(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】軌道計画装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20241206BHJP
G01C 21/20 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
G05D1/43
G01C21/20
(21)【出願番号】P 2023523703
(86)(22)【出願日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 JP2021019503
(87)【国際公開番号】W WO2022249218
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕基
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 凜
(72)【発明者】
【氏名】北野 弘明
(72)【発明者】
【氏名】富永 健太
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/059392(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199751(WO,A1)
【文献】特開2013-41506(JP,A)
【文献】特開2012-145998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/43
G01C 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の軌道を計画する軌道計画装置であって、
前記移動体の周辺情報に基づいて、前記移動体の走行可能領域を演算する走行可能領域演算部と、
少なくとも前記移動体の目標位置を含む目標状態量を演算する目標状態演算部と、
少なくとも前記移動体の現在の状態量および前記移動体の現在位置と前記目標位置との間の1つ以上の位置における前記移動体の状態量を予測することで、複数の軌道候補を生成する状態予測部と、
前記目標状態量と前記走行可能領域とに基づい
た重み付けを行い、重みに基づいて、前記複数の軌道候補を評価して評価結果を出力する予測状態評価部と、
前記評価結果に基づいて、前記複数の軌道候補から前記軌道を生成し、前記軌道に基づいて前記移動体を制御する運動制御部に対し、前記軌道を出力する軌道生成部と、を備える軌道計画装置。
【請求項2】
前記評価結果に基づいて、前記複数の軌道候補から軌道点を演算する軌道点演算部をさらに備え、
前記軌道生成部は、前記軌道点で構成される点列を前記軌道として生成する、請求項1に記載の軌道計画装置。
【請求項3】
前記走行可能領域演算部は、
現在よりも前に演算された過去の走行可能領域の形状の時系列変化に基づいて、現在の走行可能領域よりも未来の走行可能領域を予測して予測走行可能領域とし、前記現在の走行可能領域と前記予測走行可能領域とを合わせることで前記走行可能領域を延長する、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項4】
前記走行可能領域演算部は、
現在よりも前に演算された過去の走行可能領域の外側の障害物の種類に基づいて、現在の走行可能領域よりも未来の走行可能領域を予測して予測走行可能領域とし、前記現在の走行可能領域と前記予測走行可能領域とを合わせることで前記走行可能領域を延長する、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項5】
前記走行可能領域演算部は、
前記過去の走行可能領域の前記外側の障害物が、静止障害物の場合は、未来においても前記静止障害物より先の領域は走行不可の領域のままと判断し、前記外側の障害物が移動障害物の場合は、未来において、前記移動障害物の移動方向と移動速度に基づいて、前記走行可能領域を延長し、前記外側の障害物が無い領域では、前記移動体の速度に基づいて前記走行可能領域を延長する、請求項4記載の軌道計画装置。
【請求項6】
前記走行可能領域演算部は、
周辺環境情報に基づいて、前記移動体が将来走行できない領域を予測し、前記領域を除外して前記走行可能領域とする、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項7】
前記目標状態演算部は、
前記目標状態量に前記移動体の目標速度を含める、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項8】
前記目標状態演算部は、
前記目標状態量に前記移動体の目標方位角を含める、請求項7記載の軌道計画装置。
【請求項9】
前記目標状態演算部は、
前記目標状態量に前記目標方位角の方向に対して垂直な方向の位置である目標横位置を含める、請求項8記載の軌道計画装置。
【請求項10】
前記目標状態演算部は、
前記目標位置が前記走行可能領域の外側にある場合に、前記走行可能領域において前記目標位置に最も近い位置を前記目標位置として再設定する、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項11】
前記目標状態演算部は、
前記走行可能領域の形状に応じて、前記目標速度に対して上限値を設定する、請求項7記載の軌道計画装置。
【請求項12】
前記状態予測部は、
1つ以上の入力値に対し前記走行可能領域の形状に応じた上限値を設定し、前記1つ以上の入力値を前記移動体の運動モデルに入力することで前記複数の軌道候補を演算する、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項13】
前記状態予測部は、
1つ以上の入力値に対し前記走行可能領域の形状に応じて前記1つ以上の入力値の分布を変え、前記1つ以上の入力値を前記移動体の運動モデルに入力することで前記複数の軌道候補を演算する、請求項12記載の軌道計画装置。
【請求項14】
前記状態予測部は、
前記走行可能領域の形状に応じて前記入力値の数を変える、請求項12または請求項13記載の軌道計画装置。
【請求項15】
前記状態予測部は、
1つ以上の入力値に対し前記目標状態量と前記移動体の前記現在の状態量との乖離度に応じて前記入力値の分布を変え、前記入力値を前記移動体の運動モデルに入力することで前記複数の軌道候補を演算する、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項16】
前記状態予測部は、前記乖離度に応じて前記入力値の数を変える、請求項15記載の軌道計画装置。
【請求項17】
前記予測状態評価部は、
前記目標状態量と前記移動体の前記現在の状態量との偏差に対して重み付け係数を設定することで前記複数の軌道候補を評価する請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項18】
前記予測状態評価部は、
前記目標状態量と前記移動体の前記現在の状態との偏差に対して重み付けを設定し、前記移動体の方位角と前記目標方位角との偏差に応じて前記移動体の前記方位角に対する重み付け係数を変えることで前記複数の軌道候補を評価する、請求項8記載の軌道計画装置。
【請求項19】
前記予測状態評価部は、
前記複数の軌道候補に対して重み付けをして重み付けされた軌道候補とし、前記重み付けされた軌道候補の重みに基づいて前記複数の軌道候補を評価する、請求項1記載の軌道計画装置。
【請求項20】
前記予測状態評価部は、
前記走行可能領域の外側にある前記複数の軌道候補に対し、重み付け係数を0として前記重み付けされた軌道候補とする、請求項19記載の軌道計画装置。
【請求項21】
前記予測状態評価部は、
前記走行可能領域の外側にある前記複数の軌道候補に対し、前記走行可能領域の境界からの距離に応じて重み付け係数を変えて前記重み付けされた軌道候補とする、請求項19記載の軌道計画装置。
【請求項22】
前記予測状態評価部は、
前記走行可能領域の内側にある前記複数の軌道候補に対し、前記走行可能領域の境界からの距離に応じて重み付け係数を変えて前記重み付けされた軌道候補とする、請求項19記載の軌道計画装置。
【請求項23】
前記走行可能領域演算部は、
周辺環境情報に基づいて、前記移動体が将来走行できない領域を予測し、
前記予測状態評価部は、前記領域にある前記複数の軌道候補に対し、重み付け係数を予め設定された値よりも小さくして前記重み付けされた軌道候補とする、請求項19記載の軌道計画装置。
【請求項24】
前記予測状態評価部は、
前記複数の軌道候補に対して重み付けをして重み付けされた軌道候補とし、
前記予測走行可能領域の内側の前記複数の軌道候補の重み付け係数を、前記現在の走行可能領域の内側の前記複数の軌道候補の前記重み付け係数よりも小さくして前記重み付けされた軌道候補を生成し、前記重み付けされた軌道候補の重みに基づいて前記複数の軌道候補を評価する、請求項3または請求項4に記載の軌道計画装置。
【請求項25】
前記予測状態評価部は、
前記複数の軌道候補に対し重み付けをして重み付けされた軌道候補とし、
前回演算された前記軌道点に対して、跨ぎ禁止線を跨ぐような位置に前記重み付けされた軌道候補がある場合には、前記複数の軌道候補の重み付け係数を他の前記複数の軌道候補の前記重み付けの係数よりも小さくして前記重み付けされた軌道候補を生成し、前記重み付けされた軌道候補の重みに基づいて前記複数の軌道候補を評価する、請求項2記載の軌道計画装置。
【請求項26】
前記予測状態評価部は、
前記複数の軌道候補に対し重み付けをして重み付けされた軌道候補とし、
前記軌道点演算部は、
前記重み付けされた軌道候補に対して加重平均値を演算することで前記軌道点とする、請求項2記載の軌道計画装置。
【請求項27】
前記予測状態評価部は、
前記複数の軌道候補に対し重み付けをして重み付けされた軌道候補とし、
前記軌道点演算部は、
前記重み付けされた軌道候補のうち、最も重み付け係数が大きい前記重み付けされた軌道候補を前記軌道点とする、請求項2記載の軌道計画装置。
【請求項28】
前記予測状態評価部は、
