(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】複数のセッションを確立する通信方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
H04W 76/15 20180101AFI20241206BHJP
H04W 92/10 20090101ALI20241206BHJP
H04W 92/24 20090101ALI20241206BHJP
【FI】
H04W76/15
H04W92/10
H04W92/24
(21)【出願番号】P 2022031697
(22)【出願日】2022-03-02
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽登
【審査官】山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-506190(JP,A)
【文献】国際公開第2010/052988(WO,A1)
【文献】Study on enhancement of Ultra-Reliable Low-Latency Communication (URLLC) support in the 5G Core network (5GC) (Release 16),3GPP TR 23.725 V16.2.0 (2019-06),2019年06月11日,[検索日2024.11.05], インターネット<https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/23_series/23.725/23725-g20.zip>,p.12-15,44-47,91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/24-7/26
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末が、
制御装置を用いて、複数のアクセスポイント及び複数のゲートウェイとプロキシサーバとを介して、アプリケーションサーバと通信する通信方法において、
端末が、1つのアプリケーションサーバと通信するために、
接続可能な複数のアクセスポイント識別子を含むセッション確立要求を、制御装置へ送信し、
制御装置が、アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせを選択し、当該組み合わせのリストを含むアクセスポイント接続要求を、端末へ送信し、
端末が、当該組み合わせ毎に、アクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバとの間でセッションを確立する第1のステップと、
端末が、1ストリームのパケット系列を複数のセッションに分岐して、セッション毎にアクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバへ送信する第2のステップと、
プロキシサーバが、複数のセッションを介して複数のゲートウェイから受信したパケットを1ストリームに統合し、統合した1ストリームをアプリケーションサーバへ転送する第3のステップと
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項2】
第1のステップついて、
端末が送信するセッション確立要求は、アプリケーションサーバアドレスを更に含み、
制御装置は、プロキシサーバへ、アプリケーションサーバアドレスを通知し、
プロキシサーバは、アプリケーションサーバアドレスに基づくアプリケーションサーバとの間でコネクションを確立し、
第3のステップについて、プロキシサーバは、統合した1ストリームを、確立したコネクションを介してアプリケーションサーバへ転送する
ことを特徴とする請求項
1に記載の通信方法。
【請求項3】
第1のステップについて、
制御装置は、端末が接続可能な複数のアクセスポイントと、当該アクセスポイントとプロキシサーバとの間で中継可能な複数のゲートウェイとの全ての組み合わせ(フルメッシュ)の中から、全部又は一部の組み合わせを選択する
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の通信方法。
【請求項4】
アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせの数は、端末あたりの上限セッション数を超えないように選択する
ことを特徴とする請求項
3に記載の通信方法。
【請求項5】
アクセスポイント及びゲートウェイの組み合わせの中で、処理負荷率又は通信誤り率が所定閾値を超えるアクセスポイント又はゲートウェイを含まない組み合わせを選択する
ことを特徴とする請求項
3又は4に記載の通信方法。
【請求項6】
アクセスポイント及びゲートウェイの組み合わせの中で、処理負荷率又は通信誤り率の平均値から所定率以上高く乖離しているアクセスポイント又はゲートウェイを含まない組み合わせを選択する
ことを特徴とする請求項5に記載の通信方法。
【請求項7】
1ストリームは、冗長度nの複数のサブストリームから構成されており、
