(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレートベースの有核ポリプロピレンマスターバッチの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20241206BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20241206BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20241206BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C08J3/22 CES
C08K5/12
C08L23/10
B29B9/12
(21)【出願番号】P 2023055236
(22)【出願日】2023-03-30
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】202241019001
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】523089209
【氏名又は名称】ヒンドゥスタン ペトロリアム コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】パダダ,スリニバス ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カダム,プラビン ゴパル
(72)【発明者】
【氏名】チェリアン,ベネット
(72)【発明者】
【氏名】ボジャ,ラマチャンドララオ
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-128452(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0695337(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第103571039(CN,A)
【文献】特開2016-089012(JP,A)
【文献】特開2020-104410(JP,A)
【文献】特開2018-024824(JP,A)
【文献】特開2020-079351(JP,A)
【文献】特開2017-036386(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28
C08K
C08L
B29B 7/00-11/14;13/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1.5~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンと、
b)核剤と、
c)任意選択で、非イオン界面活性剤である分散剤と、を備え
、
前記核剤は、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)であり、0.1~60重量%の範囲の量で存在し、前記BHETAは、廃棄ポリエチレンテレフタレート(PET)の解重合から調製されることを特徴とする有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物。
【請求項2】
前記ポリプロピレンは単独重合体であり、40~99.9重量%の範囲の量で存在する
ことを特徴とする請求項1に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物。
【請求項3】
前記分散剤は、ツイン20、スパン60、スパン80、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、0.01~10重量%の範囲の量で存在する
ことを特徴とする請求項1に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物。
【請求項4】
i.ポリプロピレンを核剤と混和させ、任意選択で分散剤を添加して、反応混合物を形成するステップと、
ii.ステップi)で得られた前記反応混合物を、ホッパーを通して押出機に供給するステップと、
iii.前記押出機のフィードゾーンからダイゾーンまでの温度を維持するステップと、
iv.前記押出機から出てくる押出物を、水槽を使用して冷却した後、造粒するステップと、
v.ステップiv)で得られた顆粒を乾燥させて、ポリプロピレンマスターバッチを得るステップと、を備え
、
前記核剤は、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)であり、0.1~60重量%の範囲の量で存在することを特徴とする有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項5】
前記ポリプロピレンは、単独重合体であり、40~99.9重量%の範囲の量で存在する
ことを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項6】
前記押出機は、二軸押出機
、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、またはその他の加工装置で
あることを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項7】
