(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】シリコン基板の研磨
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241206BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20241206BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20241206BHJP
【FI】
H01L21/304 622C
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
B24B37/00 H
(21)【出願番号】P 2022555239
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 JP2020038345
(87)【国際公開番号】W WO2022074835
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】三浦 穣史
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-352042(JP,A)
【文献】国際公開第2009/131133(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/143323(WO,A1)
【文献】特開2013-062512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C09K 3/14
B24B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有する研磨液組成物を用いて、成分Aと成分Bの含有量比を変えることにより、シリコン基板の研磨速度と研磨後の基板の表面品質を調整する方法。
【請求項2】
研磨液組成物のpHが、成分AのpKaよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
研磨液組成物のpHと前記アミノ基含有水溶性高分子化合物のpKaの差が0超7以下ある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
成分Aは、アリルアミン及びジアリルアミンから選ばれる1種以上のモノマー由来の構成単位を含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
アリルアミン由来の構成単位中のアミノ基の少なくとも一部は、立体遮蔽基を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
アリルアミン由来の構成単位中のアミノ基の少なくとも一部は、水酸基を有する炭素数3以上11以下の炭化水素基を含む第2級アミノ基又は第3級アミノ基である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
成分Aは、ポリアリルアミンとグリシドール誘導体との反応物である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ジアリルアミン由来の構成単位中のアミノ基の少なくとも一部は、β位又はγ位に電子吸引基を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
成分Aは、下記式(III)で表される構成単位を含む化合物である、請求項1から4、及び8のいずれかに記載の方法。
【化1】
式(III)中、R
3は、水酸基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基であり、n+m=1である。
【請求項10】
成分Bは、分子内にアルキレンオキサイド基、水酸基、又はアミド基を有する水溶性高分子である、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
成分Bは、ポリグリセリン、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエステル、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド、及び、重量平均分子量が300以上1,000以下のポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
研磨液組成物は、さらに、シリカ粒子(成分C)を含有する、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
シリコン基板の仕上げ研磨を行う仕上げ研磨工程2と、仕上げ研磨工程2よりも前の研磨工程である仕上げ研磨工程1とを備え、仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2とがこの順で行われるシリコン基板の研磨方法であって、
仕上げ研磨工程1及び2において使用される研磨液組成物は、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有し、
仕上げ研磨工程1では、研磨液組成物はシリカ粒子(成分C)を含有し、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Aの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨し、
仕上げ研磨工程2では、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Bの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨する、シリコン基板の研磨方法。
【請求項14】
前記仕上げ研磨工程1と前記仕上げ研磨工程2を1つの研磨定盤で行う、請求項13に記載の研磨方法。
【請求項15】
前記仕上げ研磨工程1と前記仕上げ研磨工程2を研磨定盤を変えて行う、請求項13に記載の研磨方法。
【請求項16】
前記仕上げ研磨工程2において、シリカ粒子(成分C)を含有する研磨液組成物で研磨した後、シリカ粒子(成分C)を含有しない研磨液組成物で研磨する、請求項13から15のいずれかに記載の研磨方法。
【請求項17】
請求項1から12のいずれかに記載の方法、又は、請求項13から16のいずれかに記載の研磨方法を行うことを含む、半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリコン基板の研磨に関し、シリコン基板の研磨速度と研磨後の基板の表面品質の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体メモリの高記録容量化に対する要求の高まりから半導体装置のデザインルールは微細化が進んでいる。このため半導体装置の製造過程で行われるフォトリソグラフィーにおいて焦点深度は浅くなり、シリコン基板(ベアウェーハ)の欠陥低減や平滑性に対する要求はますます厳しくなっている。
【0003】
シリコン基板の品質を向上する目的で、シリコン基板の研磨は多段階で行われている。特に研磨の最終段階で行われる仕上げ研磨は、表面粗さ(ヘイズ)の抑制と研磨後のシリコン基板表面のぬれ性向上(親水化)によるパーティクルやスクラッチ、ピット等の表面欠陥(LPD:Light point defects)の抑制とを目的として行われている。
【0004】
シリコン基板表面について許容される表面欠陥のサイズは年々小さくなっており、通常この欠陥はレーザー光を基板表面に照射しそのときの散乱光を検出することで測定している。そのため、より微細な欠陥を測定するためには、シリコン基板の表面粗さ(ヘイズ)を低減し、欠陥測定時のS/N比を向上させなければならない。
【0005】
仕上げ研磨に用いられる研磨液組成物としては、コロイダルシリカ、及びアルカリ化合物を用いた化学的機械研磨用の研磨液組成物が知られている。
例えば、特開2004-128089号公報には、ヘイズレベルを改善することを目的とした研磨液組成物として、ヒドロキシエチルセルロースやポリエチレンオキサイド等の水溶性高分子化合物を含有する研磨液組成物が報告されている。
特開2008-53415号公報には、表面欠陥(LPD)の数を低減することを目的とした研磨液組成物として、ポリビニルピロリドン及びポリN-ビニルホルムアミド等の窒素含有基を有する水溶性高分子化合物を含有する研磨液組成物が報告されている。
【0006】
また、シリコン基板を多段階で行う研磨方法が提案されている。
例えば、特開2015-185672号公報には、多段階の研磨工程に用いる各研磨スラリーの水溶性ポリマーの濃度と重量平分子量との積の値の関係を規定したシリコン基板の研磨方法が提案されている。
特開2015-185674号公報には、多段階の研磨工程に用いる各研磨スラリーの砥粒の濃度/体積平均粒子径の値の関係を規定したシリコン基板の研磨方法が提案されている。
特開2016-4953号公報には、2段階の研磨工程に用いる各研磨スラリーの相対ヘイズの関係を規定したシリコン基板の研磨方法が提案されている。
特開2017-183478号公報には、前研磨工程、リンス工程、仕上げ研磨工程の順で行う研磨方法おいて、前研磨工程に用いる研磨液組成物の親水性パラメータとリンス工程に用いるリンス剤の親水性パラメータの関係を規定したシリコン基板の研磨方法が提案されている。
国際公開第2017/169154号には、前研磨工程に用いる研磨液組成物の親水パラメータ及び仕上げ精度パラメータの値、仕上げ研磨工程に用いる研磨液組成物の研磨加工性パラメータの値を規定した研磨用組成物セットが提案されている。
上記5つの文献に記載されている研磨液組成物の水溶性ポリマーはヒドロキシエチルセルロース及び、ポリビニルピロリドンが用いられている。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、一態様において、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有する研磨液組成物を用いて、成分Aと成分Bの含有量比を変えることにより、シリコン基板の研磨速度と研磨後の基板の表面品質を調整する方法(以下、「本開示の調整方法」ともいう。)に関する。
