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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】熱交換素子
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/08 20060101AFI20241206BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F28F3/08 301Z
F28D9/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023534435
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 JP2021026095
(87)【国際公開番号】W WO2023286110
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】脇田 覚司
(72)【発明者】
【氏名】池内 佑一郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 史恭
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-514659(JP,A)
【文献】特開2004-293862(JP,A)
【文献】特開2004-003824(JP,A)
【文献】特開2008-107071(JP,A)
【文献】特開2007-285691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 3/00-3/14
F28D 9/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱板が積層されて形成された熱交換素子であって、
前記伝熱板は、複数の前記伝熱板の積層方向の一方側を通過する空気と前記積層方向の他方側を通る空気とを互いに対向する方向で通過させて熱交換させる熱交換部と、前記積層方向に沿って見て前記熱交換部を挟んで一方側と他方側とに設けられたヘッダ部と、前記熱交換部のうち前記ヘッダ部と接しない辺に沿って設けられた接合縁部と、を有し、
積層された複数の前記伝熱板が有する前記接合縁部同士は、互いに接触して超音波溶着によって接合されており、
前記接合縁部には、前記積層方向に沿って凸となる第1の凸部と、隣接する前記伝熱板の前記第1の凸部が嵌まる凹部とが形成されており、
前記ヘッダ部には、前記積層方向に沿って凸となり、その頂部に凹みが形成された台座と、隣接する前記伝熱板の前記凹みに嵌まる第2の凸部とが形成されていることを特徴とする熱交換素子。
【請求項2】
前記台座の頂部には平面領域が設けられており、隣接する前記伝熱板に前記平面領域が当接することを特徴とする請求項に記載の熱交換素子。
【請求項3】
前記伝熱板は前記積層方向に沿って見て六角形形状であり、
前記第1の凸部および前記台座は前記六角形形状のいずれかの辺に沿って設けられており、
前記第1の凸部および前記台座は、前記第1の凸部および前記台座が沿う辺に対して複数形成されていることを特徴とする請求項またはに記載の熱交換素子。
【請求項4】
複数の前記第1の凸部および前記台座は、前記第1の凸部および前記台座が沿う辺の長さを等間隔に分ける位置に設けられていることを特徴とする請求項に記載の熱交換素子。
【請求項5】
前記台座は、前記積層方向に沿って見てひし形の形状であり、2本の対角線のうち長いほうの対角線を、前記ヘッダ部を通過する空気の流れ方向に沿わせて形成されていることを特徴とする請求項からのいずれか1つに記載の熱交換素子。
【請求項6】
前記第2の凸部の根元は、円形状とされており、
前記第の凸部の高さは、前記第の凸部の根元での直径に対する比率が1以下であることを特徴とする請求項1からのいずれか1つに記載の熱交換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、伝熱板を積層させて形成された対向流型の熱交換素子に関する。
【0002】
