IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 本田技研工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料電池システム 図1
  • 特許-燃料電池システム 図2
  • 特許-燃料電池システム 図3
  • 特許-燃料電池システム 図4
  • 特許-燃料電池システム 図5
  • 特許-燃料電池システム 図6A
  • 特許-燃料電池システム 図6B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20241206BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20241206BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241206BHJP
   B60L 58/40 20190101ALN20241206BHJP
   B60L 50/75 20190101ALN20241206BHJP
   B60L 58/14 20190101ALN20241206BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 A
H02J7/00 303E
B60L58/40
B60L50/75
B60L58/14
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023024894
(22)【出願日】2023-02-21
(65)【公開番号】P2024118552
(43)【公開日】2024-09-02
【審査請求日】2023-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】高谷 清二
(72)【発明者】
【氏名】松下 正典
(72)【発明者】
【氏名】茅野 守男
(72)【発明者】
【氏名】清水 研一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】山中 優
(72)【発明者】
【氏名】大島 智
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貴春
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102344(JP,A)
【文献】特開2014-056771(JP,A)
【文献】特開2021-180557(JP,A)
【文献】特開2021-057128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
H02J 7/00
B60L 50/75
B60L 58/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの電力と燃料電池の電力とを外部負荷に供給する外部給電機能を有する燃料電池システムにおいて、
前記外部負荷に前記電力が供給される外部給電中であるとき、所定の発電効率で発電するように前記燃料電池の発電を制御し、前記燃料電池の発電電力のうち消費されない余剰電力を前記バッテリに供給して前記バッテリを充電する発電制御部を備え、
前記発電制御部は、前記外部給電中において、前記バッテリの充電率が第1所定値以上になると前記燃料電池の発電を停止し、前記バッテリの前記電力が前記外部負荷に供給されるように前記バッテリの出力を制御し、前記バッテリの前記充電率が前記第1所定値より小さい第2所定値以下になったら前記燃料電池の発電を再開し、
前記発電制御部はさらに、前記バッテリの前記電力と前記燃料電池の前記電力のうちの少なくとも1つの電力を用いて駆動される補機が消費可能な電力と前記バッテリの前記充電率とに基づき、前記燃料電池の発電電力の上限値を決定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムにおいて、
前記発電制御部は、前記補機が消費可能な電力と前記外部負荷の最大消費電力とに基づき、前記燃料電池の発電電力の下限値を決定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムにおいて、
前記発電制御部は、前記燃料電池の発電目標値を前記上限値と前記下限値との間に設定することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか1項に記載の燃料電池システムにおいて、