前記ステップiii)における前記温度は、150~300℃の範囲で維持される
ことを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項8】
前記ステップiv)における前記水槽の温度は、25℃~30℃に維持される
ことを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項9】
前記ステップv)における前記乾燥は、恒温槽で約2~3時間、90~110℃の温度で行われる
ことを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項10】
前記ポリプロピレンマスターバッチは、前記押出機を使用してさまざまな濃度へとさらに希釈され、前記希釈は、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、またはその他の加工装置で行われる
ことを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項11】
核剤の濃度は、ポリプロピレン中で250~20000ppmの範囲で希釈され、
115℃~122℃の範囲の結晶化温度を示す有核ポリプロピレンを調製する
ことを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【請求項12】
前記ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体および/または任意の他のアルケンもしくはアクリレートもしくはハロゲン化炭化水素を有するポリプロピレン共重合体である
ことを特徴とする請求項4に記載の
有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有核ポリプロピレンマスターバッチの調製方法を開示する。より具体的には、本発明は、ポリプロピレンを核剤としてのビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)と溶融混合させることによってポリプロピレンマスターバッチを調製するための方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
核剤は、完成したポリマーの機械特性および透明性を高めるため、ポリマーの製造中に加えられる一連の添加剤であり、より速い結晶化速度をも提供する。結晶化を引き起こす手助けをし、生産率を増強させるため、核剤は現在、かつてないほどに需要が増している。十分な量の核剤は、一定寸法のスフェルライトを維持することができる。核剤の市場は、プラスチックおよびポリマー製造産業に大きく依存している。核剤は、強度を高めるため、結晶化の速度を上げることでサイクル時間を減少させるため、およびプラスチックおよび他のポリマーの清澄化を向上させるために広く採用されている。核剤は、プラスチックおよびポリマー製造産業と共に成長することが予想されている。包装産業の成長は、プラスチックおよびポリマーのグローバルな核剤市場を発展させる重要な要因と考えられている。
【0003】
「可塑剤および核剤の両方としての有機化合物」(‘Organic Compound as Both Plasticizer and Nucleating Agent’、ニルス・レオーネ(Nils Leone)、マンタ・ロイ(Manta Roy)、サラ・サイディ(Sarah Saidi)、ハイス・デコート(Gijs de Kort)、ダニエル・エルミダ‐メリノ(Daniel Hermida-Merino)、カロルス・H・R・M・ウィルセンス(Carolus H. R. M. Wilsens);ACSオメガ(ACS Omega)、2019年、4(6)、10376~10387、DOI:10.1021/acsomega.9b00848)というタイトルの研究論文で、ニルスらは、ポリ‐L‐ラクチド(PLA)の加工および性能を制御するための多用途な添加剤となるBHETの組み合わせられた可塑および核形成効果を開示している。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0236332号明細書は、a)溶融状態の熱可塑性配合物を提供するステップと、b)少なくとも1つの二環式化合物、少なくとも1つの単環式脂肪族化合物、および少なくとも1つの有機塩からなる群から選ばれる上記配合物のステップ「a」内の実質的に可溶である少なくとも1つの化合物を同時にまたは別々のいずれかで導入するステップと、c)ステップ「b」における合成混合物を冷却して有核熱可塑性物を形成するステップと、を備え、上記有核熱可塑性物は、その中にいかなる核剤も入っていない同じ熱可塑性物質のピーク結晶化温度を超過するピーク結晶化温度を呈する、熱可塑性配合物を有核化する方法を開示する。
【0005】
国際公開第2010104628号は、フィルムに使用するマスターバッチ組成物を開示し、マスターバッチは、少なくとも10~97重量%のポリオレフィンと、90~3重量%の添加組成物とを備える。上記添加組成物は、(i)ポリオレフィンの分子量より低い分子量を有するハイドロカーボンレジンと、(ii)上記核剤の存在しない上記ポリオレフィンと上記添加組成物との混合物に比べてポリオレフィンの結晶化温度を上昇させるための核剤とを備える。
【0006】