前記複数の軌道候補に対して前回演算された前記軌道点の状態量または前記移動体の現在の状態量との差に応じて重み付けをして重み付けされた軌道候補とする、請求項2記載の軌道計画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軌道計画装置に関し、特に、車両等の自動運転を実現するための動作を計画する軌道計画装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転および搬送台車などの自律移動システムの開発が進んでいる。自律移動システムでは、移動体が走行すべき軌跡と速度で構成される軌道を生成し、生成された軌道に沿って移動体が走行するように制御される。軌道計画は、多くのシーンにおいて道路の中央および磁気マーカーなどの誘導体に沿うような軌道計画が立てられる。しかし場合によっては、道路の白線が無い料金所付近、未舗装路での走行シーンおよび誘導体を使用しない自律搬送台車が目的地へ移動するシーンにおいては、このような情報は使用できない。このようなシーンでは、走行すべき目印情報の無い空間上を、障害物を回避しつつ目的地へ到達することができる軌道が必要であり、例えば、特許文献1に開示されるように走行すべき目印情報が無くとも軌道計画を実現する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、障害物の存在しない走行可能領域に内接する複数の円の中心点を通る線で構成される道なり方向に基づいて、走行経路を生成する方法が採られている。この場合、例えば空港のような非常に広い走行可能領域では、内接する円を決定できないため、走行経路を生成できず目的地へ到達できない。また、料金所付近のような、複雑な形状で横幅の変化が大きい走行可能領域では、正しい道なり方向を演算できず目的地へ到達できない。
【0005】
本開示は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、空港および料金所付近などのように走行可能領域が複雑な場合においても、走行可能領域を通って目的地へ到達することができる軌道計画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る軌道計画装置は、移動体の軌道を計画する軌道計画装置であって、前記移動体の周辺情報に基づいて、前記移動体の走行可能領域を演算する走行可能領域演算部と、少なくとも前記移動体の目標位置を含む目標状態量を演算する目標状態演算部と、少なくとも前記移動体の現在の状態量および前記移動体の現在位置と前記目標位置との間の1つ以上の位置における前記移動体の状態量を予測することで、複数の軌道候補を生成する状態予測部と、前記目標状態量と前記走行可能領域とに基づいた重み付けを行い、重みに基づいて、前記複数の軌道候補を評価して評価結果を出力する予測状態評価部と、前記評価結果に基づいて、前記複数の軌道候補から前記軌道を生成し、前記軌道に基づいて前記移動体を制御する運動制御部に対し、前記軌道を出力する軌道生成部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る軌道計画装置によれば、移動体の目標位置を含む目標状態量と走行可能領域とに基づいて、目標状態量までの軌道を評価し、評価結果に基づいて軌道を生成するため、走行可能領域が複雑な場合においても、走行可能領域を通って目的地へ到達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1の軌道計画装置を搭載した移動体の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1における走行可能領域の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態1における目標状態量の一例を示す図である。
【
図4】実施の形態1の軌道計画装置において軌道点演算部が演算する軌道点の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1の軌道計画装置において軌道生成部が生成する軌道の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1の軌道計画装置の動作を説明するフローチャートである。
【
図7】実施の形態1の軌道計画装置において情報取得部からの取得する情報の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1の軌道計画装置において情報取得部から取得した情報を移動体座標系に変換した一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域の予測の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域の予測の他の例を示す図である。
【
図11】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域の一例を示す図である。
【
図14】実施の形態1の軌道計画装置における目標状態量の一例を示す図である。
【
図15】実施の形態1の軌道計画装置における再設定された目標状態量の一例を示す図である。
【
図16】実施の形態1の軌道計画装置における目標状態量のうち速度の上限値を設定する一例を示す図である。
【
図17】実施の形態1の軌道計画装置における目標状態量のうち速度の上限値を設定する一例を示す図である。
【
図18】実施の形態1の軌道計画装置においてパーティクルフィルタにより予測された状態量の一例を示す図である。
【
図19】実施の形態1の軌道計画装置において走行可能領域の形状に応じて設定された入力値の一例を示す図である。
【
図20】実施の形態1の軌道計画装置において走行可能領域の形状に応じて設定された入力値の一例を示す図である。
【
図21】実施の形態1の軌道計画装置において移動体の現在の状態量と目標状態量との乖離が大きい場合の入力値の設定の一例を示す図である。
【
図22】実施の形態1の軌道計画装置における観測変数の一例を示す図である。
【
図23】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域外のパーティクルの重み付けの一例を示す図である。
【
図24】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域内のパーティクルの重み付けの一例を示す図である。
【
図25】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域内のパーティクルの重み付けの一例を示す図である。
【
図26】実施の形態1の軌道計画装置における走行可能領域内のパーティクルの重み付けの一例を示す図である。
【
図27】実施の形態1における予測された走行可能領域内のパーティクルの重み付けの一例を示す図である。
【
図28】実施の形態1の軌道計画装置における評価の重みの設定の一例を示す図である。
【
図29】実施の形態1の軌道計画装置において目標状態量に到達する複数の軌道点を得る処理の一例を示す図である。
【
図30】実施の形態1の軌道計画装置において目標状態量に到達するまでの軌道生成の一例を示す図である。
【
図31】実施の形態1の軌道計画装置において目標状態量に到達するまでの軌道生成の一例を示す図である。
【
図32】実施の形態2の軌道計画装置を搭載した移動体の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図33】実施の形態2の軌道計画装置において移動体と目標位置とを結ぶ多項式の導出方法を説明する図である。
【
図34】実施の形態2の軌道計画装置において移動体と目標位置とを結ぶ多項式の導出方法を説明する図である。
【
図35】実施の形態2の軌道計画装置において移動体と目標位置とを結ぶ多項式の導出方法を説明する図である。
【
図36】予測状態量が、現在の移動体の状態量と大きく乖離している場合の重み付けを説明する図である。
【
図37】予測状態量が、前回演算された軌道点の状態量と大きく乖離している場合の重み付けを説明する図である。
【
図38】実施の形態1および2の軌道計画装置を実現するハードウェア構成を示す図である。
【
図39】実施の形態1および2の軌道計画装置を実現するハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1の軌道計画装置を搭載した移動体1の概略構成の一例を示すブロック図である。移動体1は、移動体1の到達すべき目的地情報、移動体1の周辺環境情報、および移動体1の自己状態を取得する情報取得部100から得られる情報に基づき、移動体1の通るべき軌道を生成する軌道計画装置200と、軌道計画装置200によって生成された軌道に基づいて移動体1の運動を制御する運動制御部300とを備えている。
【0010】
情報取得部100は、目標値取得部110、自己状態取得部120および周辺環境取得部130を有している。
【0011】
目標値取得部110は、移動体が到達すべき目標位置、目標速度、目標方位角などの情報を取得する。目標値取得部110は、例えば管制から受信したインフラ情報、ユーザーが予め指定した情報、移動体が持つ地図情報の所定の位置などから情報を取得する。ここで、移動体が持つ地図情報は、高精度地図とは異なり、カーナビ地図、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等で生成した点群地図等を指す。
【0012】
目標位置は、例えば料金所における、ゲートの入り口あるいはバーの位置、高速道路における退避位置、トーイングトラクターにおける飛行機の前輪部、ユーザーが指定した移動体1の位置などが挙げられる。目標速度は、例えば、法定速度、ユーザーが予め設定した指定の速度などが挙げられる。目標方位角は、目標位置を通過する際の目標の角度であり、例えば、ゲートを通過する際のゲートに対する垂直方向の向きなどが挙げられる。
【0013】
自己状態取得部120は、移動体自身の現在の状態を取得する。自己状態取得部120は、例えば、速度センサ、加速度センサ、慣性計測装置、操舵角センサ、操舵トルクセンサ、ヨーレートセンサおよび全地球衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)センサなどが挙げられる。ここで慣性計測装置は、以下においてIMU(Inertial Measurement Unit)センサと呼称する。
【0014】
