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特許7599504運動改善指導装置、運動改善指導方法および運動改善指導プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】運動改善指導装置、運動改善指導方法および運動改善指導プログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20241206BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A63B69/00 C
A63B71/06 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022556852
(86)(22)【出願日】2020-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2020039390
(87)【国際公開番号】W WO2022085069
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-09-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】平川 菜央
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴志
(72)【発明者】
【氏名】森 洋人
(72)【発明者】
【氏名】市川 将
(72)【発明者】
【氏名】西村 典子
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-143537(JP,A)
【文献】国際公開第2019/008771(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/100671(WO,A1)
【文献】特開2017-000167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
A63B 71/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動動作の改善のための階層化された指標を記憶する階層指標記憶部と、
前記階層化された指標を運動中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する課題指標特定部と
を備え、
前記指標の階層構造は、少なくとも三つの階層を含み、最下位階層以外にある指標は、その直下の下位階層において複数の指標に細分化されており、
前記課題指標特定部は、前記指標の階層構造における同一階層にある複数の指標に関して、所定の基準データと前記測定データの乖離度が予め設定した値よりも大きいものを選択し、そこから更に少なくとも二つの下位階層に向かって段階的に前記課題指標を探索する運動改善指導装置。
【請求項2】
前記課題指標特定部によって特定された前記課題指標の改善のための指導情報を生成する指導情報生成部を備える
請求項1に記載の運動改善指導装置。
【請求項3】
前記課題指標特定部は、前記指標の階層構造の予め指定された階層から前記課題指標を探索する
請求項1または2に記載の運動改善指導装置。
【請求項4】
前記課題指標特定部は、前記指標の階層構造の最下位階層において前記課題指標を特定する
請求項1から3のいずれかに記載の運動改善指導装置。
【請求項5】
前記課題指標特定部は、過去の運動時と比較して所定程度の改善があった指標を特定した場合は、当該指標と同一階層または上位階層にある他の指標を対象として前記課題指標を探索する
請求項1から4のいずれかに記載の運動改善指導装置。
【請求項6】
前記課題指標特定部が、過去の運動時と同じ前記課題指標を特定した場合、前記指導情報生成部は、過去の運動時とは異なる前記指導情報を生成する
請求項2に記載の運動改善指導装置。
【請求項7】
運動動作の改善のための階層化された指標を記憶する階層指標記憶ステップと、
前記階層化された指標を運動中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する課題指標特定ステップと
を備え、
前記指標の階層構造は、少なくとも三つの階層を含み、最下位階層以外にある指標は、その直下の下位階層において複数の指標に細分化されており、
前記課題指標特定ステップは、前記指標の階層構造における同一階層にある複数の指標に関して、所定の基準データと前記測定データの乖離度が予め設定した値よりも大きいものを選択し、そこから更に少なくとも二つの下位階層に向かって段階的に前記課題指標を探索する運動改善指導方法。
【請求項8】
運動動作の改善のための階層化された指標を記憶する階層指標記憶ステップと、
前記階層化された指標を運動中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する課題指標特定ステップと
をコンピュータに実行させ、
前記指標の階層構造は、少なくとも三つの階層を含み、最下位階層以外にある指標は、その直下の下位階層において複数の指標に細分化されており、
