(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】自然攪拌式コーヒードリッパー
(51)【国際特許分類】
A47J 31/02 20060101AFI20241206BHJP
A47J 31/06 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
A47J31/02
A47J31/06 160
(21)【出願番号】P 2023142612
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】523255114
【氏名又は名称】大西 進
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 進
【審査官】杉浦 貴之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-93012(JP,A)
【文献】特開2015-47209(JP,A)
【文献】中国実用新案第209360408(CN,U)
【文献】実公昭49-38307(JP,Y1)
【文献】特開平6-54760(JP,A)
【文献】実開昭53-139378(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端に開口部を有し、略円形の水平断面形状と円弧状の側断面形状を備えた、球状側壁部と、
前記球状側壁部の下方に連続して略水平に延設され、当該球状側壁部内の略球状の内部空間の下端部を画成する仕切板部と、
前記内部空間に臨むように前記仕切板部に略鉛直方向に孔設された複数の貫通孔と、
を有し、
前記開口部から前記球状側壁部の内壁に沿うように前記内部空間に挿し入れられたろ過材内に充填されたコーヒー粉体に対し、前記開口部からの注ぎ液を注いでコーヒー液を前記ろ過材外へ滲出させ前記複数の貫通孔から流下させるための、自然攪拌式コーヒードリッパーであって、
前記開口部から前記内部空間の径方向中央部に注がれる前記注ぎ液に対し、前記球状側壁部の前記略円形の水平断面形状と前記円弧状の側断面形状によって、前記ろ過材の内側において前記仕切板部の径方向中央領域から前記球状側壁部の前記内壁に沿って上昇する第1対流を誘起させることで、当該ろ過材内に充填された前記コーヒー粉体を含む前記コーヒー液の一次的自然攪拌が生じるようにした
ことを特徴とする自然攪拌式コーヒードリッパー。
【請求項2】
請求項1記載の自然攪拌式コーヒードリッパーにおいて、
前記内部空間に臨む前記仕切板部を水平方向の一方側領域と他方側領域とに区切ったとき、前記一方側領域に存在する少なくとも1つの第1貫通孔による第1開口面積を、前記他方側領域に存在する少なくとも1つの第2貫通孔による第2開口面積よりも大きくし、前記他方側領域から前記一方側領域へと向かう第2対流を誘起させることで、前記ろ過材内に充填された前記コーヒー粉体を含む前記コーヒー液の二次的自然攪拌が生じるようにした
ことを特徴とする自然攪拌式コーヒードリッパー。
【請求項3】
請求項2記載の自然攪拌式コーヒードリッパーにおいて、
前記第1貫通孔の孔径を前記第2貫通孔の孔径よりも大きくすることで、前記第1開口面積を前記第2開口面積よりも大きくした
ことを特徴とする自然攪拌式コーヒードリッパー。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の自然攪拌式コーヒードリッパーにおいて、
前記第1貫通孔の個数を前記第2貫通孔の個数よりも多くすることで、前記第1開口面積を前記第2開口面積よりも大きくした
ことを特徴とする自然攪拌式コーヒードリッパー。
【請求項5】
請求項2記載の自然攪拌式コーヒードリッパーにおいて、
平面視において前記球状側壁部の中心から径方向外側へ向かう直線上となるように前記球状側壁部の下部に凹設され、下端が前記仕切板部に至る、少なくとも1つの誘液溝を有し、
前記誘液溝は、
