(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】回路接続装置、回転電機装置および回路接続装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 11/33 20160101AFI20241206BHJP
H02K 5/22 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K5/22
(21)【出願番号】P 2023501695
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2021006749
(87)【国際公開番号】W WO2022180660
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】324003048
【氏名又は名称】三菱電機モビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳也
(72)【発明者】
【氏名】西川 英也
(72)【発明者】
【氏名】大西 善彦
(72)【発明者】
【氏名】園田 功
(72)【発明者】
【氏名】中尾 貴行
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080643(JP,A)
【文献】特開2007-028870(JP,A)
【文献】特開2004-354122(JP,A)
【文献】特開2013-247729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/33
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジングと、前記ハウジングの前記開口部と異なる側に設けられた位置決め用ガイド部と、前記接続端子から延出されたプレスフィット端子と、を有するコネクタ、
前記位置決め用ガイド部に嵌合されたガイド受け部と、前記プレスフィット端子が貫通する開口と、を有し前記ハウジングが固定されたヒートシンク、
基板位置決め用ガイド部と、前記プレスフィット端子が圧着されたスルーホールとを有し、前記ヒートシンクにおける前記ハウジングが固定された面と反対側の面に固定された回路基板、を備えた回路接続装置
であって、
前記コネクタは、前記位置決め用ガイド部が突起部であり、前記プレスフィット端子は前記突起部と平行に延出され、
前記ヒートシンクは、前記ガイド受け部が貫通孔であり、
前記回路基板は、前記基板位置決め用ガイド部が前記貫通孔と同心の基板貫通孔であり、
前記回路基板の前記基板貫通孔の径は、前記ヒートシンクの前記貫通孔の径よりも大きく、
前記コネクタは、前記突起部の先端から前記ヒートシンクの前記ハウジングが固定された面までの長さが、前記プレスフィット端子の先端から前記回路基板の前記ヒートシンクに固定された面までの長さよりも長く、
前記ヒートシンクは、前記貫通孔の前記ハウジングが固定された面の側に前記貫通孔の径よりも大きい径の段付き孔を有する回路接続装置。
【請求項2】
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジングと、前記ハウジングの前記開口部と異なる側に設けられた位置決め用ガイド部と、前記接続端子から延出されたプレスフィット端子と、を有するコネクタ、
前記位置決め用ガイド部に嵌合されたガイド受け部と、前記プレスフィット端子が貫通する開口と、を有し前記ハウジングが固定されたヒートシンク、
基板位置決め用ガイド部と、前記プレスフィット端子が圧着されたスルーホールとを有し、前記ヒートシンクにおける前記ハウジングが固定された面と反対側の面に固定された回路基板、を備えた回路接続装置であって、
前記コネクタは、前記位置決め用ガイド部が突起部であり、前記プレスフィット端子は前記突起部と平行に延出され、
前記ヒートシンクは、前記ガイド受け部が貫通孔であり、
前記回路基板は、前記基板位置決め用ガイド部が前記貫通孔と同心の基板貫通孔であり、
前記回路基板の前記基板貫通孔の径は、前記ヒートシンクの前記貫通孔の径よりも大きく、
前記コネクタは、前記突起部の先端から前記ヒートシンクの前記ハウジングが固定された面までの長さが、前記プレスフィット端子の先端から前記回路基板の前記ヒートシンクに固定された面までの長さよりも長く、
前記ヒートシンクは、前記貫通孔の前記ハウジングが固定された面と反対側の面の側に前記貫通孔の径よりも大きい径の段付き孔を有す
る回路接続装置。
【請求項3】
前記コネクタは、前記プレスフィット端子を挟んでその両側に
一対の前記位置決め用ガイド部が設けられた請求項1
または2に記載の回路接続装置。
【請求項4】
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジングと、前記ハウジングの前記開口部と異なる側に設けられた位置決め用ガイド部と、前記接続端子から延出されたプレスフィット端子と、を有するコネクタ、
前記位置決め用ガイド部に嵌合されたガイド受け部と、前記プレスフィット端子が貫通する開口と、を有し前記ハウジングが固定されたヒートシンク、
基板位置決め用ガイド部と、前記プレスフィット端子が圧着されたスルーホールとを有し、前記ヒートシンクにおける前記ハウジングが固定された面と反対側の面に固定された回路基板、を備えた回路接続装置であって、
前記コネクタは、円柱状の柱状部と前記柱状部の軸に平行に四本のリブとが設けられた第一の位置決め用突起部と、前記柱状部と前記柱状部の軸に平行に二本の前記リブとが設けられた第二の位置決め用突起部を有す
る回路接続装置。
【請求項5】
前記コネクタは、前記柱状部と前記リブが、前記位置決め用突起部の先端に近づくに従って径が減少する請求項
4に記載の回路接続装置。
【請求項6】
前記回路基板は、前記ヒートシンクにねじ止めされた請求項1から
5のいずれか一項に記載の回路接続装置。
【請求項7】
前記コネクタは、前記ヒートシンクにねじ止めされた請求項1から
6のいずれか一項に記載の回路接続装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載の回路接続装置を備えた回転電機装置。
【請求項9】
プレスフィット端子が挿入されるスルーホール、基板位置決め用貫通孔、を有する回路基板が、前記基板位置決め用貫通孔と同心で前記基板位置決め用貫通孔の内径よりも小さい内径の貫通孔、前記プレスフィット端子を貫通させる開口、を有するヒートシンクの表側面に固定される第一のステップと、
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジング、前記ハウジングから前記開口部と異なる側に延出された位置決め用突起部、前記接続端子から前記位置決め用突起部と平行に延出された前記プレスフィット端子、を有するコネクタが、前記位置決め用突起部が前記貫通孔に嵌合され、前記プレスフィット端子が前記スルーホールに圧着されて、前記ヒートシンクの裏側面に固定される第二のステップと、を有する回路接続装置の製造方法
