(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】凝集を低減したシリカ粉末、及び樹脂組成物、並びに半導体封止材
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20241206BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20241206BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241206BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241206BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C01B33/18 Z
C08K3/36
C08L101/00
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2023520999
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2022019592
(87)【国際公開番号】W WO2022239708
(87)【国際公開日】2022-11-17
【審査請求日】2023-10-02
(31)【優先権主張番号】P 2021081341
(32)【優先日】2021-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相京 輝洋
(72)【発明者】
【氏名】南川 孝明
(72)【発明者】
【氏名】畑山 靖明
(72)【発明者】
【氏名】林 直人
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/031267(WO,A1)
【文献】特表2009-503166(JP,A)
【文献】特開2019-167462(JP,A)
【文献】特開2019-189509(JP,A)
【文献】特開2009-298461(JP,A)
【文献】特開2015-189638(JP,A)
【文献】特開2007-070159(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103044857(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104497494(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 - 33/193
C08K 3/36
C08L 101/00
H01L 23/29
H01L 23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、下記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(D
max)が5.0μm以下であ
り、
かつ比表面積(BET)が2~15m
2
/gである、シリカ粉末。
(測定方法)
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製する。前記樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(D
max)を測定する。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用する。
【請求項2】
体積基準累積径(D90)が2.5μm以下である、請求項1に記載のシリカ粉末。
【請求項3】
体積基準累積径(D100)が4.7μm以下である、請求項1または2に記載のシリカ粉末。
【請求項4】
下記式(1)から算出される、体積基準累積径(D100)と体積基準累積径(D90)との差分に対する、体積基準累積径(D90)の体積基準頻度の値が、1.0~3.0である、請求項1または2に記載のシリカ粉末。
(体積基準累積径(D90)の体積基準頻度)/(体積基準累積径(D100)-体積基準累積径(D90)) ・・・(1)
【請求項5】
請求項1または2に記載のシリカ粉末と、樹脂とを含む、樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂が熱硬化性樹脂を含む、請求項
5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項
5に記載の樹脂組成物を用いてなる、半導体封止材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝集を低減したシリカ粉末、及び樹脂組成物、並びに半導体封止材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体封止材用途や絶縁基板用途等に用いられるシリカ粉末においては、凝集した粒子や粗大化した粒子が、パッケージの破損やリード線の短絡、基板上の凹凸や、ホワイトスポット等の原因となることから、その低減が求められている。また、粗大粒子を含むシリカ粉末を樹脂に配合した場合、樹脂の流動性低下の原因となり、このような樹脂組成物を半導体封止材として用いると、半導体の破損や成形不良等が発生しやすくなる。これらの観点から、凝集しにくく、粗大粒子が少ないシリカ粉末が求められている。