前記内部空間に挿し入れられた前記ろ過材を前記球状側壁部の内壁から離間させつつ、当該ろ過材外へ滲出した前記コーヒー液を前記円弧状の側断面形状に沿って下方へと誘導する
ことを特徴とする自然攪拌式コーヒードリッパー。
【請求項6】
請求項5記載の自然攪拌式コーヒードリッパーにおいて、
平面視において、
前記誘液溝が、前記第1貫通孔の中心と前記第2貫通孔の中心とを結んだ線の延長線上に配設されている
ことを特徴とする自然攪拌式コーヒードリッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然攪拌式コーヒードリッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コーヒー豆の成分を液中に抽出するためのコーヒードリッパーが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のコーヒードリッパーでは、コーヒードリッパー上部本体1の側断面形状は直線状となっている。そのため、美味しいコーヒー飲料を作成するためには、注ぐ湯量の調整や「の」の字を書くように湯を注ぐなどの必要があり、使い方が難しく、誰でも簡単に美味しいコーヒー飲料を作成することは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、コーヒー液中において自然にコーヒー粉体の自然攪拌(一次的自然攪拌)を起こして味わい深い芳醇なコーヒー飲料を作成することで、誰でも簡単に美味しいコーヒー飲料を作成することができる、自然攪拌式コーヒードリッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、上端に開口部を有し、略円形の水平断面形状と円弧状の側断面形状を備えた、球状側壁部と、前記球状側壁部の下方に連続して略水平に延設され、当該球状側壁部内の略球状の内部空間の下端部を画成する仕切板部と、前記内部空間に臨むように前記仕切板部に略鉛直方向に孔設された複数の貫通孔と、を有し、前記開口部から前記球状側壁部の内壁に沿うように前記内部空間に挿し入れられたろ過材内に充填されたコーヒー粉体に対し、前記開口部からの注ぎ液を注いでコーヒー液を前記ろ過材外へ滲出させ前記複数の貫通孔から流下させるための、自然攪拌式コーヒードリッパーであって、
前記開口部から前記内部空間の径方向中央部に注がれる前記注ぎ液に対し、前記球状側壁部の前記略円形の水平断面形状と前記円弧状の側断面形状によって、前記ろ過材の内側において前記仕切板部の径方向中央領域から前記球状側壁部の前記内壁に沿って上昇する第1対流を誘起させることで、当該ろ過材内に充填された前記コーヒー粉体を含む前記コーヒー液の一次的自然攪拌が生じるようにした自然攪拌式コーヒードリッパーであることを特徴としている。
【0007】
本願発明のコーヒードリッパーにおいては、球状側壁部の上端に開口部が設けられている。コーヒー飲料の作成時には、ユーザは、球状側壁部の内壁に沿うようにペーパーフィルター等のろ過材を挿し入れ、ろ過材上にコーヒー粉体を充填した後、開口部を介し、球状側壁部の内部空間へと注ぎ液を注ぐ。注ぎ液は、お湯や牛乳等の適宜の加温液体である。
【0008】
このとき、球状側壁部は、略円形の水平断面形状と円弧状の側断面形状を備えており、内部空間は略球状の形状となっている。そのため、注ぎ液を、内部空間の径方向中央部に注ぐようにすることで、ろ過材の内側において、仕切板部の径方向中央領域から球状側壁部の内壁に沿って上昇する挙動の、コーヒー粉体を含むコーヒー液の対流(第1対流)が誘起される。この結果、コーヒー液中において自然にコーヒー粉体の自然攪拌(一次的自然攪拌)を起こすことができるので、味わい深い芳醇なコーヒー飲料を作成することができる。その結果、誰でも簡単に美味しいコーヒー飲料を作成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コーヒー液中において自然にコーヒー粉体の自然攪拌(一次的自然攪拌)を起こすことができるので、味わい深い芳醇なコーヒー飲料を作成することができる。その結果、誰でも簡単に美味しいコーヒー飲料を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】自然攪拌式コーヒードリッパーの側面図である。
