器の環境情報(例えば蓄電池の温度や経年劣化情報)に基づいて補正する。そして、補正後の充電性能情報に基づく運用計画に沿って、電力機器に対する充電動作を制御する。
【0003】
また、複数の蓄電池を遠隔制御する際、蓄電池の劣化の進行度に応じて蓄電池を区別して管理する技術もある(例えば特許文献2参照)。
更に、電力の売買価格と蓄電池の充放効率とを考慮して利益の有無を判定し、その判定結果に応じて充電計画を定める技術もある(例えば特許文献3参照)。
更に、太陽光発電装置(ソーラーパネル)による発電電力量が大きい場合に、第1バッテリを充電し、第1バッテリが満充電となった際に、第2バッテリへ切り替える技術もある(例えば特許文献4参照)。逆に、太陽光発電装置の発電電力量が小さい場合は、第1バッテリを充電し、第1バッテリ経由で第2バッテリを充電するように動作する。第2バッテリは、車両の駆動用バッテリを想定しており、太陽光発電装置の発電電力量の利用効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-156149号公報
【文献】WO19/215817
【文献】特許5579954号公報
【文献】特許6953997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
宅内電力として、電力事業者から買電するだけでなく、宅内で発電できる太陽光発電装置が一般的に普及してきた。これによって、宅内でも蓄電設備が必要となってきた。
また、電気自動車の普及も伴って、宅内で発電した電力を、電気自動車に搭載された蓄電池へ充電することもできるようになってきた。これによって、宅内の配電設備について、複数の蓄電池に対する充電制御が必要となってきている。このとき、各蓄電池は、様々な仕様規格のものが使用され、その充電効率も全く異なるものとなる。
【0006】
これに対し、本願の発明者は、太陽光発電装置のように、発電電力量が時々刻々と変動する発電装置によって発電された電力を、複数の蓄電池にその充電効率を考慮して充電する技術が必要となってくる、と考えた。
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1~4に記載のいずれの技術も、複数の蓄電池に対する充電効率を考慮して充電するものではない。
特許文献1に記載の技術によれば、一般的な家庭用蓄電池について、温度のような環境情報から蓄電池の劣化の進行度を考慮するものであって、複数の蓄電池における充電効率を考慮したものではなない。
特許文献2及び3に記載の技術によれば、電力網からの充電を想定したものであって、時々刻々と変動する発電電力量に対応できるものではない。
特許文献4に記載の技術によれば、発電電力の利用効率を高めるためのものであって、充電効率の変化を考慮したものではない。
【0008】
そこで、本発明は、発電電力量が時々刻々と変動する発電装置によって発電された電力を、複数の蓄電池にその充電効率を考慮して充電することができる充電制御装置、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、発電電力量が変動する発電装置と、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なる複数の蓄電池とに接続された充電制御装置であって、
所定時間帯における発電装置の発電電力量を推定する発電電力量推定手段と、
所定時間帯における各蓄電池の温度を推定する温度推定手段と、
蓄電池毎に、発電装置の定格電力で充電した際における温度に基づく充電効率を推定する充電効率推定手段と、
蓄電池毎に、充電効率に基づく優先度を付与する蓄電池優先度付与手段と、
発電装置の発電電力量を、優先度の高位の蓄電池から順に、定格電力に基づく単位時間あたりの充電電力量を分電する充電分電手段と
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の充電制御装置における他の実施形態によれば、
蓄電池優先度付与手段は、時間帯毎に、充電効率が高い順に、優先度を高位から順に付与する
ことも好ましい。
【0011】