前記課題指標特定ステップは、前記指標の階層構造における同一階層にある複数の指標に関して、所定の基準データと前記測定データの乖離度が予め設定した値よりも大きいものを選択し、そこから更に少なくとも二つの下位階層に向かって段階的に前記課題指標を探索する運動改善指導プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動動作の改善のための課題を特定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン等の携帯通信端末の軽量化が進んでおり、またスマートウォッチに代表されるいわゆるウェアラブルデバイスの開発も盛んに行われている。これらのデバイスは、ランニング等の運動中にも身に付けることができ、内蔵された加速度センサ等によって運動動作を測定することができる。その測定結果に基づいて運動動作の改善のための指導を行うサービスやアプリケーションも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-124448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、デバイスのスマート化に伴って内蔵されるセンサの種類が増えており、また各センサの高度化も進んでいるため、一回の運動を通じて大量の測定データを得ることができる。このような測定データを分析することにより、様々な観点から多数の運動動作の課題を抽出することができるが、それらの中から運動動作の効果的な改善に繋がる課題を特定することは困難である。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、運動動作の効果的な改善に繋がる課題を特定することができる運動改善指導装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のある態様の運動改善指導装置は、運動動作の改善のための階層化された指標を記憶する階層指標記憶部と、階層化された指標を運動中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する課題指標特定部とを備える。
【0007】
この態様では、階層化された指標を運動中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する。階層構造で表される各指標間の関係を参照することにより、運動動作の効果的な改善に繋がる課題指標を特定することができる。
【0008】
本発明の別の態様の運動改善指導方法は、運動動作の改善のための階層化された指標を記憶する階層指標記憶ステップと、階層化された指標を運動中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する課題指標特定ステップとを備える。
【0009】
本発明の別の態様の運動改善指導プログラムは、運動動作の改善のための階層化された指標を記憶する階層指標記憶ステップと、前記階層化された指標を運動中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する課題指標特定ステップとをコンピュータに実行させる。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運動動作の効果的な改善に繋がる課題を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る運動改善指導装置を含むシステムの全体構成図である。
図2】階層指標記憶部によって記憶された指標の階層構造の一例を示す図である。
図3】階層構造を用いて運動改善指導装置が運動改善指導を行う処理のフローを示す図である。
図4】ユーザが別のランニングを行った場合に、運動改善指導装置が運動改善指導を行う処理のフローを示す図である。
図5】階層構造の別の例を有向グラフの形式で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施の形態では、一例としてランニングにおけるフォームや力の使い方といった運動動作の改善のための指導を行う。運動動作の改善のための指標は階層化されており、最上位階層の指標は「着地衝撃」「上下動」「ブレーキ力」等で構成されている。これらの最上位階層の各指標は下位階層に向かって段階的に細分化されており、最下位階層には「接地位置」「接地角度」「体幹角度」等の個別に改善可能な指標が存在する。ランニング中に得られた測定データを参照しながら、このような指標の階層構造を上位階層から下位階層に向かって探索することにより、優先的に改善すべき課題指標を特定することができる。
【0014】
図1は、実施の形態に係る運動改善指導装置100を含むシステムの全体構成図である。運動改善指導装置100は、ユーザのランニング中に測定デバイス20によって測定された測定データに基づき、ランニングの運動動作の改善のための指導情報を生成する。生成された指導情報はユーザの使用する表示デバイス30に表示される。
【0015】
測定デバイス20は、例えば、ランニング中にユーザが身に付けることが可能なスマートウォッチ等のウェアラブルデバイスやスマートフォンであり、内蔵されたセンサによりランニング中の運動動作の測定を行う。しかしながら、本実施の形態において測定デバイス20はこれらに限定されるものではなく、ランニング中のデータ測定機能と、その測定データを運動改善指導装置100に伝達するための最低限のデータ伝達機能を備えたものであればどのようなものでもよい。例えば、測定デバイス20として、ランニング中のユーザを撮影するカメラ(撮影デバイス)を使用してもよい。この場合はカメラで撮影されたデータが測定データとして運動改善指導装置100に供給される。