前記所定の発電効率は、前記燃料電池の最大発電効率であることを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータにより駆動される車両に搭載される燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車両に搭載された燃料電池および蓄電装置の電力を、車両外部の機器などの外部負荷に供給するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-56771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池の発電効率は所定の発電量範囲において最大となるため、外部負荷からの要求電力がその発電量範囲以下であるとき、効率的な発電制御が困難になる。一方で、発電効率を優先して要求電力以上の電力を発電しようとすると、要求電力が急減したときなどに発電電力の余剰分が蓄電装置側に過剰に流入し蓄電装置を劣化させるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様である燃料電池システムは、バッテリの電力と燃料電池の電力とを外部負荷に供給する外部給電機能を有する。燃料電池システムは、外部負荷に電力が供給される外部給電中であるとき、所定の発電効率で発電するように燃料電池の発電を制御し、燃料電池の発電電力のうち消費されない余剰電力をバッテリに供給してバッテリを充電する発電制御部を備える。発電制御部は、外部給電中において、バッテリの充電率が第1所定値以上になると燃料電池の発電を停止し、バッテリの電力が外部負荷に供給されるようにバッテリの出力を制御し、バッテリの充電率が第1所定値より小さい第2所定値以下になったら燃料電池の発電を再開する。発電制御部はさらに、バッテリの電力と燃料電池の電力のうちの少なくとも1つの電力を用いて駆動される補機が消費可能な電力とバッテリの充電率とに基づき、燃料電池の発電電力の上限値を決定する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、燃料電池の効率的な発電制御を良好に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る燃料電池システムを有する車両システムの一例を示す概略構成図。
図2】外部給電システムとその周辺装置との接続関係を示す図。
図3】燃料電池の発電効率と発電電力との対応関係の一例を示す図。
図4】発電目標値の決定方法を説明するための図。
図5図1の電力制御部で実行される処理の一例を示すフローチャート。
図6A図1の電力制御部の動作を説明するための図。
図6B図1の電力制御部の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
発明の実施の形態に係る車両システムを搭載する燃料電池車両では、燃料電池(Fuel Cell:以降FCと呼ぶことがある)で発電する電力(FC電力)と、車両システムの二次電池に蓄電された電力(バッテリ電力)とのうち少なくとも一方を用いて、走行用のモータを駆動する。また、走行用のモータから回生時に発生する電力(回生電力)を車両システムの二次電池に蓄電する。さらに、車両システムは、燃料電池車両に設けられた給電口に接続された電動の機器(以下、外部負荷と呼ぶ。)にFC電力とバッテリ電力とのうち少なくとも一方を供給する外部給電機能を有する。このような車両システムの詳細について、以下に図面を参照して説明する。
【0009】
<燃料電池車両>
図1は、本実施形態に係る燃料電池システム10を有する車両システムの一例を示す概略構成図である。車両システムは、モータ11により駆動される電動車両の一例としての燃料電池車両に搭載される。車両システムは、少なくとも走行用のモータ11と、駆動輪12と、ブレーキ装置13と、車両センサ20と、バッテリシステム(蓄電装置)40と、制御装置50と、外部給電システム60と、FCユニット100と、変換器102と、BTVCU(Battery Voltage Control Unit)103と、を備える。FCユニット100と、変換器102およびBTVCU103との間に、逆流防止のためダイオード101が配置されている。燃料電池システム10は、車両システムの一部を構成し、バッテリシステム40と、制御装置50と、外部給電システム60と、FCユニット100と、BTVCU103とを含む。ブロック間を結ぶ実線は電気的接続を示し、制御装置50とブロックを結ぶ破線は信号の向きを例示する。
【0010】
<モータ>
モータ11は、例えば、三相交流電動機である。モータ11のロータは、駆動輪12に連結される。モータ11は、FCユニット100により発電されたFC電力と、バッテリシステム40に蓄電されたバッテリ電力とのうち少なくとも一方を用いて、駆動輪12に駆動力を出力する(力行動作)。また、モータ11は、燃料電池車両の減速時に燃料電池車両の運動エネルギーを用いて発電する(回生動作)。
【0011】
<ブレーキ装置>