従って、任意のグレードのポリプロピレンに添加して必要な濃度を得ることができる核剤としてビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)を使用する、ポリプロピレン核剤マスターバッチ組成物を提供することが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリプロピレン(PP)のマスターバッチを調製することが本発明の主要な目的である。
【0008】
本発明のさらなる目的は、核剤を使用するポリプロピレン(PP)のマスターバッチを製造することである。
【0009】
本発明の他の目的は、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)を核剤として使用するポリプロピレン(PP)のマスターバッチを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様において、本発明は、
a)1.5~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンと、
b)核剤と、
c)任意選択で、非イオン界面活性剤である分散剤と、を備え、
前記核剤は、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)であり、0.1~60重量%の範囲の量で存在し、前記BHETAは、廃棄ポリエチレンテレフタレート(PET)の解重合から調製される有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物を開示する。
【0011】
本発明の特徴において、前記ポリプロピレンは単独重合体であり、40~99.9重量%の範囲の量で存在する。
【0013】
本発明の特徴において、前記分散剤は、ツイン20、スパン60、スパン80、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、0.01~10重量%の範囲の量で存在する。
【0014】
本発明の態様において、本発明は、
i.ポリプロピレンを核剤と混和させ、任意選択で分散剤を添加して、反応混合物を形成するステップと、
ii.ステップi)で得られた前記反応混合物を、ホッパーを通して押出機に供給するステップと、
iii.前記押出機のフィードゾーンからダイゾーンまでの温度を維持するステップと、
iv.前記押出機から出てくる押出物を、水槽を使用して冷却した後、造粒するステップと、
v.ステップiv)で得られた顆粒を乾燥させて、ポリプロピレンマスターバッチを得るステップと、を備え、
前記核剤は、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)であり、0.1~60重量%の範囲の量で存在する有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法を開示する。
【0015】
本発明の特徴において、前記ポリプロピレンは、単独重合体であり、40~99.9重量%の範囲の量で存在する。
【0017】
本発明の特徴において、前記押出機は、二軸押出機、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、またはその他の加工装置である。
【0018】
本発明の特徴において、ステップiii)における前記温度は、150~300℃の範囲で維持される。
【0019】
本発明の特徴において、ステップiv)における前記水槽の温度は、25℃~30℃に維持される。
【0020】
本発明の特徴において、ステップv)における前記乾燥は、恒温槽で約2~3時間、90~110℃の温度で行われる。
【0021】
本発明の特徴において、前記ポリプロピレンマスターバッチは、前記押出機を使用してさまざまな濃度へとさらに希釈され、前記希釈は、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、またはその他の加工装置で行われる。
【0022】
本発明の特徴において、核剤の濃度は、ポリプロピレン中で250~20000ppmの範囲で希釈され、115℃~122℃の範囲の結晶化温度を示す有核ポリプロピレンを調製する。
【0023】
本発明の特徴において、前記ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体および/または任意の他のアルケンもしくはアクリレートもしくはハロゲン化炭化水素を有するポリプロピレン共重合体である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施例2、実施例5、実施例8、実施例10、実施例11、実施例12のiPPに対して得られた光学顕微鏡像を示す。
【
図2】ポリプロピレンと核剤とを混合してポリプロピレンマスターバッチを調製するプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の態様において、本発明は、
d)1.5~40g/10分の範囲のメルトフローインデックスを有するポリプロピレンと、
e)核剤と、
f)任意選択で、非イオン界面活性剤である分散剤と、を備える有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物を開示する。
【0026】
本発明の実施形態において、ポリプロピレンは、単独重合体であり、40~99.9重量%の範囲の量で存在する。
