(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】アームレストおよびアームレスト用樹脂発泡体
(51)【国際特許分類】
A47C 7/54 20060101AFI20241206BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20241206BHJP
B60N 2/75 20180101ALI20241206BHJP
B60N 3/10 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A47C7/54 Z
A47C7/62 A
B60N2/75
B60N3/10 A
(21)【出願番号】P 2023011171
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2018199385の分割
【原出願日】2018-10-23
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2017206701
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】一尾 利通
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-088458(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0027385(KR,A)
【文献】特開2007-326329(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0129814(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 7/00-74
B60N 2/00-90
B60N 3/00-18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂発泡体のチップを集成して構成された本体部と、
前記本体部に、該本体部の一面に開口する凹状に設けられ、機能部材が設置される設置部と、
前記本体部において腕が置かれる主要部に隣接する前記設置部の開口縁に設けられた保護部と、を備え、
前記本体部は、略直方体形状に形成されたブロックであり、前記機能部材に面する樹脂発泡体の全てが前記本体部で構成され、
前記保護部は、前記主要部よりも見掛け密度が高く構成され、
前記本体部全体が、前記チップを集成して構成されている
ことを特徴とするアームレスト。
【請求項2】
樹脂発泡体のチップを集成して構成された本体部と、
前記本体部に、該本体部の一面に開口する凹状に設けられ、機能部材が設置される設置部と、
前記本体部において腕が置かれる主要部に隣接する前記設置部の開口縁に設けられた保護部と、を備え、
前記本体部は、略直方体形状に形成されたブロックであり、前記機能部材に面する樹脂発泡体の全てが前記本体部で構成され、
前記保護部は、前記主要部よりも見掛け密度が高く構成され、
前記本体部全体が、前記チップを集成して構成され、
前記本体部において、前記設置部が前記主要部の前側に配置され、
前記保護部が、前記設置部の後壁よりも後側に設けられている
ことを特徴とするアームレスト。
【請求項3】
樹脂発泡体のチップを集成して構成された本体部と、
前記本体部に、該本体部の一面に開口する凹状に設けられ、機能部材が設置される設置部と、
前記本体部において腕が置かれる主要部に隣接する前記設置部の開口縁に設けられた保護部と、を備え、
前記本体部は、略直方体形状に形成されたブロックであり、前記機能部材に面する樹脂発泡体の全てが前記本体部で構成され、
前記保護部は、前記主要部よりも見掛け密度が高く構成され、
前記本体部全体が、前記チップを集成して構成され、
前記本体部に埋め込まれ、前記設置部を囲う枠状に形成された補強材を備えている
ことを特徴とするアームレスト。
【請求項4】
樹脂発泡体のチップを集成して構成された本体部と、
前記本体部に、該本体部の一面に開口する凹状に設けられ、機能部材が設置される設置部と、
前記本体部において腕が置かれる主要部に隣接する前記設置部の開口縁に設けられた保護部と、を備え、
前記本体部は、略直方体形状に形成されたブロックであり、前記機能部材に面する樹脂発泡体の全てが前記本体部で構成され、
前記保護部は、前記主要部よりも見掛け密度が高く構成され、
前記本体部全体が、前記チップを集成して構成されている
ことを特徴とするアームレスト用樹脂発泡体。
【請求項5】
樹脂発泡体のチップを集成して構成された本体部と、
前記本体部に、該本体部の一面に開口する凹状に設けられ、機能部材が設置される設置部と、
前記本体部において腕が置かれる主要部に隣接する前記設置部の開口縁に設けられた保護部と、を備え、
前記本体部は、略直方体形状に形成されたブロックであり、前記機能部材に面する樹脂発泡体の全てが前記本体部で構成され、
前記保護部は、前記主要部よりも見掛け密度が高く構成され、
前記本体部全体が、前記チップを集成して構成され、
前記本体部において、前記設置部が前記主要部の前側に配置され、
前記保護部が、前記設置部の後壁よりも後側に設けられている
ことを特徴とするアームレスト用樹脂発泡体。
【請求項6】
樹脂発泡体のチップを集成して構成された本体部と、
前記本体部に、該本体部の一面に開口する凹状に設けられ、機能部材が設置される設置部と、
前記本体部において腕が置かれる主要部に隣接する前記設置部の開口縁に設けられた保護部と、を備え、
