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  • 特許-環境配慮型ガラス材料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】環境配慮型ガラス材料
(51)【国際特許分類】
   C03C 4/08 20060101AFI20241206BHJP
   C03C 4/10 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/095 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/093 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/078 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/066 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/068 20060101ALI20241206BHJP
   C03C 3/062 20060101ALI20241206BHJP
   C03B 19/02 20060101ALI20241206BHJP
   C03B 32/00 20060101ALI20241206BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C03C4/08
C03C4/10
C03C3/095
C03C3/093
C03C3/089
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/078
C03C3/066
C03C3/068
C03C3/062
C03B19/02 Z
C03B32/00
G02B5/22
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022581660
(86)(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 CN2021093268
(87)【国際公開番号】W WO2022001385
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】202010610609.6
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CDGM GLASS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】毛 露路
(72)【発明者】
【氏名】▲ハオ▼ 良振
(72)【発明者】
【氏名】李 賽
(72)【発明者】
【氏名】匡 波
(72)【発明者】
【氏名】張 鵬
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-040609(JP,A)
【文献】特開2003-160357(JP,A)
【文献】特開2003-119049(JP,A)
【文献】特開2005-206434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 23/00-35/26
40/00-40/04
C03C 1/00-14/00
G02B 5/20-5/28
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiO2、ZnO、アルカリ金属酸化物、Sの成分を含み、Cdを含まない環境配慮型ガラス材料であって、その成分が重量%で表され:SiO2を35~80%、ZnOを5~35%、Na2Oを5~25%、K2Oを1~10%、Sを0.2~8%、Sbを2~4.2%含み、前記環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、カットオフ波長が550nm以上、800~850nmの透過率が75%以上、850~900nmの透過率が80%以上、900~1000nmの透過率が83%以上、1000~2000nmの透過率が85%以上である環境配慮型ガラス材料。
【請求項2】
前記環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、
1) カットオフ波長が650nm以上、
2) 800~850nmの透過率が77%以上、
3) 850~900nmの透過率が82%以上、
4) 900~1000nmの透過率が84%以上、
5) 1000~2000nmの透過率が86%以上、
の5つの条件のうち1つ以上を満たす請求項1に記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項3】
前記環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、
1) カットオフ波長が700nm以上、
2) 800~850nmの透過率が80%以上、
3) 850~900nmの透過率が83%以上、
4) 900~1000nmの透過率が85%以上、
5) 1000~2000nmの透過率が87%以上
の5つの条件のうち1つ以上を満たす請求項1に記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項4】
その成分が重量%で表され:Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feを0.5~10%;及び/又はLi2Oを0~5%;及び/又はB2O3を0~10%;及び/又はAl2O3を0~5%;及び/又はMgOを0~5%;及び/又はCaOを0~5%;及び/又はSrOを0~10%;及び/又はBaOを0~10%;及び/又はSeを0~5%;及び/又はFを0~5%含む請求項1に記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項5】