周辺環境取得部130は、移動体周辺の壁、移動障害物の位置および速度、方位角、障害物の無い走行可能な空間情報を取得する。周辺環境取得部130は例えば、ミリ波レーダー、カメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging)、ソナー、車車間通信装置、および路車間通信装置などが挙げられる。
【0015】
軌道計画装置200は、走行可能領域演算部210、目標状態演算部220、状態予測部230、予測状態評価部240、軌道点演算部250および軌道生成部260を有している。
【0016】
走行可能領域演算部210は、前記周辺環境取得部130から取得した移動体1の周辺情報を基に、障害物が存在しない、移動体1が走行可能である走行可能領域を演算する。
図2には、走行可能領域の一例を示す。
図2において、移動体1の進行方向左側に静止障害物SOBが存在し、進行方向右側から移動障害物MOBが、左右の車線境界LBで規定される走行車線に進入しようとしており、静止障害物SOBおよび移動障害物MOBが存在しない走行可能領域TAが太線で示されている。
図2に示されるように、走行可能領域TAとは、必ずしも道路の白線等の車線境界LBで規定される走行車線に限定されるものではない。
【0017】
目標状態演算部220は、目標値取得部110からの情報に基づいて、移動体1が到達するべき目的地における目標状態量を演算する。この目標状態量は、少なくとも移動体1の目標位置を含んでいる。
図3に目標状態量の一例を示す。
【0018】
図3はETCゲートの手前のような白線が無い道路を示しており、ここでの車線境界LBは白線ではなく壁またはガードレールなどである。
図3において目標状態量TGは、時刻tでの目標位置の座標(x
t,y
t)、目標方位角θ
t、目標速度v
tを含んでいる。なお、現在の移動体1の状態量は(x
e,y
e,θ
e,v
e )である。
【0019】
状態予測部230は、少なくとも移動体1の現在の状態量および移動体1の現在位置と目標位置との間の1つ以上の位置における移動体1の状態量を予測することで、1つ以上の軌道候補を生成する。そのために、例えば移動体の運動モデルを用いた状態推定演算によって、所定の複数の入力を前記移動体の運動モデルに入力し、複数の入力分の少なくとも1ステップ先、すなわち制御周期における1サンプリング時間先の状態量を予測することで、1つ以上の軌道候補を生成する。本実施の形態においては、状態推定手法の一例として、パーティクルフィルタを用いる。
【0020】
パーティクルフィルタとは、確率密度分布による時系列データの予測手法であり、逐次モンテカルロ法と呼称される場合もある。また、状態推定演算としてのパーティクルフィルタは、複数のパーティクルによって状態の確率密度分布を近似するものであり、例えば、ある状態量を持つパーティクルが多ければ、その状態推定演算としてパーティクルフィルタを用いることで、全体の確率密度分布を推定することが可能となるため、局所最適解を出力する頻度を小さくすることができる。
【0021】
予測状態評価部240は、各予測状態量、すなわち各パーティクルに重み付けをすることで重み付けされた軌道候補とし、重み付けされた軌道候補を重みに基づいて評価して評価結果を出力する。このとき、目標状態演算部220で演算した目標状態量と走行可能領域演算部210において演算した走行可能領域に基づいての重み付けを行う。当該重みは、後述する軌道点演算部250において、軌道点を演算する際、各予測状態量の重みの値を基に、状態予測部230において予測された複数の状態量を加重平均することで尤もらしい状態量を演算することができる。
【0022】
例えば、走行可能領域外の状態量の重み付け係数を0とすれば、加重平均の演算の際に、その状態量に重み付け係数0が乗算され、走行可能領域外の軌道点となることを防ぐことができ、走行可能領域TA内の軌道であることが保証された軌道を生成できる。
【0023】
軌道点演算部250は、軌道候補から軌道点を演算する。具体的には、軌道点演算部250は、状態予測部230で予測された予測状態量を、予測状態評価部240により付与された重みに応じて加重平均し、加重平均された状態量を軌道点とする演算を行う。当該演算の概念図を
図4に示す。
【0024】
図4に示されるように、走行可能領域TAおよびその近傍に重み付け係数が0の状態量のパーティクル群G0、重み付け係数が低い状態量のパーティクル群GLおよび重み付け係数が高い状態量のパーティクル群GHがあり、重み付け係数が高い状態量のパーティクル群GHの加重平均された状態量を軌道点TPとしている。また、予測状態評価部240により付与された重みが最も高い状態量を軌道点とすることもできる。
【0025】
軌道生成部260は、評価結果に基づいて、軌道候補から軌道を生成し、生成した軌道に基づいて移動体1を制御する運動制御部300に対し、軌道を出力する。具体的には、軌道生成部260は、軌道点演算部250で演算された、各離散時間ごとの軌道点から構成される点列を生成軌道として運動制御部300へ出力する。生成軌道の概念図を
図5に示す。
【0026】
図5に示されるように、走行可能領域TAには離散時間t
1、t
2、t
3、t
4およびt
5におけるそれぞれの軌道点TP1、TP2、TP3、TP4およびTP5が示されており、5つの軌道点より生成軌道GTが得られる。
【0027】
運動制御部300は、制御量演算部310およびアクチュエータ制御部320を有している。
【0028】
制御量演算部310は、軌道生成部260で生成された軌道を目標軌道として、目標軌道に沿って走行するための移動体1への目標制御値を演算し、アクチュエータ制御部320に出力する。
【0029】
アクチュエータ制御部320は、移動体1に搭載されたコントローラであり、制御量演算部310で演算された目標制御値に移動体が追従するように、アクチュエータを動作させる。アクチュエータとしては、例えばステアリング、駆動用モータおよびブレーキが挙げられる。
【0030】
次に、実施の形態1の軌道計画装置200の動作の一例を
図6に示すフローチャートを用いて説明する。以下では、パーティクルフィルタを用いる場合について説明する。なお、以下において「1ステップ」とは、制御周期における1サンプリング時間のことを指す。
【0031】
まず、軌道計画装置200の入力情報として、目標値取得部110より目標位置、目標速度、目標方位角等の目標値を取得し、自己状態取得部120より移動体の位置、速度、方位角等の自己状態を取得し、周辺環境取得部130より、走行可能領域の各頂点座標、移動障害物の位置、速度等の周辺環境情報を取得する(ステップS101)。このときの入力情報の概念図を
図7に示す。
【0032】
図7において、走行可能領域TAを規定する複数の頂点VTAの座標はx座標が、x
f1,x
f2,x
f3・・・x
fiで表され、y座標が、y
f1,y
f2,y
f3・・・y
fiで表される。
【0033】
目標状態量TGは、目標位置の座標(xt,yt)、目標方位角θt、目標速度vtを含み、現在の移動体1の自己状態量はx座標がxe、y座標がye、速度はve、方位角はθeで表される。
【0034】
また、各移動障害物MOBの座標はx座標がxO1,xO2,xO3・・・xOiで表され、y座標がyO1,yO2,yO3・・・yOiで表され、速度はvO1,vO2,vO3・・・vOiで表され、方位角はθO1,θO2,θO3・・・θOiで表される。
【0035】
図7では、障害物の存在により走行可能領域TAの一部が欠けており、障害物の輪郭に沿って複数の頂点VTAが表されている。
【0036】
なお、本実施の形態では、走行可能領域TAの情報として走行可能領域TAの各頂点を抽出するが、円または楕円といった線の情報を用いることもできる。
【0037】
また、自己状態取得部120より得た自己状態を用いることで、
図8に示されるように移動体1の位置を原点、移動体1の向きをx軸、移動体の向きに垂直な方向をy軸とした移動体座標系に変更された値を用いることもできる。以下では当該移動体座標系の値を用いるものとする。
【0038】
図8に示されるように移動体座標系では、複数の頂点VTAの座標はX座標が、X
f1,X
f2,X
f3・・・X
fiで表され、Y座標が、Y
f1,Y
f2,Y
f3・・・Y
fiで表される。
【0039】
目標状態量TGは、目標位置の座標(Xt,Yt)、目標方位角Θt、目標速度Vtを含み、現在の移動体1の自己状態量はX座標がXe、Y座標がYe、速度はVe、方位角はΘeで表される。
【0040】
また、各移動障害物MOBの座標はX座標がXO1,XO2,XO3・・・XOiで表され、Y座標がYO1,YO2,YO3・・・YOiで表され、速度はVO1,VO2,VO3・・・VOiで表され、方位角はΘO1,ΘO2,ΘO3・・・ΘOiで表される。
【0041】
目標値情報に関する各値の座標変換には、以下の数式(1)が使用される。
【0042】
【0043】
移動障害物情報に関する各値の座標変換には、以下の数式(2)が使用される。
【0044】
【0045】
走行可能領域TAの各頂点に関する各値の座標変換には、以下の数式(3)が使用される。
【0046】
【0047】
ここで、
図6のフローチャートの説明に戻る。ステップS101において周辺環境情報を取得した後は、走行可能領域演算部210において、周辺環境取得部130から取得した情報を基に、障害物が存在せず移動体1が走行可能である走行可能領域TAを演算する(ステップS102)。本実施の形態では、
図8に示した移動体座標系における走行可能領域TAの各頂点VTAに関するX座標X
f1~X
fiおよびY座標Y
f1~Y
fiを軌道生成に用いる。
【0048】
なお、走行可能領域TAの各頂点VTAに関するX座標Xf1~XfiおよびY座標Yf1~Yfiを軌道生成に用いる代わりに、過去に演算した走行可能領域TAの形状の時系列変化に基づいて、現在演算した走行可能領域よりも後の時間での走行可能領域を予測して予測走行可能領域とし、現在演算した走行可能領域と予測走行可能領域とを合わせたものを走行可能領域とし、軌道生成に用いることもできる。
【0049】
図9は、走行可能領域TAの形状の時系列変化に基づいて走行可能領域を予測する方法を表す概念図である。
図9においては、時刻Tとして現在の時刻をtとし、それよりも制御周期における1サンプリング時間前をt-1、さらに1サンプリング時間前をt-2とし、時刻tよりも1サンプリング時間後をt+1としている。
【0050】
