(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-05
(45)【発行日】2024-12-13
(54)【発明の名称】アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とを光延反応させる方法
(51)【国際特許分類】
C07C 41/09 20060101AFI20241206BHJP
C07C 209/18 20060101ALI20241206BHJP
C07C 67/08 20060101ALI20241206BHJP
C07C 319/14 20060101ALI20241206BHJP
【FI】
C07C41/09
C07C209/18
C07C67/08
C07C319/14
(21)【出願番号】P 2023548982
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 CN2020127698
(87)【国際公開番号】W WO2022088244
(87)【国際公開日】2022-05-05
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】202011183861.X
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523157346
【氏名又は名称】ジアンスー ヘチェン アドバンスト マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【氏名又は名称】太田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】イェ ショウチェン
(72)【発明者】
【氏名】ソン シャオロン
(72)【発明者】
【氏名】シュー シュアン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ リーリャン
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-001625(JP,A)
【文献】国際公開第2017/090384(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とを光延反応させる方法であって、具体的には、
アルコール性水酸基供与体、活性水素供与体、トリヒドロカルビルホスフィン試薬及びアゾジカルボン酸エステル試薬を有機溶媒の存在下で反応させ、アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体が脱水縮合した生成物を得るステップを含み、
前記有機溶媒は、イソデカン、イソドデカン、ドデカン又はイソペンタデカンのうちのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、
前記アルコール性水酸基供与体が、4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、4-(4-エチル-2-フルオロフェニル)シクロヘキサノール、4-(2’,3’-ジフルオロ-4’-メチル-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)シクロヘキサノール、又は4-(3-フルオロ-4-イソプロピルフェニル)シクロヘキサノールであり、
前記活性水素供与体が、4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、4-(4-プロピルシクロヘキシル)アニリン、4-プロピル安息香酸、又は4-プロピルベンゼンチオールである、方法。
【請求項2】
前記有機溶媒は、イソドデカンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トリヒドロカルビルホスフィン試薬は、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン又はトリメチルホスフィンから選択されるいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせである、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アゾジカルボン酸エステル試薬は、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、ビス(2-メトキシエチル)アゾジカルボン酸エステル、及びビス(4-クロロベンジル)アゾジカルボン酸エステルから選択されるいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせである、請求項1~
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とのモル比は、1:1~1.2であり、
好ましくは、前記アルコール性水酸基供与体とトリヒドロカルビルホスフィン試薬とのモル比は、1:1.05~1.3であり、
好ましくは、前記アルコール性水酸基供与体とアゾジカルボン酸エステル試薬とのモル比は、1:1.05~1.3である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応
において、反応温度は、30~120℃であり、反応時間は、1~12時間である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応の原料を添加する順序は、アゾジカルボン酸エステルをアルコール性水酸基供与体、活性水素供与体、及びトリヒドロカルビルホスフィン試薬を含有する有機溶媒にゆっくりと滴下し、或いはアゾジカルボン酸エステルとトリヒドロカルビルホスフィン試薬を混合してから、混合液にアルコール性水酸基供与体及び活性水素供与体を添加することであり、