その成分が重量%で表され:SiO2を40~75%;及び/又はZnOを7~30%;及び/又はNa2Oを7~22%;及び/又はK2Oを2~8%;及び/又はLi2Oを0~3%;及び/又はSを0.5~7%;及び/又はSb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feを0.8~9%;及び/又はB2O3を0~5%;及び/又はAl2O3を0~3%;及び/又はMgOを0~3%;及び/又はCaOを0~3%;及び/又はSrOを0~5%;及び/又はBaOを0~5%;及び/又はSeを0~4%;及び/又はFを0~3%含む請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項6】
その成分が重量%で表され:SiO2を42~73%;及び/又はZnOを9~25%;及び/又はNa2Oを8~19%;及び/又はK2Oを3~7%;及び/又はSを1~6%;及び/又はSb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feを0.9~8%;及び/又はSeを0~3%;及び/又はLi2Oを0~2%;及び/又はB2O3を0~3%;及び/又はAl2O3を0~1%;及び/又はMgOを0~2%;及び/又はCaOを0~2%;及び/又はSrOを0~2%;及び/又はBaOを0~2%;及び/又はFを0~1%含む請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項7】
その成分が重量%で表され:CuO+TiO2+P2O5を0~0.5%含む請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項8】
その成分が重量%で表され:CuO+TiO2+P2O5を0.0001~0.3%含む請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項9】
その成分が重量%で表され、
1) B2O3/SiO2が0.23以下、
2) ZnO/SiO2が0.07~0.95、
3) Se/Sが1.5以下、
4) (Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(Se+S)が0.1~25.0、
5) (Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbが3.0以下、
6) Li2O+Na2O+K2Oが8~35%である請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項10】
その成分が重量%で表され、
1) B2O3/SiO2が0.15以下、
2) ZnO/SiO2が0.10~0.75、
3) Se/Sが1.0以下、
4) (Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(Se+S)が0.5~8.0、
5) (Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbが2.0以下、
6) Li2O+Na2O+K2Oが9~30%、
の6つの条件のうち1つ以上を満たす請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項11】
その成分が重量%で表され、
1) B2O3/SiO2が0.1以下、
2) ZnO/SiO2が0.15~0.60、
3) Se/Sが0.5以下、
4) (Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(Se+S)が1.0~5.0、
5) (Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbが0.8以下、
6) Li2O+Na2O+K2Oが10~22%、
の6つの条件のうち1つ以上を満たす請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項12】
前記環境配慮型ガラス材料の耐酸安定性がクラス1;及び/又は耐水安定性がクラス1;及び/又は熱膨張係数が95×10-7/K以上である請求項1~4のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料を用いたガラスプリフォーム。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料又は請求項13に記載のガラスプリフォームを用いたガラス部材。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料及び/又は請求項14に記載のガラス部材を含むデバイス。
【請求項16】
請求項1~12のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料の製造方法であって、以下のステップを含む:
1) 環境配慮型ガラス材料の成分割合に応じて全ての原料を混合し、均一に混合された原料を溶解炉に入れ、1300~1500℃で溶融して溶融ガラスを形成する;
2) 溶融ガラスを攪拌し均質化する;
3) 溶融したガラスを金型に流し込む又は漏出させて成形する;
4) ステップ3)で成形されたガラスを470~600℃で10~60時間保持して発色させる、又はステップ3)で成形されたガラスをさらにガラスプリフォーム又はガラス部材に加工した後、470~600℃で10~60時間保持して発色させる、
環境配慮型ガラス材料の製造方法。
【請求項17】
環境配慮型ガラス材料の原料には、化合物塩、及び/又は水酸化物、及び/又は酸化物、及び/又は硫化物、及び/又はセレン化物、及び/又はフッ化物、及び/又は単体を用いる請求項16に記載の環境配慮型ガラス材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材料に関し、特に、紫外線・可視光線カットオフ及び高い近赤外線透過率を有する環境配慮型ガラス材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光エレクトロニクス産業の発展に伴い、800nmから2000nmの近赤外波長帯域検出の利用が、特にスマートデバイスにおいて重要性を増している。近赤外線レーザは、スマートデバイスの動作と動きを決定するために、周辺環境のリアルタイムセンシングに緊急に必要とされている。その実装は、光学システムが近赤外の動作帯域に干渉する紫外光・可視光帯域を除去する必要があり、近赤外線帯域でより高い透過率を必要とすることに基づいている。
