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特許7599573冷凍サイクル装置、及び冷凍サイクル装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置、及び冷凍サイクル装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 7/00 20060101AFI20241206BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
F25B7/00 E
F25B7/00 A
F25B1/00 396B
F25B1/00 396D
F25B1/00 396E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023539474
(86)(22)【出願日】2021-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2021029052
(87)【国際公開番号】W WO2023012960
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 智隆
(72)【発明者】
【氏名】西山 拓未
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-019944(JP,A)
【文献】国際公開第2015/140873(WO,A1)
【文献】特開2000-234811(JP,A)
【文献】特開2012-112615(JP,A)
【文献】特開2012-087978(JP,A)
【文献】国際公開第2014/030236(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/198203(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/045400(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/045354(WO,A1)
【文献】特開2008-215672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧縮機、凝縮器、第1減圧装置、及びカスケード熱交換器を備え、高元側冷媒が循環する高元回路と、
第2圧縮機、前記カスケード熱交換器、レシーバ、第2減圧装置、及び蒸発器を備え、低元側冷媒が循環する低元回路と、
制御装置と、を備え、
前記カスケード熱交換器は、前記高元側冷媒と前記低元側冷媒とを熱交換するものであり、
前記低元側冷媒は、COと可燃性冷媒とからなる非共沸混合冷媒であり、
前記制御装置は、前記低元回路を循環する前記低元側冷媒の高圧圧力が閾値以下となるよう前記高元回路を制御するものであり、
前記閾値は、前記低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力であり、
前記低元回路を循環する前記低元側冷媒の前記高圧圧力は、前記低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力以下に維持される冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記低元側冷媒の前記高圧圧力が前記閾値より大きい場合、前記高元回路の能力を増加させる請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記低元側冷媒の前記高圧圧力が前記閾値より大きい場合、前記第1圧縮機の運転周波数を増加させる請求項1又は2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第2圧縮機の停止後も前記第1圧縮機の駆動を継続し、前記低元側冷媒の前記高圧圧力が前記閾値以下となるよう前記高元回路を制御する請求項1~3の何れか一項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記低元回路の冷却負荷が増加した場合、前記高元回路の能力を増加させる請求項に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
第1圧縮機、凝縮器、第1減圧装置、及びカスケード熱交換器を備え、高元側冷媒が循環する高元回路と、
第2圧縮機、前記カスケード熱交換器、レシーバ、第2減圧装置、及び蒸発器を備え、低元側冷媒が循環する低元回路と、
を備える冷凍サイクル装置の制御方法であって、
前記カスケード熱交換器は、前記高元側冷媒と前記低元側冷媒とを熱交換するものであり、