対向流型の熱交換素子では、樹脂シートで形成された伝熱板を積層させたものがある。例えば、特許文献1には、六角形形状の伝熱板を積層させて六角柱に形成された熱交換素子が開示されている。六角柱の熱交換素子では、側面の一部が熱交換する空気の出入り口となる。また、伝熱板の縁部のうち空気の出入口となる側面に面する縁部以外の縁部は、積層される伝熱板同士で接合され、熱交換素子からの空気の漏れが防がれる。縁部同士の接合は、熱溶着またはエポキシを使用した接着によって行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-293862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、伝熱板同士の接合方法に超音波溶着が用いられる場合がある。超音波溶着を用いることで、伝熱板同士の接合時間の短縮を図ることができる。超音波溶着では、縁部を挟んだ工具を通して縁部に超音波振動が伝えられる。超音波溶着を用いた伝熱板同士の接合では、超音波振動によって伝熱板の位置がずれてしまうという問題があった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、熱交換素子を構成する伝熱板同士の固定を超音波溶着で行っても位置がずれることがなく、伝熱板同士の位置決めを正確かつ容易に行なえる熱交換素子を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる熱交換素子は、複数の伝熱板が積層されて形成された熱交換素子であって、伝熱板は、複数の伝熱板の積層方向の一方側を通過する空気と積層方向の他方側を通る空気とを互いに対向する方向で通過させて熱交換させる熱交換部と、積層方向に沿って見て熱交換部を挟んで一方側と他方側とに設けられたヘッダ部と、熱交換部のうちヘッダ部と接しない辺に沿って設けられた接合縁部と、を有する。積層された複数の伝熱板が有する接合縁部同士は、互いに接触して超音波溶着によって接合されており、接合縁部には、積層方向に沿って凸となる第1の凸部と、隣接する伝熱板の第1の凸部が嵌まる凹部とが形成されている。ヘッダ部には、積層方向に沿って凸となり、その頂部に凹みが形成された台座と、隣接する伝熱板の凹みに嵌まる第2の凸部とが形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、熱交換素子を構成する伝熱板同士の固定を超音波溶着で行っても位置がずれることがなく、伝熱板同士の位置決めを正確かつ容易に行なえる熱交換素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1にかかる熱交換素子の斜視図
図2】実施の形態1にかかる熱交換素子の分解斜視図
図3】実施の形態1にかかる熱交換素子の一部を抜き出した斜視図
図4】実施の形態1における第1の伝熱板の平面図
図5】実施の形態1における第2の伝熱板の平面図
図6】実施の形態1にかかる熱交換素子における突起と台座部分を拡大した部分拡大断面図
図7】実施の形態1にかかる熱交換素子における突起と台座部分を拡大した部分拡大斜視断面図
図8】実施の形態1における台座の平面図
図9】実施の形態1にかかる熱交換素子におけるコーンカバーとコーン部分を拡大した部分拡大断面図
図10】実施の形態1にかかる熱交換素子におけるコーンカバーとコーン部分を拡大した部分拡大斜視断面図
図11】実施の形態1にかかる熱交換素子の製造装置の概略構成を示す図
図12図11に示したガイドピンが突起に嵌まった状態を示す斜視断面図
図13】実施の形態1にかかる熱交換素子の製造工程を示す図
図14】実施の形態1にかかる熱交換素子の製造工程を示す図
図15】実施の形態1にかかる熱交換素子の製造工程を示す図
図16】実施の形態1にかかる熱交換素子の製造工程を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、実施の形態にかかる熱交換素子を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる熱交換素子の斜視図である。図2は、実施の形態1にかかる熱交換素子の分解斜視図である。図3は、実施の形態1にかかる熱交換素子の一部を抜き出した斜視図である。熱交換素子50は、六角形形状の第1の伝熱板1と第2の伝熱板2とが交互に積層されて、全体が六角柱に形成されている。なお、以下の説明では、第1の伝熱板1と第2の伝熱板2との積層方向を単に積層方向と称する。また、図1の紙面上での上下方向を熱交換素子50における上下方向として説明する。
【0011】
熱交換素子50は、方形形状となる6つの側面のうちの1つの側面が、熱交換素子50の内部への空気の流入口となる第1の流入面61となる。第1の流入面61と反対方向を向く側面が、第1の流入面61から流入した空気が流出する第1の流出面71となる。熱交換素子50の内部には、第1の流入面61と第1の流出面71とを結ぶ風路3が形成される。
【0012】
第1の流出面71と隣接する2つの側面のうちの一方の側面が、熱交換素子50の内部への空気の流入口となる第2の流入面62となる。第2の流入面62と反対方向を向く側面が、第2の流入面62から流入した空気が流出する第2の流出面72となる。第1の流入面61と第2の流出面72は互いに隣接する。熱交換素子50の内部には、第2の流入面62と第2の流出面72とを結ぶ風路4が形成される。熱交換素子50の内部で風路3と風路4とは交わらない。