【0003】
従来のセレノカドミウムガラスは、紫外光-可視光帯域をカットオフでき、より高い近赤外線透過率を有する。そのデメリットは、ガラスにカドミウム(Cd)を多く含み、現在の環境基準を満たさず、製造・使用・廃棄過程で環境・人体に大きな害を与えることである。また、セレノカドミウムガラスは化学的安定性が低く、過酷な環境に耐える必要があるスマートデバイスには適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、紫外線・可視光線カットオフ及び高い近赤外線透過率を有する環境配慮型ガラス材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が技術的課題を解決するために採用する技術方案は次のとおりである。
(1) SiO2、ZnO、アルカリ金属酸化物及びSなどの成分を含み、Cdを含まない環境配慮型ガラス材料であって、環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、カットオフ波長が550nm以上、800~850nmの透過率が75%以上、850~900nmの透過率が80%以上、900~1000nmの透過率が83%以上、1000~2000nmの透過率が85%以上である環境配慮型ガラス材料。
(2) 環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、カットオフ波長が600nm以上、好ましくはカットオフ波長が650nm以上、より好ましくはカットオフ波長が680nm以上、さらに好ましくはカットオフ波長が700nm以上である(1)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(3) 環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、800~850nmの透過率が77%以上、好ましくは800~850nmの透過率が80%以上である(1)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(4) 環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、850~900nmの透過率が82%以上、好ましくは850~900nmの透過率が83%以上である(1)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(5) 環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、900~1000nmの透過率が84%以上、好ましくは900~1000nmの透過率が85%以上である(1)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(6) 環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、1000~2000nmの透過率が86%以上、好ましくは1000~2000nmの透過率が87%以上である(1)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(7) その成分が重量%で表され:SiO2を35~80%;ZnOを5~35%;Na2Oを5~25%;K2Oを1~10%;Sを0.2~8%;Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feを0.5~10%含む(1)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(8) その成分が重量%で表され:Li2Oを0~5%;及び/又はB2O3を0~10%;及び/又はAl2O3を0~5%;及び/又はMgOを0~5%;及び/又はCaOを0~5%;及び/又はSrOを0~10%;及び/又はBaOを0~10%;及び/又はSeを0~5%;及び/又はFを0~5%さらに含む(7)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(9) その成分が重量%で表され:SiO2を35~80%;ZnOを5~35%;Na2Oを5~25%;K2Oを1~10%;Li2Oを0~5%;Sを0.2~8%;Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feを0.5~10%;B2O3を0~10%;Al2O3を0%~5%;MgOを0~5%;CaOを0~5%;SrOを0~10%;BaOを0~10%;Seを0~5%;Fを0~5%含み、且つCdを含まない環境配慮型ガラス材料。
(10) その成分が重量%で表され:SiO2を40~75%;及び/又はZnOを7~30%;及び/又はNa2Oを7~22%;及び/又はK2Oを2~8%;及び/又はLi2Oを0~3%;及び/又はSを0.5~7%;及び/又はSb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feを0.8~9%;及び/又はB2O3を0~5%;及び/又はAl2O3を0~3%;及び/又はMgOを0~3%;及び/又はCaOを0~3%;及び/又はSrOを0~5%;及び/又はBaOを0~5%;及び/又はSeを0~4%;及び/又はFを0~3%含む(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(11) その成分が重量%で表され:SiO2を42~73%;及び/又はZnOを9~25%;及び/又はNa2Oを8~19%;及び/又はK2Oを3~7%;及び/又はSを1~6%;及び/又はSb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