図9において、移動体1は矢印の方向に前進しており、走行可能領域TAは、前方の障害物の存在により部分的に欠けている。時刻t-2の過去の走行可能領域TA、時刻t-1の過去の走行可能領域T
Aから時刻tの現在の走行可能領域TAの経時変化から、移動体1が進んだ分だけ手前方向に変化する部分NP1と、自車が進んでも変化しない、または変化が少ない部分NP2とが存在することが判る。部分NP1は静止障害物である可能性が高く、部分NP2は移動障害物である可能性が高い。このような情報から、時刻t+1での未来の走行可能領域を予測すると、
図9の右端の図におけるハッチングを付した領域が予測走行可能領域ETAとなり、時刻tの現在の走行可能領域TAと予測走行可能領域ETAとを合わせることで現在の走行可能領域TAを延長することができる。
【0051】
予測走行可能領域ETAを用いることで、現在認知できている外界センサにより得られた走行可能領域よりも遠くの領域まで軌道を生成することができる。当該領域は、未来において走行可能領域となる見込みがある。
【0052】
また、走行可能領域TA外の障害物の種類に基づいて、予測走行可能領域を演算し、軌道生成に用いることもできる。
【0053】
図10は、障害物の種類に基づいて走行可能領域を予測する方法を表す概念図である。なお、障害物の種類とは、例えば、壁、停止他車両および移動他車両などが挙げられる。障害物が移動他車両の場合は、周辺環境取得部130は、移動他車両の位置だけでなく速度なども取得する。そして、走行可能領域演算部210は、移動他車両の位置および速度などに基づいて予測走行可能領域を演算する。よって、予測走行可能領域は、現在演算された走行可能領域に入っていない領域も含まれる。これは、現在は走行不可と判定された領域であっても、その領域が将来は走行可能と判定されることを意味する。
【0054】
図10において、速度v
eの移動体1における現在時刻tでの現在の走行可能領域TAを左図として示しており、右図には現在よりも時間t
x後の未来の予測走行可能領域TAXを示している。
【0055】
図10の左図において、走行可能領域TAの最大認知距離はL
maxであり、走行可能領域TAの最遠部より先には障害物が何も無い領域NRを破線で示している。また、静止障害物SOBと速度v
Oの移動障害物MOBの存在により、走行可能領域TAは部分的に欠けている。
【0056】
図10の右図において、前方に静止障害物SOBがある地点は、未来においても走行可能とはならない領域R1であり、前方に移動障害物MOBがある地点は、未来において移動障害物MOBの進行方向に走行可能領域が延びるものと仮定し、走行可能領域TAを延長して延長領域R2とする。延長する長さは、(v
O-v
e)×t
xである。また、走行可能領域TAの最大認知距離L
max
に達している地点は、その先も走行可能であると仮定し、走行可能領域TAを延長して延長領域R3とする。延長する長さは、v
e×t
xである。
【0057】
予測走行可能領域TAXを用いることで、現在認知できている外界センサにより得られた走行可能領域よりも遠くの位置まで軌道を生成することができる。実際の障害物の動きを基にして走行可能領域を予測するので信頼度が高くなる。また、実際の障害物の動きだけでなく、
図9に示すように走行可能領域TAの形状の時系列変化も考慮して走行可能領域TAを予測することができる。これにより、更に信頼度が高くなる。
【0058】
また、ステップS102の走行可能領域TAの演算では、走行可能であっても行き止まりとなりうる領域が存在する場合は、必要に応じて、走行可能領域TAから当該領域を取り除く処理を行う。
図11は当該処理を説明する概念図である。
【0059】
図11においては、移動体1の前方にETCゲートなどの狭い通路が存在するシーンを示しており、目標位置TGPは通過可能なゲート内となっている。他のゲートは走行不可能であり、将来走行できない行き止まりDEとなっており、除去領域ARとして走行可能領域TAから取り除かれる。
【0060】
行き止まりとなりうる領域は、例えば、x軸方向の値が目標位置TGPとほぼ同じ値であるのに、y軸方向の値に乖離がある場所は行き止まりとする。または
図11のような俯瞰図、航空写真などが得られる場合において、目標位置TGPとの間に壁がある領域、目標位置TGPが壁に囲まれている領域などを画像処理技術により検出する。インフラ情報を活用し、工事中、使用不可能なETCゲート等の位置情報を得られた場合に、通行ができない領域を走行可能領域TAと照らし合わせ、走行可能領域TAにおける移動体1が将来走行できない領域を行き止まりとなりうる領域とする。
【0061】
走行可能領域TA内であっても、目標位置TGPに到達する前に行き止まりで阻まれ、身動きが取れなくなることを回避する軌道を生成することができる。
【0062】
また、ステップS102の走行可能領域TAの演算では、走行可能であっても進入禁止とする領域が存在する場合は、必要に応じて、走行可能領域TAから当該領域を取り除く処理を行う。
図12は当該処理を説明する概念図である。
【0063】
図12においては、移動体1の前方に進入禁止エリアIPAが設けられているシーンを示している。進入禁止エリアIPAとしては工事中などの領域でフェンス等の障害物で囲われていない領域が挙げられる。走行可能領域TAと進入禁止エリアIPAとが重なる領域は、除去領域ARとして走行可能領域TAから取り除かれる。
【0064】
進入禁止エリアIPAは、
図12のような俯瞰図、航空写真などが得られる場合において、工事中などの領域を画像処理技術により検出するなど、移動体1に取り付けられている前方カメラを用いて、工事中といった進入できない領域を画像処理技術により検出する。インフラ情報を活用し、工事などをしている位置情報を得られた場合に、工事中の領域などを走行可能領域と照らし合わせ、走行可能領域TAにおける工事中等の領域を進入禁止エリアIPAとする。
【0065】
また、ステップS102の走行可能領域TAの演算では、跨いで走行することを禁止する跨ぎ禁止線がある場合、走行可能領域TAと跨ぎ禁止線とが重なる領域のみを走行可能とする処理を行う。
図13は当該処理を説明する概念図である。
【0066】
図13においては、移動体1の進行方向の左右に跨ぎ禁止線NSLが設けられているシーンを示している。跨ぎ禁止線NSLとしては、路面に設けられた、はみ出し禁止の白色実線、追い越しのためのはみ出し禁止の黄色実線が挙げられる。また、交差点付近30mでは車線変更してはいけない、ETCゲート直前では車線変更してはいけない等のルールも含む。そして、走行可能領域TAと跨ぎ禁止線NSLとで囲まれた領域は、除去領域ARとして走行可能領域TAから取り除かれ、走行可能領域TAと跨ぎ禁止線とが重なる領域のみが走行可能となる。
【0067】
図11~
図13を用いて説明したように、走行可能領域演算部210は、移動体1の周辺環境情報に基づいて、移動体1が将来走行できない領域を予測し、この領域を除いたものを走行可能領域TAとして演算する。なお、将来走行できない領域は、
図11~
図13に示すような領域に限定されない。
【0068】
ここで、
図6のフローチャートの説明に戻る。ステップS102において走行可能領域TAを演算した後は、目標状態演算部220において、目標値取得部110で取得された目標値に基づいて、移動体1が到達すべき目標状態量を演算する(ステップS103)。本実施の形態における目標状態量の概要図を
図14に示す。
【0069】
図14に示すように、目標状態量として目標位置(X
t,Y
t)、目標速度V
t、目標方位角Θ
tを用いて算出する目標位置の目標方位角方向に対して垂直な方向の位置である目標横位置Y
L、目標速度V
t、目標方位角Θ
tに加え、危険領域D内の移動障害物MOBとの距離D
Oを目標車間距離D
t以上とするために、目標車間距離D
tを目標状態量に含めるものとし、目標状態量P
tは以下の数式(4)で表される。
【0070】
【0071】
目標状態量に目標速度Vtを含めることで、例えば、法定速度を守るといった任意の速度で走行可能な軌道を生成することができる。
【0072】
目標状態量に目標方位角Θtを含めることで、例えば、料金所ゲート通過のシーン等の前方の狭い通路に進入する際に、ゲート対して垂直方向の方位角を目標状態量に設定することでゲートに真っ直ぐ進入するような軌道を生成することができる。
【0073】
目標状態量に目標横位置YLを含めることで、真横へ移動できない移動体1にとって、目標位置の横方向の成分のみを目標状態量とすることで、早期に目標位置に対する横方向の偏差を縮めることができ、早期に目標位置を目標方位角で通過できる状態にすることができる。
【0074】
図14に示される危険領域Dは、動的な先行車および静止障害物と確保すべき安全な車間距離、および移動体1が動いている際に、移動体1の付近に人および他車両があることで衝突の可能性が高まり、また、衝突すると被害が大きく危険であるため、人および他車両が近づいてはいけない距離として定義される。
図14では危険領域D内に移動障害物MOBが存在し、移動障害物MOBとの距離D
Oは目標車間距離D
tよりも小さくなっている。
【0075】
また、目標状態量Ptは、目標位置(Xt,Yt)を用いて以下の数式(5)で表すこともできる。
【0076】
【0077】
また、目標状態量Ptは、少なくとも目標位置(Xt,Yt)が含まれている場合、目標速度Vt、目標方位角Θtおよび目標車間距離Dtを用いないこともできる。これは、目標状態量として最低限目標位置(Xt,Yt)が含まれていれば、目標位置に到達可能な軌道を軌道生成部260で生成できるからである。
【0078】
また、目標状態演算部220は、目標状態量が走行可能領域TA外にある場合、目標状態量から最も近い走行可能領域TA内の状態量を、目標状態量として設定するように処理することもできる。
図15は当該処理を説明する概念図である。
【0079】
図15においては、目標状態量として目標位置(X
t,Y
t)を用いる場合を示しており、元の目標位置OTGPが走行可能領域TA外に存在している。元の目標位置OTGPから直線距離で最も近い走行可能領域TA内の目標位置は、走行可能領域TAの右側角部辺りとなるので、ここに目標位置TGPを設定する。
【0080】
このような処理を行うことで、目標位置TGPが走行可能領域TA外にある場合と比較して、生成軌道が走行可能領域TA内に設定されやすくなるので、安全な走行が可能となる。