本発明の充電制御装置における他の実施形態によれば、
発電装置は、太陽光発電装置である
ことも好ましい。
【0012】
本発明の充電制御装置における他の実施形態によれば、
発電電力量推定手段は、
訓練段階として、説明変数として過去時間帯の時系列の発電電力量と、目的変数として予測時間帯における発電電力量とを予め対応付けた教師データによって訓練した機械学習エンジンであり、
推定段階として、過去時間帯の時系列の発電電力量を入力し、予測時間帯における発電電力量を推定する
ことも好ましい。
【0013】
本発明の充電制御装置における他の実施形態によれば、
温度推定手段は、蓄電池毎に、
説明変数として過去時間帯の時系列の温度と、目的変数として予測時間帯における温度とを予め対応付けた教師データによって訓練した機械学習エンジンであり、
推定段階として、過去時間帯の時系列の温度を入力し、予測時間帯における温度を推定する
ことも好ましい。
【0014】
本発明の充電制御装置における他の実施形態によれば、
温度推定手段は、
ネットワークを介して外部の気象サーバから、当該蓄電池が設置された地域の気温を取得し、
機械学習エンジンによって、訓練段階として、過去時間帯の時系列の気温を更に説明変数として訓練し、推定段階として、過去時間帯の時系列の気温を更に入力する
ことも好ましい。
【0015】
本発明の充電制御装置における他の実施形態によれば、
充電効率推定手段は、蓄電池毎に、
訓練段階として、説明変数として温度と、目的変数として充電効率とを対応付けた教師データによって訓練した機械学習エンジンであり、
推定段階として、予測時間帯の温度を入力し、充電効率を推定する
ことも好ましい。
【0016】
本発明の充電制御装置における他の実施形態によれば、
蓄電池毎に、充電可能電力量を取得する充電可能電力量取得手段と、
充電分電手段は、発電装置の発電電力量から、充電可能電力量に応じた充電電力量を分電する
ことも好ましい。
【0017】
本発明によれば、発電電力量が変動する発電装置と、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なる複数の蓄電池とに接続された充電制御装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
所定時間帯における発電装置の発電電力量を推定する発電電力量推定手段と、
所定時間帯における各蓄電池の温度を推定する温度推定手段と、
蓄電池毎に、発電装置の定格電力で充電した際における温度に基づく充電効率を推定する充電効率推定手段と、
蓄電池毎に、充電効率に基づく優先度を付与する蓄電池優先度付与手段と、
発電装置の発電電力量を、優先度の高位の蓄電池から順に、定格電力に基づく単位時間あたりの充電電力量を分電する充電分電手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、発電電力量が変動する発電装置と、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なる複数の蓄電池とに接続された充電制御装置の充電制御方法であって、
充電制御装置は、
所定時間帯における発電装置の発電電力量を推定すると共に、所定時間帯における各蓄電池の温度を推定する第1のステップと、
蓄電池毎に、発電装置の定格電力で充電した際における温度に基づく充電効率を推定する第2のステップと、
蓄電池毎に、充電効率に基づく優先度を付与する第3のステップと、
発電装置の発電電力量を、優先度の高位の蓄電池から順に、定格電力に基づく単位時間あたりの充電電力量を分電する第4のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の充電制御装置、プログラム及び方法によれば、発電電力量が時々刻々と変動する発電装置によって発電された電力を、複数の蓄電池にその充電効率を考慮して充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】宅内設備装置における機器構成図である。
図2】太陽光発電装置における時間帯毎の発電電力量を表す説明図である。
図3】本発明における充電制御装置の機能構成図である。