であって、
前記第一のステップにおいて、前記回路基板の側から前記回路基板の前記基板位置決め用貫通孔に挿入される治具位置決め突起部を有する基板組み付け治具を用いて前記回路基板の位置を調整し、前記ヒートシンクの前記裏側面から前記貫通孔に挿入される案内突起を有する案内治具を用いて前記ヒートシンクの位置を調整し、
前記治具位置決め突起部は、先端部と中間部にテーパが設けられ、前記先端部のテーパと前記案内突起に設けられた凹部の縁部で前記基板組み付け治具と前記ヒートシンクの位置が調整され、前記中間部のテーパと前記回路基板に設けた基板位置決め用貫通孔の縁部で前記基板組み付け治具と前記回路基板の位置が調整される回路接続装置の製造方法。
【請求項10】
プレスフィット端子が挿入されるスルーホール、基板位置決め用貫通孔、を有する回路基板が、前記基板位置決め用貫通孔と同心で前記基板位置決め用貫通孔の内径よりも小さい内径の貫通孔、前記プレスフィット端子を貫通させる開口、を有するヒートシンクの表側面に固定される第一のステップと、
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジング、前記ハウジングから前記開口部と異なる側に延出された位置決め用突起部、前記接続端子から前記位置決め用突起部と平行に延出された前記プレスフィット端子、を有するコネクタが、前記位置決め用突起部が前記貫通孔に嵌合され、前記プレスフィット端子が前記スルーホールに圧着されて、前記ヒートシンクの裏側面に固定される第二のステップと、を有する回路接続装置の製造方法であって、
前記第一のステップにおいて、前記回路基板の側から前記基板位置決め用貫通孔に挿入される、円筒状の可動突起と前記可動突起の円筒内部を通る固定突起から成る治具位置決め突起部、を有する基板組み付け治具を用いて前記回路基板と前記ヒートシンクの位置を調整し、
前記治具位置決め突起部は、
全体の先端部
である前記固定突起の先端部と
全体の中間部
である前記可動突起の先端部にテーパが設けられ、前記
全体の先端部のテーパと前記貫通孔の縁部で前記基板組み付け治具と前記ヒートシンクの位置が調整され、前記
全体の中間部のテーパと前記基板位置決め用貫通孔の縁部で前記基板組み付け治具と前記回路基板の位置が調整され
る回路接続装置の製造方法。
【請求項11】
前記治具位置決め突起部が軸方向に移動
し、前記固定突起の先端部と前記可動突起先端部が軸方向に相対移動可能であって、前記可動突起の先端部のテーパに押圧力が加わると前記固定突起の先端部の長さが伸びることによって、前記回路基板と前記ヒートシンクの位置が調整される請求項
10に記載の回路接続装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、回路接続装置、回転電機装置および回路接続装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外部接続用のコネクタのハウジングから所定の距離を空けて回路基板のスルーホールに接続する回路接続装置が存在する。ここで、回路接続装置とは、電子部品が実装された回路基板と、外部接続用のコネクタの端子が延出され回路基板のスルーホールと接続された装置である。例えば、回転電機装置の制御ユニットに回路接続装置が用いられている。回転電機装置の制御ユニットの回路基板には、回転電機を制御するインバータ、電源回路などに用いられるスイッチング素子、シャント抵抗、マイコン、ICなど発熱部品が搭載されている。このため、回路基板はヒートシンクに密着させて冷却し、回路基板にはヒートシンクを挟んで外部接続用のコネクタが接続されることが多い。このような場合にコネクタのハウジングからヒートシンクが設けられる所定のスペースを挟んで、コネクタの端子が回路基板のスルーホールに接続される。
【0003】
コネクタと回路基板のスルーホールの接続にはプレスフィット端子が使用されることがある。プレスフィット端子は、回路基板のスルーホールに挿入することで電気的接続が可能となる端子である。プレスフィット端子を用いることで半田付けせずに、回路基板とコネクタ端子の電気的接続を確保することができる。このため、プレスフィット端子を用いることで、回路接続装置の製造を容易にし、製造時間を短縮することができる。これによって、回路接続装置のコストを低減することができる。
【0004】
外部接続用のコネクタのハウジングから所定の距離を空けて回路基板のスルーホールにプレスフィット端子で接続する回路接続装置が提案されている。コネクタのハウジングから所定の距離を空けることで、プレスフィット端子先端までの距離が大きくなり、回路基板のスルーホールに挿入しにくくなる問題が発生する。
【0005】
コネクタのハウジングから回路基板のスルーホールまでの距離が大きくなっても、回路基板のスルーホールへのプレスフィット端子の挿入を容易とするため、端子整列部材を回路基板に設置する技術が開示されている。(例えば特許文献1)。端子整列部材は、回路基板のスルーホールに合致した貫通孔を有し、貫通孔に連通して外面へ至るに従い拡開した案内孔が備えられている。この案内孔によって、コネクタのプレスフィット端子の位置を調整し、スルーホールへの挿入を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された技術では、端子整列部材を回路基板に追加配置する必要がある。このため、回路接続装置の部品点数が増加し、製品コストが上昇する。また、回路基板に端子整列部材を組み付ける工程が必要であるため、工程数が増加し、製造コストが上昇し、製品コストがさらに上昇する。また、コネクタと回路基板との相対位置が基準寸法から大きくずれた場合、プレスフィット端子の先端が端子整列部材の案内孔または案内孔の周辺に鈍い角度で衝突し、端子が座屈するなど品質に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0008】
本願に係る回路接続装置は、上記のような従来装置の問題点を解決するための技術である。プレスフィット端子を備えたコネクタのハウジングから所定の距離を空けて回路基板のスルーホールに接続する回路接続装置において、プレスフィット端子と回路基板のスルーホールを高精度に位置決めし、信頼性を向上しかつ端子整列部材を必要とせず簡易な組立工程により製品コストの上昇を抑制した回路接続装置を得ることを目的とする。また、そのような回路接続装置を備えた回転電機装置を得ることを目的とする。さらに回路接続装置をプレスフィット端子と回路基板のスルーホールを高精度に位置決めし、信頼性を向上しかつ端子整列部材を必要とせず簡易な組立工程でコストの上昇を抑制して製造する製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願に係る回路接続装置は、