【0003】
ところで、平均粒子径が2.0μm以下のシリカ粉末は、シリカ粉末に働く力(重量、液架橋力、ファンデルワールス力等)の関係でより凝集しやすいことが知られている。このような粒子径を有するシリカ粉末は、装置や容器への付着性も高いため、シリカ粉末が輸送配管や供給機に詰まってハンドリングが悪いという問題がある。このような背景から、粒子径が2.0μm以下のシリカ粉末は、篩などの分級では収率が非常に悪く、粗大粒子の少ないシリカ粉末を製造することは難しい。また、篩装置による振動でも凝集して粗大化するため、樹脂との混合時に所望の分散性が得られにくいという問題もある。
【0004】
近年、電子機器の小型軽量化、高性能化の要求に対応して、半導体の内部構造は、素子の薄型化、金線の小径化、ロングスパン化、配線ピッチの高密度化等が急速に進展している。このような半導体の封止材として、より平均粒子径の小さなシリカ粉末をフィラーとして配合した樹脂組成物が求められているが、前述の通り、平均粒子径の小さなシリカ粉末は凝集しやすく、ハンドリングが悪い。そのため、凝集しにくく、かつ粗大粒子の含有量が少なく、ハンドリングも良好な、小粒子径のシリカ粉末が求められている。
【0005】
係る課題に対して、例えば、特許文献1には、BETが2m2/g以上30m2/g未満であり、粒子径1.5μm以上の粒子含有量が0.1質量%以下のシリカ粉末が記載されている。しかしながら、特許文献1では湿式分級によって粗大粒子を除去しているため、粉末表面のヒューム成分の減少により粒度分布及び比表面積が変化し、樹脂への分散性が低下する。また、特許文献2には、粒径1μm~10μmの範囲に粒度分布の極大値を有する球状シリカ微粉末であって、目開き45μmの篩上の粗大粒子残留物が0.01重量%以下の球状シリカ微粉末が提案されている。しかしながら、特許文献2の方法では、粒度分布を変化させずに、粗大粒子のみを除去することが難しい。また、これら特許文献1、2では、粒子径が2.0μm以下の粉末については何ら検討されていない。
【0006】
【文献】特開2016-204236号公報
【文献】特開2015-86120号公報
【発明の概要】
【0007】
そこで本発明は、粒子径が2.0μm以下のシリカ粉末であって、凝集しにくく、ハンドリングが良好であり、かつ樹脂との混合時に分散しやすいシリカ粉末、及び前記シリカ粉末を含む樹脂組成物並びに半導体封止材を提供することを目的とする。
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であるシリカ粉末であれば、上記の全ての課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、下記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である、シリカ粉末。
(測定方法)
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製する。前記樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(Dmax)を測定する。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用する。
[2]体積基準累積径(D90)が2.5μm以下である、[1]に記載のシリカ粉末。
[3]体積基準累積径(D100)が4.7μm以下である、[1]または[2]に記載のシリカ粉末。
[4]比表面積(BET)が2~15m2/gである、[1]から[3]のいずれかに記載のシリカ粉末。
[5]下記式(1)から算出される、体積基準累積径(D100)と体積基準累積径(D90)との差分に対する、体積基準累積径(D90)の体積基準頻度の値が、1.0~3.0である、[1]から[4]のいずれかに記載のシリカ粉末。
(体積基準累積径(D90)の体積基準頻度)/(体積基準累積径(D100)-体積基準累積径(D90)) ・・・(1)
[6][1]から[5]のいずれかに記載のシリカ粉末と、樹脂とを含む、樹脂組成物。
[7]前記樹脂が熱硬化性樹脂を含む、[6]に記載の樹脂組成物。
[8][6]または[7]に記載の樹脂組成物を用いてなる、半導体封止材。
【0009】
本発明によれば、粒子径が2.0μm以下のシリカ粉末であって、凝集しにくく、ハンドリングが良好であり、かつ樹脂との混合時に分散しやすいシリカ粉末、及び前記シリカ粉末を含む樹脂組成物並びに半導体封止材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「~」の記載は、「以上以下」を意味する。例えば、「3~15」とは、3以上15以下を意味する。なお本明細書において、「粉末」とは「粒子の集合体」を意味する。