図4】機械学習エンジンを用いた発電電力量推定部の構成図である。
図5】蓄電池毎の過去時間帯における充電電力量及び温度の実績を記録した説明図である。
図6】本発明における充電効率推定部の説明図である。
図7】本発明における蓄電池優先度付与部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、宅内設備装置における機器構成図である。
【0023】
図1によれば、ユーザ宅内に配置された宅内設備装置は、電力網と通信網とに接続されている。宅内設備装置は、電力網を介して電力を受電し、通信網を介して外部サーバと通信する。
【0024】
外部サーバとしては、例えば「気象サーバ」がある。気象サーバは、地域(例えばメッシュ状に区分された地域)毎に、気温[℃]や日射量[W/m2]を収集し且つ配信するものである。また、気象サーバは、現時間帯における気温や日射量を配信するのみならず、未来の所定時間帯における気温や日射量を予報として配信するものであってもよい。宅内設備装置は、気象サーバへアクセスすることによって、ユーザ宅の地域における気温や日射量を取得することができる。
尚、図1によれば、気象サーバは、時間帯2022/2/10 12:00~12:30における気温は、12℃であり、日射量は250[W/m2]である。
【0025】
図1によれば、宅内設備装置は、充電制御装置1と、太陽光発電装置(PhotoVoltaic)2と、複数の蓄電池3とを有する。また、宅内設備装置は、既存の設備装置として、分電盤と、スマートメータと、HEMS(Home Energy Management System)ゲートウェイと、ホームゲートウェイと、ユーザ端末と、気温計とを更に有する。
【0026】
分電盤は、電力網からスマートメータを介して受電した電力と、複数の蓄電池3から受電した電力とを、宅内電気機器へ分岐する電気設備である。安全を考慮して、配線用遮断器や漏電遮断器などが集合的に取り付けられている。
スマートメータは、電力網と分電盤との間で送電及び受電される電力を、デジタル的に計測する電力計である。計測した電力値は、HEMSゲートウェイへ出力される。
HEMSゲートウェイは、充電制御装置1とホームゲートウェイと間に接続され、宅内設備装置における全体的な電力制御を管理する。
ユーザ端末は、例えばスマートフォンであって、ホームゲートウェイを介してHEMSゲートウェイと通信し、例えば充電制御装置1の充電状態情報を、ユーザに明示することができる。
気温計は、ユーザ宅の周辺環境における外気温を計測する。計測された気温は、HEMSゲートウェイを介して充電制御装置1へ通知されるものであってもよい。
【0027】
[蓄電池3]
蓄電池3は、宅内設備装置として複数配置されている。これらは、定置用蓄電池であってもよいし、ユーザ宅に駐車された電気自動車に搭載された蓄電池であってもよい。
蓄電池3は、電力網から充電(買電)されるものであってもよいし、太陽光発電装置2から充電(自家発電)するものであってもよい。勿論、それ以外の発電能力を有する機器から充電されるものであってもよい。
尚、図1によれば、1台の太陽光発電装置2と、3台の蓄電池(BAT_ID_1、BAT_ID_2、BAT_ID_3)とが、ユーザ宅内に配置されている。
【0028】
本発明によれば、宅内設備装置として、複数の蓄電池3が配置されていることを前提とする。また、各蓄電池3は、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なるものとする。
【0029】
[太陽光発電装置2]
太陽光発電装置2は、太陽光をエネルギーとした発電装置であって、自家発電した電力を充電制御装置1へ出力する。
【0030】
図2は、太陽光発電装置における時間帯毎の発電電力量を表す説明図である。
図2によれば、太陽光発電装置2の発電性能と、発電電力量の実績値とが表されている。ここで、太陽光発電装置2は、時間帯毎に、時々刻々と変動する発電電力量[Wh]を出力する。太陽光発電装置2の発電電力量は、一般的に日射量に比例する。
【0031】
[充電制御装置1]
充電制御装置1は、太陽光発電装置2による発電電力を入力し、複数の蓄電池3へ充電する。
