(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】イソプロピルベンゼンを製造するための触媒ならびにその製造方法および使用
(51)【国際特許分類】
B01J 27/185 20060101AFI20241206BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20241206BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20241206BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20241206BHJP
B01J 37/20 20060101ALI20241206BHJP
C07C 1/22 20060101ALI20241206BHJP
C07C 15/085 20060101ALI20241206BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20241206BHJP
【FI】
B01J27/185 Z
B01J37/02 101D
B01J37/08
B01J37/18
B01J37/20
C07C1/22
C07C15/085
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2022519509
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 CN2020118672
(87)【国際公開番号】W WO2021058019
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-03-29
(31)【優先権主張番号】201910930321.4
(32)【優先日】2019-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910987687.5
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】509128052
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司上海石油化工研究院
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI RESEARCH INSTITUTE OF PETROCHEMICAL TECHNOLOGY SINOPEC
【住所又は居所原語表記】NO.1658 PUDONG BEI ROAD,PUDONG NEW AREA,SHANGHAI 201208,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】劉仲能
(72)【発明者】
【氏名】趙多
(72)【発明者】
【氏名】呂宇皓
(72)【発明者】
【氏名】馬文迪
(72)【発明者】
【氏名】顧国耀
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104230641(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104151129(CN,A)
【文献】特開2006-176492(JP,A)
【文献】特開2019-005746(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104230640(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 27/185
B01J 37/02
B01J 37/08
B01J 37/18
B01J 37/20
C07C 1/22
C07C 15/085
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造するための触媒であって、
担体と、当該担体に担持された活性成分とを含み、
前記担体は担体基材と、当該担体基材に担持された改質補助成分とを含み、
前記活性成分は金属パラジウムおよび/またはその酸化物を含み、前記改質補助成分はリンおよび/またはその酸化物を含む、触媒。
【請求項2】
前記触媒中の前記金属パラジウムおよび/またはその酸化物の含有量が、パラジウム元素の含有量に基づいて、0.01~5重量%であり、および/または、前記金属パラジウムが5~10%の分散度を有することを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記活性成分が活性補助金属および/またはその酸化物をさらに含むことを特徴とする、
請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記活性補助金属が金属銅、金属亜鉛、金属コバルト、金属スズ、金属ニッケルおよび金属銀からなる群から選択される少なくとも1種であり;および/または、
前記触媒中の前記活性補助金属および/またはその酸化物の含有量が、その中の前記補助金属元素の含有量に基づいて、0.0001~0.2重量%である、
請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒中の前記改質補助成分の含有量が、リン元素の含有量に基づいて、0.2~20重量%であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項6】
前記担体基材が、シリカ、アルミナおよび活性炭からなる群から選択される少なくとも1種であり、および/または、前記担体基材が10~25nmの細孔径および50~180m
2/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒が助触媒をさらに含む、ことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項8】
前記助触媒が硫黄含有化合物であり、および/または
前記触媒中の前記助触媒の含有量は、>0~1重量%であって、前記助触媒の量は、その中の有効な元素の量に基づく、ことを特徴とする、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
シリカが前記担体基材でない場合、前記改質補助成分はシリカをさらに含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
シリカが前記担体基材でない場合、前記改質補助成分はシリカをさらに含み、
元素に基づく、リンに対するケイ素のモル比は、≦20であり、
前記触媒中の前記改質補助成分のリンおよび/またはその酸化物の含有量は、0.2~20重量%であり、
リンおよび/またはその酸化物の含有量がその中のリン元素の含有量に基づき、かつ、前記触媒中のシリカ含有量が、>0~60重量%であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項11】
元素に基づく、リンに対するケイ素のモル比は、≦10であり、および/または
前記触媒中の前記改質補助成分のリンおよび/またはその酸化物の含有量は、1~15重量%であり、リンおよび/またはその酸化物の含有量がその中のリン元素の含有量に基づき、および/または
前記触媒中のシリカ含有量が、>0~40重量%である、
ことを特徴とする、請求項10に記載の触媒。
【請求項12】
元素に基づく、リンに対するケイ素のモル比は、≦4であり、および/または
前記触媒中の前記改質補助成分のリンおよび/またはその酸化物の含有量は、1~7重量%であり、リンおよび/またはその酸化物の含有量がその中のリン元素の含有量に基づき、および/または
前記触媒中のシリカ含有量が、>0~20重量%である、
ことを特徴とする、請求項11に記載の触媒。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の触媒の製造方法であって、以下の工程を含む方法:
工程1:リン含有化合物の水溶液を担体基材と混合し、乾燥し、さらに焼成して、リン含有担体を得る;
工程2:前記担体をパラジウム含有化合物の溶液に添加し、乾燥し、さらに焼成して、酸化状態の触媒前駆体を得る;
工程3:酸化された状態の前記触媒前駆体を還元処理に供し、触媒を得る。
【請求項14】
前記担体基材がシリカ、アルミナおよび活性炭からなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ/または、
前記パラジウム含有化合物が塩化パラジウム、硝酸パラジウムおよびクロロパラジウム酸からなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ/または
前記リン含有化合物がリン酸、リン酸二水素カリウム、亜リン酸、リン酸カルシウムおよびリン酸水素アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1つであり、かつ/または
工程2における前記溶液が、活性補助金属を含む化合物をさらに含む、ことを特徴とする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
工程1、工程2において、前記焼成温度が400~700℃であり、および/または
工程3において、還元処理は水素を用いて実施されることを特徴とする、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
工程1’を工程1の後で、かつ工程2の前に行うことを特徴とする、請求項13~15のいずれか1項に記載の製造方法:
工程1’:前記リン含有担体をシリカゲルの水溶液と混合し、乾燥し、焼成して、リンおよびケイ素を含む担体を得る。
【請求項17】
工程4をさらに含むことを特徴とする、請求項13~16のいずれか1項に記載の製造方法:
工程4:工程3に記載の前記触媒を助触媒含有溶液に添加し、乾燥させて、さらなる触媒を得る。
【請求項18】
前記担体基材1Lを基準として、
前記パラジウム含有化合物の量は、そこに含まれるパラジウム元素の量を基準として、0.06g/L~30g/Lであり、および/または
前記活性補助金属を含む化合物の量は、そこに含まれる前記活性補助金属の元素の量を基準として、0.0006g/L~1.2g/Lであり、および/または
前記リン含有化合物の量は、そこに含まれるリン元素の量を基準として、2g/L~100g/Lであり、および/または
シリカゲルの量は6~300g/Lであり、シリカゲルの量は、そこに含まれるシリカの量を基準としていること、を特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【請求項19】
α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造することにおける、請求項1~12のいずれか1項に記載の触媒または請求項13~18のいずれか1項に記載の方法によって得られる触媒の使用。
【請求項20】
α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造する製造方法であって、請求項1~12のいずれか1項に記載の触媒、または請求項13~18のいずれか1項に記載の方法によって得られる触媒の存在下で実施される、製造方法。
【請求項21】
前記製造する製造方法が、原料を水素と接触させて触媒の存在下で反応させてイソプロピルベンゼンを得ることを含み、当該方法は、サイクル比率が1~10である液相熱サイクル処理を使用する、
請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記原料がα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料を含み、
前記炭化水素材料は、任意で、イソプロピルベンゼン、アセトフェノン、α-メチルスチレンおよび二量化イソプロピルベンゼンを含み、かつ、任意で、イソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドを含むことを特徴とする、請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
前記製造方法において、圧力は0.1~4.0MPa、温度は130~220℃、液時空間速度は1~20h
-1、α,α-ジメチルベンジルアルコールに対する水素のモル比は>4であることを特徴とする、請求項22に記載の製造方法。
【請求項24】