【0008】
本開示は、一態様において、シリコン基板の仕上げ研磨を行う仕上げ研磨工程2と、該仕上げ研磨工程2よりも前の研磨工程である仕上げ研磨工程1とを備え、該仕上げ研磨工程1と該仕上げ研磨工程2とがこの順で行われるシリコン基板の研磨方法であって、仕上げ研磨工程1及び2において使用される研磨液組成物は、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有し、該仕上げ研磨工程1では、該研磨液組成物はシリカ粒子(成分C)を含有し、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Aの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨し、該仕上げ研磨工程2では、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Bの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨するシリコン基板の研磨方法(以下、「本開示の研磨方法」ともいう。)に関する。
【0009】
本開示は、一態様において、本開示の調整方法、又は、本開示の研磨方法を行うことを含む、半導体基板の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
表面欠陥等を低減するために、仕上げ研磨に用いられる研磨液には、より粒径の小さいコロイダルシリカが用いられ、研磨速度が遅くなる傾向にあり、研磨速度の向上に課題がある。
しかし、特開2004-128089号公報及び特開2008-53415号公報の研磨液組成物を用いた研磨では、研磨速度が十分とはいえない。
また、特開2015-185672号公報、特開2015-185674号公報、特開2016-4953号公報、特開2017-183478号公報、及び、国際公開第2017/169154号のシリコン基板を多段階で行う研磨方法は、いずれも表面平滑性の向上や微小欠陥の発生抑制といった高品位の研磨表面を達成することを目的としており、研磨速度に関する言及はない。
【0011】
本開示は、シリコン基板の研磨速度と研磨後の基板の表面品質とを調整できる方法を提供する。
【0012】
本開示によれば、一態様において、シリコン基板の研磨において、研磨速度と、研磨後の基板表面品質(例えば、基板表面粗さ(ヘイズ))とを向上することができる。
【0013】
本開示の効果発現機構の詳細は明らかではないが、以下のように推察される。
5以上8.5以下のpKaを有するアミノ基含有水溶性高分子(成分A)は、カチオン性が低く、シリカ粒子(成分C)や被研磨シリコン基板に対し、アミノ基との静電相互作用よりも、主要因として分子全体のファンデルワールス力で吸着することでシリカ砥粒、シリコン基板間の静電斥力を抑制する。そのため静電相互作用に由来するシリカの凝集によるスクラッチ等の表面欠陥を新規に発生させることなく、高研磨速度を発現することで粗研磨工程由来の表面粗さの低減や表面欠陥の除去ができる。
一方、ノニオン性水溶性高分子(成分B)はシリコン基板表面に吸着し、アルキレンオキサイドや水酸基などの親水基がシリコン基板表面に張り出すことで、アルカリによる過剰な腐食抑制とシリカ砥粒の接近を抑制する効果、すなわち、研磨後の基板表面品質を向上(例えば、ヘイズの低減等)の効果をもつ。
両成分は主要因としてファンデルワールス力で吸着すると考えられ、その吸着力は同程度を考えられるために、お互いの吸着を阻害することなく、研磨液中の成分Aと成分Bの比率に応じて、シリカ粒子(成分C)や被研磨シリコン基板に吸着する。
その結果、成分Aの研磨速度を向上する効果と成分Bの表面品質を向上する効果を阻害することなく、吸着量の割合、すなわち、成分Aと成分Bの比率に応じて、成分Aの効果と成分Bの効果を発現し、基板の研磨速度と表面品質を自由に調整することができると考えられる。
ただし、本開示はこれらのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0014】
[被研磨シリコン基板]
本開示の調整方法又は研磨方法における研磨は、一又は複数の実施形態において、シリコン基板の研磨であり、一又は複数の実施形態において、半導体基板の製造方法における被研磨シリコン基板の研磨である。本開示の調整方法又は研磨方法において研磨される被研磨シリコン基板としては、一又は複数の実施形態において、シリコン基板等が挙げられ、一又は複数の実施形態において、単結晶シリコン基板が挙げられる。
【0015】
[研磨液組成物]
本開示の調整方法又は研磨方法における研磨液組成物(以下、「本開示の研磨液組成物」ともいう。)は、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有する。
本開示の研磨液組成物は、必要に応じて研磨砥粒を含有してもよい。研磨砥粒としては、一又は複数の実施形態において、シリカ粒子が挙げられる。
本開示の研磨方法における「仕上げ研磨工程1」の研磨液組成物は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、研磨砥粒を含有することが好ましい。本開示の研磨方法における「仕上げ研磨工程2」の研磨液組成物は、研磨砥粒を含有してもよいし、しなくてもよい。
【0016】
本開示において、研磨後の基板の表面品質の向上は、一又は複数の実施形態において、研磨後の基板の表面粗さ(ヘイズ)の低減である。
【0017】
[pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子(成分A)]
本開示の研磨液組成物は、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子(以下、「成分A」ともいう)を含有しうる。成分Aは、研磨砥粒の凝集を抑制し、研磨速度を向上させる効果を発揮しうる。本開示において、「水溶性」とは、水(20℃)に対して0.5g/100mL以上の溶解度、好ましくは2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。
【0018】
成分AのpKaは、研磨速度を向上する観点から、5以上であって、5.5以上が好ましく、5.9以上がより好ましく、6.3以上が更に好ましく、6.8以上が更に好ましく、7.3以上が更に好ましく、7.5以上が更に好ましく、7.7以上が更に好ましく、そして、表面品質を向上する観点から、8.5以下であって、8.3以下が好ましく、8.1以下がより好ましく、8以下が更に好ましい。
成分Aが後述する成分A1の場合、成分AのpKaは上記の範囲が好ましい。
さらに、成分Aが後述する成分A2の場合、成分AのpKaは、研磨速度を向上する観点から、6.6以上が更に好ましく、6.9以上が更に好ましく、7.1以上が更に好ましく、そして、表面品質を向上する観点から、7.8以下が更に好ましく、7.6以下が更に好ましく、7.4以下が更に好ましい。
【0019】
成分Aとしては、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、アリルアミン及びジアリルアミンから選ばれる1種以上のモノマー由来の構成単位を含むことが好ましい。成分Aは、入手性の観点から、一又は複数の実施形態において、アリルアミン由来の構成単位を含むアミノ基含有水溶性高分子(以下、「成分A1」ともいう)であることが好ましく、一又は複数の実施形態において、ジアリルアミン由来の構成単位を含むアミノ基が含有水溶性高分子(以下、「成分A2」ともいう)であることが好ましい。
【0020】
(成分A1:アリルアミン由来の構成単位を含むアミノ基含有水溶性高分子)
アリルアミン由来の構成単位中のアミノ基の少なくとも一部は、一又は複数の実施形態において、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点、及び、入手性の観点から、立体遮蔽基を有することが好ましい。本開示において、立体遮蔽基とは、成分Aのアミノ基の窒素原子を遮蔽してカチオン化を抑制できる、すなわちpKaを低くする立体的な(嵩高い)置換基のことをいう。前記立体遮蔽基を有するアミノ基は、同様の観点から、水酸基を有する炭素数3以上11以下の炭化水素基を含む第2級アミノ基又は第3級アミノ基であることが好ましい。前記炭化水素基の炭素数は、アミノ基の遮蔽性を向上する(アミノ基の窒素原子のカチオン化を抑制する)観点、及び、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、3以上が好ましく、そして、水溶性を向上する観点、及び入手性の観点から、11以下が好ましく、7以下がより好ましく、5以下が更に好ましく、4以下が更により好ましい。
【0021】
前記立体遮蔽基を有するアミノ基は、一又は複数の実施形態において、アミノ基に対するグリシドール誘導体による修飾基であり、一又は複数の実施形態において、アリルアミン由来の構成単位中のアミノ基とグリシドール誘導体とが反応して形成される基である。成分A1の全アミノ基のうちの少なくとも一部のアミノ基がグリシドール誘導体によって変性され、立体遮蔽基を有するアミノ基となる。アリルアミン由来の構成単位中のアミノ基数(1当量)に対するグリシドール誘導体の当量(以下、「グリシドール変性率」ともいう)は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、0.8以上が更に好ましく、1以上が更に好ましく、1.3以上が更に好ましく、1.5以上が更に好ましく、1.7以上が更に好ましく、そして、研磨速度を向上する観点から、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2.5以下が更に好ましく、2以下が更に好ましい。
【0022】
本開示において、グリシドール変性率は、13C-NMRを用いて実施例に記載の方法により測定される値である。ただし、グリシドール変性率は、以下の方法(1)又は(2)によっても測定できる。
(1)反応原料に用いたアリルアミン重合体のアミノ基当量とグリシドール誘導体のモル数から求めることができる。
(2)グリシドール誘導体とアリルアミン重合体との反応物の窒素含有量N(質量%)を測定し、下記式から求めることができる。
グリシドール変性率=A/B