【0016】
このように、測定デバイス20として様々なデバイスを使用することができるため、運動改善指導装置100は、ユーザのランニング中の運動動作に関する様々な測定データを取得することができる。
【0017】
例えば、測定デバイス20として、上記のようにウェアラブルデバイスやスマートフォンを使用する場合、これらのデバイスに内蔵されている加速度センサ、角速度センサ、位置センサ(GPS等)、磁気センサ等から、ユーザの位置や運動に関する基本的な物理量を測定データとして得ることができる。これらの測定データを適宜組み合わせて分析することにより、ランニング中のユーザの位置、速度、加速度といった基本的な情報だけでなく、ランニング中のユーザの姿勢、蹴り出しの強さや角度、接地の位置や角度といった運動動作の詳細に関する情報も得ることができる。また、距離、高度、勾配といったランニングのコースに関する情報も得ることができる。
【0018】
更に、測定デバイス20が、輝度等を測定する環境光センサ、温度センサ、湿度センサ等の外部環境を測定するセンサを備えている場合、運動改善指導装置100は、ランニング中の外部環境も踏まえて適切な運動改善指導を行うことができる。また、近年盛んに開発が行われている心拍等の生体信号を測定可能なウェアラブルデバイスを測定デバイス20として使用する場合、運動改善指導装置100は、ユーザの身体の状態も踏まえて適切な運動改善指導を行うことができる。
【0019】
なお、測定デバイス20は、ユーザが運動中に身に付けるものである必要はなく、運動中のユーザを周囲から測定するものでもよい。上述したカメラによる撮影が典型的な例として考えられるが、それに限定されるものではない。例えば、トレッドミル等を使用してユーザが屋内の制限された範囲でランニングを行う場合は、持ち運びが困難な測定デバイス20も使用することができるので、利用可能な測定データの種類が飛躍的に増加する。
【0020】
以上で例を挙げて説明した様々な測定デバイス20は、単体で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。例えば、第1の測定デバイス20としてのウェアラブルデバイスをユーザが身に付けて測定を行うとともに、第2の測定デバイス20としてのカメラでユーザを撮影してもよい。運動改善指導装置100は、このような複数の測定デバイス20からの測定データに基づき、多面的にユーザの運動動作を分析することができ、その効果的な改善のための指導情報を生成することができる。
【0021】
表示デバイス30は、測定デバイス20からの測定データに基づき運動改善指導装置100が生成した運動動作の改善のための指導情報を表示するデバイスである。例えば、スマートフォンが測定デバイス20として使用された場合は、それが指導情報を表示する表示デバイス30としても機能する。また、指導情報の表示機能を持たないカメラ等の測定デバイス20が使用された場合は、ユーザの保有する別のデバイス、例えばスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータが表示デバイス30として使用される。なお、測定デバイス20からの測定データに基づき運動改善指導装置100が生成した運動動作の改善のための指導情報を示す手段は表示デバイス30による表示に限られない。例えば、上記の指導情報を音声デバイスから音声を出力することでユーザに示すように構成されてもよい。
【0022】
運動改善指導装置100は、インターネット等の広域通信ネットワークを介して測定デバイス20および表示デバイス30と通信可能なサーバ上に構成される。運動改善指導装置100は、階層指標記憶部110と、課題指標特定部120と、指導情報生成部130とを有する。なお、本実施の形態はこれに限定されず、運動改善始動装置100は、測定デバイス20および表示デバイス30とLAN等の局所的な通信ネットワークを介して通信可能に構成してもよい。また、測定デバイス20または表示デバイス30がスマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置である場合は、運動改善装置100の機能をこれらの情報処理装置上で動作するアプリケーションソフトウェアとして実装することもできる。また、測定デバイス20で測定されたデータをUSBメモリ等の記憶媒体に格納し、運動改善指導装置100の機能を有するパーソナルコンピュータ等に読み込ませることによって本実施の形態における運動改善指導を行わせるようにしてもよい。
【0023】