α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造する製造方法であって、
第1触媒床および第2触媒床を通して連続で、α,α-ジメチルベンジルアルコールおよび水素を含む炭化水素材料の原料から、イソプロピルベンゼンを得ることを含み、
前記第1触媒床の触媒装填量は第2触媒床の触媒装填量より多いまたは同等であり;
前記第1触媒床の入口温度が前記第2触媒床の入口温度以下であ
り、
前記第1触媒床の触媒および/または前記第2触媒床の触媒が請求項1~12のいずれか1項に記載の触媒である、製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の製造方法は、液相熱サイクル処理によって行われ;および/または
前記第1触媒床の触媒装填量と前記第2触媒床の触媒装填量との体積比が(1~6):1であり;および/または
前記第1触媒床が130~190℃の反応温度、0.1~5MPaの反応圧力、および1.0~20h
-1の液時空間速度を有し、および/または前記第2触媒床は150~230℃の反応温度、0.1~5MPaの反応圧力、および2.0~10h
-1の液相体積空間速度を有し;および/または
前記第1触媒床の液相熱サイクル比率は1~10であり;および/または
前記第2触媒床の液相熱サイクル比率は0~2である、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記第1触媒床において、前記液相に対する水素の体積比が300~1000であり、および/または前記第2触媒床において、前記液相に対する水素の体積比が100~800である、請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記第1触媒床の触媒が金属Pdおよび/または酸化物、ならびに担体を含み、および/または前記第2触媒床の触媒が金属Pdおよび/または酸化物、金属補助剤および/またはその酸化物、ならびに担体を含
む、請求項24~26のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項28】
プロピレンオキシドの製造における、請求項20~27のいずれか1項に記載の製造方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明はイソプロピルベンゼンを製造するための触媒に関し、特に、α,α-ジメチルベンジルアルコール(DMBA)を使用することによってイソプロピルベンゼンを製造するための触媒、およびその製造方法および使用に関する。
[背景技術]
プロピレンオキシド(POと略記する)は重要な有機工業化学材料であり、ポリエーテルポリオール、プロピレングリコール、プロパンジオールエーテルなどの製造に主に使用され、ポリエーテルポリオールの消費量は約70%を占める。現在、POの製造のための商業化された処理は、クロロヒドリン処理、共酸化処理(PO/SM)およびイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドリサイクル処理(CHP)を主に含む。CHP処理は次の利点を有する:全処理の転化率および選択率が非常に高い;処理がPO生成物のみをもたらし、スチレン副生成物の価格変動によって影響されず、これにより、製造業者により安定した経済的利益をもたらすことができる;技術的処理は比較的単純であり、固定投資がPO/SM処理の3分の2である。さらに、CHP処理における装置の耐食性に対する要求は比較的低い。CHP処理によるプロピレンオキシドの製造技術では、プロピレンエポキシ処理の過程で多量のα,α-ジメチルベンジルアルコール(DMBA)が生成する。α,α-ジメチルベンジルアルコールは、反応サイクルに再度加えるためのイソプロピルベンゼンを製造するために水素化される必要がある。
【0002】
米国特許US6646139B2は、α,α-ジメチルベンジルアルコールと、水素の供給源としてのH2および触媒としての銅-Crとの接触水素化分解によってイソプロピルベンゼンを製造する処理を提供する。α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率は99%までであり得るが、選択率は98%未満である。さらに、触媒の製造におけるCr元素の使用は、深刻な環境汚染をもたらす。中国特許CN101733093Bは、160℃未満の反応温度でのアルミナ担持もしくはゼオライト担持金属パラジウムの反応、またはパラジウムとPtとの混合物の反応が、99.5%を超えるα,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率および99.5%を超えるイソプロピルベンゼンの選択率を達成したことを報告した。この特許における担体のより強い酸性度は、α,α-ジメチルベンジルアルコールの脱水の中間生成物であるメチルスチレンの重合を顕著に導いた。この特許は、触媒の安定性についての技術的課題に言及していない。中国特許出願CN104230640Aは、パラジウム/SiO2触媒の使用がα,α-ジメチルベンジルアルコールの100%転化率を実現できるが、180℃の反応温度で98.5%未満のイソプロピルベンゼンの選択率を実現できることを示している。
【0003】
イソプロピルベンゼンを製造するための公知の方法は、脱水触媒の存在下でクミルアルコールをアルファ-メチルスチレンに脱水し、水素化触媒の存在下でアルファ-メチルスチレンをクメンに水素化することである(例えば、European Chemical News第74巻第19475-11番、2001年3月)。中国特許CN1732139Aは、得られたアルファ-メチルスチレンおよび水および水素を含む混合物を得るための脱水触媒にクミルアルコールおよび水素を提供すること;水素化触媒に前記混合物を提供し、ここで、反応温度および反応圧力は脱水後のα-メチルスチレン溶液に含まれる水が濃縮されないように選択されること、を開示している。反応温度は150~300℃が好ましく、反応圧力は100~2000kPaが好ましい。温度が150℃より低く、圧力が2000kPaより高い場合、脱水反応排気口で水凝集が起こることがあり、水素化触媒の性能を低下させる。しかしながら、公知の方法は、イソプロピルベンゼンの低コストかつ効率的な製造の要求を満たすことができない。
【0004】
従来技術では、さらに改善する必要がある触媒活性および選択率、α,α-ジメチルベンジルアルコールの脱水および水素化を触媒することによるイソプロピルベンゼンの製造における不十分な安定性および深刻な環境汚染を含む問題がある。
[発明の概要]
本発明は、先行技術における触媒の低い活性および選択率、不十分な安定性および深刻な環境汚染の技術的課題を解決するために、優れた触媒活性および選択率、優れた耐水和性および良好な安定性を有する、高い活性及び高い選択率の担持パラジウム触媒を提供する。
【0005】
本発明の一態様は、イソプロピルベンゼンを製造するための触媒、特に、α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造するための触媒であって、担体と、当該担体に担持された活性成分とを含み、前記担体は担体基材と、当該担体基材に担持された改質補助成分とを含み、前記活性成分は金属パラジウムおよび/またはその酸化物を含み、かつ前記改質補助成分はリンおよび/またはその酸化物を含む、触媒を提供することである。
【0006】
担体基材はここでは特に限定されないが、特に特定しない限り、この分野で一般的な触媒担体であってもよい。好ましい実施形態では、担体基材が、シリカ、アルミナおよび活性炭からなる群から選択される少なくとも1種であり、好ましくはアルミナである。
【0007】
好ましい実施形態では、担体基材が10~25nmの細孔径および50~180m2/gの比表面積を有し、より好ましくは担体基材が12~18nmの細孔径および120~160m2/gの比表面積を有する。
【0008】
好ましい実施形態では、触媒中の金属パラジウムおよび/またはその酸化物の含有量は0.01~5重量%である。さらなる好ましい実施形態では、触媒中の金属パラジウムおよび/またはその酸化物の含有量は、金属パラジウムおよび/またはその酸化物の含有量が、その中の元素パラジウムの含有量に基づいて、0.05~1重量%、例えば0.05~0.5重量%である。
【0009】
本発明において、金属パラジウムの供給源は特に限定されない。金属パラジウムの供給源は、塩化パラジウム、硝酸パラジウム、およびクロロパラジウム酸からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましいが、これに限定されない。
【0010】
好ましい実施形態では、触媒は5~10%、好ましくは6.5~8.5%のパラジウム分散度を有する。
【0011】
ここで、α,α-ジメチルベンジルアルコールの水素化分解は、2工程の脱水と水素化とのカップリングである。研究によって、脱水が反応の決定的な工程であることが判明した。従って、全ての反応の反応速度を改善するためには、触媒の調節における触媒の脱水活性を第一に改善すべきである。金属パラジウムの分散度は、その粒径と一定の関係を有する。一般に、粒子が大きいほど、分散度は低い。また、研究によって、TEM分析が分散度の低下した触媒上ではPdの粒径は大きく増加しないことを示したから、Pd分散度は粒径と直線関係にないことが判明した。さらに、Pd触媒の適切な粒子成長は、反応選択率を改善するのに役立つ。そのため、分散度を適度な範囲内に制御する必要がある。
【0012】
金属Pdの分散度は、水素-酸素滴定法によって測定される。特定の分析工程は、触媒の温度をある水素流中で120℃に上げ(加熱速度10℃/分);温度を2時間一定に保ち;次いで温度を145℃に上げ;アルゴンで1時間パージし;次いで温度を室温に下げる(アルゴン雰囲気中)こと、を含む。酸素の化学吸着:室温で、飽和するまで試料管にパルスによって酸素を導入し;次いでアルゴンで40分間パージする。水素滴定量の測定:水素の定量パルスは、6方向供給バルブ(定量チューブ体積0.3mL)を用いて行う。消費された水素の量はクロマトグラフィー装置上の正面ピークと後部ピークとの間の面積差に基づいて計算することができ、その結果、触媒上の金属Pdの分散度を計算することができる。
【0013】
好ましい実施形態では、活性成分が活性補助金属および/またはその酸化物をさらに含む。好ましくは、前記活性補助金属が金属銅、金属亜鉛、金属コバルト、金属スズ、金属ニッケルおよび金属銀からなる群から選択される少なくとも1種、例えば金属銅である。さらなる好ましい実施形態では、触媒中の活性補助金属および/またはその酸化物の含有量は、その中の補助金属元素の含有量に基づいて、0.0001~0.2重量%、好ましくは0.0007~0.2重量%である。
【0014】
本発明においては、活性補助金属の供給源は特に限定されないが、例えば活性補助金属塩化物、活性補助金属硝酸塩の化合物および活性補助金属酢酸塩の化合物などからなる群から選択される少なくとも1つであるが、これらに限定されない。
【0015】
活性補助金属(例えばCu)で改質されたPd系バイメタル/ポリメタル触媒は、特に最初の段階で、触媒のイソプロピルベンゼンの選択率を改善することができる。好ましくは、当該触媒中におけるPdの重量含有量が、活性補助金属(例えば、Cu)のそれよりも多い。すなわち、活性補助金属(例えばCu)に対するPdの重量比率は>1である。
【0016】
好ましい実施形態において、触媒中の改質補助成分(リンおよび/またはその酸化物)の含有量が0.2~20重量%である。さらなる好ましい実施形態では、触媒中の改質補助成分(リンおよび/またはその酸化物)の含有量が1~15重量%、より好ましくは1~7重量%であり、ここで、リンおよび/またはその酸化物の含有量は、その中のリン元素の含有量に基づく。
【0017】
本発明中において、リンの供給源は特に限定されず、好ましくはリン酸、リン酸二水素カリウム、亜リン酸、およびリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0018】
広範な実験研究に基づいて、本発明者は、リンによる担体の改質が触媒の水素化活性および安定性、特に水熱安定性を顕著に向上し得ることを見出した。特に、触媒中への活性補助成分(活性補助金属)の同時導入は、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率の向上に関して顕著な技術的効果を有した。
【0019】