【0013】
熱交換素子50は、例えば換気装置の内部に設けられて、室内から室外に向かう排気流を風路3に通過させ、室外から室内に向かい給気流を風路4に通過させることで、給気流と排気流との間で熱交換させることができる。
【0014】
図4は、実施の形態1における第1の伝熱板の平面図である。第1の伝熱板1は、平面視において六角形形状となっている。第1の伝熱板1と第2の伝熱板2との積層によって、風路3は第1の伝熱板1の一方面側に形成され、風路4は第1の伝熱板1の他方面側に形成される。第1の伝熱板1には、風路3を通過する空気と風路4を通過する空気との間で熱交換をさせる熱交換部5が設けられている。熱交換部5は、熱交換素子50の側面のうち、第1の流入面61、第1の流出面71、第2の流入面62、第2の流出面72が形成されていない側面に面する辺1a,1bを短辺とする長方形の領域で形成されている。詳細な構造の説明は省略するが、熱交換部5には複数の凹凸を有する波形形状が形成されている。熱交換部5では、風路3を通過する空気と風路4を通過する空気とが互いに平行かつ反対向きに通過する。
【0015】
第1の伝熱板1には、平面視において三角形形状である第1のヘッダ部6aが設けられている。第1のヘッダ部6aは、熱交換素子50における第1の流入面61に面する辺1cと、第2の流出面72に面する辺1dとを有する。
【0016】
第1の伝熱板1には、平面視において三角形形状である第2のヘッダ部6bが形成されている。第2のヘッダ部6bには、熱交換素子50における第1の流出面71に面する辺1eと、第2の流入面62に面する辺1fとを有する。第1のヘッダ部6aと第2のヘッダ部6bとは、熱交換部5を挟んだ一方側と他方側に設けられている。第1の伝熱板1の辺1a,1bは第1のヘッダ部6aと第2のヘッダ部6bと接しない辺である。
【0017】
第1のヘッダ部6aおよび第2のヘッダ部6bにはリブ8が形成されている。第1のヘッダ部6aに形成されたリブ8は、辺1cから熱交換部5に向かって延びている。第1のヘッダ部6aに形成されたリブ8は、辺1dとほぼ平行に延びており、第1の流入面61すなわち辺1c側から流入した空気を熱交換部5に向けて円滑に通過させる。
【0018】
第2のヘッダ部6bに形成されたリブ8は、辺1eから熱交換部5に向かって延びている。第2のヘッダ部6bに形成されたリブ8は、辺1fとほぼ平行に延びており、熱交換部5からの空気を辺1eに向けて円滑に通過させる。
【0019】
第1のヘッダ部6aの外縁には、辺1cに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部21が設けられている。第1のヘッダ部6aの外縁には、辺1dに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部22が設けられている。第1の伝熱板1では、辺1cからの空気の流入は可能とし、辺1dからの空気の流入は防ぐため、帯状平面部21と帯状平面部22との間には積層方向に沿った段差41が設けられている。より具体的には、帯状平面部21はリブ8が形成された領域よりも下方となる位置に形成され、帯状平面部22は帯状平面部21よりも上方となる位置に形成されている。なお、帯状平面部21と、リブ8が形成された領域とが同一面で形成されていてもよい。
【0020】
第2のヘッダ部6bの外縁には、辺1eに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部23が設けられている。第2のヘッダ部6bの外縁には、辺1fに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部24が設けられている。第1の伝熱板1では、辺1eからの空気の流出は可能とし、辺1fからの空気の流出を防ぐために、帯状平面部23と帯状平面部24との間には積層方向に沿った段差42が設けられている。より具体的には、帯状平面部23はリブ8が形成された領域よりも下方となる位置に形成され、帯状平面部24は帯状平面部23よりも上方となる位置に形成されている。なお、帯状平面部23と、リブ8が形成された領域とが同一平面で形成されていてもよい。
【0021】
熱交換部5の外縁には、辺1aに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部25,26が設けられている。帯状平面部25と帯状平面部26とは、辺1aに沿った方向の中間部分で互いに段差43を設けて形成されている。帯状平面部26のほうが帯状平面部25よりも上方に形成されている。
【0022】