前記低元側冷媒は、COと可燃性冷媒とからなる非共沸混合冷媒であり、
制御装置により前記低元回路を循環する前記低元側冷媒の高圧圧力が閾値以下となるよう前記高元回路を制御するステップを備え、
前記閾値は、前記低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力であり、
前記低元回路を循環する前記低元側冷媒の前記高圧圧力を前記低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力以下に維持する冷凍サイクル装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二元冷凍サイクルを備えた冷凍サイクル装置、及び冷凍サイクル装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二元冷凍サイクルを備えた冷凍サイクル装置として、低元側冷媒が循環する低元回路と、高元側冷媒が循環する高元回路と、低元側冷媒と高元側冷媒とを熱交換させるカスケードコンデンサとを備えた冷凍装置が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2014/030236号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の冷凍サイクル装置では、低元回路に余剰冷媒を貯留するためのレシーバが設けられ、低元回路の冷媒として非共沸混合冷媒が用いられている。この場合、非共沸混合冷媒に含まれる冷媒のうち、沸点が低い冷媒のガスがレシーバに滞留することで、低元回路を循環する冷媒の組成が変動することがある。非共沸混合冷媒に含まれる冷媒のうち、沸点が高い冷媒が可燃性を有する場合、冷媒の組成変動により低元回路を循環する冷媒の燃焼性が増加し、冷媒漏洩時の可燃性のリスクが増加する。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためのものであり、冷媒の組成変動を抑制することができる冷凍サイクル装置、及び冷凍サイクル装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る冷凍サイクル装置は、第1圧縮機、凝縮器、第1減圧装置、及びカスケード熱交換器を備え、高元側冷媒が循環する高元回路と、第2圧縮機、カスケード熱交換器、レシーバ、第2減圧装置、及び蒸発器を備え、低元側冷媒が循環する低元回路と、制御装置と、を備え、カスケード熱交換器は、高元側冷媒と低元側冷媒とを熱交換するものであり、低元側冷媒は、COと可燃性冷媒とからなる非共沸混合冷媒であり、制御装置は、低元回路を循環する低元側冷媒の高圧圧力が閾値以下となるよう高元回路を制御するものであり、閾値は、低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力であり、低元回路を循環する低元側冷媒の高圧圧力は、低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力以下に維持される。
【0007】
本開示に係る冷凍サイクル装置の制御方法は、第1圧縮機、凝縮器、第1減圧装置、及びカスケード熱交換器を備え、高元側冷媒が循環する高元回路と、第2圧縮機、カスケード熱交換器、レシーバ、第2減圧装置、及び蒸発器を備え、低元側冷媒が循環する低元回路と、を備える冷凍サイクル装置の制御方法であって、カスケード熱交換器は、高元側冷媒と低元側冷媒とを熱交換するものであり、低元側冷媒は、COと可燃性冷媒とからなる非共沸混合冷媒であり、制御装置により低元回路を循環する低元側冷媒の高圧圧力が閾値以下となるよう高元回路を制御するステップを備え、閾値は、低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力であり、低元回路を循環する低元側冷媒の高圧圧力を低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力以下に維持する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低元回路を循環する低元側冷媒の高圧圧力が、低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力以下に維持されることで、冷媒の組成変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
図2】低元側冷媒の燃焼性と高圧圧力Pとの関係を示すグラフである。
図3】実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の動作を示すフローチャートである。