複数のサブストリームは、1ストリームのパケット系列を複製したものであり、
複数のサブストリームはそれぞれ、アクセスポイント及びゲートウェイの組み合わせが異なるセッションへ送信され、
プロキシサーバは、異なるサブストリームのいずれかから任意のシーケンス番号のパケットを最初に受信した際に、当該シーケンス番号のパケットの受信完了とみなす
ことを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の通信方法。
【請求項8】
アクセスポイントとゲートウェイとの組み合わせからなるセッション毎に、伝送速度を計測し、
セッション数kよりもサブストリーム冗長度nが小さい場合(k>n)、
kC
n通りの組み合わせの中で、1ストリームあたりの複数のセッションにおける伝送速度の和が最も高い組み合わせを選択する
ことを特徴とする請求項
7に記載の通信方法。
【請求項9】
端末が、
制御装置を用いて、複数のアクセスポイント及び複数のゲートウェイとプロキシサーバとを介して、アプリケーションサーバと通信するように構成されたシステムにおいて、
端末が、1つのアプリケーションサーバと通信するために、
接続可能な複数のアクセスポイント識別子を含むセッション確立要求を、制御装置へ送信し、
制御装置が、アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせを選択し、当該組み合わせのリストを含むアクセスポイント接続要求を、端末へ送信し、
端末が、当該組み合わせ毎に、アクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバとの間でセッションを確立し、
端末が、1つのアプリケーションサーバと通信するために、アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせ毎に、プロキシサーバとの間でセッションを確立し、
端末が、1ストリームのパケット系列を複数のセッションに分岐して、セッション毎にアクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバへ送信し、
プロキシサーバが、複数のセッションを介して複数のゲートウェイから受信したパケットを1ストリームに統合し、統合した1ストリームを、アプリケーションサーバへ転送する
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムのモバイルネットワークコアシステムにおけるセッションを確立する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信システムによれば、端末は、RAN(Radio Access Network)を介して、通信事業者のモバイルネットワークコアシステムへ収容される(例えば非特許文献1及び2参照)。これは、コントロールプレーンとユーザプレーンとから構成される。
近年、第6世代移動体通信システムとして、「Cell-free Massive MIMO(Multi Input Multi Output)」の実用化が期待されている(例えば非特許文献3及び4参照)。5Gでも提供されているMassive MIMOは、移動中の端末に対して常にスポットライトのようなカバレッジエリアを構築する。そのMassive MIMOを更に、Cell-freeという概念で実現するものであって、1つの基地局CPU(Central Processing Unit)と複数のアクセスポイントによって構築される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP TS 23.501 V17.2.0, “3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; System architecture for the 5G System (5GS); Stage 2 (Release 17)”
【文献】3GPP TS 23.502 V17.2.1, “3rd Generation Partnership Project; Technical Specification Group Services and System Aspects; Procedures for the 5G System (5GS); Stage 2 (Release 17)”
【文献】IEEE Transactions on Wireless Communications ( Volume: 16, Issue: 3, March 2017), "Cell-Free Massive MIMO Versus Small Cells"
【文献】「Beyond 5G/6G時代のライフスタイルを実現する技術とは?」、KDDI総合研究所、[online]、[令和4年2月23日検索]、インターネット<URL:https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2106/16/news052.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したCell-free Massive MIMOによれば、端末は、基地局CPUによって管理される複数のアクセスポイントと、同時に無線リンクを接続することができる。