feを0.9~8%;及び/又はSeを0~3%;及び/又はLi2Oを0~2%;及び/又はB2O3を0~3%;及び/又はAl2O3を0~1%;及び/又はMgOを0~2%;及び/又はCaOを0~2%;及び/又はSrOを0~2%;及び/又はBaOを0~2%;及び/又はFを0~1%含む(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(12)その成分が重量%で表され:CuO+TiO2+P2O5を0~0.5%;好ましくはCuO+TiO2+P2O5を0.0001~0.5%;より好ましくはCuO+TiO2+P2O5を0.0001~0.4%;さらに好ましくはCuO+TiO2+P2O5を0.0001~0.3%含む(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(13) その成分が重量%で表され、B2O3/SiO2が0.23以下、好ましくはB2O3/SiO2が0.15以下、より好ましくはB2O3/SiO2が0.1以下である(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(14) その成分が重量%で表され、ZnO/SiO2が0.07~0.95、好ましくはZnO/SiO2が0.10~0.75、より好ましくはZnO/SiO2が0.15~0.60である(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(15) その成分が重量%で表され、Se/Sが1.5以下、好ましくはSe/Sが1.3以下、より好ましくはSe/Sが1.0以下、さらに好ましくはSe/Sが0.5以下である(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(16) その成分が重量%で表され、(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(Se+S)が0.1~25.0、好ましくは(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)が0.2~15.0、より好ましくは(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)が0.5~8.0、さらに好ましくは(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)が1.0~5.0である(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(17) その成分が重量%で表され、(Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbが3.0以下、好ましくは(Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbが2.0以下、より好ましくは(Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbが1.0以下、さらに好ましくは(Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbが0.8以下である(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(18) その成分が重量%で表され、Li2O+Na2O+K2Oが8~35%、好ましくはLi2O+Na2O+K2Oが9~30%、より好ましくはLi2O+Na2O+K2Oが10~22%である(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(19) B2O3を含まない;及び/又はLi2Oを含まない;及び/又はSnを含まない;及び/又はTeを含まない(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(20) 環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、カットオフ波長が550nm以上、好ましくは600nm以上、より好ましくは650nm以上、さらに好ましくは680nm以上、さらにより好ましくは700nm以上である(9)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(21) 環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、800~850nmの透過率が75%以上、好ましくは800~850nmの透過率が77%以上、より好ましくは800~850nmの透過率が80%以上;及び/又は環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、850~900nmの透過率が80%以上、好ましくは850~900nmの透過率が82%以上、より好ましくは850~900nmの透過率が83%以上;及び/又は環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、900~1000nmの透過率が83%以上、好ましくは900~1000nmの透過率が84%以上、より好ましくは900~1000nmの透過率が85%以上;及び/又は環境配慮型ガラス材料の厚さが3mmである場合、1000~2000nmの透過率が85%以上、好ましくは1000~2000nmの透過率が86%以上、より好ましくは1000~2000nmの透過率が87%以上である(9)に記載の環境配慮型ガラス材料。
(22) 環境配慮型ガラス材料の耐酸安定性がクラス3以上、好ましくはクラス2以上、より好ましくはクラス1;及び/又は耐水安定性がクラス3以上、好ましくはクラス2以上、より好ましくはクラス1;及び/又は熱膨張係数が80×10-7/K以上、好ましくは85×10-7/K以上、より好ましくは90×10-7/K以上、さらに好ましくは95×10-7/K以上である(1)~(9)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料。