図4】実施の形態2に係る冷凍サイクル装置の動作を示すフローチャートである。
図5】変形例に係る冷凍サイクル装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものである。また、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。さらに、以下の説明における温度及び圧力等の高低については、特に絶対的な値との関係で高低等が定まっているものではなく、システム又は装置等における状態又は動作等において相対的に定まるものとする。
【0011】
実施の形態1.
実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100について説明する。冷凍サイクル装置100は、それぞれ独立して冷媒を循環させる二元冷凍サイクルを備え、冷凍、冷蔵、給湯、又は空調等の用途に利用されるものである。本実施の形態では、冷凍サイクル装置100が、冷凍室等の冷却を行う冷凍装置として用いられる場合を例に説明する。
【0012】
図1は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100の概略構成図である。図1に示すように、本実施の形態の冷凍サイクル装置100は、高元回路1と、低元回路2と、制御装置3とを備えている。高元回路1は、高元側冷媒が循環する高温回路であり、低元回路2は、高元側冷媒よりも沸点の低い低元側冷媒が循環する低温回路である。高元回路1及び低元回路2は、カスケード熱交換器14を共通して備え、カスケード熱交換器14によって高元回路1を循環する高元側冷媒と低元回路2を循環する低元側冷媒との熱交換が行われる。
【0013】
高元回路1は、第1圧縮機11と、凝縮器12と、第1減圧装置13と、カスケード熱交換器14とを備えている。第1圧縮機11、凝縮器12、第1減圧装置13、及びカスケード熱交換器14は、この順序で配管により接続されている。高元回路1を循環する高元側冷媒は、例えばR134a、R32又はR410AなどのHFC系、もしくはHFO-1234yfなどのHFO系の単独冷媒又は混合冷媒である。
【0014】
第1圧縮機11は、例えば容量制御可能なインバータタイプの圧縮機である。第1圧縮機11は、高元側冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧の状態にして吐出することで、高元側冷媒を高元回路1内に循環させる。
【0015】
凝縮器12は、例えばフィンチューブ式の熱交換器である。凝縮器12は、空気と高元側冷媒との間で熱交換を行い、高元側冷媒を凝縮して液化させる。冷凍サイクル装置100は、凝縮器12に空気を供給するための第1ファン15を備えている。第1ファン15は、例えば風量を調整可能なプロペラファン又はクロスフローファンなどである。なお、凝縮器12は、例えば水又はブラインと高元側冷媒との間で熱交換を行うプレート式熱交換器などであってもよい。この場合は、第1ファン15は省略してもよい。
【0016】
第1減圧装置13は、例えば開度を制御可能な電子式膨張弁である。第1減圧装置13は、凝縮器12に接続され、凝縮器12から流出した高元側冷媒を減圧して膨張させる。なお、第1減圧装置13は、毛細管又は感温式膨張弁であってもよい。
【0017】
カスケード熱交換器14は、例えばプレート式熱交換器である。カスケード熱交換器14は、高元回路1に接続される高元側流路141と、低元回路2に接続される低元側流路142とを備え、高元側流路141を流れる高元側冷媒と低元側流路142を流れる低元側冷媒との間で熱交換を行う。カスケード熱交換器14の高元側流路141は、蒸発器として機能し、高元側冷媒を蒸発してガス化させる。また、カスケード熱交換器14の低元側流路142は、凝縮器として機能し、低元側冷媒を凝縮して液化させる。
【0018】
低元回路2は、第2圧縮機21と、カスケード熱交換器14と、レシーバ22と、第2減圧装置23と、蒸発器24とを備えている。第2圧縮機21、カスケード熱交換器14、レシーバ22、第2減圧装置23、及び蒸発器24は、この順序で配管により接続されている。低元回路2を循環する低元側冷媒は、高元側冷媒よりも沸点の低い非共沸混合冷媒である。非共沸混合冷媒を用いることで、単一冷媒では得られない低い蒸発温度を得ることができる。本実施の形態では、低元側冷媒として、COとR290(プロパン)を含む非共沸混合冷媒が用いられる。COは低沸点冷媒であり、R290はCOよりも沸点の高い高沸点冷媒である。CO及びR290などの自然冷媒を用いることで、環境負荷を低くすることができる。また、低元側冷媒にCOを混合することで冷却能力が向上し、R290を混合することでCOPが向上するとともにCOの三重点が低下し、低温利用が可能となる。