【0081】
また、目標状態演算部220は、走行可能領域演算部210において演算された走行可能領域TAの形状に応じて、目標状態量のうち、少なくとも速度に関する目標状態量に上限値を設定することもできる。例えば、高速走行ができないような、走行可能領域TAが狭い場合および走行可能領域TAの認知距離が短い場合において、速度に関する目標状態量に上限値を設定することが挙げられる。
【0082】
図16は、走行可能領域TAが狭いシーンを示す概念図である。
図16に示されるように、移動体1の進行方向に沿って移動体1の左右の近い距離に静止障害物SOBが存在している。走行可能領域TAの最大認知距離はL
max1であり、静止障害物SOBの長さと同程度に長いが、その幅は狭い。
【0083】
このような場合は目標位置または目標方位角に関する目標状態量に上限値を設定することで、生成軌道が走行可能領域TA内に設定されやすくなるので、移動体1の乗員に精神的な負担を与えない走行が可能となる。
【0084】
図17は、走行可能領域TAの認知距離が短いシーンを示す概念図である。
図17に示されるように、移動体1の進行方向前方の走行可能領域TAの認知距離L
max2が、
図16に示した走行可能領域TAの最大認知距
離L
max1より非常に小さく、遠くまで認知できない状態となっている。
【0085】
このようなシーンは、移動体1がトーイングトラクターで、前方に牽引対象の飛行機があるような場合、前方の近い位置に壁があるような場合、移動体1に取り付けられているカメラセンサの前方の検知距離が短い場合に想定される。
【0086】
このような場合は速度に関する目標状態量に上限値を設定することで、生成軌道が走行可能領域TA内に設定されやすくなるので、移動体1の乗員に精神的な負担を与えない走行が可能となる。
【0087】
ここで、
図6のフローチャートの説明に戻る。ステップS103において目標状態量を演算した後は、状態予測部230において、移動体の現在の状態に基づきN
p個のパーティクルを定義する(ステップS104)。N
p個のパーティクルは、それぞれ異なる状態量を有する。N
pは、2以上の整数である。本実施の形態では、パーティクルの状態量Pは、移動体の二次元位置X
pおよびY
p、方位角Θ
p、速度V
p、舵角δ
p
、加速度a
pおよび舵角速度u
pで構成され、以下の数式(6)で表されるものとする。
【0088】
【0089】
ただし二次元位置X
pおよびY
pと、方位角Θ
pは移動体1の現在位置、現在方位角を基準とした
図8の座標系で表すものとする。また、n個目のパーティクルの状態量をP
nと表記するものとする。全てのパーティクルについて状態変数の初期値は同じ値とし、二次元位置X
pおよびY
pと方位角Θ
pの初期値は0、速度V
pの初期値は現在の移動体1の速度、舵角δ
pの初期値は現在の移動体1の舵角、加速度a
pおよび舵角速度u
pの初期値は0とする。また、各パーティクルに対し重みWを定義し、重みWの初期値は全パーティクルで等しく、以下の数式(7)で表される値とし、時刻T
pを定義し、初期値0に設定する。
【0090】
【0091】
なお、パーティクル数は、走行可能領域TAの形状、面積に応じて可変とすることもでき、目標状態量との乖離度に応じて可変とすることもできる。
【0092】
ステップS104においてパーティクルを定義した後は、状態予測部230において、各パーティクルに対して一様乱数を用いたランダムなパーティクル数分の入力を与えることで、離散時間幅Td後の状態量を予測する(ステップS105)。以下に、パーティクルの状態予測の方法を説明する。
【0093】
パーティクルの状態量予測は、システムモデルを用いて行うが、本実施の形態で用いるモデルを以下に説明する。システムモデルの状態変数はパーティクルの二次元位置XpおよびYp、方位角Θp、速度Vpおよび舵角δpとし、状態量は以下の数式(8)で表されるものとする。
【0094】
【0095】
また、システムモデルへの入力値Puは、車両の加速度aと舵角速度uとで構成され、以下の数式(9)で表されるものとする。
【0096】
【0097】
また、移動体1の横滑り角βは、以下の数式(10)で表されるものとする。
【0098】
【0099】
ここで、システムモデルは移動体1のホイールベースLを用いて、微分方程式として以下の数式(11)で表される。
【0100】
【0101】
なお、上述したシステムモデルは、四輪を二輪に近似し、力学を考慮しない運動学モデルと言えるが、四輪を二輪に近似した動力学モデルである二輪モデル等、他の車両運動モデルを用いることもできる。
【0102】
システムモデルへの入力変数のうち、加速度aは予め設定しておいた任意の上限値amxと任意の下限値amnについて、以下の数式(12)を満たす値を、パーティクルごとに一様乱数を用いて決定する。
【0103】
【0104】
また、システムモデルへの入力変数のうち、舵角速度uに関しては、予め設定しておいた上限値umx(>0)について、以下の数式(13)を満たすことを舵角速度uの第1の拘束条件とする。
【0105】
【0106】
また、舵角に関する上限値δmx(>0)について、離散時間幅Td後の舵角δ’が以下の数式(14)を満たすことを舵角速度uの第2の拘束条件とする。
【0107】
【0108】
離散時間幅Td後の舵角δ’は、以下の数式(15)で表される。
【0109】
【0110】
このため、第2の拘束条件は、以下の数式(16)で表される。
【0111】
【0112】
システムモデルへの入力値Puのうち舵角速度uは、第1の拘束条件および第2の拘束条件を満たす値を、パーティクルごとに一様乱数を用いて決定する。
【0113】
以上のように、制約である舵角上限値δmxに基づいて決定した入力値Puを用いて、上述したシステムモデルにより離散時間幅Td後の状態量Px’を予測する。これにより、制約を考慮したパーティクルの状態予測が可能となる。
【0114】
パーティクルの状態量は予測状態量Px’と入力値Puを用いて更新し、以下の数式(17)で表されるものとする。また、時刻Tに離散時間幅Tdを足した値を更新後の時刻とする。
【0115】
【0116】
時刻T
d後の各パーティクルの予測状態量をP
nx’とし、離散時間幅T
d後の状態予測の概念図を
図18に示す。
図18において、移動体1の前方には時刻T
d後のn個のパーティクルの予測状態量P
nx’が示されている。このように、複数のパーティクルを用いて状態量を予測することで、各パーティクルの点と走行可能領域TAの位置関係から、走行可能領域TAの外か中かという評価を行うことができるので、走行可能領域TA内であることを保証できる軌道を生成できる。
【0117】
なお、状態予測部230での演算では、ランダムな入力を与えるために一様分布に従う一様乱数を用いて入力を決定したが、正規分布に従う正規乱数または他の分布に従うランダムな入力を用いることもできる。
【0118】
また、状態予測部230での演算では、予め設定しておいた任意の上限値を超えないような入力としていたが、当該入力は走行可能領域TAの形状に従って可変となるような値にすることもできる。
【0119】
図19は、走行可能領域TAが狭くて長い形状に合わせて入力を設定する場合を説明する概念図である。
図19に示されるように、走行可能領域TAが縦長の形状であれば、予測状態量P
x’が図示されるような走行可能領域TA外とならないような舵角速度uの入力の上限値を設定するか、舵角速度uの入力の分布を狭くする。このような処理を行うことで、走行可能領域TA内に予測状態量を生成しやすくなる。
【0120】
また、走行可能領域TAが狭くて長い形状の場合は、入力の数を少なくすることで、演算量を少なくすることができる。
【0121】
図20は、走行可能領域TAが横長の形状に合わせて入力を設定する場合を説明する概念図である。
図20に示されるように、走行可能領域TAが横長の形状であれば、予測状態量P
x’が図示されるような走行可能領域TA外とならないような加速度
aの入力の上限値を設定するか、加速度
aの入力の分布を広くするか、入力の数を多くする。このような処理を行うことで、走行可能領域TA内に予測状態量を生成しやすくなる。
【0122】
また、走行可能領域TAが横長の形状の場合は、入力の数を多くすることで、より適した軌道が得られやすくなる。
【0123】
なお、状態予測部230は、移動体1の現在の状態量と目標状態量との乖離が大きい場合には、移動体1の運動モデルへの入力値の数を多くし、乖離度が小さい場合には、入力値の数を少なくすることもできる。
図21は、現在の状態量と目標状態量との乖離が大きい場合の入力値の設定を説明する概念図である。
【0124】
図21に示すように、方位角の目標状態量Θ
tと、移動体1の現在位置での方位角Θ
eとの乖離が大きく、舵角を大きくしないと目標位置に到達しない場合には、運動モデルへの入力値として舵角速度を加え、舵角速度が大きくなるように軌道を予測する。
【0125】
この場合、舵角の分布を広く取る。すなわち舵角の上下限値の範囲を広くする。また、入力値の数を多くすることで、より適した軌道が得られやすくなる。これにより、移動体1の現在の状態量と目標状態量との乖離が大きい場合でも、目標位置に到達しやすくなる。一方、乖離が小さい場合には、入力値の数を少なくすることで、演算量が少なくなり演算負荷を低減できる。このように、現在の状態量と目標状態量との乖離の度合いに応じて入力値の数を可変にすることで、移動体1の滑らかな軌道生成と演算負荷の低減とを実現できる。
【0126】
ここで、
図6のフローチャートの説明に戻る。ステップS105において各パーティクルの状態量を予測した後は、予測状態評価部240において、各パーティクルの更新後の状態量から観測値を求める(ステップS106)。観測変数は目標状態演算部220で演算した目標状態量に基づき定義する。本実施の形態では、目標位置での目標方位角方向に対して垂直な方向の位置である目標横位置への到達、目標速度の維持、目標方位角への到達および移動障害物からの安全な距離の保持を目標とする。これらの目標に基づき、パーティクルと目標横位置Y
Lとの偏差L
e、パーティクルの速度状態量V
p、パーティクルの方位角状態量Θ
p、危険領域Dへの進入距離D
pを観測変数とし、観測値P
yを以下の数式(18)で表す。
【0127】
【0128】
図22は各観測変数を示した図である。
図22において、現在の移動体1に対して時刻T