好ましくは、前記滴下過程において温度を30~120℃に制御する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応は、不活性ガスの保護下で行われ、
好ましくは、前記反応中に有機塩基を添加し、
好ましくは、前記有機塩基は、トリエチルアミンであり、
好ましくは、前記反応過程において超音波又はマイクロ波を利用する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
具体的には、
アルコール性水酸基供与体、活性水素供与体、トリヒドロカルビルホスフィン試薬及びアゾジカルボン酸エステル試薬を有機溶媒の存在下で30~120℃で1~12時間反応させ、アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体が脱水縮合した生成物を得るステップを含み、
前記有機溶媒は、イソデカン、イソドデカン、ドデカン又はイソペンタデカンのうちのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、
前記アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とのモル比は、1:1~1.2であり、前記アルコール性水酸基供与体とトリヒドロカルビルホスフィン試薬とのモル比は、1:1.05~1.3であり、前記アルコール性水酸基供与体とアゾジカルボン酸エステル試薬とのモル比は、1:1.05~1.3である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、有機合成の分野に属し、アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とを光延反応させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光延反応(Mitsunobu反応)は、日本の有機化学者である光延旺洋が1967年に発明した、重要な利用価値を有する有機反応であり、アルコールと、酸性の求核剤前駆体とがトリヒドロカルビルホスフィン及びアゾジカルボン酸エステルの存在下で発生した分子内又は分子間の脱水反応であり、反応メカニズムは、一般的には(トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエチルを反応試薬とし、アルコールとしてキラルアルコールを使用する反応を例とする)、以下のとおりである。トリフェニルホスフィンとアゾジカルボン酸ジエチルが付加物を形成し、求核剤のプロトンが引き抜かれ、アルコールとトリフェニルホスフィンとが結合して活性化され、求核剤がS
N2反応を起こして生成物を得て、反応式が以下のとおりである。
【化1】
【0003】
光延反応は、一般的に、温和な中性条件下で行った。キラルアルコールが反応に参加する場合、アルコール性水酸基に接続された炭素原子の立体配置が、一般的に反転し、様々な化学結合、例えば、C-O、C-N、C-S及びC-Cなどの化学結合を形成することができるため、光延反応は、様々な天然物の全合成又は化合物の官能基変換に広く適用される。
【0004】
光延反応が脱水縮合の過程であるため、反応系における水分を制御して、トリヒドロカルビルホスフィン及びアゾジカルボン酸エステルの損失を回避しなければならない。このような反応では、媒体としては、一般的に、無水非プロトン性溶媒、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、エチル-t-ブチルエーテル、酢酸エチル、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジクロロメタンなどを用いる。このような非プロトン性溶媒が、引火点が低く、臭気が大きく、回収しにくく、現在の環境に優しい化学の傾向に合わず、また、このような溶媒が一般的に、生成物の分布、収率及び後処理に大きな影響を与えるため、光延反応条件の最適化及び選択は、現在の環境に優しい化学の分野における研究ホットスポットである。
【0005】
上記反応メカニズムから分かるように、光延反応の反応過程において、アゾジカルボン酸エステルが最終的にジカルボン酸ヒドラジン
【化2】
に変換し、ジカルボン酸ヒドラジンが更にアルコール性水酸基供与体の水酸基が脱離した基と反応し続け、以下の副生成物を得る。
【化3】
Rは、アルコール性水酸基供与体の水酸基が脱離した基を表す。
【0006】
上記副生成物の極性が高く、従来の後処理方法で除去することは困難であり、最終生成物の精製コストが高く、「廃液・廃ガス・固形廃棄物」の排出量と製造コストを大幅に増加させ、最終生成物の純度及び後続の応用に影響を与える。
【0007】
したがって、本分野において、ジカルボン酸ヒドラジン類副生成物の生成を低減でき、光延反応の収率が高く、環境に優しい方法が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願は、アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とを光延反応させる方法を提供することを目的とする。本願に係る方法は、従来技術における光延反応に存在する副生成物を除去しにくく、後処理における廃液・廃ガス・固形廃棄物が多く、生成物の純度が低いなどの問題を解決することができ、ジカルボン酸ヒドラジン類副生成物の生成を効果的に低減することができ、そして目的生成物をより容易に反応系から分離し、反応収率が高く、後処理しやすく、生成物の純度が高く、後続の応用に影響を与えず、環境に優しい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本願は、以下の技術手段を用いる。
一態様では、本願に係るアルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とを光延反応させる方法であって、具体的には、