【
図2】自然攪拌式コーヒードリッパーの側断面図である。
【
図3】自然攪拌式コーヒードリッパーを上方から見た平面図である。
【
図4】自然攪拌式コーヒードリッパーの使用状態を説明する概念図である。
【
図5】自然攪拌式コーヒードリッパーの一次的自然攪拌を説明する概念図である。
【
図6】自然攪拌式コーヒードリッパーの二次的自然攪拌を説明する概念図である。
【
図7】第1貫通孔の数が第2貫通孔よりも多い変形例の自然攪拌式コーヒードリッパーを上方から見た平面図である。
【
図8】第1貫通孔が角度を有する変形例の自然攪拌式コーヒードリッパーを上方から見た平面図である。
【
図9】複数の第1貫通孔が異径かつ角度を有する変形例の自然攪拌式コーヒードリッパーを上方から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば下記の各構成要素を均等なものに置換した実施形態を採用することができ、それらについても本発明の技術的範囲に含まれる。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするため、重要でない公知の技術的事項の説明を適宜省略又は簡略化する。
【0012】
図1に自然攪拌式コーヒードリッパー1の側面図、
図2に自然攪拌式コーヒードリッパー1の側断面図、
図3に自然攪拌式コーヒードリッパー1を上方から見た平面図を示す。なお、
図2の側断面図は、
図3のAA断面図に相当する。
図1~
図3に示す方角は、鉛直方向に平行な上下方向と、水平方向に平行な左右方向と、上下方向及び左右方向にそれぞれ直交する前後方向である。同様の方角が
図4~
図9にも示される。
【0013】
自然攪拌式コーヒードリッパー1は、上端に開口部5を有する。また、自然攪拌式コーヒードリッパー1は、
図3に示されるような略円形の水平断面形状を備え、
図2に示されるような円弧状の側断面形状を備えた球状側壁部2を備える。
【0014】
自然攪拌式コーヒードリッパー1は、仕切板部3を有する。仕切板部3は、球状側壁部2の下方に連続して略水平に延設され、球状側壁部2内の略球状の内部空間6の下端部を画成する。
【0015】
自然攪拌式コーヒードリッパー1はまた、リング状底部4を有する。リング状底部4は、仕切板部3の下方に連続して設けられ、仕切板部3よりも前後左右方向における寸法が小さく、環状に構成されている。
【0016】
自然攪拌式コーヒードリッパー1は、内部空間6に臨むように仕切板部3に略鉛直方向に孔設された複数の貫通孔として、第1貫通孔7と、第2貫通孔8とを有する。
【0017】
図3に示すように、自然攪拌式コーヒードリッパー1において、内部空間6に臨む仕切板部3を左右方向の一方側(この図の左方側)領域9と他方側(この図の右方側)領域10とに区切ったとき、一方側領域9に存在する第1貫通孔7による第1開口面積S1が、他方側領域10に存在する第2貫通孔8による第2開口面積S2よりも大きくなっている。
【0018】
なお、この図では、第1貫通孔7と第2貫通孔8はそれぞれ1個ずつ設けられ、第1貫通孔7の孔径を第2貫通孔8の孔径よりも大きくすることにより、第1開口面積S1が第2開口面積S2よりも大きくなっている。
【0019】
自然攪拌式コーヒードリッパー1は誘液溝11を有する。
図2及び
図3に示すように、誘液溝11は、それぞれ、上方からの平面視において球状側壁部2の前後左右方向における中心Cから径方向外側へ向かう直線上に位置するように、球状側壁部2の下部に凹設され、下端が仕切板部3に至るように構成される。
【0020】
この図では、8個の誘液溝11が、球状側壁部2の内壁下端部に中心Cを基準に45°間隔で放射状に設けられている。また、
図3に示すように、自然攪拌式コーヒードリッパー1の平面視において、8個の誘液溝11のうち、2個の誘液溝11aが、第1貫通孔7の中心と第2貫通孔8の中心とを結んだ線の延長線P上に配設される。