ここで、充電制御装置1は、時間帯毎に、蓄電池3への充電を制御する。「時間帯」としては、例えば30分単位で分割したものであってもよい。太陽光発電装置2の場合、日射量から発電できるのは12時間前後であるので、24コマで区分してもよい。尚、日射量が多いのは12時前後、気温が高いのは14時前後となる傾向がある。
【0032】
図3は、本発明における充電制御装置の機能構成図である。
【0033】
図3によれば、充電制御装置1は、発電電力量推定部11と、温度推定部12と、充電効率推定部13と、蓄電池優先度付与部14と、充電分電部15と、充電可能電力量取得部16とを有する。これら機能構成部は、充電制御装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、装置の充電制御方法としても理解できる。
【0034】
[発電電力量推定部11]
発電電力量推定部11は、所定時間帯における発電装置の発電電力量を推定する。
ここでは、所定時間帯が現時間帯であってもよい。その場合、複数の蓄電池3に対してリアルタイムに充電を制御することとなる。
また、所定時間帯が未来時間帯であってもよい。その場合、過去時間帯の発電電力量から、未来時間帯の発電電力量を推定(予測)する。
【0035】
図4は、機械学習エンジンを用いた発電電力量推定部の構成図である。
<訓練段階>
機械学習エンジンを、教師データによって訓練する。
(説明変数:入力)過去時間帯の時系列の発電電力量
(目的変数:入力)予測時間帯における発電電力量
<推定段階>
(説明変数:入力)過去時間帯の時系列の発電電力量
(目的変数:出力)予測時間帯における発電電力量
勿論、説明変数としての過去時間帯の時系列の発電電力量に加えて、「日射量」も一緒に、教師データに含めることも好ましい。
【0036】
機械学習エンジンは、例えば一般的に回帰モデルであり、ランダムフォレストを適用することもできる。
回帰(regression)とは、統計学的には、説明変数Xと目的変数Yとの間で、Y=f(X)という線形回帰モデルを構築するものである。説明変数が複数となる場合、重回帰となる。
ランダムフォレストとは、決定木を弱学習器とするアンサンブル学習アルゴリズムであり、ランダムサンプリングされた教師データによって学習した多数の決定木を使用する。
【0037】
[温度推定部12]
温度推定部12は、所定時間帯における各蓄電池3の温度を推定する。
ここでは、所定時間帯が現時間帯tであってもよい。各蓄電池3の現在の温度を計測可能であれば、その温度を出力するものであってもよい。
【0038】
また、現在までの過去時間帯t-1における蓄電池3の温度から、現時間帯tの温度を予測するものであってもよい。例えば現時間帯が2022/2/10 11:30~12:00である場合、過去時間帯の2022/2/10 11:00~11:30の温度から予測する。
【0039】
温度推定部12も、蓄電池の種別毎に、回帰モデルの機械学習エンジンによって推定するものであってもよい。
<訓練段階>
機械学習エンジンを、教師データによって訓練する。
(説明変数:入力)過去時間帯の時系列の温度
(目的変数:入力)予測時間帯における温度
<推定段階>
(説明変数:入力)過去時間帯の時系列の温度
(目的変数:出力)予測時間帯における温度
【0040】
蓄電池3の温度は、充電動作(発熱)によって変化する蓄電池3自体の温度のみならず、蓄電池3が設置された環境周辺の気温の影響を受ける。そのために、蓄電池3の過去時間帯t-1の「温度」と「気温」とから、現時間帯tの温度を予測するものであってもよい。
蓄電池温度(t)=g(蓄電池温度(t-1),気温(t-1))
g:予測関数モデル
【0041】
充電制御装置1は、気温計4から気温を取得可能であってもよいし、通信インタフェースを介して外部の気象サーバから気温を取得可能なものであってもよい。気象サーバが、未来時間帯における気温予報値を公開している場合、その未来時間帯における蓄電池3の温度を予測することもできる。
【0042】