d後の予測状態量P
x’を有するパーティクルP
dを模式的に示している。パーティクルP
dの位置、方位角に基づいて危険領域Dが設定され、危険領域Dには移動障害物MOBが進入している。移動障害物MOBの危険領域Dへの進入距離D
pは、パーティクルP
dの方位角Θ
pと平行な方向の距離で規定する。
【0129】
ここで危険領域Dは、パーティクルPdの方位角Θpの向きに長辺の向きを傾けた長方形の領域であり、この領域はパーティクルPdの前方に距離Dx、左右に距離Dyずつの長さを有する領域となっている。ここで、距離Dxは、パーティクルPdの速度Vと予め設定しておいた安全見込時間Tsを用いて、以下の数式(19)で表される。
【0130】
【0131】
また、距離Dyは、予め設定しておいたパラメータTsyを用いて、以下の数式(20)で表される。
【0132】
【0133】
ステップS106において各パーティクルの観測値を求めた後は、予測状態評価部240において、各パーティクルの観測値Pyと、理想観測値Pyiとの差から、各パーティクルの重みWを更新する(ステップS107)。ここで、理想観測値Pyiとは、仮想的に設定した目標状態量にある移動体1に対する観測値であり、移動体1が目標状態量を満たしている場合に、移動体1は理想状態となる。本実施の形態において理想観測値Pyiは、目標状態量に基づいて、目標横偏差との偏差Lenom、目標車速Vnom、目標方位角Θtnomおよび目標進入距離Dnomで構成され、以下の数式(21)で表される。
【0134】
【0135】
また、パーティクルの位置が、ステップS102で演算した走行可能領域TA外である場合は、各パーティクルの重みを0とする、あるいは走行可能領域TA内にあるパーティクルよりも低い値とする。走行可能領域TAの内外判定は、例えば、走行可能領域TAの各頂点と移動体1とを結ぶ多角形領域内に、パーティクルの二次元位置XpおよびYpがあるか否かで判定を行う。
【0136】
ここで、上記では走行可能領域TA外のパーティクルは重みを0としているが、走行可能領域TA外のパーティクルについて、走行可能領域TAからの逸脱度に応じて、パーティクルに付与する重みを可変とすることもできる。
【0137】
図23は、走行可能領域TA外のパーティクルに付与する重みを可変とする処理の概念図である。
図23において、移動体1の前方の走行可能領域TA内にあるパーティクルPW
4は、重みW
4が付与され、走行可能領域TAは重みW
4付与領域RW
4と呼称することができる。
【0138】
また、重みW4付与領域RW4の外側には、重みW3付与領域RW3が設定され、そこにあるパーティクルPW3には、重みW3が付与される。また、重みW3付与領域RW3のさらに外側には、重みW2付与領域RW2が設定され、そこにパーティクルがある場合には、重みW2が付与される。また、重みW2付与領域RW2のさらに外側には、重みW1付与領域RW1が設定され、そこにあるパーティクルPW1には、重みW1が付与される。なお、重みはW4が最も重く、重みW3、W2、W1の順に軽くなる。
【0139】
このように、走行可能領域TAの外側のパーティクル(予測点)を削除せず、走行可能領域TAからの距離に応じて予測状態量の評価を行うことで、外界センサの認知可能範囲の限界等により、実際には走行可能領域TAであっても、外界センサ上は走行可能領域TA外として認識されている領域についても、軌道候補として残すことができ、残った軌道候補に対して、走行可能領域TAからの距離、すなわち信頼度に応じた予測点の評価ができ、軌道計画が成功しやすくなる。また、走行可能領域TAから離れたパーティクルほど付与する重みを軽くすることで、当該パーティクルに基づいて軌道が生成される可能性を低減でき、生成された軌道の安全性を高めることができる。
【0140】
また、
図23ではパーティクルに付与する重みは不連続な値となっているが、走行可能領域TAからの距離に応じて付与する重みが連続的に変化するような値とすることもできる。
【0141】
また、走行可能領域TA内のパーティクルについては、走行可能領域TAを規定する境界からの距離に応じて、パーティクルに付与する重みを可変とすることもできる。
【0142】
図24は、走行可能領域TA内のパーティクルに付与する重みを可変とする処理の概念図である。
図24において、移動体1の前方の走行可能領域TA内には、走行可能領域TAを規定する境界側から内側に向けて、順に、重みW
1付与領域RW
1、重みW
2付与領域RW
2、重みW
3付与領域RW
3および重みW
4付与領域RW
4が設定されている。各付与領域での処理は
図23を用いて説明した処理と同じであり、重みはW
4が最も重く、重みW
3、W
2、W
1の順に軽くなる。
【0143】
このように、走行可能領域TA内の予測状態量において、走行可能領域TAを規定する境界に近づくにつれて、小さくなるような重みの付与を行うことで、走行可能領域TAの境界付近よりも走行可能領域TAの中央に位置する予測状態量の重みが高くなり、走行可能領域TAの境界をなるべく避けるような軌道計画ができ、生成された軌道の安全性を高めることができる。
【0144】
また、
図24ではパーティクルに付与する重みは不連続な値となっているが、走行可能領域TAを規定する境界からの距離に応じて付与する重みが連続的に変化するような値とすることもできる。
【0145】
また、走行可能領域TA内のパーティクルについては、走行可能領域TA内であっても、進行すると行き止まりとなりうる地点に予測されたパーティクルは、重みを0または小さな重みを付与するように処理することもできる。
図25は当該処理を説明する概念図である。
【0146】
図25においては、移動体1の前方にETCゲートなどの狭い通路が存在するシーンを示しており、目標位置TGPは通過可能なゲート内となっている。他のゲートは走行不可能であり、行き止まりDEとなっており進行すると移動体1が将来走行できない領域となっている。この領域に予測されたパーティクルPWは、重みが0(W=0)となっている。
【0147】
このように、走行可能領域TA内であっても、目標位置TGPに到達する前に行き止まりで阻まれ、身動きが取れなくなることを回避する軌道を生成することができる。
【0148】
なお、行き止まりとなりうるかの判定は、例えば、
図25中の目標位置TGPからのx方向の偏差が小さいかつ、y方向の偏差が大きいパーティクル、すなわち目標位置TGPから水平方向(y方向)にずれているパーティクルであれば、目標位置の手前の障害物に阻まれていることになる。よって、目標位置TGPからのx方向の偏差が小さいかつ、y方向の偏差が大きいか否かで行き止まりとなりうる地点に予測されたパーティクルか否かを判定することができる。
【0149】
また、
図11を用いて説明したように、行き止まりの箇所を予め走行可能領域TAから除外し、行き止まりとなりうる地点に予測されたパーティクルは走行可能領域TA外にあるものとして、重みWを付与することもできる。
【0150】
また、走行可能領域内のパーティクルについては、走行可能領域内に跨ぎ禁止線がある場合、1ステップ前に軌道点演算部250で生成された軌道点、または移動体1に対して、跨ぎ禁止線を跨ぐような位置に、ステップS105で演算したパーティクルがある場合、そのパーティクルの重みWを0とするか、または小さな重みを付与することもできる。
図26は当該処理を説明する概念図である。
【0151】
図26においては、移動体1の進行方向の左右に跨ぎ禁止線NSLが設けられているシーンを示しており、左右の跨ぎ禁止線NSLで規定される走行車線内に複数の軌道点TPで構成される生成軌道GTが設定されているが、現在、予測状態評価部240において評価中のパーティクルの幾つかは、1ステップ前に軌道点演算部250で生成された軌道点TPに対して跨ぎ禁止線NSLを跨ぐような位置に予測されたパーティクルPWとなっており、重みが0(W=0)となっている。
【0152】
このように、軌道点TPに対して跨ぎ禁止線NSLを跨ぐような位置に予測されたパーティクルの重みを0とすることで、移動体1が将来走行できない領域に軌道が設定されることを防止でき、生成された軌道の安全性を高めることができる。
【0153】
また、
図13を用いて説明したように、走行可能領域TAと跨ぎ禁止線NSLとで囲まれた領域は、除去領域ARとして走行可能領域TAから除外し、その地点に予測されたパーティクルは走行可能領域TA外にあるものとして、重みWを付与することもできる。
【0154】
また、現在認知できている走行可能領域外のパーティクルについては、予測した走行可能領域がある場合、予測走行可能領域に、当該パーティクルが位置していれば、そのパーティクルの重みWは0としないように処理することもでき、現在認知できている走行可能領域内のパーティクルの重みよりも小さな重みを付与することもできる。
図27は予測走行可能領域内にあるパーティクルの重み付け処理を説明する概念図である。
【0155】
図27においては、現在認知できている走行可能領域TAの先に予測走行可能領域ETAが設けられており、予測走行可能領域ETA内にあるパーティクルPW
1には、重みW
1が付与される。また、走行可能領域TA内にあるパーティクルPW
2には、重みW
2が付与される。ここで、重みW
1は重みW
2よりも小さい(W
1<W
2)。
【0156】
予測走行可能領域ETAを用いることで、現在認知できている外界センサによる走行可能領域TAよりも遠くの位置まで軌道を生成することができる。また、予測走行可能領域ETAの信頼度は高くないので、現在認知できている外界センサによる走行可能領域TA内の予測状態量の重みを相対的に大きくすることで、信頼度の高い軌道を生成できる。
【0157】
ここで、ステップS105において離散時間幅Td後の状態量を予測したパーティクルについて、周辺環境取得部130から得られる移動障害物の予測軌道を用い、各パーティクル周辺の領域に、同時刻、すなわちパーティクルの予測時間と同じ時間に予測軌道を用いることで得られた予測障害物が存在するかを判断し、存在する場合はそのパーティクルの重みWを0とする処理を行うこともできる。
【0158】
各パーティクルの更新前の重みWをWpとして再定義する。重みWは、更新前の重みと尤度LLVとに比例し、以下の数式(22)を用いて、全パーティクルの重みの積算値が1となるよう更新する。
【0159】
【0160】