前記本体部は、略直方体形状に形成されたブロックであり、前記機能部材に面する樹脂発泡体の全てが前記本体部で構成され、
前記保護部は、前記主要部よりも見掛け密度が高く構成され、
前記本体部全体が、前記チップを集成して構成され、
前記本体部に埋め込まれ、前記設置部を囲う枠状に形成された補強材を備えている
ことを特徴とするアームレスト用樹脂発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、樹脂発泡体のチップで本体部が構成されるアームレスト、該アームレストの製造方法およびアームレストを製造するための成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アームレストとしては、例えば、リアシートのシートバックの凹部に収容した状態から前傾することで、シートクッションに載せて肘掛けとする状態に変更できるものがある(例えば、特許文献1参照)。このようなアームレストは、クッション性を有するアームレスト本体に設置凹部を形成し、設置凹部に硬質樹脂からなるカップホルダを嵌め込んで設置し、肘掛け状態においてカップホルダで飲料容器を保持できるようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したアームレストは、アームレスト本体が柔らかくクッション性を有していることで、使用者の腕をソフトに支持するようになっている。このため、アームレスト本体が撓んで、設置凹部に設置されたカップホルダとアームレスト本体との間に、指や物などが入ってしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、設置部に設置した機能部材との間への物などの入り込みを防止できるアームレスト、アームレストの製造方法、およびアームレストを製造するための成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明のアームレストは、
樹脂発泡体のチップを集成して構成された本体部と、
前記本体部に、該本体部の一面に開口する凹状に設けられ、機能部材が設置される設置部と、
前記本体部において腕が置かれる主要部に隣接する前記設置部の開口縁に設けられた保護部と、を備え、
前記保護部は、前記主要部よりも見掛け密度が高く構成されていることを要旨とする。
第1の発明によれば、設置部の開口縁に見掛け密度が高い保護部を設けることで、設置部の開口縁を撓み難くすることができ、設置部に設置された機能部材と本体部との間への物などの入り込みを防止できる。
【0007】
第2の発明では、前記主要部と前記保護部との境界には、前記本体部における前記設置部が開口する一面に開口するように、該本体部の型成形に由来するスリットが設けられていることを要旨とする。
第2の発明によれば、主要部よりも適度に硬い保護部を形成することができる。
【0008】
第3の発明では、前記保護部は、前記設置部に嵌め合わせて設置される前記機能部材の外周縁が置かれる部位に対応して設けられていることを要旨とする。
第3の発明によれば、比較的撓み難い保護部によって設置部に設置された機能部材の外周縁を支持することができる。
【0009】
第4の発明では、前記本体部は、該本体部の一面から該本体部の厚みよりも薄い範囲に設けられた前記保護部を備えていることを要旨とする。
第4の発明によれば、保護部の形成によって本体部が硬くなり過ぎることを防止できる。
【0010】
第5の発明のアームレストの製造方法は、
樹脂発泡体のチップを成形して得られる本体部を備えるアームレストの製造方法であって、
成形型において、前記本体部の一面に開口する凹状に形成される設置部を成形する内型面と該内型面に対面する堰部との間に、該堰部に対面して延在して、前記本体部の一面と交差する面を成形する外型面と該堰部との間よりも、前記チップを多く詰め込み、
前記成形型のキャビティに充填した前記チップを圧縮成形して、前記設置部を形成すると共に、該設置部の開口縁に、前記本体部において腕が置かれる主要部よりも見掛け密度が高い保護部を形成することを要旨とする。
第5の発明によれば、堰部でチップを保持して、設置部の開口縁に対応する領域にチップを充填し易くすることができ、設置部の開口縁に見掛け密度が高い保護部を安定して設けることができる。
【0011】
第6の発明では、前記内型面と前記堰部との間は、該堰部と前記外型面との間よりも狭く設定されていることを要旨とする。
第6の発明によれば、設置部の開口縁に対応する領域にチップをより充填し易くすることができる。
【0012】
第7の発明では、前記堰部は、前記外型面よりも低く設定されていることを要旨とする。
第7の発明によれば、堰部に邪魔されず、設置部の開口縁に対応する領域にチップをより充填し易くすることができる。
【0013】
第8の発明では、前記内型面と前記堰部との間に、前記外型面と該堰部との間に詰め込むチップよりも硬いチップを詰め込むことを要旨とする。
第8の発明によれば、保護部の硬さを向上することができる。
【0014】
第9の発明の成形型は、
樹脂発泡体のチップを圧縮成形して、アームレストの本体部を製造するための成形型であって、
前記本体部の外面における一面を成形する第1外型面と、
前記本体部の外面における前記一面と交差する面を成形する第2外型面と、
前記第1外型面から立ち上がり、前記本体部の一面に開口する凹状に形成される設置部を成形する内型面と、
前記第2外型面と前記内型面との間に、該第2外型面よりも該内型面の近くに配置されると共に、前記第1外型面から該内型面と対面するように立ち上がる堰部と、を備えていることを要旨とする。