【0019】
第2圧縮機21は、例えば容量制御可能なインバータタイプの圧縮機である。第2圧縮機21は、低元側冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧の状態にして吐出することで、低元側冷媒を低元回路2内に循環させる。
【0020】
レシーバ22は、カスケード熱交換器14と第2減圧装置23との間に配置され、カスケード熱交換器14の低元側流路142から流出した低元側冷媒を一時的に貯留する。レシーバ22によって、冷却負荷の変動により生じる余剰冷媒が貯留される。
【0021】
第2減圧装置23は、例えば開度を制御可能な電子式膨張弁である。第2減圧装置23は、レシーバ22の冷媒出口に接続され、レシーバ22から流出した低元側冷媒を減圧して膨張させる。なお、第2減圧装置23は、毛細管又は感温式膨張弁であってもよい。
【0022】
蒸発器24は、例えばフィンチューブ式の熱交換器である。蒸発器24は、空気と低元側冷媒との間で熱交換を行い、低元側冷媒を蒸発してガス化させる。冷凍サイクル装置100は、蒸発器24に空気を供給するための第2ファン25を備えている。第2ファン25は、例えば風量を調整可能なプロペラファン又はクロスフローファンなどである。なお、蒸発器24は、例えば水又はブラインと低元側冷媒との間で熱交換を行うプレート式熱交換器などであってもよい。この場合は、第2ファン25は省略してもよい。
【0023】
また、冷凍サイクル装置100は、低元回路2を循環する低元側冷媒の高圧圧力Pを検出する圧力センサ26を備えている。圧力センサ26は、カスケード熱交換器14の低元側流路142とレシーバ22とを接続する配管に設けられる。なお、圧力センサ26は、低元回路2の高圧側、すなわち第2圧縮機21の吐出口から第2減圧装置23の冷媒入口までの間の任意の箇所に設けることができる。圧力センサ26によって検出された低元側冷媒の高圧圧力Pは、制御装置3に送信される。
【0024】
なお、圧力センサ26に替えて、低元側冷媒の高圧圧力Pに換算できる他の物理量(例えば凝縮温度)を検出するセンサを備え、制御装置3にて高圧圧力Pに換算してもよい。また、冷凍サイクル装置100は、外気温度を検出する外気温度センサ、冷凍室内の温度を検出する室内温度センサ、高元回路1及び低元回路2における任意の場所の冷媒の温度又は圧力を検出するセンサ等の図示しない各種センサをさらに備えていてもよい。
【0025】
制御装置3は、冷凍サイクル装置100の全体の動作を制御する。制御装置3は、制御に必要なデータ及びプログラムを記憶するメモリと、プログラムを実行するCPUとを備える処理装置、又はASIC又はFPGAなどの専用のハードウェアもしくはその両方で構成される。本実施の形態の制御装置3は、圧力センサ26により検出された低元側冷媒の高圧圧力Pに基づき、高元回路1を制御する。また、制御装置3は、各種センサから受信した情報及び利用者から指示される運転内容に基づき、高元回路1及び低元回路2の各機器、並びに第1ファン15及び第2ファン25を制御する。
【0026】
本実施の形態の冷凍サイクル装置100の動作を、各冷媒回路を循環する冷媒の流れに基づいて説明する。まず、高元回路1の動作について説明する。冷凍サイクル装置100の運転開始が指示されると、第1圧縮機11及び第2圧縮機21が駆動される。そして、高元回路1の第1圧縮機11は、高元側冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧の状態にして吐出する。第1圧縮機11が吐出した高元側冷媒は凝縮器12へ流入する。凝縮器12は、第1ファン15から供給される空気と高元側冷媒との間で熱交換を行い、高元側冷媒を凝縮液化する。
【0027】
凝縮器12で凝縮液化された高元側冷媒は、第1減圧装置13を通過する。第1減圧装置13は凝縮液化された高元側冷媒を減圧する。第1減圧装置13が減圧した高元側冷媒は、カスケード熱交換器14の高元側流路141に流入する。高元側流路141に流入した高元側冷媒は、カスケード熱交換器14の低元側流路142を流れる低元側冷媒との間で熱交換され、蒸発ガス化される。カスケード熱交換器14で蒸発ガス化された高元側冷媒は、第1圧縮機11に再び吸入される。
【0028】
次に、低元回路2の動作について説明する。低元回路2の第2圧縮機21は、低元側冷媒を吸入し、圧縮して高温高圧の状態にして吐出する。第2圧縮機21が吐出した低元側冷媒はカスケード熱交換器14の低元側流路142へ流入する。低元側流路142に流入した低元側冷媒は、カスケード熱交換器14の高元側流路141を流れる高元側冷媒との間で熱交換され、凝縮液化される。