【0021】
図4に自然攪拌式コーヒードリッパー1の使用状態を説明する概念図を示す。
図4は、開口部5から球状側壁部2の内壁に沿うように内部空間6に挿し入れられたろ過材13内に、コーヒー粉体を充填し、開口部5から注ぎ液を注ぐと、注ぎ液とコーヒー粉体とから得られるコーヒー液12がろ過材13外に滲出して第1貫通孔7及び第2貫通孔8から流下し、コーヒー飲料15として容器14に貯留された状態を表す。
【0022】
この時、
図2~
図3で説明した誘液溝11は、内部空間6に挿し入れられたろ過材13を球状側壁部2の内壁から離間させつつ、ろ過材13外へ滲出したコーヒー液12を円弧状の側断面形状に沿って下方へと誘導する。
【0023】
ろ過材13としては、例えばペーパーフィルター等の紙素材が用いられる。また、注ぎ液としては、お湯又は温かい牛乳等の加温液体を用いることができる。
【0024】
図5に一次的自然攪拌を説明する概念図を示す。
自然攪拌式コーヒードリッパー1においては、開口部5から内部空間6の径方向中央部に注がれる注ぎ液に対し、球状側壁部2の略円形の水平断面形状と円弧状の側断面形状によって、ろ過材13の内側において仕切板部3の径方向中央領域から球状側壁部2の内壁に沿って上昇する第1対流W1を誘起させることで、ろ過材13内に充填されたコーヒー粉体を含む前記コーヒー液の一次的自然攪拌が生じるようになっている。
【0025】
注ぎ液の量によって、コーヒー液12(図示省略)の水位が比較的高い水位Hにある場合、比較的大きな第1対流W1(H)が誘起され、中程度の水位Mにある場合、中程度の第1対流W1(M)が誘起され、比較的低い水位Lにある場合、比較的小さな第1対流W1(L)が、コーヒー液12の中に誘起される。第1対流W1は、内部空間6の径方向中央部から放射線状に複数発生する。
【0026】
図6に二次的自然攪拌を説明する概念図を示す。
自然攪拌式コーヒードリッパー1においては、第1貫通孔7による第1開口面積S1が、第2貫通孔8による第2開口面積S2よりも大きいため、他方側領域10から一方側領域9へと向かう第2対流W2が誘起され、前記ろ過材13内に充填されたコーヒー粉体を含むコーヒー液12(図示省略)の二次的自然攪拌が生じるようになっている。
【0027】
この図では、他方側領域10から一方側領域9へと向かって下がっていくコーヒー液12の水位Mの下方において、複数の第2対流W2が誘起されている。
【0028】
<実施形態の効果>
本実施形態の自然攪拌式コーヒードリッパー1においては、球状側壁部2の上端に開口部5が設けられている。コーヒー飲料の作成時には、ユーザは、球状側壁部2の内壁に沿うようにペーパーフィルター等のろ過材13を挿し入れ、ろ過材13上にコーヒー粉体を充填した後、開口部5を介し、球状側壁部2の内部空間6へと注ぎ液を注ぐ。注ぎ液は、お湯や牛乳等の適宜の加温液体である。
このとき、球状側壁部2は、略円形の水平断面形状と円弧状の側断面形状を備えており、内部空間6は略球状の形状となっている。そのため、注ぎ液を、内部空間6の径方向中央部に注ぐようにすることで、ろ過材13の内側において、仕切板部3の径方向中央領域から球状側壁部2の内壁に沿って上昇する挙動の、コーヒー粉体を含むコーヒー液12の対流(第1対流W1)が誘起される。この結果、コーヒー液12中において自然にコーヒー粉体の自然攪拌(一次的自然攪拌)を起こすことができるので、味わい深い芳醇なコーヒー飲料を作成することができる。このようにして、誰でも簡単に美味しいコーヒー飲料を作成することができる。
【0029】
また、本実施形態ではさらに、ろ過材13の外へ滲出したコーヒー液12は、仕切板部3に設けた複数の貫通孔から下方へ流下し、仕切板部3の下方に適宜に設けたカップ又は容器内に貯留される。このとき、仕切板部3を水平方向一方側と他方側とに分けて見ると、一方側領域9における第1貫通孔7の開口面積S1(=第1開口面積。複数の貫通孔の場合は各開口面積の合計)は、他方側領域における貫通孔8(第2貫通孔)の開口面積(=第2開口面積S2。複数の貫通孔の場合は各開口面積の合計)よりも大きくなっている。