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジングと、ハウジングの開口部と異なる側に設けられた位置決め用ガイド部と、接続端子から延出されたプレスフィット端子と、を有するコネクタ、
位置決め用ガイド部に嵌合されたガイド受け部と、プレスフィット端子が貫通する開口と、を有しハウジングが固定されたヒートシンク、
基板位置決め用ガイド部と、プレスフィット端子が圧着されたスルーホールとを有し、ヒートシンクにおけるハウジングが固定された面と反対側の面に固定された回路基板、を備えた回路接続装置であって、
コネクタは、位置決め用ガイド部が突起部であり、プレスフィット端子は突起部と平行に延出され、
ヒートシンクは、ガイド受け部が貫通孔であり、
回路基板は、基板位置決め用ガイド部が貫通孔と同心の基板貫通孔であり、
回路基板の基板貫通孔の径は、ヒートシンクの貫通孔の径よりも大きく、
コネクタは、突起部の先端からヒートシンクのハウジングが固定された面までの長さが、プレスフィット端子の先端から回路基板のヒートシンクに固定された面までの長さよりも長く、
ヒートシンクは、貫通孔のハウジングが固定された面の側に貫通孔の径よりも大きい径の段付き孔を有するものである。
また、本願に係る回路接続装置は、
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジングと、ハウジングの開口部と異なる側に設けられた位置決め用ガイド部と、接続端子から延出されたプレスフィット端子と、を有するコネクタ、
位置決め用ガイド部に嵌合されたガイド受け部と、プレスフィット端子が貫通する開口と、を有しハウジングが固定されたヒートシンク、
基板位置決め用ガイド部と、プレスフィット端子が圧着されたスルーホールとを有し、ヒートシンクにおけるハウジングが固定された面と反対側の面に固定された回路基板、を備えた回路接続装置であって、
コネクタは、位置決め用ガイド部が突起部であり、プレスフィット端子は突起部と平行に延出され、
ヒートシンクは、ガイド受け部が貫通孔であり、
回路基板は、基板位置決め用ガイド部が貫通孔と同心の基板貫通孔であり、
回路基板の基板貫通孔の径は、ヒートシンクの貫通孔の径よりも大きく、
コネクタは、突起部の先端からヒートシンクのハウジングが固定された面までの長さが、プレスフィット端子の先端から回路基板のヒートシンクに固定された面までの長さよりも長く、
ヒートシンクは、貫通孔のハウジングが固定された面と反対側の面の側に貫通孔の径よりも大きい径の段付き孔を有するものである。
また、本願に係る回路接続装置は、
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジングと、ハウジングの開口部と異なる側に設けられた位置決め用ガイド部と、接続端子から延出されたプレスフィット端子と、を有するコネクタ、
位置決め用ガイド部に嵌合されたガイド受け部と、プレスフィット端子が貫通する開口と、を有しハウジングが固定されたヒートシンク、
基板位置決め用ガイド部と、プレスフィット端子が圧着されたスルーホールとを有し、ヒートシンクにおけるハウジングが固定された面と反対側の面に固定された回路基板、を備えた回路接続装置であって、
コネクタは、円柱状の柱状部と柱状部の軸に平行に四本のリブとが設けられた第一の位置決め用突起部と、柱状部と柱状部の軸に平行に二本のリブとが設けられた第二の位置決め用突起部を有するものである。
【0010】
本願に係る回転電機装置は、上記の回路接続装置を備えたものである。
【0011】
本願に係る回路接続装置の製造方法は、
プレスフィット端子が挿入されるスルーホール、基板位置決め用貫通孔、を有する回路基板が、基板位置決め用貫通孔と同心で基板位置決め用貫通孔の内径よりも小さい内径の貫通孔、プレスフィット端子を貫通させる開口、を有するヒートシンクの表側面に固定される第一のステップと、
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジング、ハウジングから開口部と異なる側に延出された位置決め用突起部、接続端子から位置決め用突起部と平行に延出されたプレスフィット端子、を有するコネクタが、位置決め用突起部が貫通孔に嵌合され、プレスフィット端子がスルーホールに圧着されて、ヒートシンクの裏側面に固定される第二のステップと、を有する回路接続装置の製造方法であって、
第一のステップにおいて、回路基板の側から回路基板の基板位置決め用貫通孔に挿入される治具位置決め突起部を有する基板組み付け治具を用いて回路基板の位置を調整し、ヒートシンクの裏側面から貫通孔に挿入される案内突起を有する案内治具を用いてヒートシンクの位置を調整し、
治具位置決め突起部は、先端部と中間部にテーパが設けられ、先端部のテーパと案内突起に設けられた凹部の縁部で基板組み付け治具とヒートシンクの位置が調整され、中間部のテーパと回路基板に設けた基板位置決め用貫通孔の縁部で基板組み付け治具と回路基板の位置が調整されるものである。
また、本願に係る回路接続装置の製造方法は、
プレスフィット端子が挿入されるスルーホール、基板位置決め用貫通孔、を有する回路基板が、基板位置決め用貫通孔と同心で基板位置決め用貫通孔の内径よりも小さい内径の貫通孔、プレスフィット端子を貫通させる開口、を有するヒートシンクの表側面に固定される第一のステップと、
開口部を持つ容器の内部に接続端子が収容されたハウジング、ハウジングから開口部と異なる側に延出された位置決め用突起部、接続端子から位置決め用突起部と平行に延出されたプレスフィット端子、を有するコネクタが、位置決め用突起部が貫通孔に嵌合され、プレスフィット端子がスルーホールに圧着されて、ヒートシンクの裏側面に固定される第二のステップと、を有する回路接続装置の製造方法であって、
第一のステップにおいて、回路基板の側から基板位置決め用貫通孔に挿入される、円筒状の可動突起と可動突起の円筒内部を通る固定突起から成る治具位置決め突起部、を有する基板組み付け治具を用いて回路基板とヒートシンクの位置を調整し、
治具位置決め突起部は、全体の先端部である固定突起の先端部と全体の中間部である可動突起の先端部にテーパが設けられ、全体の先端部のテーパと貫通孔の縁部で基板組み付け治具とヒートシンクの位置が調整され、全体の中間部のテーパと基板位置決め用貫通孔の縁部で基板組み付け治具と回路基板の位置が調整されるものである。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る回路接続装置によれば、プレスフィット端子と回路基板のスルーホールを高精度に位置決めし、信頼性を向上しかつ端子整列部材を必要とせず簡易な組立工程により製品コストの上昇を抑制することができる。
【0013】
また、本願に係る回転電機装置によれば、プレスフィット端子と回路基板のスルーホールを高精度に位置決めし、信頼性を向上しかつ端子整列部材を必要とせず簡易な組立工程により製品コストの上昇を抑制した回路接続装置を備えることができる。よって、回転電機装置の信頼性向上とコストの上昇を抑制することができる。
【0014】