階層指標記憶部110は、ランニングにおけるフォームや力の使い方といった運動動作の改善のための階層化された指標を記憶する。階層指標記憶部110によって記憶される指標の階層構造はシステムの初期セットアップなどの際に構成される。そこで構成された階層構造は、一貫性のある運動改善指導を行うために、一定期間は更新を行わずに同一のものを複数の運動セッションに対して使用することができる。また、新しい指標を追加したり、既存の指標を変更または削除したりすることで、階層構造を更新してもよい。他にも、運動動作のパフォーマンスと各指標との相関関係を示す教師データを取得し、その教師データに基づいて運動動作のパフォーマンスを入力とし対応する指標を出力とする学習モデルを機械学習により生成してもよい。このような学習モデルによれば、実際の運動動作のパフォーマンスを踏まえて運動動作の効果的な改善に繋がる指標を優先的に設定することができる。さらに、各指標で用いられる用語や、その生体力学的な意味を自律的に分析することにより、指標の階層構造を自動生成することも可能である。
【0024】
課題指標特定部120は、階層指標記憶部110によって記憶された指標の階層構造に基づき、測定デバイス20によるランニング中の測定データを参照して課題指標を特定する。具体的には、課題指標特定部120は、階層化された指標をランニング中の測定データに基づいて評価し、課題指標を特定する。
【0025】
課題指標特定部120による課題指標の探索は、階層構造の上位階層から下位階層に向かって行われる。その際、階層構造における同一階層にある複数の指標に関して、所定の基準データと測定データの乖離度が最も大きいものが選択され、そこから更に下位階層に向かって課題指標が探索される。そして、課題指標特定部120は、階層構造の最下位階層において課題指標を特定する。実施の形態は、階層構造の最上位階層から探索を開始するものに限定されない。例えば、ユーザが予め改善したい任意の指標を指定し、その指標の階層から下位階層に向かって課題指標を探索してもよい。
【0026】
指導情報生成部130は、課題指標特定部120によって特定された課題指標の改善のための指導情報を生成する。生成された指導情報は表示デバイス30に送信され、その表示画面に表示される。
【0027】
図2は、階層指標記憶部110によって記憶された指標の階層構造の一例を示す。この階層構造は、最上位階層である第1層L1から最下位階層である第4層L4までの四つの階層で構成されている。第1層L1には、ランニングの運動動作を評価する際の主要指標である「着地衝撃」「上下動」「ブレーキ力」が例示的に配置されている。
【0028】
第1層L1の直下の第2層L2には、第1層L1の各指標を細分化した指標が配置されている。例えば第1層L1の「上下動」は、第2層L2において「接地時上下動」と「滞空時上下動」の二つの指標に細分化されている。すなわち、第1層L1の「上下動」に問題がある場合は、接地時の上下動に問題がある場合と、滞空時の上下動に問題がある場合に大別されるので、第2層L2にそれぞれの場合に対応した指標を設け、問題の原因を具体的に特定できるようにしている。なお、第1層L1の他の指標である「着地衝撃」「ブレーキ力」も第2層L2以下において同様に細分化されているが、ここでは図示および説明を省略する。なお、上位階層の指標を下位階層の指標に細分化する際には、厳密な論理性が求められる訳ではなく、複数の下位指標が互いに重複していてもよく、また複数の下位指標の組合せが上位指標を完全に再現するものでなくともよい。
【0029】
第2層L2の直下の第3層L3には、第2層L2の各指標を細分化した指標が配置されている。例えば第2層L2の「滞空時上下動」は、第3層L3において「蹴り出し角度」と「蹴り出し加速度」の二つの指標に細分化されている。すなわち、第2層L2の「滞空時上下動」に問題がある場合は、離地時の蹴り出し角度に問題がある場合と、離地時の蹴り出し加速度に問題がある場合に大別されるので、第3層L3にそれぞれの場合に対応した指標を設け、問題の原因を具体的に特定できるようにしている。なお、第2層L2の他の指標である「接地時上下動」も第3層L3以下において同様に細分化されているが、ここでは図示および説明を省略する。
【0030】
第3層L3の直下の第4層L4には、第3層L3の各指標を細分化した指標が配置されている。例えば第3層L3の「蹴り出し角度」は、第4層L4において「接地位置」「接地角度」「体幹角度」の三つの指標に細分化されている。すなわち、第3層L3の「蹴り出し角度」に問題がある場合は、接地位置に問題がある場合と、接地角度に問題がある場合と、体幹角度に問題がある場合に大別されるので、第4層L4にそれぞれの場合に対応した指標を設け、問題の原因を具体的に特定できるようにしている。なお、第3層L3の他の指標である「蹴り出し加速度」も第4層L4において同様に細分化されているが、ここでは図示および説明を省略する。
【0031】
以上のような階層構造において、ランニング中に得られた測定データを参照しながら、上位階層から下位階層に向かって各指標を順次評価することにより、改善すべき課題指標を具体的に特定することができる。例えば、最上位階層である第1層L1の「上下動」に問題があったとしても、その具体的な原因を特定しなければ、適切な運動改善指導を行うことができない。本実施の形態の階層構造によれば、上位階層における問題「上下動」を特定した場合、そこから下位階層に向かって具体的な原因の探索を行うことができる。そして、例えば最下位階層である第4層L4の「接地位置」を原因として特定した場合、それを改善するための指導情報「1歩分手前に着地しましょう」等を生成することができる。
【0032】
図3は、以上のような階層構造を用いて運動改善指導装置100が運動改善指導を行う処理のフローを示す。以降の説明において「S」はステップを意味する。