【0030】
これにより、前述のように注ぎ液が注がれてろ過材13の内部に生じた、コーヒー粉体を含むコーヒー液12の水位が徐々に下がっていくとき、一方側領域9の水位のほうが他方側領域10の水位よりも早く下がる傾向となる。そのため、他方側領域10から一方側領域9へ向かう挙動の、コーヒー液12の対流(第2対流W2)が誘起されるので、これによってもコーヒー液12中において自然にコーヒー粉体の自然攪拌(二次的自然攪拌)を起こすことができる。この結果、上記一次的自然攪拌と併せた効果により、確実に味わい深い芳醇なコーヒー飲料を作成することができる。
【0031】
また、本実施形態ではさらに、第1貫通孔7と第2貫通孔8との孔径の差により、第1開口面積S1を第2開口面積S2よりも大きくすることで、一方側領域9の水位を他方側領域10の水位よりも早く下がるようにし、他方側領域10から一方側領域9へ向かう挙動のコーヒー液12の対流W2を誘起することができる。特に、第1貫通孔7の数と第2貫通孔8の数とが同一である場合であっても、上記対流W2を確実に誘起することができる。
【0032】
また、本実施形態では、注ぎ液を注いだ時、濡れたろ過材13が球状側壁部2の内壁に貼り付いてしまうと、ろ過材13内のコーヒー液がろ過材13外へ滲出しにくくなる。そこで本実施形態においては特に、球状側壁部2の下部に少なくとも1つの誘液溝11を設け、内部空間6に挿し入れられたろ過材13を球状側壁部2の内壁から離間させるようにする。このとき、誘液溝11は、平面視において、球状側壁部2の中心Cから径方向外側へ向かう直線上となるように配置される。これにより、ろ過材13外へ滲出したコーヒー液を、球状側壁部2の円弧状の側断面形状に沿って円滑に仕切板部3の第1貫通孔7及び第2貫通孔8へと導くことができる。
【0033】
また、本実施形態では特に、第1貫通孔7と第2貫通孔8との開口面積差により、他方側領域10から一方側領域9へと向かう第2対流W2が誘起される。その結果、ろ過材13のうち、第1貫通孔7の中心と第2貫通孔8の中心とを結んだ線の延長線P上に相当する領域には、当該第2対流W2が衝突する傾向となる。本実施形態においては、その第2対流W2が衝突するろ過材13の領域の直近に誘液溝11aが配設されることにより、第2対流W2の作用により味わい深く芳醇となったコーヒー液12を確実にろ過材13外へ滲出させて第1貫通孔7及び第2貫通孔8へと導くことができる。
【0034】
このような自然攪拌式コーヒードリッパー1によれば、注ぎ液の注ぎ方に特別な工夫やテクニックを必要とせずとも、簡単かつ自動的に一定以上の品質で風味の高いコーヒー飲料を作成できるため、自動のコーヒーマシン等においても適用可能である。
【0035】
<変形例>
なお、本実施形態は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0036】
(1)第1貫通孔の数が第2貫通孔よりも多い場合
図7に本変形例の自然攪拌式コーヒードリッパー1aを上方から見た平面図を示す。自然攪拌式コーヒードリッパー1aは、2つの第1貫通孔7a及び第1貫通孔7bと、1つの第2貫通孔8とを有する。第1貫通孔7aと第1貫通孔7bと第2貫通孔8の孔径は略等しくなっている。また、第1貫通孔7aの中心と、第1貫通孔7bの中心と、第2貫通孔8の中心と、球状側壁部2の前後左右方向における中心Cとは一直線上に配置されている。また、当該直線の延長線P上に誘液溝11aが配設されるようになっている。
【0037】
<変形例の効果>
本変形例においても、一方側領域9に存在する第1貫通孔7a及び第1貫通孔7bの開口面積の合計値である第1開口面積S1が、他方側領域10に存在する第2貫通孔8による第2開口面積S2よりも大きいものとなるため、第2対流W2が誘起される。
【0038】