ここで、A=(100-N×アリルアミン重合体の分子量/14)/グリシドール誘導体分子量であり、B=N/14である。
【0023】
前記グリシドール誘導体としては、例えば、グリシドール、アルキルグリシジルエーテル等が挙げられ、入手性の観点、及び、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、グリシドールが好ましい。前記アルキルグリシジルエーテルのアルキル基は、入手性の観点から、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。前記アルキルグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0024】
成分A1としては、一又は複数の実施形態において、少なくとも一部のアミノ基が立体遮蔽基を有するポリアリルアミンが挙げられ、一又は複数の実施形態において、ポリアリルアミンとグリシドール誘導体との反応物が挙げられる。
【0025】
成分A1としては、一又は複数の実施形態において、下記式(I)の構成単位を含む化合物(グリシドール変性ポリアリルアミン)が挙げられる。
【化1】
【0026】
式(I)中、R1及びR2はそれぞれ、水素原子又は立体遮蔽基である。立体遮蔽基としては、グリシドール誘導体由来の修飾基が挙げられ、一又は複数の実施形態において、グリシドールの1モル付加体又は2モル付加体が挙げられ、一又は複数の実施形態において、-CH2CH(OH)CH2(OH)、-CH2CH(OH)CH2O-CH2CH(OH)CH2(OH)等が挙げられる。
【0027】
(成分A2:ジアリルアミン由来の構成単位を含むアミノ基含有水溶性高分子)
ジアリルアミン由来の構成単位中のアミノ基の少なくとも一部は、一又は複数の実施形態において、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、アミノ基のβ位またはγ位に電子吸引基を有することが好ましい。電子吸引基としては、下記式(II)で表される基等が挙げられる。
【0028】
【0029】
成分A2としては、一又は複数の実施形態において、ジアリルアミン由来の構成単位及び二酸化硫黄由来の構成単位を含む化合物が挙げられ、例えば、下記式(III)で表される構成単位を含む化合物が挙げられる。
【化3】
【0030】
式(III)中、R3は、水酸基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基である。入手性及び経済性の観点の観点から、R3はメチル基が好ましい。また、n+m=1であり、n、mは0又は1である。同様の観点から、m=1且つn=0の化合物が好ましい。なお、m=1且つn=0の化合物とm=0且つn=1の化合物の混合物でもよい。
【0031】
成分A2としては、一又は複数の実施形態において、下記式(IV)で表される構成単位を含む化合物が挙げられ、例えば、メチルジアリルアミン/二酸化硫黄共重合体が挙げられる。
【化4】
【0032】
成分Aの重量平均分子量は、研磨速度を向上する観点から、800以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上が更に好ましく、2,000以上が更に好ましく、そして、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下が更に好ましく、20,000以下が更に好ましく、15,000以下が更に好ましく、12,000以下が更に好ましい。本開示における成分Aの重量平均分子量は、例えば、実施例に記載する方法により測定できる。
【0033】
成分Aが成分A1である場合、成分Aの重量平均分子量は、研磨速度を向上する観点から、800以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上が更に好ましく、2,000以上が更に好ましく、3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、6,000以上が更に好ましく、そして、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下が更に好ましく、20,000以下が更に好ましく、15,000以下が更に好ましく、12,000以下が更に好ましい。
【0034】
成分Aが成分A2である場合、成分Aの重量平均分子量は、研磨速度を向上する観点から、800以上が好ましく、1,000以上がより好ましく、1,500以上が更に好ましく、2,000以上が更に好ましく、そして、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、30,000以下が更に好ましく、20,000以下が更に好ましく、15,000以下が更に好ましく、12,000以下が更に好ましく、10,000以下が更に好ましく、7,000以下が更に好ましく、5,000以下が更に好ましく、4,000以下が更に好ましい。
【0035】
本開示の研磨液組成物中の成分Aの含有量は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、一又は複数の実施形態において、10質量ppm以上、20質量ppm以上、又は30質量ppm以上が挙げられ、そして、同様の観点から、一又は複数の実施形態において、200質量ppm以下、150質量ppm以下、又は120質量ppm以下が挙げられる。なお、本開示において、1質量%は10,000質量ppmである(以下同じ)。
【0036】
[ノニオン性水溶性高分子(成分B)]
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、研磨後の基板の表面品質を向上する観点から、ノニオン性水溶性高分子(以下、「成分B」ともいう)を含有しうる。成分Bとしては、同様の観点から、分子内にアルキレンオキサイド基、水酸基、又はアミド基を有するノニオン性水溶性高分子が好ましい。前記アルキレンオキサイド基としては、例えば、エチレンオキサイド基、プロピレンオキサイド基等が挙げられる。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0037】
成分Bとしては、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、ポリグリセリン、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエステル、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド、及び、重量平均分子量が300以上1,000以下のポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
前記ポリグリセリンアルキルエーテルのアルキル基は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点、及び、研磨液の泡立ち抑制の観点から、炭素数3以上22以下のアルキル基が好ましく、炭素数5以上16以下のアルキル基がより好ましく、炭素数7以上12以下のアルキル基が更に好ましい。前記アルキル基は、直鎖アルキル基でもよいし、分岐鎖アルキル基でもよい。前記ポリグリセリンアルキルエーテルのグリセリン単位の平均重合度は、濡れ性向上の観点から、5以上であり、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、18以上が更に好ましく、そして、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、100以下であり、60以下が好ましく、45以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。前記ポリグリセリンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリグリセリンラウリルエーテル、ポリグリセリンデシルエーテル、ポリグリセリンミリスチルエーテル等が挙げられる。
前記ポリグリセリンアルキルエステルのアルキル基は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点、及び、研磨液の泡立ち抑制の観点から、炭素数3以上22以下のアルキル基が好ましく、炭素数5以上16以下のアルキル基がより好ましく、炭素数7以上12以下のアルキル基が更に好ましい。前記アルキル基は、直鎖アルキル基でもよいし、分岐鎖アルキル基でもよい。前記ポリグリセリンアルキルエステルのグリセリン単位の平均重合度は、濡れ性向上の観点から、5以上であり、10以上が好ましく、15以上がより好ましく、18以上が更に好ましく、そして、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、100以下であり、60以下が好ましく、45以下がより好ましく、25以下が更に好ましい。前記ポリグリセリンアルキルエステルとしては、例えば、ポリグリセリンラウリルエステル、ポリグリセリンデシルエステル、ポリグリセリンミリスチルエステル等が挙げられる。
前記ヒドロキシアルキルセルロースは、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース、及びヒドロキシブチルセルロースから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)がより好ましい。
これらの中でも、成分Bは、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、ポリグリセリン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、重量平均分子量が300以上1,000以下のポリエチレングリコール(PEG)から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリグリセリンがより好ましい。
【0038】