ブレーキ装置13は、一例として、ブレーキキャリパー、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダ、およびシリンダに油圧を発生させる電動モータ(いずれも図示省略)を備える。ブレーキ装置13は、ブレーキペダルの操作によって発生した油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置13は、上述した構成に限らず、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0012】
<車両センサ>
車両センサ20は、一例として、アクセル開度センサ、車速センサ、およびブレーキ踏量センサ(いずれも図示省略)を備える。アクセル開度センサは、運転者による加速指示を受け付ける操作子の一例であるアクセルペダルに取り付けられ、アクセルペダルの操作量を検出し、アクセル開度として制御装置50に出力する。車速センサは、例えば、各車輪に取り付けられた車輪速センサおよび速度計算機(いずれも図示省略)を備え、車輪速センサにより検出された車輪速を統合して燃料電池車両の速度(車速)を導出し、制御装置50に出力する。ブレーキ踏量センサは、ブレーキペダルに取り付けられ、ブレーキペダルの操作量を検出し、ブレーキ踏量として制御装置50に出力する。
【0013】
<変換器>
変換器102は、例えば、双方向の直流電圧/交流電圧変換器である。変換器102の直流側端子は、直流リンクDLに接続されている。直流リンクDLには、BTVCU103を介してバッテリシステム40が接続されている。変換器102は、BTVCU103により昇圧された直流電圧を三相交流電圧に変換してモータ11に供給する。また、変換器102は、モータ11の回生動作により発電された交流電圧を直流電圧に変換して直流リンクDLに出力する。回生動作により得られる電圧を回生電圧と呼んでもよい。
【0014】
<BTVCU>
BTVCU103は、例えば、昇降圧型の直流電圧変換器を有する。BTVCU103は、バッテリシステム40から供給される直流電圧を昇圧した直流電圧を直流リンクDLに出力する。また、BTVCU103は、モータ11による回生電圧、または、FCユニット100から出力された直流電圧を降圧してバッテリシステム40に出力する。FCユニット100から出力される電圧をFC電圧と呼んでもよい。
【0015】
<バッテリシステム>
バッテリシステム40は、一例として、バッテリ41と、バッテリセンサ42と、温度調節部43と、SOC算出部44を備える。
【0016】
バッテリ41は、例えば、リチウムイオン電池等の二次電池である。バッテリ41は、一例として、モータ11の回生動作により得られた回生電力またはFCユニット100の発電動作により得られたFC電力を蓄電(充電)し、燃料電池車両の走行、および後述する補機を作動させるために放電を行う。
【0017】
バッテリセンサ42は、一例として、電流センサ、電圧センサ、および温度センサ等(いずれも図示省略)を備える。電流センサ、電圧センサ、および温度センサは、それぞれバッテリ41の電流値、電圧値、および温度を検出する。バッテリセンサ42は、検出した電流値、電圧値、および温度等を示す信号を制御装置50に出力する。
【0018】
温度調節部43は、例えば、BTVCU103を介してバッテリ41から供給される電力を用いてバッテリ41を加熱または冷却する。温度調節部43は、一例として、バッテリセンサ42により検出されるバッテリ41の温度が所定温度範囲に収まるように、不図示のバッテリECU(Electronic Control Unit)によって制御される。
【0019】
SOC算出部44は、バッテリセンサ42の出力に基づいて、バッテリ41のSOC(State Of Charge:バッテリ充電率)を算出する。SOC算出部44は、算出したSOCを示す信号を、制御装置50に出力する。
【0020】
<FCユニット>
FCユニット100は、燃料電池を含む。燃料電池は、燃料ガスに燃料として含まれる水素と、空気に酸化剤として含まれる酸素とが反応することによって発電する。実施の形態では、FCユニット100で発電したFC電力が、上記直流リンクDLに出力される。これにより、FCユニット100からのFC電力が、変換器102を介してモータ11に供給されたり、BTVCU103を介してバッテリシステム40に供給されたりする。バッテリシステム40に供給されたFC電力は、バッテリ41に蓄電される。
【0021】
<外部給電システム>
外部給電システム60は、外部負荷LDと燃料電池システム10とを電気的に接続するための給電口61を備える。外部給電システム60には、FCユニット100からのFC電力とバッテリシステム40からのバッテリ電力とが入力される。外部給電システム60は、給電口61に接続された外部負荷LDにFC電力とバッテリ電力とのうち少なくとも一方を供給する外部給電機能を有する。外部給電システム60は、給電口61に外部負荷LDのコネクタ(不図示)が接続されると、制御装置50(電力制御部53)に対して後述する外部給電要求信号を出力する。なお、外部給電システム60は、給電口61に接続された外部負荷LDとコネクタを介して通信を確立し、その通信を介して外部負荷LDの機器情報(機種情報や定格消費電力(最大消費電力)など)を取得する。外部給電システム60は、機器情報を制御装置50の記憶部(不図示)に記憶する。また、外部給電システム60は、外部電源(不図示)から供給される交流電圧を直流電圧に変換してバッテリシステム40に供給してバッテリ41を充電する外部充電機能を備えていてもよい。その場合、給電口61は外部電源と燃料電池システム10とを電気的に接続する充電口としも機能する。