【0029】
カスケード熱交換器14で凝縮液化された低元側冷媒は、レシーバ22に流入する。レシーバ22から流出した低元側冷媒は、第2減圧装置23を通過する。第2減圧装置23は、低元側冷媒を減圧する。第2減圧装置23が減圧した低元側冷媒は、蒸発器24に流入する。蒸発器24は、第2ファン25から供給される空気と低元側冷媒との間で熱交換を行い、低元側冷媒を蒸発ガス化する。このとき、低元側冷媒が空気から吸熱することによって、冷凍室が冷却される。蒸発器24で蒸発ガス化した低元側冷媒は、第2圧縮機21に再び吸入される。
【0030】
低元回路2のレシーバ22には、冷凍サイクル装置100の運転条件又は負荷条件に応じて発生した余剰な液冷媒が貯留される。このとき、レシーバ22内の低元側冷媒のうち、沸点の低い冷媒がガスとなってレシーバ22内に滞留し、レシーバ22から流出して低元回路2内を循環する低元側冷媒の循環組成が変動する。例えば、本実施の形態のように、低元側冷媒として、COとR290の非共沸混合冷媒が用いられる場合、R290よりも沸点が低いCOがレシーバ22にガスとして滞留する。その結果、低元側冷媒の循環組成においては、可燃性冷媒であるR290の割合が増加する。これにより、低元回路2内を循環する低元側冷媒の可燃性が増加し、冷媒漏洩時の可燃性のリスクが増加してしまう。
【0031】
そこで、本実施の形態の制御装置3は、高元回路1の能力を制御して、低元側冷媒の高圧圧力Pを、低元側冷媒が不燃性を維持する圧力値以下とする。図2は、低元側冷媒の燃焼性と高圧圧力Pとの関係を示すグラフである。図2のグラフは、本実施の形態のように低元側冷媒が非共沸混合冷媒であり、沸点が高い方の冷媒が可燃性を有する場合のグラフである。図2に示すように、低元側冷媒の高圧圧力Pが高いほど、燃焼性が高くなる。そのため、低元側冷媒を不燃に維持するためには、低元側冷媒の高圧圧力Pを閾値P以下とする必要がある。閾値Pは、低元側冷媒を構成する冷媒の物性によって一意的に決められるものである。本実施の形態では、低元側冷媒に応じて閾値Pが予め設定され、制御装置3に記憶される。制御装置3は、圧力センサ26で検出された低元側冷媒の高圧圧力Pが閾値P以下となるように、高元回路1の能力を制御する。
【0032】
図3は、実施の形態1に係る冷凍サイクル装置100の動作を示すフローチャートである。利用者からの指示等により冷凍サイクル装置100の運転が指示されると、制御装置3は、第1圧縮機11と第2圧縮機21とを駆動する(S1)。これにより、高元回路1に高元側冷媒が循環し、低元回路2に低元側冷媒が循環し、冷凍室が冷却される。
【0033】
そして、圧力センサ26により低元側冷媒の高圧圧力Pが検出される(S2)。制御装置3は、圧力センサ26により検出された低元側冷媒の高圧圧力Pが、閾値P以下であるか否かを判断する(S3)。低元側冷媒の高圧圧力Pが、閾値P以下である場合は(S3:YES)、高元回路1の能力を維持したまま、ステップS5へ移行する。一方、低元側冷媒の高圧圧力Pが、閾値Pより大きい場合(S3:NO)、制御装置3は、高元回路1の能力を増加させる(S4)。具体的には、制御装置3は、高元回路1の第1圧縮機11の運転周波数を増加させる。ここでは、制御装置3は、第1圧縮機11の運転周波数を予め定められた一定の値だけ増加させてもよいし、低元側冷媒の高圧圧力Pと閾値Pとの差に応じた値だけ増加させてもよい。
【0034】
高元回路1の能力を増加させることにより、カスケード熱交換器14の高元側流路141を流れる高元側冷媒の温度が低下する。これにより、カスケード熱交換器14で高元側冷媒と熱交換される低元側冷媒の温度が低下し、低元側冷媒の高圧圧力Pが低下する。低元側冷媒の高圧圧力Pが低下することで、レシーバ22内のガス密度が低下し、レシーバ22におけるガス冷媒の質量が減少する。すなわち、低元側冷媒の高圧圧力Pが低下することで、レシーバ22に滞留する低沸点冷媒のガス量が減少し、レシーバ22から流出し、低元回路2を循環する低元側冷媒の組成変動を最小限に抑制することができる。
【0035】
制御装置3は、利用者からの指示等により冷凍サイクル装置100の運転を停止するか否かを判断する(S5)。運転を停止しない場合は(S5:NO)、ステップS2に戻って以降の処理を繰り返す。一方、運転を停止する場合は(S5:YES)、第1圧縮機11及び第2圧縮機21を停止する(S6)。これにより、冷凍サイクル装置100の運転中は、低元側冷媒の高圧圧力Pが閾値P以下に維持される。
【0036】