熱交換部5の外縁には、辺1bに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部27,28が設けられている。帯状平面部27と帯状平面部28とは、辺1bに沿った方向の中間部分で互いに段差44を設けて形成されている。帯状平面部28のほうが帯状平面部27よりも上方に形成されている。第1の伝熱板1は、平面視において六角形形状の中心位置を中心とする点対称な形状となっている。
【0023】
図5は、実施の形態1における第2の伝熱板の平面図である。第2の伝熱板2は、平面視において六角形形状となっている。第1の伝熱板1と同様の構成については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。第2の伝熱板2は、第1の伝熱板1と鏡像関係となっている。
【0024】
第1の伝熱板1と第2の伝熱板2との積層によって、風路4は第2の伝熱板2の一方面側に形成され、風路3は第2の伝熱板2の他方面側に形成される。第2の伝熱板2には、風路3を通過する空気と風路4を通過する空気との間で熱交換をさせる熱交換部5が設けられている。第2の伝熱板2では、熱交換部5は、熱交換素子50の側面のうち、第1の流入面61、第1の流出面71、第2の流入面62、第2の流出面72が形成されていない側面に面する辺2a,2bを短辺とする長方形の領域で形成されている。
【0025】
第2の伝熱板2には、平面視において三角形形状である第3のヘッダ部6cが設けられている。第3のヘッダ部6cは、熱交換素子50における第1の流入面61に面する辺2cと、第2の流出面72に面する辺2dとを有する。
【0026】
第2の伝熱板2には、平面視において三角形形状である第4のヘッダ部6dが形成されている。第4のヘッダ部6dには、熱交換素子50における第1の流出面71に面する辺2eと、第2の流入面62に面する辺2fとを有する。第3のヘッダ部6cと第4のヘッダ部6dとは、熱交換部5を挟んだ一方側と他方側に設けられている。第2の伝熱板2の辺2a,2bは第3のヘッダ部6cと第4のヘッダ部6dと接しない辺である。
【0027】
第3のヘッダ部6cおよび第4のヘッダ部6dにはリブ8が形成されている。第3のヘッダ部6cに形成されたリブ8は、辺2dから熱交換部5に向かって延びている。第3のヘッダ部6cに形成されたリブ8は、辺2cとほぼ平行に延びており、熱交換部5からの空気を辺2d側に向けて円滑に通過させる。
【0028】
第4のヘッダ部6dに形成されたリブ8は、辺2fから熱交換部5に向かって延びている。第4のヘッダ部6dに形成されたリブ8は、辺2eとほぼ平行に延びており、第2の流入面62すなわち辺2f側から流入した空気を熱交換部5に向けて円滑に通過させる。
【0029】
第3のヘッダ部6cの外縁には、辺2cに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部31が設けられている。第3のヘッダ部6cの外縁には、辺2dに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部32が設けられている。第2の伝熱板2では、辺2dからの空気の流出は可能とし、辺2cからの空気の流出は防ぐため、帯状平面部31と帯状平面部32との間には積層方向に沿った段差51が設けられている。より具体的には、帯状平面部32はリブ8が形成された領域よりも下方となる位置に形成され、帯状平面部31は帯状平面部32よりも上方となる位置に形成されている。なお、帯状平面部32と、リブ8が形成された領域とが同一平面で形成されていてもよい。
【0030】
第4のヘッダ部6dの外縁には、辺2eに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部33が設けられている。第4のヘッダ部6dの外縁には、辺2fに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部34が設けられている。第2の伝熱板2では、辺2fからの空気の流入は可能とし、辺2eからの空気の流入を防ぐために、帯状平面部33と帯状平面部34との間には積層方向に沿った段差52が設けられている。より具体的には、帯状平面部34はリブ8が形成された領域よりも下方となる位置に形成され、帯状平面部33は帯状平面部34よりも上方となる位置に形成されている。なお、帯状平面部34と、リブ8が形成された領域とが同一平面で形成されていてもよい。
【0031】
熱交換部5の外縁には、辺2aに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部35,36が設けられている。帯状平面部35と帯状平面部36とは、辺2aに沿った方向の中間部分で互いに段差53を設けて形成されている。帯状平面部35のほうが帯状平面部36よりも上方に形成されている。
