(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法
(51)【国際特許分類】
C25D 21/18 20060101AFI20241206BHJP
C25D 3/30 20060101ALI20241206BHJP
C25D 7/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C25D21/18 C
C25D3/30
C25D7/00 J
(21)【出願番号】P 2023223163
(22)【出願日】2023-12-28
【審査請求日】2024-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 大督
(72)【発明者】
【氏名】河原 知博
(72)【発明者】
【氏名】山本 はるか
(72)【発明者】
【氏名】荒木 栄
(72)【発明者】
【氏名】赤松 直秀
(72)【発明者】
【氏名】木曽 雅之
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-108290(JP,A)
【文献】特開2002-309400(JP,A)
【文献】特開2009-149920(JP,A)
【文献】特開2008-31009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D3/00-9/12
C25D13/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタンスルホン酸、メタンスルホン酸錫及びノニオン活性剤を含有する錫または錫合金めっき液をキレート樹脂と接触させることにより、錫化合物であるパーティクルが、前記錫または錫合金めっき液から析出する錫または錫合金めっき皮膜へ付着することを防止
し、
前記キレート樹脂は、官能基としてN-メチルグルカミン基を有することを特徴とする錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法。
【請求項2】
前記キレート樹脂は、セルロースファイバーを母材とした樹脂であることを特徴とする請求項
1に記載の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法。
【請求項3】
前記錫または錫合金めっき液を収容するめっき槽から該めっき液を循環させて、前記キレート樹脂を前記錫または錫合金めっき液と接触させることにより、前記パーティクルが、前記錫または錫合金めっき皮膜へ付着することを防止することを特徴とする請求項
1または請求項
2に記載の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法。
【請求項4】
前記キレート樹脂が、前記錫または錫合金めっき液の循環経路に配置されたカートリッジフィルター内に収容されていることを特徴とする請求項
3に記載の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンプ形成に使用する錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクル(錫水酸化物の不溶解物と想定される不純物)の付着を防止する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICパッケージとICとの接合において、接続用のバンプとしてはんだボールやはんだペーストが使用されているが、電極面積の微細化に伴い、これらの方法では対応が困難になってきている。
【0003】
そこで、近年、錫または錫合金めっき液を使用したバンプの形成が提案されている。このようなめっき液としては、例えば、少なくとも第一錫塩を含む可溶性塩と、錫よりも貴な金属の可溶性塩と、炭素原子の数が4個以上6個以下である糖アルコールからなる錫の錯体化剤とを含み、錫の錯体化剤の含有量が0.1g/L以上5g/L以下であり、2価の錫イオン(Sn2+)濃度が30g/L以上である錫合金めっき液が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されているような2価の錫イオンを含有する錫または錫合金めっき液を使用してめっき処理を行う場合、めっき液において、2価の錫イオンが酸化されて4価の錫イオン(Sn4+)となり、ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオン([Sn(OH)6]2―)を経由して水酸化第二錫(Sn(OH)4)が沈殿する。そして、めっき液中に不溶解物である水酸化第二錫が存在すると、めっき皮膜の表面に水酸化第二錫がパーティクルとして付着して共析し、はんだ接合時にボイドが発生して、接合不良を引き起こすという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑み、錫または錫合金めっき液から、ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを選択的に除去し、錫または錫合金めっき液における4価の錫イオンの濃度を低下させて不溶解物である水酸化第二錫の発生を抑制することにより、錫化合物であるパーティクルが、錫または錫合金めっき皮膜へ付着して共析することを防止することができる錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、本発明に係る錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法は、メタンスルホン酸、メタンスルホン酸錫及びノニオン活性剤を含有する錫または錫合金めっき液をキレート樹脂と接触させることにより、錫化合物であるパーティクルが、錫または錫合金めっき液から析出する錫または錫合金めっき皮膜へ付着することを防止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、錫または錫合金めっき液からヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを除去して、錫または錫合金めっき液における4価の錫イオンの濃度を低下させて、不溶解物である水酸化第二錫(パーティクル)の発生を抑制することにより、錫化合物であるパーティクルが、錫または錫合金めっき皮膜へ付着することを防止して、めっき皮膜の接合不良を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法を説明するための概略図である。