アルコール性水酸基供与体、活性水素供与体、トリヒドロカルビルホスフィン試薬及びアゾジカルボン酸エステル試薬を有機溶媒の存在下で反応させ、アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体が脱水縮合した生成物を得るステップを含み、
前記有機溶媒は、8~16個の炭素原子を含有する直鎖アルカン又は分岐鎖アルカン(例えば、C8、C10、C12、C14、C16のノルマルアルカン又はイソアルカン)である。
【0010】
本願において、上記アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とが脱水縮合した生成物は、エーテル類、チオエーテル類、エステル類、チオエステル類、アミン類、アミド類のうちのいずれか1種の化合物であってもよい。
【0011】
本願において、反応溶媒系を最適化することにより、ジカルボン酸ヒドラジン類副生成物の生成を効果的に低減することができ、そして目的生成物をより容易に反応系から分離し、反応収率が高く、後処理しやすく、生成物の純度が高い。
【0012】
本願のいくつかの実施形態では、前記有機溶媒は、イソデカン、イソドデカン、ドデカン又はイソペンタデカンのうちのいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせである。好ましくは、前記有機溶媒は、イソドデカンである。
【0013】
本願のいくつかの実施形態では、前記アルコール性水酸基供与体は、アルコール性水酸基を含有する有機物であり、前記アルコール性水酸基は、置換若しくは無置換の直鎖アルキル基、置換若しくは無置換の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換の環状アルキル基、置換若しくは無置換の芳香族基などのうちの少なくとも1種の基又は基の組み合わせ構造と結合してもよい。
【0014】
本願のいくつかの実施形態では、前記活性水素供与体は、活性水素基を含有する有機物であり、活性水素基は、-OH、-SH、-COOH、-COSH、-NH2又は-CONH2から選択されるいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、前記活性水素基は、置換若しくは無置換のC1~C12の直鎖アルキル基、置換若しくは無置換のC1~C12の分岐鎖アルキル基、置換若しくは無置換のC3~C12の環状アルキル基、置換若しくは無置換のC6~C12の芳香族基のうちの少なくとも1種の基又は基の組み合わせ構造と結合してもよい。
【0015】
本願のいくつかの実施形態では、上記C1~C12のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基などであってもよく、上記C3~C12の環状アルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などであってもよく、好ましくは、前記C1~C12のアルキル基及びC3~C12の環状アルキル基のうちの1つ又は少なくとも2つの-CH2-は、独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-CH=CH-又は-C≡C-のうちのいずれか1種で置換され、例えば、1つ又は少なくとも2つの-CH2-は、独立して-O-、-S-、-CO-、-CS-、-CH=CH-又は-C≡C-のうちのいずれか1種で置換されてもよく、或いは、-CH2-が置換されなくてもよく、例えば、エチル基における1つの-CH2-が-O-で置換された基は、メトキシ基であり、このように類推し、説明を省略する。前記C6~C12の芳香族環状炭化水素基は、例えば、フェニル基、置換若しくはナフチルであってもよく、好ましくは、前記C6~C12の芳香族環状炭化水素基のうちの1つ又は少なくとも2つの-CH=は、独立して-N=で置換され、例えば、1つ又は少なくとも2つの-CH=は、独立して-N=で置換されてもよく(ピリジル基、ピリミジル基など)、或いは-CH=が置換されなくてもよく、好ましくは、前記芳香族環状炭化水素基のうちの1つ又は少なくとも2つの-Hは、独立してハロゲン、-CN、C1~C5のアルキル基又はC1~C5のアルコキシ基で置換され、例えば、1つ又は少なくとも2つの-Hは、独立してハロゲン、-CN、C1~C5のアルキル基又はC1~C5のアルコキシ基で置換されてもよく、或いは-Hが置換されなくてもよい。
【0016】
本願のいくつかの実施形態では、前記トリヒドロカルビルホスフィン試薬は、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン又はトリメチルホスフィンから選択されるいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせである。
【0017】
本願のいくつかの実施形態では、前記アゾジカルボン酸エステル試薬は、アゾジカルボン酸ジエチル、アゾジカルボン酸ジイソプロピル、ビス(2-メトキシエチル)アゾジカルボン酸エステル、及びビス(4-クロロベンジル)アゾジカルボン酸エステルから選択されるいずれか1種又は少なくとも2種の組み合わせである。
【0018】
本願のいくつかの実施形態では、前記アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とのモル比は、1:1~1.2であり、例えば、1:1、1:1.05、1:1.1、1:1.15又は1:1.2である。
【0019】
本願のいくつかの実施形態では、前記アルコール性水酸基供与体とトリヒドロカルビルホスフィン試薬とのモル比は、1:1.05~1.3であり、例えば、1:1.05、1:1.08、1:1.1、1:1.15、1:1.2、1:1.25又は1:1.3である。
【0020】