【0027】
本発明の実施形態において、核剤は、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)であり、0.1~60重量%の範囲の量で存在し、BHETAは、廃棄ポリエチレンテレフタレート(PET)の解重合から調製される。
【0028】
本発明の実施形態において、分散剤は、ツイン20、スパン60、スパン80、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、0.01~10重量%の範囲の量で存在する。
【0029】
本発明の態様において、本発明は、
vi.ポリプロピレンを核剤と混和させ、任意選択で分散剤を添加して、反応混合物を形成するステップと、
vii.ステップi)において得られた反応混合物を、ホッパーを通して押出機に供給するステップと、
viii.押出機のフィードゾーンからダイゾーンまでの温度を維持するステップと、
ix.押出機から出てくる押出物を、水槽を使用して冷却した後、造粒するステップと、
x.ステップiv)で得られた顆粒を乾燥させて、ポリプロピレンマスターバッチを得るステップと、を備える有核ポリプロピレンマスターバッチ組成物の調製方法を開示する。
【0030】
本発明の実施形態において、ポリプロピレンは、単独重合体であり、40~99.9重量%の範囲の量で存在する。
【0031】
本発明の実施形態において、核剤は、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレート(BHETA)であり、0.1~60重量%の範囲の量で存在する。
【0032】
本発明の実施形態において、押出機は、二軸押出機であり、マスターバッチはバッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、またはその他の加工装置で調製される。
【0033】
本発明の実施形態において、ステップiii)における温度は、150~300℃の範囲で維持される。
【0034】
本発明の実施形態において、ステップiv)における水槽の温度は、25℃~30℃に維持される。
【0035】
本発明の実施形態において、ステップv)における乾燥は、恒温槽で約2~3時間、90~110℃の温度で行われる。
【0036】
本発明の実施形態において、ポリプロピレンマスターバッチは、押出機を使用してさまざまな濃度へとさらに希釈され、希釈は、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、またはその他の加工装置で行われる。
【0037】
本発明の実施形態において、核剤の濃度は、ポリプロピレン中で250~20000ppmの範囲で希釈され、有核ポリプロピレンを調製する。
【0038】
本発明の実施形態において、ポリプロピレンは、ポリプロピレン単独重合体および/または任意の他のアルケンもしくはアクリレートもしくはハロゲン化炭化水素を有するポリプロピレン共重合体である。
【0039】
本発明の特徴において、ビス‐2‐ヒドロキシエチレンテレフタレートを調製するための廃棄ポリエチレンテレフタレート(PET)の解重合は、モアらの方法論(モア、A・P(More, A.P.)、クート、R・A(Kute, R.A.)、マスケ、S・T(Mhaske, S.T.)、2014年、エタノールアミンを使用するPET廃棄物のアミノリシスによるビス(2‐ヒドロキシエチル)テレフタルアミド(BHETA)への化学変換とおよびPVC用の新規の可塑剤(Chemical conversion of PET waste using ethanolamine to bis (2-hydroxyethyl) terephthalamide (BHETA) through aminolysis and a novel plasticizer for PVC)、イラニアンポリマージャーナル(Iranian Polymer Journal)、23(1)、59~67ページ)の通りに行われた。
【0040】
核剤がポリプロピレン(PP)中に添加され、マスターバッチが調製される。上記のマスターバッチの利点は以下の通りである。
・調製されたマスターバッチは、任意のグレードのポリプロピレンに添加できる
・取り扱い中に粉末を吸引することがない
・取り扱いが容易である
・必要な濃度への希釈中にPP中での分散性がよりよい
【0041】
使用材料は次の通りである。12.5g/10分のMFIおよび0.9g/cm3の濃度を有するポリプロピレン単独重合体(iPP)。エタノールアミンおよび酢酸亜鉛は、シグマアルドリッチ社より購入した。市場から収集された廃棄PETボトルは、ラベルとキャップが外され、せっけん溶液で洗浄されて、よく乾燥させた。ボトルは、切断ミルを使用してフレークへと切断され、得られたフレークは、解重合に使用された。全ての化学物質は、さらなる調節や精製なく、得られたそのままで使用された。
【0042】