しかしながら、端末との間のセッションが、複数のアクセスポイントを介してどのようなゲートウェイとの間で確立すべきかについては、実装上の問題とされているに過ぎない。
端末とアプリケーションサーバとの間のセッションがいずれのノードを経由するかは、スループットに大きく影響する。特に、複数のセッションを同時に確立することができる場合、セッション数のみならず、経由するアクセスポイント及びゲートウェイの組み合わせの影響も大きい。
例えば、端末が1Tbps程度のスループットを実現しようとする場合、一般的に複数のデータフローが必要となると想定される。しかしながら、これらデータフローが、モバイルネットワークコアシステムにおけるユーザプレーンのいずれのノードを経由するかによって、そのスループットに与える影響も大きい。
【0005】
そこで、本発明によれば、端末が1つのアプリケーションサーバとの間で大容量の通信を実現するために適した、複数のアクセスポイント及びゲートウェイを介する複数のセッションを確立する通信方法及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、端末が、制御装置を用いて、複数のアクセスポイント及び複数のゲートウェイとプロキシサーバとを介して、アプリケーションサーバと通信する通信方法において、
端末が、1つのアプリケーションサーバと通信するために、接続可能な複数のアクセスポイント識別子を含むセッション確立要求を、制御装置へ送信し、
制御装置が、アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせを選択し、当該組み合わせのリストを含むアクセスポイント接続要求を、端末へ送信し、
端末が、当該組み合わせ毎に、アクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバとの間でセッションを確立する第1のステップと、
端末が、1ストリームのパケット系列を複数のセッションに分岐して、セッション毎にアクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバへ送信する第2のステップと、
プロキシサーバが、複数のセッションを介して複数のゲートウェイから受信したパケットを1ストリームに統合し、統合した1ストリームをアプリケーションサーバへ転送する第3のステップと
を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
制御装置を更に有し、
第1のステップについて、
端末が、接続可能な複数のアクセスポイント識別子を含むセッション確立要求を、制御装置へ送信し、
制御装置が、アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせを選択し、当該組み合わせのリストを含むアクセスポイント接続要求を、端末へ送信し、
端末が、当該組み合わせ毎に、アクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバとの間でセッションを確立する
ことも好ましい。
【0008】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
第1のステップついて、
端末が送信するセッション確立要求は、アプリケーションサーバアドレスを更に含み、
制御装置は、プロキシサーバへ、アプリケーションサーバアドレスを通知し、
プロキシサーバは、アプリケーションサーバアドレスに基づくアプリケーションサーバとの間でコネクションを確立し、
第3のステップについて、プロキシサーバは、統合した1ストリームを、確立したコネクションを介してアプリケーションサーバへ転送する
ことも好ましい。
【0009】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
第1のステップについて、
制御装置は、端末が接続可能な複数のアクセスポイントと、当該アクセスポイントとプロキシサーバとの間で中継可能な複数のゲートウェイとの全ての組み合わせ(フルメッシュ)の中から、全部又は一部の組み合わせを選択する
ことも好ましい。
【0010】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせの数は、端末あたりの上限セッション数を超えないように選択する
ことも好ましい。
【0011】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
アクセスポイント及びゲートウェイの組み合わせの中で、処理負荷率又は通信誤り率が所定閾値を超えるアクセスポイント又はゲートウェイを含まない組み合わせを選択する
ことも好ましい。
【0012】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
アクセスポイント及びゲートウェイの組み合わせの中で、処理負荷率又は通信誤り率の平均値から所定率以上高く乖離しているアクセスポイント又はゲートウェイを含まない組み合わせを選択する
ことも好ましい。