さらに、本願に係る回路接続装置の製造方法によれば、端子整列部材を必要とせずプレスフィット端子と回路基板のスルーホールを高精度に位置決めし、信頼性を向上しかつ簡易な組立工程でコストの上昇を抑制して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施の形態1に係る回転電機装置の断面図である。
【
図2】実施の形態1に係る回路接続装置の斜視図である。
【
図3】実施の形態1に係る回路接続装置の回路基板の斜視図である。
【
図4】実施の形態1に係る回路接続装置のコネクタのヒートシンク取付面側から見た斜視図である。
【
図5】実施の形態1に係る回路接続装置のコネクタのコネクタ挿抜側から見た斜視図である。
【
図6】実施の形態1に係る回路接続装置のヒートシンクの斜視図である。
【
図7】実施の形態1に係る回路接続装置の基板組付治具の斜視図である。
【
図8】実施の形態1に係る回路接続装置の第一の組み立て図である。
【
図9】実施の形態1に係る回路接続装置の第二の組み立て図である。
【
図10】実施の形態1に係る回路接続装置の第三の組み立て図である。
【
図11】実施の形態1に係る回路接続装置の第四の組み立て図である。
【
図12】実施の形態1に係る回路接続装置の第五の組み立て図である。
【
図13】実施の形態1に係る回路接続装置の回路基板組付断面図である。
【
図14】実施の形態2に係る回路接続装置の案内治具の斜視図である。
【
図15】実施の形態2に係る回路接続装置の回路基板組付断面図である。
【
図16】実施の形態3に係る回路接続装置の回路基板組付断面図である。
【
図17】実施の形態4に係る回路接続装置のコネクタのヒートシンク取付面側から見た斜視図である。
【
図18】実施の形態4に係る回路接続装置のコネクタのヒートシンク取付面側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.実施の形態1
<回転電機装置>
以下、本願の実施の形態1に係る回路接続装置2および回転電機装置100について、図面を参照して説明する。
図1は、回転電機装置100の構成を示す断面図である。
図1は、回転電機装置100が備えた回転電機1のロータ5の回転軸4に沿った断面を示す。
【0017】
回転電機装置100は、多相巻線型の回転電機1と回路接続装置2を備えている。回路接続装置2は、電子部品が実装された回路基板11と、外部接続用のコネクタ17のハウジングから端子が延出され所定の距離を空けて回路基板11のスルーホールと接続された装置である。ここでは、回路接続装置2は、回転電機1のステータ6の電機子巻線7に流れる電流を制御する制御ユニットである。回路接続装置2は、コネクタ17と回路基板11の間にヒートシンク10を備えている。
【0018】
<回転電機>
回転電機1の構成について説明する。回転電機1は、円筒形状のケース3に内蔵された回転軸4と、回転軸4に固定されたロータ5と、ロータ5の外周面に対してエアギャップを介して対向する内周面を有するステータ6を備えている。ステータ6は、電機子巻線7が巻装され、ケース3の内面に圧入固定されている。
図1では、回転軸4の出力側を下側に、非出力側を上側に記載している。
【0019】
電機子巻線7に対して非出力側に環状配線部8が配置されている。環状配線部8は、電機子巻線7の端部にTIG溶接等で接続されている。配線接続端子9は、環状配線部8から回転電機の回転軸4の非出力側に、ヒートシンク10を貫通して延びている。配線接続端子9は、環状配線部8を介して電機子巻線7の巻線端部に電気的に接続されている。
【0020】
配線接続端子9は、電機子巻線7のU相巻線の配線接続端子と、V相巻線の配線接続端子と、W相巻線の配線接続端子と、夫々接続された3本の導体で構成されている。各相の配線接続端子9は回路接続装置2内に延長され、回路基板11に半田付け等で接続されている。
【0021】
ロータ5は、その周面に界磁極を構成する永久磁石(不図示)が複数対配置されている。回転軸4を回転自在に支持する第一の軸受12aと第二の軸受12bが、ロータ5に対して回転軸4の非出力側と出力側にそれぞれ配置されている。第一の軸受12aはヒートシンク10の回転軸部分に配置されている。ヒートシンク10は、回転電機装置100の内部を閉塞する蓋の役目をなす。一方、第二の軸受12bは、回転電機装置100の出力側の構造体13に固定されている。また、回転軸4の反出力側の端部には、センサロータ14が固定されている。センサロータ14は、1対、または複数対の永久磁石を備えている。
【0022】
<回路接続装置>
次に、回路接続装置2の構成について説明する。
図2は実施の形態1に係る回路接続装置2の斜視図である。回路接続装置2は外層をカバー15で覆われている(
図2は、カバー15を取り外した状態を示す)。回路接続装置2は、ヒートシンク10と、ヒートシンク10の両面に取り付けられたコネクタ17と、回路基板11から構成されている。コネクタ17は、ヒートシンク10のコネクタ取付面10aに取り付けられている。回路基板11は、ヒートシンク10の回路基板取付面10bに取り付けられている。なお、
図2ではコネクタ17のコネクタ挿抜側面17bが出力側を向いている例を示したが、コネクタ挿抜側面17bが反出力側となるように構成することも可能である。
【0023】
<回路基板>
図3は実施の形態1に係る回路接続装置2の回路基板11を基板ヒートシンク取付面11aから見た斜視図である。回路基板11は印刷配線基板とも称される。回路基板11には、センサロータ14と同軸上にギャップを介して回転センサ20が配置されている。回転センサ20は、回転軸4の回転とともに回転するセンサロータ14の永久磁石からの磁界の変化を検出して電気信号に変換する。なお、回転センサ20は、磁気センサであるとして説明したが、レゾルバ、ホールセンサ、光学センサ等を用いてもよい。
【0024】
回路基板11には、回転センサ20の他に、マイコン21、スイッチング素子22、シャント抵抗23などの発熱する電子部品が実装されている。これらを発熱部品18と総称する。また、回路基板11には、平滑コンデンサ24等の大型電子部品が実装されている。さらに、回路基板11には、コネクタ17のプレスフィット端子25を挿入するスルーホール26が配列された端子接続部27が設けられている。そして、回路基板11には、端子接続部27を挟むようにして基板位置決め用貫通孔28が設けられている。
【0025】
<コネクタ>
図4は実施の形態1に係る回路接続装置2のコネクタ17のヒートシンク取付面17aの側から見た斜視図である。
図5は実施の形態1に係る回路接続装置2のコネクタ17のコネクタ挿抜側面17bから見た斜視図である。コネクタ17は、外部電源(バッテリ)と接続する電源端子29を収容する電源側ハウジング16aとセンサ類と接続する信号端子30を収容する信号側ハウジング16bを備えている。電源側ハウジング16aと信号側ハウジング16bを含んでハウジング16と総称する。ハウジング16は、開口部を有した容器形状であり、接続端子を収容する。ここでは、ハウジング16が二つの部分に別れた例を示したが、全体で単一の容器形状でもよい。また、三つ以上の容器形状に別れていてもよい。接続端子は、すべて同じ形状の端子でもよいし、三種類以上の形状の端子に別れていてもよい。