ポリマー加工処理は次の通りである。マスターバッチ調製方法論は次の通りである。iPPおよび調製された配合物の押し出しは、30mmのスクリュー径、48/1のL/Dを有し、8つの加熱ゾーンを備える共回転二軸押出機(ボーラニエンジニアリングコーポレーション社、ムンバイ、インド)で行われた。まずPPが、高速のミキサーで5~20分間、核剤と予混合され、その後、ホッパーを通して押出機へと供給された。押出機における温度プロファイルはフィードゾーンからダイゾーンまで160~230℃に維持された。供給機スクリューと押出機スクリューの速度は、それぞれ10rpmと225rpmとに設定された。押出物は水槽(25℃に維持し、連続的に水を循環させた)を通過させて冷却され、続いてペレット化された。得られたペレットは、射出成形の前に約2~3時間、105℃で、恒温槽で乾燥された。上述のマスターバッチは、バッチミキサー、マイクロコンパウンダー、単軸押出機、またはその他の加工装置を使用して調製されることもできる。
【0043】
核剤マスターバッチは、0.1重量%~60重量%の範囲の核剤濃度で調製可能である一方で、有核ポリプロピレンを調製するには、調製されたマスターバッチは250~20000ppmの濃度へと希釈可能である。本開示では、マスターバッチ中の核剤の濃度は10重量%に維持された。
【0044】
マスターバッチの希釈およびサンプル調製は次の通りである。500、1000、および2000ppmの有核ポリプロピレンを調製するためのマスターバッチの希釈は、3つの方法で以下を使用して行われた。
・二軸型押出加工
・単軸型押出加工
・バッチ式配合方法
【0045】
二軸型押出加工は次の通りである。500~2000ppmの有核ポリプロピレンを調製するためのマスターバッチの希釈は、マスターバッチ調製方法論下における押出加工で述べられたものに類似の加工条件を使用して行われた。
【0046】
単軸型押出加工は次の通りである。iPPおよび調製されたマスターバッチの押し出しは、20mmのスクリュー径、30/1のL/Dを有し、4つの加熱ゾーンを備える単軸押出機(ドクターコリンズ、ドイツ)で行われた。まずPPが、高速のミキサーで5~20分間、核剤マスターバッチと予混合され、その後、ホッパーを通して単軸押出機へと供給された。押出機における温度プロファイルはフィードゾーンからダイゾーンまで160~230℃に維持された。押出機スクリューの速度は60rpmに設定された。押出物は水槽(25℃に維持し、連続的に水を循環させた)を通過させて冷却され、続いてペレット化された。得られたペレットは、射出成形の前に約2~3時間、105℃で、恒温槽で乾燥された。
【0047】
射出成形方法は次の通りである。射出成形(アーブルグ社、オールラウンダー410C、ドイツ)は、ホッパーから噴射ノズルまで190~230℃の温度プロファイルを維持することで行われた。噴射圧、パッキング圧、冷却時間は、成形方法中、それぞれ、240バール、1000バール、および20秒間で一定に維持された。
【0048】
バッチ式配合方法は次の通りである。バッチ式配合は、バンバリーバッチ混合チャンバー(HAAKE(商標登録)PolyLab(商標登録)OSシステム社)を使用して行われた。核剤マスターバッチ/ポリプロピレン予混合を加えた後、バッチ混合は15分間、230℃で、60rpmで続けられた。得られた混合は、圧縮成形の前に約2~3時間、105℃で、恒温槽で乾燥された。
【0049】
圧縮成形は次の通りである。押し出されたペレットは、15分間、230℃での圧縮成形の前に5分間、高温のプラテンに軽く接触(0psi)させることで、まず溶融され、その後、圧力下で室温へと冷却された。
【0050】
テストおよび特性化は次の通りである。メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM D1238の通りに決定された。引張特性[引張強度(TS)および降伏伸び(E@Y)]および曲げ特性[曲げ弾性率(FM)]は、それぞれ、ASTM D638およびD790に従って測定された。ショアD硬さ(SD)は、ASTM D2240に従って決定された。示差走査熱量計(DSC)テストは、ASTM D3418の通りに行われた。結晶化度パーセントは、ブジョゾウスカ‐スタヌクら(ブジョゾウスカ‐スタヌク、A(Brzozowska-Stanuch, A)、ラビエイ、S(Rabiej, S.)、ファビア、J(Fabia, J)、およびノヴァク、J(Nowak, J.)、2014年、エイジング過程での添加剤が異なるアイソタクチックポリプロピレンの熱的性質の変化(Changes in thermal properties of isotactic polypropylene with different additives during aging process)、ポリメリー(Polimery)、59(4)、302~307ページ)によって提供された方法の通りにDSCを使用して決定された。調製された組成物の熱たわみ温度(HDT)およびビカット軟化温度(VSP)は、それぞれ、ASTM D648(方法A)およびD1525(方法A)の通りに決定された。
【0051】
調製されたポリプロピレン組成物のスフェルライト形態が、自動ホットステージ熱制御の付いたライカDMLP(リンカムサイエンティフィックインストルメンツ社、イギリス)偏光顕微鏡で、約0.1mmの薄膜上で観察された。サンプルは、2つの顕微鏡カバーガラスの間に挟まれ、5分間、230℃で溶融されて、熱履歴が消され、その後、10℃/分の比率で室温へと冷却された。
実施例
【0052】
実施例1~3および比較例1~3では、BHETA核剤マスターバッチおよびその後のポリプロピレン中の希釈は、二軸型押出加工を使用して行われ、射出成形方法を使用してサンプルが調製された。
【0053】