【0011】
[シリカ粉末]
本発明に係るシリカ粉末は、体積基準累積径(D50)が2.0μm以下であり、下記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であることを特徴とする。
(測定方法)
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製する。前記樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(Dmax)を測定する。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用する。
【0012】
本発明に係るシリカ粉末は、凝集しにくく、ハンドリングが良好であり、かつ樹脂との混合時に分散しやすい。
【0013】
本発明に係るシリカ粉末の体積基準累積径(D50)(以下、「D50」と記載することもある)は、2.0μm以下であり、1.5μm以下が好ましく、0.3~1.2μmがより好ましく、0.4~1.0μmが特に好ましい。本発明に係るシリカ粉末は、D50が2.0μm以下であっても、凝集しにくく、ハンドリングが良好である。また、樹脂との混合時に粒子同士が凝集しにくいため、分散性も良好である。なお、本明細書において、シリカ粉末の体積基準累積径(D50)とは、レーザー回折散乱法(屈折率:1.50)により測定される体積基準の累積粒度分布において、累積値が50%に相当する粒子径のことを指す。累積粒度分布は、横軸を粒子径(μm)、縦軸を累積値(%)とする分布曲線で表される。レーザー回折散乱法(屈折率:1.50)により測定される体積基準の累積粒度分布は、レーザー回折散乱式粒度分布測定機(ベックマン・コールター(株)製、製品名「LS-13 320XR」)を用いて、溶媒に水(屈折率:1.33)を用い、前処理として2分間、超音波発生器(SONICS MATERIALS INC社製、製品名「VC-505」)を用いて分散処理して測定する。
【0014】
本発明に係るシリカ粉末の、前記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)は5.0μm以下である。
グラインドゲージの溝部は傾斜状で徐々に溝が浅くなっている。そのため、溝の深さよりも粒径の大きな粒子が存在すると、形成膜に線状の痕跡が残ることとなる。したがって、形成膜の痕跡をグラインドゲージ上の目盛りと照らし合わせて確認することで、凝集体の有無と、その粒子径を確認することができる。本発明に係るグラインドゲージの測定方法において、「最大粒子径(Dmax)」とは、グラインドゲージの形成膜上に残された線状の痕跡のうち、最も粒子径の大きな位置に残された線状痕跡の値を意味する。本発明では、上記の評価を5回行ってその平均値を、「最大粒子径(Dmax)」とする。
【0015】
グラインドゲージの測定は、前述の通り、ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂中にシリカ粉末を分散させた樹脂組成物で行われる。この方法により、樹脂に分散させた際のシリカ粉末の分散性及び凝集の度合いを評価することができる。本発明に係るシリカ粉末は、前記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であり、これは、樹脂中でシリカ粉末の凝集が抑制されていることを意味する。すなわち、本発明に係るシリカ粉末は樹脂との混合時に分散しやすく、凝集しにくい。
グラインドゲージの測定に用いられるビスフェノールF型液状エポキシ樹脂としては、粘度が3,000~4,500mPa・s(25℃)であり、かつエポキシ当量が160~175g/eq.のものを用いることが好ましい。
前記最大粒子径(Dmax)は、4.5μm以下が好ましく、4.0μm以下が特に好ましい。
【0016】
本発明に係るシリカ粉末の体積基準累積径(D90)(以下、「D90」と記載することもある)は、2.5μm以下が好ましく、2.2μm以下がより好ましく、2.0μm以下がさらに好ましい。D90は、前述のD50と同様の方法で測定した体積基準の累積粒度分布において、累積値が90%に相当する粒子径のことを指す。すなわち、D90が2.5μm以下とは、凝集して粗大化した粒子がより少ないシリカ粉末であることを意味する。
【0017】
本発明に係るシリカ粉末の体積基準累積径(D100)(以下、「D100」と記載することもある)は、4.7μm以下が好ましく、4.2μm以下がより好ましく、4.0μm以下がさらに好ましい。D100は、前述のD50及びD90と同様の方法で測定した体積基準の累積粒度分布において、累積値が100%に相当する粒子径のことを指す。「D100が4.7μm以下」であるとは、シリカ粉末中に4.7μm超の粗大粒子が実質的に存在しないことを意味する。なお、「実質的に存在しない」とは、シリカ粉末中の4.7μm超の粗大粒子の割合が0.1質量%未満であることを意味する。このようなシリカ粉末は、ハンドリングがより良好となりやすく、また半導体封止材用樹脂組成物とした際に、配線のギャップ間に粗大粒子が入り込んで、短絡不良を起こすリスクをより低減しやすい。