以上のように、本実施の形態の冷凍サイクル装置100では、低元側冷媒の高圧圧力Pが、低元側冷媒が不燃性を維持できる閾値P以下となるよう高元回路1が制御される。これにより、レシーバ22から流出し、低元回路2を循環する低元側冷媒の組成変動を抑制することができる。その結果、低元側冷媒として可燃性冷媒を含む非共沸混合冷媒を用いた場合も、冷媒漏洩時の可燃性のリスクの増加を抑制できる。また、本実施の形態のように、低元側冷媒として、COを含む混合冷媒を使用した場合、COの凝固点を低下させることができるため、凝固点(-56℃)以下での冷却も可能となる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態2に係る冷凍サイクル装置100について説明する。図4は、実施の形態2に係る冷凍サイクル装置100の動作を示すフローチャートである。本実施の形態では、停止指示後の冷凍サイクル装置100の動作において、実施の形態1と相違する。冷凍サイクル装置100の構成は、実施の形態1と同じである。
【0038】
図4に示すように、冷凍サイクル装置100の運転中の動作(ステップS1~S4)は、実施の形態1と同じである。制御装置3は、利用者からの指示等により冷凍サイクル装置100の運転を停止するか否かを判断する(S5)。運転を停止しない場合は(S5:NO)、ステップS2に戻って以降の処理を繰り返す。
【0039】
一方、運転を停止する場合(S5:YES)、制御装置3は、低元回路2において、ポンプダウン運転を行う(S11)。ここでは、制御装置3は、第2減圧装置23を全閉とし、第2圧縮機21の運転を継続する。レシーバ22の下流側に位置する第2減圧装置23が閉じられているため、低元回路2内の低元側冷媒は、カスケード熱交換器14の低元側流路142とレシーバ22とに回収される。その後、制御装置3は、第2圧縮機21を停止する(S12)。これにより、低元回路2における低元側冷媒の循環が停止する。
【0040】
なお、レシーバ22の冷媒出口と第2減圧装置23との間に電磁弁を設け、該電磁弁を閉じてポンプダウン運転を行ってもよい。また、低元回路2の低圧側、すなわち第2減圧装置23の冷媒出口から第2圧縮機21の吸入口までの間に低元側冷媒の低圧圧力を検出する圧力センサを設け、低元側冷媒の低圧圧力が大気圧以下となった場合に第2圧縮機21を停止してもよい。これにより、低元回路2の低圧側に冷媒がなくなった後も第2圧縮機21の駆動が継続されることによる故障などを防ぐことができる。
【0041】
そして、圧力センサ26により低元側冷媒の高圧圧力Pが検出される(S13)。制御装置3は、圧力センサ26により検出された低元側冷媒の高圧圧力Pが、閾値P以下であるか否かを判断する(S14)。低元側冷媒の高圧圧力Pが、閾値P以下である場合は(S14:YES)、高元回路1の能力を維持したまま、ステップS16へ移行する。一方、低元側冷媒の高圧圧力Pが、閾値Pより大きい場合(S14:NO)、制御装置3は、高元回路1の能力を増加させる(S15)。具体的には、実施の形態1と同様に、制御装置3は高元回路1の第1圧縮機11の運転周波数を増加させる。
【0042】
ここで、低元回路2における低元側冷媒の循環が停止した場合も、低元回路2のレシーバ22においては、低沸点冷媒がガス化し、レシーバ22内の液冷媒の組成が変動することがある。例えば、本実施の形態の場合は、低沸点冷媒であるCOがレシーバ22内においてガス化し、レシーバ22内における液冷媒の組成においては、可燃性冷媒であるR290の割合が増加する。また、ポンプダウン運転によりレシーバ22には大量の液冷媒が存在するため、レシーバ22から冷媒漏洩が生じた場合のリスクが増加してしまう。
【0043】
これに対し、本実施の形態では、低元回路2の停止後も、低元側冷媒の高圧圧力Pが、低元側冷媒が不燃性を維持できる閾値P以下となるよう高元回路1が制御される。これにより、カスケード熱交換器14の低元側流路142に滞留する低元側冷媒の温度が低下し、低元側冷媒の高圧圧力Pが低下する。そして、カスケード熱交換器14にて温度が低下した低元側冷媒が、温度及び圧力の均衡を維持するように自然に対流してレシーバ22に流入することで、レシーバ22のガス密度が低下し、レシーバ22におけるガス冷媒の質量が減少する。これにより、レシーバ22における低沸点冷媒(CO)のガス冷媒量が減少し、レシーバ22内の液冷媒の組成変動を最小限に抑制することができる。
【0044】
制御装置3は、利用者からの指示等により冷凍サイクル装置100の運転を開始するか否かを判断する(S16)。運転を開始しない場合は(S16:NO)、ステップS13に戻って以降の処理を繰り返す。運転を開始する場合は(S16:YES)、ステップS1に移行し、第2圧縮機21を駆動して低元回路2に低元側冷媒を循環させる。
【0045】