【0013】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
1ストリームは、冗長度nの複数のサブストリームから構成されており、
複数のサブストリームは、1ストリームのパケット系列を複製したものであり、
複数のサブストリームはそれぞれ、アクセスポイント及びゲートウェイの組み合わせが異なるセッションへ送信され、
プロキシサーバは、異なるサブストリームのいずれかから任意のシーケンス番号のパケットを最初に受信した際に、当該シーケンス番号のパケットの受信完了とみなす
ことも好ましい。
【0014】
本発明の通信方法における他の実施形態によれば、
アクセスポイントとゲートウェイとの組み合わせからなるセッション毎に、伝送速度を計測し、
セッション数kよりもサブストリーム冗長度nが小さい場合(k>n)、kCn通りの組み合わせの中で、1ストリームあたりの複数のセッションにおける伝送速度の和が最も高い組み合わせを選択する
ことも好ましい。
【0015】
本発明によれば、端末が、制御装置を用いて、複数のアクセスポイント及び複数のゲートウェイとプロキシサーバとを介して、アプリケーションサーバと通信するように構成されたシステムにおいて、
端末が、1つのアプリケーションサーバと通信するために、接続可能な複数のアクセスポイント識別子を含むセッション確立要求を、制御装置へ送信し、
制御装置が、アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせを選択し、当該組み合わせのリストを含むアクセスポイント接続要求を、端末へ送信し、
端末が、当該組み合わせ毎に、アクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバとの間でセッションを確立し、
端末が、1つのアプリケーションサーバと通信するために、アクセスポイント及びゲートウェイの任意の組み合わせ毎に、プロキシサーバとの間でセッションを確立し、
端末が、1ストリームのパケット系列を複数のセッションに分岐して、セッション毎にアクセスポイント及びゲートウェイを介してプロキシサーバへ送信し、
プロキシサーバが、複数のセッションを介して複数のゲートウェイから受信したパケットを1ストリームに統合し、統合した1ストリームを、アプリケーションサーバへ転送する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明における通信方法及びシステムによれば、端末が1つのアプリケーションサーバとの間で大容量の通信を実現するために適した、複数のアクセスポイント及びゲートウェイを介する複数のセッションを確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明における移動通信システムの構成図である。
【
図2】
図1の移動通信システムにおけるセッションを表す説明図である。
【
図4】アクセスポイント及びゲートウェイの負荷率に応じたセッションの選択を表す説明図である。
【
図5】ストリームとサブストリームとの関係を表す説明図である。
【
図6】複数のサブストリームの組み合わせを表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明における移動通信システムの構成図である。
【0023】
図1によれば、端末(User Equipment)2は、RAN(Radio Access Network)における複数のアクセスポイント(Access Point)3を介して、モバイルネットワークコアシステムに収容される。複数のアクセスポイント3は、1つの基地局CPUに接続されているものとする。端末2は、モバイルネットワークコアシステムを介して1つのアプリケーションサーバ6と通信する。
【0024】
また、
図1のモバイルネットワークコアシステムによれば、コントロールプレーンとしての制御装置1と、ユーザプレーンとしての複数のゲートウェイ(Gateway)4及びプロキシ(Proxy)サーバ5とが配置されている。
端末2は同時に、複数のアクセスポイント3及び複数のゲートウェイ4とプロキシサーバ5とを介して、1つのアプリケーションサーバ6と通信する。
【0025】
端末2は、複数のアクセスポイント3に対して無線リンクを同時に接続すると共に、複数のセッションを同時に確立することができる。このような端末2に予めインストールされた機能は、複数のセッションに対する端末側終端ノードとなり、例えば「バルク(bulk)TCPクライアント」とも称する。この機能は、ユーザによって1つのアプリケーションサーバ6に対する大容量通信の開始操作をトリガとして起動する。
【0026】
制御装置1は、コントロールプレーンとして複数のファンクションによって構成された、通信確立などの制御信号を送受信するネットワーク装置群である。
制御装置1は、端末2とアプリケーションサーバ6との間のセッション管理を担う。勿論、それに限られず、端末に対する一元的に登録管理、接続管理及び移動管理や、端末に対するIP(Internet Protocol)アドレスの割り当ても担う。
特に、本発明によれば、制御装置1は、端末が1つのアプリケーションサーバ6と通信する際に、複数のアクセスポイント及びゲートウェイを介する複数のセッションの確立を制御する。