好ましい実施形態において、担体基材がシリカでない場合、改質補助成分は、シリカをさらに含むことができる。
【0020】
本発明の触媒において、(特にアルミナの担体基材を改質するための)シリカによる改質は、触媒の活性および安定性を向上することができる。ここでは、担体基材としてアルミナを用いることが好ましい。
【0021】
好ましい実施形態(担体基材がシリカでない)において、触媒中のシリカの含有量は、>0~60重量%、好ましくは>0~40重量%であり、例えば、>0~20重量%であり、ここで、シリカの含有量はその分子の含有量に基づく。
【0022】
ここで、触媒の細孔径はケイ素による改質後に増加し、これにより反応物および生成物の拡散速度を向上し、それによって転化率および選択率を向上する。さらに、ケイ素含有触媒は、水素化分解反応の速度を促進するのに役立つ、より良好な脱水活性を有することも見出されている。
【0023】
好ましい実施形態(担体基材がシリカではない)において、ケイ素による改質の後、元素に基づくケイ素のリンに対するモル比は≦20、好ましくは≦10、より好ましくは≦4であるが、0ではない。触媒中のリンおよび/またはその酸化物の改質補助成分の含有量は、0.2~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは1~7重量%である。リンおよび/またはその酸化物の含有量は、その中のリン元素の含有量に基づいており、触媒中のシリカ含有量は>0~60重量%、好ましくは>0~40重量%、例えば、>0~20重量%である。
【0024】
これにより、触媒の高温水熱安定性を大幅に向上させることができる。例えば、高温水熱処理後の触媒の比表面積および平均細孔径の変化は著しく減少する。例えば、好ましくは、比表面積の変化が30%未満であり、平均細孔径の変化が20%未満であり;より好ましくは比表面積の変化が10%未満であり、平均細孔径の変化が10%未満である。
【0025】
ここで、高温水熱処理の温度は100~300℃であり、処理時間は20~300時間である。
【0026】
高温水熱安定性は、以下の工程に従って決定される:
(a)触媒の高温水熱処理の特定の工程:触媒を過剰の水に分散させ;次いで、触媒を水と一緒に結晶化釜に入れ;結晶化釜を密閉した後、200℃のオーブンに240時間置く。
【0027】
(b)触媒の比表面積および細孔径を決定するための方法は、以下の特定の分析工程を含む:触媒担体および触媒の物理的特性(例えば、比表面積、細孔径、細孔容積など)は、窒素物理吸着(ASAP 2020M、Micromeritics)によって分析される。分析および試験の前に、試料を300℃の真空中で3時間脱気して、試料中の吸着された不純物および水分を除去する。その後、試験試料の窒素吸着-脱着等温線を液体窒素環境(-196℃)下で分析する。
【0028】
試料の比表面積(SBET)は、0.05~0.20の範囲の相対圧力P/P0で、BET式(3-1)による窒素吸着データに基づいて算出される:
【0029】
【0030】
ここで、Pは実際に測定された圧力であり;P0は吸着温度での飽和蒸気圧であり;Vは圧力P下での窒素の吸着体積であり;Vmは単層飽和吸着に必要な窒素の体積であり;Cは吸着熱定数である。
【0031】
試料の細孔径分布(Dp)は、毛細管凝縮現象に基づくBJH法(Barret-Joyner-Halensa)により算出される。すなわち、蒸気圧Pと液体rkの曲率半径とは、以下の関係にある:
【0032】
【0033】
ここで、rは10-5N/cmの液体窒素の表面張力であり;Vmは液体窒素のモル体積であり;θkはメニスカスと固体孔壁との間の接触角であり;Rは理想気体定数であり;Tは試験温度である。異なる圧力P/P0下での吸着容量Vが実験で得られた。Vとrkとの関係は式(3-2)で求められる。dV/drkによるrkのプロットの結果、試料の細孔径分布のカーブが得られる。
【0034】
好ましい実施形態において、触媒は、助触媒をさらに含み;より好ましくは、助触媒は硫黄含有化合物であり、好ましくは、硫黄含有化合物は硫黄含有有機物に由来する。
【0035】
好ましくは、担体およびその上に担持される活性成分は、助触媒が担持された触媒本体である。
【0036】
さらなる好ましい実施形態では、触媒中の助触媒の含有量は>0~1重量%、好ましくは>0~0.8重量%である。ここで、助触媒の量は、その中の有効な元素の量(例えば硫黄元素の量)に基づく。
【0037】
本発明において、硫黄含有化合物の供給源は特に限定されないが、好ましくは、tert-ノニルポリスルフィド、tert-ブチルポリスルフィド、チオフェンおよびジメチルジスルフィドなどの群から選択される少なくとも1つであるが、特に限定されない。
【0038】
硫黄含有化合物は触媒表面上の低配位不飽和活性中心に優先的に吸着され、これは触媒上の不安定な活性中心の局所的な被毒現象を引き起こす。このようにして、触媒の比較的高い初期活性によって引き起こされる触媒の局所的な過熱を、より良好に抑制し、金属粒子の成長およびイソプロピルベンゼンのイソプロピルシクロヘキサンへの過剰な水素化を回避することができる。一方、二量化イソプロピルベンゼン(2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン)の生成を効果的に制御することができ、イソプロピルベンゼンの選択率を高めながら触媒の操作安定性を著しく改善することができる。
【0039】
触媒上の金属パラジウムは、圧縮二重架橋結合CO吸収部位を含まない。触媒の一酸化炭素吸着のin situ赤外スペクトログラムでは、2000~1950cm-1の範囲に吸収ピークがないことが好ましい。
【0040】
好ましい実施形態では、触媒上の金属パラジウムが、線形結合CO吸着部位、単架橋結合CO吸着部位、および表面結合CO吸着部位を含む。さらに好ましい実施形態では、2150~2050cm-1、1950~1900cm-1および1900~1850cm-1の範囲の吸収ピークが、触媒の一酸化炭素吸着のin situ赤外スペクトログラムに存在する。
【0041】
一般に、金属パラジウム触媒は、CO-FTIRスペクトログラムの2150~2050cm-1,2000~1950cm-1,1950~1900cm-1および1900~1850cm-1の範囲の顕著な吸収ピークにそれぞれ対応する特殊な性質の4つのCO吸着部位を有する。前記吸収ピークは、それぞれ、Pd表面上の線形結合CO吸着部位(linear-bonded CO adsorption site)、圧縮二重架橋結合CO吸着部位(compressed double-bridge-bonded CO adsorption site)、単架橋結合CO吸着部位(mono- bridge-bonded CO adsorption site)、および表面結合CO吸着部位(face-bonded CO adsorption site)に属する。
【0042】
触媒表面に吸着したCOの赤外スペクトログラムは、次のようにして測定される:COフーリエ変換赤外スペクトログラム(CO-FTIR):CO吸着のFT-IR試験を、4cm-1の分解能を有する赤外分析計(THERMO NICOLET 4700 NEXUS)で実施する。試料を、Harrick in situプール中で還元の前処理に供する。バックグラウンドスペクトログラムは、第一に、吸着のためにCOガスを導入する前に、試験温度でスキャンされる。吸着平衡時に、COの気相赤外吸収ピークが検出されなくなるまで、試料を窒素でパージする。測定温度での赤外線スペクトログラムを収集し、対応する温度におけるバックグラウンドスペクトログラムを差し引いて、触媒表面に吸着されたCOの赤外スペクトログラムを得る。
【0043】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による触媒の製造方法を提供することであり、以下の工程を含む:工程1:リン含有化合物の水溶液を担体基材と混合し、乾燥し、さらに焼成して、リン含有担体を得る;工程2:担体をパラジウム含有化合物の溶液に添加し、乾燥し、さらに焼成して、酸化状態の触媒前駆体を得る;工程3:酸化された状態の触媒前駆体を還元処理に供し、触媒を得る。
【0044】
好ましい実施形態では、工程1’を工程1の後で、かつ工程2の前に任意で行う:工程1’:前記リン含有担体をシリカゲルの水溶液と混合し、乾燥し、焼成して、リンおよびケイ素を含む担体を得る
好ましい実施形態では、工程1、工程2および工程1’において、乾燥は、60~200℃で4~36時間、好ましくは150℃で6時間、または好ましくは110℃で8時間乾燥することによって実施される。
【0045】
好ましい実施形態では、工程1、工程2および工程1’において、焼成温度が400~700℃であり、好ましくは400~500℃である。
【0046】
本発明において、工程1におけるリン含有化合物は特に限定されず、好ましくは、リン酸、リン酸二水素カリウム、亜リン酸、リン酸カルシウムおよびリン酸水素アンモニウムなどからなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されない。
【0047】
好ましい実施形態において、工程2におけるパラジウム含有化合物の溶液は、活性補助金属を含む化合物をさらに含む。
【0048】
本発明において、特に明記しない限り、担体基材は特に限定されないが、好ましくはアルミナ、シリカおよび活性炭からなる群から選択される少なくとも1つであり、より好ましくはアルミナであり;パラジウム含有化合物は特に限定されず、好ましくは、塩化パラジウム、硝酸パラジウムおよびクロロパラジウム酸からなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されず;活性補助金属を含む化合物は特に限定されず、例えば、活性補助金属塩化物、活性補助金属硝酸塩の化合物および活性補助金属酢酸塩の化合物などからなる群から選択される少なくとも1つであるが、これに限定されず;好ましくは、活性補助金属が金属銅、金属亜鉛、金属コバルト、金属スズ、金属ニッケルおよび金属銀からなる群から選択される少なくとも1種であり、例えば金属銅である。
【0049】
好ましい実施形態では、工程3において、還元処理は水素によって実施される。さらに好ましい実施形態において、工程3における還元温度は40~300℃、好ましくは200~300℃、より好ましくは250℃であり;水素の体積空間速度は50~500h-1、好ましくは80~150h-1、より好ましくは100h-1である。
【0050】
好ましい実施形態では、当該方法が工程4をさらに含む:工程4:工程3による触媒を助触媒含有溶液に添加し、乾燥させて、さらなる触媒を得る。
【0051】
さらに好ましい実施形態において、助触媒は硫黄含有化合物であり;より好ましくは、硫黄含有化合物が硫黄含有有機物に由来し;さらに好ましくは、前記硫黄含有有機物がtert-ノニルポリスルフィド、tert-ブチルポリスルフィド、チオフェン、およびジメチルジスルフィドの群から選択される少なくとも1つである。
【0052】
本発明に係る製造方法において、担体基材1Lを基準として、パラジウム含有化合物およびリン含有化合物の量は、以下の通りである:パラジウム含有化合物の量は、そこに含まれるパラジウム元素の量を基準として、好ましくは0.06g/L~30g/Lであり、さらに好ましくは0.5g/L~10g/Lであり、かつ;リン含有化合物の量は、そこに含まれるリン元素の量を基準として、好ましくは2g/L~100g/Lであり、さらに好ましくは5g/L~80g/Lである。
【0053】
存在する場合、担体基材1Lを基準として、活性補助金属、シリカゲルおよび/または硫黄含有有機物を含む化合物の量は、以下の通りである:活性補助金属を含む化合物の量は、そこに含まれる活性補助金属の元素の量を基準として、好ましくは0.0006g/L~1.2g/Lであり、さらに好ましくは0.01g/L~1.0g/Lであり;シリカゲルの量は6~300g/Lであり、好ましくは20~200g/Lであり、シリカゲルの量は、そこに含まれるシリカの量を基準としており;助触媒(例えば硫黄含有化合物)の量が、0.0001g/L~3g/Lであり、好ましくは0.01g/L~1g/Lであり、より好ましくは0.05g/L~0.2g/Lであり、硫黄含有化合物の量はそこに含まれる有効元素(例えば、硫黄元素)の量を基準としている。
【0054】
本発明の触媒の製造方法において、全ての溶液は、溶質をそれらの良好な溶媒に完全に溶解することによって形成されるものであり、好ましくは水溶液である。
【0055】