【0022】
<制御装置>
制御装置50は、CPU(マイクロプロセッサ)とROM,RAM等の記憶部とを含み、必要に応じて、タイマ回路、A/D変換器、D/A変換器等の入出力インタフェースを有する。なお、制御装置50は、1つの制御部のみから構成されるものに限らず、モータ11、FCユニット100、バッテリシステム40、外部給電システム60およびBTVCU103等に含まれる複数の制御部から構成してもよい。
【0023】
制御装置50は、FCユニット100の状態、バッテリ41の状態、外部給電システム60の状態、およびモータ11の状態の他、不図示の各種スイッチおよび各種センサ等からの入力(負荷要求)に基づき決定した燃料電池車両全体として車両システムに要求される負荷から、FCユニット100が負担すべき負荷と、バッテリシステム40が負担すべき負荷と、回生電源としてモータ11が負担すべき負荷との配分(分担)を調停しながら決定し、モータ11、変換器102、FCユニット100、バッテリシステム40およびBTVCU103に指令を送出する。
【0024】
上記制御装置50は、一例として、モータ制御部51と、ブレーキ制御部52と、電力制御部53とを備える。上述したように、モータ制御部51、ブレーキ制御部52、および電力制御部53は、それぞれ別体の制御部(例えば、モータECU、ブレーキECU、バッテリECU等)に置き換えてもよい。
【0025】
モータ制御部51は、一例として、車両センサ20の出力に基づいてモータ11に要求される駆動力を算出し、算出した駆動力を出力させるようにモータ11を制御する。
【0026】
ブレーキ制御部52は、一例として、車両センサ20の出力に基づいてブレーキ装置13に要求される制動力を算出し、算出した制動力を出力させるようにブレーキ装置13を制御する。
【0027】
電力制御部53は、一例として、車両センサ20の出力に基づいてバッテリシステム40およびFCユニット100に要求される総要求電力を算出する。電力制御部53は、例えば、アクセル開度と車速とに基づいてモータ11が出力すべきトルクを算出し、トルクとモータ11の回転数から求められる駆動軸要求電力と、補機等が要求する電力と、外部給電要求電力とを合計して総要求電力を算出する。補機は、バッテリ電力とFC電力のうちの少なくとも1つの電力を用いて駆動される。補機には、例えば、図2を用いて後述するエアポンプ(A/P)30等が含まれる。
【0028】
また、電力制御部53は、バッテリ41のSOCに基づいてバッテリ41の充放電要求電力を算出する。そして、電力制御部53は、上記総要求電力からバッテリ41の充放電要求電力を減算(放電側を正とする)し、FCユニット100に要求されるFC要求電力を算出し、算出したFC要求電力に相当する電力をFCユニット100に発電させる。
【0029】
図2は、外部給電システム60とその周辺装置との接続関係を示す図である。外部給電システム60は、給電口61(AC給電口61aおよびDC給電口61d)と、インバータ62とを備える。図2のコンタクタ104,106,107は、制御装置50の制御の下、外部給電システム60と、FCスタック110およびバッテリ41とを電気的に接続および切断する。FCVCU(Fuel Cell Voltage Control Unit)105は、例えば、昇圧型の直流電圧変換器を有する。FCVCU105は、制御装置50の制御の下、コンタクタ104を介してFCスタック110から入力される一次側(入力側)の電圧を後述する発電目標値に対応した電圧まで昇圧して二次側(出力側)に印加する。エアポンプ30は、補機の一つであり、FCユニット100により駆動制御されるモータ等を備え、酸化剤として酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気をFCスタック110に供給する。
【0030】
AC給電口61aおよびDC給電口61dのいずれかに外部負荷LDのコネクタが挿し込まれると、外部負荷LDと外部給電システム60とが電気的に接続される。コンタクタ107がオン(接続状態)であるとき、AC給電口61aまたはDC給電口61dに接続された外部負荷LDに対してFCユニット100からのFC電力とバッテリシステム40からのバッテリ電力を給電可能な状態となる。AC給電口61aおよびDC給電口61dは、外部負荷LDのコネクタの接続または切断を検出し、検出信号を制御装置50に出力する。インバータ62は、コンタクタ107とAC給電口61aとの間に設けられ、コンタクタ107を介して入力されるFC電力およびバッテリ電力を直流から交流に変換する。