成分Bの重量平均分子量は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、300以上が好ましく、500以上がより好ましく、1,000以上が更に好ましく、1,500以上が更に好ましく、2,000以上が更に好ましく、そして、同様の観点、及び研磨液の濾過性の観点から、50万未満が好ましく、40万以下がより好ましく、30万以下が更に好ましく、15万以下が更に好ましく、10万以下が更に好ましく、5万以下が更に好ましく、2万以下が更に好ましく、1万以下が更に好ましい。
成分Bがポリグリセリンである場合、成分Bの重量平均分子量は、同様の観点から、1,000以上が好ましく、1,500以上がより好ましく、2,000以上が更に好ましく、そして、10000以下が好ましく、8000以下がより好ましく、6000以下が更に好ましい。
成分Bがポリビニルアルコール(PVA)である場合、成分Bの重量平均分子量は、同様の観点から、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、20,000以上が更に好ましく、そして、15万以下が好ましく、12万以下がより好ましく、10万以下が更に好ましい。
成分Bがポリビニルピロリドン(PVP)である場合、成分Bの重量平均分子量は、同様の観点から、5000以上が好ましく、10000以上がより好ましく、20000以上が更に好ましく、そして、15万以下が好ましく、12万以下がより好ましく、10万以下が更に好ましい。
成分Bがヒドロキシエチルセルロース(HEC)である場合、成分Bの重量平均分子量は、同様の観点から、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、15万以上が更に好ましく、そして、50万以下が好ましく、40万以下がより好ましく、30万以下が更に好ましい。
成分Bが重量平均分子量が300以上1,000以下のポリエチレングリコール(PEG)である場合、成分Bの重量平均分子量は、同様の観点から、500以上が好ましく、そして、900以下が好ましく、800以下がより好ましい。
成分Bの重量平均分子量は後の実施例に記載の方法により測定できる。
【0039】
本開示の研磨液組成物中の成分Bの含有量は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、一又は複数の実施形態において、0質量ppm以上、2質量ppm以上、10質量ppm以上、20質量ppm以上、30質量ppm以上、50質量ppm以上、又は100質量ppm以上が挙げられ、そして、1,000質量ppm以下、500質量ppm以下、300質量ppm以下、又は200質量ppm以下が挙げられる。成分Bが2種以上の組合せの場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0040】
本開示の研磨液組成物中の成分Aと成分Bの合計含有量は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、20質量ppm以上が好ましく、40質量ppm以上がより好ましく、60質量ppm以上が更に好ましく、80質量ppm以上が更に好ましく、90質量ppm以上が更に好ましい。そして、同様の観点から、400質量ppm以下が好ましく、350質量ppm以下がより好ましく、300質量ppm以下が更に好ましく、260質量ppm以下が更に好ましく、240質量ppm以下が更に好ましく、220質量ppm以下が更に好ましい。本開示の研磨液組成物中の成分Aと成分Bの合計含有量は、同様の観点から、20質量ppm以上400質量ppm以下が好ましく、40質量ppm以上350ppm質量ppm以下がより好ましく、60質量ppm以上300質量ppm以下が更に好ましく、80質量ppm以上260質量ppm以下が更に好ましく、90質量ppm以上240質量ppm以下が更に好ましく、90質量ppm以上220質量ppm以下が更に好ましい。
【0041】
[研磨砥粒:シリカ粒子(成分C)]
本開示の研磨液組成物に含まれうる研磨砥粒は、一又は複数の実施形態において、シリカ粒子(以下、「成分C」ともいう)である。成分Cとしては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ、粉砕シリカ、又はそれらを表面修飾したシリカ等が挙げられ、研磨速度の向上と保存安定性とを両立する観点、及び、表面粗さ(ヘイズ)、表面欠陥及びスクラッチの低減等の表面品質の向上する観点から、コロイダルシリカが好ましい。成分Cは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0042】
成分Cの使用形態としては、操作性の観点から、スラリー状が好ましい。本開示の研磨液組成物に含まれる成分Cがコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコン基板の汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
【0043】
成分Cの平均一次粒子径は、研磨速度を維持する観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、20nm以上が更に好ましく、そして、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、50nm以下が好ましく、45nm以下がより好ましく、40nm以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Cの平均一次粒子径は、10nm以上50nm以下が好ましく、15nm以上45nm以下がより好ましく、20nm以上40nm以下が更に好ましい。
本開示において、成分Cの平均一次粒子径は、窒素吸着法(BET法)によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて算出される。平均一次粒子径の値は、実施例に記載する方法で測定される値である。
【0044】
成分Cの平均二次粒子径は、研磨速度を維持する観点から、20nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、40nm以上が更に好ましく、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、100nm以下が好ましく、90nm以下がより好ましく、80nm以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Cの平均二次粒子径は、20nm以上100nm以下が好ましく、30nm以上90nm以下がより好ましく、40nm以上80nm以下が更に好ましい。
本開示において、平均二次粒子径は、動的光散乱(DLS)法によって測定される値であり、実施例に記載する方法で測定される値である。
【0045】
成分Cの会合度は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、3以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.3以下が更に好ましく、そして、同様の観点から、1.1以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、1.8以上が更に好ましい。
【0046】
本開示において、成分Cの会合度とは、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出される。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
【0047】
成分Cの会合度の調整方法としては、例えば、特開平6-254383号公報、特開平11-214338号公報、特開平11-60232号公報、特開2005-060217号公報、特開2005-060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
【0048】
成分Cの形状は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、いわゆる球型及び/又はいわゆるマユ型であることが好ましい。
【0049】
本開示の研磨液組成物中の成分Cの含有量は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、SiO2換算で、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.07質量%以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、2.5質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.8質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以下が更により好ましく、0.3質量%以下が更により好ましい。本開示の研磨液組成物中の成分Cの含有量は、0.01質量%以上2.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上1質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.8質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましく、0.07質量%以上0.3質量%以下が更により好ましい。成分Cが2種以上の組合せの場合、成分Cの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0050】
本開示の研磨液組成物中における成分Cの含有量に対する成分Aの含有量の比(質量比A/C)は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、0.001以上が好ましく、0.005以上がより好ましく、0.008以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、0.2以下が好ましく、0.18以下がより好ましく、0.16以下が更に好ましい。
【0051】
本開示の研磨液組成物中における成分Cの含有量に対する成分Bの含有量の比(質量比B/C)は、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、0.0005以上が好ましく、0.001以上がより好ましく、0.0012以上が更に好ましく、そして、0.4以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.18以下が更に好ましく、0.17以下が更に好ましい。