【0027】
複数のゲートウェイ4は、任意の複数のアクセスポイント3と、プロキシサーバ5との間で、セッションを介して中継する。セッションは、アクセスポイント3とゲートウェイ4との組み合わせによって特定される。尚、
図1によれば、アクセスポイント数=3と、ゲートウェイ数=4として構成されている。
【0028】
プロキシサーバ5は、端末2との間で確立された複数のセッションを終端すると共に、アプリケーションサーバ6との間でTCP(Transmission Control Protocol)コネクションを確立する。そして、端末2から複数のセッションを介して受信したユーザデータを、アプリケーションサーバ6へ転送すると共に、アプリケーションサーバ6から受信したユーザデータを、複数のセッションを介して端末2へ転送する。プロキシサーバ5は、端末2との間で確立された複数のセッションに対するモバイルコア側終端ノードとなり、例えば「バルクTCPプロキシ」とも称する。
【0029】
また、
図1によれば、端末2が接続可能な複数のアクセスポイント3と、当該アクセスポイント3とプロキシサーバ5との間で中継可能な複数のゲートウェイ4との全ての組み合わせ(フルメッシュ)は、12本となる。複数のセッションは、これら12本の中から選択される。
【0030】
図2は、
図1の移動通信システムにおけるセッションを表す説明図である。
【0031】
端末2は、複数のPDU(Protocol Data Unit)セッションを介して、1つのアプリケーションサーバ6との間で、ユーザデータを送受信する。PDUセッションは、端末2に付与されたIPアドレスによって識別される。
図2によれば、以下のように3本のPDUセッション#1~#3が確立されている。
端末-AP#1-GW#1-プロキシサーバ-アプリケーションサーバ
-AP#2-GW#2-
-AP#2-GW#4-
アクセスポイント3からみて、少なくとも、物理的に接続されたゲートウェイ4のみが、候補ノードとなる。
【0032】
【0033】
<第1のステップ>
(S11)端末2は、アプリケーションサーバ6のIPアドレスを予め取得しているものとする。例えば、端末2に予めインストールされたアプリケーションに事前設定されているものであってもよい。また、例えば、端末2は、DNS(Domain name Server)にアクセスすることによって、アプリケーションサーバ6のIPアドレスを取得するものであってもよい。端末2は、電源の投入時や、機内モードの解除の際に、少なくとも1本のPDUセッションを常時確立しており、インターネットに接続可能な状態となるものとする。
【0034】
端末2は、RANとして接続可能な複数のアクセスポイントから、アクセスポイントID(識別子)及び電波強度を検知する。そして、端末2は、1つのアクセスポイント3を介して、それらアクセスポイントIDを含む「セッション確立要求」を、制御装置1へ送信する。このセッション確立要求は、「バルクPDUセッション確立要求」とも称する。セッション確立要求は、例えば以下の情報を含むものであってもよい。
・アプリケーションサーバアドレス
・所望通信速度
・方向(上り方向/下り方向/双方向)
・リスト[接続可能アクセスポイントID、接続状態、電波強度]
【0035】
尚、端末2から同時に確立される複数のセッションは、「バルクPDUセッション」とも称する。また、端末2からバルクPDUセッションを介した通信を、「バルクPDU通信」とも称する。
【0036】
(S12)制御装置1は、確立するPDUセッション数を決定すると共に、アクセスポイント3及びゲートウェイ4の任意の組み合わせを選択する。
制御装置1は、端末2が接続可能な複数のアクセスポイント3と、当該アクセスポイント3とプロキシサーバ5との間で中継可能な複数のゲートウェイ4との全ての組み合わせ(フルメッシュ)の中から、全部又は一部の組み合わせを選択する。例えば前述した
図1によれば、3台のアクセスポイント3と、4台のゲートウェイ4との間では、フルメッシュのセッションの候補は、12本となる。
【0037】
(S13)制御装置1は、複数のアクセスポイント3と複数のゲートウェイ4との組み合わせのリストを含む「アクセスポイント接続要求」を、端末2へ送信する。
【0038】
(S14)端末2は、アクセスポイント接続要求に含まれるリストに記述された複数のアクセスポイント3に対して、無線リンクを同時に接続する。
【0039】
(S15)そして、端末2は、制御装置1へ、「アクセスポイント接続応答」を返信する。
【0040】
(S16)端末2は、1つのアプリケーションサーバ6と通信するために、リストの任意の組み合わせ毎に、アクセスポイント3及びゲートウェイ4を介してプロキシサーバ5との間でセッションを確立する。
図3によれば、
図2と同様に、以下のように3本のPDUセッション#1~#3が確立されている。
端末-AP#1-GW#1-プロキシサーバ-アプリケーションサーバ
-AP#2-GW#2-
-AP#2-GW#4-
【0041】
(S17)制御装置1は、プロキシサーバ5へ、アプリケーションサーバアドレスを通知する。
【0042】
(S18)プロキシサーバ5は、端末2から要求されたアプリケーションサーバアドレスに基づくアプリケーションサーバ6との間で、コネクションを確立する。このコネクションは、例えばTCPであってもよい。