【0031】
ところで、外部給電中においては、給電機に接続された外部負荷LDに極力長い時間給電できるように、効率的な発電制御を行う必要がある。図3は、FCユニット100(FCスタック110)の発電効率と発電電力との対応関係の一例を示す図である。図3に示すように、FCスタックは、発電電力P1から発電電力P2までの範囲で最大発電効率(以下、単に最大効率と呼ぶ。)EMに達している。以下、この範囲を最大効率発電範囲と呼ぶ。したがって、外部給電中は、FCスタックの発電電力Pが最大効率発電範囲内に収まるように発電を行うことが好ましい。
【0032】
一方、外部給電中にユーザが外部負荷LDの運転を突然停止するなどして、外部給電システム60と外部負荷LDとの電気的接続が急に遮断される場合がある。以下、このように外部給電システム60と外部負荷LDとの電気的接続が急に遮断されることを、負荷抜けと称する。負荷抜けが発生した場合、外部負荷LDに本来供給されるはずであった電力が行き場を失い、バッテリシステム40に流れ込む。このように負荷抜け時に行き場を失った余剰電力(以下、突発的余剰電力と呼ぶ。)は、その大きさによってはバッテリシステム40のバッテリ41を劣化や故障させるおそれがある。したがって、外部給電中においては、最大効率発電範囲内に収まるように、かつ、負荷抜け時の突発的余剰電力を燃料電池システム10が吸収(消費)できる範囲で、FCユニット100の発電制御を行う必要がある。本実施形態では、この点を考慮して、以下のように電力制御部53を構成する。なお、外部給電機能は、通常、燃料電池車両が停止しているとき(走行していないとき)に利用される機能であるので、外部給電中は外部給電システム60に回生電力は入力されないものとする。
【0033】
電力制御部53は、外部給電中であるとき、所定の発電効率(上述した最大効率発電範囲)で発電するように燃料電池の発電を制御する。また、電力制御部53は、FCスタック110の発電電力のうち燃料電池システム10において消費されない余剰電力をバッテリ41に供給してバッテリ41を充電する。
【0034】
電力制御部53は、外部給電中において、バッテリ41のSOCが充電限界値以上になると、FCスタック110の発電を停止するための発電停止指令をFCユニット100に出力する。これにより、バッテリ電力による給電が開始される。すなわち、バッテリ41の放電が開始される。
【0035】
その後、バッテリ41のSOCが放電限界値(<充電限界値)以下になると、電力制御部53は、FCスタック110の発電を開始するための発電開始指令をFCユニット100に出力する。これにより、FCスタック110の発電が再開される。
【0036】
充電限界値は、バッテリ41が満充電になったか否かを判定するための閾値である。満充電は、例えばSOCが100%の状態である。なお、バッテリ41の劣化防止の観点から、実際には、バッテリ41を満充電させないように、充電限界値には100%よりも小さい値(例えば80%)が設定される。放電限界値は、バッテリ41のみでの外部給電が不可になったか否かを判定するための閾値である。なお、バッテリ41の劣化防止の観点から、バッテリ41を完全放電させないように、放電限界値には0%よりも大きい値が設定される。
【0037】
また、電力制御部53は、外部給電中において、負荷抜け時に発生する突発的余剰電力を吸収可能なように発電目標値を決定し、その発電目標値に基づきFCスタック110の発電制御を行う。図4は、発電目標値(以下、目標発電電力とも呼ぶ。)の決定方法を説明するための図である。
【0038】
<発電上限値>
まず、電力制御部53は、バッテリ41のSOCに基づき、バッテリ41に充電可能な電力量(以下、BAT充電リミットと呼ぶ。)と、バッテリ41が放電可能な電力量(以下、BAT放電リミットと呼ぶ。)とを算出する。電力制御部53は、BAT充電リミットと、補機が消費可能な電力の合計値(以下、補機消費電力と呼ぶ。)とに基づき、FCスタック110の発電電力の上限値(以下、最大発電制限電力または発電上限値と呼ぶ。)を決定する。具体的には、電力制御部53は、補機消費電力とBAT充電リミットとを合算して発電上限値を算出する。FCスタック110の発電電力をこの発電上限値以下に抑えることで、給電負荷抜け時の突発的余剰電力を補機とバッテリ41とで吸収(消費)できる。
【0039】
<発電下限値>
次いで、電力制御部53は、BAT放電リミットと、補機消費電力量と、外部負荷LDの最大消費電力(以下、外部給電最大消費電力と呼ぶ。)とに基づき、FCスタック110の発電電力の下限値(以下、最低必要発電電力または発電下限値と呼ぶ。)を決定する。具体的には、電力制御部53は、補機消費電力量と外部給電最大消費電力との合算値からBAT放電リミットを減算して、発電下限値を算出する。BAT放電リミット以上の電力量がバッテリ41から放電されると、バッテリ41の劣化や故障を招くおそれがある。この発電下限値を下回らないようにFCスタック110の発電電力を制御することで、上記のような過放電によるバッテリ41の劣化や故障を防止できる。