勿論、説明変数としての過去時間帯の時系列の温度に加えて、「天候」も一緒に、教師データに含めることも好ましい。「天候」としては、晴天と雨天では、気温や太陽光発電電力量も異なることが想定される。このような天候情報も、気象サーバから取得することができる。
【0043】
図5は、蓄電池毎の過去時間帯における充電電力量及び温度の実績を記録した説明図である。
図5によれば、蓄電池3毎の性能として、蓄電容量[Wh]と定格電力[W]とが表されている。各蓄電池3は、太陽光発電装置2によって発電された電力を、蓄電池3の「定格電力」で入力して充電する。
また、図5によれば、蓄電池3毎の実績値として、定格電力以下となる充電電力量と、蓄電残容量と、温度とが、実績値として記録されている。
【0044】
[充電効率推定部13]
充電効率推定部13は、蓄電池3毎に、発電装置の定格電力で充電した際における温度に基づく「充電効率」を推定する。
充電効率が低い蓄電池ほど、定格電力で入力しても、少ない電力量しか充電できない。一方で、充電効率が高い蓄電池ほど、定格電力で入力すると、その定格電力に応じた電力量を充電できる。即ち、充電効率は、各蓄電池3における重要な性能指標となる。
【0045】
「充電効率」とは、具体的には、蓄電池における「充電電力量に対する残電力変化量の割合」を意味する。
充電効率=残電力変化量[Wh]/充電電力量[Wh]
充電電力量は、例えば定格電力500Wで、1コマ30分充電した場合、250Whとなる。
残電力変化量とは、1コマ30分、定格電力で充電された場合に、充電前の蓄電残容量と充電後の蓄電残容量との差をいう。
残電力変化量[Wh]=充電後の蓄電残容量[Wh]-充電前の蓄電残容量[Wh]
【0046】
また、「充電効率」は、蓄電池3に入力される定格電力が同じであっても、その蓄電池3の温度によって変化する。例えば蓄電池3の温度が高いほど、充電効率も比較的高くなりやすい。一方で、例えば蓄電池3の温度が低いほど、充電効率も比較的低くなりやすい。
前述したように、蓄電池の温度は、充電動作による発熱のみならず、外部の気温の影響を受ける。そのために、直前の時間帯における充電動作は、蓄電池自体の温度にも影響すると共に、充電効率にも影響を与える。
【0047】
図6は、本発明における充電効率推定部の説明図である。
【0048】
図6によれば、充電効率推定部13は、蓄電池毎に、定格電力に対する充電効率を、機械学習エンジンによって推定する。機械学習エンジンは、例えば一般的に回帰モデルであり、ランダムフォレストを適用することもできる。
<訓練段階>
機械学習エンジンを、蓄電池の種別に応じて、教師データによって訓練する。
(説明変数:入力)温度
(目的変数:入力)充電効率
<推定段階>
(説明変数:入力)温度
(目的変数:出力)充電効率
尚、説明変数として、過去時間帯t-1における蓄電池の温度のみならず、過去時間帯t-1~t-nにおける蓄電池の温度の実績履歴であってもよい。
【0049】
[蓄電池優先度付与部14]
蓄電池優先度付与部14は、蓄電池毎に、充電効率に基づく優先度を付与する。
「優先度」とは、複数の蓄電池の中で、いずれの蓄電池から順に充電するか、を決定したものである。尚、優先度の順は、充電する際に、蓄電池を順番に切り替えることを意味するものではなく、優先度の高い蓄電池から順に、定格電力に相当する充電電力量を分電してくことを意味する。尚、優先度は、数字の小さいほど、優先度が高いことを意味する。
これによって、複数の蓄電池3全体として、充電効率が最大となるように充電することができる。
【0050】
図7は、本発明における蓄電池優先度付与部の説明図である。
【0051】
ここで、蓄電池優先度付与部14は、充電効率が高い順に、優先度を高位から順に付与する。
尚、各蓄電池3に付与される優先度は、時間帯毎に変化する。時間帯毎に、各蓄電池3の温度も異なり、これによって充電効率も異なることとなる。
【0052】
[充電分電部15]
充電分電部15は、発電装置の発電電力量を、優先度の高位の蓄電池から順に、定格電力に基づく単位時間あたりの充電電力量を分電する。
例えば以下のような場合を想定する。
<優先度> <定格電力>
1:蓄電池BAT_ID_1 500W
2:蓄電池BAT_ID_3 300W
3:蓄電池BAT_ID_2 400W