(23) (1)~(22)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料を用いたガラスプリフォーム。
(24) (1)~(22)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料又は(23)に記載のガラスプリフォームを用いたガラス部材。
(25) (1)~(22)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料及び/又は(24)に記載のガラス部材を含むを含むデバイス。
(26) (1)~(22)のいずれかに記載の環境配慮型ガラス材料の製造方法であって、以下のステップを含む環境配慮型ガラス材料の製造方法:
1) 環境配慮型ガラス材料の成分割合に応じて全ての原料を混合し、均一に混合された原料を溶解炉に入れ、1300~1500℃で溶融して溶融ガラスを形成する;
2) 溶融ガラスを攪拌し均質化する;
3) 溶融したガラスを金型に流し込む又は漏出させて成形する;
4) ステップ3)で成形されたガラスを470~600℃で10~60時間保持して発色させる、又はステップ3)で成形されたガラスをさらにガラスプリフォーム又はガラス部材に加工した後、470~600℃で10~60時間保持して発色させる。
(27) 環境配慮型ガラス材料の原料には、化合物塩、及び/又は水酸化物、及び/又は酸化物、及び/又は硫化物、及び/又はセレン化物、及び/又はフッ化物、及び/又は単体を用いる(26)に記載の環境配慮型ガラス材料の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の有益な効果は、合理的な成分設計により、本発明のガラス材料は、環境に配慮しながら、紫外線・可視光線カットオフ及び高い近赤外線透過率を実現することである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態2に係る環境配慮型ガラス材料の分光透過率を示す曲線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で適宜変形して実施することが可能である。さらに、繰り返しの説明部分については、適宜、省略するが、これは本発明の主旨を限定するものではない。以下、本発明の環境配慮型ガラス材料をガラスと称することがある。
【0009】
[環境配慮型ガラス材料]
以下、本発明の環境配慮型ガラス材料の成分(構成要素)の範囲について説明する。本明細書では、特に指定のない限り、各成分の含有量及び合計含有量は重量%(wt%)で表記する。
【0010】
本説明書に記載されている数値範囲には、特に明記されていない限り、上限値及び下限値が含まれ、「以上」及び「以下」には端点値、ならびに範囲に含むすべての整数及び分数が含まれ、範囲が限定されている場合に記載されている具体的な値に限定されるものではない。本説明書で「及び/又は」と呼ばれるものは包含的であり、例えば「A、及び/又はB」は、Aのみ、Bのみ、又はAとBの両方を意味する。
【0011】
<必須成分とオプション成分>
SiO2はガラスの主成分の一つである。本発明のガラスでは、適量のSiO2が着色を安定化させ、ガラスが所望のカットオフ性能を達成することを可能にする。その一方で、適量のSiO2がガラスの化学的安定性を高めることを可能にする。SiO2の含有量が35%未満では、ガラスのカットオフ性能が設計要件を満たさなくなり、ガラスの化学的安定性が急激に低下する。したがって、本発明において、SiO2の含有量の下限は35%であり、好ましくは40%、より好ましくは42%である。SiO2の含有量が80%を超えると、ガラスの溶融温度が急激に上昇し、着色物質の揮発が増加してガラスのカットオフ性能が低下する。同時に、ガラスの高温粘性が急激に上昇し、製品中の気泡や介在物が急激に増加する。したがって、本発明におけるSiO2の含有量の上限は80%、好ましくは75%、より好ましくは73%である。
【0012】
本発明のガラス中のB2O3は、ガラスの溶融性能を改善し、ガラスの本質的な品質と化学的安定性を向上させる。しかし、本発明者らは、研究の結果、ガラス中のB2O3がガラス構造の変化を引き起こし、着色物質の結合の閾値を上昇させ、ガラスのカットオフ能力を低下させることを見いだした。したがって、ガラスのカットオフ能力が要件を満たしている場合、ガラスの溶融性能や化学的安定性を高めるためにB2O3を10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下含むことができる。ある実装形態では、B2O3を含まないことがさらに好ましい。
【0013】
本発明は、広範な実験的研究により、いくつかの実装形態において、B2O3/SiO2を0.23以下にすることにより、ガラスのカットオフ性能を最適化しながら、ガラスの耐水安定性を改善できることを見出した。好ましくはB2O3/SiO2が0.15以下、より好ましくはB2O3/SiO2が0.1以下である。
【0014】
ガラス中のZnOは、ガラスの化学的安定性を高め、ガラスの高温粘性を下げることができる。SiO2の協力で溶融段階での着色物質の揮発を抑えることができると同時に、着色物質の構造変化を促進し、ガラスのカットオフ性能を向上させることができる。ZnOの含有量が5%未満では、ガラスのカットオフ性能が要件を満たさず、ガラスの化学的安定性が低下する。したがって、ZnOの含有量の下限は5%、好ましくは7%、より好ましくは9%である。ZnOの含有量が35%を超えると、特に成形やアニールの段階でガラスが失透しやすくなり、ガラスの近赤外線透過率が大幅に低下する。したがって、ZnOの含有量の上限は35%、好ましくは30%、より好ましくは25%である。
【0015】