第9の発明によれば、堰部でチップを保持して、設置部の開口縁に対応する領域にチップを充填し易くすることができ、設置部の開口縁に見掛け密度が高い保護部を安定して設けることができる。
【0015】
第10の発明では、前記堰部は、前記第2外型面よりも低く形成されていることを要旨とする。
第10の発明によれば、堰部に邪魔されず、設置部の開口縁に対応する領域にチップをより充填し易くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るアームレストによれば、設置部に設置した機能部材と本体部との間への物などの入り込みを防止できる。
本発明に係るアームレストの製造方法および成形型によれば、設置部に設置した機能部材との間への物などの入り込みを防止できるアームレストを簡単に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係るアームレストを示す斜視図である。
【
図2】実施形態のアームレストを示す平面図である。
【
図3】実施形態のアームレストにおいて、見掛け密度の違いを示す説明図である。
【
図4】
図2のA-A線で破断して示す端面図である。
【
図5】
図2のB-B線で破断して示す端面図である。
【
図6】実施形態のアームレストの製造工程を示す説明図であり、チップを充填する前である。
【
図7】実施形態のアームレストの製造工程を示す説明図であり、チップを充填した状態である。
【
図8】実施形態のアームレストの製造工程を示す説明図であり、型閉じした状態である。
【
図9】実施形態のアームレストの製造工程を示す説明図であり、得られたアームレストの脱型を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明に係るアームレスト、アームレストの製造方法および成形型につき、好適な実施形態を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0019】
図1および
図2に示す実施形態に係るアームレスト10は、リアシートに設置されるものであり、リアシートのシートバックに設けられた収容凹部の下部に傾動可能に支持される。アームレスト10は、シートバックからシートクッションの座面に沿って前方へ延出する使用姿勢と、シートバックに沿うよう起立させて収納凹部に収納した収納姿勢との間で姿勢変位させて用いられる。使用姿勢において、アームレスト10は、リアシートの左右に座った乗員の間に位置して、使用姿勢における上面で乗員の腕を支持する。また、アームレスト10は、収納姿勢における前面がシートバックの前面と揃って、リアシートの中央部に座った乗員の背もたれとして機能する。なお、以下の説明では、使用姿勢にあるアームレスト10を基準として、アームレスト10の方向を指称する。
【0020】
前記アームレスト10は、クッション性を有する本体部12が、樹脂発泡体のチップ14(
図6(a))を集成して構成されている。
図1および
図2に示すように、本体部12は、前後に長手が延在する略直方体形状に形成されたブロックであり、後部がシートバックに対して左右の軸回りに回動可能に支持される。アームレスト10は、使用姿勢において上面で乗員の腕を弾力的に受け止めて、収納姿勢において前面となる下面で乗員の背中を弾力的に受け止める。なお、アームレスト10は、本体部12を表皮材(不図示)で覆い、外面が表皮材で基本的に構成されている。なお、表皮材としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)等の合成樹脂、ファブリックやトリコット等の布または本革などの柔軟な素材を採用可能である。
【0021】
図2および
図4に示すように、アームレスト10には、カップホルダ(機能部材)20が設置される設置部18が、本体部12に形成されている。設置部18は、本体部12の上面(一面)に開口する凹状に形成されており、本体部12の前端に近い位置に設けられている。また、設置部18は、本体部12の左右方向に長手が延在し、本体部12における左右幅の大部分に亘って形成されている。アームレスト10は、設置部18と本体部12の前面との間や設置部18と本体部12の側面との間と比べて、設置部18と本体部12の後面との間を広くしてある。アームレスト10は、本体部12における設置部18より後側の領域に、乗員の腕が置かれる部分(主要部25(
図3参照))が設定されている。
【0022】
図4に示すように、カップホルダ20は、上方に開口する箱部分20aと、この箱部分20aの開口縁に外方へ延出するように形成された鍔部分20bとを備えている。カップホルダ20は、例えばポリプロピレン(PP)やアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)などの樹脂成形品を用いられる。カップホルダ20は、箱部分20aを設置部18の内側に嵌め合わせると共に、鍔部分20bを設置部18の開口縁を構成する本体部12の上面に重ね合わせて設置される。なお、アームレスト10は、本体部12に巻き掛けた表皮材を設置部18の内側に引き込むように構成してあり、本体部12とカップホルダ20との間に表皮材を挟んでいる。
【0023】
図2および
図4に示すように、アームレスト10は、本体部12に埋め込んで設置された補強材22,24を備えている。補強材22,24としては、剛性を有する合成樹脂や金属などからなるものが採用され、アームレスト10に加わる荷重を受け止め可能に構成される。実施形態のアームレスト10は、シートバックに連結するヒンジ部が設けられた第1補強材22と、第2補強材24とを備えている。第2補強材24は、後部が本体部12の後部に設置された第1補強材22に繋がると共に、前部が設置部18を囲う枠状に形成されている。