ここで尤度LLVは、予め設定しておいたパーティクルの状態量Pxに関する共分散行列Qと観測値Pyに関する共分散行列Rを用いて、以下の数式(23)で求められる。
【0161】
【0162】
ここで、行列Πは以下の数式(24)で表される。
【0163】
【0164】
ただし、n個目のパーティクルにおける測定行列Hの値Hnは、Px=Pxnとした場合、測定関数hを状態量Pxで微分した値とし、以下の数式(25)で表される。
【0165】
【0166】
また、測定関数hは状態量Pxから観測値Pyを求める関数であり、以下の数式(26)で表される。
【0167】
【0168】
各パーティクルの観測値と、理想観測値との差に基づく、各パーティクルの重み更新について、移動体1と目標状態量との差、または適用シーンに基づいて、どの項目をどの程度重点的に評価するかという、評価の重みを設定することもできる。
図28は評価の重みの設定処理を説明する概念図である。
【0169】
図28においては、移動体1が目標横位置Y
Lから離れた状態にあり、目標横位置Y
Lとの偏差を縮めることが重要視される領域IA1では、重み更新時に目標横位置Y
Lへの偏差が小さいパーティクルの尤度が大きくなるように評価の重みを設定する。
【0170】
このような設定により、例えば、料金所ゲート通過シーンにおいて、目標位置が通過したいゲートであるとき、ゲートに対して垂直で通過する必要があるシーンでは、縦方向の位置に関する目標状態量との差よりも、横方向の位置に関する目標状態量との差を重視することで、縦方向の位置が合うよりも先に、横方向の位置を合わせることができ、ゲートに対して垂直で進入できる位置に早めに到達できるような軌道を生成できる。
【0171】
また、
図28において、移動体1の方位角Θ
eと目標状態量TGでの目標方位角Θ
tとの偏差が大きい状態にあり、目標方位角Θ
tとの偏差を縮めることが重要視される領域IA2では、重み更新時に目標方位角Θ
tとの偏差が小さいパーティクルの尤度が大きくなるように評価の重みを設定する。評価の重みの設定は偏差が小さいパーティクルほど重み付け係数を大きくすることで設定される。
【0172】
このような設定により、例えば、料金所ゲート通過シーンにおいて、目標位置が通過したいゲートであるとき、目標位置から距離が遠い地点においては方位角に関する状態量の評価の重みを低くして、距離が近い地点においては方位角に関する状態量の評価の重みを大きくすることで、目標位置から離れた地点においては軌道の方位角に関する状態量の自由度が高く、目標位置に近づくにつれて方位角に関する状態量を合わせて行くような軌道を生成できる。
【0173】
ここで、
図6のフローチャートの説明に戻る。ステップS107において各パーティクルの重みを更新した後は、予測状態評価部240において、各パーティクルの重みに基づき、パーティクルのリサンプリングを行う(ステップS108)。ただし、パーティクル数の大幅な減少を防ぐため、有効パーティクル数N
eff
が閾値Nthr以上となる場合にのみリサンプリングを行い、それ以外の場合はこのステップでは何も行わない。
【0174】
ここで、有効パーティクル数N
eff
は以下の数式(27)で表される。
【0175】
【0176】
リサンプリングでは、通常のパーティクルフィルタ同様、経験分布関数から等間隔にサンプリングを行う。リサンプリングを行った場合、以下の数式(28)に基づいて、各パーティクルの重みは同等として重みのリセットを行う。
【0177】
【0178】
ステップS108においてパーティクルのリサンプリングを行った後は、軌道点演算部250において、パーティクルの位置と速度について、予測状態評価部240で演算した重みに基づいて、軌道生成部260において加重平均値を演算し、その加重平均した、少なくとも位置データと速度データで構成される点を軌道点として、例えば軌道生成部260内のメモリ(図示せず)に記憶する(ステップS109)。
【0179】
また、軌道点は、予測状態評価部240で演算した重みに基づいて、重みの最も大きい、すなわち重み付け係数の最も大きいパーティクルを軌道点とすることもできる。
【0180】
また、軌道点は、位置データおよび速度データに限らず、方位角データ、舵角データ等を含めて構成することもできる。
【0181】
また、軌道点は位置データのみの点を軌道点とすることもできる。
【0182】
ステップS109において軌道点を記憶した後は、時刻Tが計画ホライズンTthrに達したかどうかを判断する(ステップS110)。時刻が計画ホライズン未満の場合(Noの場合)はステップS104以下の処理を繰り返す。時刻Tが計画ホライズンTthr以上である場合(Yesの場合)は、軌道生成部260が軌道点として記憶していた、各離散時間ごとの位置データと速度データで構成される軌道点の点列を生成軌道として運動制御部300に出力する。
【0183】
ステップS104からステップS110までの演算を時刻が計画ホライズンTthr以上となるまで繰り返して複数の軌道点を得る処理の概念図を
図29に示す。
図29においては、パーティクル数を4個とし、また、図中のパーティクルはリサンプリング後の状態を表している。
【0184】
図29に示されるように、走行可能領域TA内に、時刻T=T
1のパーティクル群G1、時刻T=T
2のパーティクル群G2および時刻T=T
3のパーティクル群G3があり、時刻T=T
3では計画ホライズンTthrを超えている。パーティクル群G1~G3のそれぞれにおける、4個のパーティクルの加重平均された状態量が軌道点TP1、TP2およびTP3となっている。これらの軌道点の点列が生成軌道となるので、予測状態評価部240による評価に基づいた尤もらしい軌道点を生成できる。
【0185】
また、パーティクル群G1~G3のそれぞれにおける重みの最も大きい、すなわち重み付け係数の最も大きいパーティクルを軌道点とすることでも、上記と同様の効果が得られる。
【0186】
以上説明した、本実施の形態の軌道計画装置200を用いて目標状態量に到達するまでの軌道生成の一例を、
図30および
図31を用いて説明する。
図30および
図31は軌道生成の一例を示す模式図であり、
図30の左図には目標状態量TGから遠い位置に移動体1が存在するときの生成軌道GT1を模式的に示している。
図30の右図には、左図の生成軌道GT1を用いて、生成軌道GT1に沿って前方に進み、左図のときよりも少し前進した位置での生成軌道GT2を示している。
図31の左図には、
図30の右図の生成軌道GT
2を用いて、生成軌道GT
2に沿って前方に進み、
図30の右図のときよりも少し前進した位置での生成軌道GT3を示している。
図31の右図には、左図の生成軌道GT3を用いて、生成軌道GT3に沿って前方に進み、目標状態量TGに到達した後の生成軌道GT4を示している。
【0187】
以上説明したように実施の形態1の軌道計画装置200によれば、移動体1の位置の状態量を含む目標状態量と走行可能領域とに基づいて、目標状態量までの軌道を評価し、評価結果に基づいて軌道を生成するため、走行可能領域が複雑な場合においても、走行可能領域を通って目的地へ到達することができる。
【0188】
<実施の形態2>
図32は、実施の形態2の軌道計画装置を搭載した移動体1の概略構成の一例を示すブロック図である。なお、
図32においては、
図1を用いて説明した移動体1と同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0189】
図32に示す、移動体1においては、移動体1の通るべき軌道を生成する軌道計画装置200Aの構成が、実施の形態1の軌道計画装置200とは異なっている。すなわち、実施の形態2の軌道計画装置200Aは、状態推定にパーティクルフィルタを用いる代わりに、移動体1の現在の位置と目標位置とを通る多項式を状態予測部230で演算することによって軌道を生成するため、軌道点演算部250を有していない点で軌道計画装置200とは異なっている。
【0190】
移動体1と目標状態量TGを結ぶ多項式の軌道を演算する方法について、以下では目標状態量TGを目標位置(x
g、y
g)として説明する。
図33は、移動体1と目標位置TGを結ぶ多項式の導出方法を説明する概念図である。
【0191】
図33のように移動体1の位置を原点、移動体1の向きをx軸、移動体の向きに垂直な方向をy軸とした場合、移動体1と目標位置TGを結ぶ多項式y=f(x)は以下の数式(29)となる。
【0192】
【0193】
そして、当該多項式は、移動体1の位置(原点)と目標位置TGを通り、移動体1の位置地点では方向がx軸(角度が0度)、また目標位置地点では所定の方向(角度)を向いていなければならないという制約条件を付ける。
【0194】
それを数式で表すと以下の境界条件、すなわち移動体位置地点と目標位置地点の条件の連立方程式を解くことで、各係数ciを求めることができる。当該連立方程式は、以下の数式(30)および(31)で表される。ここで、x0は移動体位置のx座標値、xgは目標位置のx座標値である。
【0195】
【0196】
【0197】
次に、多項式を以下の数式(32)とする場合について説明する。
【0198】
【0199】
例えば、移動体位置地点での関数値(f(x
0))が移動体1のy座標値であり、移動体位置地点での傾きを表す関数値(f’(x
0))が移動体1の方位角であり、移動体位置地点での曲率を表す関数値(f’’(x
0
))が0の境界条件を与えてやると、係数C
0、C
1、C
2が一意的に求まり残りのx
3の項はランダムに与えることで、
図34に示されるようにランダムの項数分の多項式の軌道ができる。
【0200】
図34には、複数の障害物OBがある場合に、複数の障害物OBを避けて移動体1と目標位置TGとを結ぶ多項式軌道を得るための3パターンの多項式軌道PT1、PT2およびPT3が示されている。
【0201】
多項式軌道PT1、PT2およびPT3を与える多項式は、それぞれ以下の数式(33)、(34)および(35)で表される。
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
上記複数の多項式軌道から目標位置TGへの到達値および多項式軌道が走行可能領域TAの境界から離れており、走行可能領域TA内にあるか等の評価を行い、最も評価が高い多項式軌道を生成軌道とする。
図34を例に採ると、多項式軌道PT3が生成軌道となる。
【0206】
また、多項式を上述した数式(32)とする場合について、以下の方法によっても多項式軌道を得ることができる。