本発明のいくつかの実装形態において、ZnO/SiO2の値が0.07未満であると、ガラスの化学的安定性が設計要件を満たさず、ガラスのカットオフ能力が低下する。ZnO/SiO2の値が0.95以上の場合、ガラス中に非着色物質が失透しやすくなり、特に800~1000nmの近赤外線透過率が急激に低下する傾向がある。したがって、ZnO/SiO2の値は0.07~0.95、より好ましくは0.10~0.75、さらに好ましくは0.15~0.60である。この場合、ガラス着色物質の生成の閾値を下げ、カットオフ性能の向上に寄与するとともに近赤外線透過率の向上に寄与することができる。
【0016】
本発明のガラスに含まれるアルカリ金属酸化物に属するLi2O、Na2O、K2Oは、ガラスの高温粘性を低下させ、ガラス中の気泡や介在物を低減することができる。高温粘性を下げる一方で、着色物質の溶解性を高め、ガラスのカットオフ性能を向上させることができる。さらに、アルカリ金属酸化物は、より多くの遊離酸素を供給することができ、より良いカットオフ性能を実現すると同時に、ガラスの近赤外線透過率を向上することができる。しかし、含有量が8%未満では、上記の効果が顕著でなく、その一方でガラスの膨張係数が設計目標より低くなり、高硬度で膨張係数の高い材料とうまくマッチングしない。含有量が35%を超えるとガラスが失透しやすくなり、カットオフ性能や近赤外線透過率が低下し、化学的安定性も急速に低下する。したがって、アルカリ金属酸化物Li2O+Na2O+K2Oの合計含有量は、8~35%、好ましくは9~30%、より好ましくは10~22%である。
【0017】
Li2Oはガラスの高温粘性を下げる能力に優れており、ガラスの本質的な品質を向上させるために有益である。しかしながら、本発明者らは、Liイオンはガラス中で凝集する能力が強く、着色物質の構造変化を阻害するため、ガラスのカットオフ性能が低下することを見出した。特にその含有量が5%を超えると、ガラスが所望のカットオフ性能を得られない。したがって、Li2Oの含有量は好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは2%以下である。ある実装形態では、Li2Oを含まないことがさらに好ましい。
【0018】
ガラス中のNa2Oは、ガラスの高温粘性を下げ、着色物質の構造変化の閾値を下げることができる。同時に、ガラスの近赤外線透過率を向上させ、ガラスの熱膨張係数を高め、本発明のガラスと高強度の透明材料との結合を容易にすることができる。Na2Oの含有量が5%未満では、ガラスの近赤外線透過率が設計要件を満たさず、ガラスのカットオフ性能が低下し、ガラスの熱膨張係数が設計要件より低くなる。したがって、Na2Oの含有量の下限は5%、好ましくは7%、より好ましくは8%である。Na2Oの含有量が25%を超えると、ガラスの化学的安定性が低下し、ガラスが失透しやすくなり、着色物質の構造変化の閾値が高くなり、ガラスのカットオフ性能が低下する。したがって、Na2Oの含有量の上限は25%、好ましくは22%、より好ましくは19%である。
【0019】
本ガラス系では、K2Oの役割はNa2Oと同様であるが、近赤外線を増強する能力はNa2Oよりも強い;一方、ガラスの化学的安定性を低下させる能力とガラスの耐失透性はNa2Oよりも強くなっている。したがって、K2Oの含有量は、ガラスの化学的安定性、耐失透性、カットオフ性能を最適化する観点から、1~10%、好ましくは2~8%、より好ましくは3~7%に限定される。
【0020】
ガラス中のAl2O3は、ガラスの化学的安定性を向上させることができるが、ガラスのカットオフ性能を低下させる原因となる。その含有量が5%を超えると、ガラスのカットオフ性能が設計要件を満たさない。Al2O3の含有量は5%以下、好ましくは3%以下である。ガラスの化学的安定性に余剰がある場合、Al2O3の含有量はより好ましくは1%以下である。
【0021】
MgOはガラスの化学的安定性を向上させる。しかし、含有量が5%を超えるとガラスの耐失透性が低下し、ガラスのカットオフ能力が低下し、近赤外線透過率も低下する。したがって、MgOの含有量は5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下に限定される。
【0022】
CaOはガラスの安定性と耐失透性を向上させ、高温粘性を低下させる。その含有量が5%を超えると、着色物質の構造形成を阻害し、ガラスのカットオフ性能を低下させる。したがって、CaOの含有量は5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは2%以下に限定される。
【0023】
ガラス中の適切な量のBaO及びSrOは、ガラスの化学的安定性を向上させ、ガラスの硬度を高め、ガラスの近赤外線透過率を向上させることができる。しかし、その含有量が10%を超えると、ガラスの着色物質の固定能力が低下し、カットオフ能力が低下する虞がある。したがって、BaO及びSrOの含有量は、それぞれ10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下に限定される。
【0024】
ガラス中のFは、ガラスの溶融性を高め、供給段階での着色物質の揮発を抑え、ガラスのカットオフ性能を向上させる。しかし、その含有量が5%を超えると、ガラスの高温粘性が急激に低下し、着色物質が過剰に揮発するようになる。したがって、Fの含有量は、環境保護の観点から、5%以下、好ましくは3%以下、より好ましくは1%以下、さらに好ましくは0%である。
【0025】
Sは、本発明のガラス中でSb、Ag、Ce、Sn、Te、V、Fe等と着色物質を形成することができるため、ガラスは500~720nmより前の帯域にカットオフ吸収を生じる。Sの含有量が8%を超えると、ガラスが失透しやすくなり近赤外線透過率が急激に低下する。Sの含有量が0.2%未満では、ガラスのカットオフ性能が設計要件を満たさなくなる。したがって、Sの含有量は、0.2~8%、好ましくは0.5~7%、より好ましくは1~6%に限定される。本発明におけるSの含有量は、ガラス中の全ての硫黄含有物質のうち、完全に硫黄元素に変換された硫黄の含有量である。本発明においてSは、硫黄元素及び/又は硫黄含有化合物によって導入することができる。
【0026】