本発明の第3の態様は、イソプロピルベンゼンの製造における、本発明の第1の態様による触媒または本発明の第2の態様による方法によって得られる触媒の使用を提供することである。
【0056】
本発明の第4の態様は、イソプロピルベンゼンの製造方法を提供することである。特に、α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造する方法を提供することであって、好ましくは本発明の第1の態様による触媒または本発明の第2の態様による方法によって得られた触媒を用いて実施される方法を提供することである。
【0057】
好ましい実施形態では、製造方法は、原料を水素と接触させて、触媒の存在下で反応させて、イソプロピルベンゼンを得ることを含む。さらに好ましい実施形態では、原料がα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料を含む。さらに好ましい態様において、α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料は、不活性溶媒(好ましくはイソプロピルベンゼン)およびα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む。例えば、炭化水素材料は、イソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド法におけるプロピレンオキシドの製造においてプロピレンオキシドが分離された後の塔底液、および/またはイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドの還元から得られた物質である。ここで、不活性溶剤は、例えば、長鎖アルカン(オクタン、ドデカン)および芳香族単環芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、n-プロピルベンゼン、n-ブチルベンゼン、イソプロピルベンゼン)などの反応物および結果物に対して実質的に不活性でなければならない。具体的には、不活性溶媒は、反応物および結果物に対して実質的に不活性な炭化水素である。さらに、溶媒はジメチルベンジルアルコールとの良好な相溶性を有する有機溶媒であることができるが、好ましくは後続の反応に影響を及ぼさないイソプロピルベンゼンである。
【0058】
好ましい実施形態では、原料が、1~100%のα,α-ジメチルベンジルアルコールおよび0~99%の不活性溶媒(好ましくはイソプロピルベンゼン)を含む。さらに好ましい態様において、原料は、50~75%のα,α-ジメチルベンジルアルコールおよび25~50%の不活性溶媒(好ましくはイソプロピルベンゼン)を含む。
【0059】
本発明において、原料中の各成分の具体的な含有量は特に限定されない。非限定的な例として、原料は、重量パーセントに基づいて、約55重量%のα,α-ジメチルベンジルアルコールの炭化水素物質、約43重量%のイソプロピルベンゼンおよび約2重量%の含有量の他の炭化水素を含む。他の炭化水素としては、n-プロピルベンゼン、メチルスチレン、アセトフェノンおよび2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタンを含んでもよい。
【0060】
好ましい実施形態では、製造方法において、圧力は0.1~4.0MPaであり、温度は130~220℃であり、液時空間速度は1~20h-1であり、α,α-ジメチルベンジルアルコールに対する水素のモル比は>4である。さらに好ましい実施形態では、圧力は0.5~3.0MPaであり、温度は150~200℃であり、液時空間速度は4~15h-1であり、α,α-ジメチルベンジルアルコールに対する水素のモル比は>5である。
【0061】
好ましい実施形態では、製造方法が液相熱サイクル処理を使用する。好ましくは、サイクル比率は1~10、好ましくは4~8である。ここで、「液相熱サイクル処理」とは、冷却および水分離することなく、触媒床の排気口における液相熱材料を触媒床に直接循環させることをいう。
【0062】
好ましい実施形態では、本発明の製造方法は、α,α-ジメチルベンジルアルコールおよび水素を含む炭化水素材料の原料から、第1触媒床および第2触媒床を通過して連続で、好ましくは液相熱サイクル処理によって、イソプロピルベンゼンを得ることを含む;ここで、第1触媒床の触媒装填量は第2触媒床の触媒装填量より多いまたは同等であり;第1触媒床の入口温度が第2触媒床の入口温度以下であり;第1触媒床の液相熱サイクル比率は好ましくは1~10である;第2触媒床の液相熱サイクル比率は好ましくは0~2である。
【0063】
好ましい実施形態では、第1触媒床の触媒装填量と第2触媒床の触媒装填量との体積比が(1~6):1であり、好ましくは(2~4):1である。
【0064】
第1触媒床において、液相に対する水素の体積比は、好ましくは300~1000であり、さらに好ましくは400~800であり、および/または第2触媒床において、液相に対する水素の体積比が好ましくは100~800であり、さらに好ましくは200~400である。
【0065】
好ましい実施形態では、第1触媒床が130~190℃の反応温度、0.1~5MPaの反応圧力、および1.0~20h-1の液時空間速度を有する。さらに好ましい実施形態において、第1触媒床は150~170℃の反応温度、0.5~3.0MPaの反応圧力、1~5h-1の液相体積空間速度、および2~8のサイクル比率を有する。
【0066】
ここで、液相は、液相熱サイクル処理によって希釈されていない原料供給物を指す新鮮な油である。好ましい実施形態では、第2触媒床は150~230℃の反応温度、0.1~5MPaの反応圧力、2.0~10h-1の液相体積空間速度を有する。さらに好ましい実施形態において、第2触媒床は160~190℃の反応温度、0.5~3MPaの反応圧力、4~8h-1の液時空間速度を有する。
【0067】
好ましくは、第1触媒床の触媒は、金属Pdおよび/または酸化物、ならびに担体を含む。
【0068】
好ましくは、第2触媒床の触媒は、金属Pdおよび/または酸化物、金属補助剤および/またはその酸化物、ならびに担体を含み、好ましくは、金属補助剤は、Fe、Co、Ni、Ca、MgおよびCuからなる群から選択される少なくとも1種であり、より好ましくは、Cu、NiおよびMgからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0069】
好ましくは、第1触媒床の触媒および/または第2触媒床の触媒は、本発明の第1の態様で提供される触媒であり、イソプロピルベンゼンを製造するための触媒である。
【0070】
本発明において、第1触媒床の装填量は、原料が第1触媒床においてできるだけ多く反応することができるように、第2触媒床の装填量以上に、好ましくは当該装填量より顕著に高く、設定される。未反応の原料が存在する場合、それはわずかに高い温度での反応のために第2触媒床に入る。具体的には、原料中の反応物の濃度が高い場合には、反応処理における放熱が高いため、第1床は触媒の選択率および安定性に寄与するように、高い総体積空間速度および熱を運ぶ機能を有する液相熱サイクルの態様を使用して、床の過熱および局所的なホットスポットの形成を防止する。一方、より高い温度を使用する第2床は、少量の残留反応物の高い転化率を実現する。このようにして、生成物中の不純物含有量は著しく減少する。
【0071】
好ましい実施形態では、α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造する方法において、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率は99.5%より大きく、イソプロピルベンゼンの選択率は99.8%より大きい。
【0072】
転化率および選択率は、以下の式に従って算出される:
α,α-ジメチルベンジルアルコール転化率(%)=[(W0
1-Wt
1)/W0
1]×100%;
イソプロピルベンゼン選択率(%)=[((Wt
2-W0
2)/M2)/((W0
1-Wt
1)/M1)]×100%;
ここで、w0
1は原料中のα,α-ジメチルベンジルアルコールの質量を示し;wt
1は生成物中のα,α-ジメチルベンジルアルコールの質量を示し;w0
2は原料中のイソプロピルベンゼンの質量を示し;wt
2は生成物中のイソプロピルベンゼンの質量を示し;M1はα,α-ジメチルベンジルアルコールの分子量を示し;M2はイソプロピルベンゼンの分子量を示す。
【0073】
本発明によるα,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造する方法は、適切な脱水酸部位および水素化金属活性部位を提供し、触媒の比較的高い初期活性によって引き起こされる触媒の局所過熱をより良好に抑制し、担持パラジウム活性成分の存在下でのα,α-ジメチルベンジルアルコールの脱水および水素化によるイソプロピルベンゼンの製造の触媒処理において、金属粒子の成長およびイソプロピルベンゼンのイソプロピルシクロヘキサンへの過剰な水素化を回避する。一方、それは、二量化イソプロピルベンゼンの生成を効果的に制御し、イソプロピルベンゼンの選択率を高めながら触媒の操作安定性を著しく向上する。
【0074】
本発明はさらに、例えばプロピレンオキシドの製造における前記製造方法の使用を提供する:
工程1:イソプロピルベンゼンの酸化によりイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドを得る;
工程2:イソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドとプロピレンとの反応からプロピレンオキシドおよびα,α-ジメチルベンジルアルコールを得る;
工程3:精留によるプロピレンオキシドの分離の手段によってα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料を得る;
工程4:α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料を、本発明の触媒および方法を用いた処理に供して、再利用のために工程1に再循環されるイソプロピルベンゼンを得る工程。
【0075】
本発明に開示される範囲のエンドポイントおよび任意の値は、正確な範囲または値に限定されない。これらの範囲または値は、これらの範囲またはこれらの値に近い値を含むものとして解釈されるべきである。数の範囲に関して、各範囲のエンドポイントの間、各範囲のエンドポイントと個々の値との間、および個々の値の間で、それらを互いに組み合わせて、1つ以上の新しい数の範囲を得ることができる。これらの数値範囲は、本発明に具体的に開示されているとみなすべきである。原則として、文脈上の様々な技術的解決策を互いに組み合わせて、新たな技術的解決策を得ることができ、これはまた、本発明に具体的に開示されているとみなされるべきである。
【0076】
本発明は、従来技術と比較して、少なくとも以下の有利な効果を奏する:
(1)本発明による触媒の担体中への改質補助成分Pの添加は、水素化活性および触媒の安定性を顕著に向上および増大させることができる。特に、ケイ素のリンに対するモル比率が一定である場合に、担体中への改質補助成分PおよびSiO2の添加によって触媒の水熱安定性を顕著に向上させることができる。
【0077】
(2)触媒中への活性補助成分の同時導入は、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率を著しく向上することができる。
【0078】
(3)触媒中に助触媒を導入することにより、イソプロピルベンゼンのイソプロピルシクロヘキサンへの過剰な水素化が回避される。その一方で、二量化イソプロピルベンゼン(2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン)の生成を効果的に制御し、イソプロピルベンゼンの選択率を高めながら触媒の操作安定性を顕著に向上することができる。
【0079】
(4)本発明で提供される液相熱サイクルによるイソプロピルベンゼンの製造方法では、装置のエネルギー消費およびコストを大幅に削減し、効率的にイソプロピルベンゼンを製造することができるため、反応熱の利用はより合理的である。
【0080】
(5)本発明によるイソプロピルベンゼンの製造方法は、適切な脱水酸部位および水素化金属活性部位を提供し、担持パラジウム活性触媒の存在下でのα,α-ジメチルベンジルアルコールの脱水および水素化によって、イソプロピルベンゼンを製造する触媒処理における触媒の比較的高い初期活性によって引き起こされる触媒の局所的な過熱による、イソプロピルベンゼンのイソプロピルシクロヘキサンへの過剰な水素化をより良好に阻害する。その一方で、それは、二量化イソプロピルベンゼンの生成を効果的に制御し、イソプロピルベンゼンの選択率を高めながら触媒の操作安定性を顕著に向上する。