【0032】
熱交換部5の外縁には、辺2bに沿って延びる帯状の平面領域である帯状平面部37,38が設けられている。帯状平面部37と帯状平面部38とは、辺2bに沿った方向の中間部分で互いに段差54を設けて形成されている。帯状平面部37のほうが帯状平面部38よりも上方に形成されている。第2の伝熱板2は、平面視において六角形形状の中心位置を中心とする点対称な形状となっている。
【0033】
次に、第1の伝熱板1および第2の伝熱板2に形成されている突起13、台座14、コーンカバー15、コーン16について説明する。
【0034】
突起13および台座14は、ヘッダ部6a,6b,6c,6dに形成されている。図6は、実施の形態1にかかる熱交換素子における突起と台座部分を拡大した部分拡大断面図である。図7は、実施の形態1にかかる熱交換素子における突起と台座部分を拡大した部分拡大斜視断面図である。図8は、実施の形態1における台座の平面図である。
【0035】
突起13は、下方に向けて凸となるように形成されている。突起13は、第2の凸部である。突起13の裏面は凹みとなっている。図4および図5に戻って、突起13は、空気の出入口となる辺1c,1e,2d,2fに沿って複数形成されている。各辺1c,1e,2d,2fに対して複数の突起13が形成されている。突起13は、各辺1c,1e,2d,2fの長さを等間隔に分ける位置に形成されている。突起13の高さは、突起13の根元での直径に対して比率が1以下となっている。この比率によって、伝熱板1,2を真空成形で成形した場合に、素材が薄くなりすぎて孔があくことを防ぐことができる。
【0036】
図6および図7に示すように、台座14は、上方に向けて凸となるように形成されている。台座14は、断面形状が台形形状となっている。台座14の頂部には平面である領域が設けられており、その平面である領域には下方に凹む凹み14aが形成されている。図8に示すように、台座14の平面形状はひし形形状となっている。凹み14aは、平面視において伝熱板1,2の中心に向かう方向を長手方向とする長穴形状となっている。凹み14aの短手方向に沿った幅は、突起13が嵌まる幅となっている。
【0037】
台座14は、ひし形の2本の対角線のうち長いほうの対角線が、その台座14が沿う辺1d,1f,2c,2eと平行となるように設けられる。すなわち、ひし形の2本の対角線のうち長いほうの対角線を空気の流れ方向に沿わせて台座14が設けられていればよい。台座14は、帯状平面部22,24,31,33に可能な限り近傍であるが間に空隙を設け、台座14と帯状平面部22,24,31,33とが重ならない程度に離れた位置に空気の流れ方向と概ね平行となる一直線上に設けられている。なお、本実施の形態では、台座14は、帯状平面部22,24,31,33と概ね平行となる一直線上に配置されているとも言い換えできる。
【0038】
突起13と台座14とは、第1の伝熱板1と第2の伝熱板2とを積層したときに、平面視において互いに重なる位置に形成されている。図6および図7に示すように、伝熱板1,2を積層させたとき、台座14の頂部の平面となる領域は上方に積層された伝熱板1,2に当接する。また、突起13は台座14の凹み14aに嵌まる。突起13は凹み14aに嵌まるので風路3,4には露出しない。なお、突起13が上方に凸となり、台座14が下方に凸となっていてもよい。
【0039】
図4および図5に示すように、コーンカバー15は、伝熱板1,2の帯状平面部25,27,36,38に形成されている。コーンカバー15は、各帯状平面部25,27,36,38に対して複数形成されている。コーンカバー15は、各帯状平面部25,27,36,38の長さを等間隔に分ける位置に形成されている。コーンカバー15は、各帯状平面部25,27,36,38の幅方向中心よりも熱交換部5に近い位置に形成されている。
【0040】
図9は、実施の形態1にかかる熱交換素子におけるコーンカバーとコーン部分を拡大した部分拡大断面図である。図10は、実施の形態1にかかる熱交換素子におけるコーンカバーとコーン部分を拡大した部分拡大斜視断面図である。コーンカバー15は、下方から上方に向けて凹んだ凹部である。コーンカバー15は、凹部の裏面側では凸となっている。コーンカバー15は、先端が平面となる円錐状で形成されている。コーンカバー15の高さは、熱交換部5とコーンカバー15との隙間距離に対して比率1以下となっている。この比率によって、伝熱板1,2を真空成形で成形した場合に、素材が薄くなりすぎて孔があくことを防ぐことができる。コーンカバー15の凹部は、各帯状平面部25,27,36,38の長さ方向に延びた長穴形状となっている。
【0041】