Seは、本発明のガラス中でSb、Ag、Ce、Sn、Te、V、Fe等と着色物質を形成することができるため、ガラスは650~1200nmより前の帯域にカットオフ吸収を生じ、Sの単体又は硫化物よりもカットオフ性能の良いガラスにすることができる。Seの含有量が5%を超えると、ガラスは失透しやすくなり、近赤外線透過率が急激に低下する。したがって、カットオフ性能が設計要件を満たす場合、本ガラス系におけるSeの含有量は5%以下、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは0%である。本発明におけるSeの含有量は、ガラス中の全てのセレン含有物質のうち、完全にセレン元素に変換されたセレンの含有量である。本発明においてSeは、セレン元素及び/又はセレン含有化合物によって導入することができる。
【0027】
本発明は、広範な実験的研究により、いくつかの実装形態において、Se/Sの値が1.5を超える場合、ガラスの800~1000nmの透過率は設計要件を満たさないことを見出した。したがって、Se/Sの値は、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.3以下、さらに好ましくは1.0以下、さらにより好ましくは0.5以下である。
【0028】
本発明のガラス中のSb、Ag、Ce、Sn、Te、V、Feなどの成分の1種以上は、S及び/又はSeと着色化合物を形成できる。Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feの合計含有量が10%を超えると、ガラスが失透しやすくなり、近赤外線透過率が急激に低下する。Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feの合計含有量が0.5%未満では、ガラス中に着色物質が生成されにくく、設計通りのカットオフ性能が得られない。したがって、Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feの含有量は、0.5~10%、好ましくは0.8~9%、より好ましくは0.9~8%である。本発明におけるSb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Feの含有量は、ガラス中のSb含有物質中のSb、Ag含有物質中のAg、Ce含有物質中のCe、Sn含有物質中のSn、Te含有物質中のTe、V含有物質中のV、及びFe含有物質中の完全に元素に変換されたFeを合計した含有量を意味する。Sb、Ag、Ce、Sn、Te、V及びFeは、酸化物、及び/又は硫化物、及び/又はセレン化物、及び/又はフッ化物、及び/又は単体、及び/又は化合物塩、及び/又は水酸化物などによって導入してもよい。本発明のいくつかの実装形態では、好ましくはSn及び/又はTeを含まない。
【0029】
本発明のいくつかの実装形態において、(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)が0.1未満であると、ガラスの近赤外線透過率が著しく低下する。(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)が25.0を超えると、ガラスのカットオフ性能が著しく低下して、ガラスの耐失透性も急激に低下する。したがって、好ましくは(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)の値が0.1~25.0、より好ましくは(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)の値が0.2~15.0、さらに好ましくは(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)の値が0.5~8.0、さらにより好ましくは(Sb+Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/(S+Se)の値が1.0~5.0である。
【0030】
本発明のいくつかの実装形態では、Sb、Ag、Ce、Sn、Te、V、Feがガラス中のアニオンと着色物質を形成するとき、相乗効果がある;(Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbの値が3.0を超えるの場合、ガラスの近赤外線透過率が著しく低下する。したがって、好ましくは(Ag+Ce+Sn+Te+V+Fe)/Sbの値が3.0以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.0以下、さらにより好ましくは0.8以下である。
【0031】
本発明のいくつかの実装形態では、着色物質の形成を促進するために、本発明のガラス中にCuO、TiO2、及びP2O5の1種以上を追加で含むのが可能であるが、CuO、TiO2、P2O5の合計含有量(CuO+TiO2+P2O5)が0.5%を超えると、ガラスが特に失透しやすくなり、着色物質の構造がマイナスに変化して近赤外線透過率が急激に減少しやすい。したがって、CuO+TiO2+P2O5の含有量は0.5%以下である。一方、CuO+TiO2+P2O5が0.0001%未満では、ガラス中の不純物欠陥にしか着色物質を形成することができず、ガラスのカットオフ性能が悪くなったり、ガラスの着色均一性が悪くなったりするなどという問題がある。したがって、好ましくはCuO+TiO2+P2O5は0.0001~0.5%、より好ましくは0.0001~0.4%、さらに好ましくは0.0001~0.3%である。本発明におけるCuO、TiO2及びP2O5の含有量は、本発明に記載のCuO、TiO2及びP2O5以外の全成分の含有量からなる100wt%には含まれない。
【0032】
<不要成分>
環境に配慮するため、本発明のガラスは、Cd、As、Pbを含まない。
ここで、「含まない」「0%」とは、化合物、分子、元素等を本発明のガラスの原料として意図的に添加していないことを意味する;ただし、ガラスの製造のための原料及び/又は設備として、最終的なガラス中に少量又は微量で意図的に添加されていない特定の不純物又は成分が存在するのであれば、この状況も本発明の特許の保護範囲に含む。
【0033】
以下では、本発明の環境配慮型ガラス材料の特性について説明する。