【0081】
結論として、良好な水熱安定性および優れた脱水性を有する担体を製造すること、およびこの担体を用いて水素化金属を担持することを手段として、本発明は良好な特性を有する水素化分解触媒を提供し、脱水と水素化の2つの反応の結合を実現し、液相熱サイクル法を用いることにより、より合理的にエネルギーを利用する。その一方で、本発明は触媒床の局所的な過熱による触媒性能の低下を防止し、イソプロピルベンゼンの低コストかつ高効率な生産を実現する。
【0082】
発明を実施するための態様。
【0083】
以下の具体的な例と組み合わせて、本発明について詳細に説明する。本発明のさらなる例示のためにのみ使用される以下の例は、本発明の保護範囲に対する限定として解釈されることができないことを指摘する必要がある。なお、本発明の内容に応じて当業者が本発明に対して行う本質的ではない改良および調整もまた、本発明の保護範囲内である。
【0084】
実施例および比較例に用いた原料の成分を、表1に示す。
【0085】
【0086】
触媒中の各成分の含有量の分析:触媒中の特定元素の組成をX線蛍光分析法により測定する。異なる元素は、異なる波長を有する特徴的なX線スペクトログラムを有し、各スペクトル線の蛍光強度は、元素の濃度と特定の関係を有する。試験する元素の特性X線スペクトル線の波長および強度を決定することにより、定性的および定量的解析を実施することができる。
【0087】
I.触媒の製造および評価
<実施例1>
1.触媒製造
アルミナ1Lを8.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0088】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0089】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0090】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0091】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0092】
<実施例2>
1.触媒製造
アルミナ1Lを8.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して、触媒担体を製造した。
【0093】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0094】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0095】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0096】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0097】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0098】
<実施例3>
1.触媒製造
アルミナ1Lを27gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、8時間110℃で乾燥し、4時間400℃で焼成して、触媒担体を作製した。
【0099】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0100】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0101】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。CO-FTIR分析結果を
図1に示す。
【0102】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0103】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0104】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0105】
<実施例4>
1.触媒製造
アルミナ1Lを35gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して、触媒担体を作製した。
【0106】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0107】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0108】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0109】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0110】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0111】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0112】
<実施例5>
1.触媒製造
アルミナ1Lを5.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0113】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0114】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0115】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0116】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0117】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0118】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0119】
<実施例6>
1.触媒製造
アルミナ1Lを27gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0120】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0121】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒前駆体IIを製造した。
【0122】
上述のパラジウム系触媒前駆体II 1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させ、110℃で乾燥させてパラジウム系触媒を得た。
【0123】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。CO-FTIR分析結果を
図1に示す。
【0124】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0125】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0126】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0127】
<実施例7>
1.触媒製造
アルミナ1Lを35gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0128】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0129】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒前駆体IIを製造した。
【0130】
上述のパラジウム系触媒前駆体II 1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させ、110℃で乾燥させてパラジウム系触媒を得た。触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0131】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0132】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
1000時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0133】
<実施例8>
クロロパラジウム酸-硝酸ニッケル水溶液が10.0gのパラジウムおよび1.2gのニッケルを含んだこと以外は、実施例2の処理を繰り返した。触媒の主成分を表2に示す。
【0134】
実施例2における触媒評価を繰り返した。同様に、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、いずれも比較的高かった。
【0135】
<実施例9>
クロロパラジウム酸-硝酸コバルト水溶液が0.5gのパラジウムおよび0.0006gのコバルトを含んだこと以外は、実施例2の処理を繰り返した。触媒の主成分を表2に示す。
【0136】
実施例2における触媒評価を繰り返した。同様に、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、いずれも比較的高かった。
【0137】
<実施例10-13>
0.01g、0.05g、0.2gおよび1gの硫黄を含むジ-tertノニルポリスルフィドをそれぞれ用いたこと以外は、実施例7における処理を繰り返した。触媒の主成分を表2に示す。
【0138】
実施例7における触媒評価を繰り返した。同様に、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、いずれも比較的高かった。
【0139】
<実施例14>
触媒の製造以外は、実施例6における処理を繰り返した。触媒の製造において、アルミナ1Lを27gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成してPを含む触媒担体を製造した。
【0140】
上述のPを含む触媒担体1Lを、SiO2の質量濃度が5%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0141】
上述のP/Si含有担体1Lを、パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0142】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒前駆体IIを得た。
【0143】
上述のパラジウム系触媒前駆体II 1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分を表2に示す。
【0144】
実施例6での触媒評価を繰り返した。同様に、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、いずれも比較的高かった。
【0145】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0146】
<実施例15>
触媒の製造以外は、実施例6における処理を繰り返した。触媒の製造において、27gのPを含むリン酸水溶液600gとアルミナ1Lとを混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成してPを含む触媒担体を製造した。
【0147】
SiO2の質量濃度が10%であるシリカゲル水溶液600gと上述のPを含む触媒担体1Lとを混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0148】
上述のP/Si含有担体1Lを、パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0149】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒前駆体IIを得た。
【0150】