【0207】
例えば、移動体位置地点での関数値(f(x
0))が移動体1のy座標値であり、移動体位置地点での傾きを表す関数値(f’(x
0))が移動体1の方位角であり、移動体位置地点での関数値(f(x
g))が目標位置TGのy座標値であり、移動体位置地点での関数値(f’(x
g))が目標位置TGの方位角であるとの境界条件を与えてやると、係数C
3、C
2、C
1およびC
0を一意的に求めることができる。求められた係数C
3、C
2、C
1およびC
0の値の周辺で各係数をランダムに変えることで、
図35のように複数の多項式の軌道ができる。
【0208】
図35は、複数の障害物OBがある場合に、複数の障害物OBを避けて移動体1と目標位置TGとを結ぶ多項式軌道を得るための3パターンの多項式軌道PT1、PT2およびPT3が示されている。
【0209】
多項式軌道PT1、PT2およびPT3を与える多項式は、それぞれ以下の数式(36)、(37)および(38)で表される。
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
上記複数の多項式軌道から目標位置TGへの到達値および多項式軌道が走行可能領域TAの境界から離れており、走行可能領域TA内にあるか等の評価を行い、最も評価が高い多項式軌道を生成軌道とする。
図35を例に採ると、多項式軌道PT1が生成軌道となる。
【0214】
このように実施の形態2の軌道計画装置200Aは、状態推定にパーティクルフィルタを用いる代わりに、移動体1の現在の位置と目標位置とを通る多項式を演算することで生成軌道を得るので、軌道点は演算せず軌道点演算部250を有していない。
【0215】
ここで、多項式を演算することで生成軌道を得る方法を採る場合の利点として、演算負荷が低いことが挙げられる。すなわち、上記で説明した連立方程式を解くだけで1つの候補軌道を演算することができるが、パーティクルフィルタを用いる場合は、多数のパーティクルの状態遷移を生成したい軌道の長さ分だけ演算を繰り返す必要があるため、演算負荷が大きい。
【0216】
一方、パーティクルフィルタを用いて生成軌道を得る方法を採る場合の利点としては、走行可能領域TA内であることを保証する軌道が生成できることが挙げられる。すなわち、パーティクルフィルタは多数の予測点(予測状態量)を使って、1つの軌道点を求める手法であるが、各パーティクルの点と走行可能領域TAの位置関係から、軌道点が走行可能領域TAの外か内かという評価を行うことができるため、走行可能領域TA内であることを保証できる軌道を生成することができる。一方で多項式を演算することで生成軌道を得る方法では、移動体1と目標位置TGを結ぶ軌道を生成できるものの、「走行可能領域TA内である」こと、および「障害物を回避する」ことを多項式の数式に入れることができない、または考慮できないので生成した軌道が走行可能領域TA外となる可能性がある。
【0217】
また、パーティクルフィルタを用いて生成軌道を得る方法を採る場合の利点としては、軌道の探索範囲が広いことが挙げられる。すなわち、多項式を演算することで生成軌道を得る方法では、多項式で表現できる軌道のみしか得ることができないため、小さな探索範囲となるが、パーティクルフィルタを用いる場合は、状態の予測点をベースとする、すなわち点により表現するので探索範囲が広くなる。また、非線形な軌道も得ることができ、多項式で表現できない軌道も生成できる。
【0218】
<重み付けの変形例>
以上説明した実施の形態1の予測状態評価部240は、各予測状態量、すなわち各パーティクルに重み付けをすることで重み付けされた軌道候補とする。このとき、予測状態量が、現在の移動体1の状態量と大きく乖離している場合、または、前回演算された軌道点の状態量と大きく乖離している場合、このような予測状態量に基づいて演算した軌道点を用いて軌道を生成すると、軌道が急変して移動体1の乗り心地が悪くなる。
【0219】
そこで、予測状態評価部240において、予測状態量が、現在の移動体1の状態量と大きく乖離している場合、および、前回演算された軌道点の状態量と大きく乖離している場合は、重み付け係数を小さくすることで、急変するような軌道が生成されることを抑制し、移動体1の乗り心地を改善できる。
【0220】
図36には、予測状態量が、現在の移動体1の状態量と大きく乖離している場合の重み付けの概念図を示す。
図36に示されるように、現在の移動体1の状態量(x
e,y
e,θ
e,v
e )に対して大きく乖離しているパーティクル群GSと、現在の移動体1の状態量に対して乖離がそれほど大きくないパーティクル群GMが存在する場合、予測状態評価部240は、パーティクル群GSのパーティクルの重み付け係数は小さくする。一方、予測状態評価部240は、パーティクル群GMのパーティクルの重み付け係数は小さくしない。
【0221】
ここで、現在の移動体1の状態量と予測状態量(パーティクル)との乖離の程度は、両状態量の差が予め定めた閾値に基づいて判断することができ、閾値よりも大きければ、乖離が大きいとし、閾値以下であれば乖離が小さいと判断することができる。
【0222】
また、パーティクルに対する重み付けは、現在の移動体1の状態量と予測状態量(パーティクル)との差の絶対値に基づいて重み付け係数を変えるようにすることもできる。例えば、両状態量の差の絶対値に基づいて段階的に変化するような重み付け係数を設定しておき、両状態量の差が大きくなれば重み付け係数を段階的に小さくし、両状態量の差が小さくなれば重み付け係数を段階的に大きくすることもできる。
【0223】
図37には、予測状態量が、前回演算された軌道点の状態量と大きく乖離している場合の重み付けの概念図を示す。
図37に示されるように、前回演算された軌道点TP2の状態量に対して大きく乖離しているパーティクル群GSと、前回演算された軌道点TP2の状態量に対して乖離がそれほど大きくないパーティクル群GMが存在する場合、予測状態評価部240は、パーティクル群GSのパーティクルの重み付け係数は小さくする。一方、予測状態評価部240は、パーティクル群GMのパーティクルの重み付け係数は小さくしない。
【0224】
ここで、前回演算された軌道点TP2の状態量と予測状態量(パーティクル)との乖離の程度は、両状態量の差が予め定めた閾値に基づいて判断することができ、閾値よりも大きければ、乖離が大きいとし、閾値以下であれば乖離が小さいと判断することができる。
【0225】
また、パーティクルに対する重み付けは、前回演算された軌道点TP2の状態量と予測状態量(パーティクル)との差の絶対値に基づいて重み付け係数を変えるようにすることもできる。例えば、両状態量の差の絶対値に基づいて段階的に変化するような重み付け係数を設定しておき、両状態量の差が大きくなれば重み付け係数を段階的に小さくし、両状態量の差が小さくなれば重み付け係数を段階的に大きくすることもできる。
【0226】
なお、以上説明した実施の形態1および2に係る軌道計画装置200および200Aの各構成要素は、コンピュータを用いて構成することができ、コンピュータがプログラムを実行することで実現される。すなわち、軌道計画装置200および200Aは、例えば
図38に示す処理回路50により実現される。処理回路50には、CPU、DSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサが適用され、記憶装置に格納されるプログラムを実行することで各部の機能が実現される。
【0227】
なお、処理回路50には、専用のハードウェアが適用されても良い。処理回路50が専用のハードウェアである場合、処理回路50は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたもの等が該当する。
【0228】
軌道計画装置200および200Aは、構成要素の各々の機能が個別の処理回路で実現されても良いし、それらの機能がまとめて1つの処理回路で実現されても良い。
【0229】
また、
図39には、処理回路50がプロセッサを用いて構成されている場合におけるハードウェア構成を示している。この場合、軌道計画装置200および200Aの各部の機能は、ソフトウェア等(ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェア)との組み合わせにより実現される。ソフトウェア等はプログラムとして記述され、メモリ52に格納される。処理回路50として機能するプロセッサ51は、メモリ52(記憶装置)に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。すなわち、このプログラムは、軌道計画装置200および200Aの構成要素の動作の手順および方法をコンピュータに実行させるものであると言える。
【0230】
ここで、メモリ52は、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)およびそのドライブ装置等、または、今後使用されるあらゆる記憶媒体であっても良い。
【0231】
以上、軌道計画装置200および200Aの各構成要素の機能が、ハードウェアおよびソフトウェア等のいずれか一方で実現される構成について説明した。しかしこれに限ったものではなく、軌道計画装置200および200Aの一部の構成要素を専用のハードウェアで実現し、別の一部の構成要素をソフトウェア等で実現する構成であっても良い。例えば、一部の構成要素については専用のハードウェアとしての処理回路50でその機能を実現し、他の一部の構成要素についてはプロセッサ51としての処理回路50がメモリ52に格納されたプログラムを読み出して実行することによってその機能を実現することが可能である。
【0232】
以上のように、軌道計画装置200および200Aは、ハードウェア、ソフトウェア等、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0233】
本開示は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において、例示であって、本開示がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、本開示の範囲から外れることなく想定されうるものと解される。
【0234】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。