S10では、ユーザの運動中に測定デバイス20による測定を行う。
S20では、測定デバイス20が測定データを運動改善指導装置100に送信する。このとき、複数の測定デバイス20でS10における運動測定を行う場合は、複数の測定デバイス20の測定データが運動改善指導装置100に送信されてもよい。また、一つの測定デバイス20で複数のデータを測定する場合は、複数の測定データが運動改善指導装置100に送信されてもよい。
【0033】
S30では、運動改善指導装置100が、S20において受信した各種の測定データを処理し、階層構造における各指標を評価可能な測定データに変換する。階層構造中の指標は、測定デバイス20で測定したデータのままでは評価できないものも多いため、適当な演算処理を行って評価可能なデータに変換する必要がある。変換の手法は本技術分野において様々なものが知られているので詳細な説明を省略するが、本フローチャート中で説明する以下の指標については、例えば以下のように評価用の測定データを得ることができる。
【0034】
第1層L1の「上下動」:加速度センサ等で直接測定することが可能。
第2層L2の「滞空時上下動」:加速度センサ等で滞空時と接地時を区別して上下動を測定することが可能。
第3層L3の「蹴り出し角度」:接地状態から滞空状態に移行する際の加速度センサや角速度センサの測定データから演算可能。
第4層L4の「接地位置」:離地時(接地→滞空)および接地時(滞空→接地)のそれぞれの位置センサ等の測定データから、離地位置に対する接地位置の相対位置を演算。
【0035】
S40では、課題指標特定部120が、S30において処理された測定データに基づいて課題指標を探索する。S40は、階層構造の四つの階層L1~L4に対応したS41~S44で構成される。S41、S42、S43、S44の順に処理が行われることによって、階層構造の上位階層から下位階層に向かって課題指標の探索が行われるようになっている。より具体的には、各階層にある複数の指標を測定データに基づいて評価し、最も問題の大きい指標を選択して、そこから更に下位階層に向かって原因の探索を行う。
【0036】
第1層L1の探索ステップであるS41は、S411~S413で構成される。
S411では、第1層L1にある複数の指標を測定データに基づいて評価する。具体的には、第1層L1にある三つの指標「着地衝撃」「上下動」「ブレーキ力」を評価する。各指標にはその正常値を表す基準データが予め設定されており、それとS30で各指標の評価用に処理された測定データを比較し、その乖離度を求める。そして、乖離度の大きさに基づいて、その指標に問題があるか否かを評価する。以下では説明を単純化するため、問題ありと評価する基準を全ての指標について一律に「乖離度10%超」とするが、実際には各指標について異なる基準を設けることができる。また、乖離度の大きさが、その指標の緊急度、すなわち運動改善指導における優先度を表すものとする。したがって、乖離度20%の指標と乖離度15%の指標では、前者の緊急度が高く、運動改善指導における優先指標となる。
【0037】
S412では、S411において問題のある指標があったか否かが判定される。すなわち、第1層L1にある三つの指標「着地衝撃」「上下動」「ブレーキ力」について、乖離度が10%を超えるものがあったか否かが判定される。いずれの指標についても乖離度が10%未満であった場合は、それぞれの下位指標も含めて全ての指標が正常範囲内にあるといえるので、課題指標特定部120は課題指標を特定せず、指導情報生成部130は指導情報を生成せずに処理を終了する。このような場合、指導情報生成部130が「この調子で頑張りましょう」等のユーザを動機付けるメッセージを生成してもよい。
【0038】
一方、S412において乖離度が10%を超える指標があった場合は、S413において乖離度が最も大きい指標が選択される。図2の階層構造において、例えば、「着地衝撃」の乖離度が15%、「上下動」の乖離度が20%、「ブレーキ力」の乖離度が7%であった場合、乖離度が10%を超える「着地衝撃」と「上下動」に問題があるが、乖離度が最大の「上下動」の緊急度が高く、優先指標として選択される。後続のステップでは、そこから更に下位階層に向かって課題指標の探索が行われる。
【0039】
第2層L2の探索ステップであるS42は、S413で選択された優先指標「上下動」の下位の指標を探索するもので、S421~S422で構成される。
S421では、第1層L1の優先指標「上下動」の下位指標である第2層L2の複数の指標「接地時上下動」「滞空時上下動」を測定データに基づいて評価する。具体的には、各指標について所定の基準データと測定データを比較し、その乖離度を求める。
【0040】
S422では、乖離度が最も大きい指標が選択される。例えば、「接地時上下動」の乖離度が8%、「滞空時上下動」の乖離度が15%であった場合、乖離度が最大の「滞空時上下動」の緊急度が高く、優先指標として選択される。後続のステップでは、そこから更に下位階層に向かって課題指標の探索が行われる。
【0041】
第3層L3の探索ステップであるS43は、S422で選択された優先指標「滞空時上下動」の下位の指標を探索するもので、S431~S432で構成される。