【0052】
[水]
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、水を含んでいてもよい。水としては、例えば、イオン交換水や超純水等の水が挙げられる。本開示の研磨液組成物中の水の含有量は、例えば、成分A、成分B、成分C及び後述する任意成分の残余とすることができる。
【0053】
[含窒素塩基性化合物(成分D)]
本開示の研磨液組成物は、一又は複数の実施形態において、pHを調整する観点から、含窒素塩基性化合物(以下、「成分D」ともいう)をさらに含有することが好ましい。成分Dとしては、研磨速度の向上と保存安定性とを両立する観点、及び、表面品質を向上する観点から、水溶性の含窒素塩基性化合物であることが好ましい。本開示において、「水溶性の含窒素塩基性」とは、水に溶解したときに塩基性を示す含窒素化合物をいう。成分Dは、一又は複数の実施形態において、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子(成分A)を含めないものとする。成分Dは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0054】
成分Dとしては、一又は複数の実施形態において、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。成分Dとしては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N-メチル-N,N一ジエタノ-ルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N,N-ジブチルエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノ-ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、及びヒドロキシアミンから選ばれる1種又は2種以上の組合せが挙げられる。なかでも、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、成分Dとしては、アンモニア、又は、アンモニアとヒドロキシアミンの混合物が好ましく、アンモニアがより好ましい。
【0055】
本開示の研磨液組成物が成分Dを含む場合、本開示の研磨液組成物中の成分Dの含有量は、研磨速度を向上する観点から、5質量ppm以上が好ましく、10質量ppm以上がより好ましく、20質量ppm以上が更に好ましく、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、500質量ppm以下が好ましく、300質量ppm以下がより好ましく、150質量ppm以下が更に好ましく、100質量ppm以下が更に好ましい。同様の観点から、成分Dの含有量は、5質量ppm以上500質量ppm以下が好ましく10質量ppm以上300質量ppm以下がより好ましく、20質量ppm以上150質量ppm以下が更に好ましく、20質量ppm以上100質量ppm以下が更に好ましい。成分Dが2種以上の組合せの場合、成分Dの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0056】
本開示の研磨液組成物が成分Dを含む場合、本開示の研磨液組成物中における成分Cの含有量に対する成分Dの含有量の比D/C(質量比D/C)は、研磨速度を向上する観点から、0.002以上が好ましく、0.01以上がより好ましく、0.015以上が更に好ましく、そして、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、1以下が好ましく、0.5以下がより好ましく、0.1以下が更に好ましく、0.08以下が更に好ましい。同様の観点から、質量比D/Cは、0.002以上1以下が好ましく、0.01以上0.5以下がより好ましく、0.015以上0.1以下が更に好ましく、0.015以上0.08以下が更に好ましい。
【0057】
[その他の成分]
本開示の研磨液組成物は、本開示の効果が妨げられない範囲で、その他の成分をさらに含んでもよい。その他の成分としては、一又は複数の実施形態において、成分A,B以外の水溶性高分子、成分D以外のpH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤、及び酸化剤等が挙げられる。
【0058】
[pH]
本開示の研磨液組成物のpHは、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、8.5超であり、9以上が好ましく、9.5以上が更に好ましく、10以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、14以下であり、13以下が好ましく、12.5以下がより好ましく、12以下が更に好ましく、11.5以下が更に好ましく、11以下が更に好ましい。同様の観点から、本開示の研磨液組成物のpHは、8.5超以上14以下であり、9以上13以下が好ましく、9.5以上12.5以下がより好ましく、9.5以上12以下が更に好ましく、9.5以上11.5以下が更に好ましく、10以上11以下が更に好ましい。本開示の研磨液組成物のpHは、成分Dや公知のpH調整剤を用いて調整できる。本開示において、上記pHは、実施例に記載する方法で測定される値である。
【0059】
[pH-pKa]
本開示の研磨液組成物のpHは、研磨速度と研磨後基板表面品質とを調整する観点から、成分AのpKaより大きいことが好ましい。pHとpKaとの差(pH-pKa)は、同様の観点から、0超が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上が更に好ましく、1.5以上が更に好ましく、2以上が更に好ましく、そして、同様の観点から、7以下が好ましく、6以下がより好ましく、5.5以下が更に好ましく、5以下が更に好ましく、4.5以下が更に好ましい。
【0060】
本開示の研磨液組成物は、例えば、成分A及び成分Bと、さらに所望により、水、成分C及び成分D並びにその他の成分とを公知の方法で配合することにより製造できる。すなわち、本開示の研磨液組成物は、例えば、少なくとも成分Aと成分Bとを配合することにより製造できる。したがって、本開示は、その他の態様において、少なくとも成分A、及び成分Bを配合する工程を含む、研磨液組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A、成分B、並びに、必要に応じて水、成分C及びその他の成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。前記配合は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。上記本開示の研磨液組成物の製造方法における各成分の好ましい配合量は、上述した本開示の研磨液組成物中の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
【0061】
本開示において、「研磨液組成物中の各成分の含有量」は、使用時、すなわち、研磨液組成物の研磨への使用を開始する時点における各成分の含有量をいう。
【0062】
本開示の研磨液組成物は、貯蔵及び輸送の観点から、濃縮物として製造され、使用時に希釈されてもよい。希釈倍率としては、製造及び輸送コストの観点から、好ましくは2倍以上であり、より好ましくは10倍以上、更に好ましくは30倍以上、更に好ましくは50倍以上であり、保存安定性の観点から、好ましくは180倍以下であり、より好ましくは140倍以下、更に好ましくは100倍以下、更に好ましくは70倍以下である。本開示の研磨液組成物の濃縮物は、使用時に各成分の含有量が、上述した含有量(すなわち、使用時の含有量)となるように水で希釈して使用することができる。本開示において研磨液組成物の濃縮物の「使用時」とは、研磨液組成物の濃縮物が希釈された状態をいう。
【0063】
[調整方法]
本開示の調整方法は、上述した本開示の研磨液組成物を用いて、成分Aと成分Bの含有量比を変えることにより、シリコン基板の研磨速度と研磨後の基板の表面品質を調整する方法である。本開示の調整方法によれば、成分Aと成分Bの含有量の比を変えることにより、研磨速度の効果と基板の表面品質の効果を変えることができる。よって、「シリコン基板の研磨速度と研磨後の基板の表面品質を調整する」とは、一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物を用いて研磨をする際に、研磨液組成物を、研磨後基板の表面品質の向上よりも研磨速度の向上を優先した組成とすることを含み、一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物を用いて研磨をする際に、研磨液組成物を、研磨速度の向上よりも研磨後基板の表面品質の向上を優先した組成とすることを含み、一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物を用いて研磨をする際に、研磨液組成物を、研磨速度の向上と研磨後基板の表面品質の向上のバランスがとれた組成とすることを含む。
本開示の調整方法は、その他の一又は複数の実施形態において、上述のように研磨速度の向上と研磨後基板の表面品質の向上とが調整された一又は複数の研磨液組成物により被研磨シリコン基板の研磨することで、研磨の研磨速度の向上と研磨後基板の表面品質の向上とを調整することも含む。
【0064】
研磨速度の向上を優先した組成とする場合、一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物における成分Aの比率を高くすることが挙げられる。
成分Aの比率と高くする場合、一又は複数の実施形態において、研磨液組成物中の成分Aと成分Bの合計含有量に対する成分Aの割合[A/(A+B)]を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは実質的に100質量%とすることが挙げられる。