【0040】
<発電目標値>
次いで、電力制御部53は、発電上限値と発電下限値と最大効率発電範囲とに基づき、FCスタック110の発電目標値を決定する。このとき、発電目標値は、その値が発電上限値と発電下限値とで規定される発電制限範囲と、最大効率発電範囲とのいずれにも含まれるように決定される。例えば、電力制御部53は、発電制限範囲と最大効率発電範囲とが重複する範囲のうちの最大値を発電目標値に決定する。
【0041】
発電目標値に決定すると、最後に、電力制御部53は、発電目標値を示す制御信号をFCユニット100に出力する。FCユニット100は、電力制御部53からの制御信号に基づいて、FCスタック110の発電電力が発電目標値になるように、FCスタック110の発電を制御する。発電目標値に基づき発電されたFCスタック110の発電電力と、BAT放電リミットとを合算した電力から補機消費電力を減算して得られる電力が、燃料電池システム10が外部負荷に供給可能な電力(以下、給電可能電力と呼ぶ。)となる。
【0042】
図5は、制御装置50の電力制御部53で実行される処理の一例を示すフローチャートである。図5の処理は、外部給電システム60のAC給電口61aまたはDC給電口61dにより外部負荷LDが接続されたことが検出されると、所定周期ごとに繰り返し実行される。まず、ステップS11にて、バッテリ41のSOCを取得する。より詳細には、バッテリシステム40からSOC算出部44により算出されたSOCを取得する。ステップS12にて、バッテリ41のSOCが充電限界値THよりも高いか否かを判定する。ステップS12で肯定されると、ステップS13で、FCユニット100に発電停止指令を出力して、FCスタック110の発電を停止する。なお、FCスタック110の発電を完全に停止させてしまうと発電の再開に時間を要するため、FCユニット100に最小限での発電を継続させるように、発電目標値をFCスタック110の最小発電電力に決定し、その発電目標値を示す信号をFCユニット100に出力してもよい。ステップS12で否定されると、ステップS14で、バッテリ41のSOCが放電限界値よりも低いか否かを判定する。ステップS14で否定されると、ステップS16に進む。ステップS14で肯定されると、ステップS15で、FCユニット100に発電開始指令を送信する。ステップS16で、発電目標値を決定し、ステップS17で、その発電目標値に基づく発電制御を行う。具体的には、その発電目標値を示す信号をFCユニット100に出力する。
【0043】
図6Aおよび図6Bは、電力制御部53の動作を説明するための図である。図6Aには、AC給電中、すなわち、AC給電口61aに接続された外部負荷LDに給電を行うときの電力制御部53の動作の一例が示されている。燃料電池車両のイグニッションスイッチ(不図示)がオフ状態(ACC(アクセサリ)電源はオン状態)であってAC給電口61aに外部負荷が接続された状態で、運転者等によってイグニッションスイッチがオンにされると、外部給電システム60は、制御装置50(電力制御部53)に外部給電要求信号を出力する。電力制御部53は、外部給電要求信号を受信すると、FCユニット100に発電開始指令を出力する。バッテリ41のSOCが充電限界値TH以下であるので、FCユニット100の発電電力がバッテリ41に供給され、バッテリ41が充電される(時点t11)。
【0044】
AC給電では外部負荷の定格消費電力が小さく、外部給電最大消費電力と補機消費電力との合算値が最大効率発電範囲の最低電力P1を下回るため、図6Aに示すように、FCスタック110にて最大効率での発電が行われると、余剰電力が発生する。その余剰電力がBTVCU103を介してバッテリ41に供給され、バッテリ41が充電される。その後、バッテリ41のSOCが充電限界値THに達すると、FCユニット100に発電停止指令を出力する(時点t12)。これにより、FCスタック110の発電が停止し、バッテリ41から外部負荷LDおよび補機への電力供給が開始される。したがって、時点t12以降において、バッテリ41のSOCが徐々に低下している。なお、図6Aの例では、時点t13においてイグニッションスイッチがオフにされているため、バッテリ41からの出力電力が時点t13以降において減少している。バッテリ41のSOCが放電限界値TLに達すると、電力制御部53は、FCユニット100に発電開始指令を出力する(時点t14)。これにより、FCスタック110の発電が再開される。以降、電力制御部53は同様の動作を繰り返す。その後、運転者等により外部給電の停止操作が行われると、例えば、イグニッションスイッチがオフ(ACC電源もオフ)にされると、外部給電システム60は、制御装置50(電力制御部53)に外部給電停止信号を出力する。電力制御部53は、外部給電停止信号を受信すると、FCユニット100に発電停止指令を出力する(時点t15)。