【0018】
本発明に係るシリカ粉末の、下記式(1)から算出される、体積基準累積径(D100)と体積基準累積径(D90)との差分に対する、体積基準累積径(D90)の体積基準頻度の値は、1.0~3.0であることが好ましく、1.5~3.0であることがより好ましく、2.0~3.0であることがさらに好ましい。
(体積基準累積径(D90)の体積基準頻度)/(体積基準累積径(D100)-体積基準累積径(D90)) ・・・(1)
式(1)において、「体積基準累積径(D90)の体積基準頻度」(以下、「D90の体積基準頻度」と記載することもある)は、前述のレーザー回折散乱法(屈折率:1.50)により測定される体積基準の累積粒度分布において、累積値が90%に相当する粒子径の頻度を意味する。シリカ粉末の、D100とD90との差分に対する、D90の体積基準頻度が前記範囲内であれば、凝集がより起こりにくく、粗大粒子がより少ない。このようなシリカ粉末は、ハンドリングがより良好となりやすく、また半導体封止材用樹脂組成物とした際に、配線のギャップ間に粗大粒子が入り込んで、短絡不良を起こすリスクをより低減しやすい。
また、D100とD90との差分(D100-D90)は、2.3μm以下であることが好ましく、2.0μm以下であることがより好ましい。D100とD90との差分が前記範囲内であれば、粒度分布がより狭いシリカ粉末となる。このようなシリカ粉末は粗大粒子がより少なく、かつ樹脂への分散性がより良好となりやすい。
【0019】
本発明に係るシリカ粉末の、D50とD90の比率(D90/D50)は、2.2以下が好ましく、2.0以下がより好ましく、1.4~2.0がさらに好ましい。D90/D50が2.2以下であれば、粒度分布がより狭いシリカ粉末となりやすい。このようなシリカ粉末は、より凝集しにくく、ハンドリングがより良好となるため好ましい。
【0020】
本発明に係るシリカ粉末の、D50とD100の比率(D100/D50)は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。3.0~4.0がさらに好ましい。D100/D50が5.0以下であれば、粒度分布がより狭いシリカ粉末となりやすい。このようなシリカ粉末は、より凝集しにくく、ハンドリングがより良好となるため好ましい。
【0021】
本発明に係るシリカ粉末において、BET法により測定した比表面積は、2~15m2/gであることが好ましく、3~12m2/gであることがより好ましく、3~8m2/gであることがさらに好ましい。本発明に係るシリカ粉末は、D50が2.0μm以下でありながら、比較的小さな比表面積を有することができる。本発明に係るシリカ粉末は粒度分布が比較的狭く、より微細な粒子の割合が少ない。また、粒子同士の凝集が抑制されているため、前記範囲の比表面積を実現しやすい。なお、本明細書において、BET法による比表面積の測定は、「Macsorb HM model-1208」(マウンテック社製)により行った。
【0022】
本発明に係るシリカ粉末は、半導体チップと液状封止材との熱膨張率を近づけるという点、半田耐熱性、耐湿性、金型の低摩耗性という観点において、結晶質シリカ粉末を高温で溶融する方法で製造された非晶質シリカ粉末がより好ましい。
【0023】
本発明に係るシリカ粉末は、球状のシリカ粉末であることが好ましく、球状の非晶質シリカ粉末であることがより好ましい。「球状」の程度としては、平均球形度が0.85以上であることが好ましい。なお、平均球形度は実体顕微鏡(例えば、製品名「モデルSMZ-10型」、(株)ニコン製)、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡等にて撮影した粒子像を画像解析装置(例えば、日本アビオニクス(株)製等)に取り込み、以下のようにして測定して算出することができる。すなわち、写真から粒子の投影面積(A)と周囲長(PM)を測定する。周囲長(PM)に対する真円の面積を(B)とすると、その粒子の真円度はA/Bとして表示できる。そこで試料粒子の周囲長(PM)と同一の周囲長をもつ真円を想定すると、PM=2πr、B=πr2であるから、B=π×(PM/2π)2となり、個々の粒子の球形度は、球形度=A/B=A×4π/(PM)2として算出することができる。このようにして得られた任意の粒子200個の球形度を求めてその平均値を平均球形度とできる。
【0024】
シリカ粉末は表面改質剤によって処理されていてもよい。表面改質剤で処理されていることにより、粒子同士がより凝集しにくくなり、樹脂への分散性もより良好となりやすい。シリカ粉末を表面改質剤で処理する場合、粒子の表面全体が改質処理されていてもよく、その表面の一部が改質処理されていてもよい。
【0025】
表面改質剤としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、従来、シリカ粉末等のフィラーに用いられている表面改質剤を適宜使用できる。例えば、シラン化合物、シラザン化合物、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