【0026】
電源端子29と信号端子30から延出した、回路基板11へ接続する側の先端がプレスフィット端子25となっている。ここでは、プレスフィット端子25は、ハウジング16の開口部側に配置された電源端子29と信号端子30に対し、反対側に延出している例を示した。しかし、プレスフィット端子25は、ハウジング16の開口部と直角の方向など、開口部と異なる方向に延出されていてもよい。
【0027】
コネクタ17のヒートシンク取付面17aから伸びたプレスフィット端子25は回路基板11のスルーホール26に接続される。プレスフィット端子25は、回路基板11のスルーホール26に挿入することで電気的接続が可能となる端子である。プレスフィット端子25を用いることで半田付けせずに、回路基板11とコネクタ17の端子との電気的接続を確保することができる。このため、プレスフィット端子25を用いることで、回路接続装置2の製造を容易にし、製造時間を短縮することができる。これによって、回路接続装置2のコストを低減することができる。コネクタ17にはヒートシンク10との位置を決めるための円柱状の位置決め用突起部32が設けられている。位置決め用突起部32は、プレスフィット端子25と平行に延出している。また、位置決め用突起部32は、プレスフィット端子25を挟んで、その両側に設けられている。このため、位置決め用突起部32によって、プレスフィット端子25の正確な位置調整が可能となっている。
【0028】
ここで、回路基板11と組み合わされたヒートシンク10にコネクタ17が取り付けられた状態を考える。このとき、位置決め用突起部32の先端からヒートシンク10のコネクタ取付面10aまでの長さが、プレスフィット端子25の先端から回路基板11の基板ヒートシンク取付面11aまでの長さより長くなるように位置決め用突起部32の長さが設定されている。
【0029】
このように設定すると、コネクタ17を回路基板11が組付けられたヒートシンク10へ取り付けるとき、コネクタ17の位置決め用突起部32がヒートシンク10の貫通孔36に挿入開始された後、プレスフィット端子25が回路基板11のスルーホール26に挿入開始される。回路基板11のスルーホール26にプレスフィット端子25が挿入される前に、コネクタ17の位置決め用突起部32がヒートシンク10の貫通孔36に挿入され正確に位置決めされている。その結果、プレスフィット端子25の回路基板11のスルーホール26への挿入をスムーズに行うことができる。コネクタ17と回路基板11の位置関係を正確に設定できるので、プレスフィット端子25の先端が回路基板11のスルーホール26周辺に衝突し、プレスフィット端子25が座屈するといった品質に悪影響を及ぼす問題を防止できる。
【0030】
<ヒートシンク>
図6は、実施の形態1に係る回路接続装置2のヒートシンク10の回路基板取付面10bから見た斜視図である。ヒートシンク10の回路基板取付面10bに設けられた放熱部33には放熱グリス34が塗布される。これによって、回路基板11に実装されたスイッチング素子22、シャント抵抗23等の放熱が必要な発熱部品18が、放熱グリス34を介してヒートシンク10に放熱することが可能となる。
【0031】
また、ヒートシンク10の回路基板取付面10bには、平滑コンデンサ24等の大型電子部品との干渉を防ぐための、大型部品収容部38が設けられている。回転軸用貫通孔19は、回転軸の非出力側端に取り付けられたセンサロータ14によって、回転センサ20が回転軸4の回転状態を検出するための貫通孔である。
【0032】
なお、
図5では放熱が必要な電子部品を回路基板11の回転軸の出力側の面に配置する例を示したが、電子部品は回路基板11の回転軸の反出力側の面に配置してもよい。また、発熱部品18が存在する以外の範囲にも、回路基板11とヒートシンク10の間に放熱グリス34を充填することとしてもよい。
【0033】
ヒートシンク10には、コネクタ17のプレスフィット端子25を回路基板11のスルーホール26に挿入する際の干渉を防止するために開口35が設けられている。また、コネクタ17の位置決め用突起部32と嵌合する貫通孔36が設けられている。
【0034】
なお、回路基板11の基板位置決め用貫通孔28とコネクタ17の位置決め用突起部32とヒートシンク10の貫通孔36は同軸上に配置されている。また、ヒートシンク10の貫通孔36の径は回路基板11の基板位置決め用貫通孔28の径よりも小さくかつコネクタの位置決め用突起部32の径より僅かに大きく設定されている。
【0035】
上記のように、ヒートシンク10の貫通孔36、回路基板11の基板位置決め用貫通孔28、コネクタ17の位置決め用突起部32を設定することで、回路接続装置2の組立性が向上する。ヒートシンク10と回路基板11の相対位置を調整して正確に組み付けた後に、ヒートシンク10の貫通孔36にコネクタ17の位置決め用突起部32を嵌合させてコネクタ17を取り付けることができる。それぞれの相対位置が正確に調整されているので、コネクタ17のプレスフィット端子25を回路基板11のスルーホール26に容易かつ正確に圧入することが可能となる。
【0036】
以上の説明では、コネクタ17、ヒートシンク10および回路基板11の位置関係を調整するために、位置決め用突起部32、貫通孔36、基板位置決め用貫通孔28を設けた例を説明した。しかし、コネクタ17の位置決め用突起部32は、位置決め用ガイド部としての役割を果たすなら位置決め用凹部332とすることもできる。その場合ヒートシンク10のガイド受け部としての機能をはたすために貫通孔36でなくコネクタ位置決め用突起部336を設け、コネクタ17の位置決め用凹部332と嵌合させて正確な位置の調整を図ることとしてもよい。また、回路基板11の基板位置決め用ガイド部として機能を果たすためには、基板位置決め用貫通孔28をそのまま使用し、嵌合して位置の調整ができるようヒートシンク10に基板位置決め用突起部337を設けてもよい。(位置決め用凹部332、コネクタ位置決め用突起部336、基板位置決め用突起部337は不図示)
【0037】
このような構成を採用した場合でも、ヒートシンク10と回路基板11の相対位置を、基板位置決め用突起部337と基板位置決め用貫通孔28を嵌合させることによって調整して正確に組み付けた後に、ヒートシンク10のコネクタ位置決め用突起部336にコネクタ17の位置決め用凹部332を嵌合させてコネクタ17を正確に取り付けることができる。それによって、コネクタ17のプレスフィット端子25を回路基板11のスルーホール26に容易かつ正確に圧入することが可能となる。
【0038】
<基板組付治具>
次に、回路接続装置2の組立手順について説明する。