上述のパラジウム系触媒前駆体II 1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分を表2に示す。
【0151】
実施例15で得られた担体には、Pのみならずケイ素も含まれていた。触媒を用いるα,α-ジメチルベンジルアルコールの水素化によるイソプロピルベンゼンの製造において、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率とイソプロピルベンゼンの選択率とは、いずれも、実施例6のそれらよりも高かった。
【0152】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0153】
<実施例16>
触媒の製造以外は、実施例6における処理を繰り返した。触媒の製造において、27gのPを含むリン酸水溶液600gとアルミナ1Lを混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成してPを含む触媒担体を製造した。
【0154】
上述のPを含む触媒担体1Lを、SiO2の質量濃度が20%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0155】
上述のP/Si含有担体1Lを、パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0156】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒前駆体IIを得た。
【0157】
上述のパラジウム系触媒前駆体II 1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分を表2に示す。
【0158】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0159】
<実施例17>
触媒の製造以外は、実施例6における処理を繰り返した。触媒の製造において、アルミナ1Lを27gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して、Pを含む触媒担体を製造した。
【0160】
上述のPを含む触媒担体1Lを、SiO2の質量濃度が30%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0161】
上述のP/Si含有担体1Lを、パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0162】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒前駆体IIを製造した。
【0163】
上述のパラジウム系触媒前駆体II 1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分を表2に示す。
【0164】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0165】
実施例14-17の分析:実施例14-17で得られた触媒に使用された担体は、Pのみならず、ケイ素および硫黄も含有していた。上述のものをα,α-ジメチルベンジルアルコールの水素化によるイソプロピルベンゼンの製造に使用した場合、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率のどちらも、実施例6のそれらより高かった。
【0166】
<実施例18>
触媒の評価以外は、実施例14における処理を繰り返した。触媒の評価において、水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。材料は最初に第1触媒床を通過し、次に第2触媒床を通過した。2つの触媒床の触媒装填体積比は4:1であった。2つの反応器の操作条件は以下の通りであった:
第1触媒床:
入口温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2.0h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
第2触媒床:
入口温度:160℃
反応圧力:2.0MPa
液相熱サイクル比率:0
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0167】
<実施例19>
1.触媒製造
アルミナ1Lを8.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0168】
上述のPを含む触媒担体1Lを、SiO2の質量濃度が10%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0169】
上述の担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0170】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0171】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0172】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0173】
<実施例20>
1.触媒製造
アルミナ1Lを8.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0174】
上述の担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0175】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を得た。
【0176】
上述のパラジウム系触媒前駆体1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分および特性を表2に示す。
【0177】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0178】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0179】
<実施例21>
1.触媒製造
アルミナ1Lを8.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0180】
上述のP含有触媒担体1Lを、SiO2の質量濃度が10%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0181】
上述の担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0182】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0183】
上述のパラジウム系触媒前駆体1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0184】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0185】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0186】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0187】
<実施例22>
1.触媒製造
アルミナ1Lを8.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0188】
上述のP含有触媒担体1Lを、SiO2の質量濃度が10%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0189】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0190】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分を表2に示す。
【0191】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0192】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0193】
<実施例23>
1.触媒製造
アルミナ1Lを4.0gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥し、400℃で4時間焼成して触媒担体を製造した。
【0194】
上述のP含有触媒担体1Lを、SiO2の質量濃度が10%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/Si含有担体を得た。
【0195】
上述の担体1Lをパラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0196】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて250℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0197】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0198】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0199】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0200】
<比較例1>
1.触媒製造
アルミナ1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0201】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0202】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0203】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0204】
高温水熱処理後の触媒の物理的特性を表4に示す。
【0205】
<比較例2>
1.触媒製造
アルミナ1Lを、パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を得た。
【0206】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0207】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0208】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0209】
<比較例3>
1.触媒製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0210】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0211】
上述のパラジウム系触媒1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分を表2および表3に示す。
【0212】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0213】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0214】
高温水熱処理後の触媒の物理学的特性を表4に示す。
【0215】
<比較例4>
1.触媒製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0216】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0217】
上述のパラジウム系触媒1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分を表2および表3に示す。
【0218】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0219】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0220】
<比較例5>
1.触媒製造