図4および図5に示すように、コーン16は、伝熱板1,2の帯状平面部26,28,35,37に形成されている。コーン16は、各帯状平面部26,28,35,37に対して複数形成されている。コーン16は、各帯状平面部26,28,35,37の長さを等間隔に分ける位置に形成されている。コーン16は、各帯状平面部26,28,35,37の幅方向中心よりも熱交換部5に近い位置に形成されている。コーン16の高さは、熱交換部5とコーン16との隙間距離に対して比率1以下となっている。この比率によって、伝熱板1,2を真空成形で成形した場合に、素材が薄くなりすぎて孔があくことを防ぐことができる。
【0042】
図9および図10に示すようにコーン16は、上方に向けて凸となる第1の凸部である。コーン16は、先端が曲面となる円錐状で形成されている。
【0043】
伝熱板1,2を積層したときに、帯状平面部21は下方の帯状平面部31と当接する。帯状平面部22は上方の帯状平面部32と当接する。帯状平面部23は下方の帯状平面部33と当接する。帯状平面部24は上方の帯状平面部34と当接する。帯状平面部25は下方の帯状平面部35と当接する。帯状平面部26は上方の帯状平面部36と当接する。帯状平面部27は下方の帯状平面部37と当接する。帯状平面部28は上方の帯状平面部38と当接する。後に詳説するが、当接した帯状平面部21,22,23,24,25,26,27,28,31,32,33,34,35,36,37,38同士は、超音波溶着によって接合される接合縁部となる。
【0044】
コーンカバー15とコーン16とは、伝熱板1,2を積層したときに平面視において互いに重なる位置に形成されている。図9および図10に示すように伝熱板1,2を積層したときに、コーン16がコーンカバー15の凹部に嵌まる。なお、コーンカバー15の凹部が下方に凹んでおり、コーン16が下方に凸となっていてもよい。
【0045】
次に、熱交換素子の製造工程について説明する。図11は、実施の形態1にかかる熱交換素子の製造装置の概略構成を示す図である。製造装置は、伝熱板1,2を置くための受け台17を備えている。受け台17には伝熱板1,2を吸着などの方法で保持する機能の他、突起13と同じ位置となる箇所に位置決めのための穴(図示を省略)が設けられている。さらに製造装置の上方には突起13と同じ位置となる箇所にガイドピン18とガイドピン19を備えている。図12は、図11に示したガイドピンが突起に嵌まった状態を示す斜視断面図である。ガイドピン18は上下に移動可能となっており、下方に移動することで図12に示すようにその先端が突起13の裏面の凹みに差し込まれる。これは、ガイドピン19も同様である。
【0046】
熱交換素子50の製造工程では、第1の伝熱板1と第2の伝熱板2の積層と固定が繰り返される。図13から図16は、実施の形態1にかかる熱交換素子の製造工程を示す図である。
【0047】
熱交換素子50の製造工程では、図13に示すように、まず、積層の1枚目となる第1の伝熱板1を受け台17に置く、このとき、突起13を受け台17の穴に合せることで、突起13が受け台17の穴に嵌って位置決めがなされる。
【0048】
次に、図14に示すように、ガイドピン18の先端を、次に積層する第2の伝熱板2の突起13の裏面の凹部に嵌めてから、図15に示すように、第2の伝熱板2を積層する。こうすることで、上層、下層のどちらの伝熱板1,2も製造装置によって位置決めされた状態で、当接している帯状平面部22,24,26,28,32,34,36,38同士を超音波溶着で固定する。次に、図16に示すように、次に積層する第1の伝熱板1に対してガイドピン19を用いて位置決めしながら積層する。このように、第1の伝熱板1と第2の伝熱板2との積層と固定を交互に繰り返して任意の高さまで積層する。製造工程の説明で分かるように、ガイドピン18は第2の伝熱板2の位置決めに用いられ、ガイドピン19は第1の伝熱板1の位置決めに用いられる。
【0049】
また、ガイドピン18,19の先端が突起13の裏面の凹部に嵌まって、上層の伝熱板1,2を下方の伝熱板1,2に押し当てていることで、突起13が嵌まった台座14の平面部と、ヘッダ部6a,6b,6c,6dのうち台座14の平面部に当接する領域との間に摩擦抵抗が発生する。これにより、超音波溶着の確実性が向上し、歩留まりが向上する。
【0050】