【0024】
図4および
図5に示すように、アームレスト10は、チップ14からなる本体部12が、部位に応じて見掛け密度が異なるように構成されている。本体部12は、設置部18の開口縁に対応して設けられた保護部26と、乗員の腕が載置される箇所に対応して設けられた主要部25との間で、見掛け密度が異なって構成されている。具体的には、保護部26が、主要部25よりも見掛け密度が高く設定される。保護部26は、設置部18の四方の開口縁のうち、主要部25に隣接する後側開口縁に最低限設けるとよい。主要部25に隣接して設置部18の後側開口縁に設けられる保護部(区別する場合は後保護部26aという。)は、設置部18を囲む本体部12の外縁のうち、設置部18の開口縁から最も離れた外縁との間に配置されることになる。換言すると、実施形態では、設置部18が本体部12の前側に寄せて配置されて、設置部18の後側に主要部25が設定されているので、設置部18の後側開口縁と本体部12の後縁との間に、後保護部26aが設けられている。また、本体部12は、設置部18の前側開口縁に沿って設けられた保護部(区別する場合は前保護部26bという。)と、設置部18の左右の開口縁にそれぞれに沿って設けられた保護部(区別する場合は横保護部26cという。)を備えている。このように、実施形態の本体部12は、設置部18の開口縁全周が、保護部26で囲まれている。
【0025】
図3に示すように、保護部26は、設置部18に嵌め合わせて設置されるカップホルダ20の外周縁を構成する鍔部分20bが置かれる本体部12の上面部位に対応して設けられている。保護部26は、設置部18の開口縁から本体部12の上面に沿って10mm~40mmの範囲に亘って設けることが好ましく、より好ましくは20mm~30mmである。保護部26は、設置部18の開口縁の一辺と当該一辺に並ぶ本体部12の外縁との間が前記上限値よりも狭い場合、横保護部26cのように、該一辺から本体部12の外縁までに亘って設けることが好ましい。
【0026】
図4および
図5に示すように、保護部26は、本体部12の上面から下方に向けた所要範囲に亘って形成されている。後保護部26aおよび前保護部26bは、本体部12の上面と下面との間の厚みよりも薄い範囲で設けられている。横保護部26cは、本体部12の上面から下面までの厚み全体に亘って設けられている。ここで、後保護部26aおよび前保護部26bのように、保護部26を本体部12の厚みよりも薄い範囲で設ける場合、本体部12の上面から下方へ向けた5mm~40mmの範囲で保護部26を設けることが好ましい。設置部18の開口縁の一辺と当該一辺に並ぶ本体部12の外縁との間が前記上限値よりも広い場合、後保護部26aおよび前保護部26bのように、保護部26を本体部12の厚みより薄く設けることが好ましい。また、設置部18の開口縁の一辺と当該一辺に並ぶ本体部12の外縁との間が前記上限値よりも狭い場合、横保護部26cのように、保護部26を本体部12の上面から下面までの厚み全体に亘って設けることが好ましい。
【0027】
前記本体部12は、主要部25の見掛け密度を0.04g/cm3~0.12g/cm3の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.05g/cm3~0.10g/cm3である。また、本体部12は、主要部25の見掛け密度よりも高い保護部26の見掛け密度を、0.08g/cm3~0.40g/cm3の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.10g/cm3~0.30g/cm3である。本体部12は、主要部25および保護部26が前述した見掛け密度の範囲であると、主要部25および保護部26を適度な硬さに保ちつつ、アームレスト10を軽量化できるので好ましい。本体部12は、主要部25の硬さ(JIS K6400-2(D法)に規定する25%圧縮時の硬さ)が、60N~240Nの範囲にあることが好ましく、より好ましくは80N~200Nの範囲である。本体部12は、保護部26の硬さが、100N~350Nの範囲にあることが好ましく、より好ましくは120N~270Nの範囲である。このように、本体部12は、保護部26が主要部25よりも硬くなるように構成されている。主要部25は、前述した硬さの範囲であると、主要部25のクッション性など、腕を受け止める適度な作用を得ることができるので好ましい。また、保護部26は、主要部25よりも硬い前述した硬さの範囲にあると、カップホルダ20の鍔部分20bの下への物品等の潜り込み防止や鍔部分20bの支持などの適度な作用が得られるので好ましい。なお、主要部25および保護部26は、全体を同じ見掛け密度(硬さ)としても、部位に応じて見掛け密度(硬さ)を変えても、何れであってもよい。
【0028】
本体部12の見掛け密度は、0.05g/cm3~0.15g/cm3の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.06g/cm3~0.11g/cm3である。本体部12全体の見掛け密度が、前述した範囲にあることで、アームレスト10の軽量化と、主要部25および保護部26の適度な硬さの形成とを両立できるので好ましい。本体部12の見掛け密度が前記下限値よりも軽くなるように設定すると、適度な硬さの保護部26を得ることが難しくなり、本体部12の見掛け密度が前記上限値よりも大きいと重くなるので好ましくない。このように、本体部12は、本体部12の重さと、主要部25の硬さと、保護部26の硬さとが、相関しており、これらすべてを充足するように設定することが重要である。