図7は実施の形態1に係る回路接続装置2の基板組付治具37の斜視図である。基板組付治具37の基板組付面37aにはヒートシンク10との位置を決めるための治具位置決め用突起部39と、回路基板11を加圧し、ヒートシンク10に塗布された放熱グリス34を押し広げるための柔軟な弾性材料で構成された加圧用突起部40が設けられている。
【0039】
基板組付治具37の治具位置決め用突起部39には第一柱状部41、第二柱状部42、中間テーパ部43及び先端テーパ部44が備えられている。第一柱状部41の径は第二柱状部42の径よりも小さく、かつヒートシンク10に設けられた貫通孔36の径よりも僅かに小さく設定されている。
【0040】
第二柱状部42の径は回路基板11に設けられた基板位置決め用貫通孔28の径よりも僅かに大きく設定されている。また、中間テーパ部43の角度は、第一柱状部41、第二柱状部42の円筒部に対して1°から60°の範囲で設定されている。
【0041】
加圧用突起部40は放熱が必要な発熱部品18の周辺に配置されていることが望ましい。放熱グリス34を、押し広げるためである。また、基板組付治具37と設備の間には基板組付治具37が基板組付面37aに対して平行な方向に自由に動くことができるようフローティング機構が設けられる(図示せず)。また上記基板組付治具37とは別にヒートシンク10を固定する治具がヒートシンク10の直下に設けられている(図示せず)。
【0042】
<組立手順>
図8から12は、実施の形態1に係る回路接続装置2の第一から第五の組み立て図である。
図8は、第一の組み立て図である。
図8では、基板組付治具37を、
図7とは天地を逆に設定し基板組付面37aを下側としている。下方から回路基板11の基板ヒートシンク非取付面11bを上側にして基板組付治具37に取り付ける。回路基板11の基板位置決め用貫通孔28に基板組付治具37の第一柱状部41を挿入する前の状態を示している。
【0043】
図9は、第二の組み立て図である。
図9では、ヒートシンク10に対し、ヒートシンク10の回路基板取付面10bに回路基板11を基板組付治具37にセットしたまま取り付ける状態が表されている。ヒートシンク10の回路基板取付面10bを表側面と称する。基板組付治具37の第一柱状部41をヒートシンク10の貫通孔36に挿入する。この際、第一柱状部41と貫通孔36の間には隙間が生じる。
【0044】
図10は、第三の組み立て図である。
図10では、基板組付治具37の基板組付面37aの裏面である基板非組付面37bに対して垂直方向に荷重を印加する(
図10の矢印の方向)。回路基板11をヒートシンク10に押し付けた状態でネジ締めして固定する。
図7から
図10には示していないが、回路基板11とヒートシンク10の位置を正確に調整した状態でネジ締め固定するために、基板組付治具37にはネジ締め用の貫通孔が設けられている。また、回路基板11とヒートシンク10の固定には、ネジ締め以外に、接着剤による固定、溶接による固定、蝋付けによる固定、半田付けによる固定、圧着などの固定方法を採用してもよい。
図10で、回路基板11とヒートシンク10をネジ締めした状態で、XIII-XIIIで示す破線で示した断面で切断した断面図を
図13に示す。
【0045】
図11は、第四の組み立て図である。
図11では、ネジ締め固定した回路基板11とヒートシンク10を基板組付治具37から取り外して天地を反転させ、ヒートシンク10のコネクタ取付面10aを上にして設置する。ヒートシンク10のコネクタ取付面10aを裏側面と称する。コネクタ17の位置決め用突起部32をヒートシンク10の貫通孔36に挿入する。
【0046】
図12は、第五の組み立て図である。
図12では、コネクタ17をヒートシンク10に押しこみ、コネクタ17のヒートシンク取付面17aの裏面であるコネクタ挿抜側面17bに対して垂直方向に荷重を印加する(
図12の矢印の方向)。プレスフィット端子25がスルーホール26に圧入され固定される。
【0047】
ここで、必要に応じてプレスフィット端子25の先端から圧力をかけて軸方向に加圧してもよい。プレスフィット端子25には、軸方向の加圧によって径が拡大しスルーホール26に圧着される種類の製品があるからである。スルーホール26に挿入するだけで、電気的接触を保つ製品の場合は、先端から圧力をかけて軸方向に加圧する工程は省略できる。
【0048】
図13は、実施の形態1に係る回路接続装置2の回路基板組付断面図である。
図10に示す基板組付治具37、回路基板11およびヒートシンク10を、XIII-XIIIで示す破線で示した断面で切断した断面図である。基板組付治具37により回路基板11に荷重が印加される(
図13の矢印で示す)。回路基板11の基板位置決め用貫通孔28の縁部に治具位置決め用突起部39の中間テーパ部43が押し当てられる。そして基板位置決め用貫通孔28と、治具位置決め用突起部39の中間テーパ部43の、互いの中心が一致するように回路基板11の位置が水平方向に移動し調整される。この際、ヒートシンク10に塗布された放熱グリス34が加圧用突起部40によって押し広げられる。
【0049】
ヒートシンク10の貫通孔36に対して、先端テーパ部44を有する治具位置決め用突起部39の第一柱状部41が挿入されることによって、治具位置決め用突起部39に対するヒートシンク10の水平位置が調整される。そして、回路基板11の基板位置決め用貫通孔28に対して基板組付治具37の中間テーパ部43が挿入されることによって、治具位置決め用突起部39に対する回路基板11の水平位置が精度よく調整される。
【0050】
その結果、ヒートシンク10と回路基板11の水平位置が精度よく調整される。これによって、後工程でコネクタ17をヒートシンク10に取り付ける際に、コネクタ17のプレスフィット端子25と回路基板11のスルーホール26の位置が正確に合致し、プレスフィット端子25を、スルーホール26にスムーズに挿入することができる。
【0051】
コネクタ組付け工程では、コネクタ17の位置決め用突起部32をヒートシンク10の貫通孔36に挿入する。これによって、コネクタ17とヒートシンク10の位置が調整される。そのうえで、コネクタ17のヒートシンク取付面17aとヒートシンク10のコネクタ取付面10aが接する方向にコネクタ17を移動し、プレスフィット端子25をスルーホール26へ挿入する。
【0052】
<効果>
以上のように構成された装置により得られる効果を説明する。回転電機装置100において、プレスフィット端子25とスルーホール26の中心位置がずれたままコネクタ17を組付けると端子の座屈による挿入不良、スルーホール26の損傷が発生するおそれがある。そのような場合には、回路基板11の電気的絶縁性が低下して配線パターン、端子間で短絡が生じる懸念がある。
【0053】
実施の形態1に係る回路接続装置2では、ヒートシンク10に開口35を設けて、プレスフィット端子25とヒートシンク10との干渉を防止し、ヒートシンク10を介して回路基板11とコネクタ17を正確に配置することが可能となる。回路基板11の基板位置決め用貫通孔28とコネクタ17の位置決め用突起部32とヒートシンク10の貫通孔36を同軸上に配置している。これによって、ヒートシンク10に設けられた貫通孔36を用いて、回路基板11とコネクタ17を位置決めすることで組立て時の位置ばらつきを低減することが可能となり、プレスフィット端子25とスルーホール26の中心を高精度に位置決めできる。