以上のように、本実施の形態の冷凍サイクル装置100では、実施の形態1と同じ効果に加え、冷凍サイクル装置100の停止時においても、レシーバ22に滞留する液冷媒の組成変動を抑制することができる。その結果、低元側冷媒として可燃性冷媒を含む非共沸混合冷媒を用いていた場合も、レシーバ22からの冷媒漏洩時の可燃性のリスクの増加を抑えることができる。
【0046】
以上が実施の形態の説明であるが、本開示は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々に変形又は組み合わせることが可能である。例えば、低元側冷媒は、COとR290の非共沸混合冷媒に限定されるものではなく、その他の非共沸混合冷媒であってもよい。ただし、低元側冷媒がCOと可燃性冷媒とを含む非共沸混合冷媒の場合に、特に上記実施の形態の効果を得ることができる。
【0047】
また、上記実施の形態では、制御装置3が冷凍サイクル装置100の全体の制御を行う構成としたが、高元回路1及び低元回路2にそれぞれ制御装置3を設け、高元回路1及び低元回路2の動作を個別に制御してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態では、第1圧縮機11の運転周波数を制御することで、高元回路1の能力を制御する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1圧縮機11の運転周波数に替えて又は加えて、高元回路1の第1減圧装置13の開度又は第1ファン15の回転数を制御することで、高元回路1の能力を制御してもよい。この場合、制御装置3は、低元側冷媒の高圧圧力Pが閾値Pより大きい場合は、第1減圧装置13の開度及び第1ファン15の回転数を増加させて、高元回路1の能力を増加させる。
【0049】
また、上記実施の形態では、圧力センサ26によって検出された低元側冷媒の高圧圧力Pに応じて高元回路1を制御する構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、制御装置3は、低元側冷媒の高圧圧力Pに対応する低元側冷媒の凝縮温度に応じて高元回路1を制御してもよい。もしくは、制御装置3は、低元回路2の冷却負荷に応じて高元回路1を制御することで、低元側冷媒の高圧圧力Pを、低元側冷媒が不燃性を維持する圧力値以下としてもよい。低元回路2の冷却負荷は、例えば冷却対象である冷凍室等の室内温度等に基づき求められる。この場合、制御装置3は、低元回路2の冷却負荷が増加する場合には、高元回路1の能力を増加させ、低元回路2の冷却負荷が減少する場合には、高元回路1の能力を低下させる。これにより、低元回路2の冷却負荷の増加により低元側冷媒の高圧圧力Pが上昇した場合も、高元回路1の能力が増加することで、低元側冷媒の高圧圧力Pを低下させることができる。その結果、低元側冷媒の高圧圧力Pを低元側冷媒が不燃性を維持する圧力値以下に維持することができる。なお、本変形例では、圧力センサ26を省略してもよいし、圧力センサ26により検出された低元側冷媒の高圧圧力Pに基づく制御を組み合わせて行ってもよい。
【0050】
また、低元回路2に、圧力又は温度が基準値まで上昇すると開放される圧力逃し装置を設け、圧力逃し装置によって、低元側冷媒の高圧圧力Pを低元側冷媒が不燃性を維持する圧力値以下としてもよい。図5は、変形例に係る冷凍サイクル装置100Aの概略構成図である。図5に示すように、冷凍サイクル装置100Aは圧力逃し装置27を備える。圧力逃し装置27は、低元回路2の高圧側の冷媒配管又はレシーバ22に設けられている。圧力逃し装置27は、圧力逃し弁又は可溶栓であり、低元側冷媒の高圧圧力P又は凝縮温度が閾値P以上となった場合に弁又は栓が開放されることで、ガス冷媒が外部に排出され、低元側冷媒の高圧圧力Pが低下する。閾値Pは、上記実施の形態と同様に、低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力値又は温度である。これにより、低元側冷媒の高圧圧力Pを低元側冷媒が不燃性を維持できる圧力値以下に維持することができる。なお、本変形例においては、圧力センサ26によって検出された低元側冷媒の高圧圧力P又は冷却負荷による高元回路1の制御を省略してもよいし、これらの制御を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 高元回路、2 低元回路、3 制御装置、11 第1圧縮機、12 凝縮器、13 第1減圧装置、14 カスケード熱交換器、15 第1ファン、21 第2圧縮機、22 レシーバ、23 第2減圧装置、24 蒸発器、25 第2ファン、26 圧力センサ、27 圧力逃し装置、100、100A 冷凍サイクル装置、141 高元側流路、142 低元側流路。
図1
図2
図3
図4
図5