[シリカ粉末の製造方法]
次に、本発明に係るシリカ粉末の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るシリカ粉末は、従来公知の方法で調製した原料粉末を分級することによって製造できる。本明細書において、「原料粉末」とは、分級処理前の粗大粒子を含むシリカ粉末のことを意味する。また、原料粉末を調製するための粉末を「粗原料粉末」と記載する。
原料粉末の製造方法としては、従来公知の方法が採用でき、例えば、炉内に形成された高温の火炎中に粗原料粉末を直接供給して原料粉末を得る方法、又は粗原料粉末を含むスラリーを火炎中に噴霧して溶媒を除去し、原料粉末を得る方法等が挙げられる。
【0027】
原料粉末を分級する方法は、通常、乾式法及び湿式法に大別される。
乾式法としては、例えば、篩分級法、気流分級法等が挙げられる。湿式法としては、例えば、原料粉末を溶媒に分散させたうえで、フィルター等を通過させて粗大粒子を除去するフィルター分級と、流体状にして沈降速度の差を利用して粗大粒子を除去する流体分級とが挙げられる。
本実施形態に係る製造方法は、収率が低下しにくく、また粒度分布や比表面積が変化して樹脂への分散性が低下することを防ぐ観点から、原料粉末を気流分級して、粗大粒子を除去することを含むことが好ましい。
【0028】
気流分級は、原料粉末を気流中に分散させて、粒子の重力や慣性力、遠心力等を利用して、粗大粒子を除去する方法である。
慣性力を利用する方法としては、例えば、分級装置の内部に案内羽根等を設けて空気の旋回流を作ることで、気流で勢いをつけた原料粉末を曲線に曲げる際に粗大粒子を除去するインパクタ型;原料粉末に遠心力を働かせて分級する半自由渦遠心式;コアンダ効果を利用したコアンダ型等が挙げられる。また、慣性力を利用した分級装置としては、カスケードインパクタ、バイアブルインパクタ、エアロファインクラシファイア、エディクラシファイア、エルボージェット、ハイパープレックス、コアンダブロック等が挙げられる。
遠心力を利用する方法としては、例えば、渦状気流を利用して粗大粒子を除去する方法が挙げられる。装置としては、自由渦型と強制渦型が挙げられる。自由渦型装置は案内羽根のないサイクロン、多段サイクロン、二次エアーを使用し凝集の解消を促すターボプレックス、案内羽根を設けて分級精度を高めたディスパージョンセパレータ、マイクロスピン、マイクロカット等が挙げられる。強制渦型は装置内部の回転体で粒子に遠心力を働かせ、さらに装置内部に別の気流を作ることにより分級精度を高めた装置で、ターボクラシファイアやドナセレックなどが挙げられる。
【0029】
本実施形態に係る製造方法においては、生産効率、分級精度の観点から、慣性力を利用した気流分級が好ましく、コアンダ効果を利用した気流分級によって原料粉末を分級することを含むことがより好ましい。また、分級精度の観点から、気流温度は150℃未満が好ましく、40~130℃がより好ましく、60~120℃がさらに好ましい。
【0030】
本実施形態に係るシリカ粉末の製造方法は、例えば、以下の工程を有していてもよい。
(i)必要に応じて、鉱石を粉砕及び分級して粗原料粉末を得る工程;
(ii)粗原料粉末を反応容器内の高温火炎中に供給して原料粉末(溶融紛)とする工程;
(iii)原料粉末を、コアンダ効果を利用した気流分級により、気流温度150℃未満で処理して、D50が2.0μm以下であり、前記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であるシリカ粉末を得る工程。
【0031】
<工程(i)>
工程(i)において用いる原料は、高純度(例えば、95%以上の純度)のものが好ましい。原料としては、金属ケイ素、珪石等が挙げられ。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、金属ケイ素を含むことがより好ましい。粉砕は、振動ミル、ボールミル等の粉砕機で粉砕することで、所望の粒子径を有する粗原料粉末を調製する。なお、粗原料粉末のD50は、ハンドリング性、酸化、球状化の観点から、5~40μmであることが好ましく、5~20μmであることがより好ましい。
【0032】
<工程(ii)>
工程(ii)では、工程(i)で得られた粗原料粉末を、バーナーを用いて可燃ガスと助燃ガスとによって形成される高温火炎中に噴射して粗原料粉末の融点又は沸点以上の温度(例えば、シリカ(珪石)の場合は、1600℃以上の温度)で溶融球状化し、冷却しながら分級及び補修し、球状化された原料粉末(溶融粉)を得る。また、金属ケイ素の場合は、2400℃以上の温度で、金属粉末スラリーを製造炉で可燃性ガスと助燃性ガスとからなる高温火炎中に供給し、前記火炎中で前記金属粉末を気化、酸化させることにより原料粉末を得る。工程(ii)において、原料粉末のD50は、0.2~2.0μmであることが好ましく、0.2~1.5μmであることがより好ましい。