また、本変形例においては、第1貫通孔7a及び7bと第2貫通孔8との個数の差により、一方側領域9の水位を他方側領域10の水位よりも早く下がるようにし、他方側領域10から一方側領域9へ向かう挙動のコーヒー液12の対流を誘起することができる。特に、第1貫通孔7a及び7bの孔径と第2貫通孔8の孔径とが同一である場合であっても、上記対流を確実に誘起することができる。
またこの他、実施形態と同様の効果を有する。
【0039】
(2)第1貫通孔が角度を有する場合
図8に本変形例の自然攪拌式コーヒードリッパー1bを上方から見た平面図を示す。自然攪拌式コーヒードリッパー1bにおいても、第1貫通孔7a′と第1貫通孔7b′と第2貫通孔8とは孔径が略等しくなっている。本変形例では、第1貫通孔7a′の中心と中心Cとを結ぶ線、及び第1貫通孔7b′の中心と中心Cとを結ぶ線とが所定角度(例えば略90°)を形成するように、配置されている。前記所定の角度としては特に限定されないが、第1貫通孔7a′と第1貫通孔7b′とが、ともに、一方側領域9に配置されるような角度に、設定される。また、中心Cを介して、第1貫通孔7a′及び第1貫通孔7b′のそれぞれの中心と、第2貫通孔8の中心とを結ぶ線の延長線上に、誘液溝11aが配設されるようになっている。
【0040】
<変形例の効果>
本変形例においても、第1貫通孔7a′及び第1貫通孔7b′の開口面積の合計値である第1開口面積S1が、他方側領域10に存在する第2貫通孔8による第2開口面積S2よりも大きいものとなるため、第2対流W2が誘起される。またその他、実施形態及び
図7で説明した変形例と同様の効果を有する。
(3)複数の第1貫通孔が異径かつ角度を有する場合
図9に本変形例の自然攪拌式コーヒードリッパー1cを上方から見た平面図を示す。自然攪拌式コーヒードリッパー1cにおいては、第1貫通孔7a″と第1貫通孔7b″と第2貫通孔8とは孔径が異なり、その大小関係は第1貫通孔7a″>第2貫通孔8の孔径>第1貫通孔7b″の孔径となっている。また、中心Cを介して、第1貫通孔7a″及び第1貫通孔7b″のそれぞれの中心と、第2貫通孔8の中心とを結ぶ線の延長線上に、誘液溝11aが配設されるようになっている。
【0041】
<変形例の効果>
本変形例においても、一方側領域9に存在する第1貫通孔7a″及び第1貫通孔7b″の開口面積の合計値である第1開口面積S1が、他方側領域10に存在する第2貫通孔8による第2開口面積S2よりも大きいものとなるため、第2対流W2が誘起される。また、この他、実施形態及び
図7で説明した変形例と同様の効果を有する。
【0042】
なお、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0043】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0044】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 自然攪拌式コーヒードリッパー
2 球状側壁部
3 仕切板部
4 リング状底部
5 開口部
6 内部空間
7 第1貫通孔
8 第2貫通孔
9 一方側領域
10 他方側領域
11、11a 誘液溝
12 コーヒー液
13 ろ過材
14 容器
15 コーヒー飲料
【要約】
【課題】誰でも簡単に美味しいコーヒー飲料を作成することができるようにする。
【解決手段】
上端に開口部5を有し、略円形の水平断面形状と円弧状の側断面形状を備えた、球状側壁部2と、球状側壁部2内の略球状の内部空間6の下端部を画成する仕切板部3と、仕切板部3に孔設された複数の貫通孔7、8とを有し、開口部5から内部空間6に挿し入れられたろ過材13内に充填されたコーヒー粉体に対し、開口部5からの注ぎ液を注いでコーヒー液12を複数の貫通孔7、8から流下させるための、自然攪拌式コーヒードリッパー1であって、前記注ぎ液に対し、球状側壁部2の前記略円形の水平断面形状と前記円弧状の側断面形状によって、仕切板部3の径方向中央領域から球状側壁部2の内壁に沿って上昇する第1対流W1を誘起させることで、コーヒー液12の一次的自然攪拌が生じるようにした自然攪拌式コーヒードリッパー1。
【選択図】
図2