【0043】
<第2のステップ>
端末2は、1ストリームのパケット系列を複数のセッションに分岐して、セッション毎にアクセスポイント3及びゲートウェイ4を介してプロキシサーバ5へ送信する。
【0044】
<第3のステップ>
プロキシサーバ5は、複数のセッションを介して複数のゲートウェイ4から受信したパケットを1ストリームに統合し、統合した1ストリームを、確立したコネクションを介してアプリケーションサーバ6へ転送する。
【0045】
図4は、アクセスポイント及びゲートウェイの負荷率に応じたセッションの選択を表す説明図である。
【0046】
制御装置1は、アクセスポイント3及びゲートウェイ4の任意の組み合わせの数を、端末あたりの上限セッション数(例えば15本)を超えないように選択する。上限セッション数は、オペレータによって静的な値として設定されるものであってもよいし、アクセスポイント3及び/又はゲートウェイ4の収容状況に応じて動的な値として更新されるものであってもよい。
【0047】
また、制御装置1は、アクセスポイント3及びゲートウェイ4の負荷率を、常に検知しているものとする。負荷率は、例えば輻輳の頻度や、帯域の空き割合によって認識することができる。
【0048】
(1)任意のアクセスポイント3及び/又はゲートウェイ4について、処理負荷率又は通信誤り率が所定閾値を超えるアクセスポイント3及び/又はゲートウェイ4は、PDUセッションの候補ノードから除外する。所定閾値は、オペレータによって静的な値として設定されるものであってもよいし、アクセスポイント3及び/又はゲートウェイ4の収容状況に応じて動的な値として更新されるものであってもよい。
また、他の実施形態として、アクセスポイント3及びゲートウェイ4の組み合わせの中で、処理負荷率又は通信誤り率の平均値から所定率以上高く乖離しているアクセスポイント3又はゲートウェイ4を含まない組み合わせを選択するものであってもよい。
【0049】
(2)次に、候補ノードのアクセスポイント3とゲートウェイ4とをフルメッシュで接続した場合の本数を算出する。フルメッシュの本数が、端末あたりの上限セッション数を超えている場合、負荷率の低い通信経路から順に、PDUセッションを選択する。
【0050】
(3)フルメッシュの本数が、端末あたりの上限セッション数未満である場合、フルメッシュで、PDUセッションを確立する。
【0051】
図4によれば、アクセスポイントAP#1~#3について、以下のような負荷率であるとする。
AP#1:負荷率30%
AP#2:負荷率50%
AP#3:負荷率70%
平均負荷率=(30%+50%+70%)/3=50%
また、平均負荷率からの乖離閾値として「+10%」が設定されているとする。
この場合、負荷率60%(=50%+10%)を超えるAP#3を、PDUセッションから除外するようにする。
【0052】
また、
図4によれば、ゲートウェイGW#1~#4について、以下のような負荷率であるとする。
GW#1:負荷率30%
GW#2:負荷率50%
GW#3:負荷率70%
GW#4:負荷率40%
平均負荷率=(30%+50%+70%+40%)/4=47.5%
また、平均負荷率からの乖離閾値として「+10%」が設定されているとする。
この場合、負荷率57.5%(=47.5%+10%)を超えるGW#3を、PDUセッションから除外するようにする。
【0053】
図4のように、ランダムなパケット損失が発生しやすい無線通信環境であっても、TCP型(AIMD型の配送データ欠損回避・順序維持)のマルチパス通信を実現しつつ、モバイルネットワークコアシステムにおけるゲートウェイで管理する情報量を抑制し、中継処理の負荷をできる限り低減させることができる。
【0054】
<ストリームから複数のサブストリームに分岐させた他の実施形態>
端末2とアプリケーションサーバ6との間で大容量通信を実行した場合、データフローが増加することになる。これは、モバイルネットワークコアシステムのユーザプレーンにおけるゲートウェイ4に大きな負荷がかかることとなる。ゲートウェイ4は、データフローを識別するためのフローテーブルを管理するが、このフローテーブルのサイズが増大する。ゲートウェイ4が管理及び識別すべきデータフロー数が増大すると、中継時のフローテーブルの検索処理に大きな負荷がかかる。
そこで、他の実施形態として、ストリームから複数のサブストリームに分岐させると共に、できる限り負荷が低いPDUセッションを通過させるシーケンスを適用する。
【0055】
図5は、ストリームとサブストリームとの関係を表す説明図である。
【0056】
図5によれば、端末2が送信すべき1ストリームは、パケット1~5によって構成されているとする。ストリームは、端末2の送信元ポート番号によって識別される。端末2は、1ストリームから、複数のサブストリームを生成する。
ここで、1ストリームは、冗長度nとなるn本サブストリームから構成されているとする。また、複数のサブストリームは、1ストリームのパケット系列を複製したものである。サブストリームは、端末のIPアドレス及び送信元ポート番号の組によって識別される。
【0057】
図5によれば、1ストリームは、冗長度2として2本のサブストリームから構成されている。