【0029】
本体部12は、保護部26と主要部25との見掛け密度の差(保護部26の見掛け密度-主要部25の見掛け密度)が、0.015g/cm3~0.15g/cm3の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.02g/cm3~0.13g/cm3である。また、本体部12は、保護部26と主要部25との硬さの差(保護部26の硬さ-主要部25の硬さ)が、30N~200Nの範囲であることが好ましく、より好ましくは40N~160Nである。本体部12は、保護部26と主要部25との物性の差が前述のようであると、主要部25と物性を変えた保護部26を設ける意義が際立つので好ましい。
【0030】
図4および
図5に示すように、本体部12は、保護部26および主要部25に加えて、該本体部12の外縁に対応して設けられた補強部28を備えている。補強部28は、主要部25よりも見掛け密度が高く設定される。補強部28は、本体部12の前縁、後縁および左右の側縁に設けられている。保護部26は、設置部18の開口縁を強化する構成であることに対し、補強部28は、本体部12の外周縁を強化するものである。設置部18の前側開口縁および本体部12の前縁の間は比較的狭いので、本体部12の前縁に設けられた補強部28と前保護部26bとが一体化している。同様に、本体部12の左側縁に設けられた補強部28は、設置部18の左側の開口縁に設けられた横保護部26cに連なって一体化しており、本体部12の右側縁に設けられた補強部28は、設置部18の右側の開口縁に設けられた横保護部26cに連なって一体化している。補強部28は、本体部12の外縁に、該本体部12の上面から下面までの厚み全体に亘って設けられている。
【0031】
前記本体部12は、主要部25の見掛け密度よりも高い補強部28の見掛け密度を、0.08g/cm3~0.40g/cm3の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは0.10g/cm3~0.30g/cm3である。本体部12は、補強部28の硬さが、100N~350Nの範囲にあることが好ましく、より好ましくは120N~270Nの範囲である。このように、本体部12は、補強部28が主要部25よりも硬くなるように構成されている。保護部26および補強部28は、見掛け密度および硬さが同じでも異なっていてもよく、実施形態では、保護部26および補強部28が見掛け密度および硬さを同じにしてある。
【0032】
なお、図において、説明の便宜上、主要部25と保護部26および補強部28との境界を明確に表記してあるが、主要部25と保護部26との間で見掛け密度が徐々に変化してもよく、同様に、主要部25と補強部28との間で見掛け密度が徐々に変化してもよい。
【0033】
本体部12は、設置部18、主要部25、保護部26および補強部28が、単一の成形型30(
図7参照)による型成形によって設けられる。
図4に示すように、主要部25と後保護部26aとの境界には、本体部12における設置部18が開口する上面に開口するように、該本体部12の型成形に由来するスリット12aが設けられている。スリット12aは、後述する堰部44(
図7参照)によって本体部12の型成形時に形成される前後の開口幅が狭い有底の溝である。そして、後保護部26aと主要部25の物性(見掛け密度および硬さ)が、スリット12aを前後に挟んで非線形的に変化している。
【0034】
次に、アームレスト10を製造する成形型30について説明する。
図6に示すように、成形型30は、設置部18を含む本体部12の上面、前後および側面の形状に応じて凹凸する型面を有する下型32と、本体部12の下面の形状に応じた型面を有する上型34とを有している。成形型30は、上型34と下型32とが相対的に開閉可能に構成される。
図8に示すように、成形型30には、上型34と下型32との間に本体部12の形状に応じたキャビティ36が画成される。また、成形型30は、下型32に設けた供給部(図示せず)を介してキャビティ36に水蒸気を供給し得る水蒸気供給手段(図示せず)を備えると共に、上型34に設けた排気部(図示せず)から排気可能となっている。なお、成形型30は、上下反転した状態でアームレスト10の本体部12を成形する。
【0035】
図6に示すように、下型32は、本体部12の上面を成形する第1外型面38と、第1外型面38と交差するように立ち上がり、本体部12の周面(上面と交差する面)を成形する第2外型面40とを備えている。下型32は、第1外型面38がキャビティ36の底面となり、第2外型面40がキャビティ36の側面となる。また、下型32は、本体部12の上面に開口する凹状に形成される設置部18を成形する内型面42を備えている。内型面42は、第1外型面38から立ち上がり、第2外型面40の内側に配置されている。下型32は、本体部12の後面を成形する後第2外型面40aと設置部18の後面を成形する後内型面42aとの間が、本体部12の前面を成形する前第2外型面40bと設置部18の前面を成形する前内型面42bとの間よりも広くなっている。下型32は、前第2外型面40bと前内型面42bとの間が、本体部12の側面を成形する横第2外型面40cと設置部18の側面を成形する横内型面42cとの間よりも広くなっている。
【0036】