本開示において、割合[A/(A+B)]が実質的に100質量%とは、一又は複数の実施形態において、成分Bが0質量%あるいは意図的に添加又は配合されていない場合が挙げられる。
【0065】
研磨後基板の表面品質の向上を優先した組成とする場合、一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物における成分Bの比率を高くすることが挙げられる。
成分Bの比率と高くする場合、一又は複数の実施形態において、研磨液組成物中の成分Aと成分Bの合計含有量に対する成分Bの割合[B/(A+B)]を、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは実質的に100質量%とすることが挙げられる。
本開示において、割合[B/(A+B)]が実質的に100質量%とは、一又は複数の実施形態において、成分Aが0質量%あるいは意図的に添加又は配合されていない場合が挙げられる。
【0066】
研磨速度の向上を優先した組成とする場合、一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物はシリカ粒子(成分C)を含有することが好ましい。
研磨後基板の表面品質の向上を優先した組成とする場合、一又は複数の実施形態において、シリカ粒子(成分C)を含有しない研磨液組成物を用いることもできる。
【0067】
[研磨工程の調整]
本開示の調整方法は、一又は複数の実施形態において、上述のように研磨速度の向上と研磨後基板の表面品質の向上とが調整された2以上の研磨液組成物を用いて研磨することで、研磨工程における研磨の研磨速度の向上と研磨後基板の表面品質の向上とを調整することも含む。
一又は複数の実施形態において、ある表面品質の基板を得るにあたり、最初は研磨速度の向上を優先した成分Aの含有比率の高い研磨液組成物を用いて研磨し、次に研磨後基板の表面品質の向上を優先した成分Bの含有比率の高い研磨液組成物を用いて研磨を行う。このように、本開示の調整方法は、2以上の研磨液組成物中の成分A及び成分Bの含有比率を変更して、所定の表面品質を得るまでの研磨時間が短くなる研磨液組成物の組み合わせを選ぶこと、及びそれらを用いて研磨することを含む。これらの研磨液を用いることにより、生産を高めることができ、研磨にかかるコストを下げることができる。
本開示の調整方法は、2以上の研磨液組成物中の成分A及び成分Bの含有比率を変更することに加えて、成分A及び成分Bの合計の含有量を変更することを含んでもよい。
本開示の調整方法は、3以上の研磨液組成物の組み合わせを選ぶことを含みうる。
【0068】
本開示の研磨液組成物を2以上の組み合わせで使用して研磨する場合、1つの研磨定盤に2以上の研磨液組成物を切り替えて供給することで研磨することができる。あるいは、2以上の組み合わせの研磨液組成物ごとに研磨定盤を変えて研磨することもできる。
同じ研磨定盤において成分A及び成分Bのそれぞれの貯蔵容器からチューブ等を用いて供給し、研磨定盤に導入する前に混合して研磨液に導入するシステムを用い、成分Aと成分Bの供給量を変更して連続的に含有比率を変えて研磨する形態も、本開示における調整方法の2以上研磨液組成物を用いて研磨する場合に該当しうる。
【0069】
[シリコン基板の研磨方法]
本開示の調整方法は、一又は複数の実施形態において、研磨速度の向上と表面品質の向上とを両立する観点から、仕上げ研磨工程で用いられることが好ましい。
【0070】
本開示の調整方法が用いられる仕上げ研磨工程としては、本開示の効果がより発揮される観点から、シリコン基板の仕上げ研磨を行う仕上げ研磨工程2と、該仕上げ研磨工程2よりも前の研磨工程である仕上げ研磨工程1とを備え、該仕上げ研磨工程1と該仕上げ研磨工程2とがこの順で行われる研磨工程が好ましく、シリコン基板の仕上げ研磨を行う仕上げ研磨工程2と、該仕上げ研磨工程2の1段階前の研磨工程である仕上げ研磨工程1を備え、該仕上げ研磨工程1と該仕上げ研磨工程2とが連続する研磨工程がより好ましい。
【0071】
仕上げ研磨工程1では、研磨液組成物は、シリカ粒子(成分C)を含有し、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Aの含有量の割合[A/(A+B)]が高い研磨液組成物で研磨し、仕上げ研磨工程2では、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Bの含有量の割合[B/(A+B)]の高い研磨液で研磨することが好ましい。
仕上げ工程2で用いる研磨液組成物はシリカ粒子(成分C)を含有しても、しなくてもよい。また、仕上げ研磨工程2において、シリカ粒子(成分C)を含有する研磨液組成物で研磨した後、シリカ粒子(成分C)を含有しない研磨液組成物で研磨してもよい。
【0072】
よって、本開示は一態様において、シリコン基板の仕上げ研磨を行う仕上げ研磨工程2と、仕上げ研磨工程2よりも前の研磨工程である仕上げ研磨工程1とを備え、仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2とがこの順で行われるシリコン基板の研磨方法であって、
仕上げ研磨工程1及び2において使用される研磨液組成物は成分A及び成分Bからなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有し、該仕上げ研磨工程1では、該研磨液組成物は成分Cを含有し、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Aの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨し、
仕上げ研磨工程2では、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Bの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨するシリコン基板の研磨方法に関する。本態様のシリコン基板の研磨方法によれば、研磨速度と表面品質を向上することができる。
【0073】
仕上げ研磨工程1で用いる研磨液組成物の割合[A/(A+B)]は、研磨速度を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
また、仕上げ研磨工程2で用いる研磨液組成物の割合[B/(A+B)]は、表面品質を向上させる観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、より更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは98質量%以上、より更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0074】
本開示の研磨方法における仕上げ研磨工程1及び2では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤に被研磨シリコン基板を押し付けて、3~20kPaの研磨圧力で被研磨シリコン基板を研磨することができる。本開示において、研磨圧力とは、研磨時に被研磨シリコン基板の被研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。
【0075】
本開示の研磨方法における仕上げ研磨工程1及び2では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤に被研磨シリコン基板を押し付けて、15℃以上40℃以下の研磨液組成物及び研磨パッド表面温度で被研磨シリコン基板を研磨することができる。研磨液組成物の温度及び研磨パッド表面温度としては、研磨速度向上と表面粗さ(ヘイズ)低減等の表面品質との両立の観点から、15℃以上又は20℃以上が好ましく、40℃以下又は30℃以下が好ましい。
【0076】
仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2は、1つの研磨定盤(同じ研磨定盤)で行うことができる。あるいは、仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2は、研磨定盤を変えて行う、すなわち、仕上げ研磨工程2を、仕上げ研磨工程1で使用した研磨定盤とは別の研磨定盤で行うこともできる。
仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2を同じ研磨定盤で行う場合、成分A及び成分Bのそれぞれの貯蔵容器からチューブ等を用いて供給し、研磨定盤に導入する前に混合して研磨液に導入するシステムを用いて、成分Aと成分Bの供給量を変更して連続的に含有比率を変えて研磨してもよい。
仕上げ研磨工程2において、シリカ粒子(成分C)を含有する研磨液組成物で研磨した後、シリカ粒子(成分C)を含有しない研磨液組成物で研磨する場合、同じ研磨定盤で行うことができる。あるいは、シリカ粒子(成分C)を含有しない研磨液組成物で研磨する工程を、シリカ粒子(成分C)を含有する研磨液組成物で研磨する工程で使用した研磨定盤とは別の研磨定盤で行うことができる。
【0077】
[半導体基板の製造方法]
本開示は、一態様において、本開示の調製方法、又は、本開示の研磨方法を行うことを含む、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板製造方法」ともいう)に関する。本開示の半導体基板製造方法は、一又は複数の実施形態において、本開示の研磨液組成物を用いて被研磨シリコン基板を研磨する工程(以下、「研磨工程」ともいう)と、研磨されたシリコン基板を洗浄する工程(以下、「洗浄工程」ともいう)と、を含むことができる。本開示の半導体基板製造方法によれば、本開示の調製方法、又は、本開示の研磨方法を用いることで、研磨速度向上と表面品質の向上とを両立できるため、高品質の半導体基板を高収率で、生産性よく、安価に製造できる。
【0078】