可燃ガスとしては、アセチレン、エチレン、プロパン、ブタン、メタン等の炭化水素系ガス;LPG、LNG、水素等の気体燃料;灯油、重油等の液体燃料が使用できる。助燃ガスとしては、酸素、酸素リッチ冷却ガス、空気が使用できる。
【0033】
工程(ii)において、粉末供給量、粉体温度、可燃ガス、助燃ガスの温度等を調整することにより、原料粉末のD50を調整してもよい。
【0034】
<工程(iii)>
工程(iii)では、工程(ii)で得られた原料粉末を、コアンダ効果を利用した気流分級により、気流温度150℃未満で処理して、D50が2.0μm以下であり、前記方法でグラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であるシリカ粉末を得る。
気流温度は、前述の通り、40~130℃がより好ましく、60~120℃がさらに好ましい。気流に用いるガス種は、空気、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素等のいずれであってもよい。シリカ粉末の体積基準累積径(D50)を2.0μm以下とするには、より凝集し難い観点から、窒素を導入することで調整してもよい。気流の流速は、コアンダブロック入口の流速で80m/s未満とすることが好ましく、30~75m/sがより好ましく、35~50m/sがさらに好ましい。これらの条件を合わせることで、装置との摩擦により生じる摩耗を抑えかつ、気流中の粒子の分散性がより高まり、コアンダ効果が向上しやすくなる。
【0035】
[樹脂組成物]
本発明に係る樹脂組成物は、上述のシリカ粉末と、樹脂とを含む。
樹脂組成物中のシリカ粉末の含有量は特に限定されず、目的に応じて適宜調整し得る。耐熱性、熱膨張係数等の観点からは、樹脂組成物中のシリカ粉末の割合は、樹脂組成物の総質量に対して、40~90質量%が好ましく、70~90質量%がより好ましい。本発明に係るシリカ粉末は、D50が2.0μm以下であり、かつ前記方法で、グラインドゲージにより測定される最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であるため、樹脂中での分散性が良好である。このような樹脂組成物は、半導体封止材、半導体パッケージ用基板として好適に利用できる。
【0036】
(樹脂)
樹脂としては、熱硬化性樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂としては、半導体封止材の分野に通常用いられるものであれば、特に限定されない。例えばエポキシ樹脂;シリコーン樹脂;フェノール樹脂;メラミン樹脂;ユリア樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;フッ素樹脂;ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂等のポリイミド系樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド樹脂;全芳香族ポリエステル樹脂;ポリスルホン樹脂;液晶ポリマー樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;マレイミド変成樹脂;ABS樹脂、AAS樹脂(アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン樹脂)、AES樹脂(アクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエンゴム-スチレン樹脂)等;を挙げることができる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0037】
エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールSなどのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フタル酸やダイマー酸などの多塩基酸とエポクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル酸エポキシ樹脂(ビスフェノール型エポキシ樹脂)、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、アルキル変性多官能エポキシ樹脂、β-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、1,6-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、2,7-ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ビスヒドロキシビフェニル型エポキシ樹脂、更には難燃性を付与するために臭素などのハロゲンを導入したエポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂及び脂環式エポキシ樹脂から選択される少なくとも1つのエポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0038】