【
図2】実施例1のめっき液における2価の錫イオン(Sn
2+)の濃度の測定結果を示す図である。
【
図3】実施例1のめっき液における4価の錫イオン(Sn
4+)の濃度の測定結果を示す図である。
【
図4】比較例1のめっき液における4価の錫イオン(Sn
4+)の濃度の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法が適用されるめっき液は、ウエハやICパッケージの接続用のバンプの形成に使用されるメタンスルホン酸、メタンスルホン酸錫及びノニオン活性剤を含有する酸性錫、又は酸性錫合金めっき液である。
【0011】
めっき液におけるメタンスルホン酸の濃度は、特に限定されず、例えば、メタンスルホン酸(70%水溶液)を使用する場合、20~200ml/Lとすることができる。
【0012】
また、めっき液におけるメタンスルホン酸錫の濃度は、特に限定されず、例えば、錫濃度換算で10~100g/Lとすることができる。
【0013】
ノニオン活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンフェニルエーテル等が挙げられる。また、めっき液におけるノニオン活性剤の濃度は、特に限定されず、例えば、0.1~50g/Lとすることができる。
【0014】
<めっき皮膜へのパーティクルの付着を防止する方法>
上述のごとく、従来の2価の錫イオンを含有する錫または錫合金めっき液を使用してめっき処理を行う場合、めっき液において、ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを経由して水酸化第二錫の不溶解物を形成して、めっき皮膜の表面に当該不溶解物がパーティクルとして付着して共析し、はんだ接合不良を引き起こすという問題があった。
【0015】
そこで、本発明者らは、上記問題点について検討したところ、錫イオンが含まれる錫または錫合金めっき液に、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂を接触させることにより、錫または錫合金めっき液から、陰イオンであるヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを選択的に除去し、錫または錫合金めっき液における4価の錫イオンの濃度を低下させて、不溶解物である水酸化第二錫(パーティクル)の発生を抑制することにより、錫化合物であるパーティクルが、錫または錫合金めっき液から析出する錫または錫合金めっき皮膜へ付着して共析することを防止できることを見出した。
【0016】
以下、本発明の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法について説明する。
【0017】
本発明で使用できるキレート樹脂は、下記一般式(1)で示す、ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンに対するキレート基(官能基)として作用するN-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂である。
【0018】
【0019】
(式中、Rはキレート樹脂の母材を表す。)
また、キレート樹脂の母材としては特に限定されず、例えば、ポリスチレン樹脂等が使用できるが、錫めっき液との分離性や耐薬品性、及び価格等を考慮すると、セルロースファイバーが好ましい。
【0020】
そして、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂をカラムに充填し、ポンプ等により錫または錫合金めっき液をカラムに通液させて、錫または錫合金めっき液を、カラムに充填されたキレート樹脂と接触させることにより、錫または錫合金めっき液からヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを除去する構成としている。
【0021】
以下、図面を用いて、本発明の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法について具体的に説明する。
図1は、本発明の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法を説明するための概略図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法は、まず、めっき槽1に収容された錫または錫合金めっき液2(すなわち、上述のヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを含有する錫めっき液、又は錫合金めっき液)を、ポンプ3により循環させ、当該めっき液2を、めっき液2の循環経路に配置されたイオン除去用装置4内に収容されたN-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂5と接触させることにより、めっき液2からヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオン6を除去する。
【0023】
次に、ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオン6が除去されためっき液2を、ポンプ3により循環させ、再び、めっき槽1に戻す構成となっている。
【0024】
従って、キレート樹脂5により、めっき液2からヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオン6を除去して、めっき液2において、4価の錫イオンの濃度の上昇を抑制することができるため、4価の錫イオンに起因する水酸化第二錫の生成を防止することが可能になる。その結果、めっき槽1において、めっき液2による電解処理を行うことにより、例えば、ビアホールにおいて、錫めっき皮膜または錫合金めっき皮膜からなるバンプを形成する際に、めっき皮膜の表面における水酸化第二錫の不溶解物(パーティクル)の付着を防止することができるため、めっき皮膜を用いたはんだ接合時の不良を回避することができる。