本開示の半導体基板製造方法における研磨工程は、例えば、単結晶シリコンインゴットを薄円板状にスライスすることにより得られた単結晶シリコン基板を平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピング単結晶されたシリコン基板をエッチングした後、単結晶シリコン基板表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とを含むことができる。本開示の調整方法は、研磨速度の向上と表面品質の向上とを両立する観点から、上記仕上げ研磨工程で用いられるとより好ましい。本開示の調製方法が用いられる仕上げ研磨工程としては、上述したものが挙げられる。本開示の半導体基板製造方法における研磨工程では、上述した本開示の研磨方法における仕上げ研磨工程1及び2と同様の条件(研磨圧力、研磨組成物及び研磨パッド表面温度等)で研磨を行うことができる。
【0079】
本開示の半導体基板製造方法は、一又は複数の実施形態において、前記研磨工程の前に、研磨液組成物の濃縮物を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、例えば、水を用いることができる。
【0080】
本開示の半導体基板製造方法における洗浄工程では、シリコン基板表面上の残留物低減の観点から、無機物洗浄を行うことが好ましい。無機物洗浄で用いる洗浄剤としては、例えば、過酸化水素、アンモニア、塩酸、硫酸、フッ酸及びオゾン水から選ばれる少なくとも1種を含む無機物洗浄剤が挙げられる。
【0081】
本開示の半導体基板製造方法は、一又は複数の実施形態において、前記洗浄工程の後に、洗浄後のシリコン基板を水でリンスし、乾燥する工程を更に含むことができる。
【0082】
本開示の半導体基板製造方法における研磨工程が、上述した仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2とがこの順で行われる研磨工程である場合、仕上げ研磨工程1を行った後、洗浄、乾燥を行い、仕上げ研磨工程2を行ってもよい。また、仕上げ研磨工程1を行った後、洗浄、乾燥を行なわずに、仕上げ研磨工程2を行ってもよい。生産性向上の観点から、仕上げ研磨工程1を行った後、洗浄、乾燥を行なわずに、仕上げ研磨工程2を行うことが好ましい。
【0083】
本開示は、さらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
<1> pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有する研磨液組成物を用いて、成分Aと成分Bの含有量比を変えることにより、シリコン基板の研磨速度と研磨後の基板の表面品質を調整する方法。
<2> pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有し、研磨液組成物のpHが9以上12以下であり、該pHと該pKaの差[pH-pKa]が2以上6以下する研磨液組成物を用いて、成分Aと成分Bの含有量比を変えることによる、<1>に記載の方法。
<3> 成分Aがポリアリルアミンとグリシドール誘導体との反応物及び上記式(III)で表される構成単位を含む化合物から選ばれる少なくとも1種であり、成分Bがポリグリセリン、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエステル、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド、及び、重量平均分子量が300以上1,000以下のポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種である、<1>または<2>に記載の方法。
<4> 前記研磨液組成物中の成分Aの含有量が0質量ppm以上200質量ppmであり、前記研磨液組成物中の成分Bの含有量が0質量ppm以上200質量ppmである、<1>乃至<3>の何れか1つに記載の方法。
<5> 成分Aの重量平均分子量が800以上12000以下であり、成分Bの重量平均分子量が300以上30万以下である、<1>乃至<4>の何れか1つに記載の方法。
<6> 前記研磨液組成物がさらにシリカ粒子(成分C)を含有する、<1>乃至<5>の何れか1つに記載の方法。
<7> 前記研磨液組成物中の成分Cの含有量が0.07質量%以上0.3質量%以下、であり、シリコン基板が単結晶シリコン基板である、<1>乃至<6>の何れか1つに記載の方法。
<8> 前記研磨液組成物中の成分Cの含有量が0.1質量%以上0.8質量%以下、であり、シリコン基板がポリシリコン基板である、<1>乃至<6>の何れか1つに記載の方法。
<9> シリコン基板の仕上げ研磨を行う仕上げ研磨工程2と、仕上げ研磨工程2よりも前の研磨工程である仕上げ研磨工程1とを備え、仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2とがこの順で行われるシリコン基板の研磨方法であって、
仕上げ研磨工程1及び2において使用される研磨液組成物は、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有し、
仕上げ研磨工程1では、研磨液組成物はシリカ粒子(成分C)を含有し、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Aの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨し、
仕上げ研磨工程2では、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Bの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨する、シリコン基板の研磨方法。
<10> シリコン基板の仕上げ研磨を行う仕上げ研磨工程2と、仕上げ研磨工程2よりも前の研磨工程である仕上げ研磨工程1とを備え、仕上げ研磨工程1と仕上げ研磨工程2とがこの順で行われるシリコン基板の研磨方法であって、
仕上げ研磨工程1及び2において使用される研磨液組成物は、pKaが5以上8.5以下であるアミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)及びノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)からなる群から選ばれる少なくとも一方の成分を含有し、研磨液組成物のpHが9以上12以下であり、該pHと該pKaの差[pH-pKa]が2以上6以下であり、
仕上げ研磨工程1では、研磨液組成物はシリカ粒子(成分C)を含有し、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Aの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨し、
仕上げ研磨工程2では、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Bの含有量の割合が50質量%以上の研磨液組成物で研磨する、<9>に記載のシリコン基板の研磨方法。
<11> 成分Aがポリアリルアミンとグリシドール誘導体との反応物及び上記式(III)で表される構成単位を含む化合物から選ばれる少なくとも1種であり、成分Bがポリグリセリン、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルキルエステル、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシエチルアクリルアミド、及び、重量平均分子量が300以上1,000以下のポリエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種である、<9>または<10>に記載の研磨方法。
<12> 前記研磨液組成物中の成分Aの含有量が0質量ppm以上200質量ppmであり、前記研磨液組成物中の成分Bの含有量が0質量ppm以上200質量ppmである、<9>乃至<11>の何れか1つに記載の研磨方法。
<13> 成分Aの重量平均分子量が800以上12000以下であり、成分Bの重量平均分子量が300以上30万以下である、<9>乃至<12>の何れか1つに記載の研磨方法。
<14> 前記研磨液組成物中の成分Cの含有量が0.07質量%以上0.3質量%以下であり、シリコン基板が単結晶シリコン基板である、<9>乃至<13>の何れか1つに記載の研磨方法。
<15> 前記仕上げ研磨工程1と前記仕上げ研磨工程2を1つの研磨定盤で行う、<9>乃至<14>の何れか1つに記載の研磨方法。
<16> 前記仕上げ研磨工程1と前記仕上げ研磨工程2を研磨定盤を変えて行う、<9>乃至<14>の何れか1つに記載の研磨方法。
<17> 前記仕上げ研磨工程2において、シリカ粒子(成分C)を含有する研磨液組成物で研磨した後、シリカ粒子(成分C)を含有しない研磨液組成物で研磨する、<9>乃至<16>の何れか1つに記載の研磨方法。
<18> <1>から<8>のいずれかに記載の方法、又は、<9>から<17>のいずれかに記載の研磨方法を行うことを含む、半導体基板の製造方法。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本開示をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本開示はこれら実施例に制限されるものではない。
【0085】
1.研磨液組成物の調製
(研磨液組成物の濃縮物)
表1に示すシリカ粒子(成分C)、アミノ基含有水溶性高分子化合物(成分A)、ノニオン性水溶性高分子化合物(成分B)、アンモニア(成分D)、及び超純水を撹拌混合して、研磨液組成物の濃縮物(60倍)を得た。濃縮物の25℃におけるpHは10.3~11.0であった。
(研磨液組成物)
上記濃縮物をイオン交換水で60倍希釈して、実施例1~12の研磨液組成物(a1~a6、b1~b6)を得た(表1)。表1中の各成分の含有量は、希釈後の研磨液組成物の使用時における各成分の含有量(質量%又は質量ppm、有効分)である。超純水の含有量は、成分A~Dを除いた残余である。各研磨液組成物(使用時)の25℃におけるpHは、10.1又は10.3であった。
25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM-30G)を用いて測定した値であり、pHメータの電極を研磨液組成物又はその濃縮物へ浸漬して1分後の数値である。
【0086】
各研磨液組成物の調製に用いた成分A、成分B、成分C及び成分Dには下記のものを用いた。
(成分A)