端末2は、1ストリームから2本のサブストリームへ複製し、サブストリームそれぞれを、PDUセッションを介してプロキシサーバ5へ送信する。同一のストリームから複製された2本のサブストリームはそれぞれ、異なるPDUセッションへ分岐される。これによって、通信路が別々となり、サブストリーム同士で損失発生のタイミングの相関性を低くすることができる。
【0058】
尚、端末2は、1つのアプリケーションにおける大容量のトラヒックを、複数のストリームに割り振る。そして、ストリーム単位で、ウィンドウサイズを管理する。例えば、ウィンドウサイズの空きが大きいストリームから順に、アプリケーションのトラフィックを割り振るものであってもよい。その上で、各ストリームそれぞれから、複数のサブストリームを生成する。
【0059】
サブストリームの受信側となるプロキシサーバ5は、異なるサブストリームのいずれかから任意のシーケンス番号のパケットを最初に受信した際に、当該シーケンス番号のパケットの受信完了とみなす。このとき、そのサブストリームに紐付く1ストリームについて、ウィンドウサイズを増加させるように動作する。これによって、見かけ上のパケット損失率を低減し、より少ないデータフロー数で大容量通信を実現すると共に、ゲートウェイ4などの通信装置の処理負荷を低減することができる。
【0060】
次の実施形態として、確立された複数のPDUセッションに対して、1ストリームから生成された複数のサブストリームをどのように配置するかが問題となる。
【0061】
図6は、複数のサブストリームの組み合わせを表す説明図である。
【0062】
図6によれば、3本のPDUセッションに対して、冗長度2となる2本のサブストリームを配置するべく、以下のように3つのパターンが表されている。
(第1の配置パターン)
サブストリーム#1: AP#1-GW#1
サブストリーム#2: AP#2-GW#2
(第2の配置パターン)
サブストリーム#1: AP#1-GW#1
サブストリーム#2: AP#2-GW#4
(第3の配置パターン)
サブストリーム#1: AP#2-GW#2
サブストリーム#2: AP#2-GW#4
尚、前述した
図4のように、乖離率以上に負荷率が高いAP#3及びGW#3は、既に除外されているとする。
【0063】
このように、端末2は、複数のサブストリーム#1及び#2をそれぞれ、アクセスポイント3及びゲートウェイ4の組み合わせが異なるPDUセッションへ送信する。
プロキシサーバ5は、異なるサブストリーム#1及び#2のいずれかから任意のシーケンス番号のパケットを最初に受信した際に、当該シーケンス番号のパケットの受信完了とみなす。
【0064】
また、制御装置1は、アクセスポイント3とゲートウェイ4との組み合わせからなるPDUセッション毎に、伝送速度を計測しているとする。
(第1の配置パターン) :伝送速度の和
サブストリーム#1: AP#1-GW#1 :100Mbps :150Mbps
サブストリーム#2: AP#2-GW#2 :50Mbps
(第2の配置パターン)
サブストリーム#1: AP#1-GW#1 :100Mbps :110Mbps
サブストリーム#2: AP#2-GW#4 :10Mbps
(第3の配置パターン)
サブストリーム#1: AP#2-GW#2 :50Mbps :60Mbps
サブストリーム#2: AP#2-GW#4 :10Mbps
尚、伝送速度は「速度期待値」であって、制御装置1によって常に計測され、更新されているものとする。
また、複数のサブストリームにおける伝送速度の和は、1ストリームあたりの速度期待値と比例関係にあるとする。
【0065】
その上で、セッション数k(=3)よりもサブストリーム冗長度n(=2)が小さい場合(k>n)、
kC
n通りの組み合わせの中で、1ストリームあたりの複数のセッションにおける伝送速度の和が最も高い組み合わせを選択する。
図6によれば、伝送速度の和が最も高い第1の配置パターンが選択される。
勿論、伝送速度に限られず、遅延時間であってもよいし、パケット損失率であってもよい。
【0066】
図6のようにして決定されたサブストリームの配置は、制御装置1から、端末2及びプロキシサーバ5へ通知される。
ストリーム
・ポート番号
・冗長度(2)
・PDUセッションリスト
サブストリーム#1: AP#1-GW#1
サブストリーム#2: AP#2-GW#2
【0067】
以上、詳細に説明したように、本発明における通信方法及びシステムによれば、端末が1つのアプリケーションサーバとの間で大容量の通信を実現するために適した、複数のアクセスポイント及びゲートウェイを介する複数のセッションを確立することができる。
【0068】
尚、これにより、例えば「端末がアプリケーションサーバと大容量通信をする際であっても、モバイルネットワークコアシステムにおける中継の処理負荷を低減することができる」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0069】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0070】
1 制御装置
2 端末
3 アクセスポイント
4 ゲートウェイ
5 プロキシサーバ
6 アプリケーションサーバ