担体アルミナ1LをSiO2の質量濃度が10%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、Si含有担体を得た。
【0221】
上述の担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0222】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分および特性を表2に示す。
【0223】
触媒の主成分および特性を表2および表3に示す。
【0224】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0225】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0226】
高温水熱処理後の触媒の物理学的特性を表4に示す。
【0227】
<比較例6>
1.触媒製造
担体アルミナ1LをSiO2の質量濃度が10%であるシリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、Siを含む担体を得た。
【0228】
上述の担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。
【0229】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度250℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0230】
上述のパラジウム系触媒1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させて、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分を表2に示す。
【0231】
触媒の主成分および特性を表2に示す。
【0232】
2.触媒評価
水素化操作は、上述の通りに製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0233】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
200時間評価の結果の平均を表5に示す。
【0234】
【0235】
【0236】
【0237】
表4は、高温水熱処理後の本発明の実施例1、3-6、14-17、19、21および23の触媒の物理的特性が優れていることを示す。
【0238】
【0239】
表2、表3、表4、表5および
図1から、少なくとも以下のことが分かる。
【0240】
(1)実施例1と比較例1との比較によれば、担体の水熱安定性は顕著に向上し、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は担体にリンを添加した後に顕著に向上した。
【0241】
(2)実施例1と実施例2との比較によれば、Pd-Cu複合活性成分を用いた場合、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、両方とも単なるPd活性成分のそれらよりも高かった。
【0242】
(3)実施例1と実施例19との比較によれば、担体の水熱安定性はさらに向上し、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、担体にシリカを導入した後にさらに向上した。
【0243】
(4)実施例1と実施例20との比較によれば、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、触媒に硫黄を導入した後にさらに向上した。
【0244】
(5)実施例3と実施例6との比較によれば、CO-FTIRスペクトログラム上(
図1参照)には、圧縮二重架橋結合したCO吸収部位はなかった。イソプロピルシクロヘキサンの生成量は顕著に減少し、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率およびイソプロピルベンゼンの選択率は、触媒にSを添加した後に顕著に向上した。
【0245】
(6)実施例14-17と実施例1-13とをそれぞれ比較すると、Cu、S、およびSiを触媒に同時に導入した場合、イソプロピルシクロヘキサンの生成量が顕著に減少した。
【0246】
(7)実施例18と実施例14との比較によれば、1段階の触媒床の使用と比較して、連続した2段階の触媒床の反応処理を使用した場合に、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率とイソプロピルベンゼンの選択率とは顕著に向上した。
【0247】
(8)比較例3-6の全ての触媒はリンを含まず、α,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率は劣り、イソプロピルベンゼンの選択率は比較的低かった。
【0248】
1000時間安定性試験:
水素化操作は、それぞれ実施例14および比較例1中で製造された触媒を充填した固定層反応器中で実施した。α,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。
【0249】
操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:2.0MPa
原料新鮮油の体積空間速度:1.6h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/α,α-ジメチルベンジルアルコールモル比:8
1000時間評価の結果の平均を表6に示す。
【0250】
【0251】
1000時間安定性試験を、それぞれ実施例14および比較例1中で調製した触媒について実施した。表6から、本発明の触媒は、触媒の初期活性の段階でイソプロピルシクロヘキサンの生成量を顕著に減少させるだけでなく、1000時間の反応の評価においてα,α-ジメチルベンジルアルコールの転化率≧99.72%およびイソプロピルベンゼンの選択率≧99.88%で1000時間安定なままであり、触媒の性能が顕著に変化しなかったことが示されたことが分かる。
【0252】
II.α,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造する方法
本発明のα,α-ジメチルベンジルアルコールからイソプロピルベンゼンを製造する方法の結果、α,α-ジメチルベンジルアルコールおよび水素を含む炭化水素材料の原料から、第1触媒床および第2触媒床を連続して通って、好ましくは液相熱サイクル処理によって、イソプロピルベンゼンを生じる。関連する実施例および比較例は以下のように列挙されるが、これらは、本発明の限定として解釈され得ない。
【0253】
[実施例1’]
1.触媒製造
a.第1触媒床の触媒の製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、450℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分を表2’に示す。
【0254】
b.第2触媒床の触媒の製造
前記アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gおよびニッケル0.3gを含むクロロパラジウム酸-硝酸ニッケル水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、550℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の具体的な成分を表2’に示す。
【0255】
2.触媒評価
表1のα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。材料は最初に第1触媒床を通過し、次に第2触媒床を通過した。2つの触媒床の触媒装填体積比は4:1であった。2つの反応器の操作条件は以下の通りであった:
第1触媒床:
反応温度:150℃
反応圧力:1.5MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/原料新鮮油の体積比:400
第2触媒床:
反応温度:170℃
反応圧力:1.3MPa
水素/原料新鮮油の体積比:200
200時間評価の結果の平均を表3’に示す。
【0256】
[実施例2’]
1.触媒製造
a.第1触媒床の触媒の製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、450℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分を表2’に示す。
【0257】
b.第2触媒床の触媒の製造
前記アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0g、ニッケル0.2g、およびマグネシウム0.1gを含むクロロパラジウム酸-ニッケル硝酸マグネシウム硝酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、550℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の具体的な成分を表2’に示す。
【0258】
2.触媒評価
表1のα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。材料は最初に第1触媒床を通過し、次に第2触媒床を通過した。2つの触媒床の触媒装填体積比は4:1であった。2つの反応器の操作条件は以下の通りであった:
第1触媒床:
反応温度:150℃
反応圧力:1.5MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/原料新鮮油の体積比:400
第2触媒床:
反応温度:170℃
反応圧力:1.3MPa
水素/原料新鮮油の体積比:100
液相熱サイクル比率:0
200時間評価の結果の平均を表3’に示す。
【0259】
[実施例3’]
1.触媒製造
a.第1触媒床の触媒の製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、450℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分を表2’に示す。
【0260】
b.第2触媒床の触媒の製造
前記担体触媒1Lを、パラジウム3.0gおよびCu0.3gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、550℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の具体的な成分を表2’に示す。
【0261】
2.触媒評価
表1のα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。重い成分を除去した材料は最初に第1触媒床を通過し、次に第2触媒床を通過した。2つの触媒床の触媒装填体積比は4:1であった。2つの反応器の操作条件は以下の通りであった:
第1触媒床:
反応温度:150℃
反応圧力:1.5MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/原料新鮮油の体積比:400
第2触媒床:
反応温度:170℃
反応圧力:1.3MPa
水素/原料新鮮油の体積比:100
200時間評価の結果の平均を表3’に示す。
【0262】
[実施例4’]
第2触媒の製造以外は、実施例2の処理を繰り返した:第2触媒の製造において、60gのPを含むリン酸水溶液600と1Lのアルミナとを混合し、110℃で8時間乾燥後、400℃で4時間焼成し、触媒担体を製造した。
【0263】
パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと上述の担体1Lとを混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0264】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて35℃の還元温度で4時間還元し、還元状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0265】
上述の還元状態のパラジウム系触媒前駆体1Lに、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gを含浸させ、110℃で乾燥させて、触媒を得た。触媒の主成分および200時間評価の結果の平均をそれぞれ表2’および表3’に示す。