S431では、第2層L2の優先指標「滞空時上下動」の下位指標である第3層L3の複数の指標「蹴り出し角度」「蹴り出し加速度」を測定データに基づいて評価する。具体的には、各指標について所定の基準データと測定データを比較し、その乖離度を求める。
【0042】
S432では、乖離度が最も大きい指標が選択される。例えば、「蹴り出し角度」の乖離度が17%、「蹴り出し加速度」の乖離度が8%であった場合、乖離度が最大の「蹴り出し角度」の緊急度が高く、優先指標として選択される。後続のステップでは、そこから更に下位階層に向かって課題指標の探索が行われる。
【0043】
第4層L4の探索ステップであるS44は、S432で選択された優先指標「蹴り出し角度」の下位の指標を探索するもので、S441~S442で構成される。
S441では、第3層L3の優先指標「蹴り出し角度」の下位指標である第4層L4の複数の指標「接地位置」「接地角度」「体幹角度」を測定データに基づいて評価する。具体的には、各指標について所定の基準データと測定データを比較し、その乖離度を求める。
【0044】
S442では、乖離度が最も大きい指標が選択される。例えば、「接地位置」の乖離度が20%、「接地角度」の乖離度が13%、「体幹角度」の乖離度が5%であった場合、乖離度が最大の「接地位置」の緊急度が高く、優先指標として選択される。そして、課題指標特定部120は、選択された優先指標「接地位置」を課題指標として特定する。
【0045】
S50では、指導情報生成部130が、課題指標特定部120によって特定された課題指標「接地位置」の改善のための指導情報「1歩分手前に着地しましょう」等を生成する。ここで生成された指導情報は表示デバイス30に送信され、その表示画面に表示される。
【0046】
以上の処理フローによれば、階層構造で表される各指標間の関係を参照することにより、運動動作の効果的な改善に繋がる課題指標を特定して指導情報を生成することができる。
【0047】
課題指標特定部120が、階層構造の上位階層から下位階層に向かって課題指標を探索することにより、上位階層において大きな問題を特定し、下位階層においてその根本的な原因を特定することができるので、効果的な運動改善指導を行うことができる。
【0048】
この課題指標の探索は、最上位階層である第1層L1から最下位階層である第4層に向かって順次行われるが、各階層における探索処理S41、S42、S43、S44では、各指標についての実測値と基準値の乖離に基づいて優先指標が特定される。これにより、各階層において最も緊急度が高い指標を特定し、最優先で改善が必要な指標を課題指標として特定することができる。
【0049】
課題指標特定部120が、階層構造の最下位階層である第4層L4において課題指標を特定することにより、問題の根本的な原因を表し、かつ改善のための具体的な指導情報を生成しやすい課題指標を特定することができる。
【0050】
図4は、図3の処理フローによる運動改善指導が行われた後、ユーザが別のランニングを行った場合に、運動改善指導装置100が運動改善指導を行う処理のフローを示す。この処理において、課題指標特定部120は、過去のランニング時と比較して所定程度の改善があった指標を特定した場合は、当該指標と同一階層または上位階層にある他の指標を対象として課題指標を探索する。また、課題指標特定部120が過去のランニング時と同じ課題指標を特定した場合、指導情報生成部130は過去のランニング時とは異なる指導情報を生成する。図4では、図3と同様にS10、S20、S30、S40の処理を行い、S40の最終ステップであるS442において、乖離度の大きい優先指標を選択する。以下では、過去のランニング時として前回のランニング時を例に取って説明するが、本実施形態の処理は前回より前の過去のランニング時に適用可能である。
【0051】
S60では、今回の運動時のS442で選択された優先指標が、前回の運動時のS442で選択された優先指標「接地位置」と同一か否かを判定する。優先指標が前回の運動時と異なる場合、課題指標特定部120はその優先指標を課題指標として特定し、指導情報生成部130はその課題指標の改善のための指導情報をS50で生成する。例えば、今回の運動時の課題指標が「体幹角度」であった場合「体幹を真っ直ぐに保ちましょう」等の指導情報が生成される。
【0052】
一方、優先指標が前回の運動時と同一の「接地位置」の場合、S64において、その指標について前回の運動時と比較して所定程度の改善があったか否かを判定する。改善の有無の判定基準は指標毎に任意に設定することができるが、先述の乖離度を利用することができる。例えば、前回の運動時に比べて乖離度が5%以上小さくなっている場合に改善があったと判定することができる。前回の運動時の「接地位置」の乖離度が20%であったので、今回の運動時に乖離度が15%より小さくなっていれば、所定程度の改善があったと判定される。
【0053】
S64において「接地位置」に所定程度の改善がなかったと判定された場合、すなわち乖離度が15%以上と依然として高い状態であった場合、課題指標特定部120は前回の運動時と同じ「接地位置」を課題指標として特定する。この場合、指導情報生成部130は、S51において再度「接地位置」の改善のための指導情報を生成するが、前回とは異なる指導情報を生成する。これにより、ユーザは同一の課題指標について異なる観点からの改善を図ることができる。
【0054】