図6に示すように、下型32は、後第2外型面40aと後内型面42aとの間に配置され、第1外型面38から後内型面42aと対面するように立ち上がる堰部44を備えている。堰部44は、後第2外型面40aよりも後内型面42aに近い位置に配置され、後内型面42aと堰部44との間が、堰部44と後第2外型面40aとの間よりも狭くなっている。下型32は、堰部44と後第2外型面40aとの間よりも、後内型面42aと堰部44との間にチップ14を高密度で充填可能に構成されている。
【0037】
前記堰部44は、厚みが1mm~5mmの範囲にある板状であることが好ましく、後内型面42aに並べて、左右方向に延在するように配置されている。堰部44は、後内型面42aから10mm~40mmの範囲で離して配置することが好ましく、より好ましくは20mm~30mmである。堰部44を、後内型面42aに対して10mmよりも近くに配置すると、堰部44と後内型面42aとの間に対して、チップ14の充填作業を行い難くなる。また、堰部44を後内型面42aから40mmより大きく離して配置すると、堰部44と後内型面42aとの間に、所要の見掛け密度を満たす量のチップ14を充填し難くなる。
図6(b)に示すように、堰部44は、左右の横第2外型面40cから離して配置され、堰部44の縁と横第2外型面40cとの間に隙間があくようになっている。なお、堰部44の縁と横第2外型面40cとの間は、25mm以上離すことが好ましい。
【0038】
図6(a)に示すように、堰部44は、第2外型面40および後内型面42aよりも低く形成されている。成形型30は、型閉じした際に、堰部44の頂部と上型34の型面との間に隙間があくようになっている。堰部44は、第1外型面38から5mm~40mmの高さで立ち上がることが好ましく、より好ましくは20mm~30mmである。堰部44を、第1外型面38から40mmよりも高くすると、堰部44と後内型面42aとの間に対して、チップ14の充填作業を行い難くなる。また、堰部44の第1外型面38からの立ち上がり高さを5mmよりも低くすると、堰部44と後内型面42aとの間に、所要の見掛け密度を満たす量のチップ14を充填し難くなる。
【0039】
次に、アームレスト10の製造方法について、
図6~
図9を主に参照して説明する。まず、チップ14を下型32内に供給する(
図6(a)参照)。なお、チップ14には、接着剤が予め付与してある。接着剤としては、ポリオール、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジクロロメタンなどの水蒸気によって硬化する湿気硬化型の接着剤を採用可能である。チップ14としては、ポリウレタンフォームが好ましい。チップ14の大きさは、3mm~8mmの範囲にあるとよい。例えばチップ14としては、軟質ポリウレタンフォームからなるスラブ発泡品または発泡モールド成形品を粉砕機に投入して粉砕したものを用いることができる。このような軟質フォームとしては、見掛け密度が、0.025g/cm
3~0.070g/cm
3の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.028g/cm
3~0.05g/cm
3の範囲である。また、軟質フォームとしては、硬さが、110N~480Nの範囲であることが好ましく、より好ましくは120N~250Nの範囲である。また、
図6~
図8では図示していないが、下型32には、チップ14の供給前または供給途中などの適宜タイミングで、本体部12に挿入する補強材22,24が設置される。
【0040】
図7に示すように、チップ14を下型32に供給する際に、後保護部26aとなる堰部44と後内型面42aとの間に、主要部25となる堰部44と後第2外型面40aとの間よりも高密度になるように多くのチップ14を詰め込む。同様に、前保護部26bとなる前内型面42bの前側および横保護部26cとなる横内型面42cの横側に、主要部25に相当する領域よりも高密度になるように多くのチップ14を詰め込む。また、四方の第2外型面40に沿わせて、主要部25に相当する領域よりも高密度になるように多くのチップ14を詰め込む。なお、
図7では、色の濃淡によりチップ14の詰め込み量を示し、濃い部分が薄い部分よりチップ14が多く詰め込まれている。
【0041】
チップ14を下型32に供給した後、下型32と上型34とを型閉じして、キャビティ36に水蒸気供給手段により水蒸気を供給し、チップ14に付与された接着剤を硬化する(
図8参照)。このように、チップ14を圧縮成形しつつ接着剤を硬化することで、圧縮成形されたチップ14が接着して、見掛け密度が部位に応じて調整された前述の本体部12が形成される。そして、本体部12を成形型30から取り出し(
図9参照)、表皮材を取り付けるなどの所要の処理を経て、アームレスト10が得られる。
【0042】
前記アームレスト10は、本体部12における設置部18の開口縁に設けられた保護部26によって、腕を支持する主要部25と比べて当該開口縁を撓み難くすることができる。これにより、設置部18の開口縁が押し込み等により変形することに起因して、指やコイン等の小物が設置部18と設置部18に設置されたカップホルダ20との間に入り込むことを防止できる。特に、設置部18の後側開口縁が、クッション性を有する主要部25と隣り合っているが、該後側開口縁に対応して後保護部26aが設けてあるので、後保護部26aによって主要部25から設置部18内への侵入を防止できる。
【0043】
主要部25と後保護部26aとの境界に、本体部12における設置部18が開口する上面に開口するように、該本体部12の型成形に由来するスリット12aを設けるためには、スリット12aを成形する堰部44が必要になる。すなわち、本体部12を型成形する際に、堰部44を用いて、後保護部26aに対応する領域と主要部25に対応する領域でチップ14の充填量を簡単に変えることができる。従って、後保護部26aに対応する領域に多くのチップ14を詰め込んで見掛け密度を上げることで、主要部25よりも適度に硬い後保護部26aを形成することができる。