このとき、太陽光発電装置2の発電電力量が500Whであった場合、1コマ30分では、以下のように分電される。
<優先度> <定格電力> <充電電力量>
1:蓄電池BAT_ID_1 500W 250Wh (=500W×30分)
2:蓄電池BAT_ID_3 300W 150Wh (=300W×30分)
3:蓄電池BAT_ID_2 400W 100Wh※(=500Wh-(250Wh+150Wh))
ここで、優先順が高位の蓄電池BAT_ID_1及びBAT_ID_3によって既に400Wh(=250Wh+150Wh)分電されているために、優先順が低位の蓄電池BAT_ID_2には、残り100Whが充電電力量となる。
【0053】
また、例えば以下のような場合も想定する。
<優先度> <定格電力>
1:蓄電池BAT_ID_1 500W
2:蓄電池BAT_ID_2 400W
3:蓄電池BAT_ID_3 300W
このとき、太陽光発電装置2の発電電力量が300Whであった場合、1コマ30分では、以下のように分電される。
<優先度> <定格電力> <充電電力量>
1:蓄電池BAT_ID_1 500W 250Wh (=500W×30分)
2:蓄電池BAT_ID_2 400W 50Wh※(=300Wh-250Wh)
3:蓄電池BAT_ID_3 300W 0Wh※
ここで、優先順が高位の蓄電池BAT_ID_1によって既に250Whだけ分電されているために、優先順が次の蓄電池BAT_ID_2には、残り50Whが充電電力量となり、蓄電池BAT_ID_3には、充電されない。
【0054】
[充電可能電力量取得部16]
充電可能電力量取得部16は、蓄電池毎に、充電可能電力量を取得する。
これに対し、充電分電部15は、太陽光発電装置2の発電電力量から、充電可能電力量に応じた充電電力量を分電する。
【0055】
例えば以下のような場合も想定する。
<優先度> <定格電力> <充電可能電力量>
1:蓄電池BAT_ID_1 500W 200Wh
2:蓄電池BAT_ID_3 300W 500Wh
3:蓄電池BAT_ID_2 400W 1000Wh
このとき、太陽光発電装置2の発電電力量が500Whであった場合、1コマ30分では、以下のように分電される。
<優先度> <定格電力> <充電電力量>
1:蓄電池BAT_ID_1 500W 200Wh (<500W×30分)
2:蓄電池BAT_ID_3 300W 150Wh (=300W×30分)
3:蓄電池BAT_ID_2 400W 150Wh (<400W×30分)
ここで、優先順が高位の蓄電池BAT_ID_1には充電可能電力量が200Whしかないために、200Whが分電される。次に、優先順が次の蓄電池BAT_ID_3には充電可能電力量150Whが分電される。そして、優先順が低位の蓄電池BAT_ID_2には、残り150Wh(=500Wh-(200Wh+150Wh))が充電電力量となる。
【0056】
以上、詳細に説明したように、本発明の充電制御装置、プログラム及び方法によれば、発電電力量が時々刻々と変動する発電装置によって発電された電力を、複数の蓄電池にその充電効率を考慮して充電することができる。
これによって、温度に基づいて定格電力に対する充電効率の特性が異なる複数の蓄電池が混在しても、できる限り発電電力量を無駄にすることなく充電することができる。
【0057】
尚、これにより、例えば「太陽光発電装置によって発電された電力を、複数の蓄電池に効率良く充電でき、電力の地産地消を実現し、災害による大規模停電の時などに電力レジリエンスに有効なものである」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することが可能となる。
【0058】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0059】
1 充電制御装置
11 発電電力量推定部
12 温度推定部
13 充電効率推定部
14 蓄電池優先度付与部
15 充電分電部
16 充電可能電力量取得部
2 太陽光発電装置
3 蓄電池
4 気温計
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7