本願のいくつかの実施形態では、前記アルコール性水酸基供与体とアゾジカルボン酸エステル試薬とのモル比は、1:1.05~1.3であり、例えば、1:1.05、1:1.08、1:1.1、1:1.15、1:1.2、1:1.25又は1:1.3である。
【0021】
本願のいくつかの実施形態では、前記反応温度は、30~120℃(例えば、30℃、50℃、80℃、100℃、110℃又は120℃)であり、反応時間は、1~12時間(例えば、1時間、3時間、5時間、7時間、9時間、10時間、11時間又は12時間)である。
【0022】
本願のいくつかの実施形態では、本願に係る反応の原料を添加する順序は、アゾジカルボン酸エステルをアルコール性水酸基供与体、活性水素供与体、及びトリヒドロカルビルホスフィン試薬を含有する有機溶媒にゆっくりと滴下し、或いはアゾジカルボン酸エステルとトリヒドロカルビルホスフィン試薬を混合してから、混合液にアルコール性水酸基供与体及び活性水素供与体を添加することである。
【0023】
本願のいくつかの実施形態では、前記滴下過程において温度を30~120℃、例えば、30℃、50℃、80℃、100℃、110℃又は120℃に制御する。
【0024】
本願のいくつかの実施形態では、前記反応は、原料混合過程及び反応過程を含み、不活性ガスの保護下で行われる。
【0025】
本願のいくつかの実施形態では、超音波、マイクロ波又は有機塩基(例えば、トリエチルアミンなど)を添加することにより反応を加速してもよい。
【0026】
本願の好ましい技術案として、前記方法は、具体的には、
アルコール性水酸基供与体、活性水素供与体、トリヒドロカルビルホスフィン試薬及びアゾジカルボン酸エステル試薬を有機溶媒の存在下で30~120℃で1~12時間反応させるステップを含み、
前記有機溶媒は、8~16個の炭素原子を含有する直鎖アルカン又は分岐鎖アルカンであり、
前記アルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とのモル比は、1:1~1.2であり、前記アルコール性水酸基供与体とトリヒドロカルビルホスフィン試薬とのモル比は、1:1.05~1.3であり、前記アルコール性水酸基供与体とアゾジカルボン酸エステル試薬とのモル比は、1:1.05~1.3である。
【発明の効果】
【0027】
従来技術と比較して、本願は、以下の有益な効果を有する。
1.従来の無水非プロトン性溶媒に対して、本願では、高級飽和アルカンを用いることにより、反応副生成物の生成を効果的に低減することができ、生成物の純度がより高く、生成物の後続の応用に影響を与えず、
2.本願の生成物をより容易に反応系から分離し、後処理の経済的コスト及び時間コストを低減し、
3.本願に使用される溶媒は、引火点が高く、臭気がないという特徴を有し、危険性が低く、環境に優しいという要求に更に合う。
【0028】
したがって、本願のアルコール性水酸基供与体と活性水素供与体とを光延反応させるという環境に優しい方法を用い、工業化生産を実現することに役立ち、極めて高い工業上の利用価値を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、具体的な実施形態により本願の技術案を更に説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解するためのものに過ぎず、本願を具体的に限定するものと見なすべきではないことを理解すべきである。
【0030】
以下の実施例及び比較例では、関連試薬は、いずれも市販で入手でき、GC試験機は、アジレント7820Aガスクロマトグラフであり、MS試験機は、アジレント7890B-5977A質量分析計であり、HPLC試験機は、島津LC-20AB高速液体クロマトグラフである。
【0031】
[実施例1]
【化4】
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのイソデカンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、38.4gの白色固体を得て、GCは、85.4%であり、収率は、77%であった。
【0032】
化合物AのMSデータは、55(5%)、69(5%)、95(5%)、146(25%)、174(50%)、220(5%)、394(5%)であった。
【0033】
以下の実施例2~4及び比較例1~2の反応式が実施例1と同じであり、具体的な反応条件のみを変更した。
【0034】
[実施例2]
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのイソドデカンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、43.1gの白色固体を得て、GCは、97.3%であり、収率は、86.8%であった。
【0035】
[実施例3]
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのドデカンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、42.3gの白色固体を得て、GCは、93.7%であり、収率は、85.2%であった。
【0036】
[実施例4]
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのイソペンタデカンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、41.7gの白色固体を得て、GCは、89.7%であり、収率は、84%であった。
【0037】
[比較例1]