【0054】
また、位置決め用突起部32は、プレスフィット端子25を挟んで、その両側に設けられている。このため、位置決め用突起部32によって、プレスフィット端子25とスルーホール26の中心を高精度に位置調整することが可能となっている。
【0055】
回転電機装置100の回路接続装置2の回路基板11には、回転電機1を制御するインバータ、電源回路などに用いられるスイッチング素子、シャント抵抗、マイコン、ICなど発熱部品18が搭載されている。このため、回路基板11はヒートシンク10を密着させて冷却し、回路基板11にはヒートシンク10を挟んで外部接続用のコネクタ17が接続されることが多い。このような場合にコネクタ17のハウジング16と回路基板11の間に位置するヒートシンク10を利用して、コネクタ17と回路基板11の位置を正確に調整することで、端子整列部材を必要とせず簡易な組立工程により回路接続装置2を提供することができる。このような利点は、回転電機装置100に限らず、ヒートシンクを利用する回路接続装置2を用いる、インバータ装置、DC-DCコンバータ装置、マイコン応用制御装置など多くの応用分野の回路接続装置2に適用することができる。
【0056】
ここで、回路基板11の基板位置決め用貫通孔28の径をヒートシンク10の貫通孔36の径よりも大きくしている。このため、基板組付治具37に荷重を印加し、回路基板11の基板位置決め用貫通孔28の縁部に治具位置決め用突起部39の中間テーパ部43を押し当てて、互いの中心が一致するように回路基板11の水平位置を調整することができる。これによって、回路基板11を高精度にヒートシンク10に組付けることが可能となる。
【0057】
また、コネクタ17の位置決め用突起部32先端からヒートシンク10のコネクタ取付面10aまでの長さが、プレスフィット端子25先端から回路基板11の基板ヒートシンク取付面11aまでの長さよりも長くなるように位置決め用突起部32の長さを設定している。これによって、コネクタ17の位置決め用突起部32をヒートシンク10の貫通孔36に挿入し、位置を規制したうえでプレスフィット端子25をスルーホール26に挿入することができる。その結果、プレスフィット端子25をスルーホール26に確実に挿入することができる。
【0058】
さらに、基板組付治具37に荷重を印加する際に、加圧用突起部40によって放熱グリス34を押し広げることができるため、組立工程を簡素化し、製品コストを低減することが可能となる。また、部品点数を増やすことなく省スペースで簡易な構造で高精度な位置決めができるため製造コストを抑えることができる。
【0059】
このように、プレスフィット端子25を備えたコネクタ17を有する回路接続装置2において、プレスフィット端子25をスルーホール26へ高精度に位置決めし、信頼性を向上しかつ簡易な組立工程により製造できるので製品コストを抑制することが可能となる。また、プレスフィット端子25をスルーホール26へ高精度に位置決めし、信頼性を向上しかつ簡易な組立工程により製造コストを抑制した回路接続装置2の製造方法を提供することが可能となる。
【0060】
このような回路接続装置2を備えた回転電機装置100では、同様に信頼性を向上しかつ簡易な構造により製品コストを抑えた回転電機装置100を提供することが可能となる。
【0061】
2.実施の形態2
実施の形態2について図に基づいて説明する。実施の形態2に係る回路接続装置2は、実施の形態1の変形例であり、プレスフィット端子25とスルーホール26の位置決め精度のさらなる向上を目的としている。本実施の形態では、基板組付治具37の先端テーパ部44を、ヒートシンク10のコネクタ取付面10aに当接させて設けた案内治具47の凹部48に押し当てる構成について説明する。
【0062】
図14は実施の形態2に係る回路接続装置2の案内治具47を、ヒートシンク下支面47aから見た斜視図である。案内治具47は、先端テーパ部49と先端面に設けられた凹部48を備えた円柱状の案内突起50を有する。実施の形態1に係る回路接続装置2と異なるのは、ヒートシンク110の貫通孔136の形状と、案内治具47を追加したことだけである。よって、回路接続装置2の符号は実施の形態1と同じとしている。
【0063】
図15は実施の形態2に係る回路接続装置2の回路基板組付断面図である。案内治具47はヒートシンク110のコネクタ取付面110aに下方より組付けられる。
【0064】
ヒートシンク110に設けられた貫通孔136のコネクタ取付面110aの側には貫通孔136の同軸上に貫通孔136より径の大きい段付孔51が設けられている。回路基板11、基板組付治具37およびコネクタ17の形状については実施の形態1と同様である。
【0065】
次に、回路接続装置2の組立て方法について説明する。ヒートシンク110に設けた段付孔51の縁部に案内治具47の先端テーパ部49を押し当てる。その後、基板組付治具37に回路基板11を組付けた状態で基板組付治具37の治具位置決め用突起部39の第一柱状部41をヒートシンク110の貫通孔136に挿入する。
【0066】
第一柱状部41の挿入後、基板組付治具37の基板非組付面37bに対して、案内治具47をヒートシンク10に押し付ける荷重(
図15の上向き矢印で示す)よりも大きい荷重を、垂直方向に印加する(
図15の下向き矢印で示す)。この際、基板組付治具37の先端テーパ部44が案内治具47の凹部48に押し当てられる。以上のように構成された装置により得られる効果を説明する。
【0067】
実施の形態2では、ヒートシンク10に設けられた貫通孔36の同軸上に前記貫通孔36より径の大きい段付孔51を設けた。ヒートシンク110の段付孔51の縁部に対し、案内治具47の案内突起50の先端テーパ部49が押圧されることで、案内治具47に対してヒートシンク110の水平位置が正確に調整される。
【0068】
案内突起50の径を大きくし、基板組付治具37の先端テーパ部44が当接する凹部48を案内突起50の先端に設けた。基板組付治具37を下方に押圧して案内治具47の案内突起50の先端の凹部48の縁部に基板組付治具37の先端テーパ部44を押し当てることで、基板組付治具37と案内治具47の相対位置を調整しつつ、基板組付治具37とヒートシンク110の位置を調整する。
【0069】
基板組付治具37の基板非組付面37bに対して、案内治具47をヒートシンク10に押し付ける荷重よりも大きい荷重を、垂直方向に印加することで、基板組付治具37とヒートシンク10の位置を調整したうえで、回路基板11と基板組付治具37の位置を調整することができる。そのため、回路基板11とヒートシンク10の位置を高精度に調整することができる。すなわち、実施の形態1での効果に加え、ヒートシンク10と回路基板11をさらに高精度に位置決めすることが可能となる。
【0070】