【0025】
また、イオン除去用装置4は、特に限定されないが、例えば、カートリッジフィルターを使用することができる。なお、このカートリッジフィルターの目開きは、特に限定されないが、めっき液の循環に起因する、フィルター内に収容されたキレート樹脂の流出(すなわち、フィルター抜け)を確実に防止するとの観点から、5μm以下が好ましい。
【0026】
また、めっき液2をイオン除去用装置4に通過させる際のめっき液の通液速度は、使用するキレート樹脂の処理性能に応じて、適宜、設定すればよいが、空間速度(SV)として、例えば、1hr-1~10hr-1の範囲で調整することができる。
【0027】
また、錫または錫合金めっき液とキレート樹脂との接触時間は、特に限定されないが、ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを確実に除去するとの観点から、常時循環が望ましい。また、同様の観点から、キレート樹脂の使用量は、めっき液に対して0.1~10g/Lが好ましく、1~3g/Lがより好ましい。
【0028】
なお、キレート樹脂を、直接、錫または錫合金めっき液に添加して、キレート樹脂を分散させた後、ろ過により取り除いてもよい。例えば、めっき処理後に貯留された錫または錫合金めっき液にキレート樹脂を添加する方法や、めっき処理に用いた錫または錫合金めっき液を別の容器に移してキレート樹脂と接触させる方法が挙げられる。
【0029】
また、キレート樹脂を繊維状の袋に収納し、この袋を錫または錫合金めっき液に浸すことにより、キレート樹脂と錫または錫合金めっき液とを接触させる構成としてもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例に基づき本出願に係る発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
<めっき液の調製>
メタンスルホン酸(70%水溶液)が100ml/L、メタンスルホン酸錫(Sn2+として)が60g/L、及びノニオン活性剤(ポリオキシエチレンフェニルエーテル)が20g/Lとなるように、これらを混合して攪拌することにより、実施例の酸性錫めっき液(錫めっき液)を調製した。なお、めっき液の温度を25℃、pHを1以下に設定した。
【0032】
<めっき処理>
被めっき物である基材として、電気銅からなるパッド(大径パターン:80μm、小径パターン20μm)を備えたシリコンウエハ(サイズ:φ300mm、厚み:0.8mm)を用意した。
【0033】
次に、上述の調製しためっき液(25℃)をめっき槽に収容するとともに、当該めっき液に、上述の基材(めっき面積:3.3cm×5.0cm)を、所定の電流密度(0.5A/dm2)に基づいて、めっき膜の厚さが15μmになるように設定した時間、浸漬し、ポンプを用いて錫めっき液を循環させながら、錫めっき液を用いて、電気銅からなるパッドの表面に錫めっき皮膜からなるバンプを形成した。
【0034】
なお、めっき液の循環経路にイオン除去用装置であるカートリッジフィルター(アドバンテック社製、商品名:コンパクトカートリッジフィルター、目開き:1μm)のハウジング内に、下記式(2)で示すN-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂を1g添加し、1Lの錫めっき液を循環させて、当該錫めっき液を、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂に接触させながら、錫めっき液の通電量(老化度)が100AH/Lになるまで電解処理を行った。
【0035】
【0036】
<めっき液における2価の錫イオン(Sn2+)の濃度の測定>
イオン交換水100mLを300mLのコニカルビーカーに入れ、6N塩酸50mLを加えたものを用意し、これに酒石酸ナトリウムカリウム(4水和物)を5g加えて、完全に溶解させた。次に、酒石酸ナトリウムカリウムが溶解した溶液に、炭酸水素ナトリウム2gを加えて溶解、発泡させた。次に、上述のめっき処理において使用した錫めっき液(2mL)をホールピペットで採り、この溶液に加えた。
【0037】
そして、錫めっき液を加えた溶液に、指示薬として5%デンプン溶液を2mL加えた後、0.5Nヨウ素溶液で滴定することにより、めっき液における2価の錫イオン(Sn2+)の濃度を測定した。
【0038】
なお、2価の錫イオンの濃度の測定は、0AH/L(新浴)、25AH/L、50AH/L、75AH/L、及び100AH/Lの各通電量において行った。以上の結果を
図2に示す。
【0039】
<めっき液における4価の錫イオン(Sn4+)の濃度の測定>
上述のめっき処理において使用した錫めっき液(5mL)を100mLのメスフラスコに加え、イオン交換水で100mLに調整したもの(A液)を用意した。前記A液(1mL)と1.0NのNHO3水溶液(50mL)を100mLのメスフラスコに加え、イオン交換水で100mLに調整したもの(B液)を用意した。
【0040】
次に、ICP発光分光分析装置(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置、HORIBA製、商品名:Jobin Yvon Ultima Expert)を使用して、検量線法により前記B液の定量分析を行った。
【0041】
なお、検量線は、Snの濃度が0ppm(DI水)、50ppm、100ppm、及び200ppmのSn標準液(Merck社製、商品名:原子吸光光度計用標準液)を使用して作成したものを使用した。
【0042】
そして、上述の検量線法により測定した錫の濃度(Sn2+の濃度とSn4+の濃度)と、上述の2価の錫イオン(Sn2+)の濃度の差から、めっき液における4価の錫イオン(Sn4+)の濃度を測定した。
【0043】
なお、4価の錫イオンの濃度の測定は、0AH/L(新浴)、25AH/L、50AH/L、75AH/L、及び100AH/Lの各通電量において行った。以上の結果を
図3に示す。
【0044】
<パーティクルの有無>