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのトルエンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させ、減圧して回転蒸発させ、淡黄色固体を得て、150mLのエタノールで固体を再結晶化させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、36.5gの白色固体を得て、GCは、77.4%であり、収率は、73.5%であった。
【0038】
[比較例2]
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのDMFを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液に200mLの水及び200mLのジクロロメタンを添加し、10min撹拌し、抽出して分液し、200mLのジクロロメタンで水相を2回抽出し、有機相を合わせ、200mLの水で有機相を2回水洗し、有機相を減圧して回転蒸発させ、淡黄色固体を得て、150mLのエタノールで固体を再結晶化させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、39.1gの白色固体を得て、GCは、80.2%であり、収率は、78.7%であった。
【0039】
[比較例3]
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのn-ヘキサンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、38.7gの白色固体を得て、GCは、81.2%であり、収率は、78%であった。
【0040】
[比較例4]
500mLの三口フラスコに30gの(4’-プロピル-[1,1’-ビス(シクロヘキサン)]-4-イル)メタノール、23gの4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノール、35.31gのトリフェニルホスフィン及び180mLのシクロヘキサンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、28gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、35.2gの白色固体を得て、GCは、80.8%であり、収率は、71%であった。
【0041】
副生成物の含有量の測定について
HPLC法により上記実施例1~4及び比較例1~2における化合物4-((4-エトキシ-2,3-ジフルオロフェノキシ)メチル)-4’-プロピル-1,1’-ビス(シクロヘキサン)の含有量を測定し、結果を以下の表1に示す。
【0042】
【0043】
表1から分かるように、従来技術における一般的な非プロトン性溶媒と比較して、本願では、C8~C16の直鎖アルカン又は分岐鎖アルカンを光延反応の有機溶媒として用い、不純物の生成を顕著に低減することができ、生成物の純度を向上させることに役立つ。
【0044】
[実施例5]
【化5】
500mLの三口フラスコに30gの4-(4-エチル-2-フルオロフェニル)シクロヘキサノール、30.8gの4-(4-プロピルシクロヘキシル)アニリン、37.17gのトリフェニルホスフィン及び180mLのイソドデカンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、29.2gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、100℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、48.6gの白色固体を得て、GCは、91.4%であり、収率は、85.4%であった。
【0045】
化合物BのMSデータは、123(15%)、216(55%)、392(10%)、421(20%)であった。
【0046】
[実施例6]
【化6】
500mLの三口フラスコに30gの4-(2’,3’-ジフルオロ-4’-メチル-[1,1’-ビフェニル]-4-イル)シクロヘキサノール、17.11gの4-プロピル安息香酸、27.33gのトリフェニルホスフィン及び180mLのイソドデカンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、21.47gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、100℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、40.6gの白色固体を得て、GCは、98.1%であり、収率は、91.2%であった。
【0047】
化合物CのMSデータは、163(35%)、244(15%)、285(25%)、419(10%)、448(15%)であった。
【0048】
[実施例7]
【化7】
500mLの三口フラスコに30gの4-(3-フルオロ-4-イソプロピルフェニル)シクロヘキサノール、20.29gの4-プロピルベンゼンチオール、34.96gのトリフェニルホスフィン及び180mLのイソドデカンを添加し、窒素ガスで空気を3回置換し、撹拌しながら50℃まで昇温させ、23.66gのアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DEAD)を前述の溶液にゆっくりと滴下し、滴下が完了した後、80℃まで昇温させ、5時間反応させた。反応液を熱いうちに濾過し、濾液を-10℃で4時間凍結させ、減圧して吸引濾過し、濾過ケーキを乾燥させ、42.8gの白色固体を得て、GCは、97.6%であり、収率は、91%であった。
【0049】
化合物DのMSデータは、137(10%)、151(45%)、327(25%)、341(10%)、370(10%)であった。
【0050】
出願人は、本願では上記実施例により本願のプロセス方法を説明したが、本願が上記実施例に限定されるものではなく、即ち本願が上記実施例に依存しなければ実施することができないことを意味するものではないと主張する。