【0044】
前記アームレスト10は、保護部26がカップホルダ20の鍔部分20bが置かれるように、本体部12の上面に設けられているので、比較的撓み難い保護部26によって、カップホルダ20の鍔部分20bを支持することができる。これにより、カップホルダ20を、本体部12に対して適切な位置に設置することができ、箱部分20aに飲料を収納した際に飲料を安定して保持することができる。
【0045】
前記アームレスト10は、後保護部26aおよび前保護部26bが、本体部12の上面から該本体部12の上下の厚みよりも薄い範囲に設けられている。これにより、見掛け密度が比較的高い後保護部26aおよび前保護部26bの形成によって、本体部12が硬くなり過ぎることを防止できる。特に、後保護部26aは、乗員が腕を載せる主要部25の隣に設けられるので、後保護部26aを本体部12の上下の厚み全体に亘って形成しないことで、主要部25の好適なクッション性への悪影響を抑えることができる。
【0046】
前記製造方法および成形型30によれば、設置部18の後面を形作る後内型面42aに対面して堰部44を設け、後内型面42aと堰部44との間に、後内型面42aと該後内型面42aに対面する後第2外型面40aとの間よりも狭い空間を作っている。後内型面42aと堰部44との間に区画された比較的狭い空間に、チップ14を充填するので、チップ14を圧縮させるように押し込み易い。また、圧縮して詰め込んだチップ14が離散することを、堰部44で阻むことができる。このように、必要な量のチップ14を、設置部18の後側開口縁に対応する領域に充填することができるので、クッション性が要求される主要部25に隣り合わせて、比較的硬い後保護部26aを、狙った物性で安定して簡単に形成できる。
【0047】
前記製造方法および成形型30によれば、堰部44を後第2外型面40aよりも後内型面42aに近い位置に配置して、堰部44と後第2外型面40aとの間よりも堰部44と後内型面42aとの間を狭く設定している。これにより、堰部44と後第2外型面40aとの間よりも堰部44と後内型面42aとの間に、より多くのチップ14を詰め込み易く、比較的硬い後保護部26aを、狙った物性で安定して簡単に形成できる。
【0048】
前記製造方法および成形型30によれば、堰部44が第2外型面40よりも低くなっているので、堰部44と後内型面42aとの間にチップ14を詰め込む際に、堰部44が邪魔になり難い。従って、堰部44と後内型面42aとの間が狭くても、チップ14の詰め込み作業を行い易くすることができる。
【0049】
次に、実施例および比較例の本体部を、前述の実施形態と同じ形状および製造方法で成形し、得られた本体部における後保護部および主要部の見掛け密度と硬さとを測定した。本体部の成形に用いる成形型は、キャビティの体積が、12120cm3である。また、実施例の本体部を成形する成形型の下型には、後内型面から30mm離した位置に、厚さ2mmの堰部が、第1外型面から30mmの高さで立ち上がるように設けられている。これに対して、比較例の本体部を成形する成形型の下型には、堰部が設けられていない。チップは、軟質ポリウレタンフォームからなるスラブ発泡品を粉砕機に投入して粉砕したものであり、その大きさが3mm~8mmの範囲にある。後保護部に対応する領域(後内型面と堰部との間:実施例)と、主要部に対応する領域(堰部と後第2外型面との間:実施例)のそれぞれに充填するチップの見掛け密度および硬さは、表1および表2に示す通りである。また、実施例および比較例について、キャビティへのチップの充填量は、表1および表2に示す通りである。表1および表2の充填見掛け密度および充填率は、以下のように算出している。
充填見掛け密度=充填したすべてのチップの充填重量/キャビティの体積
充填率=充填したすべてのチップの体積/キャビティの体積
【0050】
チップの充填量の評価は、充填見掛け密度が0.05g/cm3~0.15g/cm3の範囲にあるときを「〇」とし、この範囲から外れているときを「×」とした。特に、充填見掛け密度が0.06g/cm3~0.11g/cm3の範囲にあるときを「◎」と評価する。なお、「〇」の範囲が、体積12120cm3のキャビティに対して、チップの充填重量600g~1800gの範囲に対応し、「◎」の範囲が、チップの充填重量700g~1300gの範囲に対応する。チップの充填量の評価を表1および表2に示す。
【0051】
得られた本体部の後保護部から、30mm角のブロック状の試験片を切り出し、この試験片の重量を測定して見掛け密度を算出すると共に、硬さを測定した。得られた本体部の主要部から、30mm角のブロック状の試験片を切り出し、この試験片の重量を測定して見掛け密度を算出すると共に、硬さを測定した。なお、硬さは、JIS K6400-2(D法)に基づいて測定した25%圧縮時の硬さである。その結果を表1および表2に示す。
【0052】
主要部の見掛け密度の評価は、見掛け密度が0.04g/cm3~0.12g/cm3の範囲にあるときを「〇」とし、この範囲から外れているときを「×」とした。特に、見掛け密度が0.05g/cm3~0.10g/cm3の範囲にあるときを「◎」と評価する。主要部の硬さの評価は、硬さが60N~240Nの範囲にあるときを「〇」とし、この範囲から外れているときを「×」とした。特に、硬さが80N~200Nの範囲にあるときを「◎」と評価する。その結果を表1および表2に示す。