S64において「接地位置」に所定程度の改善があったと判定された場合、すなわち乖離度が15%より小さくなっていた場合、上位階層である第3層L3に移って探索が継続される。具体的には、S63において、「接地位置」(第4層L4)の上位指標である「蹴り出し角度」(第3層L3)について前回の運動時と比較して所定程度の改善があったか否かを判定する。
【0055】
S63において「蹴り出し角度」に所定程度の改善がなかったと判定された場合は、その下位階層に優先的に改善すべき課題指標が依然として存在するので、図3におけるS44に戻り、下位階層(第4層L4)における探索が継続される。このとき、第4層L4では「接地位置」の乖離度が最大であるため、S44中のS442をそのまま実行すると、結局は「接地位置」が課題指標として特定されることになる。しかしながら、「接地位置」は前回の運動時と比較して所定程度改善しているので(S64)、今回の運動時の課題指標の候補から除外してもよい。その場合、S442では「接地位置」を除いた他の指標「接地角度」「体幹角度」の中で乖離度が最も大きい指標が課題指標として特定されることになる。一方、S442をそのまま実行して、前回の運動時と同じ「接地位置」を課題指標として特定してもよい。その場合は、S51に関して説明したように、前回とは異なる指導情報を生成するのが好ましい。
【0056】
S63において「蹴り出し角度」に所定程度の改善があったと判定された場合、上位階層である第2層L2に移って探索が継続される。具体的には、S62において、「蹴り出し角度」(第3層L3)の上位指標である「滞空時上下動」(第2層L2)について前回の運動時と比較して所定程度の改善があったか否かを判定する。
【0057】
S62において「滞空時上下動」に所定程度の改善がなかったと判定された場合は、その下位階層に優先的に改善すべき課題指標が依然として存在するので、図3におけるS43に戻り、下位階層(第3層L3)における探索が継続される。
【0058】
S62において「滞空時上下動」に所定程度の改善があったと判定された場合、上位階層である第1層L1に移って探索が継続される。具体的には、S61において、「滞空時上下動」(第2層L2)の上位指標である「上下動」(第1層L1)について前回の運動時と比較して所定程度の改善があったか否かを判定する。
【0059】
S61において「上下動」に所定程度の改善がなかったと判定された場合は、その下位階層に優先的に改善すべき課題指標が依然として存在するので、図3におけるS42に戻り、下位階層(第2層L2)における探索が継続される。
【0060】
S61において「上下動」に所定程度の改善があったと判定された場合、図3におけるS412に戻り、第1層L1において問題のある指標があるか否かが判定される。このとき、「上下動」は前回の運動時と比較して所定程度改善しているので、S412の判定対象から除外するのが好ましい。その場合、S412では「上下動」を除いた他の指標「着地衝撃」「ブレーキ力」を対象として判定が行われる。
【0061】
以上の処理フローによれば、過去の運動時からの改善も踏まえて、今回の運動時の課題指標を効率的に探索することができる。この際、階層構造の下位階層から上位階層に向かって順次実行される改善判断処理S64、S63、S62、S61によって、どの階層まで改善があったのかを効率的に特定することができる。
【0062】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0063】
上記の実施の形態においては、課題指標特定部120による課題指標の探索を階層構造の上位階層から下位階層に向かって行う構成としたが、階層構造における探索方法はこれに限られるものではない。例えば、最上位階層から課題指標の探索を開始するのではなく、ユーザやシステムが予め指定した階層から探索を開始するようにしてもよい。また、最初から最下位階層を探索し、その中で乖離度が最も大きい指標を課題指標として特定することもできる。この探索においては最下位階層以外の階層にある指標は考慮されないが、図4で説明したように過去の運動時からの改善も踏まえて運動改善指導を行う場合は、S64、S63、S62、S61のように各階層の指標が考慮される。
【0064】
また、上記の実施形態においては、最上位階層L1の全ての指標が最下位階層L4の指標まで細分化されており、階層構造の深さが一律で4層の場合を例に取って説明したが、階層構造の深さは指標により異なっていてもよい。すなわち、実施形態と同様に最上位階層をL1とした場合、第1層L1より下に階層構造が存在しない深さ1の指標があってもよいし、第2層L2まで細分化される深さ2の指標があってもよいし、第3層L3まで細分化される深さ3の指標があってもよい。このとき、全ての階層に対応する指標が存在していなくてもよい。例えば、第1層L1のある指標を細分化した指標が直下の第2層L2には存在せず、更に下位の第3層L3の指標に細分化されてもよい。また、全ての指標について最上位階層が第1層L1である必要はなく、第2層L2、第3層L3、第4層L4に最上位指標があってもよい。上記のように深さが異なる階層構造を探索する際に、その最下位階層まで探索する必要はなく、探索する深さを指標毎にユーザやシステムがその都度指定することもできる。例えば、深さが3の階層構造を探索する場合であっても、深さ2まで探索する旨が指定されている場合は、深さ3の最下位階層は探索されず、その上の深さ2の階層において課題指標が特定される。