実施例1は次の通りである。実施例1は、1000gのiPP中に5.0g(0.50phr)のBHETA‐MB(MB:マスターバッチ、BHETAの濃度は10重量%に維持された)を添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、500ppmとされた。
【0054】
比較例1は次の通りである。比較例1は、1000gのiPP中に0.50g(500ppm)のBHETAを直接添加することで調製された。
【0055】
実施例2は次の通りである。実施例2は、1000gのiPP中に10.0g(1.00phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、1000ppmとされた。
【0056】
比較例2は次の通りである。比較例2は、1000gのiPP中に1.00g(1000ppm)のBHETAを直接添加することで調製された。
【0057】
実施例3は次の通りである。実施例3は、1000gのiPP中に20.0g(2.00phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、2000ppmとされた。
【0058】
比較例3は次の通りである。比較例3は、1000gのiPP中に2.00g(2000ppm)のBHETAを直接添加することで調製された。
【0059】
表1は、実施例1~3および比較例1~3で調製された組成物を詳述する。調製された実施例に対して得られた特性は表2~4に記載している。
【0060】
表1:調製組成物:実施例1~3および比較例1~3
【表1】
核剤濃度(NA濃度):BHETA‐MBを添加してのポリプロピレン中の核剤の最終的な濃度
*iPP中に500/1000/2000ppmの核剤(BHETA)の直接添加
【0061】
表2:実施例1~3および比較例1~3に対して得られた機械特性
【表2】
【0062】
表3:実施例1~3および比較例1~3に対して得られたDSC解析データ
【表3】
【0063】
表4:実施例1~3および比較例1~3に対して得られた熱的性質
【表4】
【0064】
実施例4は次の通りである。実施例4は、1000gのiPP中に5.0g(0.50phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、500ppmとされた。材料は、単軸型押出加工を使用して加工され、サンプルは、射出成形方法を使用して調製された。
【0065】
実施例5は次の通りである。実施例5は、1000gのiPP中に10.0g(1.0phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、1000ppmとされた。材料は、単軸型押出加工を使用して加工され、サンプルは、射出成形方法を使用して調製された。
【0066】
実施例6は次の通りである。実施例6は、1000gのiPP中に20.0g(2.0phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、2000ppmとされた。材料は、単軸型押出加工を使用して加工され、サンプルは、射出成形方法を使用して調製された。
【0067】
実施例7は次の通りである。実施例7は、1000gのiPP中に5.0g(0.50phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、500ppmとされた。材料は、バッチ式配合方法を使用して加工され、サンプルは、圧縮成形方法を使用して調製された。
【0068】
実施例8は次の通りである。実施例8は、1000gのiPP中に10.0g(1.0phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、1000ppmとされた。材料は、バッチ式配合方法を使用して加工され、サンプルは、圧縮成形方法を使用して調製された。
【0069】
実施例9は次の通りである。実施例9は、1000gのiPP中に20.0g(2.0phr)のBHETA‐MBを添加することで調製され、調製された有核ポリプロピレン中の核剤の濃度は、2000ppmとされた。材料は、バッチ式配合方法を使用して加工され、サンプルは、圧縮成形方法を使用して調製された。
【0070】
表5は、実施例4~9において調製された組成物を詳述する。調製された実施例に対する得られたDSC結果は、表6に記載されている。
【0071】
表5:調製組成物:実施例4~9
【表5】
核剤濃度(NA濃度):BHETA‐MBを添加してのポリプロピレン中の核剤の最終的な濃度
【0072】
表6:実施例4~9に対して得られたDSC特性
【表6】
【0073】
表7は、実施例10~12において調製された組成物を詳述する。調製された実施例に対して得られた特性は、表8に記載されている。
【0074】
実施例10は次の通りである。実施例10は、500ppmツイン20分散剤(非イオン界面活性剤)と混合された実施例2である。
【0075】
実施例11は次の通りである。実施例11は、500ppmスパン60分散剤(非イオン界面活性剤)と混合された実施例2である。
【0076】
実施例12は次の通りである。実施例12は、500ppmスパン80分散剤(非イオン界面活性剤)と混合された実施例2である。
【0077】
表7:調製組成物:実施例10~12
【表7】
核剤濃度(NA濃度):BHETA‐MBを添加してのポリプロピレン中の核剤の最終的な濃度
【0078】
表8:実施例10~12に対して得られたDSC特性
【表8】