3.実施の形態3
実施の形態3について図に基づいて説明する。実施の形態3に係る回路接続装置2は、実施の形態1の変形例であり、プレスフィット端子25とスルーホール26の位置決め精度の向上に加え、組立て時の回路基板11への負荷を低減することを目的としている。本実施の形態では、基板組付治具137の円筒状の可動突起53が軸方向に移動する構成について説明する。
【0071】
図16は実施の形態3に係る回路接続装置2の回路基板組付断面図である。実施の形態3の基板組付治具137は、円筒状の可動突起53が固定された可動板54、可動突起53の円筒内部を通る固定突起55と加圧用突起部140を備えたベース板56、固定突起55を内部に通し可動板54とベース板56の間に配置されたばね57、を備えている。実施の形態1の回路接続装置2と異なるのは、ヒートシンク210の貫通孔236の形状と、基板組付治具137の構成だけである。よって、回路接続装置2の符号は実施の形態1と同じとしている。
【0072】
可動突起53の先端には基板押し付け部58が固定突起55の先端には先端テーパ部59が設けられている。また、可動板54には加圧用突起部140が貫通する逃がし孔60が設けられている。また、ヒートシンク210の貫通孔236の回路基板取付面210b側には貫通孔236の同軸上に前記貫通孔236より径の大きい段付き孔61が設けられている。回路基板11およびコネクタ17の形状については実施の形態1と同様である。
【0073】
実施の形態3に係る回路接続装置2では、基板組付治具137に荷重を印加した際、基板押し付け部58が回路基板11の基板位置決め用貫通孔28の縁部に押し当てられ、ばね57による反力で回路基板11がヒートシンク210に押し当てられる。さらに荷重を印加すると、固定突起55の先端テーパ部59がヒートシンク210の段付き孔61の縁部に当接する。以上のように構成された装置により得られる効果を説明する。
【0074】
実施の形態3に係る回路接続装置2では、ヒートシンク210の貫通孔236の回路基板取付面210bの側に貫通孔236の同軸上に前記貫通孔236より径の大きい段付き孔61を設けることで、可動突起53の基板押し付け部58の長さを長く設定することが可能となる。固定突起55の先端テーパ部59をヒートシンク10の段付き孔61の縁部に押し当てることで、ヒートシンク10と基板組付治具137の位置を正確に調整することができる。また、可動突起53の基板押し付け部58を回路基板11の基板位置決め用貫通孔28の縁部に押し当てることで、回路基板11と基板組付治具137の位置を高精度に調整することができる。
【0075】
これらの結果として、回路基板11とヒートシンク210を高精度に調整することが可能となる。また可動突起53の基板押し付け部58を回路基板11の基板位置決め用貫通孔28の縁部に押し当てる際、可動突起53が移動してばね57による弾性力で回路基板11を保持するため、回路基板11への過剰な負荷を抑え、回路基板11の破損を防止することができる。
【0076】
4.実施の形態4
実施の形態4について、図に基づいて説明する。実施の形態4に係る回路接続装置2は、実施の形態1から3の変形例であり、プレスフィット端子25とスルーホール26の位置決め精度のさらなる向上を目的としている。実施の形態4に係る回路接続装置2では、コネクタ17の突起部に圧入固定用リブを設けたことを特徴とする。
【0077】
図17は、実施の形態4に係る回路接続装置2のコネクタ117をヒートシンク取付面117aの側から見た斜視図である。
図18は、コネクタ117をヒートシンク取付面117aの側から見た正面図である。コネクタ117のヒートシンク取付面117a上に、第一突起部64と第二突起部65が設けられている。第一突起部64は、円柱状の柱状部64bと柱状部周囲に互いに間隔を空けて互いに直角に配置された4本のリブ64aを有する。リブ64aは柱状部64bの軸と平行に伸びている。第二突起部65は、円柱状の柱状部65bと柱状部周囲に互いに間隔を空けて同一線上に配置された2本のリブ65aを有している。リブ65aは柱状部65bの軸と平行に伸びている。
【0078】
柱状部64b、65b及びリブ64a、65aの先端には先端に近づくに従って径が小さくなる方向に傾斜部64c、傾斜部65cが設けられている。これにより、第一突起部64と第二突起部65をヒートシンク10の貫通孔36に挿入しやすくなる。また、圧入したときに、リブ64a、リブ65aが削れても異物が発生しにくい形状となっている。
【0079】
回路基板11、ヒートシンク10および基板組付治具37の形状については実施の形態1と同様である。以上のように構成された装置により得られる効果を説明する。
【0080】
コネクタ組付け工程では、コネクタ117のヒートシンク取付面117aとヒートシンク10のコネクタ取付面10aが接する方向にコネクタ117を挿入する。コネクタ117とヒートシンク10の位置決めにおいて、第一突起部64に設けた4本のリブ64aとヒートシンク10に設けた貫通孔36でコネクタ117の平面方向の位置を規制する。コネクタ117の第二突起部65に設けた2本のリブ65aとヒートシンク10に設けた貫通孔36で回転方向の位置を規制する。
【0081】
その後、コネクタ117の柱状部64b、65b周囲のリブ64a、65bをヒートシンク10の貫通孔36の内周に圧入することでコネクタ17を固定する。第二突起部65に設けたリブ65aの本数を第一突起部64よりも少なくし、第二突起部65でコネクタ17を完全に固定しないことで、第一突起部64、第二突起部65及び貫通孔36の位置ずれに対して遊びを持たせ、位置ずれが発生した場合でもコネクタ17が浮いてしまうことを防止する。またリブ64a、65bを圧入する際の圧入荷重が、プレスフィット端子25の挿入荷重よりも低くなるようにリブ64a、65bの外径が設定されている。
【0082】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0083】
1 回転電機、2 回路接続装置、10、110、210 ヒートシンク、10a、110a コネクタ取付面、10b、210b 回路基板取付面、11 回路基板、11a 基板ヒートシンク取付面、11b 基板ヒートシンク非取付面、16 ハウジング、17 コネクタ、17a ヒートシンク取付面、17b コネクタ挿抜側面、28 貫通孔、29 電源端子、30 信号端子、32 位置決め用突起部、35 開口、36、136、236 貫通孔、37、137 基板組付治具、37a 基板組付面、37b 基板非組付面、39 治具位置決め用突起部、41 第一柱状部、42 第二柱状部、43 中間テーパ部、44 先端テーパ部、47 案内治具、47a ヒートシンク下支面、48 凹部、49 先端テーパ部、50 案内突起、51 段付孔、55 固定突起、58 基板押し付け部、59 先端テーパ部、61 段付き孔、64 第一突起部、65 第二突起部、64a、65a リブ、64b、65b 柱状部、64c、65c 傾斜部、100 回転電機装置