【0065】
上記の実施の形態においては、階層構造の最下位階層において課題指標を特定する構成としたが、それ以外の階層において課題指標を特定してもよい。例えば、全階層を通じて乖離度が最も大きい指標を課題指標として特定してもよい。この場合、階層によらず全ての指標について対応する指導情報を用意しておくことが好ましい。また、過去の運動時にある階層の指標について指導情報が生成され、その結果、今回の運動時にその階層の指標が十分改善しているような場合には、それより上位階層において課題指標を特定することもできる。これによれば、ユーザの運動動作の改善に合わせて、適切な階層に基づく指導を行うことができる。
【0066】
上記の実施形態においては、課題指標特定部120による課題指標の探索の際に、各階層において基準データと測定データの乖離度が最も大きい指標を選択し、更に下位階層に向かって課題指標を探索していたが、各階層で乖離度が予め設定した値よりも大きい複数の指標を選択してもよい。このような場合、選択された指標毎に下位階層の探索が行われ、複数の課題指標が特定される。指導情報生成部130は、特定された課題指標毎に指導情報を生成し、表示デバイス30に表示させる。表示デバイス30上では、その複数の指導情報を一画面中に表示してもよいし、ユーザ操作により複数画面を切り替えて各課題指標の指導情報を確認できるようにしてもよい。
【0067】
図4の処理フローにおいて、ある階層の指標が過去の運動時と比較して所定程度の改善があった場合は、その上位階層にある指標について改善の有無を判定していたが、同一階層にある他の指標について改善の有無を判定してもよい。例えば、図4では、S64で第4層L4の「接地位置」の改善があった場合は、S63で第3層L3の「蹴り出し角度」の改善の有無を判定していたが、第4層L4にある他の指標「接地角度」「体幹角度」について改善の有無を判定してもよい。第4層L4のこれらの指標は、第3層L3の「蹴り出し角度」に従属しているので、どちらの階層で改善の有無を判定しても大差はない。
【0068】
上記の実施形態においては、階層構造として図2に示されるようなツリー構造、すなわち上位階層から下位階層に向かって分岐する構造を例示したが、本発明の階層構造はこのようなツリー構造に限定されない。図5は、階層構造の別の例を有向グラフの形式で示す。本図において、有向グラフの頂点A~Kは各階層L1~L4の指標を表し、各指標を結ぶ有向の辺が課題指標の探索の方向を示す。最上位階層の第1層L1には指標A、B、Cが存在する。
【0069】
第2層L2には指標D、Eが存在する。ここで、指標Dは第1層L1の指標AおよびBをそれぞれ起点とする辺(矢印)で結ばれており、指標AおよびBの乖離度が所定値よりも大きい場合に指標Dの評価を行うことを意味する。したがって、指標AおよびBの少なくとも一つの乖離度が所定値以下であれば、指標AおよびBに関しては第1層L1で課題指標の探索が終了する。このとき、指標AおよびBの乖離度が共に所定値以下であれば、いずれも課題指標ではなく、いずれか一方の乖離度が所定値よりも大きければそれが課題指標として特定される。以降は同様の説明を省略するが、有向の辺(矢印)は、このように乖離度が所定値よりも大きい場合に下位階層の指標の探索に進むことを意味する。なお、図2のツリー構造と異なり、この例では上位指標AおよびBが下位指標Dに統合されたと捉えることもできる。
【0070】
第3層L3には指標F、G、Hが存在する。指標Fは、第2層L2の指標Dからの矢印で指定される。指標Gは、第2層L2の指標Eと第1層L1の指標Cからの矢印で指定される。指標Hは、第2層L2の指標Eからの矢印で指定される。
【0071】
第4層L4には指標I、J、Kが存在する。指標Iは、第3層L3の指標FおよびGからの矢印で指定される。指標Jは、第3層L3の指標Gからの矢印で指定される。指標Kは、第3層L3の指標FおよびHからの矢印で指定される。
【0072】
以上のような有向グラフによる階層構造によれば、図2に示したツリー構造よりも複雑な指標間の関係を適切に記述することができ、効果的に課題指標を特定することができる。また、図5においては、上位階層から下位階層に向かう矢印のみを図示したが、図4に関して説明したような下位階層から上位階層に向かって過去の運動時からの改善を探索する処理は、図5において下位階層の指標から上位階層の指標に向かう矢印によって記述することができる。
【0073】
本実施の形態では、運動の例としてランニングを挙げて説明したが、本発明はその他の運動にも適用することができる。例えば、各種の陸上競技、水泳、ジム、ウォーキング、ロードバイク等におけるトレーニングやエクササイズ、ダンス、サッカー等の球技に適用することができる。
【0074】
なお、実施の形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0075】
100・・・運動改善指導装置、110・・・階層指標記憶部、120・・・課題指標特定部、130・・・指導情報生成部、20・・・測定デバイス、30・・・表示デバイス。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、運動動作の改善のための課題を特定する運動改善指導装置に関する。
図1
図2
図3
図4
図5