【0045】
図6Bには、DC給電中、すなわち、DC給電口61dに接続された外部負荷LDに給電を行うときの電力制御部53の動作の一例が示されている。燃料電池車両のイグニッションスイッチがオフ状態(ACC電源はオン状態)であってDC給電口61dに外部負荷LDが接続された状態で、運転者等によってイグニッションスイッチがオンにされると、外部給電システム60は、制御装置50(電力制御部53)に外部給電要求信号を出力する。電力制御部53は、外部給電要求信号を受信すると、FCユニット100に発電開始指令を出力する(時点t21)。
【0046】
DC給電では外部負荷LDの定格消費電力が大きく、外部給電最大消費電力と補機消費電力との合算値が最大効率発電範囲の最大電力P2を超える。そのため、FCスタック110の発電を最大効率発電範囲内に制限してしまうと、SOCが放電限界値TLに達しているバッテリ41から電力が引き出されてしまう。このようなバッテリ41の過放電を抑制するために、図6Bに示す例では、時点t21以降において、FCスタック110の発電電力が最大効率発電範囲を超えて出力されている。このとき、FCスタック110の発電電力が外部負荷LDおよび補機にてすべて消費されるため、余剰電力は発生しない。その結果、バッテリ41の充電は行われない。時点t22でイグニッションスイッチがオフにされると、補機消費電力が小さくなり、外部給電最大消費電力と補機消費電力量との合算値が最大効率発電範囲の最低電力P1を下回る。したがって、時点t22以降、FCスタック110にて最大効率での発電が行われるとともに、その発電電力の一部(余剰電力)がBTVCU103を介してバッテリ41に供給され、バッテリ41の充電が開始される。時点t23にて運転者等により外部給電の停止操作が行われるまでの動作は、図6AのAC給電の動作と同様であるため説明を省略する。
【0047】
以上説明した実施の形態によれば、以下のような作用効果を奏する。
(1) 燃料電池システム10は、バッテリ41の電力とFCスタック(燃料電池)110の電力とを外部負荷LDに供給する外部給電機能を有する。外部負荷LDに電力が供給される外部給電中であるとき、所定の発電効率(より詳細には、最大発電効率)で発電するようにFCスタック110の発電を制御し、FCスタック110の発電電力のうち消費されない余剰電力をバッテリ41に供給してバッテリを充電する発電制御部としての電力制御部53を備える。電力制御部53は、外部給電中において、バッテリ41の充電率が第1所定値(充電限界値)以上になるとFCスタック110の発電を停止し、バッテリ41の電力が外部負荷LDに供給されるようにバッテリ41の出力を制御し、充電率が第1所定値より小さい第2所定値(放電限界値)以下になったらFCスタック110の発電を再開する。これにより、燃料電池の効率的な発電制御を良好に実現できる。
【0048】
(2)電力制御部53は、エアポンプ30等の補機が消費可能な電力とバッテリ41の充電率(SOC)とに基づき、FCスタック110の発電電力の上限値(発電上限値)を決定する。また、電力制御部53は、補機が消費可能な電力と外部負荷LDの最大消費電力とに基づき、FCスタック110の発電電力の下限値(発電限値)を決定する。さらに、電力制御部53は、FCスタック110の発電目標値を発電上限値と発電上限値との間に設定する。これにより、突発的余剰電力を吸収可能な範囲で効率的な発電制御を行うことができる。
【0049】
上記実施の形態は、種々の形態に変形することができる。以下、変形例について説明する。上記実施形態では、エアポンプ30を補機の一例として挙げたが、補機には、燃料電池車両に搭載された、不図示の空調装置やFC冷却装置などが含まれてもよい。また、上記実施形態では、外部給電システム60が通信を介して外部負荷LDの機器情報を取得するようにしたが、機器情報の取得方法はこれに限定されない。
【0050】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明の特徴を損なわない限り、上述した実施の形態および変形例により本発明が限定されるものではない。上記実施の形態と変形例の1つまたは複数を任意に組み合わせることも可能であり、変形例同士を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 燃料電池システム、11 モータ、12 駆動輪、13 ブレーキ装置、20 車両センサ、102 変換器、103 BTVCU、40 バッテリシステム、50 制御装置、53 電力制御部、60 外部給電システム、100 FCユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B