A1:メチルジアリルアミン・二酸化硫黄共重合体[ニットーボーメディカル社製、重量平均分子量3,000、pKa7.2]
A2:グリシドール変性ポリアリルアミン(グリシドール変性率:2.0)[ニットーボーメディカル社製、重量平均分子量11,000、pKa6.1]
(成分B)
B1:ポリグリセリン[ダイセル社製の「XPW」、重合度40、重量平均分子量2,980]
(成分C)
C1:コロイダルシリカ[平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm、会合度2.0]
C2:コロイダルシリカ[平均一次粒子径25nm、平均二次粒子径49nm、会合度2.0]
(成分D)
アンモニア[28質量%アンモニア水、キシダ化学社製、試薬特級]
【0087】
2.各種パラメータの測定方法
(1)シリカ粒子(成分C)の平均一次粒子径の測定
成分Cの平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
【0088】
成分Cの比表面積Sは、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置「フローソーブIII2305」、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
[前処理]
(a)スラリー状の成分Cを硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の成分Cをシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィルタで濾過する。
(e)フィルタ上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルタをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(成分C)をフィルタ屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
【0089】
(2)シリカ粒子(成分C)の平均二次粒子径
成分Cの平均二次粒子径(nm)は、成分Cの濃度が0.25質量%となるように研磨材をイオン交換水に添加した後、得られた水分散液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:「ゼータサイザーNano ZS」、シスメックス社製)を用いて測定した。
【0090】
(3)水溶性高分子の重量平均分子量の測定
水溶性高分子(成分A、成分B)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づき算出した。
<アミノ基含有水溶性高分子(成分A)>
装置:HLC-8320 GPC(東ソー社製、検出器一体型)
カラム:GS-220HQ+GS-620HQ
溶離液:0.4M NaCl
流量:1.0mL/min
カラム温度:30℃
検出器:ショーデックスRI SE-61示差屈折率検出器
標準物質:分子量が既知の単分散ポリエチレングリコール
<ノニオン性水溶性高分子(成分B)>
装置:HLC-8320 GPC(東ソー社製、検出器一体型)
カラム:GMPWXL+GMPWXL(アニオン)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1
流量:0.5mL/min
カラム温度:40℃
検出器:ショーデックスRI SE-61示差屈折率検出器
標準物質:分子量が既知の単分散ポリエチレングリコール
【0091】
(4)pKaの測定
HM-41K型pHメーター(東亜DKK(株))用いて、1Mに調整した成分Bの水溶液を0.1M-塩酸により室温で電位差滴定を行った。得られた滴定曲線からpKaを算出した。
【0092】
(5)グリシドール変性率
グリシドール変性率は、13C-NMRを用いて求めた。
<測定条件>
試料:グリシドール変性ポリアリルアミン 200mgを重水0.6mLに溶解
使用装置: 400MHz 13C-NMR(アジレント・テクノロジー株式会社製「Agilent 400-MR DD2」)
測定条件:13C-NMR測定、パルス間隔時間5秒、テトラメチルシランを標準ピーク(σ:0.0ppm)として測定
積算回数:5000回
積分に用いる各ピーク範囲:
A:71.0~72.3ppm(アミノ基と反応したグリシドールの2級水酸基が結合したCのピークの積分値)
B:32.0~41.0ppm(アリルアミンの主鎖Cのピークの積分値)
<グリシドール変性率>
グリシドール変性率(アミノ基の当量に対するグリシドールの当量比)は以下の式で求める。
グリシドール変性率(当量比)= 2A/B
【0093】
3.研磨液組成物(a1~a6、b1~b6)の評価(実施例1~12)
(1)研磨方法等
各研磨液組成物について、それぞれ研磨直前にフィルタ(コンパクトカートリッジフィルタ「MCP-LX-C10S」、アドバンテック社製)にてろ過を行い、下記の研磨条件で下記の被研磨シリコン基板に対して仕上げ研磨及び洗浄を行った。
<被研磨シリコン基板>
単結晶シリコン基板[直径200mmのシリコン片面鏡面基板、伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率:0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満]
上記単結晶シリコン基板を市販の研磨液組成物(フジミインコーポレーテッド製、GLANZOX 1302)を用いて予め粗研磨を実施した。粗研磨を終了し仕上げ研磨に供した単結晶シリコン基板のヘイズは、2~3ppmであった。
【0094】
<仕上げ研磨条件>
研磨機:片面8インチ研磨機「GRIND-X SPP600s」(岡本工作製)
研磨パッド:スエードパッド(東レ コーテックス社製、アスカー硬度:64、厚さ:1.37mm、ナップ長:450μm、開口径:60μm)
シリコン基板研磨圧力:100g/cm2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:5分
研磨液組成物の供給速度:150g/min
研磨液組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:62rpm
【0095】
<洗浄方法>
仕上げ研磨後、シリコン基板に対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ水溶液をノズルから流速1L/min、600rpmで回転するシリコン基板の中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5質量%のフッ化水素アンモニウム(特級、ナカライテクス株式会社)を含んだ水溶液をノズルから流速1L/min、600rpmで回転するシリコン基板の中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1,500rpmでシリコン基板を回転させた。
【0096】
(2)研磨速度の評価
研磨前後の各シリコン基板の重さを精密天秤(Sartorius社製「BP-210S」)を用いて測定し、得られた重量差をシリコン基板の密度、面積および研磨時間で除して、単位時間当たりの片面研磨速度を求めた。結果を表1に示す。なお、研磨後のシリコン基板の重さとは、上記仕上げ研磨及び洗浄を行った後のシリコン基板の重さである。
【0097】
(3)シリコン基板の表面粗さ(ヘイズ)の測定
上記仕上げ研磨及び洗浄を行った後のシリコン基板の表面粗さを、表面粗さ測定装置「Surfscan SP1-DLS」(KLA Tencor社製)を用いて測定される、暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値(DWOヘイズ)を用いた。結果を表1に示す。ヘイズの値は小さいほど平坦性が高いと評価できる。
【0098】
【0099】
表1に示されるように、実施例1、2、5、7、8、及び11の研磨液組成物は、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Aの含有量の割合[A/(A+B)]が50質量%を超える組成となることで、シリコン基板の研磨速度が研磨後基板の表面品質(ヘイズ)よりも優先するように調整された。また、表1に示されるように、実施例3,4,6,9,10及び12の研磨液組成物は、成分A及び成分Bの合計含有量に対する成分Bの含有量の割合[B/(A+B)]が50質量%を超える組成となることで、研磨後基板の表面品質(ヘイズ)がシリコン基板の研磨速度よりも優先するように調整された。
【0100】
4.2段階仕上げ研磨の評価(実施例2-1、2-2、比較例2-1)
(1)連続研磨
仕上げ研磨を、表2に示す研磨液組成物の組み合わせを用いて行った。仕上げ研磨1を行った後、洗浄および乾燥を行わずに、研磨機(研磨定盤)を変えて仕上げ研磨2を連続して行った以外は、上記3.と同様の研磨条件で行った。
【0101】
(2)合計研磨量の評価
研磨前後の各シリコン基板の重さを精密天秤(Sartorius社製「BP-210S」)を用いて測定し、得られた重量差をシリコン基板の密度及び面積および研磨時間で除して、2段階研磨の合計研磨量(nm)を求めた。結果を表2に示す。なお、研磨後のシリコン基板の重さとは、上記仕上げ研磨及び洗浄を行った後のシリコン基板の重さである。
【0102】
(3)シリコン基板の表面粗さ(ヘイズ)の測定
上記仕上げ研磨及び洗浄を行った後のシリコン基板の表面粗さを、上述と同様に測定した。結果を表2に示す。
【0103】
【0104】
表2に示されるように、実施例2-1及び2-2では、最初の仕上げ研磨1で割合[A/(A+B)]が50質量%を超える組成としてシリコン基板の研磨速度を優先し、最後の仕上げ研磨2で割合[B/(A+B)]が50質量%を超える組成として研磨後の基板の表面品質を優先するよう調整することで、合計研磨量(見かけの研磨速度)の向上と表面品質の向上を両立できた。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示の研磨液組成物を用いれば、シリコン基板の研磨速度と研磨後のシリコン基板の表面品質とを調整できる。よって、本開示の研磨液組成物は、様々な半導体基板の製造過程で用いられる研磨液組成物として有用であり、なかでも、シリコン基板の仕上げ研磨用の研磨液組成物として有用である。