(硬化剤)
樹脂としてエポキシ樹脂を含む場合、樹脂組成物はさらに硬化剤を含むことが好ましい。硬化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、クロロフェノール、t-ブチルフェノール、ノニルフェノール、イソプロピルフェノール、オクチルフェノール等の群から選ばれた1種又は2種以上の混合物をホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド又はパラキシレンとともに酸化触媒下で反応させて得られるノボラック型樹脂、ポリパラヒドロキシスチレン樹脂、ビスフェノールAやビスフェノールS等のビスフェノール化合物、ピロガロールやフロログルシノール等の3官能フェノール類、無水マレイン酸、無水フタル酸や無水ピロメリット酸等の酸無水物、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミン等を挙げることができる。
【0039】
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂のエポキシ当量1に対して、硬化剤の活性水素当量(又は酸無水物当量)が0.01~1.25になるように配合することが好ましい。
【0040】
(その他の添加剤)
樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、硬化促進剤、離型剤、カップリング剤、着色剤等を配合することができる。
硬化促進剤としては、特に限定されず、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
離型剤としては、天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸の金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン等が挙げられる。
カップリング剤としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン;アミノプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン等の疎水性シラン化合物やメルカプトシラン等が挙げられる。
【0041】
本発明に係る樹脂組成物の1つの態様は、本発明に係るシリカ粉末と、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とを含み、下記の条件で測定したグラインドゲージの最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下である、樹脂組成物である。前記最大粒子径(Dmax)は4.0μmであってもよい。
(測定方法)
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製する。前記樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(Dmax)を測定する。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用する。
【0042】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物の製造方法は、特に限定されず、各材料の所定量を撹拌、溶解、混合、分散させることにより製造することができる。これらの混合物の混合、撹拌、分散等の装置は特に限定されないが、撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、3本ロール、ボールミル、プラネタリーミキサー等を用いることができる。またこれらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0043】
[半導体封止材]
本発明に係る半導体封止材は、本発明の樹脂組成物を用いてなる。
具体的には、まず、前記樹脂組成物をロール又は押し出し機等で加熱しながら混練し、その混練物をシート状に伸ばして冷却する。その後、粉砕する、又は混練物を線状に押し出して冷却した後に切断する等により、樹脂組成物の粉砕物としての半導体封止材を得ることができる。前記粉砕物は、タブレット状、ペレット状等の形状に成形されてもよい。
【0044】
本発明に係る半導体封止材を用いて半導体を封止する方法としては、例えば、トランスファーモールド法、コンプレッションモールド法等の従来公知の方法を採用することができる。
トランスファーモールド法としては、例えば、タブレット状の半導体封止材をトランスファー成形機の金型に備えられたポットに装填し、加熱して溶融させた後、プランジャーで加圧し、更に加熱することによって封止材を硬化させる方法が挙げられる。