【0053】
後保護部の見掛け密度の評価は、見掛け密度が0.08g/cm3~0.40g/cm3の範囲にあるときを「〇」とし、この範囲から外れているときを「×」とした。特に、見掛け密度が0.10g/cm3~0.30g/cm3の範囲にあるときを「◎」と評価する。後保護部の硬さの評価は、硬さが100N~350Nの範囲にあるときを「〇」とし、この範囲から外れているときを「×」とした。特に、硬さが120N~270Nの範囲にあるときを「◎」と評価する。その結果を表1および表2に示す。
【0054】
後保護部と主要部との見掛け密度の差の評価は、見掛け密度の差が0.015g/cm3~0.15g/cm3の範囲にあるときを「〇」とし、この範囲から外れているときを「×」とした。特に、見掛け密度の差が0.02g/cm3~0.13g/cm3の範囲にあるときを「◎」と評価する。後保護部と主要部との硬さの差の評価は、硬さの差が30N~200Nの範囲にあるときを「〇」とし、この範囲から外れているときを「×」とした。特に、硬さの差が40N~160Nの範囲にあるときを「◎」と評価する。その結果を表1および表2に示す。
【0055】
総合評価は、チップの充填見掛け密度、主要部の硬さおよび後保護部の硬さの3つの指標の全てが「◎」である場合を「◎」とし、3つの指標のうちいずれも「×」がなく1つでも「〇」がある場合を「〇」とする。チップの充填見掛け密度、主要部の硬さおよび後保護部の硬さの3つの指標のうち、1つでも「×」がある場合は、総合評価を「×」とする。その結果を表1および表2に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
表1に示す実施例1~7から判るように、堰部があることで、比較的小さい充填見掛け密度で、後保護部の見掛け密度および硬さを高くすることができる。また、実施例1~7によれば、主要部の硬さと後保護部の硬さの差を大きくすることができることが確認できる。このように、実施例の本体部は、全体として軽量であるものの、補強として求められる適度な硬さを有する後保護部と、腕置きとして求められる適度な柔軟性を有する主要部とを、隣り合わせて形成されていることが判る。比較例1および2のように、堰部がないと、実施例と同等の充填見掛け密度で本体部を成形しても、適度な硬さの後保護部を得ることができない。また、堰部がない比較例3および4のように、チップの充填量を非常に多くすることで、後保護部を硬くすることは可能であるが、この場合、本体部が重くなると共に、主要部が硬くなり過ぎる問題がある。そして、比較例1~4によれば、堰部がないと、主要部の硬さと後保護部の硬さの差が小さくなってしまうことが判る。
【0059】
表1の実施例7に示すように、堰部があることで、後保護部に対応する領域(後内型面と堰部との間)と、主要部に対応する領域(堰部と後第2外型面との間)とで、異なる物性(見掛け密度や硬さ)のチップを振り分けて充填することが可能であることが判る。そして、後保護部に対応する領域に対して、主要部に対応する領域に充填するチップよりも硬いチップを充填することで、後保護部をより硬くすることができる。このようにすることで、本体部の重量を増加することなく、また、主要部が硬くなり過ぎることを防止しつつ、後保護部の硬さを向上することができる。
【0060】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)実施形態では、設置部に設置する機能部材としてカップホルダを挙げたが、これに限らず、コインボックスなどの小物入れやスイッチボックスなどの電装部品等、その他の部材であってもよい。
(2)実施形態では、堰部を1枚の板状体で構成したが、これに限らず、複数の堰部を直列するように並べる構成であってもよい。なお、複数の堰部を並べる場合、隣り合う堰部の間を10mm以下にすることが好ましい。
(3)本開示は、リアシートに設置するアームレストに限らず、フロントシートやドアに設置するアームレストにも適用可能である。
(4)保護部は、全体を同じ密度や硬さで構成する実施形態に限らず、部位によって密度や硬さなどの物性を変更してもよい。
(5)補強部は、全体を同じ密度や硬さで構成する実施形態に限らず、部位によって密度や硬さなどの物性を変更してもよい。例えば、補強部として、本体部における支軸やヒンジ近傍などの特に強度が求められる部位に対応して設けられた特別補強部と、特別補強部以外の一般補強部とを設け、特別補強部を、一般補強部よりも見掛け密度が高く設定する構成などであってもよい。例えば、一般補強部の見掛け密度を0.08g/cm3~0.15g/cm3とし、特別補強部の見掛け密度を0.15g/cm3~0.40g/cm3に設定するなど、適宜変更が可能である。
(6)本体部の部位に応じて、硬さが異なるチップを用いてもよい。例えば、本体部を成形する際に、内型面と堰部との間(保護部に対応する領域)に、外型面と堰部との間(主要部に対応する領域)に詰め込むチップよりも硬いチップを詰め込むようにするとよい。このようにすることで、得られる保護部の硬さを向上することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 アームレスト,12 本体部,12a スリット,14 チップ,18 設置部,
20 カップホルダ(機能部材),25 主要部,26 保護部,26a 後保護部,
30 成形型,36 キャビティ,38 第1外型面,40 第2外型面,
40a 後第2外型面(外型面),42 内型面,42a 後内型面(内型面),
44 堰部