上述のめっき処理により形成された錫めっき皮膜からなるバンプの表面を走査電子顕微鏡(FE-SEM、日本電子社製、商品名:JSM-7800、加速電圧:5kv、倍率:30000倍)で観察し、バンプの表面における、径が50nm以上のパーティクル(不溶解物である水酸化第二錫)の発生の有無について確認した。
【0045】
なお、パーティクルの有無の確認は、0AH/L(新浴)、25AH/L、50AH/L、75AH/L、及び100AH/Lの各通電量において行った。以上の結果を表1に示す。
【0046】
(比較例1)
めっき液の循環経路に、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂が収容されたカートリッジフィルターを配置せず、錫めっき液を、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂に接触させなかったこと以外は、上述の実施例1と同様にして、めっき処理を行い、めっき液における4価の錫イオン(Sn
4+)の濃度の測定、及びパーティクルの有無を評価した。以上の結果を
図4、及び表1に示す。
【0047】
なお、本比較例においては、通電すると2価の錫イオン(Sn2+)が減少するとともに、4価の錫イオン(Sn4+)が増加し、2価の錫イオン(Sn2+)が減少すると、めっき皮膜形成に影響を与える(めっき処理が出来なくなる)ため、めっき液における2価の錫イオン(Sn2+)の濃度を、常時60g/Lとなるように管理した。
【0048】
そして、上述の検量線法により測定した錫の濃度(Sn2+の濃度とSn4+の濃度)と、2価の錫イオン(Sn2+)の濃度(60g/L)の差から、めっき液における4価の錫イオン(Sn4+)の濃度を測定した。
【0049】
(比較例2)
N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂の代わりに、下記式(3)で示す1級アミン基を有するキレート樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、めっき処理を行い、パーティクルの有無を評価した。
【0050】
【0051】
なお、パーティクルの有無の確認は、25AH/Lの通電量において行った。以上の結果を表2に示す。
【0052】
(比較例3)
N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂の代わりに、下記式(4)で示すポリアミン基を有するキレート樹脂を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、めっき処理を行い、パーティクルの有無を評価した。
【0053】
【0054】
なお、パーティクルの有無の確認は、25AH/Lの通電量において行った。以上の結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
【0057】
図3に示すように、実施例1においては、錫めっき液を、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂に接触させることにより、めっき液からヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンが除去され、100AH/Lまでの通電量において、4価の錫イオンの濃度の上昇が抑制されていることが分かる。また、4価の錫イオンの濃度の上昇が抑制されているため、4価の錫イオンに起因する水酸化第二錫の生成が防止でき、表1に示すように、100AH/Lまでの通電量において、バンプの表面にパーティクル(不溶解物である水酸化第二錫)は確認できなかった。
【0058】
一方、
図4に示すように、比較例1においては、錫めっき液を、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂に接触させていないため、めっき液からヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンが除去されず、100AH/Lまでの通電量において、4価の錫イオンの濃度が上昇していることが分かる。また、4価の錫イオンの濃度が上昇しているため、4価の錫イオンに起因する水酸化第二錫の生成が防止できず、表1に示すように、100AH/Lまでの通電量において、バンプの表面にパーティクル(不溶解物である水酸化第二錫)が確認できた。
【0059】
また、表2に示すように、比較例2,3においては、錫めっき液を、N-メチルグルカミン基を有するキレート樹脂に接触させていないため、比較例1と同様に、めっき液からヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンが除去されず、4価の錫イオンの濃度が上昇しているものと考えられるため、4価の錫イオンに起因する水酸化第二錫の生成が防止できず、25AH/Lの通電量において、バンプの表面にパーティクル(不溶解物である水酸化第二錫)が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法は、特に、バンプの形成に使用可能な錫または錫合金めっき液において、好適に使用される。
【符号の説明】
【0061】
1 めっき槽
2 錫または錫合金めっき液
3 ポンプ
4 イオン除去用装置
5 アミノポリオール基を有するキレート樹脂
6 ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオン
【要約】
【課題】錫または錫合金めっき液から、ヘキサヒドロキシド錫(IV)酸イオンを選択的に除去し、錫または錫合金めっき液における4価の錫イオンの濃度を低下させて、不溶解物である水酸化第二錫の発生を抑制することにより、錫化合物であるパーティクルが、錫または錫合金めっき皮膜へ付着して共析することを防止することができる錫または錫合金めっき皮膜へのパーティクルの付着防止方法を提供することを目的とする。
【解決手段】メタンスルホン酸、メタンスルホン酸錫及びノニオン活性剤を含有する錫または錫合金めっき液をキレート樹脂と接触させることにより、錫化合物であるパーティクルが、錫または錫合金めっき液から析出する錫または錫合金めっき皮膜へ付着することを防止する。
【選択図】なし