また、コンプレッションモールド法としては、例えば、金型に直接ペレット状又はタブレット状の封止材を配置して溶融させたのち、ボンディング済みのチップあるいはウェーハを溶融樹脂に浸し加熱硬化させる方法が挙げられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0046】
[実施例1~4及び比較例1~7]
(原料粉末の製造:工程(i)~(ii))
最外部より、可燃性ガス供給管、助燃性ガス供給管、金属シリコン粉末スラリー供給管の順に組まれた三重巻管構造のバーナーが製造炉の頂部に設置されており、製造炉の下部がサイクロン等の分級及び捕集系(生成した粒子をブロワーで吸引しバッグフィルターにて捕集)に接続されてなる装置を用い、原料粉末を製造した。なお、バーナーの外周には外周火炎を形成させる外周バーナーが更に3本設置されている。可燃性ガス供給管からLPGを7Nm3/hr、助燃性ガス供給管から酸素を12Nm3/hr供給して、製造炉内に高温火炎を形成した。金属シリコン粉末(平均粒子径(D50):10μm)をメチルアルコールに分散させて調製した金属シリコンスラリーを、スラリーポンプを用いて、金属シリコン粉末スラリー供給管から火炎中に供給し、生成した原料粉末(球状シリカ粉末)を粉体温度が110℃から200℃の状態でサイクロンまたはバグフィルターより捕集した。なお、原料粉末の粒子径及び比表面積は、スラリー濃度の調整により、炉内の金属シリコン濃度を制御することで調製した。これらの操作によって、D50が0.5μm、0.7μm、1.0μm、1.5μm、1.9μm、2.6μmの原料粉末を得た。
【0047】
(原料粉末の分級:工程(iii))
上記で得られた各原料粉末を、表1に示す条件で分級して、各例のシリカ粉末を得た。分級操作は、ブロワーでコアンダブロック構造を有する気流分級機((株)マツボー製、商品名「エルボージェット分級機」)に原料粉末を送給して気流分級した後、バグフィルターで捕集した。気流に用いるガスは窒素ガス又は空気(露点温度:-5℃)を使用した。また、気流のガス温度及びコアンダ部の流速は、表1に示す通りとした。
【0048】
(グラインドゲージの測定方法)
各例で得られたシリカ粉末の最大粒子径(Dmax)を以下の条件で測定した。
ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製、製品名「807」、粘度:3,000~4,500mPa・s、エポキシ当量:160~175g/eq.)100質量部に対して、シリカ粉末67質量部を添加し、自転公転混合機((株)シンキー製、製品名「ARE-310」)を用いて、温度30℃、回転数2,000rpmで自転3分間、公転1分間で混合処理して樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物をJIS K 5600-2-5に沿って、幅90mm、長さ240mm、最大深さ100μmのグラインドゲージを用いて、分布図法にて前記エポキシ樹脂への前記シリカ粉末の分散度を評価し、最大粒子径(Dmax)を測定した。また、同様の評価を5回行い、その平均値を採用した。結果を表1に示す。
【0049】
(体積基準累積径(D50、D90、及びD100)の測定)
各例で得られたシリカ粉末について、粒度分布測定機(ベックマン・コールター(株)製、製品名「LS-13 320XR」)を用いて、溶媒に水(屈折率:1.33)を用い、前処理として2分間、超音波発生器(SONICS MATERIALS INC社製、製品名「VC-505」)を用いて分散処理したのち、レーザー回折光散乱法による体積基準の頻度粒度分布を測定した。また、D90の体積基準頻度と、D100及びD90の値を上記の式(1)に当てはめて計算した。これらの結果を表1に示す。
【0050】
(比表面積(BET)の測定)
各例で得られたシリカ粉末について、シリカ粉末を1.0g計量し、測定用のセルに投入し、前処理後、窒素ガスを用いて、BET比表面積値を測定した。測定機はMACSORB社製「Macsorb HM model-1208」を使用した。以下の条件で比表面積を測定した。結果を表1に示す。
脱気温度:300℃
脱気時間:18分
冷却時間:4分。
【0051】
【0052】
表1に示す通り、実施例1~4のシリカ粉末は、D50が2.0μm以下でありながら、グラインドゲージにより測定された最大粒子径(Dmax)が5.0μm以下であった。すなわち、樹脂と混合しても凝集しにくく、分散しやすいシリカ粉末が得られた。またこのようなシリカ粉末は、原料粒子を、窒素ガスを用いてより低いガス温度かつ低流速で分級することで得られやすくなることがわかった。また、比較例1~7の結果より、分級処理を行わなかった場合、及び空気中で分級処理を行った場合は、樹脂中でシリカ粉末が凝集しやすかった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述の通り、本発明に係るシリカ粉末は、D50が2.0μm以下でありながら、凝集しにくく、ハンドリングが良好であり、かつ樹脂との混合時に分散しやすいという特徴を有している。このようなシリカ粉末を含む樹脂組成物は、半導体封止材として好適に利用できる。