以上に示した熱交換素子50によれば、伝熱板1,2に形成された突起13、台座14、コーンカバー15、コーン16によって、積層された状態での位置ずれが発生しにくくなる。したがって、伝熱板1,2に振動を与える超音波溶着によっても伝熱板1,2に位置ずれが発生しにくくなる。また、伝熱板1,2を重ねるだけで、突起13が台座14の凹み14aに嵌まり、コーン16がコーンカバー15に嵌まるので、位置決めを正確かつ容易に行うことができる。また、突起13が台座14の凹み14aにきつく嵌まり、コーン16がコーンカバー15にきつく嵌まるようにすれば、より一層位置ずれを生じにくくすることができる。また、伝熱板1,2は、成型後にその中心に向かって収縮する。凹み14aが平面視において伝熱板1,2の中心に向かう方向を長手方向とする長穴形状となっていることで、伝熱板1,2の中心に向かった収縮によって台座14の位置が変位した場合であっても、突起13が凹み14aに嵌まりやすくなっている。また、突起13が凹み14aとの当接により、伝熱板1,2の中心に向かう方向と異なる方向への伝熱板1,2同士のずれが防がれるので、位置決め精度の向上も図られる。
【0051】
また、突起13と台座14は、ヘッダ部6a,6b,6c,6dの領域内にあっても帯状平面部22,24,31,33に近い位置にあり、コーンカバー15とコーン16も帯状平面部25,26,27,28,35,36,37,38にあるので、超音波溶着によって伝熱板1,2をずらそうとする力が働いても伝熱板1,2に生じる曲げ応力は短い距離の範囲に留まるので伝熱板がたわむ状態になり難くすることができる。
【0052】
また、突起13、台座14、コーンカバー15、およびコーン16は各帯状平面部21,22,23,24,25,26,27,28,31,32,33,34,35,36,37,38に対して複数形成されていることによって、より一層位置ずれが生じにくくなる。
【0053】
また、突起13が先細り形状であること、コーンカバー15が円錐状であること、コーン16が円錐状であることから、伝熱板1,2同士または伝熱板と製造装置との位置決めの際に芯出しがしやすくなり、伝熱板1,2同士の位置決めを容易に行なうことができる。
【0054】
また、正確に位置決めされた状態で超音波溶着を行うことで、溶着される範囲が他の範囲に及んでしまったり、溶着不良となる箇所が発生したりしにくくなる。これにより、余分な溶着による目詰まり、および熱交換素子50からの空気の漏れを防ぐことができる。
【0055】
また、台座14がひし形の2本の対角線のうち長いほうの対角線を空気の流れ方向に沿わせて設けられていること、台座14の頂部が隣接する伝熱板1,2に当接していることから、台座14が空気の流れの妨げになりにくい。また、台座14と帯状平面部22,24,31,33との間に空隙を設けることで、空隙を設けない場合に比べて台座14および辺1d,1f,2c,2eの周辺の風の流れの乱れを少なくでき圧力損失の発生を抑制できる。また、台座14を空気の流れ方向に直線状に配置することで同様に流れの乱れを少なくでき、圧力損失の発生を抑制できる。また、台座14と辺1d,1f,2c,2eとを空隙を挟んで極力近傍に配置することで、溶着点と台座14との距離が極力短くなり、溶着時に位置決めをより効果的にできる。
【0056】
また、台座14をヘッダ部6a,6b,6c,6dに設けているので、帯状平面部21,22,23,24,31,32,33,34に台座14を設ける場合に比べて帯状平面部21,22,23,24,31,32,33,34の幅を狭くすることができる。同じサイズの伝熱板1,2であれば帯状平面部21,22,23,24,31,32,33,34の幅が狭いほうがヘッダ部6a,6b,6c,6dを広くすることができる。台座14が流路に設けられることになるものの、ヘッダ部6a,6b,6c,6dが広くなることで、帯状平面部21,22,23,24,31,32,33,34に台座14を設けた場合よりも熱交換素子50の圧力損失を低くすることができる。
【0057】
以上の実施の形態に示した構成は、本開示の内容の一例を示すものである。実施の形態の構成は、別の公知の技術と組み合わせることが可能である。本開示の要旨を逸脱しない範囲で、実施の形態の構成の一部を省略または変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 第1の伝熱板、1a,1b,1c,1d,1e,1f 辺、2 第2の伝熱板、2a,2b,2c,2d,2e,2f 辺、3,4 風路、5 熱交換部、6a 第1のヘッダ部、6b 第2のヘッダ部、6c 第3のヘッダ部、6d 第4のヘッダ部、8 リブ、13 突起、14 台座、14a 凹み、15 コーンカバー、16 コーン、17 受け台、18,19 ガイドピン、21,22,23,24,25,26,27,28,31,32,33,34,35,36,37,38 帯状平面部、41,42,43,44,51,52,53,54 段差、50 熱交換素子、61 第1の流入面、62 第2の流入面、71 第1の流出面、72 第2の流出面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16