【0266】
[実施例5’]
第2段階の触媒の製造以外は、実施例2の処理を繰り返した。特に第2段階の触媒の製造において、1Lのアルミナを27gのPを含むリン酸水溶液600と混合し、110℃で8時間乾燥後、400℃で4時間焼成し、P含有触媒担体を製造した。
【0267】
上述のP含有触媒担体1Lを、質量濃度が5%であるSiO2シリカゲル水溶液600gと混合し、乾燥後、500℃で焼成し、P/SiO2含有担体を得た。
【0268】
パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと上述のP/SiO2含有担体1Lとを混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0269】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて35℃の還元温度で4時間還元し、還元状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0270】
上述の還元状態のパラジウム系触媒前駆体1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させ、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分および200時間評価の結果の平均をそれぞれ表2’および表3’に示す。
【0271】
[実施例6’]
第2段階の触媒の製造以外は、実施例5’の処理を繰り返した。特に第2触媒の製造において、1Lのアルミナを27gのPを含むリン酸水溶液600と混合し、110℃で8時間乾燥後、400℃で4時間焼成し、P含有触媒担体を製造した。
【0272】
パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと上述のP含有担体1Lとを混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0273】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて35℃の還元温度で4時間還元し、還元状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0274】
上述の還元状態のパラジウム系触媒前駆体1Lを、硫黄0.1gを含むtert-ノニルポリスルフィドのシクロヘキサン溶液550gに含浸させ、パラジウム系触媒を得た。触媒の主成分および200時間評価の結果の平均をそれぞれ表2’および表3’に示す。
【0275】
[実施例7’]
第2段階の触媒の製造以外は、実施例5’の処理を繰り返した。特に、第2段階の触媒の製造において、1Lのアルミナを27gのPを含むリン酸水溶液600と混合し、110℃で8時間乾燥後、400℃で4時間焼成し、P含有触媒担体を製造した。
【0276】
上述のP含有担体1Lを、パラジウム3.0gおよび銅1.0gを含むクロロパラジウム酸-硝酸銅水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0277】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて35℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。
【0278】
触媒の主成分および200時間評価の結果の平均をそれぞれ表2’および表3’に示す。
【0279】
[実施例8’]
第2段階の触媒の製造以外は、実施例5’の処理を繰り返した。特に、第2段階の触媒の製造において、1Lのアルミナを27gのPを含むリン酸水溶液600gと混合し、110℃で8時間乾燥後、400℃で4時間焼成し、P含有触媒担体を製造した。
【0280】
上述のP含有担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、500℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を製造した。
【0281】
上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体を、100時間-1の体積空間速度の水素を用いて35℃の還元温度で4時間還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分および200時間評価の結果の平均をそれぞれ表2’および表3’に示す。
【0282】
[比較例1’]
1.触媒製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gおよびニッケル0.3gを含むクロロパラジウム酸-硝酸ニッケル水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、550℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分を表2’に示す。
【0283】
2.触媒評価
表1のα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。重い成分を除去した材料のみが1つの触媒床を通過した。1つの触媒床の触媒装填量は、2つの触媒床を用いたときの装填量と同じであった。具体的な操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:1.50MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/原料新鮮油の体積比:400
200時間評価の結果の平均を表3’に示す。
【0284】
[比較例2’]
1.触媒製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、450℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分を表2’に示す。
【0285】
2.触媒評価
表1のα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。重い成分を除去した材料のみが、1つの触媒床を通過した。1つの触媒床の触媒装填量は、2つの触媒床を用いたときの装填量と同じであった。具体的な操作条件は以下の通りであった:
反応温度:150℃
反応圧力:1.50MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/原料新鮮油の体積比:400
200時間評価の結果の平均を表3’に示す。
【0286】
[比較例3’]
1.触媒製造
a.第1触媒床の触媒の製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gを含むクロロパラジウム酸水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、450℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主成分を表2’に示す。
【0287】
b.第2触媒床の触媒の製造
アルミナ担体1Lを、パラジウム3.0gおよびニッケル0.3gを含むクロロパラジウム酸-硝酸ニッケル水溶液2000gと混合し、110℃で8時間乾燥し、550℃で4時間焼成して、酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを製造した。上述の酸化状態のパラジウム系触媒前駆体Iを、体積空間速度100時間-1の水素で4時間、還元温度300℃で還元し、パラジウム系触媒を製造した。触媒の主な成分を表2’に示す。
【0288】
2.触媒評価
表1のα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。材料は最初に第1触媒床を通過し、次に第2触媒床を通過した。2つの触媒床の触媒装填体積比は1:4であった。2つの反応器の操作条件は以下の通りであった:
第1触媒床:
反応温度:150℃
反応圧力:1.50MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2h-1
液相熱サイクル比率:4
水素/原料新鮮油の体積比:400
第2触媒床:
反応温度:170℃
反応圧力:1.3MPa
水素/原料新鮮油の体積比:400
200時間評価の結果の平均を表3’に示す。
【0289】
[比較例4’]
触媒評価以外は、実施例1’における触媒の製造を繰り返した。触媒評価において、表1のα,α-ジメチルベンジルアルコールを含む炭化水素材料の水素化操作を連続的に実施した。材料は最初に第1触媒床を通過し、次に第2触媒床を通過した。2つの触媒床の触媒装填体積比は4:1であった。2つの反応器の操作条件は以下の通りであった:
第1触媒床:
反応温度:150℃
反応圧力:1.50MPa
原料新鮮油の体積空間速度:2h-1
液相熱サイクル比率:0
水素/原料新鮮油の体積比:400
第2触媒床:
反応温度:170℃
反応圧力:1.3MPa
水素/原料新鮮油の体積比:200
200時間評価の結果の平均を表3’に示す。
【0290】
【0291】
【0292】
表2’および表3’から次の事項が分かる:
(1)比較例1’-2’と実施例1’および実施例3’とのそれぞれの比較によれば、比較例1’-2’の両方は同量の触媒を充填した単一の触媒床を用いており、比較例1’-2’の生成物中のイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量、α-メチルスチレンの含有量、二量化イソプロピルベンゼンの含有量、およびα,α-ジメチルベンジルアルコールの含有量は、全てにおいて、特にα,α-ジメチルベンジルアルコールの含有量において、実施例の含有量よりも高いことが判断できる。以上のことから、本発明に係る方法は、α,α-ジメチルベンジルアルコールへの高転化を達成できることが示される。(2)比較例3’と実施例1’との間の比較によれば、比較例3’中の第1触媒床における触媒装填量は第2触媒床のそれよりも低く、比較例3’の生成物中の二量化イソプロピルベンゼンの含有量およびα,α-ジメチルベンジルアルコールの含有量は顕著に高いことが判断できる。
【0293】
(3)実施例5’と実施例3’との比較によれば、リン、シリカおよび硫黄を同時に第二触媒に導入した場合、実施例5’の生成物中のイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量、α-メチルスチレンの含有量、二量化イソプロピルベンゼンの含有量およびα,α-ジメチルベンジルアルコールの含有量は、すべて実施例3’のそれらより低かった。
【0294】
(4)実施例6’と実施例5’との比較によれば、リンと硫黄のみを第二触媒に導入した場合、実施例6’の生成物中のイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量、α-メチルスチレンの含量、二量化イソプロピルベンゼンの含有量、およびα,α-ジメチルベンジルアルコールの含有量は、すべて実施例5’のそれらよりも高かった。
【0295】
(5)実施例7’と実施例5’とを比較すると、リンのみを第二触媒に導入した場合、実施例7’の生成物中のイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量、α-メチルスチレンの含有量、二量化イソプロピルベンゼンの含有量およびα,α-ジメチルベンジルアルコールの含有量は、すべて実施例5’のそれらより高かった。
【0296】
(6)実施例8’と実施例7’とを比較すると、リンのみを第二触媒に導入した場合、実施例8’の生成物中のイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシドの含有量、α-メチルスチレンの含有量、二量化イソプロピルベンゼンの含有量およびα,α-ジメチルベンジルアルコールの含有量は、すべて実施例7’のそれらより高かった。
【0297】
(7)比較例4’と実施例1’との間の比較によれば、比較例4’の反応器の操作条件下での第1触媒床の液相熱サイクル比率が0であったが、比較例4’の生成物中の二量化イソプロピルベンゼンの含有量が顕著に高く、イソプロピルベンゼンの選択率が顕著に低下したことが判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0298】