【0034】
<カットオフ性能>
GB/T7962.12-2010の方法に従った分光器を用いて、3mmガラスサンプルの300nm~2000nmにおける透過率曲線を試験し、5%の透過率がカットオフ波長となる。本発明では、ガラスのカットオフ波長値が高いほどカットオフ性能が良く、カットオフ波長値が低いほどカットオフ性能は悪くなる。
【0035】
本発明のいくつかの実装形態において、環境配慮型ガラス材料のカットオフ波長は、550nm以上、好ましくは600nm以上、より好ましくは650nm以上、さらに好ましくは680nm以上、さらにより好ましくは700nm以上である。
【0036】
<近赤外線透過率>
GB/T7962.12-2010の方法に従った分光器を用いて、3mmガラスサンプルの300nm~2000nmにおけるガラスの透過率曲線を試験し、本発明の近赤外線透過率は、800nm~2000nmでの透過率値を指す。なお、本発明でいう近赤外線透過率とは、対応する波長帯域範囲内で最も低い透過率のことをいう。
【0037】
本発明の幾つかの実装形態において、本発明の環境配慮型ガラス材料は、以下の透過率のうちの1つ以上を有する:
【0038】
1) 800~850nmの透過率が75%以上、好ましくは800~850nmの透過率が77%以上、より好ましくは800~850nmの透過率が80%以上である。
【0039】
2) 850~900nmの透過率が80%以上、好ましくは850~900nmの透過率が82%以上、より好ましくは850~900nmの透過率が83%以上である。
【0040】
3) 900~1000nmの透過率が83%以上、好ましくは900~1000nmの透過率が84%以上、より好ましくは900~1000nmの透過率が85%以上である。
【0041】
4) 1000~2000nmの透過率が85%以上、好ましくは1000~2000nmの透過率が86%以上、より好ましくは1000~2000nmの透過率が87%以上である。
【0042】
<耐酸安定性>
ガラス材料の耐酸安定性(DA)(粉末法)は、GB/T 17129に規定された方法に従って試験される。ここで、耐酸性を耐酸性又は耐酸安定性と呼ぶことがある。
【0043】
本発明のいくつかの実装形態において、環境配慮型ガラス材料の耐酸安定性(DA)は、クラス3以上、好ましくはクラス2以上、より好ましくはクラス1である。
【0044】
<耐水安定性>
ガラス材料の耐水安定性(DW)(粉末法)は、GB/T 17129に規定された方法に従って試験される。ここで、耐水性を耐水性又は耐水安定性と呼ぶことがある。
【0045】
本発明のいくつかの実装形態において、環境配慮型ガラス材料の耐水安定性(DW)は、クラス3以上、好ましくはクラス2以上、より好ましくはクラス1である。
【0046】
<熱膨張係数>
本発明でいう熱膨張率とは、20~300℃におけるガラスの平均熱膨張係数をいい、α20-300℃で表され、GB/T7962.16-2010に規定された方法に従って試験される。
【0047】
本発明のいくつかの実装形態において、環境配慮型ガラス材料の平均熱膨張係数(α20-300℃)は、80×10-7/K以上、好ましくは85×10-7/K以上、より好ましくは90×10-7/K以上、さらに好ましくは95×10-7/K以上である。
【0048】
[製造方法]
本発明の環境配慮型ガラス材料の製造方法は、以下のステップを含む:
1) 環境配慮型ガラス材料の成分割合に応じて全ての原料を混合し、均一に混合された原料を溶解炉に入れて、1300~1500℃で溶融して溶融ガラスを形成する;
2) 溶融ガラスを攪拌し均質化する;
3) 溶融したガラスを金型に流し込む又は漏出させて成形する;
4) ステップ3)で成形されたガラスを470~600℃で10~60時間保持して発色させる、又はステップ3)で成形されたガラスをさらにガラスプリフォーム又はガラス部材に加工した後、470~600℃で10~60時間保持して発色させる。
【0049】
さらに、上記環境配慮型ガラス材料の原料には、複合塩(炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩等)、及び/又は水酸化物、及び/又は酸化物、及び/又は硫化物、及び/又はセレン化物、及び/又はフッ化物、及び/又は単体を用いることができる。
【0050】
[ガラスプリフォーム及びガラス部材]
環境配慮型ガラス材料から、例えば研削又は再熱成形、精密スタンピングなどの圧縮成形手段を用いてガラスプリフォームを作製することができる。すなわち、環境配慮型ガラス材料を研磨及びその他の機械的加工することによってガラスプリフォームを作製することもでき、環境配慮型ガラス材料で圧縮成形用プリフォームを作製し、このプリフォームを再熱成形してから研磨することによってガラスプリフォームを作製することもでき、研磨により作製したプリフォームを精密スタンピングすることによってガラスプリフォームを作製することもできる。
【0051】
なお、ガラスプリフォームを作製するための手段は、上記の手段に限定されるものではない。
【0052】
本発明のガラスプリフォーム及びガラス部材は、いずれも上述した本発明の環境配慮型ガラス材料から形成される。本発明のガラスプリフォームは、環境配慮型ガラス材料の優れた特性を有し;本発明のガラス部材は、環境配慮型ガラス材料の優れた特性を有し、フィルター、レンズ、プリズム等の価値の高い各種ガラス部材を提供することが可能である。
【0053】
[デバイス]
本発明の環境配慮型ガラス材料、及びそれから形成されるガラス部材は、光フィルター、写真装置、カメラ機器、表示機器、監視機器、電子機器、インテリジェント機器などの製造に使用することが可能である。
【0054】
実施形態
本発明の技術的解決策をさらに明確に説明し、例示するために、以下の非限定的な実施形態1~22が提供される。
【0055】
本実施形態は、上述した環境配慮型ガラス材料の製造方法を用いて、表1~表3に示す成分を有する環境配慮型ガラス材料を得るものである。また、各ガラスの特性を本発明に記載の試験方法により測定し、その結果を表1~表3に表した。
【表1】

【表2】

【表3】
図1